JP4253404B2 - 高電圧機器用絶縁物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高電圧機器に使用される絶縁物に係り、特に、ガラス繊維またはプラスチック繊維をエポキシ樹脂等で含浸注形した絶縁物の耐直流電圧特性の改善を図った高電圧機器用絶縁物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高電圧機器においては、高電圧が印加される金属導体は絶縁物によって支持されて接地面と絶縁されている。この絶縁物には、印加される電圧と絶縁物の形状、材質及び絶縁物周辺の電極配置とから決まる電界が印加され、この電界の大きさは電位分布によって決定される。なお、高電圧機器の絶縁信頼性を確保するためには、絶縁物への印加電界を絶縁物が絶縁破壊を生じる電界以下に抑えることが必要である。
【0003】
高電圧機器への印加電圧の種類は、直流電圧と交流電圧とに大別される。図10は、従来の高電圧機器用絶縁物の、交流電圧に対する電位分布の概念図を示したものである。すなわち、絶縁物1は、高電圧側金具2と接地側金具3との間に取り付けられ、等電位線4は電位分布から決定される。
また、絶縁物中の任意の点の交流電位は、絶縁物材質の特性の内、特に誘電率の影響を大きく受け、印加電圧7に対して静電容量5の分布から決定される。なお、図11(A)は、絶縁物中の点Aの交流電圧に対する電位分布を示す図であり、図11(B)は、図11(A)の等価回路を示す図である。
【0004】
これに対して、絶縁物中の任意の点の直流電圧に対する電位分布は、絶縁物材質の特性の内、特に抵抗率の影響を大きく受け、図12(A)(B)に示すように、絶縁物の抵抗8の分布に対応して決まる。また、この場合の等電位線は、図10に示した交流電圧に対する電位分布とは異なり、図13に示すように、高電圧側金具2及び接地側金具3と絶縁物1との接続部9に向かって入り込む傾向がある。これは、絶縁物と導体との接続部周辺の電界が強くなることを示している。
このように、一般に、同じ絶縁物で同じ電極配置であっても、直流電圧に対する電位分布と交流電圧に対する電位分布とは異なっている。
【0005】
近年、絶縁性のガスを充填した密閉容器内に、絶縁物を用いて支持した導体を配置してなるガス絶縁高電圧機器が多く用いられるようになってきている。この様なガス絶縁高電圧機器は、交流電圧送電系統だけでなく、直流電圧送電系統にも適用されている。
【0006】
このような直流系統に用いられる高電圧機器はもちろんのこと、交流系統に用いられる高電圧機器においても、開閉装置開放操作後に残留直流電圧が印加されることがある。例えば、図14に示すように、開放状態の遮断器10に隣接する断路器11を開放する場合、断路器と遮断器との間の回路12には、図15に示すような残留直流電圧13が発生する。特に、ガス絶縁高電圧機器においては、絶縁性ガスの優秀な絶縁性能に起因して残留直流電圧の減衰が小さく、交流電圧機器においても直流耐電圧特性が重要になっている。
【0007】
また、高電圧機器の電界分布においては、交流電圧に対する電界分布においてだけでなく、直流電圧に対する電界分布においても、絶縁物と導体との接続部において、局所的に電界が増大しやすいことが知られており、これを防ぐことが高電圧機器の絶縁信頼性確保の上で重要なポイントとなっている。
【0008】
この局所的な電界の増大を防ぐために、交流電圧に対しては、一般にシールド電極が用いられる。すなわち、図16(A)(B)に示す様に、絶縁物と導体との接続部9周辺の絶縁物に対する静電容量C1が大きいシールド電極を取りつけて、このシールド電極と導体とを接続しておく。これによって、静電容量分圧によって決まる導体と接続部周辺の絶縁物との間の電位差を小さくすることができる。
【0009】
一方、直流電圧に対しては、図17(A)(B)に示すように、導体との接続部9周辺の絶縁物1aの断面積を、他の部分1bよりも大きくするという対応が取られることが多い。一般に、体積抵抗率が一様な物体の抵抗は、断面積を大きくすることによって小さくなる。従って、接続部周辺の絶縁物1aの断面積を相対的に大きくすることにより、接続部周辺の抵抗を他の部分よりも小さくすることができ、それによって、抵抗分圧によって決まる高電圧側金具2または接地側金具3と接続部9周辺の絶縁物との間の電位差14を小さくすることができる。その結果、図18に示すように、等電位線4は導体と絶縁物の接続部9から離れることになり、接続部周辺の電界強度を低減することができる。
【0010】
なお、ガス絶縁高電圧開閉装置においては、開閉のための動力を高電圧導体部へ伝達するための絶縁物に、機械的な強度を補強するためにガラス繊維やプラスチック繊維を含浸したエポキシ含浸注形絶縁物が用いられることが多いが、これらに対しても、上記と同様の接続部の電界低減策を施すことができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の方法には、以下に述べるような問題があった。すなわち、ガス絶縁高電圧機器の地下変電所等への適用の広まりに伴って、そのコンパクト化の要請はますます高まっており、寸法が小さくて耐電圧性能のすぐれた絶縁物の必要性が増している。
これに対して、絶縁物の断面積を増やして、導体と絶縁物との接続部の直流電界をコントロールする方法では、絶縁物形状が大きくなってしまい、この要請に答えられなかった。
【0012】
