【発明の詳細な説明】
過塩基性アルキル化アルキルサリチレート
〔技術分野〕
本発明は、内燃機関で用いられる潤滑油組成物で用いるのに適した過塩基性生
成物である過塩基性アルキル化アルキルサリチレート(overbased alkylated al
kyl salicylate)に関する。特に、これらの添加剤は、そのような潤滑油組成物
に水許容性、熱安定性、清浄性、相溶性、及び良好な酸化性能を与える。
〔背景技術〕
過塩基性アルキル化サリチレートは、内燃機関の潤滑に用いられる潤滑油組成
物に改良された性能(清浄性、水許容性、熱安定性、抗酸化性)を与えることで
知られた一種の潤滑油清浄剤である。
過塩基性サリチレートは、対応するアルキル化サリチル酸を過塩基性にするこ
とにより製造され、そのアルキル化サリチル酸は典型的には先ずフェノールをア
ルキル化してアルキルフェノールを形成し、次にコルベ・シュミット(Kolbe-Sc
hmitt)反応によりカルボキシル化してアルキル化サリチル酸を与えることによ
り製造されている。アルキル基は、油溶性を与えるように、約14個より多い炭
素原子を有する長鎖アルキル基であるのが典型的である。
実質的に直鎖のアルキル化用供給物を用いた場合、この合成方法で起きる一つ
の問題は、その長鎖アルキルフェノールの全てがコルベ・シュミット反応により
容易にカルボキシル化されるとは限らないことである。特に、実質的に直鎖のア
ルキル化用供給物によるフェノールの慣用的アルキル化は、ほぼ50:50のオ
ルトアルキルフェノールとパラアルキルフェノールとの混合物を与える。コルベ
・シュミット反応は、その得られた長鎖パラアルキルフェノールを容易にカルボ
キシル化するが、得られた長鎖オルトアルキルフェノールは反応性が低く、この
反応中、実質的に直鎖のアルキル化用供給物から誘導されたアルキルフェノール
の全量の約70%しかアルキル化サリチル酸に転化しないのが典型的である。
この問題を回避する一つの方法は、アルキルサリチレート(例えば、メチルサ
リチレート)をアルキル化し、次に得られたアルキル化アルキルサリチレートを
加水分解にかけ、アルキル化サリチル酸を与えることである。アルキルサリチレ
ートをアルキル化する方法は、代理人書類番号(Attorney Docket No.)005
950−367として本願と同時に出願された「長鎖炭素供給物を用いたアルキ
ルサリチレートのアルキル化(ALKYLATION OF ALKYL SALICYLATE USING A LONG
CHAIN CARBON FEED)」と題する米国特許出願Serial No.08/
(この出願は参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。
この後者の合成方法は、アルキルサリチレートを形成し、そのアルキルサリチ
レートをアルキル化してアルキル化アルキルサリチレートを形成し、次に加水分
解してアルキル化サリチル酸を形成することを含んでいる。アルキル化アルキル
サリチレートを加水分解してアルキル化サリチル酸を形成することは、過塩基性
生成物を後で形成するために必要であると考えられている。なぜなら、カルボキ
シル(−COOH)基が、過塩基性化中、必須の成分であると見做されているか
らである。特に過塩基性生成物は、過剰の(即ち、サリチル酸の酸性部位の全て
を中和するのに必要な量よりも多くの)塩基性金属を添加し、任意に二酸化炭素
を用いて製造され、カルボキシル基はアルキル化されたサリチル酸の、過剰の塩
基性金属及び二酸化炭素を恐らくキレート化により取り入れる能力に本質的な役
割を演ずると考えられている。
本発明は、一つには、アルキル化アルキルサリチレートを、エステル官能基を
加水分解することなく過塩基性にして潤滑油組成物で用いるのに適した過塩基性
潤滑油添加剤を与えることが出来ると言う発見に関係している。この発見は、本
発明の過塩基性生成物がカルボキシル(−COOH)官能基を欠き、むしろエス
テル(−COOR)官能基(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキルである)
を有すると言う事を考慮に入れると特に驚くべきことである。
〔発明の開示〕
本発明は、一つには、アルキル化アルキルサリチレートを、エステルを加水分
解することなく直接過塩基性にすることができ、そのような過塩基性生成物が、
