JP4254220B2 - 電磁アクチュエータおよび力学量センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁アクチュエータおよび力学量センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁駆動のスキャナが非特許文献1に開示されている。このスキャナを、図16〜19を用いて説明する。図16において、レーザダイオード100からのレーザビームをオプティカルスキャナ101に反射させ、その反射光をスクリーン102に照射する。このとき、オプティカルスキャナ101において反射光の向きが変更され、スキャンが行われる。オプティカルスキャナ101においては電磁石103が近傍に配置され、電磁石103には信号発生器104が接続されている。そして、信号発生器104からの信号により電磁石103が駆動して、図17に示すように、外部からオプティカルスキャナ101に磁場を与えることにより、オプティカルスキャナ101の可動部105に設けたパーマロイ(強磁性体)106に対する引力・斥力により可動部105の向きを変更する。
【0003】
オプティカルスキャナ101の詳細な構成を図18,19に示す。図18の左側にオプティカルスキャナ101の正面図を示すとともに、図18の右側にオプティカルスキャナ101の断面図を示し、さらに、図19にオプティカルスキャナ101の背面図を示す。図18,19において、オプティカルスキャナ101はシリコン基板にて構成され、その一部を除去することにより、可動部(ミラー)105がトーションバー107にて外側の基板108に連結支持され、可動部(ミラー)105の裏面にはパーマロイ(強磁性体)106が配置されている。
【0004】
このように、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)と呼ばれる微小機械は、シリコンウエハを用いた半導体プロセスで形成されることが多い。しかしながら、外部の電磁石103からオプティカルスキャナ101の可動部105を変位させると、電磁石103とパーマロイ106との正確な位置合わせが困難なため、パーマロイ106に安定した磁場を与えるのが困難になり、オプティカルスキャナ101の可動部105の変位(振動角度)が安定しないという問題点がある。また、オプティカルスキャナ101では可動部105の正確な変位検出が必須となるが、このような構成では変位検出が困難となる。
【0005】
また、電磁駆動のアクチュエータとして他にも、図20に示すものが知られている。図20において、外部から磁場を与えるべく永久磁石110を基板120の近傍に配置し、配線121に電流Iを流すことにより長さLでの磁界Bとの角度θにおいてローレンツ力
F=B×I×sinθ×L
にて可動部122を変位させる。このような構成とした場合にも永久磁石110にSm−Co等の希土類系のバルク(ボンド)磁石を用いているため、実装コストがかかり、また、永久磁石110の位置により基板120に加わる磁場が変化し、動作の再現性が悪いという問題点がある。
【0006】
【非特許文献1】
IEEE optical MEMS 2001 P.9 Micromachined optical scanner for strings diameter measurement system
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、その目的は、安定した磁場を付与して動作の安定化を図ることができる電磁アクチュエータおよび力学量センサを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の電磁アクチュエータは、主表面に開口する凹部を有する半導体基板と、同凹部の開口部に配置され、半導体基板に梁を介して連結支持される可動部と、この可動部の表面に梁を結ぶ線から重心が偏倚して配置された第1の強磁性体と、半導体基板の裏面に配置されて磁化された第2の強磁性体と、半導体基板の主表面の凹部の外縁部に絶縁膜を介して配置されて、周期的に変化する電流が通電される配線とを備える。
【0009】
よって、図16の従来技術においては、電磁石103とパーマロイ106との正確な位置合わせが困難であり(パーマロイ106に安定した磁場を与えるのが困難になり)、可動部105の変位(振動角度)が安定しない。これに対し本発明では、半導体基板の裏面に第2の強磁性体を配置しているので安定した磁場を与えることができ、動作の安定化を図ることができる。
【0010】