また、絶縁物の断面積を変化させるのではなく、エポキシの体積抵抗率を変化させる方法も検討されている。しかし、いまだ経済的な技術が確立されるには至っていない。すなわち、ガラス繊維やプラスチック繊維を含浸したエポキシ注形絶縁物においては、図19(A)(B)に示す様に、絶縁物の抵抗は、エポキシ樹脂16自体の抵抗R1と、含浸された繊維とエポキシとの界面17の抵抗R2と、ガラス繊維やプラスチック繊維等の繊維15自体の抵抗R3と、エポキシの外表面18の抵抗R4との並列回路として表わされる。
【0013】
一般に、エポキシ自体の抵抗R1やエポキシの外表面の抵抗R4に比べて、繊維とエポキシとの界面の抵抗R2や繊維自体の抵抗R3は低く、絶縁物全体の抵抗を低下させる効果を持っている。このため、繊維とエポキシとの界面もしくはガラス繊維自体の抵抗が、エポキシ注形絶縁物全体の抵抗に大きく影響を与える。
しかしながら、この様な界面の抵抗を正確にコントロールすることは難しく、したがって、エポキシ注形品の体積抵抗率のコントロールも難しく、直流電位分布のコントロールが難しかった。
【0014】
以上述べた様に、従来の方法では、コンパクトで機械的強度が高く、且つ耐直流電圧性能の優れた絶縁物を提供することは非常に難しかった。
【0015】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために提案されたものであり、その目的は、機械的強度及び耐直流電圧性能の優れたコンパクトな高電圧機器用絶縁物を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ガラス繊維またはプラスチック繊維を樹脂で含浸注形してなる高電圧機器用絶縁物において、前記絶縁物の両端部に固定用の金具を取り付け、前記絶縁物の表面、及び前記絶縁物と固定用の金具の接続部表面に、前記絶縁物よりも体積抵抗率の低い塗装材からなる塗装膜を連続的に構成し、前記絶縁物の中央部の塗装膜に螺旋状の凹凸を設けたことを特徴とする。
【0017】
上記のような構成を有する請求項1に記載の発明によれば、絶縁物の両端部に取り付けられた金具から金具に至る抵抗分布によって決まる絶縁物全体の電位分担をコントロールすることができる。その結果、抵抗分圧で決まる金具周辺の絶縁物の直流電圧分担を低減することができる抵抗分布を実現することが可能となり、金具周辺の直流電界を低減することができる。
【0020】
また、絶縁物の抵抗値には媒質の抵抗率と断面積の他に電流の流れる流路長も影響することから、絶縁物中央部表面に塗布した塗装膜に螺旋状の凹凸を設けると、電流は主に凸部を流れる。この電流路を長くすることにより、絶縁物中央部の電位分担を増加させ、その結果、相対的に金具周辺部の直流電圧分担を低減することができ、この部分の直流電界を低減することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、ガラス繊維またはプラスチック繊維を樹脂で含浸注形してなる高電圧機器用絶縁物において、前記絶縁物の両端部に固定用の金具を取り付け、前記絶縁物の表面、及び前記絶縁物と固定用の金具の接続部表面に、前記絶縁物よりも体積抵抗率の低い塗装材からなる塗装膜を連続的に構成し、前記固定用の金具の前記絶縁物接続部側の表面に段差を設け、この段差の低い側に前記塗装膜を形成したことを特徴とする。上記のような構成を有する請求項2に記載の発明によれば、金具の表面に塗布した塗装材の端部は微視的に見ると、微細な凹凸形状になりやすく、この部分の電界強度が大きくなりやすいが、固定用金具に設けた段差の低い側に塗装膜を形成する構造とすることによって、塗装膜先端の電界を低減することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の高電圧機器用絶縁物において、段差の大きさを塗装膜の厚さ以上としたことを特徴とするものである。上記のような構成を有する請求項3に記載の発明によれば、段差があまりに小さいと塗装膜先端の電界を効果的に低減することができないことから、段差の大きさを塗装膜の厚さと同程度以上とすることによって、段差による金具周辺の直流電位分担の低減効果をより確実なものとすることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の高電圧機器用絶縁物において、段差の先端を丸くしたことを特徴とするものである。上記のような構成を有する請求項4に記載の発明によれば、塗装材の先端の電界を抑制しても、段差の先端の電界が大きいと、絶縁性能を向上させることは難しいことから、段差の先端を丸くすることによって、段差先端の電界を低減することができ、絶縁性能の向上をより確実なものにすることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の高電圧機器用絶縁物において、固定用の金具の周辺部にシールドを構成し、その内側に溝を設け、前記塗装膜の先端が前記溝の内部になるように塗装膜を形成したことを特徴とするものである。上記のような構成を有する請求項5に記載の発明によれば、塗装膜の先端がシールドの内側に設けられた溝の内部になるように塗装膜を形成することによって、塗装膜の先端の電界強度を緩和することができるので、絶縁性能の高い絶縁物を提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高電圧機器用絶縁物の実施の形態(以下、実施形態という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
[1.第1実施形態]
本実施形態においては、図1に示したように、絶縁物1は、高電圧側金具2と接地側金具3との間に取り付けられている。そして、絶縁物1の表面、及び絶縁物1と高電圧側金具2及び接地側金具3の接続部表面には、その絶縁物よりも体積抵抗率の低い塗装材を連続的に塗布してなる塗装膜20が形成されている。したがって、高電圧側金具2と接地側金具3との間は、塗装膜20によって接続されている。
