JP4253144B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、クランクケース清浄性を向上させた潤滑油組成物、特に、4-ストロークトランクピストン又は2-ストローククロスヘッド船舶エンジン等の中速又は低速ディーゼルエンジン等のアスファルテン成分を含有する燃料を燃焼させるエンジンに適した潤滑油組成物に関する。
【従来の技術】
製造業者は、通常、硫黄及びアスファルテン成分含有量の少ない良質の軽質留出燃料から、通常硫黄及びアスファルテン成分の高い“バンカーC”又は残留燃料といった質の劣る中間体又は重質燃料まで広範囲のディーゼル燃料を使用するように船舶ディーゼルエンジンを設計する。そのようなエンジンに使用される潤滑剤はしばしば燃料由来のアスファルテン成分で汚染されている。これにより、運転中にエンジン清浄性の深刻な問題(“ブラックペイント”と呼ばれることもある)を引き起こしたり、汚れたカムボックス、ピストンスクレーパーリングにおける沈殿物及びクランクケース壁上でのスラッジ被覆が見られる4-ストロークトランクピストンエンジンで特に広まっている問題を引き起こす。さらに、潤滑剤取扱系、例えば、ヒーター、フィルター及び遠心機が良好には機能し得ない。そのような問題は4-ストロークエンジンに限られない;2-ストローククロスヘッドエンジンもまた影響され得る。
【0002】
EP-A-0662,508及びEP-A-0 708 171には、上記問題の対処方法が記載されているが、これは金属塩を含有する化合物を使用する。これは、工業的な動向及びニーズを考慮すると、灰分含有量、すなわち金属含有量の少ない潤滑油組成物を使用する方向への問題を構成する。
EP-A-0731,158には、残留油成分と共に燃料油を含有する低速又は中速ディーゼルエンジンに使用するのに適した潤滑油組成物であって、さらに、高温におけるヒドロカルビル−置換無水コハク酸とセリン又はアミノサリチル酸との反応により得られる生成物の量を減少させた“ブラックペイント”を含有することを特徴とする潤滑油組成物が記載されている。そのような製品は、例えば、US-A-5 266 081に記載されているようにして製造されるアミノサリチル酸誘導体の場合、フリーのカルボキシ基及びヒドロキシ基を有するイミドである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、EP-A-0 731 158に記載されているものとは異なる無灰化学品であって、潤滑剤の対費用効果を向上させることのできる組成物を使用することにより上述の問題の解決方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
ここで、ある構造特徴を有する化合物が、船舶潤滑油組成物中でアスファルテン成分を効果的に懸濁でき、それによりクランクケース清浄性を向上できることが分かった。
【0004】
従って、本発明の第一の観点は、低速又は中速ディーゼルエンジン用船舶エンジン潤滑油組成物であって、
残留燃料成分と共に少量の燃料油を含有する潤滑粘度の多量の油、及び
それと混合させた、少なくとも一種の少量の油溶性又は油分散性無灰有機化合物であって、少なくとも2つの隣接する置換可能な炭素原子が、芳香族基の一部であるか又は二重結合により連結されており、各炭素原子がO−又はO−及びN−含有官能基を有し、両基がカルボキシル基から誘導される前記油溶性又は油分散性無灰有機化合物
を含有する前記船舶エンジン潤滑油組成物を提供することである。
【0005】
本発明の第二の観点は、クロスヘッド又はトランクピストンエンジン等の低速又は中速ディーゼルエンジンにおいて使用したとき、組成物中でアスファルテン成分を懸濁させるための、潤滑油組成物における請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物の使用を提供することである。
本発明の第三の観点は、クロスヘッド又はトランクピストンエンジン等の低速又は中速ディーゼルエンジンに第一又は第二の観点の潤滑油組成物を供給することを含む、クロスヘッド又はトランクピストンエンジン等の低速又は中速ディーゼルエンジンを潤滑する方法を提供することである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴を以下に詳細に記載する。
船舶エンジン