最終的潤滑油組成物中で清浄化性、アルカリ性維持源等を示す新規な種類の潤滑
油添加剤を与えると言う発見に基づいている。
従って、その組成物の一つの態様として、本発明は、0より大きく約300ま
でのTBNを有する潤滑油可溶性の過塩基性アルキル化アルキルサリチレート添
加剤組成物に関する。
組成物の別の態様として、本発明は、
(a) アルキル化アルキルサリチレート/希釈剤組成物の全重量に基づき約
15〜約50重量%のアルキル化アルキルサリチレートを希釈剤中に混合し、こ
こに該アルキル化アルキルサリチレートは式:
(式中、Rは1〜約6個の炭素原子を有するアルキルであり;R′は約15〜約
50個の炭素原子を有するアルキル基であり;nは1〜2の整数である。)
を有し;
(b) 上記(a)で生成した組成物中に、前記アルキル化アルキルサリチレ
ートを中和するのに必要な量より過剰量のアルカリ土類金属を前記サリチレート
に配合する条件で、充分な量のアルカリ土類金属塩基を混入し;そして
(c) 任意に、アルキル化アルキルサリチル酸1モル当量に基づき約0.1
〜約1.5モル当量の二酸化炭素と、二酸化炭素が組成物中に配合される条件下
で接触させる;
ことからなる方法により製造された、0より大きく約300までのTBNを有す
る、潤滑油に可溶性の過塩基性アルキル化アルキルサリチレート組成物に関する
。
組成物の更に別の態様として、本発明は、潤滑性粘度の油と、約2〜約30重
量%の、0より大きく、約300までのTBNを有する過塩基性アルキル化アル
キルサリチレート添加剤組成物とからなる潤滑油組成物に関する。
〔好ましい態様についての詳細な記述〕
本発明は、潤滑油組成物に有用な添加剤である新規な過塩基性アルキル化アル
キルサリチレート組成物に関する。しかし、本発明を詳細に諭ずる前に、次の用
語を最初に定義しておく。
定義
ここで用いる用語「全塩基価(Total Base Number)」又は「TBN」とは、
添加剤1g中のKOHのmgに等価な塩基の量を指す。従って、TBN数が高い
程、一層アルカリ性の生成物であることを示し、従って、一層強力なアルカリ性
維持剤であることを表している。添加剤組成物の全塩基価は、ASTM試験法D
2896又は他の同等な方法により容易に決定される。
用語「アルカリ土類金属」又は「第II族金属」は、カルシウム、バリウム、マ
グネシウム及びストロンチウムを意味する。第II族金属はカルシウム、マグネシ
ウム、バリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。
第II族金属はカルシウムであるのが最も好ましい。
用語「アルカリ土類金属塩基」とは、過塩基性アルキル化アルキルサリチレー
トを製造する際に用いるのに適した塩基性アルカリ土類金属材料を指し、例とし
てアルカリ土類金属酸化物、水酸化物、及びC1〜C6アルコキシドが含まれる。
用語「アルキルサリチレート」とは、式:
(式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。)
の化合物を指す。Rは1〜3個の炭素原子を有するアルキル基であるのが好まし
く、Rはメチルであるのが最も好ましい。
用語「アルキル化アルキルサリチレート」とは、長鎖炭素供給物でアルキル化
されたアルキルサリチレートを指し、そのアルキル化生成物は、式:
(式中、Rは上で定義した通りであり;R′は約15〜50個の炭素原子を有す
るアルキル基であり;nは1〜2の整数であり、1であるのが好ましい。)によ
って表すことができる。好ましい態様として、生成物中のジアルキル化量は約5
%以下に維持される。
用語「過塩基性アルキル化アルキルサリチレート組成物」とは、アルキル化ア
ルキルサリチレートと、そのアルキル化アルキルサリチレートの酸性部位を中和
するのに必要な量より過剰量のアルカリ土類金属塩基と、任意に更に二酸化炭素
とを反応させることにより製造された組成物を指す。そのような過塩基性生成物
は、0より大きく、好ましくは約300以下のTBNを有することを特徴とする
。
ここに記載する過塩基性アルキル化アルキルサリチレート組成物は、希釈剤を
含んでいてもよく、用語「過塩基性アルキル化アルキルサリチレート組成物」と
は、そのような希釈剤を含む組成物も含めた意味を有する。典型的には、そのよ
うな組成物は幾らかな希釈剤を含むように製造され、製造後、その希釈剤を除去
