JP4253825B2 - 火花点火式直噴エンジンの制御装置 - Google Patents

火花点火式直噴エンジンの制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火式直噴エンジンの制御装置に関し、より詳細には、、低負荷・低回転領域では成層燃焼によるリーンバーンが行われる火花点火式直噴エンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
低負荷・低回転などの所定条件下では、理論空燃比より大きな空燃比で燃料を燃焼させる所謂希薄燃焼を行う火花点火式直噴エンジンが提案されている。このような火花点火式直噴エンジンとして、希薄燃焼時に発生する窒素酸化物(NOx)を低減するために、空燃比が理論空燃比より大きい所謂リーン状態のときには排ガス中のNOxを吸着して排気中のNOxを低減する一方、空燃比が理論空燃比以下の所謂リッチ状態のときには吸着したNOxを還元するNOx触媒が排気管に設けられたものがある。このNOx触媒はリーン状態ではNOxを吸着する一方、リッチ状態では三元触媒と同様の機能を果たす。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなNOx触媒は、有効に機能する温度範囲が狭いため、エンジンの冷間始動直後の十分加熱されていない時、または、アイドリング時および低負荷時などに行われる希薄燃焼により排気温度が低い時などには、この温度範囲に達せず、エミッションが悪化するという問題がある。また、高速定常走行時などの比較的多用される運転領域でも排気温度が高くなるので、NOx触媒が高温になり有効に機能しなくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、NOx触媒を、多くの運転領域において、活性温度範囲内に維持してエミッションを低減することができる火花点火式直噴エンジンを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、
空気過剰率λが1より大きいリーン領域で排気ガス中のNOxを低減するNOx触媒がエンジンの排気通路に配置され、低負荷・低回転域をリーン状態の成層燃焼領域とし、中・高回転領域を空燃比15以下の均一燃焼領域とする火花点火式直噴エンジンの制御装置において、
前記エンジンの排気ポート開口部及び該排気ポート開口部に連結される排気通路を前記エンジンの本体の車両後方側に配置し、前記NOx触媒を前記エンジンの本体の車両後方側に設けた配置とし、
前記成層燃焼領域のλを1.3以上とし、
前記空燃比15以下の均一燃焼領域である中・高回転領域のうち、前記成層燃焼領域に隣接する負荷領域の燃料噴射形態を、吸気行程の前期から中期にかけての期間内のみ、燃料が分割して噴射される吸気分割噴射とした、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジンの制御装置が提供される。
【0006】
このような構成によれば、NOx触媒までの排気経路が、断熱配置および/または断熱構造とされているので、この排気経路での放熱量が少なくなる。このため、エンジン冷間始動直後には、NOx触媒が活性温度まで速やかに昇温するとともに、排気ガス温度が比較的低い、λが1.3以上の成層燃焼領域(特に、アイドル域またはアイドル域近傍の低回転・低負荷領域)においても、NOx触媒に流れ込む排気ガスの温度が低下しにくく、NOx触媒の温度がNOx浄化(NOx吸着を含む)が効率良く行われる温度範囲内になる程度に維持される。
【0007】
さらに、エンジン中・高回転領域では、空燃比15以下の均一燃焼領域であり、部分負荷領域にあるとき燃料噴射形態が、吸気行程の前期から中期にかけて分割して噴射が開始される吸気分割噴射とされている。具体的には、例えば、燃料は、吸気行程の前期から中期にかけて、燃料噴射装置から、早期噴射と後期噴射に二分割されて噴射される。この場合、早期噴射された燃料は、その後、後期噴射が開始されるまでの間、ピストンの下降移動による燃焼室の容積増大に伴って均一に拡散する。また、後期噴射された残りの燃料も、増大した燃焼室に拡散して均一になる。このことによって、燃焼室に均一な混合気が生成され、圧縮行程後の燃焼行程で、燃焼速度が速まることで、燃焼効率が高くなり、排気ガス温度が下がる。
【0008】
また、分割噴射の各噴射の噴射タイミングが、吸気行程の中央時期より早い時期に設定されているので、▲1▼早期噴射がピストンの下降速度が大きく、それに伴う吸気流動速度も大きいときに行われ、▲2▼早期及び後期噴射がいずれも吸気行程の前半に行われる結果、後期噴射された燃料がピストンの下死点近く(吸気行程の終わり)でシリンダ壁に付着して燃料の均一化が阻害されることが回避され、且つ、▲3▼点火までの時間つまり燃料の気化霧化までの時間を長く確保できる。これらの▲1▼ないし▲3▼の相乗的な作用で、燃焼室での燃料の気化霧化を大きく促進して均一度を大幅に高めることができ、エンジンの燃焼効率を更に高くして、排気ガス温度が更に下がる。
【0009】
したがって、燃料が吸気分割噴射される、空燃比15以下の均一燃焼の部分負荷領域では、このような吸気分割噴射によって、排気ガス温が低くなる。これにより、排気通路の断熱配置または断熱構造に起因する、中・高回転・部分負荷領域での高温の排気ガスによる、NOx触媒の過熱が抑制され、この使用頻度の高い、中・高回転・部分負荷領域で、NOx触媒の温度をリーン領域でNOx浄化(NOx吸着を含む)が効率良く行われる温度範囲内に維持できる。このため、NOx触媒を、広い運転域で、NOx浄化率の高い状態に維持することができ、エミッションが良好になる。
このような構成によれば、NOx触媒までの排気経路(排気管)の少なくとも一部分が、走行風の影響の少ないエンジン後方の空間に配置され、且つ、NOx触媒までの排気経路が短くなるので、排気通路(排気管)がエンジンからエンジン前方向に延びる構成に比して、エンジンからNOx触媒まで排気経路における放熱量が減少するので、エンジンとNOx触媒の間に位置する排気管からの放熱量が少なくなる。この結果、冷間始動直後には、NOx触媒が活性温度まで速やかに昇温する。
さらに、このような構成によれば、リーン状態の成層燃焼領域に隣接して、エンジンからのNOx排出量が多く且つ排気ガス温度が比較的に高い中間空燃比(16ないし19)の均一燃焼領域ではなく、空燃比15以下の吸気分割噴射による均一燃焼領域が存在することになる。したがって、リーン状態の成層燃焼領域に隣接した領域でもって、NOx排出量の増大を抑制するとともに、排気ガス温度の上昇を抑制でき、広い運転域で、NOx触媒が過熱することを抑制できる。
【0011】
発明の好ましい形態では、エンジンは、気筒列が車軸方向に並ぶように搭載され、前記気筒列の方向に延びる一対のエンジン側壁のうち、車両後方側のエンジン側壁に排気ポート開口部が配置されている。
このような構成によれば、所謂横置きにされたエンジンが、エンジンからNOx触媒までの排気管にあたる走行風を遮るので、NOx触媒に入る排気ガスの温度が、この排気管部分で低下しにくい。
本発明の好ましい形態では、前記エンジンからNOx触媒に至る排気通路に、断熱空間を備えた二重排気管を配置した
このような構成によれば、エンジンからNOx触媒までの排気経路で、二重排気管により、排気ガスの温度が下がりにくくなる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、吸気分割噴射を行う領域で排気還流(EGR)を行うように構成されている。