【0027】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、図2に示した様に、高電圧側金具2と接地側金具3との間の抵抗は、絶縁物自体の抵抗R1と、塗装膜20の抵抗R2との並列回路として表わされる。そして、塗装膜20の抵抗が絶縁物自体の抵抗R1よりも1桁程度小さい場合、塗装膜20と絶縁物1全体の電位分布は、塗装膜の電位分布によってコントロールすることができる。このため、塗装膜20の抵抗分布を、金具周辺で相対的に小さくなるようにコントロールすることによって、金具周辺部の電位分担を減少させることができる。この結果、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接合部周辺の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、抵抗分圧で決まる金具周辺の絶縁物の直流電圧分担を低減できる抵抗分布を実現することが可能となるので、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の直流電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0029】
[2.第2実施形態]
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、図3に示したように、高電圧側金具2及び接地側金具3表面における塗装膜の厚さt1 が、絶縁物表面における塗装膜の厚さt2 よりも相対的に厚く構成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0030】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、高電圧側金具2と接地側金具3との間の抵抗は、絶縁物の抵抗及び塗布された塗装膜の抵抗との並列回路として、先に示した図2と同様に表わされる。また、塗装膜の抵抗は、塗装膜の厚さが厚いほど小さくなる性質を持っているので、金具表面の塗装膜の厚さt1 を絶縁物表面の塗装膜の厚さt2 よりも相対的に厚くすることによって、金具周辺の電位分担を低減することができる。この結果、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接合部周辺の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、抵抗分圧で決まる金具周辺の絶縁物の直流電圧分担を低減できる抵抗分布を実現することが可能となるので、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の直流電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0032】
[3.第3実施形態]
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、図4に示したように、高電圧側金具2及び接地側金具3との接続部から離れた絶縁物1の中央部の塗装膜の厚さt3 が、金具周辺の塗装膜の厚さt2 よりも薄く構成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0033】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、高電圧側金具と接地側金具との間の抵抗は、絶縁物の抵抗及び塗布された塗装膜の抵抗との並列回路として、先に示した図2と同様に表わされる。また、絶縁物の単位長当たりの抵抗値は、媒質の抵抗率と断面積とから決定されるので、絶縁物中央部の表面に塗布した塗装膜の厚さt3 を、金具周辺部の塗装膜の厚さt2 よりも薄くすると、金具周辺部の抵抗値が相対的に小さくなる。これによって、金具周辺の直流電圧分担を低減して、この部分の直流電界を低減することができる。その結果、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接合部周辺の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0035】
[4.第4実施形態]
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、図5に示したように、絶縁物の中央部の表面に形成された塗装膜20には、螺旋状の凹凸溝21が形成されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0036】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、高電圧側金具と接地側金具との間の抵抗は、絶縁物の抵抗及び塗布された塗装膜の抵抗との並列回路として、先に示した図2と同様に表わされる。
また、絶縁物の抵抗値には、媒質の抵抗率と断面積の他に電流の流れる流路長も影響する。すなわち、絶縁物の中央部表面に塗布した塗装膜20に、螺旋状の凹凸溝21を設けると、電流は主に抵抗の低い塗装膜の凸部を流れる。したがって、この電流路を長くすることにより、絶縁物中央部の抵抗R22が大きくなり、絶縁物中央部の電位分担を増加させるので、相対的に金具周辺部の直流電圧分担を低減して、この部分の直流電界を低減することができる。その結果、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0037】