するか又は置換することができ、或は更に或る量の希釈剤を添加して、好ましく
は0〜約40重量%の希釈剤を有する添加剤組成物を与えることもできる。その
ようなものとして、これらの添加剤組成物は、内燃機関で用いるのに適した完全
に配合した潤滑剤組成物を与えるように、潤滑油に他の添加剤と一緒にほんの少
量だけ添加すればよい濃厚な過塩基性アルキル化アルキルサリチレートを含んで
いる。
用語「実質的に直鎖のアルキル基」とは、第二、第三、又は第四炭素原子によ
りアルキルサリチレートのベンゼン環に結合し、アルキル基の残りの炭素原子中
に最少の分岐を含むアルキル基を意味する(即ち、残り炭素原子の20%未満は
アルキル基の分子構造中の第三及び(又は)第四炭素原子である)。適当な実質
的に直鎖のアルキル基には、例えば、1−ヘキサデシル−[CH2(CH2)14C
H3](炭素原子の0%が第三又は第四炭素原子である)、4−メチル−1−ヘ
キサデシル−[CH2(CH2)2CHCH3(CH2)11CH3](炭素の7%未満
が分岐している)等が含まれる。
実質的に直鎖のアルキル基は、アルキル基の残り中に含まれる第三及び(又は
)第四炭素原子が15%未満であるのが好ましく、一層好ましくは10%未満で
あり、更に一層好ましくは5%未満であり、実質的に直鎖のアルキル基がそのア
ルキル基の残りの中に第三又は第四炭素原子を含まないのが最も好ましい。
用語「油溶性」とは、添加剤が、基本の10W40潤滑油中に20℃で少なく
とも50g/kg、好ましくは少なくとも100g/kgの溶解度を有すること
を意味する。
方法
本発明の方法では、アルキル化アルキルサリチレートを、過剰の量のアルカリ
土類金属塩基(例えば、アルカリ土類金属酸化物、水酸化物、又はC1〜C6アル
コキシド)、及び任意に二酸化炭素で過塩基性にする。
特に、本発明の方法では、アルカリ土類金属塩基をアルキル化アルキルサリチ
レートと、そのような塩基の使用量がアルキル化アルキルサリチレートの酸性部
位を中和するのに必要な量より過剰量の条件下で一緒にし、更に過塩基性生成物
の塩基度を高くするため任意に二酸化炭素を用いてもよい。そのような過塩基性
生成物は、0より大きく、好ましくは約300以下のTBNを有することを特徴
する。
反応は、アルカリ土類金属塩基がアルキル化アルキルサリチレート中に配合さ
れる条件下で不活性希釈剤中で行うのが好ましい。好ましくは反応は約20℃〜
約100℃の温度で行い、約0.2〜約5時間以内で完了するのが好ましい。ア
ルキル化アルキルサリチレートの使用量は、好ましくは希釈剤及びアルキル化ア
ルキルサリチレートの全使用量に基づき約5〜約50重量%、一層好ましくは約
15〜約50重量%である。
どのような理論にも限定されるものではないが、アルカリ土類金属塩基はサリ
チレートのヒドロキシル基によって配合され、エステルのカルボニル基はその配
合を促進するのに関与すると考えられる。
実際にアルキル化アルキルサリチレート中に配合することができるアルカリ土
類金属塩基の量は、一般に0より大きく、約100より小さく、好ましくは約5
0より小さいTBNを有する生成物を与えるように限定される。それにも拘わら
ず、そのような生成物は過塩基性生成物であるが、約100より大きなTBNを
有する生成物を製造するためには更に二酸化炭素を使用する必要がある。また、
0より大きく約100までのTBNを有する過塩基性組成物を製造するのに二酸
化炭素を用いてもよいが、必ずしもその必要はない。
アルカリ土類金属塩基の使用量は、アルキル化アルキルサリチレートの使用量
に基づき約0.6〜約2.5モル当量であるのが好ましい。この範囲で、アルカ
リ土類金属塩基は、アルキル化アルキルサリチレートの酸性部位の全てを中和す
るのに必要な量を越えている。
一般に、アルカリ土類金属塩基に対し約0.1〜約1.5モル当量の二酸化炭
素、好ましくは約0.5〜約1.25モル当量の二酸化炭素を、アルカリ土類金
属配合後の反応混合物に慣用的方法により添加し、その炭酸化工程は約20℃〜
約80℃で行うのが好ましい。
反応が完了した後、慣用的手段(即ち、濾過、遠心分離等)により固体を一般
に除去し、不活性希釈剤溶媒を減圧下でのストリッピングなどの慣用的手段によ
り除去することができる。
二酸化炭素を用いない場合、不活性希釈剤は2−エチルヘキサノール及び希釈
剤油であるのが好ましいが、1〜3個の炭素原子を有するアルカノールと、約1