このような構成によれば、吸気分割噴射により燃焼安定性が高められるので、排気ガスの還流量を大幅に増加させることが可能となる。この結果、燃焼時に、気筒内に燃焼に寄与しない多量の不活性ガス(還流された排気ガス)が存在することになり、この多量の不活性ガスが燃焼時に生成された熱を奪うため、燃焼によって生成された排気ガスの温度は大きく低下する。このように、上述した構成によれば、燃料の吸気分割噴射により、多量のEGRが可能となり、その結果、排気ガス温度をより低く押さえNOx触媒の過熱することが抑制されるとともに、NOxの生成量を一層低減でき更にエンジンのポンピングロスの低減により燃費改善が図られる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記吸気分割噴射を行う領域のエンジン回転数の上限値N3をエンジンの定格回転数の2/4〜3/4の範囲とし、成層燃焼領域のエンジン回転数の上限値N2から前記N3までのエンジン回転領域では、車両が高速ギア段で平坦路を定速走行するときの駆動負荷を示すロード・ロードラインを含む低負荷領域から、全負荷を除く高負荷領域までの負荷範囲で、燃料噴射形態を前記吸気分割噴射とし、空気過剰率λを略1とし、かつ、前記ロード・ロードラインを含む低負荷領域におけるEGR率を10パーセント以上とするように構成されている。
【0016】
本明細書において、EGR率とは、{(吸気中のCO2濃度)−(大気中のCO2濃度)}/{(排気中のCO2濃度)−(吸気中のCO2濃度)}で定義される値であり、EGR量(還流される排気ガス量)/新気量を意味する。したがって、EGR率100パーセントとは、新気と排気ガスとが、同量であることを意味し、10パーセントとは、EGR量が新気量の10パーセントであることを意味する。
このような構成によれば、運転頻度が高く且つ触媒の温度が高くなり易いエンジン運転領域(高速ギア段で一定速度の高速走行をするエンジン運転領域)で、吸気分割噴射としているので、高い割合のEGRが可能となる。そして、吸気分割噴射と高い割合のEGRの相乗効果で、排気ガス温度が下がり(排気ガス温度の上昇が抑制され)、NOx触媒をNOx浄化率が高い温度範囲に維持することが可能となる。さらに、吸気分割噴射を行う領域のエンジン回転数の上限値N3をエンジンの定格回転数の2/4〜3/4の範囲としているので、分割噴射の噴射間隔の設定の自由度が大きくなる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態によれば、成層燃焼領域より高負荷側の領域では、成層燃焼領域のエンジン回転数の上限値N2より低い回転数N1以上のエンジン回転数では燃料噴射形態を前記吸気分割噴射とし、前記N1未満のエンジン回転数では燃料噴射形態を吸気行程に燃料が一括噴射される吸気一括噴射とするように構成されている。この吸気一括噴射は、必ずしも、吸気行程の前期から中期にかけておこなわれるものでなくもよい。
このような構成によれば、高温の吸気が充填されることにより、混合気温度が上昇しノッキングが発生し易くなる運転状態、すなわち、走行風による吸気冷却がない車両停止時または微低速時から急加速した場合でも、このような運転状態で飛び込むN1より低回転側の高負荷領域では、吸気一括噴射であるので、気筒内に燃料が集中して噴射されるので、この燃料の気化潜熱で、ノッキングが抑制される。
本発明の好ましい形態では、均一燃焼領域では、前記成層燃焼領域に隣接する領域において排気還流(EGR)を行い、前記N1以上の吸気分割噴射時のEGR率が、前記N1未満の吸気一括噴射時のEGR率より大きく設定されている。このような構成によれば、エンジン回転数が高くなることにより排気ガス温度が上昇するエンジン回転数がN1より高い領域では、吸気分割噴射であるため、EGR率が、吸気一括噴射時より高く設定でき、排気ガス温度が下げられ、NOx触媒の温度上昇が抑制される。
【0019】
本発明の好ましい形態によれば、前記成層燃焼領域では、前記NOx触媒の温度が、該NOx触媒のNOx低減率が低下し始める所定温度以上の高温状態に達したとき、吸気行程に燃料を分割して噴射しかつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行うように構成されている。
このような構成によれば、NOx触媒の温度状態が高温になったときには、λ1.3以上の成層燃焼状態にあっても、吸気分割噴射かつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼とされるので、NOx触媒の三元機能による排気ガス浄化が行われ、高温による、リーン領域(λが1より大きい領域)でのNOx触媒のNOx吸着の低下が補われる。
すなわち、NOx触媒の三元機能が高い温度範囲は、NOx触媒のリーン領域のでのNOx吸着機能が高い温度範囲より広く(高温側に広く)、NOx触媒の温度状態が高温になったときには、NOx触媒が三元機能を果たすようにして、リーン領域でのNOx吸着機能の低によるNOx排出量の増大を防止する。
【0020】
本発明の好ましい形態によれば、前記NOx触媒の温度が、該NOx触媒のNOx低減率が低下し始める所定温度以上の高温状態にあるときには、空燃比15以下の均一燃焼領域から、λが1.3以上の予め設定された成層燃焼領域に移行したときにおいても、前記吸気分割噴射とされかつ排気還流(EGR)が行われる空燃比15以下の均一燃焼を行うように構成されている。
このような構成によれば、NOx触媒の温度状態が高温であるときには、均一燃焼領域から、本来のλ1.3以上の成層燃焼領域に移行したときであっても、吸気分割噴射および排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼とされるので、NOx触媒の三元機能による排気ガス浄化が行われNOxが低減できる。詳しくは、CO、HCとともにNOxが低減される。さらに、吸気分割噴射により、多量のEGRが可能となるため、NOx低減を図りながら、エンジンのポンピングロスが低減でき、空燃比15以下に変更したにもかかわらず、燃費の悪化を少なくでき、NOx低減と燃費抑制の両立が可能となる。
本発明の好ましい形態によれば、前記成層燃焼領域のうちの高回転側領域において、前記NOx触媒が前記所定温度以上の高温状態に達したときには、前記吸気分割噴射とされ且つ排気還流(EGR)が行われ、空燃比15以下で均一燃焼が行われるように構成されている。
このような構成によれば、NOx触媒の過熱によりNOx低減率が悪化したとき、エンジンからのNOx排出量が比較的多い成層燃焼領域のうちの高回転側の領域(リーン領域のうちの相対的にリッチの空燃比領域であって、エンジンからのNOx排出量が相対的に多くなる領域)が、吸気分割およびEGRが行われる空燃比15以下の均一燃焼とされるので、NOx触媒の三元機能により、この領域でのNOxを低減できる。また、均一燃焼に変更したことによる、燃費の悪化は、吸気分割による高い割合のEGRによって抑制される。このように、NOx低減と燃費の悪化の抑制が両立される。
【0021】
本発明の好ましい形態によれば、前記NOx触媒が、該NOx触媒のNOx低減率が低下し始める所定温度以上の高温状態に達したときには、λが1.3以上の成層燃焼領域のうちの低回転側領域では、吸気行程に燃料が一括噴射されかつ排気還流(EGR)が行われる空燃比15以下の均一燃焼を行い、λが1.3以上の成層燃焼領域のうちの高回転側領域では、吸気行程に燃料を分割して噴射しかつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行う。
このような構成によれば、成層燃焼領域の中の低回転側領域においても、NOx触媒の三元機能による排気ガス浄化と、燃費抑制の両立が図られる。
