JP4254394B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高機能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、また半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。エリア実装型半導体装置は、フレキシブル回路基板等の片面上に半導体素子を搭載し、その半導体素子搭載面、即ち基板の片面のみがエポキシ樹脂組成物等で成形・封止されている。また基板の半導体素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する基板との接合を行う特徴を有している。更に、半導体素子を搭載する基板としては、上記有機基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も考案されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置を赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段で半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物並びに有機基板が吸湿したことにより半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生したり、基板の半導体素子搭載面とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生したりすることもあり、硬化物の高強度化、低応力化、低吸湿化とともに、基板との高密着が求められる。
【0004】
半田処理による信頼性低下を改善するために、エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の充填量を増加させることで低吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し耐半田性を向上させるとともに、低溶融粘度の樹脂を使用して、成形時に低粘度で高流動性を維持させる手法が一般的となりつつある。
一方、半田処理後の信頼性において、エポキシ樹脂組成物の硬化物と半導体装置内部に存在する半導体素子やリードフレーム等の基材との界面の接着性は非常に重要になってきている。界面での接着力が弱いと半田処理後の基材との界面で剥離が生じ、更にはこの剥離に起因し半導体装置にクラックが発生する。
従来から耐半田性の向上を目的として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン等のシランカップリング剤がエポキシ樹脂組成物中に添加されてきた。しかし近年、実装時のリフロー温度の上昇や、鉛フリーハンダに対応しNi、Ni−Pd、Ni−Pd−Au等のプリプレーティングフレームの出現等、益々厳しくなっている耐半田性に対する要求に対して、これらのシランカップリング剤だけでは充分に対応できなくなっている。
その対処法として、アルコキシシランカップリング剤によるリードフレームの表面処理法をする方法(例えば、特許文献1参照。)やチアゾール系、スルフェンアミド系、及びチウラム系化合物を添加した樹脂組成物及び樹脂封止型半導体装置(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)などが提案されている。しかしながら、前者のシランカップリング剤は、熱時安定性が悪く耐半田処理において密着向上効果が低下する欠点があり、また、後者の化合物は分子量が大きく、また、不安定な結合(窒素―硫黄結合など)を数多く含んでいるため、成形後の封止樹脂中において分解する可能性が指摘されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−350000号公報(第2〜5頁)
【特許文献2】
特開昭62−209170号公報(第2〜4頁)
【特許文献3】
特開昭62−260344号公報(第2〜4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、吸湿後の半田処理においてリードフレームとの剥離が発生しない耐半田性に優れたエポキシ樹脂組成物、及び半導体装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材及び(E)チアゾリン系化合物を含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2] 前記チアゾリン系化合物が一般式(1)で示される化合物である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0008】
【化2】
(式中、R1、R2は水素原子、アミノ基、メルカプト基、水酸基、もしくはそれらを含む有機基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。但し、R1、R2が共に水素原子であるものは除く。また、チアゾリン環以外に4員環以上の環構造を含む化合物は除く。)
【0009】
[3] 前記チアゾリン系化合物が、樹脂組成物全体に対して0.01〜2重量%の割合で含有される第[1]又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[4] 第[1]、[2]、又は[3]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、例えば、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、テルペン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独でも併用してもよい。
半導体装置の耐半田性を向上させることを目的に、エポキシ樹脂組成物中の無機質充填材の配合量を増大させ、得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物の低吸湿化、低熱膨張化、高強度化を達成させる場合には、常温で結晶性を示し融点を越えると極めて低粘度の液状となる結晶性エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に30重量%以上用いることが特に好ましい。
【0011】
本発明に用いられるフェノール樹脂は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、ビスフェノール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのフェノール樹脂は単独でも2種類以上併用して用いてもよい。
全エポキシ樹脂のエポキシ基と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基との当量比としては、好ましくは0.5〜2.0、特に好ましくは0.7〜1.5である。上記範囲を外れると、硬化性、耐湿信頼性等が低下する可能性がある。
【0012】
本発明に用いられる硬化促進剤は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応の触媒となり得るものであり、例えば、トリブチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも併用してもよい。
【0013】
本発明に用いられる無機質充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。これらの無機質充填材は単独でも併用してもよい。
無機質充填材の配合量を多くする場合、溶融シリカを用いるのが一般的である。溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に溶融球状シリカの配合量を多くするためには、溶融球状シリカの粒度分布がより広くなるように調整することが望ましい。無機質充填材は、予めシランカップリング剤等で表面処理されているものを用いてもよい。
【0014】