50℃より低い沸点を有する芳香族溶媒との混合物も用いることができる。
二酸化炭素を用いる場合、不活性希釈剤は、1〜3個の炭素原子を有するアル
カノールと、約150℃より低い沸点を有する芳香族溶媒との混合物であるのが
好ましい。
適当なアルコールには、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソ
プロパノールが含まれる。約150℃より低い沸点を有する適当な芳香族溶媒に
は、例としてベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等が含まれる。希
釈剤は、1〜3個の炭素原子を有するアルカノール約5〜約30重量%及び芳香
族溶媒約95〜約70重量%からなるのが好ましい。特に好ましい希釈剤は、メ
タノールとトルエンとの混合物で、好ましくは20:80の重量比の混合物であ
る。
基礎潤滑油ストック(stock)の如き他の成分を希釈剤中に含有させてもよい
。
一つの好ましい態様として、希釈剤は基礎潤滑油ストックを含まず、反応が完
了した後に実質的に全ての希釈剤を過塩基性生成物からストリップし、100℃
で約1000cStより小さな粘度、好ましくは100℃で500cSt未満の
粘度を有する流体生成物を与える。
更に別の好ましい態様として、過塩基性生成物の製造中に基礎潤滑油ストック
を含有させ、生成物製造後、ストリッピングによりそのアルカノール及び芳香族
溶媒を除去する。
更に別の好ましい態様として、反応を基礎潤滑油ストックを入れずに行い、生
成物製造後、その基礎ストックを、アルカノール及び芳香族溶媒をストリッピン
グで除去する前又は後で添加する。
後者の二つの場合のどちらでも、得られる組成物は基礎ストックに入れた過塩
基性アルキル化アルキルサリチレートの濃厚物からなり、それは潤滑油組成物を
直接配合する時に用いるのに適している。そのように用いる場合、基礎潤滑油ス
トックの濃厚物中に含有される量は、約5〜約95重量%の基礎ストックであり
、過塩基性アルキル化アルキルサリチレートは約95〜約5重量%である。
過塩基性アルキル化アルキルサリチレートの製造で用いられるアルキル化アル
キルサリチレートは、ドイツ特許DD269,619及びDD272,065及
び特願昭54−160335に記載されているように当分野で既知の方法により
製造することができ、それらの方法ではアルキル化剤(例えば、オレフィン)に
対し過剰のアルキルサリチレートを用いるか、アルキルサリチレートに対し過剰
のアルキル化剤を用いる。しかし、アルキル化アルキルサリチレートは、代理人
書類番号005950−367として本願と同時に出願された「長鎖炭素供給物
を用いたアルキルサリチレートのアルキル化」と題する米国特許出願Seria
l No.08/ に記載された方法によって製造される
のが好ましく、それは下の例2で更に記述する。
アルキル化アルキルサリチレートは、実質的に直鎖オレフィンでアルキル化す
るのが好ましい。特に好ましいアルキル化用オレフィンには、実質的に直鎖のC20
〜C28オレフィン、実質的に直鎖のC20〜C24オレフィン、及び実質的に直鎖
のC24〜C28オレフィンが含まれる。
用途
上に記述した油溶性の過塩基性アルキル化アルキルサリチレート組成物は、内
燃機関のクランクケースに用いられる潤滑油に添加した場合、清浄性及び分散性
を与えるのに有用な潤滑油添加剤としてのみならず、エンジン作動中に生ずる酸
性燃焼生成物を中和するのに必須のアルカリ性維持剤として有用である。そのよ
うな潤滑油組成物は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンの外、船舶エンジ
ンに有用である。このように用いる場合、油溶性の中性及び低過塩基性アルキル
メチルサリチレートの潤滑油組成物への添加量は、全潤滑剤組成物の約0.5〜
40重量%の範囲であるが、全潤滑剤組成物の約2〜30重量%であるのが好ま
しい。
そのような潤滑油組成物は、仕上げられた潤滑油を用い、その油はシングル又
はマルチグレードでもよい。マルチグレード潤滑油は粘度指数(VI)改良剤を
添加することにより調製される。典型的な粘度指数改良剤は、ポリアルキルメタ
クリレート、エチレン、プロピレン共重合体、スチレン・ジエン共重合体等であ
る。