本発明の好ましい形態によれば、加速時に、エンジンの負荷及び回転数によって定められるエンジン運転状態が、前記成層燃焼領域のうちの高回転側領域にあるときには、吸気分割噴射および排気ガス還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行うように構成されている。
このような構成によれば、エンジンからのNOx排出が比較的多くなる加速時に、NOx触媒の三元機能によりNOxを十分に低減しつつ、加速性が確保される。
本発明の好ましい形態によれば、前記成層燃焼領域のうちの高回転側領域で行われる前記吸気分割噴射による空燃比15以下の均一燃焼におけるEGR率は、30パーセント以上であるように構成されている。
このような構成によれば、燃料を吸気行程で分割して噴射することにより、高い率のEGRが可能となるため、この高い率のEGRにより排気ガス温度が低下し、NOx触媒の温度を、NOxを効率良く浄化できる温度範囲に下げることが可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態によれば、エンジン冷機時には、前記低負荷・低回転時でも、空燃比15以下の均一燃焼とし、さらに、前記NOx触媒の上流側に三元触媒が配置されている構成とされている。
このような構成によれば、エンジンの冷機時には、低負荷・低回転でも、空燃比15以下の均一燃焼としているので、排気ガス温度が高くなり、触媒の温度が速やかに上昇する。また、NOx触媒の上流側に三元触媒が配置されているので、この三元触媒の温度が上昇しやすくなる。
本発明の好ましい形態では、運転状態にかかわらず、前記三元触媒の温度状態が高温状態のときには、吸気分割噴射および排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行うように構成されている。
このような構成によれば、三元触媒が耐熱温度限界に達しにくくなるので、三元触媒をよりエンジンに近く配置できる。このため、冷機時の三元触媒の昇温が速やかに行われ、冷間のエミッションが改善される。
本発明の好ましい形態では、燃料が吸気分割噴射される均一燃焼領域と、前記成層燃焼領域との双方で排気ガス還流(EGR)を行うように構成されている。
このような構成によれば、幅広い運転域で、エンジンからのNOx排出量低減と、燃費の向上が図られる。
【0023】
本願の他の発明によれば、
空気過剰率λが1より大きいリーン領域で排気ガス中のNOxを低減するNOx触媒が排気マニホールドから離間した排気通路に配置され、低負荷・低回転域をリーン状態の成層燃焼領域とし、中・高回転領域を空燃比15以下の均一燃焼領域とする火花点火式直噴エンジンの制御装置において、
前記エンジンは、気筒列が車軸方向に並ぶように搭載され、前記気筒列の方向に延びる一対のエンジン側壁のうち、車両前方側のエンジン側壁に排気ポート開口部が設けられ、前記排気マニホールドに連結される排気管がエンジン下方を通してエンジンの車両後方側に延びるとともに、前記NOx触媒が、前記排気管の前記エンジンの下方より下流側部分に配置され、前記排気マニホールドから前記エンジン下方にかけての間であり且つ前記NOx触媒の上流側に位置する排気管が、断熱空間を備えた二重排気管とされ、
前記成層燃焼領域のλを1.3以上とし、
前記空燃比15以下の均一燃焼領域である中・高回転領域のうち、前記成層燃焼領域に隣接する負荷領域の燃料噴射形態を、吸気行程の前期から中期にかけての期間内のみ、燃料が分割して噴射される吸気分割噴射とした、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジンの制御装置が提供される。
【0024】
このような構成によれば、二重排気管により、排気ガスからの放熱が抑制され、エンジン始動直後の、車両停止時または定速走行時における、触媒の昇温が速やかに行われる。また、排気ガス温度が比較的低いλが1.3以上の成層燃焼領域においても、NOx触媒に流れ込む排気ガスの温度が、NOx触媒の温度がNOx浄化(NOx吸着を含む)が効率良く行われる温度範囲内になる程度に維持される。さらに、エンジン中・高回転領域では、空燃比15以下の均一燃焼領域であり、部分負荷領域にあるとき燃料噴射形態が、吸気行程の前期から中期にかけて噴射がそれぞれ開始される吸気分割噴射とされているので、この領域では、このような吸気分割噴射と、走行風によって、排気ガス温が低くなり、中・高回転・部分負荷領域で、NOx触媒の温度をリーン領域でNOx浄化(NOx吸着を含む)が効率良く行われる温度範囲内に維持できる。このため、NOx触媒を、広い運転域で、NOx浄化率の高い状態に維持することができ、エミッションが良好になる。
【0025】
この発明の好ましい形態によれば、エンジン冷機時には、前記低負荷・低回転時でも、空燃比15以下の均一燃焼とし、さらに、前記NOx触媒の上流側に三元触媒が配置されている構成とされている。
このような構成によれば、三元触媒は、エンジンの前方側に配置されることになり、走行風によって、冷却されるので、過熱が抑制されるとともに、排気マニホールドへの直付けが可能となり、冷間始動直後の速やかな昇温が可能となり、冷間エミッションが改善される。
この発明の好ましい形態によれば、運転状態にかかわらず、前記三元触媒の温度状態が高温状態のときには、吸気行程に燃料を分割して噴射しかつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行うように構成されている。
このような構成によれば、空燃比15以下の均一燃焼による三元触媒の反応によって、三元触媒の下流の排気ガス温度は上昇し、NOx触媒の温度も上昇する傾向にあるが、燃料の分割噴射およびEGRによって、NOx触媒の温度が、リーン領域でのNOx浄化率が高い温度範囲以上に高くなることを抑制し、速やかに希薄燃焼の運転形態に移行できる。
この発明の好ましい形態によれば、前記吸気分割噴射を行う領域のエンジン回転数の上限値N3をエンジンの定格回転数の2/4〜3/4の範囲とし、成層燃焼領域のエンジン回転数の上限値N2から前記N3までのエンジン回転領域では、車両が高速ギア段で平坦路を定速走行するときの駆動負荷を示すロード・ロードラインを含む低負荷領域から、全負荷を除く高負荷領域までの負荷範囲で、燃料噴射形態を前記吸気分割噴射とし、空気過剰率λを略1とし、かつ、前記ロード・ロードラインを含む低負荷領域におけるEGR率を10パーセント以上とするように構成されている。
【0026】
このような構成によれば、運転頻度が高く且つ触媒の温度が高くなり易いエンジン運転領域(高速ギア段で一定速度の高速走行をするエンジン運転領域)で、吸気分割噴射としているので、10パーセント以上という高い割合のEGRが可能となる。そして、吸気分割噴射と高い割合のEGRの相乗効果で、排気ガス温度が下がり(排気ガス温度の上昇が抑制され)、NOx触媒をNOx浄化率が高い温度範囲に維持することが可能となる。さらに、吸気分割噴射を行う領域のエンジン回転数の上限値N3をエンジンの定格回転数の2/4〜3/4の範囲としているので、分割噴射の噴射間隔の設定の自由度が大きくなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る筒内噴射式エンジンの制御装置Aの全体構成を示す概略図である。制御装置Aによって制御されるエンジン1は、例えば車両に搭載された直列4気筒エンジンである。このエンジン1は第1〜第4までの4つの気筒2,2,…(1つのみ図示する)を有し、各気筒2内にピストン3が往復動可能に嵌挿されていて、そのピストン3により気筒2内に燃焼室4が区画されている。この燃焼室4の上壁における気筒軸心上の位置には、点火回路5に接続された点火プラグ6が燃焼室4に臨むように取り付けられている。また、前記燃焼室4の側壁部には、移動するピストン3と干渉しない位置に、燃焼室4に燃料を直接噴射するようにインジェクタ(燃料噴射弁)7が取り付けられている。