このように、本実施形態によれば、機械的強度を保ちながら、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減できる、コンパクトな高電圧機器用絶縁物を経済的な方法で提供することができる。
【0038】
[5.第5実施形態]
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、図6に示したように、高電圧側金具2及び接地側金具3の絶縁物接続部側の表面には、段差22が設けられており、塗装材は金具面上では段差の低い側22aに塗布されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0039】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、通常、金具の表面に塗布した塗装材の端部は、微視的に見ると、微細な凹凸形状になりやすく、この部分の電界強度が大きくなりやすい。このような塗装材端部の電界を制御するためには、金具が塗装膜の端部をシールドすることが効果的である。本実施形態においては、金具に設けた段差22の低い側22aに塗装材を塗布する構造とすることによって、塗装材先端の電界を低減することができる。その結果、電界が増大しやすい塗装膜先端の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、機械的強度を保ちながら、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減できる、コンパクトな高電圧機器用絶縁物を経済的な方法で提供することができる。
【0041】
[6.第6実施形態]
本実施形態は、上記第5実施形態の変形例であり、図7に示したように、高電圧側金具2及び接地側金具3に形成された段差22の深さdが、塗装膜の塗り厚さと同程度以上とされている。その他の構成は第5実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0042】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、上述したように、塗装膜先端の電界を制御するためには、金具が塗装膜の端部をシールドすることが効果的であり、金具に付けた段差部の低い側に塗装材を塗布する構造とすることによって塗装材先端の電界を低減することができるが、この場合、段差の深さがあまりに浅いと、塗装膜先端の電界緩和効果が小さい。そのため、本実施形態においては、段差の深さdを塗装膜と同程度以上とすることによって、電界緩和効果をより確実なものとしたものである。その結果、電界が増大しやすい塗装膜先端の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0043】
このように、本実施形態によれば、機械的強度を保ちながら、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減できる、コンパクトな高電圧機器用絶縁物を経済的な方法で提供することができる。
【0044】
[7.第7実施形態]
本実施形態は、上記第5実施形態の変形例であり、図8に示したように、高電圧側金具2及び接地側金具3に形成された段差22の先端部が丸く加工されている。その他の構成は第5実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0045】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、上述したように、塗装膜先端の電界を制御するためには、金具が塗装膜の端部をシールドすることが効果的であり、金具に付けた段差部の低い側に塗装材を塗布する構造とすることによって塗装材先端の電界を低減することができる。しかし、塗装膜先端の電界を抑制しても、金具の段差の先端の電界が大きいと、絶縁性能を向上させることは難しい。そのため、本実施形態においては、段差の先端を丸く加工することによって、段差の先端部の電界の低減を図ったものである。その結果、絶縁物の耐直流電圧性能の向上をより確実なものとすることができる。
【0046】
本実施の形態によれば、機械的強度を保ちながら、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減できるコンパクトな高電圧機器用絶縁物を、経済的な方法で提供することができる。
【0047】
[8.第8実施形態]
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、図9に示したように、絶縁物1と高電圧側金具2及び接地側金具3との周辺部のシールドの内側に、溝23が設けられている。そして、塗装膜は、その先端が溝23の内部に収まるように塗布されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0048】