そのような組成物に用いられる潤滑油は、船舶エンジンを含めたガソリンエン
ジン及びディーゼルエンジンの如き内燃機関のクランクケースに用いるのに適し
た粘度の鉱油又は合成油でよい。クランクケース潤滑油は、通常0°Fで約13
00cSt〜210°F(99℃)で24cStの粘度を有する。それら潤滑油
は合成又は天然原料から誘導することができる。本発明で基礎油として用いるた
めの鉱油には、通常潤滑油組成物中に用いられているパラフィン系、ナフテン系
及び他の油が含まれる。合成油には炭化水素合成油及び合成エステルの両方が含
まれる。有用な合成炭化水素油には、適当な粘度を有するαオレフィンの液体重
合体が含まれる。特に有用なものは、1−デセントリマーの如きC6〜C12αオ
レフィンの水素化液体オリゴマーである。同様に、ジドデシルベンゼンの如き適
当な粘度のアルキルベンゼンを用いることができる。有用な合成エステルには、
モノヒドロキシアルケノール及びポリオールと同様、モノカルボン酸及びポリカ
ルボン酸の両方のエステルが含まれる。典型的な例はアジピン酸ジドデシル、テ
トラカプロン酸ペンタエリトリトール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セ
バシン酸ジラウリル等である。モノ及びジカルボン酸及びモノ及びジヒドロキシ
アルカノールの混合物から製造された複合エステルも用いることができる。
炭化水素油と合成油との混合物も有用である。例えば、10〜25重量%の水
素化1−デセントリマーと、75〜90重量%の150SUS(100°F)鉱
油との混合物は優れた基礎潤滑油を与える。
配合物中に存在していてもよい他の添加物には、防錆剤、発泡防止剤、腐食防
止剤、金属不活性化剤、流動点低下剤、酸化防止剤、及び他のよく知られた種々
の添加物が含まれる。
本発明を次の特定の実施例により一層詳細に例示する。これらの実施例は単に
例として与えられており、後の請求の範囲の記載を限定するものではないことは
理解されるであろう。
〔実施例〕
例1−−1:5モル比のオレフィン対メチルサリチレートを用いたアルキル化
メチルサリチレートの製造
メチルサリチレート〔USA、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッ
ヒ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)からのもの〕を、メチルサリチレート
対炭素供給物のモル比5:1としてC20〜C24オレフィン炭素供給物でアルキル
化した。この例では、1802.6gのC20〜C24オレフィン留分〔USA、カ
リフォルニア州サンラモンのシェブロン・ケミカル社(Chevron Chemical Co.)
から入手できる〕を、炉で乾燥した5リットルの四口フラスコに入れた。245
7.5gのメチルサリチレートの次に591.3gのアンバーリスト(AMBERLYS
T)(登録商標名)36スルホン酸樹脂〔USA、ペンシルバニア州フィラデル
フィアのローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)社から入手できる〕を次に
フラスコへ入れた。次にフラスコに撹拌器、コントローラー付き温度計、還流凝
縮器、及び
窒素ブランケットを取付けた。
反応混合物を125℃の温度へ50分かけて加熱し、その温度に約48時間保
持した。48時間後、約94.2%の転化率でメチルサリチレートからアルキル
メチルサリチレートへの転化が起きた。反応混合物を撹拌しながら一晩で約50
℃の温度へ冷却した。
粗製アルキルメチルサリチレートを、ガス分散管を用いて真空下でそれを4リ
ットルのフラスコへ引くことにより反応フラスコから取り出した。触媒は反応フ
ラスコ中に残っていた。触媒上に残留している生成物を、約400mlずつのト
ルエンでフラスコの内容物を撹拌しながら濯ぎ、次にそのトルエン及び粗製生成
物をガス分散管を通して真空下で2リットルのフラスコへ引くことにより取り出
した。この濯ぎ/吸引法を更に3回繰り返した。この手順で回収されたトルエン
を、約95℃〜100℃の温度で真空中(〜25mmHgの真空度)でロートバ
ップ(rotovat)でストリップし、そのストリップして得られた生成物を、回収
された粗製アルキル化メチルサリチレートと一緒にした。
一緒にした粗製アルキル化メチルサリチレートを、次に130℃の温度で約1