本発明の潤滑油組成物は、エンジンスピードが200〜2,000rpm、例えば400〜1,000rpmであり、ブレーキ馬力(BHP)/シリンダーが50〜3,000、好ましくは100〜2,000であるような4−ストロークトランクピストンディーゼルエンジンおいて使用するのに適用であり得る。本発明の潤滑油組成物はまた、エンジンスピードが40〜200rpm、好ましくは60〜120rpmであり、BHP/シリンダーが500〜10,000であるような2−ストローククロスヘッドディーゼルエンジンにおいて使用するにも適当であり得る。補助動力発生アプリケーションに使用するエンジン又は陸地ベース動力発生アプリケーションに使用するエンジンにもまた適当である。エンジンは、4−ストロークトランクピストンディーゼルエンジンであるのが好ましい。本明細書において、“低速ディーゼルエンジン”は、2−ストローククロスヘッドディーゼルエンジンをいい、“中速ディーゼルエンジン”は、4−トランクピストンディーゼルエンジンをいう。
【0007】
潤滑油
潤滑粘度の油(潤滑油と称する場合もある)は、クロスヘッドエンジン又はトランクピストンエンジンを潤滑するのに適当なあらゆる油であり得る。潤滑油は、動物油、植物油又は鉱油であるのが適当である。潤滑油は、ナフテン基油、パラフィン基油又は混合基油等の石油誘導潤滑油であるのが適当である。また、潤滑油は、合成潤滑油であり得る。適当な合成潤滑油としては、ジ−オクチルアジペート、ジ−オクチルセバケート又はトリ−デシルアジペート等のジエステルを含む合成エステル潤滑油、又は例えば、液体ポリイソブテン及びポリ−アルファオレフィンといったポリマー炭化水素潤滑油があげられる。通常、鉱油が使用される。潤滑油は一般的に、組成物の60質量%より多い量、典型的には70質量%より多い量を含有し、2〜40mm2-1、例えば3〜15mm2-1の100℃における動粘度及び80〜100の粘度指数、例えば90〜95の粘度指数を有し得る。
【0008】
別のクラスの潤滑油は、水素の存在下、高温、中圧で中間留出物及び重質留出物をさらに精製工程で分解した水素化分解油である。水素化分解油は、典型的には100℃において2〜40mm2-1、例えば3〜15mm2-1の動粘度を有し、典型的には100〜110、例えば105〜108の範囲の粘度指数を有する。
一般的には100℃における動粘度が28〜36mm2-1である減圧残油から溶媒抽出し、脱アスファルト化した製品である基油もまた本発明において使用するのに適当である。そのような基油は、典型的には組成物の質量を基準として、30質量%未満、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%未満、最も好ましくは10質量%未満の割合で使用する。
【0009】
無灰化合物
本発明の化合物は無灰有機化合物である。すなわち、本発明の化合物は、金属を含有せず、燃焼後にも灰分をほとんど又は全く残さない。
置換可能な隣接する炭素原子は、官能基を有する置換基を有することができ、鎖又は環の一員として互いに直接結合しているか又は置換不可能な架橋原子を介して結合している炭素原子をいう。
いかなる理論にも拘束されるのを望まないが、隣接する炭素原子の重要性は、該炭素原子により化合物が複合体化することができ、それにより残留油中に存在する夾雑物を溶解する能力を向上させることができることであると考えられる。また、官能基に存在するO及び/又はN原子の存在の重要性は、アスファルテンの表面に存在することが知られているO−及びN−ベース官能性との相互作用を促進することである。
【0010】
使用する場合、芳香族基は、炭化水素であり得るか又はその環原子に炭素及び水素以外の一以上の酸素、窒素及び硫黄等の原子を含有することができる。芳香族基は、一環又は融合多環を含む多環であり得る。芳香族基の好ましい例としては、官能基が互いにオルト位にある場合、ベンゼン、官能基が1−及び8−位にそれぞれ存在するときはナフタレンがあげられる。
官能基としては、例えばエステル基があげられる。官能基は、好ましくは1〜20、例えば1〜16、例えば2〜10個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基を含有することができる。ヒドロカルビル基は、アリール、アルキル又はアルキルアリール基であり得る。ヒドロカルビル基は、直鎖又は分岐アルキル基であるのが好ましい。
従って、少なくとも一つ、好ましくは両方の官能基がエステル基COOR(式中、Rは上述のアルキル基である)であるのが有利である。
