JP3897972B2 - 電気機器のケーブル終端接続構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力機器と電力ケーブルの接続部に用いられる、ガス中終端接続部や油中終端接続部に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
GIS等の電力機器に用いられるガス中終端接続箱や、油中終端接続箱においては、CVケーブルなどのゴム、プラスチック絶縁ケーブル等を機器に接続するための、ケーブル終端接続構造が設けられている。
従来のガス中終端接続箱の一例を図2に示す。この例にはCVケーブル用スリップオン式ガス中終端接続箱の構造を示している。GIS等のガス絶縁電力機器の外壁2にはガス中終端接続箱1が取り付けられる。外壁2内部のガス中終端接続箱1の周囲にはSF6(六フッ化硫黄)ガス等の絶縁ガスが充填されている。ガス中終端接続箱1は次に述べるような構造を有している。エポキシ樹脂等の絶縁体からなるブッシング3は、機器の外壁2の内部に気密に取り付けられている。ブッシング3は上の方がやや細い、テーパーを有する概略円筒状をなしており、下方からケーブル4が差し入れられ接続される。ブッシング内部の上部には高圧電極5が設けられており、上記ケーブル4の導体が接触子6を介して電気的に接続される。高圧電極5の上端は導体引出棒7とされ、ブッシング3の上部から露出して、図示しない遮断機等のガス絶縁電力機器に電気接続される。ケーブル4の絶縁体とブッシング3との間には、ストレスコーン8が嵌挿され、押圧機構によって押圧されて十分な絶縁特性が得られるようになっている。またストレスコーン8の外周を取り囲むようにアース電極9がブッシング内部に設けられている。これらの構造はガス中終端接続箱の構造として公知のものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなケーブル終端接続箱は、高圧、超高圧の電力機器に用いられるものであるため、優れた耐圧特性を有する必要がある。また、これらケーブル終端接続箱はガス絶縁電力機器の内部に納められるものであるため、できるだけ外形寸法が小さく、かつ軽量であることが求められる。ケーブル終端接続箱が大きい場合には、ガス絶縁機器のガスを密封する容器全体を大きくする必要があり、装置全体が大型化し、また容器内部の終端接続箱周囲に無駄な空間ができてしまうためである。一方、ケーブル終端接続箱をより高い電圧に適用する場合には、必要な耐電圧特性を得るために必然的にその外形寸法が大きくなる。したがって本願発明では、このようなケーブル終端接続箱の耐電圧特性の向上と小型軽量化という相反する特性を両立させ、優れた性能を得ることを課題とする。
【0004】
本発明のケーブル終端接続構造は、電力機器にケーブルを接続するために設けられるケーブル終端接続構造であって、電力機器の外壁に密閉して取り付けられ機器外部より挿入されるケーブルの端部を受容する絶縁体製のブッシングと、ブッシング中に設けられケーブルの導体と電気接続される高圧電極と、ケーブルとブッシングの間に嵌挿されるストレスコーンと、ブッシングに設けられストレスコーンの外周に位置するアース電極とを備えるものにおいて、アース電極は、ブッシングの外面のストレスコーンの外周に位置する部分に小径部を形成し、当該小径部とその高圧電極側に位置する非小径部との段差部分にU字状に湾曲する環状凹部を形成するとともに、この凹部の湾曲面から小径部にかけて導電層を形成してなり、ブッシングの外面は、アース電極の高圧電極側端部の周外面から高圧電極のアース電極側端部の周外面にかけて、外側に張り出した弧状縦断面形状とされているものである。
【0005】
SF6ガスを用いたガス絶縁電力機器における問題点として、導体を支持する絶縁物に直流電圧が印加されると絶縁特性が著しく不安定となる現象があげられる。この現象は特に直流機器において問題となるが、交流機器においても充電部を開路する際に、残留電荷のために機器の一部に直流電圧が印加された状態となる場合がある。また、ケーブルに接続されたガス絶縁電力機器では、ケーブルの現地直流耐圧試験の際に直流電圧が印加されることとなる。