【0028】
前記インジェクタ7には、詳しくは後述するが、高圧燃料ポンプ71やプレッシャレギュレータ72,73等を有する燃料供給回路70が接続されており、この燃料供給回路70によって、燃料タンク74からの燃料を適正な圧力に調整しながら、インジェクタ7に供給するように構成されている。また、その燃料圧力を検出する燃圧センサ8が設けられている。そして、前記インジェクタ7により燃料が気筒2の圧縮行程後期に噴射されると、その燃料噴霧はピストン3の頂面に凹設したキャビティ(図示せず)にトラップされて、前記点火プラグ6近傍に比較的濃い混合気の層を形成する。一方、前記インジェクタ7により燃料が気筒2の吸気行程で噴射されると、その燃料噴霧は燃焼室4に拡散して吸気(空気)と混合され、燃焼室4に均一な混合気を形成する。
【0029】
前記燃焼室4は、図示しない吸気ポートにより吸気弁9を介して吸気通路10に連通されている。この吸気通路10は、前記燃焼室4に対しエアクリーナ11で濾過した吸気を供給するものであり、上流側から下流側に向かって順に、エンジン1に吸入される吸入空気量を検出する感熱式エアフローセンサ12と、吸気通路10を絞る電気式スロットル弁1と、サージタンク14とが配設されている。前記電気式スロットル弁13は、図外のアクセルペダルに対し機械的には連結されておらず、モータ15により駆動されて開閉するようになっている。また、スロットル弁13の開度を検出するスロットル開度センサ16と、サージタンク14内の吸気負圧を検出する吸気負圧センサ17とがそれぞれ設けられている。前記サージタンク14よりも下流側の吸気通路10は、気筒2毎に分岐する独立通路10aとされていて、その各独立通路10aの下流端部がさらに2つに分岐してそれぞれ吸気ポートに連通しており、その分岐路のうちの一方にスワール制御弁18が設けられている。このスワール制御弁18はアクチュエータ19により駆動されて開閉するものであり、スワール制御弁18が開弁すると、吸気は他方の分岐路のみから燃焼室4に供給されて、強い吸気スワールを生成する一方、スワール制御弁18が開くに連れて吸気スワールは弱められるようになっている。また、そのスワール制御弁18の開度を検出するスワール制御弁開度センサ20が設けられている。
【0030】
燃焼室4から燃焼ガスを排出する排気通路22が設けられ、排気通路22の上流端は気筒2毎に分岐して排気マニホールド22aを形成し、これらの排気マニホールド22aが図示しない排気ポートにより排気弁23を介して各燃焼室4に連通されている。この排気通路22には上流側から下流側に向かって順に、排気中の酸素濃度を検出するO2センサ24と、排気を浄化する触媒25とが配設されている。前記O2センサ24は、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられるもので、空燃比が理論空燃比のときを境に出力が急変する特性を有する。
【0031】
また、前記触媒25は、軸方向(排気の流れ方向)に沿って互いに平行に延びる多数の貫通孔が開口するハニカム構造のコージェライト製担体(図示せず)を有し、その各貫通孔壁面に触媒層を形成したものである。この触媒25には、空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン状態でNOxを吸着する一方、空燃比が理論空燃比近傍又はこれよりも小さいリッチ状態になると、吸着したNOxを放出しかつ還元浄化するNOx吸着還元タイプのリーンNOx触媒が用いられている。このようなNOx吸着還元性能を有する触媒は、そのNOx浄化性能が温度状態に強く依存するという特性を有することが知られており、触媒のNOx浄化率は、所定温度範囲(例えば250〜400℃)で極めて高くなる一方、それ以上の高温状態では温度上昇に伴い急速に低下する。
【0032】
さらに、前記O2センサ24よりも上流側の排気通路20にはEGR通路26の上流端が分岐接続され、このEGR通路26の下流端は前記スロットル弁13とサージタンク14との間の吸気通路10に接続されていて、排気の一部を吸気系に還流させるようになっている。このEGR通路26の下流端寄りには開度調整可能な電気式のEGR弁27が配設されており、EGR通路26による排気の還流量(以下EGR量という)を調整するようになっている。また、そのEGR弁27のリフト量を検出するリフトセンサ28が設けられている。
【0033】
前記燃料供給回路70は、インジェクタ7と燃料タンク74とを接続する燃料通路75を有し、燃料タンク74内に配置した低圧燃料ポンプ76により燃料を汲み上げて、インジェクタ7に供給するものである。前記燃料通路75の途中には上流側から順に、低圧プレッシャレギュレータ72、燃料フィルタ77、及び高圧供給ポンプ71が配設されており、低圧燃料ポンプ76から吐出された燃料は低圧プレッシャレギュレータ72によって調圧されて後、高圧燃料ポンプ71によってさらに増圧され、その高圧燃料がインジェクタ7へ供給される。
【0034】
また、前記インジェクタ7へ供給された燃料の余剰分はリターン通路78により、低圧プレッシャレギュレータ72及び燃料フィルタ77間の燃料通路75に戻される。このリターン通路78の途中には高圧プレッシャレギュレータ73が配設されており、余剰の燃料が高圧プレッシャレギュレータ73によって流量調整されながら高圧燃料ポンプ71の上流側にリターンされることで、インジェクタ7に供給される燃料の圧力が適正に調整されるようになっている。
【0035】
さらに、前記燃料タンク74内の蒸発燃料を回収してエンジン1の吸気系に供給するリニアパージ装置(蒸発燃料供給手段)80が設けられている。このリニアパージ装置80は、蒸発燃料を吸着するキャニスタ81と、このキャニスタ81に燃料タンク74からの蒸発燃料を導く導入通路82と、前記キャニスタ81及び吸気通路10を連通するパージ通路83とを備えている。
【0036】
前記パージ通路83は、前記キャニスタ81に吸着されている蒸発燃料を吸気負圧により吸い出して、スロットル弁13とサージタンク14との間の吸気通路10に供給するものであり、その途中にはデューティソレノイド弁からなるパージ弁84が設けられている。そして、そのパージ弁84の開度のデューティ制御によって、吸気通路10への蒸発燃料量の供給量(パージ量)が連続的に調整されるようになっている。
【0037】
前記点火プラグ6の点火回路5、インジェクタ7、電気式スロットル弁13の駆動モータ15、スワール制御弁18のアクチュエータ19、電気式EGR弁27、パージ弁84等はコントロールユニット40(以下、ECUという)によって作動制御されるようになっている。一方、このECU40には、前記エアフローセンサ12、スロットル開度センサ16、吸気負圧センサ17、スワール制御弁開度センサ20、O2センサ24、EGR弁27のリフトセンサ28等の各出力信号が入力されており、加えて、エンジン1の冷却水温度(エンジン水温)を検出する水温センサ(温度状態検出手段)30、吸気温度を検出する吸気温センサ31、大気圧を検出する大気圧センサ32、エンジン回転数を検出する回転数センサ33、及びアクセルペダルの開度(踏込み量)を検出するアクセル開度センサ34の各出力信号が入力されている。
【0038】