また、図20の従来技術においては、永久磁石110にSm−Co等の希土類系のバルク(ボンド)磁石を用いているため、実装コストがかかり、また、永久磁石110の位置により基板120に加わる磁場が変化し、動作の再現性が悪い。これに対し本発明では、半導体基板の裏面に第2の強磁性体を配置しているので、実装コストを低減することができるとともに、安定した磁場を付与して動作の安定化を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載の電磁アクチュエータにおいては、可動部は半導体基板に連結される梁も含めて絶縁膜によって形成されてなり、配線と第1の強磁性体とは同一の平面上に存在するようにしている。
また、請求項3に記載の電磁アクチュエータにおいては、半導体基板の主表面には絶縁膜と半導体層と絶縁膜との積層体が設けられてなるとともに、可動部も同半導体基板に連結される梁を含めてこれら積層体によって形成されてなり、配線と第1の強磁性体とは、共にこれら積層体の絶縁膜上の同一の平面上に存在するようにしている。
【0012】
請求項4に記載のように、第2の強磁性体は、第1の強磁性体よりも保磁力の大きい磁性体材料からなるようにするとよい。
【0014】
請求項5に記載のように、半導体基板の上面から可動部の上面にかけて、同可動部の変位を検出する配線が梁を介して延設されてなるようにすると、可動部の変位検出を行うことが可能となり、高精度な制御を行うことができる。
【0015】
請求項6に記載のように、第1の強磁性体は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む金属、またはこれらFe,Ni,Coの少なくとも1つを含む合金からなるようにし、請求項7に記載のように、第2の強磁性体は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む合金からなるようにするとよい。
【0016】
請求項8に記載の力学量センサは、主表面に開口する凹部を有する半導体基板と、半導体基板における凹部の開口部に配置され、同半導体基板に梁を介して連結支持される可動部と、この可動部の表面に梁を結ぶ線から重心が偏倚して配置された第1の強磁性体と、半導体基板の裏面に配置されて磁化された第2の強磁性体と、同半導体基板の主表面の凹部の外縁部に絶縁膜を介して配置されて、可動部の力学量的変位に伴なう第1の強磁性体と第2の強磁性体による磁界の変化に誘起された電流が流れる配線とを備える。よって、半導体基板の裏面に第2の強磁性体を配置しているので、安定した磁場を付与して動作の安定化を図ることができるとともに、実装コストを低減することができる。
【0017】
請求項9に記載の力学量センサにおいては、可動部は半導体基板に連結される梁も含めて絶縁膜によって形成されてなり、配線と第1の強磁性体とは同一の平面上に存在するようにしている。
また、請求項10に記載の力学量センサにおいては、半導体基板の主表面には絶縁膜と半導体層と絶縁膜との積層体が設けられてなるとともに、可動部も半導体基板に連結される梁を含めてこれら積層体によって形成されてなり、配線と第1の強磁性体とは、共にこれら積層体の絶縁膜上の同一の平面上に存在するようにしている。
【0018】
請求項11に記載のように、第2の強磁性体は、第1の強磁性体よりも保磁力の大きい磁性体材料からなるようにするとよい。
【0020】
請求項12に記載のように、第1の強磁性体は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む金属、またはこれらFe,Ni,Coの少なくとも1つを含む合金からなるようにし、請求項13に記載のように、第2の強磁性体は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む合金からなるようにするとよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、この発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1には、本実施形態における磁気アクチュエータを示す。詳しくは、図1の上側にアクチュエータの平面図を示すとともに、図1の下側にアクチュエータの断面図を示す。また、図2には、アクチュエータの斜視図を示す。本アクチュエータは、光スキャナ用アクチュエータであり、図16における符号101,103に示す部材に代わるものとして使用する。
【0023】