【0006】
直流電圧が印加された場合に絶縁特性が不安定となる理由については、いくつかの原因が考えられ、定量的にも十分明らかとはされていないが、重要なメカニズムの一つとして、絶縁物表面に堆積する帯電電荷の作用が検討されている。ガス絶縁電力機器に直流電圧が印加された場合、絶縁ガス中の発生電荷や荷電されたダスト粒子は、電界中で力を受けて電気力線に沿った方向に移動する。これらは、絶縁物の表面にまで移動して絶縁物を帯電させる。SF6ガスのフラッシュオーバー電圧特性は最大電界依存性を有することから、これら帯電電荷の作る電界に、装置への外部からの印加電界が加算するように作用する場合に、フラッシュオーバーが生じ易くなることとなる。直流機器においては電圧極性の反転時、交流機器においては帯電電荷の電界に加算する方向にサージ電圧が印加されるときなどにこのような状態となり、絶縁特性が不安定となると考えられる。このような現象については、文献「ガス絶縁スペーサの帯電機構と絶縁特性」(電学論 B、108巻7号、昭63)において検討がなされている。
【0007】
そこで本願発明においては、ケーブル終端接続構造の絶縁体ブッシングの外面の電界印加部分を弧状の縦断面形状を有する形状とする。言い換えれば、絶縁体ブッシングのガス中の沿面が電気力線になるべく沿うような形とし、電気力線となるべく交わらず、またその交わる角度が小さくなる形状とする。このような形状をとることで、絶縁体ブッシング表面へ荷電したダスト粒子等が到達して堆積する割合を減少させ、上述のメカニズムによる絶縁特性の低下を防止する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本願発明のガス中終端接続箱の実施例を図1に示す。図中、図2に示した従来例に対応する部分には図2におけると同一の番号を付している。
【0014】
従来例と同様に、GIS等のガス絶縁電力機器の外壁2にはガス中終端接続箱1が取り付けられる。外壁2内部のガス中終端接続箱1の周囲にはSF6ガス等の絶縁ガスが充填されている。ガス中終端接続箱1は次に述べるような構造を有している。
【0015】
エポキシ樹脂からなるブッシング3は、機器の外壁2にOリングを介して気密に取り付けられる。このブッシング3の受容口には下方からケーブル4が差し入れられ接続される。ケーブル4はその端末において端末処理がなされ、絶縁体がはぎ取られて導体13が露出され、また外部遮蔽層の接地がとられた状態となっている。上記ブッシング3内部の上部には高圧電極5が設けられており、上記ケーブル4の上記導体13がスリーブ14、接触子6を介して電気的に接続される。上記高圧電極5の上端は導体引出棒7とされ、上記ブッシング3の上部から露出して、図示しない遮断機等のガス絶縁電力機器に電気接続される。また上記高圧電極5の下端部はストレスコーン8の上端付近にかかるような形状とされており、ストレスコーン8の上端付近を電気的に遮蔽している。ケーブル4の絶縁体とブッシング3の受容口との間には、上記ストレスコーン8が嵌挿される。ストレスコーン8は絶縁ゴム部8aと導電ゴム部8bとからなり、押しパイプ10、スプリング11、フランジ12からなる押圧機構によってブッシング3の受容口内部に押圧されて十分な絶縁特性が得られるようになっている。
【0016】
ここで、本実施例のブッシング3は、その中央付近、アース電極9の部分から高圧電極5の下端5aにかかる部分までの電界印加部分3aの外表面が弧状の縦断面形状を有するようにされている。すなわち、電界印加部分3aの外表面はドーム状に外側に張り出しており、その上部において高圧電極5の下端5aの上側に回り込むような形となっている。また、ブッシング3の電界印加部分3aより上に連なる部分はその直径が電界印加部分3aより細くされており、高圧電極5を覆う概略円筒状とされている。
【0017】
また、本実施例においては、アース電極9はブッシング3の外面近傍に位置するように設けられている。すなわち、ブッシング3が外壁2に取り付けられたその根本付近、ストレスコーン8の導電ゴム部8bの上端と機器の外壁2との間に位置する部分に小径部9aを形成し、その段差部から図中上向きにU字状に湾曲する環状凹部を形成する。この環状凹部からフランジ部9bにかけてのブッシング3表面に導電塗料を塗布することでアース電極9とされ、フランジ部9bの部分で機器の外壁2に電気的接触し、また機械的にも固定される。