次に、図2および図3を参照して、エンジン1等と車両の位置関係を説明する。図2は、エンジン1を搭載した車両の前部分を車幅方向からみた概略的な図面であり、図3は、車両に搭載されたエンジン1を後方即ち運転席方向からみた概略的な図面である。図2および図3に示されているように、エンジン1は、その気筒列が車軸(車幅)方向に並ぶように、ミッションMに隣接し且つラジエタ89の後方に位置するようにして、車両のボンネットB下に形成されたエンジンルームR内に配置されている。エンジン1の側壁に形成された排気ポート開口90は、車両後方側に位置している。排気ポート開口90に接続された排気マニホールド22aは、エンジン1の後方側を下方に向かって延び、互いに連結されて排気管22となっている。排気管22は、エンジン1の後方側をエンジン1の後壁と略平行に下方に向かって延び、エンジン1の下端とほぼ同じ高さ位置で、車両後方側に向かって折れ曲がり、車両後方に向かって延びている。排気管22の下流端は、フレキシブルジョイント92を介して、フロアパネルPの下方に配置された触媒(NOx触媒)25に連結されている。即ち、この実施形態では、排気ポート90に排気マニホールド22aを介して連結されている排気管22および触媒(NOx触媒)25は、エンジン1の本体の車両後方側に配置され、これらは走行風により熱が奪われにくい断熱配置とされている。
【0039】
この実施形態に係るエンジンの制御装置Aは、インジェクタ7による燃料噴射の形態(燃料噴射時期及び空燃比等)を切替えることにより、エンジン1を異なる燃焼状態で運転する、即ち、エンジン1の燃焼モード(運転モード)を切替える燃焼モード制御手段をECU40に備えている。
【0040】
この燃焼モード制御手段には、エンジン1を、空燃比が理論空燃比より大きいリーン状態で運転しまたは理論空燃比以下のリッチ状態で運転するか、燃料の噴射をどの行程のどの時点で噴射するか、燃料の噴射は一括か分割か、排気還流を行うか否かなどのエンジン制御するデータが、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じた複数の制御マップとして予め設定されており、エンジン制御装置は、この制御マップにより、エンジンの運転状態を切り替えるように構成されている。
【0041】
具体的には、エンジン1が暖機後の基本制御モードにあるときには、図4Aに示されているように、低負荷・低回転側の運転領域が、空気過剰率λが1.3以上の成層希薄燃焼領域I(I'を含む)とされ、燃料が圧縮行程で一括噴射され噴射モードとされる。
また、成層希薄燃焼領域I(I’)に高負荷ないし高回転側で隣接する運転領域II、III、IVは、λが1(または略1)即ち空燃比15以下の均一燃焼領域とされ、均一燃焼領域より高負荷・高回転側の領域は、エンリッチ領域Vとされている。この均一燃焼領域のうち、エンジン回転数がN1(例えば1200rpm)未満の低回転領域IIと、エンジン回転数がエンジン1の定格回転数の2/4〜3/4の範囲の値であるN3(例えば3500rpm)以上の高回転領域および成層希薄燃焼領域Iの上限エンジン回転数N2(例えば2250rpm)からN3まで運転領域のうちの低負荷領域からなる領域IVでは、吸気行程で燃料を一括噴射する吸気一括噴射が行われる。さらに、均一燃焼領域のうちのII、IV以外の領域IIIすなわちエンジン回転数がN1からNの範囲で全負荷領域と負荷が極めて低い領域とを除く領域IIIでは、燃料が吸気行程の前期から中期にかけて2分割で噴射される吸気分割噴射が行われる。この吸気分割噴射としては、例えば、吸気行程のクランク角が30度および80度付近で、それぞれ、燃料を2分割して噴射する噴射形態が好ましい。
【0042】
図4Aから明らかなように、更に、領域I(I'を含む)と、領域IIおよびIIIのうちの領域Iに隣接する領域II’およびIII’すなわち領域IIおよびIIIのうちの高負荷側の領域を除く領域とでは、EGRが実行されるように構成されている。
図4Aに一点鎖線で示されるトランスミッションの高速段でのロード・ロードライン(車両が高速ギア段で略平坦な路面を、例えば時速100キロメートル程度の高速で定速走行するときの駆動負荷を示すライン)は、エンジン回転数がN2からN3の間の範囲では、領域III'に入る。したがって、この実施形態では、エンジン回転数N2ないしN3の範囲で、車両が略平坦な路面を高速で定速走行するときには、エンジン1は、燃料が吸気分割噴射され且つEGRが行われる均一燃焼で運転されることになる。また、領域III’内のロード・ロードライン近傍領域でのEGR率は、10パーセント以上に設定され、吸気分割噴射と高い割合のEGRの相乗効果で、この近傍領域での排気ガス温度の上昇は、抑制されている。さらに、領域III'でのEGR率は、領域II'のEGR率より高くなるように制御される。
また、エンジン冷間時には、図4Bに示されているように、高回転または高負荷領域のエンリッチ領域を除き、λを1(または略1)とした均一燃焼領域とされている。
【0043】
さらに、暖機後であっても、加速時または触媒の温度状態が高温状態である過渡期には、図4Cに示される噴射モードとなる。この噴射モードは、基本的には、図4Aの噴射モードと同一であるが、基本噴射モードの成層希薄燃焼領域のうちの高負荷・高回転側の領域では、燃料が吸気行程で2分割して噴射され、基本噴射モードにおける他の成層希薄燃焼領域では、燃料が吸気行程で一括噴射され噴射モードとされて、成層リ−ン燃焼領域がない点で、基本モードと相違する。すなわち、加速時のエンジンからのNOx排出量の増大を抑制するために成層リーン燃焼を中止して、また、触媒の過熱によりリーン領域でのNOx低減率が低下している高温状態でも成層リーン燃焼を中止して、それぞれ、NOx触媒が三元機能を果たせる空燃比15以下の均一燃焼としている。詳細には、図4Cに示されているように、基本モード(図4A)の成層燃焼領域の高回転側の部分が、吸気分割噴射の均一燃焼領域VIの一部とされている。そして、この成層燃焼領域の高負荷・高回転側の部分での、EGR率は、30パーセント以上となるように制御される。このように、エンジン回転数がN1からN3の範囲で全負荷領域と負荷が極めて低い領域を除く領域VIIは、基本的には、燃料が吸気行程の前期から中期にかけて2分割で噴射される吸気分割噴射による均一燃焼領域とされている。しかしながら、回転数N1未満の領域では、燃料噴射時期は、吸気行程中の前期から中期に限られず、吸気行程中のいずれかの時期に、一括して噴射されるように構成されているのが好ましい。そして、エンリッチ領域を除く他の領域が、一括噴射による均一燃焼領域VIIIとされている。
【0044】
次に、ECU40が行う燃料噴射の具体的な制御を図5のフローチャートに沿って説明する。
図5に示されているように、スタート後のステップS1において、アクセル開度、エンジン回転数、大気圧力、排気中のO2濃度、吸入空気量、水温、吸気温、スロットル開度、EGR弁開度などを読み込む。次に、ステップS2において、目標エンジン負荷を算出する。すなわち、アクセル開度およびエンジン回転数から成層燃焼領域の目標負荷である図示平均有功圧力(Pi)を、エンジン回転数、吸気温度および大気圧力(即ち吸入空気量)から均一燃焼領域の目標エンジン負荷である吸気充填効率(ce)を算出する。次に、ステップS3で、エンジンが冷間状態であるか否を判定すべく、水温が所定温度WT1以上であるか否かが判定される。WT1としては、例えば摂氏45度から60度の間の温度が選択される。S3でNO即ち水温がWT1未満であると判定されたときには、エンジンが冷間であるので、ステップS4に進み、EGRを伴わない吸気一括噴射の均一燃焼モードが選択される。
【0045】