シリコン基板(単結晶シリコン基板)1は四角板状をなしている。本実施形態においては、シリコン基板1の上面を主表面1aとし、その反対の面である下面を裏面1bとしている。シリコン基板1の上面(主表面)1aにおける中央部には凹部2が形成され、シリコン基板1は主表面1aに開口する凹部2を有する構成となっている。シリコン基板1の上面1aにおける凹部2の開口部は四角形状をなしている。また、シリコン基板1の上面には絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3として、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いている。凹部2の開口部に位置する絶縁膜3には透孔(スリット)4a,4bが形成され、この透孔4a,4bにより可動部5と梁6a,6bとが区画形成されている。詳しくは、四角形状をなす凹部2の開口部において対向する辺から帯状の梁6a,6bが直線的に延び、この梁6a,6bの先端部に可動部5が連結支持されている。可動部5は四角形状をなし、対向する辺の中心部において梁6a,6bと連結されている。
【0024】
このように、シリコン基板1における凹部2の開口部に可動部5が配置され、この可動部5は、図3(a)に示すように、梁(トーションバー)6a,6bにより連結支持され、両持ち梁構造をなしている。そして、図1および図3(b)に示すように、梁6a,6bを結ぶ線L1を中心にして可動部5が正逆方向に回動することができるようになっている。ここで、透孔4a,4bの形状、即ち、可動部5および梁6a,6bの形状(縦横寸法)により、可動部5の捩じり角が決まる。
【0025】
図1に示すように、可動部5(絶縁膜)の上面において梁6a,6bを結ぶ線L1よりも左側の部位には第1の強磁性体7が配置されている。第1の強磁性体7は薄膜よりなり、四角形状をなしている。ここで、第1の強磁性体7の配置位置として、可動部5における梁(トーションバー)6a,6bを結ぶ線L1から所定量ΔLだけズラしており、これにより第1の強磁性体7は可動部5の重心O1からズレていることになる。即ち、第1の強磁性体7は、平面構造において可動部5の変位中心L1に対し重心O1が不一致の状態で配置されている。このように第1の強磁性体7をオフセット配置して、線L1を中心にして回動する力を可動部5に与えるようにしている。
【0026】
また、可動部5(絶縁膜)の上面において梁6a,6bを結ぶ線L1上を含めて右側の部位には反射膜8が形成されている。反射膜8として金属膜、具体的にはアルミ薄膜を用いている。
【0027】
凹部2の開口部よりも外側における絶縁膜3の上には配線(導体)9が延設されている。配線9は帯状をなし、凹部2のまわりを一周するようにパターニングされ、駆動コイルを構成している。配線9の端部にはパッド10a,10bが形成されている。そして、パッド10a,10bを通して配線9に正弦波電流を流すことができるようになっている。
【0028】
一方、シリコン基板1の下面(裏面)1bには第2の強磁性体11が全面に形成されている。第2の強磁性体11は薄膜よりなる。第2の強磁性体11は、磁場を発生させるためのものであり、磁化されている。つまり、第2の強磁性体11は永久磁石として機能する。
【0029】
可動部5に配する第1の強磁性体7の材質は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む金属、または、合金である。また、基板裏面1bに配する第2の強磁性体11の材質は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む合金である。
【0030】
次に、磁気アクチュエータの作用を説明する。
今、配線9に電流を流さないときを考える。このとき、基板裏面1bに配した第2の強磁性体(永久磁石)11に対して可動部5に配した第1の強磁性体7は磁化されていない。よって、第1の強磁性体7は第2の強磁性体(永久磁石)11に吸引される方向にしか力が働かず、一方向に変位して止まってしまう。
【0031】
この状態から配線9に正弦波電流を流す。すると、いわゆるアンペールの右ねじの法則(電流を右ねじの進む向きに流すと、右ねじをまわす向きの磁界ができる)により、第1の強磁性体7が電磁石として機能し、かつ、第1の強磁性体7における上・下面がN極・S極で反転する。このN極・S極の反転動作の周期は、流す正弦波電流の周期である。第1の強磁性体7の上・下面でのN極・S極の反転動作により引力と斥力が周期的に発生する。つまり、第2の強磁性体(永久磁石)11の上面がS極であった場合において、第1の強磁性体7の下面がN極となると引力が発生し、また、第1の強磁性体7の下面がS極となると斥力が発生する。
【0032】