【0011】
特に好ましい無灰有機化合物は、フタル酸エステルである。フタル酸エステルは、低速又は中速ディーゼルエンジンに使用したときにアスファルテン成分を懸濁するのに特に効果的であることが分かった。モノ−及びジ−エステルを含むフタル酸エステルの適当な例としては、アルキル基の炭素数が1〜20、例えば1〜10、好ましくは2〜20のエステルがあげられる。エステルのアルキル基は直鎖又は分岐鎖であり得る。該エステルの粘度特性は、上述の潤滑油の粘度特性と同等であり得る。従って、潤滑油の一部として該エステルを本発明の潤滑油組成物に含ませることができる。フタル酸エステルを使用するとき、組成物の質量を基準として、2質量%を超える量で、例えば4質量%を超える量で、有利には5質量%を超える量で存在するのが好ましい。
【0012】
本明細書において、ヒドロカルビルは、残りの置換基に直接結合している炭素原子を有する置換基をいい、本発明においてその特徴が主として炭化水素に関するものである置換基である。
油溶性又は油分分散性灰分化合物は、当業界で公知の方法により製造することができる。
本明細書において使用した用語“油溶性”又は“油分分散性”は、化合物又は添加剤がどのような割合でも油に可溶であり、溶解可能であり、混和性であり又は懸濁できることを必ずしも意味しない。しかしながら、これらの化合物又は添加剤は、例えば、油が使用される環境において意図される効果を発揮するのに十分な程度に可溶性であるか又は安定に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を更に添加することにより、所望により、より高レベルの特定化合物又は添加剤を含ませることができる。
【0013】
潤滑油組成物
本発明の潤滑油組成物は、100までのTBN、例えば15〜100、より好ましくは30〜60、例えば40〜55の範囲のTBNを有するのが好ましい。本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、少なくとも90、より好ましくは少なくとも95、及び多くても140、例えば120、好ましくは110であるのが好ましい。好ましい粘度指数範囲は95〜115である。
本発明の潤滑油組成物は、例えば、100℃における動粘度(ASTM D445により測定)が少なくとも9mm2-1、好ましくは少なくとも13mm2-1、より好ましくは14〜24mm2-1の範囲、例えば14〜22mm2-1であり得る。
【0014】
燃料油は、2つの大きなカテゴリー、すなわち留出物燃料と重質燃料とに分類することができる。留出物は、一以上の留出画分を含有する。重質燃料は、少なくとも一部の残留油(留出画分を未精製油から除去した後に残る油)を含有する燃料である。残留油の組成は、出発油(通常は原油)の組成により、及び蒸留条件に応じて変化する。しかしながら、その本来の性質により、残留油は高分子量及び高沸点を有し、当業者であれば残留油が何を意味するのか理解するであろう。重質燃料もまた、残留油に加えて、留出物を含有することができる。しかしながら、重質燃料は、少なくとも90質量%、例えば少なくとも95質量%、典型的には少なくとも99質量%の残留油を含有することができる。潤滑油組成物は、本発明の潤滑油組成物の質量を基準として、例えば、0.1〜25質量%、例えば0.1〜10質量%、特に0.3〜5質量%、さらに特に0.5〜3質量%中の重質燃料を含有し得る。
【0015】
本発明の化合物は、その意図する目的を果たすのに十分な量で、好ましくは本発明の潤滑油組成物の質量を基準として少なくとも0.001質量%(有効成分)の量で潤滑油組成物中に存在する。本発明の化合物は、本発明の潤滑油組成物の質量を基準として、0.001〜25質量%、特に0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、例えば1〜7質量%で存在するのが有利である。
本発明の全ての観点に関連して、潤滑油組成物は、混合の前後で化学的に同じままであり得るか又はあり得ない規定の化合物、及びエンジンにおいて使用している間化学的に同じままであり得るか又はあり得ない規定の化合物を含有する。得られる化合物はまた、本発明の範囲内である。
本発明の潤滑油組成物はさらに、一以上の他の潤滑油添加剤、例えば以下に記載するものを含有することができる。
【0016】