上記の様な構成を有する本実施形態は、以下のような作用・効果を奏する。すなわち、金具の表面に塗布した塗装材の端部はとがった形状になりやすく、この部分の電界強度が大きくなりやすい。塗装材端部の電界を制御するためには、金具が塗装材の端部をシールドすることが効果的である。そこで、本実施形態においては、塗装膜の先端を、金具の周辺部のシールドに設けた溝の内部に収めることによって、電界が増大しやすい塗装膜先端の電界を低減することができ、絶縁物の耐直流電圧性能を向上することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、機械的強度を保ちながら、絶縁物を太くすることなしに、局所的に電界が増大しやすい導体と絶縁物との接続部の電界を低減できるコンパクトな高電圧機器用絶縁物を、経済的な方法で提供することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、機械的な強度を保ちながら、直流電圧印加に対して、局所的に電界の増大しやすい絶縁物と導体との接続部の直流電界を効果的に低減することが可能になるため、耐直流電圧性能の優れたコンパクトな高電圧機器用絶縁物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第1実施形態の構成を示す断面図
【図2】図1に示した高電圧側金具と接地側金具との間の抵抗を示す図
【図3】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第2実施形態の構成を示す断面図
【図4】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第3実施形態の構成を示す断面図
【図5】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第4実施形態の構成を示す断面図
【図6】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第5実施形態の構成を示す断面図
【図7】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第6実施形態の構成を示す断面図
【図8】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第7実施形態の構成を示す断面図
【図9】本発明に係る高電圧機器用絶縁物の第8実施形態の構成を示す断面図
【図10】従来の高電圧機器用絶縁物の交流電圧に対する電位分布を示す概念図
【図11】(A)は、従来の高電圧機器用絶縁物中の点Aの交流電圧に対する電位分布を示す図、(B)は、(A)の等価回路を示す図
【図12】(A)は、従来の高電圧機器用絶縁物中の点Aの直流電圧に対する電位分布を示す図、(B)は、(A)の等価回路を示す図
【図13】従来の高電圧機器用絶縁物の直流電圧に対する電位分布を示す概念図
【図14】断路器開放時の回路の説明図
【図15】断路器開放時の残留直流電圧の説明図
【図16】従来の高電圧機器用絶縁物の交流電位分布を改善した例を示す図であって、(A)は、絶縁物中の点Aの交流電圧に対する電位分布を示す図、(B)は、(A)の等価回路を示す図
【図17】従来の高電圧機器用絶縁物の直流電位分布を改善した例を示す図であって、(A)は、絶縁物中の直流電圧に対する電位分布を示す図、(B)は、(A)の等価回路を示す図
【図18】従来の高電圧機器用絶縁物の直流電位分布を改善した場合の、直流電圧に対する電位分布を示す概念図
【図19】(A)は、高電圧機器用絶縁物の抵抗構成要素の説明図、(B)は、(A)に示した抵抗構成要素による絶縁物の抵抗を示す図
【符号の説明】
1…絶縁物
2…高電圧側金具
3…接地側金具
4…等電位線
5…静電容量
7…印加電圧
8…絶縁物の抵抗
9…接合部
10…開放遮断器
11…断路器
12…断路器と遮断器との間の回路
13…残留直流電圧
14…電位差
15…繊維
16…エポキシ樹脂
17…エポキシ樹脂と繊維との界面
18…エポキシ外表面
20…塗装膜
21…凹凸溝
22…段差
22a…段差の低い側
23…溝
Claims (5)
- ガラス繊維またはプラスチック繊維を樹脂で含浸注形してなる高電圧機器用絶縁物において、
前記絶縁物の両端部に固定用の金具を取り付け、前記絶縁物の表面、及び前記絶縁物と固定用の金具の接続部表面に、前記絶縁物よりも体積抵抗率の低い塗装材からなる塗装膜を連続的に構成し、
前記絶縁物の中央部の塗装膜に螺旋状の凹凸を設けたことを特徴とする高電圧機器用絶縁物。 - ガラス繊維またはプラスチック繊維を樹脂で含浸注形してなる高電圧機器用絶縁物において、
前記絶縁物の両端部に固定用の金具を取り付け、前記絶縁物の表面、及び前記絶縁物と固定用の金具の接続部表面に、前記絶縁物よりも体積抵抗率の低い塗装材からなる塗装膜を連続的に構成し、
前記固定用の金具の前記絶縁物接続部側の表面に段差を設け、この段差の低い側に前記塗装膜を形成したことを特徴とする高電圧機器用絶縁物。 - 前記段差の大きさを、前記塗装膜の厚さ以上としたことを特徴とする請求項2に記載の高電圧機器用絶縁物。
- 前記段差の先端を丸くしたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の高電圧機器用絶縁物。
- 前記固定用の金具の周辺部にシールドを構成し、その内側に溝を設け、前記塗装膜の先端が前記溝の内部になるように塗装膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載の高電圧機器用絶縁物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22604999A JP4253404B2 (ja) | 1999-08-10 | 1999-08-10 | 高電圧機器用絶縁物 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP22604999A JP4253404B2 (ja) | 1999-08-10 | 1999-08-10 | 高電圧機器用絶縁物 |
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