このように配線9に正弦波電流を流すことにより、梁(トーションバー)6a,6bにより可動部5が、図4に示すように、正逆方向に回動する動作を繰り返す。この可動部5における正逆方向の回動動作に伴ない反射膜8の向きが変更される。これにより、図5に示すように、反射膜8に照射されたレーザビームの向きが変更(光路が変更)されてスキャンが行われる。
【0033】
なお、第1の強磁性体7の代わりに、可動部5において配線(導体)を形成しても同じような動作を行わせることができるが、可動部5を回動するためには配線に非常に大きな電流を流す必要があり、このため配線が発熱する。可動部5は熱容量的にも小さく、熱がこもりやすくそれ自体の温度が上昇してしまう。温度が上昇すると、可動部5を構成する材料の物性値が変化し、梁(トーションバー)6a,6bのバネ定数が変化し、共振周波数で可動部5を回動動作させた場合、周波数が変動してしまう。このような理由により、駆動用配線を可動部5に形成するのは好ましくない。
【0034】
次に、磁気アクチュエータの製作方法について、図6,7を用いて説明する。
まず、図6(a)に示すように、ウエハ状のシリコン基板(シリコンウエハ)1を用意し、シリコン基板1の上面(主表面)1aに、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜3を全面に形成する。そして、図6(b)に示すように、絶縁膜3の上に、可動部5を繰り返し正逆方向に回動する(励振する)ための配線9およびパッド10a,10b、薄膜の第1の強磁性体7、反射膜8を、それぞれパターニングする。
【0035】
引き続き、図6(c)に示すように、シリコン基板1上の絶縁膜3に対し所定領域をエッチング除去して透孔4a,4bを形成する。これにより、可動部5および梁6a,6bが区画形成される。そして、図7(a)に示すように、アルカリ系のエッチング液を用いて絶縁膜3の透孔4a,4bからその下側のシリコン基板1に対し異方性エッチングを行い、凹部2を形成する。
【0036】
その後、図7(b)に示すように、シリコン基板1の裏面1bに薄膜の第2の強磁性体11を形成する。さらに、ダイシングカット、強磁性体7,11の磁化等を行う。これにより、磁気アクチュエータが完成する。
【0037】
磁石の形成の際には、強磁性体11を成膜した後、外部から非常に強力な磁場をその膜に印加することにより、強磁性体を磁化する。磁性体では、保磁力が大きい場合、その磁化したときの磁場を保存しようとするが、保磁力が小さい場合、磁場を保存しようとしないので、磁力が小さくなる。この特性を利用し、基板裏面1bに配する第2の強磁性体11には保磁力の大きいものを、また、可動部5に配する第1の強磁性体7には保磁力の小さいものを形成する。この特性を利用することにより、可動部5に配する第1の強磁性体7は、外部配線(コイル)9により容易にN極・S極に反転し、小さな電流で大きな力を取り出すことができる。
【0038】
以上のように本実施形態の電磁アクチュエータは下記の特徴を有する。
(イ)図1に示すごとく、半導体基板としてのシリコン基板1での凹部2の開口部において梁(トーションバー)6a,6bにより連結支持された可動部5と、可動部5に配置された第1の強磁性体7と、シリコン基板1の裏面1bに配置された第2の強磁性体11と、シリコン基板1の主表面1aにおいて絶縁膜3を介して配置され、周期的に変化する電流を流すことにより第1の強磁性体7を磁化させて第2の強磁性体11との間での引力・斥力によって可動部5を変位させる配線9と、を備えた。
【0039】
よって、図16〜図19の従来技術においては、電磁石103とパーマロイ106との正確な位置合わせが困難であり、パーマロイ106に安定した磁場を与えるのが困難になり、可動部105の変位(振動角度)が安定しなかった。これに対し本実施形態では、シリコン基板1の裏面1bに第2の強磁性体11を配置しているので安定した磁場を与えることができ、可動部5の動作の安定化を図ることができる。また、図20の従来技術においては、永久磁石110にSm−Co等の希土類系のバルク(ボンド)磁石を用いているため、実装コストがかかり、また、永久磁石110の位置により基板120に加わる磁場が変化し、動作の再現性が悪かった。これに対し本実施形態では、シリコン基板1の裏面1bに第2の強磁性体11を配置しているので、実装コストを低減することができるとともに、安定した磁場を付与して可動部5の駆動動作の安定化を図ることができる(動作の再現性に優れたものとすることができる)。
(ロ)図1の配線9は、シリコン基板1の主表面1aでの凹部2の開口部の外側、即ち、固定部において配置した。よって、安定して可動部5を変位させることができる。
(ハ)第1の強磁性体7および第2の強磁性体11の材質として、第1の強磁性体7の保磁力よりも第2の強磁性体11の保磁力の方が大きいものを用いたので、実用上好ましい。