〜10mmHgの圧力でストリップした。約185℃〜191℃の温度で約1〜
10mmHgの圧力で更にストリッピングを行なった。生成物の分析は、メチル
サリチレートの約94.7重量%がアルキル化されたことを示していた。
例2−−1:1モル比のオレフィン対メチルサリチレートを用いたアルキルメ
チルサリチレートの製造
USA、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社から市
販されているメチルサリチレートを、長鎖炭素供給物を用いてアルキル化した。
この例では、617.9g(2.0モル)のC20〜C24αオレフィン留分(US
A、カリフォルニア州サンラモンのシェブロン・ケミカル社から入手できる)を
、炉乾燥した2リットルの三口フラスコへ入れた。304.3g(2モル)のメ
チルサリチレートの次に150gのアンバーリスト36(USA、ペンシルバニ
ア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース社から市販されている固体酸性
スルホン酸樹脂触媒)を、次にフラスコへ入れた。次にフラスコに撹拌器、コン
トローラー付き温度計、還流凝縮器、及び窒素ブランケットを取付けた。
反応混合物を135℃の温度へ25分かけて加熱し、その温度に約61時間、
周期的に試料を取って反応の完了を調べながら保持した。61時間後、回収され
た生成物をその成分について分析した。その分析値を下の表Iに報告する:
生成物を焼結ガラスフィルターに通して濾過した。濾過したアルキルメチルサ
リチレートを約45分間に亙り210℃の温度へ加熱し、次に約1〜10mmH
gの真空中でストリップした。これらのストリッピング条件を約30分間維持し
た。次にストリップされた生成物を150℃に冷却し、窒素流で真空を解消した
。739.9gの生成物が回収された。この生成物の分析値を下の表IIに記載す
る:
例3−−二酸化炭素を用いない過塩基性アルキルメチルサリチレート添加剤組
成物の製造
上の例1又は2と同様なやり方で製造したアルキルメチルサリチレートを、過
剰の水酸化カルシウムで過塩基性にした。この例では、100gのC20〜C24ア
ルキル化メチルサリチレートを、約500mlの2−エチルヘキサノール中へ室
温で一緒にした。約20gの石灰をその溶液へ添加し、溶液を約30℃で約2時
間維持した。然る後、2−エチルヘキサノール希釈剤をストリッピングにより除
去し、0より大きく、約100より小さいTBNを有する過塩基性アルキル化ア
ルキルサリチレートを得た。
例4−−二酸化炭素を含む過塩基性アルキルメチルサリチレート添加剤組成物
の製造
2リットルの四口丸底フラスコに、100gのメタノール、480gのキシレ
ン、及び90gのミシシッピー石灰〔USAミズーリ州サン・ジュヌビエーブの
ミシシッピー・ライム社(Mississippi Lime Co.)〕を入れた。得られた系を1
0分間撹拌した。然る後、例1及び2と同様なやり方で製造したアルキルメチル
サリチレート266gを、最高温度を31℃に維持しながら、約1.5時間に亙
ってゆっくりその系に添加した。
この点で炭酸化を開始し、約28gの二酸化炭素を次の速度で添加した:
0.295g/分で17.5gのCO2
0.224g/分で2.4gのCO2
0.183g/分で2.8gのCO2
0.140g/分で2.8gのCO2
0.061g/分で2.8gのCO2
炭酸化工程が完了した時、系を2時間に亙って93℃へ加熱し、次に30分間
に亙って132℃へ加熱した。この点で155gの希釈剤油、シトコン(CitCon
)100Nを添加し、その系を真空中1.5時間に亙って204℃へ加熱し、キ
シレンをストリップした。次に得られた溶液をセライト(Celite)(商標名)〔
マンビル社(Manville Corporation)から入手できる珪藻土〕で濾過し、約18
2のTBN及び100℃で約19cStの粘度を有する二酸化炭素含有過塩基性
アルキルメチルサリチレート添加剤組成物を与えた。
得られた組成物の陽子核磁気共鳴スペクトル分析(1H−nmr)及び赤外線
分光分析は、過塩基性生成物中にメチルエステルが維持されていることを示して
いた。
例5−−分散試験
上記例4で製造した過塩基性アルキル化アルキルサリチレートを、次の分散試
験で分散性について試験した。この試験では、配合した潤滑油組成物の分散能力