【0018】
本願発明のガス中終端箱における課電時の等電位面の分布を図3に、また比較のために従来のガス中終端箱における等電位面の分布を図4に示す。図3、図4ともに、高圧部分を太線Aで、アース電位部分を太線Bで表しており、A、Bの間の等電位面を10%間隔にて細線で示している。また図1、2と対応する部分には同一の番号を付している。
【0019】
図3の本願発明においては、ブッシング3の相対的に高い電界が印加する部分の外表面、すなわち高圧電極5の下端5aからアース電極9にかかる部分の外表面が弧状の断面形状を有している。この付近での電気力線の形状は、高圧電極下端5aとアース電極9をつなぐ弧状の力線となるので、ブッシング3の外表面は丁度この電気力線の形状に、おおよそ沿うような形になる。なお、電気力線の向きは等電位面と直行する方向である。図中に矢印で、ブッシング3の外表面における電気力線の向きを示している。本願発明においては矢印とブッシング3の外表面とのなす角度θが、図4に示す従来の例より小さくなる。図中Cで示した高圧側から20%の電位の位置での上記角度θを比較すると、図4の従来例ではθ=75度であるのに対し、図3の本願発明ではθ=45度となっている。
【0020】
このように、ブッシング外表面を上記形状とすることで、電界の印加される部分のブッシング表面が電気力線に沿った形となり、ブッシング表面へ荷電ダスト粒子が到達する確率が減少する。また、ブッシング表面と電気力線とのなす角度が小さいため電気力線はブッシング表面に沿ったベクトル分力をもつこととなる。したがってブッシング表面へ到達した荷電ダスト粒子はそのまま堆積してしまわずに、ブッシング表面に沿って移動し、印加電界の弱い部分まで押しやられると考えられる。
【0021】
また、図4の従来例においては、ストレスコーン8の導電ゴム部8bとアース電極9の位置が接近していることから、この付近がアース電位側の凸部となり電界が集中する傾向がある。ストレスコーン8とブッシング3との接触面に沿った電位分布はアース電位側に行くほど密になり、図4において、アース電位付近の等電位面の間隔d1は、中央付近での間隔d2よりも小さくなっている。ストレスコーンとブッシングとの間の界面での絶縁破壊を防止することはブッシング設計上重要であり、この部分に電界が集中する傾向は望ましくない。
【0022】
一方、図3の例においてはアース電極9をブッシング3の外面近傍に位置させている。これによりアース電位側の凸部が2カ所に分散され、導電ゴム部8bとアース電極9の付近に電界が集中する傾向を緩和することができる。図3においても、アース電位付近の等電位面の間隔d1は、中央付近での間隔d2と同等よりやや広いものとなっている。ストレスコーン8とブッシング3との接触面における沿面の絶縁破壊を防止するには、沿面のなるべく広い範囲に渡って等電位面が均一に分布することが望ましいが、本願発明の構成をとればアース電位付近に電界が集中することを防止することができる。
【0023】
また、本例においてはアース電位側の凸部が2カ所に分散されることとなるので、その相互の位置関係も重要となる。そこで図3において示されるように、ストレスコーン8の導電ゴム部8bの先端の高さ(図中Z)がアース電極9の先端の高さ(図中X)と、アース電極9の後端の高さ(図中Y)の間にあるようにしている。つまり、導電ゴム部8bの先端がアース電極9の先端よりも、やや図中下側となるような配置としている。
【0024】
仮に導電ゴム部8bの先端が、アース電極9の先端よりも図中上側に位置する場合には、その付近に電界が集中する傾向となり、ストレスコーン8とブッシング3との接触面に沿う位置での等電位面の間隔が狭くなることとなる。また、ストレスコーンの裏側にも電界が回り込むこととなり、本来その付近に電界がかかることによる不都合を防止するために設けられたアース電極9が、その機能を果たさないこととなる。一方、ストレスコーン8bの先端がアース電極9の後端よりさらに下側にある場合にはアース電極9の裏側にも電界が回り込んでしまい、また、ストレスコーンが相対的に下方に位置することとなるためガス中終端接続箱が下方向に長く大形化してしまう。なお、本実施例の様にアース電極が外部の外壁等と電気的に接続されているときは、その外壁等の部分もアース電極に準じた働きをすることとなる。