個々の添加剤を、任意の都合のよい方法でベースストックに含ませることができる。従って、所望の濃度レベルで各成分をベースストックに分散又は溶解することにより各成分をベースストックに直接添加することができる。そのようなブレンドは周囲温度でも高温でも行うことができる。
好ましくは、流動点降下剤以外の添加剤は全て、後にベースストックにブレンドして最終潤滑油組成物を製造するための添加剤パッケージにブレンドすることができる。慣習的に、そのような添加剤パッケージを使用する。添加剤パッケージは、典型的には、該パッケージを所定量のベース潤滑剤と組み合わせたときに最終組成物における所望の濃度を提供する適当量で添加剤を含有するよう処方する。
添加剤パッケージは約60℃でブレンドすることにより製造するのが便利である。
他の添加剤の中で、以下のものがあげられる:
【0017】
無灰分散剤は、粒子と会合して分散させることができる官能基を有する油溶性ポリマー炭化水素主鎖を含有することができる。典型的には、無灰分散剤は、多くは架橋基を介してポリマー主鎖に結合しているエステル極性基、アミン、アルコール又はアミドを含有する。無灰分散剤としては、例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はその無水物の油溶性の塩、エステル、アミノ−エステル、アミド、イミド及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;直接結合しているポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素;及び長鎖置換フェノールとホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンとを縮合することにより形成されるマンニッヒ縮合生成物から選ぶことができる。
【0018】
金属含有清浄剤又は灰形成清浄剤は、沈殿物を減少又は除去するための清浄剤として、及び酸中和剤又は防錆剤として作用し、それにより磨耗及び腐食を減らし、エンジン寿命を延ばす。清浄剤は一般的に、長い疎水性テールを有する極性ヘッドを含有する。極性ヘッドは酸有機化合物の金属塩を含有する。該塩は、通常正塩又は中性塩として記載される実質的に化学量論量の金属を含有することができ、典型的には、ASTM D−2896により測定される0〜80の全塩基価(TBN)を有する。酸化物又は水酸化物等の過剰の金属化合物を二酸化炭素等の酸性ガスと反応させることにより、多量の金属塩基を含有することができる。得られる過塩基化清浄剤は、金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層として中和された清浄剤を含有する。そのような過塩基化清浄剤は、150以上のTBN、典型的には250〜600のTBN、例えば350〜450の範囲のTBNを有することができる。
【0019】
使用できる清浄剤としては、油溶性中性及び過塩基化スルホネート、フェナート、硫化フェナート、チオホスホナート、サリチレート及びナフテネート及び金属、特にアルカリ又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウム等の他の油溶性カルボキシレートがあげられる。最も一般的に使用される金属はカルシウム及びマグネシウムであり、いずれも潤滑油組成物中で使用される清浄剤中に存在することができ、カルシウム及び/又はマグネシウムとナトリウムとの混合物であり得る特に便利な金属清浄剤は、TBNが20〜600の過塩基化及び中性カルシウムスルホネート、及びTBNが50〜600の過塩基化及び中性カルシウムフェナート及び硫化フェナートである。特に好ましい過塩基化清浄剤は、界面活性剤系において一以上の界面活性剤を含有するものである。すなわち、フェノール、スルホン酸及び/又はサリチル酸から誘導される界面活性剤を含有する清浄剤である。そのような清浄剤は、PCT出願であるWO97/46643、WO97/46644、WO97/46645、WO97/46646及びWO97/46647に記載されている。