が、試験すべき潤滑油組成物と人口スラッジとの混合物を次の条件でペーパーク
ロマトグラフにかけることにより得られた:
スポットNo.1 水を用いないで周囲温度
スポットNo.2 水を用いないで200℃で10分
スポットNo.3 水を用いないで250℃で10分
スポットNo.4 1%の水を用いて周囲温度
スポットNo.5 1%の水を用いて200℃で10分
スポットNo.6 1%の水を用いて250℃で10分
これらのスポットを48時間後に評価した。各スポットについて、煤の拡散直
径(d)及び油の拡散直径(D)を測定し、比
を計算した。種々の条件について油の分散性が六つのスポット評価の合計から得
られた。約250より大きな値を持つ油は分散剤性を有すると考えられ、基準油
、即ち、市販サリチル酸を23.4重量%有し、他の点では同じパラメーターを
有する油と比較した。
潤滑油組成物を、上の例4と同様な過塩基性アルキル化アルキルサリチレート
22重量%、ジチオ燐酸亜鉛0.67重量%、及びアルケニルスクシンイミド1
.60重量%をSAE30油へ一緒にすることにより調製した。得られた組成物
は1.505重量%のカルシウム、0.080重量%の亜鉛;0.050重量%
の燐;0.03重量%の窒素;約40.2のTBN;及び11.8cStの10
0℃粘度を持っていた。
この試験組成物20gを、次に2%の炭素質材料を含むスラッジ5gと一緒に
した。その混合物を次に均質化した。水を含む試料の場合には、均質化する前に
その組成物に1%(250μl)の水を添加した。
新しく均質化した試験潤滑油組成物(夫々20μlであるが、繰り返し行なっ
た)を100μl注射器を用いて2枚の別々の紙に注出した。加熱した試料を先
ず指示した温度に加熱浴中で10分間インキュベートし、然る後、適用した。
それらの紙を水平状態にして約20〜約25℃の温度で48時間保存した。そ
の保存は、それらの紙を塵から遮蔽する条件で行なった。
48時間後、それらのスポットは円状になり、煤の分散領域(d)及び油の分
散領域(d)を測定した。良好な分散性を与える添加物の場合、d/D×100
の六つの値の合計は少なくとも250であるべきである。この例の場合、合計は
312であった。このことは、本発明のサリチレートは分散剤性を有することを
示している。更に、基準油との比較は、同様な性質を示し、即ち、基準油のこれ
ら六つのスポットの合計は332であった。
例6−−加水分解安定性試験
例4で製造した過塩基性アルキル化アルキルサリチレートを、その加水分解安
定性について試験した。その試験は、配合した潤滑油組成物を調製することを含
み、この場合、TBNは過塩基性アルキル化アルキルサリチレート組成物から主
に得られている。この例の場合、試験した潤滑剤組成物は、1重量%のスクシン
イミド分散剤及び8mMの第二アルキル基含有ZnDTPを基礎ストックに入れ
て配合し、それを更に22重量%のアルキル化アルキルサリチレートと配合し、
約40のTBNを与えるようにした。
この試験では、98gの配合潤滑油組成物と、2gの蒸留水とを一緒にし、加
圧式飲料瓶中に密封した。その瓶を、約93℃に維持した慣用的炉中で約70時
間縦に回転させた。次にそれらの瓶を室温へ冷却し、その内容物を遠心分離管へ
注ぎ、室温で約60分間10,000回転/分で回転させた。油層のTBNを次
に決定し、TBNの減少は潤滑油組成物の加水分解安定性に関係しており、TB
Nの減少が大きい程、潤滑油組成物の加水分解安定性は低いことを示している。
この試験では、得られるTBN減少は3%であり、これらの組成物が加水分解
に対し安定であることを反映していた。更に、濾過した沈澱物の量は0.09%
であり、水に曝すことによる固体残渣の形成は殆どないことを示していた。
本発明を種々の好ましい態様に関して記述してきたが、その本質から離れるこ
となく種々の修正、置換、省略、及び変更を行えることは当業者は認めるであろ
う。従って、本発明の範囲は次の請求の範囲及びそれと同等のものを含めた範囲
によってのみ限定されるものである。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C10M 129:04)
C10N 10:04
20:00 Z
30:04
30:08
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