ステップS3でYES即ち水温がWT1以上と判定されたときには、ステップS5に進み、成層燃焼を行う領域であるか否か即ちエンジン回転数がN2未満の低負荷領域にあるか否かが判定される。ステップS5でNOすなわち均一燃焼を行う領域にあると判定されたときには、ステップS6に進み、燃料噴射を吸気分割で行う領域であるか否か、即ち、エンジン回転数がN1からN3の間であり且つ負荷が全負荷領域および極め負荷の低い領域を除く部分負荷領域であるか否かが判定される。ステップS6でNO即ち吸気分割噴射を行う領域ではないと判定されたときには、ステップS7に進み、エンジン回転数が所定回転数N1以下であるか否かが判定される。ステップS7でNO即ちエンジン回転数がN1より高いと判定されたときには、ステップS8に進み、吸気一括噴射による均一燃焼モードが選択される。
【0046】
ステップS7でYES即ちエンジン回転数がN1以下であると判定されたときには、ステップS9に進み、NOx触媒25の温度が所定温度CT2以下であるか否かが判定される。ここで、所定温度CT2としては、例えば、NOx触媒25の活性温度範囲の上限付近の摂氏450度から500度の温度が選択される。ステップS9でYES即ちNOx触媒25の温度がCT2以下であると判定されたときには、ステップS8に進み、吸気一括噴射による均一燃焼モードが選択される。一方、ステップS9でNO即ちNOx触媒25の温度がCT2より高いと判定されたときには、排気ガスの温度を下げて、触媒25の過熱を抑制すべく、ステップS10に進み、吸気分割噴射による均一燃焼モードが選択される。また、ステップS6でYES即ち吸気分割噴射を行う領域であると判定された場合にも、ステップS10に進み、吸気分割噴射による均一燃焼モードが選択される。
【0047】
また、ステップS5でYES即ち成層燃焼を行う領域である判定された時には、ステップS11に進み加速状態であるか否かが判定される。ステップS11でYES即ち成層燃焼を行う領域での加速状態であると判定されたときには、ステップS12に進み、エンジン回転数が所定回転数N1以上であるが否かを判定される。ステップS12で、NO即ちエンジン回転数がN1未満であると判定されたときには、ステップS8に進み、吸気一括噴射による均一燃焼モードが選択される。一方、ステップS12で、YES即ちエンジン回転数がN1以上であると判定されたときには、ステップS10に進み、吸気分割噴射による均一燃焼モードが選択される。
【0048】
また、ステップS11でNO即ち加速状態ではないと判定されたときには、ステップS13に進み、NOx触媒25の温度が所定温度CT1以下であるか否かが判定される。ここで、所定温度CTとしては、例えば、NOx触媒25の活性温度範囲の上限付近の摂氏400度から450度の温度が選択される。
ステップS13でNO即ちNOx触媒25の温度がCTより高いと判定されたときには、ステップS12に進み、エンジン回転数により、ステップS8またはステップS10のいずれか進む。ステップS13でYES即ちNOx触媒25の温度がCT以下であると判定されたときには、ステップS14に進み、燃料を圧縮行程で分割して噴射する領域であるか否かが判定され、YES即ち圧縮分割する領域であると判定されたときには、ステップS15に進み、圧縮行程での分割噴射による成層燃焼モードが選択され、NO即ち圧縮分割する領域ではない判定されたときには、ステップS16に進み、圧縮行程での一括噴射による成層燃焼モードが選択される。
【0049】
ステップS4、S8、S10、S15およびS16で各燃焼モードが選択されると、ステップS17に進み、各噴射モード毎に、各制御マップから燃料噴射量、噴射時期、点火時期、スロットル開度、EGR弁開度が算出される。詳細には、ECU40は、図6に示されているようなエンジン制御マップを備えている。まず、目標エンジン負荷とエンジン回転数に対応して設定された目標空燃比マップから、スロットル開度と燃料噴射量とが算出される。ここで、スロットル開度と燃料噴射量毎に、空燃比マップを備えていると精度がより向上する。更に、目標負荷とエンジン回転数(ただし、均一燃焼領域では、実負荷とエンジン回転数)に対応して設定されたEGRマップ、噴射タイミングマップ、および点火時期マップから、EGR率、噴射タイミング、および点火タイミングが、それぞれ、算出される。さらに、EGR率から、その運転状態におけるEGR弁開度が算出される。この結果、図4A、B、Cに示されている噴射モードに対応する噴射状態などが決定される。
【0050】
次いで、ステップS18でスロットル弁が、ステップS19で噴射弁が、更に、ステップS20で燃料噴射弁がそれぞれ駆動され、ステップS21で点火が実行される。さらに、ステップS22で、エンジン回転数、吸気温度、燃料噴射量などの運転状態から、触媒25の温度が推定され、リターンする。この推定された触媒温度が、次回のステップS9およびステップS13で使用される。なお、エンジン始動直後の触媒温度は、エンジンを停止してからの経過時間、水温などから推定するのが好ましい。
【0051】
図7および図8は、エンジン1の特性を示す図面であり、図7は、高速走行時のエンジン特性を、図8は最大EGR率付近のエンジン特性をそれぞれ示している。これらの図から明らかなように、分割噴射(吸気分割噴射)の方が、一括噴射に比べて、高い割合のEGRが可能となり、同じ率のEGRで比較したとき、燃費率および排気ガス温度の両者とも分割噴射の方が低い値となっている。したがって、吸気分割噴射が高率のEGRを可能とし、更に分割噴射自身の排ガス温低減効果との相乗効果で排ガス温度を図中に矢印で示す量だけ低下させ、冷間時のエンジン始動直後あるいは成層リーン燃焼などに有効な排気通路の構成又は配置を可能とすることがわかる。
ここでは、図示平均有効圧力(Pi)の変動率、つまり、同一気筒(自気筒)の(Pi変動幅/Pi平均値)が5パーセントの点を燃焼安定限界としている。また、セット点とは、エンジンの外部環境、個体差を考慮して燃焼安定限界からのマージンをとった点であり、Pi変動率が3から3.5パーセントの点である。
図9は、上記第1の実施形態の変形例を示す図2と同様の図面である。この変形例は、基本的構成は上記第1の実施形態と同一であるが、変形例は、排気マニホールド22aとフレキシブルジョイント92とを連結する排気管が断熱空間を備えた二重構造の排気管122である点で上記第1の実施形態と異なる。
【0052】
図10および図11は、排気管122の、排気マニホールド22aに接続される上流端部と、フレキシブルジョイント92に接続される下流端部とを、それぞれ、示す断面図である。図10から明らかなように、排気管122は、大径のパイプである外管123と小径のパイプである内管124とが間に環状の断熱空間125を形成するように重ねて配置されている。図10に示されているように、排気管122の上流側の端部では、外管123は、その内径が内管124の外径と略等しくなるように縮径して、内管124と直接重なっている。さらに、両方の管123、124の端部が整列して接続用フランジ126に差し込まれ、外管123と内管124の上流側端部分は、このフンラジ126近傍で溶接されてる。又、図11に示されているように、排気管122の下流端側では、外管123のみが接続用フランジ127に接続され、内管124の下流端は、外管123の下流端より上流側に位置している。内管124の下流端部分は、熱による内管124の軸線方向の伸縮を許容するように、断熱空間124と略同じ厚さの環状の耐熱マット128を介して外管123に対して位置決めされている。