【0020】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、磨耗防止剤及び酸化防止剤として頻繁に使用されている。該金属はアルカリ又はアルカリ土類金属、或いはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅であり得る。本発明の潤滑油組成物の全質量を基準として、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量で、潤滑油中、亜鉛塩が最も一般的に使用されている。これらの金属塩は、公知の方法により、通常一以上のアルコール又はフェノールとP25とを反応させることによりまずジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次いで形成されたDDPAを亜鉛化合物で中和することにより製造することができる。例えば、ジチオリン酸は、第一級及び第二級アルコールの混合物を反応させることにより製造することができる。また、一のヒドロカルビル基が完全に二級の特徴を有し他のヒドロカルビル基が完全に一級の特徴を有する多様なジチオリン酸を製造することができる。亜鉛塩を製造するために、あらゆる塩基性又は中性亜鉛化合物を使用することができるが、酸化物、水酸化物及び炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応において過剰の塩基性亜鉛化合物を使用するため、しばしば過剰の亜鉛を含有する。
【0021】
酸化防止剤は、運転中に鉱油が劣化するのを減少させる。そのような劣化の証拠は、例えば、金属表面上でのワニス状沈殿物の生成及びスラッジの生成、及び粘度増加があげられる。適当な酸化防止剤としては、硫化アルキルフェノール及びそれらのアルカリ又はアルカリ土類金属塩;ジフェニルアミン;フェニル−ナフチルアミン;及びホスホ硫化又は硫化炭化水素があげられる。
本発明の潤滑油組成物中で使用できる他の酸化防止剤は油溶性銅化合物を含有する。任意の適当な油溶性銅化合物として油中に銅をブレンドすることができる。油溶性とは、化合物が油又は添加剤パッケージ中、通常のブレンド条件下で油溶性であることを意味する。銅は、例えばジヒドロカルビルチオ−又はジチオリン酸銅の形態であり得る。また、合成又は天然カルボン酸、例えば、C8〜C18脂肪酸、不飽和酸又は分岐カルボン酸の銅塩として銅を添加することができる。油溶性ジチオカルバミン酸銅、スルホン酸銅、石炭酸銅、及びアセチルアセトン酸銅もまた有用である。特に有用な銅化合物の例としては、アルケニルコハク酸又はその無水物から誘導される塩基性、中性又は酸性のCuI及び/又はCuII塩があげられる。
【0022】
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオール及びそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、及び陰イオン性スルホン酸からなる群から選ばれる防錆剤を使用することができる。
流動点降下剤は、潤滑油流動向上剤としても知られているが、流体が流れるか又は流動することができる最低温度を下げる。そのような添加剤は周知である。流体の低温流れを向上させる添加剤の例としては、C8及びC18ジアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキルメタクリレート等があげられる。
上述の添加剤の幾つかは、当業界において知られているように、多様な効果を奏することができる。
本発明の化合物は、以下の表に記載した量で、上述した一以上の補助添加剤と一緒になって有用であるのが好ましい。
本発明はまた、高レベルの中性又は過塩基化金属サリチレート清浄剤を使用することなく、クランクケース清浄性を向上し、ピストンスクレーパー沈殿物を減少させる船舶潤滑油組成物を提供する。
TPEO(トランクピストンエンジン油)用添加剤の典型的な割合は以下の通りである。
表1
Figure 0004253144
*最終油を基準とした有効成分の質量%
【0023】
MDCL(船舶ディーゼルシリンダー潤滑剤)用添加剤の典型的な割合は以下の通りである。
表2
Figure 0004253144
*最終油を基準とした有効成分の質量%
【0024】
複数の添加剤を使用するときは、添加剤を含有する一以上の添加剤パッケージを準備し、それにより数種の添加剤を同時に基油に添加して潤滑油組成物を形成するのが望ましいが、必須ではない。溶媒を使用するか又は穏やかに加熱しながら混合すると添加剤パッケージを潤滑油に容易に溶解させることができるが、これらは必須ではない。添加剤パッケージは典型的には所望の濃度を提供し、及び/又は添加剤パッケージを所定量のベース潤滑剤と一緒にしたときに最終組成物中で意図する機能を有するよう適当な量で添加剤を含有するよう配合する。従って、本発明の化合物は、他の所望の添加剤と共に少量の基油又は他の混和性溶媒と混合し、添加剤パッケージを基準として、有効成分を例えば添加剤の2.5〜90質量%、好ましくは5〜75質量%、最も好ましくは8〜60質量%の量で適当な割合で含有し、残部が基油である添加剤パッケージとすることができる。