(ニ)第1の強磁性体7は、平面構造において可動部5の変位中心L1に対し重心O1が不一致の状態で配置されているので、実用上好ましい。
【0040】
なお、配線9に正弦波電流を流す代わりにパルス電流を流してもよい。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0041】
図8は、本実施形態における電磁アクチュエータの縦断面図である。本実施形態においてはSOI基板20を用いている。SOI基板20は、半導体基板としてのシリコン基板21の上に絶縁膜としての埋め込みシリコン酸化膜22を介して半導体層としての薄膜シリコン層23を配置したものである。薄膜シリコン層23の上面には絶縁膜24が形成されている。絶縁膜24としてシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いている。シリコン基板21の主表面21aには凹部2が形成されている。凹部2の開口部において、埋め込みシリコン酸化膜22と薄膜シリコン層23と絶縁膜24との積層体を貫通する透孔4a,4bが形成され、これにより梁と可動部5が区画形成されている。可動部5には第1の強磁性体7および反射膜8が配置されている。また、シリコン基板21の裏面21bには第2の強磁性体11が配置されている。
【0042】
さらに、シリコン基板21の主表面21aには配線9が凹部2の開口部の外側において配置されている。ここで、配線9は、シリコン基板21の主表面21aに、埋め込みシリコン酸化膜(絶縁膜)22と薄膜シリコン層(半導体層)23と絶縁膜24との積層体を介して配置されている。つまり、図1では配線9はシリコン基板1の主表面1aに単層の絶縁膜3を介して配置されていたが、図8では配線9は積層体(22,23,24)を介して配置されている。
【0043】
なお、図8において符号25で示す部材は絶縁膜(SiO2)であり、凹部2をエッチングにて形成する際に薄膜シリコン層23がエッチングされてしまうのを防止するためのものである。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0044】
図9は、本実施形態における電磁アクチュエータの平面図である。図10は、図2に代わる本実施形態における電磁アクチュエータの斜視図である。
本実施形態においては、シリコン基板1の主表面1aにおいて、可動部5の変位を検出するための配線(導体)30を延設している。詳しくは、絶縁膜3の上において、一方の梁(6a)から可動部5を通り他方の梁(6b)に抜ける配線30を形成している。また、配線30の両端部にパッド31a,31bを形成している。
【0045】
そして、基板裏面1bに配した強磁性体(永久磁石)11からの磁場と、配線9に正弦波電流を流すことによる磁場と、可動部5の動きにより、変位検出用配線30に流れる電流は変化する。この電流をモニタリングすることにより可動部5の位置(回動角度)を検出することができる。
【0046】
このようにして検出した実際の可動部5の位置(回動角度)から、目標の可動部5の位置(回動角度)となるようにフィードバックをかけて、より高精度な可動部5の回動動作を行わせることができる。
【0047】
以上のごとく、シリコン基板1の主表面1aにおいて可動部5の変位を検出する配線30を延設したので、可動部5の変位検出を行うことにより、高精度な制御を行うことができる。
(比較例)
次に、比較例について上記第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0048】
図11には本比較例における電磁アクチュエータの平面図を示す。図12には、図2に代わる本比較例における電磁アクチュエータの斜視図を示す。第1の実施形態では、回転運動を行わせるアクチュエータであった。これ対し本比較例では上下運動を行わせるアクチュエータである。
【0049】
図12に示すように、シリコン基板1に形成した凹部2の開口部を絶縁膜40で覆い、メンブレン構造としている。凹部2の開口部における絶縁膜40の上に第1の強磁性体41が配置されている。図11に示すように、第1の強磁性体41は、凹部2の開口部における中央部に配置されている。即ち、第1の強磁性体41は、平面構造において可動部5の変位中心O2に対し重心O1が一致している状態で配置されている。さらに、絶縁膜40の上には帯状の配線(導体)42が第1の強磁性体41のまわりに渦巻き状に延設され、配線42の両端部にはパッド43a,43bが形成されている。
【0050】