以上のように構成された変形例では、上記第1の実施形態と同様の制御が行われるが、排気管122が二重構造を備えた断熱域構造であるため、中を通る排気ガスは、この部分で熱を奪われにくい。したがって、冷間始動後に触媒25を速やか昇温させること、および、成層リーン燃焼時に触媒25の温度を所定温度以上に維持することが容易になる。
【0053】
次に、図12を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図12は、第2の実施形態を示す図2と同様の図面である。
図12から明らかなように、第2の実施形態は、基本的構成は上記第1の実施形態と同一であるが、第2の実施形態は、排気マニホールド22aと排気管22との間に三元触媒200が配置されている点で上記第1の実施形態と異なる。したがって、図12では、第1の実施形態と同じ構成要素は、図2と同じ参照番号を付す。
更に、図13および図14を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。図13は、第3の実施形態を示す図2と同様の図面であり、図14は、図13のエンジンを車両の前方側からみた概略的な図面である。
図13および図14から明らかなように、第3の実施形態は、基本的構成は上記第2の実施形態と同一であるが、第3の実施形態は、排気ポートが車両の前方側に位置するようにエンジンが車両に搭載され、さらに、三元触媒の下流側の排気管が第1の実施形態の変形例と同様の二重構造となっている点でのみ上記第2の実施形態と異なる。したがって、図13では、他の実施形態と同じ構成要素は、図2などと同じ参照番号を付す。
【0054】
図13および図14に示されているように、エンジン300は、その気筒列が車軸(車幅)方向に並ぶように、ミッションMに隣接し且つラジエタ89の後方に位置するようにして、車両のボンネットB下に形成されたエンジンルームR内に配置されている。エンジン300の側壁に形成された排気ポート開口390は、車両後方側に位置している。排気ポート開口390に接続された排気マニホールド322aは、エンジン1の前方側を下方に向かって延び、三元触媒200の部分で互いに連結されて二重構造の排気管322となっている。排気管322は、エンジン300の前方側をエンジン300の前壁と略平行に下方に向かって延び、エンジン300の下端より下方の高さ位置で、車両後方側に向かって折れ曲がり、エンジン300の下方を通り車両後方に向かって延びている。排気管322の下流端は、フレキシブルジョイント92を介して、フロアパネルPの下方に配置された触媒(NOx触媒)25に連結されている。したがって、この実施形態では、NOx触媒がエンジン300の下方より、排気管322の下流側部分に配置されている。
【0055】
次に、図15を参照して、これら第2および第3の実施形態のECUで行われる燃料噴射制御を説明する。図15は、第2および第3の実施形態で行われる燃料噴射制御を示す図5と同様にフローチャートである。
【0056】
図15のフローチャートは、図5のフローチャートと略同一であり、相違点は、第2および第3の実施形態がNOx触媒の上流側に三元触媒200を備えているため、ステップS3とステップS5の間に、三元触媒200の温度が所定温度CT3(例えば、摂氏800度)より高いかを否か判定するステップS30を有し、ステップS30でYES即ち三元触媒200の温度がCT3より高いと判定されたときには、排気ガスの温度を下げるべくステップS10に進み、NO即ち三元触媒200の温度がCT3以下である判定されたときには、ステップS5に進む点である。
【0057】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなくて、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0058】
【発明の効果】
このような構成を有する本発明によれば、NOx触媒を、多くの運転領域において、NOx触媒が有効に機能する温度範囲内に維持してエミッションを低減することができる火花点火式直噴エンジンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る筒内噴射式エンジンの制御装置Aの概略構成を示す図面である。
【図2】 本発明の第1の実施形態にかかるエンジン1を搭載した車両の前部分を車幅方向からみた概略的な図面である。
【図3】 図2のエンジン1を後方即ち運転席方向からみた概略的な図面である。
【図4A】 エンジン暖機後の燃料噴射モードを示す図面である。
【図4B】 エンジン冷間時の燃料噴射モードを示す図面である。
【図4C】 エンジン暖機後の過渡期における燃料噴射モードを示す図面である。
【図5】 第1の実施形態で行われる燃料噴射の具体的な制御を示すフローチャートである。
【図6】 第1の実施形態で用いられるエンジン制御マップを示す図面である。
【図7】 高速走行時のエンジン特性を示す図面である。
【図8】 最大EGR率付近のエンジン特性を示す図面である。
【図9】 第1の実施形態を示す図2と同様の図面である。
【図10】 排気管122の排気マニホールド22aに接続される上流端部を示す断面図である。
【図11】 フレキシブルジョイント92に接続される下流端部を示す断面図である。
【図12】 第2の実施形態を示す図2と同様の図面である。
【図13】 第3の実施形態を示す図2と同様の図面である。
【図14】 図13のエンジンを車両の前方側からみた概略的な図面である。
【図15】 第2および第3の実施形態で行われる燃料噴射の具体的な制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
4 燃焼室
7 インジェクタ(燃料噴射弁)
22 排気通路
22a 排気マニホールド
25 触媒(NOx)
40 ECU

Claims (20)

  1. 空気過剰率λが1より大きいリーン領域で排気ガス中のNOxを低減するNOx触媒がエンジンの排気通路に配置され、低負荷・低回転域をリーン状態の成層燃焼領域とし、中・高回転領域を空燃比15以下の均一燃焼領域とする火花点火式直噴エンジンの制御装置において、
    前記エンジンの排気ポート開口部及び該排気ポート開口部に連結される排気通路を前記エンジンの本体の車両後方側に配置し、前記NOx触媒を前記エンジンの本体の車両後方側に設けた配置とし、
    前記成層燃焼領域のλを1.3以上とし、
    前記空燃比15以下の均一燃焼領域である中・高回転領域のうち、前記成層燃焼領域に隣接する負荷領域の燃料噴射形態を、吸気行程の前期から中期にかけての期間内のみ、燃料が分割して噴射される吸気分割噴射とした、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  2. 前記エンジンは、気筒列が車軸方向に並ぶように搭載され、前記気筒列の方向に延びる一対のエンジン側壁のうち、車両後方側のエンジン側壁に排気ポート開口部が配置されている、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  3. 前記エンジンからNOx触媒に至る排気通路に、断熱空間を備えた二重排気管を配置した、
    請求項1または2に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  4. 前記吸気分割噴射を行う領域で排気還流(EGR)を行う、