【0025】
最終組成物は典型的には約5〜40質量%の添加剤パッケージを含有することができる。なお、残部は基油である。
所望により、本発明の油溶性又は油分散性無灰有機化合物は、過塩基化金属清浄剤に含ませて提供することができる。そのような金属清浄剤は、フェナート、スルホネート、サリチレート又はナフテネート等の一以上の界面活性剤により油性媒体中でコロイド状に分散しており、本件明細書中に詳述した炭酸カルシウム等の塩基を含有する。
本発明の無灰有機化合物を、例えば以下に記載したようなプロセス液体として使用することにより、清浄剤を製造中に、本発明の無灰有機化合物を過塩基化金属清浄剤に含ませることができる。塩基性酸化物(水酸化物)、界面活性剤、極性溶媒及び炭化水素溶媒のスラリーをCO2により炭酸塩化し、水酸化物をコロイド状分散炭酸塩に変換する;無灰有機化合物を添加し、溶媒をストリップする;続けて濾過することにより無灰有機化合物を含む最終清浄剤製品を得る。
【0026】
実施例
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
潤滑剤サンプル
トランクピストンエンジンオイル潤滑剤を、潤滑基油(90質量%)及びテストエステル(10質量%)を含有するようブレンドした。種々のフタル酸エステルを含有するサンプル1〜5を製造した。商業的に入手でき、残留燃料を溶解することが知られているサリチレート−エステル含有潤滑剤である比較サンプル、サンプルAもまた試験した。
【0027】
試験方法
本発明の潤滑油組成物又は潤滑剤が残留燃料を溶解する性能を以下の方法により測定した。
残留燃料(10質量%)を60℃においてテスト潤滑剤サンプルにブレンドし、得られたブレンドを減圧下で濾紙上に濾過し、Bosch光度計を使用して濾紙を透過する光を測定した。測定は、濾紙の中心(Aとする)及び濾紙上の4つの周辺部0、90、180及び270度(平均をBとする)において行った。測定は、0.1〜10のスケールで光度計のスケール単位として表し、A−Bとして記録した。透過した光を対照と比較した;透過光の減少は濾紙上に捕集された沈殿物から生じ、試験潤滑剤が燃料を溶解する能力の指標を提供する;減少が小さくなると、燃料溶解能は大きくなる。
【0028】
結果
これらを以下にまとめた。
表3
Figure 0004253144
この結果により、本発明のサンプル1〜5が、残留燃料を溶解させるのに有効であることが分かる。その効果は、商業的に入手できる試料Aの効果と同等である。

Claims (7)

  1. 中速ディーゼルエンジン用船舶エンジン潤滑油組成物であって、
    TBNが15〜55であり、かつ、
    残留燃料分を含む少量の燃料油を含有する、潤滑粘度の多量の油、及び
    それと混合させた、少なくとも一種の少量の油溶性又は油分散性フタル酸エステルであって、ベンゼン環の一部を構成する少なくとも2つの隣接する置換可能な炭素原子を有し、各炭素原子は独立してエステル基COOR(式中、Rはアルキル基である)を有する前記油溶性又は油分散性フタル酸エステル
    を含有する前記船舶エンジン潤滑油組成物。
  2. フタル酸エステルが、組成物の質量を基準として2質量%より多い量で存在する請求項1記載の組成物。
  3. フタル酸エステルが、組成物の質量を基準として4質量%より多い量で存在する請求項1記載の組成物。
  4. フタル酸エステルが、組成物の質量を基準として5質量%より多い量で存在する請求項1記載の組成物。
  5. 組成物のTBNが30〜55である請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
  6. 中速ディーゼルエンジンに請求項1〜5のいずれか1項記載の潤滑油組成物を供給することを含む、中速ディーゼルエンジンを潤滑する方法。
  7. 中速ディーゼルエンジンが、トランクピストンエンジンである請求項記載の方法。
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