そして、配線42に交流電流を流すことにより、凹部2の開口部における可動部5(絶縁膜)を上下運動させる。このような構成にすることでスピーカとして用いることができる。
【0051】
なお、図11に代わる構成として、図13に示すように、正方形の凹部2の開口部においてその中心部に長方形の第1の強磁性体41を配置してもよい。この場合にも、第1の強磁性体41は、平面構造において可動部5の変位中心O2に対し重心O1が一致している状態で配置されていることになる。
【0052】
また、図11に代わる構成として、図14に示すように、正方形の凹部2の開口部においてその左側に長方形の第1の強磁性体41を配置してもよい。この場合には、第1の強磁性体41は、平面構造において可動部5の変位中心O2に対し重心O1が不一致の状態で配置されている(距離d1だけズレている)。
【0053】
これまでの各実施の形態あるいは比較例においては磁気アクチュエータとして用いる場合について説明してきたが、磁気アクチュエータではなく力学量センサとして用いることもできる。例えば、比較例に示した構成においてはセンサとしてマイクロフォンに応用することができる。
【0054】
詳しくは、センサとして用いる場合には以下のようにする。
図15に示すように、基板裏面1bの強磁性体11のまわりに磁力線が現れる。この磁力線の一部は可動部5に配した強磁性体7に向かう。そして、可動部5の回動に伴ない強磁性体7の位置も変化し、磁界の向きが変わることになる。一方、配線9は、シリコン基板1の主表面1aにおいて絶縁膜3を介して配置され、この配線9を用いて、力学量の動的な変化による可動部5の変位に伴なう第1と第2の強磁性体7,11による磁界の変化を電圧または電流の変化として検出する。
【0055】
これにより、電磁アクチュエータの場合と同様に、シリコン基板1の裏面1bに第2の強磁性体11を配置しているので、安定した磁場を付与して可動部5の変位のセンシング動作の安定化を図ることができる。また、シリコン基板1の裏面1bに第2の強磁性体11を配置しているので、実装コストを低減することができる。
【0056】
検出対象として、圧力(振動)、流れ、加速度、角速度を挙げることができる。
力学量センサとして用いる場合においても、配線9は、シリコン基板1の主表面1aでの凹部2の開口部の外側において配置されていると、可動部5の変位を安定化することができる。
【0057】
力学量センサとして用いる場合におけるその他の構成についても、これまで説明してきたアクチュエータとして用いる場合と同様にして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における磁気アクチュエータを示す図。
【図2】磁気アクチュエータの斜視図。
【図3】(a),(b)は可動部の構造を示す平面図。
【図4】磁気アクチュエータの斜視図。
【図5】可動部の動作を示す斜視図。
【図6】(a)〜(c)は磁気アクチュエータの製造工程を示す図。
【図7】(a),(b)は磁気アクチュエータの製造工程を示す図。
【図8】第2の実施の形態における磁気アクチュエータの縦断面図。
【図9】第3の実施の形態における磁気アクチュエータの平面図。
【図10】磁気アクチュエータの斜視図。
【図11】比較例における磁気アクチュエータの平面図。
【図12】同比較例における磁気アクチュエータの斜視図。
【図13】同比較例における磁気アクチュエータの平面図。
【図14】同比較例における磁気アクチュエータの平面図。
【図15】力学量センサの斜視図。
【図16】スキャナを示す図。
【図17】従来技術を説明するための図。
【図18】従来技術を説明するための図。
【図19】従来技術を説明するための図。
【図20】従来技術を説明するための斜視図。
【符号の説明】
1…シリコン基板、1a…主表面、1b…裏面、2…凹部、3…絶縁膜、5…可動部、6a,6b…梁、7…第1の強磁性体、9…配線、11…第2の強磁性体、20…SOI基板、21…シリコン基板、22…埋め込みシリコン酸化膜、23…薄膜シリコン層、24…絶縁膜、30…配線、40…絶縁膜、41…第1の強磁性体、42…配線。
Claims (13)
- 主表面(1a)に開口する凹部(2)を有する半導体基板(1)と、
前記半導体基板(1)における前記凹部(2)の開口部に配置され、同半導体基板(1)に梁(6a,6b)を介して連結支持される可動部(5)と、
前記可動部(5)の表面に前記梁(6a,6b)を結ぶ線(L1)から重心(O1)が偏倚して配置された第1の強磁性体(7)と、
前記半導体基板(1)の裏面(1b)に配置されて磁化された第2の強磁性体(11)と、
前記半導体基板(1)の主表面(1a)の前記凹部(2)の外縁部に絶縁膜(3)を介して配置されて、周期的に変化する電流が通電される配線(9)と、