    請求項1ないし3のいずれか1項に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  5. 前記吸気分割噴射を行う領域のエンジン回転数の上限値N3をエンジンの定格回転数の2/4〜3/4の範囲とし、成層燃焼領域のエンジン回転数の上限値N2から前記N3までのエンジン回転領域では、車両が高速ギア段で平坦路を定速走行するときの駆動負荷を示すロード・ロードラインを含む低負荷領域から、全負荷を除く高負荷領域までの負荷範囲で、燃料噴射形態を前記吸気分割噴射とし、空気過剰率λを略1とし、かつ、前記ロード・ロードラインを含む低負荷領域におけるEGR率を10パーセント以上とする、
    請求項1又はに記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  6. 前記成層燃焼領域より高負荷側の領域では、成層燃焼領域のエンジン回転数の上限値N2より低い回転数N1以上のエンジン回転数では燃料噴射形態を前記吸気分割噴射とし、前記N1未満のエンジン回転数では燃料噴射形態を吸気行程に燃料が一括噴射される吸気一括噴射とする、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  7. 前記均一燃焼領域では、前記成層燃焼領域に隣接する領域において排気還流(EGR)を行い、前記N1以上の吸気分割噴射時のEGR率が、前記N1未満の吸気一括噴射時のEGR率より大きく設定されている、
    請求項に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  8. 前記成層燃焼領域では、前記NOx触媒の温度が、該NOx触媒のNOx低減率が低下し始める所定温度以上の高温状態に達したとき、吸気行程に燃料を分割して噴射しかつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行う、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  9. 前記NOx触媒の温度が、該NOx触媒のNOx低減率が低下し始める所定温度以上の高温状態にあるときには、空燃比15以下の均一燃焼領域から、λが1.3以上の予め設定された成層燃焼領域に移行したときにおいても、前記吸気分割噴射とされかつ排気還流(EGR)が行われる空燃比15以下の均一燃焼を行う、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  10. 前記成層燃焼領域のうちの高回転側領域において、前記NOx触媒が前記所定温度以上の高温状態に達したときには、前記吸気分割噴射とされ且つ排気還流 (EGR)が行われ、空燃比15以下で均一燃焼が行われる、
    請求項に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  11. 前記NOx触媒が、該NOx触媒のNOx低減率が低下し始める所定温度以上の高温状態に達したときには、λが1.3以上の成層燃焼領域のうちの低回転側領域では、吸気行程に燃料が一括噴射されかつ排気還流(EGR)が行われる空燃比15以下の均一燃焼を行い、λが1.3以上の成層燃焼領域のうちの高回転側領域では、吸気行程に燃料を分割して噴射しかつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行う、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  12. 加速時に、エンジンの負荷及び回転数によって定められるエンジン運転状態が、前記成層燃焼領域のうちの高回転側領域にあるときには、前記吸気分割噴射および排気ガス還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼が行われる、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  13. 前記成層燃焼領域のうちの高回転側領域で行われる前記吸気分割噴射による空燃比15以下の均一燃焼におけるEGR率は、30パーセント以上である、
    請求項10または12に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  14. 前記エンジン冷機時には、前記低負荷・低回転時でも、空燃比15以下の均一燃焼とし、さらに、前記NOx触媒の上流側に三元触媒が配置されている、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  15. 運転状態にかかわらず、前記三元触媒の温度状態が高温状態のときには、前記吸気分割噴射および排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行う、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  16. 前記吸気分割噴射による均一燃焼領域と、前記成層燃焼領域との双方で排気ガス還流(EGR)を行う、
    請求項1に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  17. 空気過剰率λが1より大きいリーン領域で排気ガス中のNOxを低減するNOx触媒が排気マニホールドから離間した排気通路に配置され、低負荷・低回転域をリーン状態の成層燃焼領域とし、中・高回転領域を空燃比15以下の均一燃焼領域とする火花点火式直噴エンジンの制御装置において、
    前記エンジンは、気筒列が車軸方向に並ぶように搭載され、前記気筒列の方向に延びる一対のエンジン側壁のうち、車両前方側のエンジン側壁に排気ポート開口部が設けられ、前記排気マニホールドに連結される排気管がエンジン下方を通してエンジンの車両後方側に延びるとともに、前記NOx触媒が、前記排気管の前記エンジンの下方より下流側部分に配置され、前記排気マニホールドから前記エンジン下方にかけての間であり且つ前記NOx触媒の上流側に位置する排気管が、断熱空間を備えた二重排気管とされ、
    前記成層燃焼領域のλを1.3以上とし、
    前記空燃比15以下の均一燃焼領域である中・高回転領域のうち、前記成層燃焼領域に隣接する負荷領域の燃料噴射形態を、吸気行程の前期から中期にかけての期間内のみ、燃料が分割して噴射される吸気分割噴射とした、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  18. 前記エンジン冷機時には、前記低負荷・低回転時でも、空燃比15以下の均一燃焼とし、さらに、前記NOx触媒の上流側に三元触媒が配置されている、
    請求項17に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  19. 運転状態にかかわらず、前記三元触媒の温度状態が高温状態のときには、吸気行程に燃料を分割して噴射しかつ排気還流(EGR)を行う空燃比15以下の均一燃焼を行う、
    請求項18に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
  20. 前記吸気分割噴射を行う領域のエンジン回転数の上限値N3をエンジンの定格回転数の2/4〜3/4の範囲とし、成層燃焼領域のエンジン回転数の上限値N2から前記N3までのエンジン回転領域では、車両が高速ギア段で平坦路を定速走行するときの駆動負荷を示すロード・ロードラインを含む低負荷領域から、全負荷を除く高負荷領域までの負荷範囲で、燃料噴射形態を前記吸気分割噴射とし、空気過剰率λを略1とし、かつ、前記ロード・ロードラインを含む低負荷領域におけるEGR率を10パーセント以上とする、
    請求項17に記載の火花点火式直噴エンジンの制御装置。
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