本発明で用いられるチアゾリン系化合物は、チアゾリン環を有する化合物である。チアゾリン環を有する化合物は、樹脂組成物の硬化物とリードフレームとの密着性を向上させ、ひいては樹脂組成物の硬化物で半導体素子を封止してなる半導体装置の耐湿信頼性、耐リフロークラック性を改善させる役割を果たす。チアゾリン環を有する化合物は、特に樹脂組成物の硬化物と非銅リードフレーム(銀メッキリードフレーム、ニッケル/パラジウム合金に金メッキが施されたプレプリーティングフレーム)との密着性を向上させる効果が顕著であるため、上記リードフレームを用いた時に、半導体装置の信頼性が大幅に向上する。
本発明で用いられるチアゾリン系化合物としては、特に限定するものではないが、一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。化合物の分子量が大きいと、リードフレームとの密着性を向上させる効果が出難い可能性がある。また、チアゾリン環に付与される官能基としては、チオール基、アミノ基、親水基を持つ単炭化水素鎖など、エポキシ樹脂もしくはフェノール樹脂と化学結合する可能性があるものが好ましい。
【0015】
【化3】
(式中、R1、R2は水素原子、アミノ基、メルカプト基、水酸基、もしくはそれらを含む有機基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。但し、R1、R2が共に水素原子であるものは除く。また、チアゾリン環以外に4員環以上の環構造を含む化合物は除く。)
【0016】
本発明で用いられるチアゾリン系化合物の添加量は、特に限定するものではないが、樹脂組成物全体に対して、0.01〜2重量%であることが好ましい。下限値を下回ると、フレームとの密着性を向上させる効果が低下する可能性がある。また、上限値を超えると、組成物の流動性が低下し、耐半田性が低下する可能性がある。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材、硬化促進剤の他、必要に応じて、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤、臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化剤、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材、硬化促進剤、及びその他の添加剤等を、ミキサーを用いて混合後、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で加熱混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で硬化成形すればよい。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合単位は重量部とする。
実施例1
【0020】
式(2)で示されるエポキシ樹脂(軟化点58℃、エポキシ当量272、以下エポキシ樹脂1とする) 8.2重量部
【化4】
【0021】
式(3)で示されるフェノール樹脂(軟化点107℃、水酸基当量200、以下フェノール樹脂1とする) 6.0重量部
【化5】
【0022】
溶融球状シリカ(マイクロン製、平均粒径28μm) 84.9重量部
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.2重量部
【0023】
式(4)で示される2−チアゾリン−2チオール(関東化学、一級試薬)0.2重量部
【化6】
【0024】
カルナバワックス 0.2重量部
カーボンブラック 0.3重量部
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と25℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物の特性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0025】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で測定した。単位はcm。
密着強度:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、リードフレーム上に2mm×2mm×2mmの密着強度試験片を成形した。リードフレームには銅フレームに銀メッキしたもの(フレーム1)とNiPd合金フレームに金メッキしたもの(フレーム2)の2種類を用いた。その後、自動せん断強度測定装置(DAGE社製、PC2400)を用いて、エポキシ樹脂組成物の硬化物とフレームとのせん断強度を測定した。単位はN/mm2。
耐半田性:176ピンLQFPパッケージ(パッケージサイズは24×24mm、厚み2.0mm、シリコンチップのサイズは、8.0×8.0mm、リードフレームは176pinプリプレーティングフレーム、NiPd合金にAuメッキ加工したもの。)を金型温度175℃、注入圧力9.3MPa、硬化時間120秒の条件でトランスファー成形し、175℃で8時間の後硬化をした。得られたパッケージを85℃、相対湿度60%の環境下で168時間加湿処理した。その後このパッケージを260℃の半田槽に10秒間浸漬した。半田処理を行ったパッケージを超音波探傷装置を用いて観察し、チップ(SiNコート品)とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面に剥離が発生した剥離発生率[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を%で表示した。
【0026】
実施例2〜5、比較例1〜3
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得、実施例1と同様にして評価した。これらの結果を表1に示す。用いたエポキシ樹脂およびフェノール樹脂の詳細は表2に示す。また、実施例1以外で用いたチアゾリン系化合物については下記に示す。
【0027】
式(5)で示される2−アミノ−2−チアゾリン(関東化学)
【化7】
【0028】
式(6)で示される4−メチル−2−チアゾリンエタノール(関東化学)
【化8】
【0029】
式(7)で示される2−(4'−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(川口化学)
【化9】
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1により、チアゾリン系化合物を添加したエポキシ樹脂組成物は、リードフレームとの密着強度が高く、また、信頼性に優れているという結果が得られた。また、実施例2により樹脂の種類により差はあるがチアゾリン系化合物を添加することにより密着強度が大きくなっている。また、実施例3、4によりチアゾリン環の第2位にエポキシ樹脂もしくはフェノール樹脂と反応する官能基を付与されたものも、封止樹脂との密着強度を向上することが可能である結果が得られた。実施例5はチアゾリン系化合物を多量に入れた系であるが、流動性が低下するなどの欠点はあるが密着強度は強い結果が得られている。比較例1,2はチアゾリン系化合物を添加しない系である、樹脂の種類に関わらず密着強度が低く、かつ、信頼性も低い結果が得られた。比較例3は2−(4'−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを用いたものであるが、この化合物は本件にて用いられている化合物に比べて非常に分子量が大きい。そのために、ある特定濃度における効果が薄れてしまっている結果が得られた。
【0033】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られた半導体装置は、非銅リードフレームとの密着強度が強く、信頼性に優れている。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填材及び(E)チアゾリン系化合物を含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 前記チアゾリン系化合物が、樹脂組成物全体に対して0.01〜2重量%の割合で含有される請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1、2又は3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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