を備えたことを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1に記載の電磁アクチュエータにおいて、
前記可動部(5)は前記半導体基板(1)に連結される梁(6a,6b)も含めて前記絶縁膜(3)によって形成されてなり、前記配線(9)と前記第1の強磁性体(7)とは同一の平面上に存在することを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1に記載の電磁アクチュエータにおいて、
前記半導体基板の主表面(21a)には絶縁膜(22)と半導体層(23)と絶縁膜(24)との積層体が設けられてなるとともに、前記可動部(5)も前記半導体基板に連結される梁(6a,6b)を含めてこれら積層体によって形成されてなり、前記配線(9)と前記第1の強磁性体(7)とは、共にこれら積層体の絶縁膜(24)上の同一の平面上に存在することを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータにおいて、
前記第2の強磁性体(11)は、前記第1の強磁性体(7)よりも保磁力の大きい磁性体材料からなることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータにおいて、
前記半導体基板の上面から前記可動部(5)の上面にかけて、同可動部(5)の変位を検出する配線(30)が前記梁(6a,6b)を介して延設されてなることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータにおいて、
前記第1の強磁性体(7)は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む金属、またはこれらFe,Ni,Coの少なくとも1つを含む合金からなることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータにおいて、
前記第2の強磁性体(11)は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む合金からなることを特徴とする電磁アクチュエータ。 - 主表面(1a)に開口する凹部(2)を有する半導体基板(1)と、
前記半導体基板(1)における前記凹部(2)の開口部に配置され、同半導体基板(1)に梁(6a,6b)を介して連結支持される可動部(5)と、
前記可動部(5)の表面に前記梁(6a,6b)を結ぶ線(L1)から重心(O1)が偏倚して配置された第1の強磁性体(7)と、
前記半導体基板(1)の裏面(1b)に配置されて磁化された第2の強磁性体(11)と、
前記半導体基板(1)の主表面(1a)の前記凹部(2)の外縁部に絶縁膜(3)を介して配置されて、前記可動部(5)の力学量的変位に伴なう前記第1の強磁性体(7)と前記第2の強磁性体(11)とによる磁界の変化に誘起された電流が流れる配線(9)と、
を備えたことを特徴とする力学量センサ。 - 請求項8に記載の力学量センサにおいて、
前記可動部(5)は前記半導体基板(1)に連結される梁(6a,6b)も含めて前記絶縁膜(3)によって形成されてなり、前記配線(9)と前記第1の強磁性体(7)とは同一の平面上に存在することを特徴とする力学量センサ。 - 請求項8に記載の力学量センサにおいて、
前記半導体基板の主表面(21a)には絶縁膜(22)と半導体層(23)と絶縁膜(24)との積層体が設けられてなるとともに、前記可動部(5)も前記半導体基板に連結される梁(6a,6b)を含めてこれら積層体によって形成されてなり、前記配線(9)と前記第1の強磁性体(7)とは、共にこれら積層体の絶縁膜(24)上の同一の平面上に存在することを特徴とする力学量センサ。 - 請求項8〜10のいずれか1項に記載の力学量センサにおいて、
前記第2の強磁性体(11)は、前記第1の強磁性体(7)よりも保磁力の大きい磁性体材料からなることを特徴とする力学量センサ。 - 請求項8〜11のいずれか1項に記載の力学量センサにおいて、
前記第1の強磁性体(7)は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む金属、またはこれらFe,Ni,Coの少なくとも1つを含む合金からなることを特徴とする力学量センサ。 - 請求項8〜12のいずれか1項に記載の力学量センサにおいて、
前記第2の強磁性体(11)は、Fe,Ni,Coの内の少なくとも1つを含む合金からなることを特徴とする力学量センサ。
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