【0025】
試験の結果、本願発明の上記実施例では、15万V級の線路に適用できる耐圧特性が得られている。参考として、本願発明によるケーブル終端構造と、同等の耐圧値を有する従来のケーブル終端構造の外形寸法を図5において対比する。図中(a)は本願発明品、(b)は従来のものである。図5からわかるように、本願発明によればケーブル終端構造の外形寸法を大幅に小さくすることができ、従来品と比較した場合には、各部設計の最適化とも相まって、50%近い寸法の小型化が達成されている。また、本願発明においてはブッシング3上部の電界印加部分3aより上に位置する部分はその直径が電界印加部分3aより細くされ、高圧電極5を覆う概略円筒状とされている。従ってブッシング3の肉厚が薄くされており、ブッシングの軽量化とエポキシ絶縁材料の使用量の低減が図られている。
【0026】
なお、本願発明は上記実施例の形態にとらわれるものではない。上記実施例では、ブッシングの電界印加部分の外表面を弧状の縦断面形状とすることで、ブッシングの電界印加部分の外表面と電気力線とのなす角度が45度を超えない様にしている。この弧状の断面形状はより曲率を小さくして丸みの強いものとすることができ、これによりブッシング外表面と電気力線とのなす角度をさらに鋭角とし、本発明の効果を増すことができる。また上記においては、実施例としてガス中ケーブル終端接続構造をあげているが、本願発明は油中ケーブル終端構造にも適用可能である。油中においてもガス中と同様の現象が生じることから、本願発明はその効果を有するものである。
【0027】
【発明の効果】
上述のように本願発明によれば、電力機器と電力ケーブルの接続部に用いられるケーブル終端接続構造において、ブッシング表面及びストレスコーンとブッシングの沿面での特性を向上させることで高い耐電圧特性を得ることができる。また従来と同等の耐電圧特性を得る場合には、ケーブル終端接続構造を小型軽量化することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明のケーブル終端接続構造の概要を示す説明図である。
【図2】従来のケーブル終端接続構造の概要を示す説明図である。
【図3】本願発明のケーブル終端接続構造における課電時の等電位面の分布を示す図である。
【図4】従来のケーブル終端接続構造における課電時の等電位面の分布を示す図である。
【図5】本願発明によるケーブル終端構造と従来のケーブル終端構造を対比する説明図である。
【符号の説明】
1 ガス中接続箱
2 外壁
3 ブッシング
4 ケーブル
5 高圧電極
8 ストレスコーン
9 アース電極
Claims (1)
- 電力機器にケーブルを接続するために設けられるケーブル終端接続構造であって、
前記電力機器の外壁に密閉して取り付けられ機器外部より挿入される前記ケーブルの端部を受容する絶縁体製のブッシングと、
前記ブッシング中に設けられ前記ケーブルの導体と電気接続される高圧電極と、
前記ケーブルと前記ブッシングの間に嵌挿されるストレスコーンと、
前記ブッシングに設けられ前記ストレスコーンの外周に位置するアース電極とを備えるものにおいて、
前記アース電極は、前記ブッシングの外面の前記ストレスコーンの外周に位置する部分に小径部を形成し、当該小径部とその高圧電極側に位置する非小径部との段差部分にU字状に湾曲する環状凹部を形成するとともに、この凹部の湾曲面から前記小径部にかけて導電層を形成してなり、
前記ブッシングの外面は、前記アース電極の高圧電極側端部の周外面から前記高圧電極のアース電極側端部の周外面にかけて、外側に張り出した弧状縦断面形状とされていることを特徴とするケーブル終端接続構造。
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