JP4251923B2 - 三次元立体構造編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クッション性が良好で、軽量で、破断強度が高く、かつ、衝撃吸収性の高い立体編物に関する。特に、立体編物がフレームに張設されて、座部及び/又は背部を形成する、自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子、家具、事務用等の座席に好適に用いられる立体編物及びこの立体編物を用いた座席に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、発泡ウレタンを表皮材で覆ったウレタンシートに対し、リサイクル性、通気性、振動吸収性等の機能を有する座席として、表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸とから構成された立体編物が、フレームに張設されて座部及び/又は背部を形成している座席が提案されている。
特許文献1及び特許文献2には、上部メッシュ層と下部メッシュ層をパイル(連結糸)で結合し、ある程度の引張り強伸度をもつ立体編物をシートフレームに張設した座席が開示されている。しかしながら、この座席に用いられる立体編物は、表裏の編地の伸長バランスが考慮されていないため、クッション性と強度を十分に両立できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−87077号公報
【特許文献2】
特開2002−219985号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題点を解決し、クッション性が良好で、軽量で、破断強度が高く、かつ、衝撃吸収性の高い立体編物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、立体編物がフレームに張設されて、座部及び/又は背部を形成する座席に好適に用いられる立体編物、及びこの立体編物が張設された座席を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
一般に、立体編物の強伸度等の物性は表裏一体で考慮されるが、本発明者は、立体編物の表裏の編地を分離し、表側編地と裏側編地の伸長率のバランス及び強度について鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸とから構成された立体編物であり、表側編地はアンダーラップが2針以下の編組織で構成され、裏側編地は破断強度4cN/dtex以上、トータル繊度が300dtex以上の繊維を少なくとも20重量%用い、少なくとも1枚の筬がアンダーラップが3針以上のトリコット編からなる編組織で構成され、表側編地の面伸長率(F)と裏側編地の面伸長率(B)との比(F/B)が1.1以上3.5以下であり、裏側編地のタテ及びヨコ方向の破断強度が140N/cm以上であることを特徴とする立体編物。
(2)圧縮弾性率が20〜150N/mmであることを特徴とする(1)に記載の立体編物。
(3)立体編物の減衰比が0.10〜0.35であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の立体編物。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の立体編物が、フレームに張設されて、座部及び/又は背部を形成していることを特徴とする座席。
(5)座席が乗物用である(4)に記載の座席。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の立体編物は、表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸とから構成される。立体編物の厚み方向のクッション性を良好なものとし、軽量で高強度なものとするために、表側編地の面伸長率(F)と裏側編地の面伸長率(B)との比(F/B)を1.1以上3.5以下とする必要があり、好ましくは1.1以上3.0以下、より好ましくは1.2以上2.8以下である。
【0007】
本発明の立体編物における表側編地とは、最終製品で表側に使われる側の編地であるが、立体編地のいずれの側が最終製品において表側に使用されるのか未定の場合、すなわち、材料としての立体編物においては、立体編物の任意の一方の面の編地を表側編地とする。したがって、他の面の編地は裏側編地である。
本発明における表側編地及び裏側編地の面伸長率とは、立体編物から表側編地と裏側編地を分離して、それぞれの編地を、後述するように、枠に張設した状態で、編地面に直角方向に直径100mmの圧縮治具で250Nの荷重をかけたときに、編地が面方向にどの程度伸長するかを示すものである。
【0008】
面伸長率の比(F/B)が1.1未満であると、すなわち、裏側編地の伸長率に対し表側編地の伸長率が相対的に小さい場合は、フレームに張設した座席において、表側編地が主体で人の体重を支えることになる。そのため、立体編物の連結糸のクッション性が発揮されなくなり、クッション性及びフィット性が劣る。面伸長率の比(F/B)が3.5を越えると、フレームに張設した座席において、裏側の編地が主体となって人の体重を支えるため、底付き感が生じやすくなり、座り心地の悪いものとなる。さらには、立体編物にかかる引張り力、圧縮力等、様々な外力に対して、表側編地の強力が殆ど寄与せず、裏側の編地のみで外力を支えるため、立体編物全体の破断強度が低いものとなる。すなわち、一定以上の破断強度を得るためには、裏側の編地の重量を上げざるを得なくなり、軽量化が困難となる。
【0009】
本発明の立体編物において、面伸長率の比(F/B)を1.1以上3.5以下とするには、表側編地と裏側編地の組織を異なる編組織とし、それぞれの編組織と糸使いを適宜選定し、調整する。糸使いとしては、素材の熱収縮率が重要であり、熱収縮率と編組織を十分に考慮して表裏の編地の面伸長率比を適正範囲に導く必要がある。特に、裏側編地に用いる糸の収縮率を、表側編地に用いる糸より大きくすることが好ましい。また、表側編地に用いる糸に仮撚加工糸を用い、裏側編地に用いる糸の少なくとも1種類に原糸(未加工糸)を用いることが好ましい。
【0010】
裏側編地としては、比較的低伸長で形態安定性の良好な編地とするために、少なくとも1枚の筬に鎖編を用い、かつ、もう一方の筬にアンダーラップが3針以上のトリコット編を用いて、2枚以上の筬で形成される編組織とすることが好ましい。表側編地は、アンダーラップが2針以下のトリコット編、又はアトラス編を中心とした若干の伸長率を有する編組織とすることが好ましい。
立体編物は、表裏一体でヒートセット等の仕上加工が施されるため、加工時のオーバーフィード率や幅出し状態を考慮して表裏の編組織を選定する必要がある。
【0011】
本発明の立体編物は、裏側編地のタテ及びヨコ方向の破断強度が140N/cm以上である必要があり、好ましくは150N/cm以上、より好ましくは170N/cm以上である。裏側編地は、特に、立体編物がフレームに張設されて座部及び/又は背部を形成される座席において、人の体重を支える最も重要な役割を果たす。立体編物は周囲又は少なくとも2辺を、背部又は座席のフレームに、緊張状態又は弛ませた状態で張られて用いられる。裏側編地のタテ及びヨコ方向の破断強度が140N/cm未満であると、特に、立体編物の2辺をフレームに張設した座席の場合、特に、高温環境下で勢いよく膝をついたり、高負荷が加わる際に立体編物が破断しやすい。
【0012】
立体編物の裏側編地のタテ及びヨコ方向の破断強度を140N/cm以上とするには、好ましくは4cN/dtex以上、より好ましくは5cN/dtex以上の高強度で、トータル繊度が300デシテックス以上の繊維を少なくとも20重量%用いることが好ましい。
本発明の立体編物は、フレームに張設して、座部及び/又は背部を形成する座席に好適に用いられるが、立体編物をフレームに張設した状態は限定されるものではなく、立体編物の周囲又は少なくとも2辺を、背部又は座席のフレームに、緊張状態又は弛ませた状態で張ることにより、立体編物が座席の座部や背部を形成すればよい。
【0013】
フレームへの立体編物の固定には任意の方法を用いることができ、例えば、特開2002−219985号公報に記載のように、立体編物の末端部に断面略U字状で溝部を有するプレート部材を固着し、該プレート部材の溝部を適宜のフレーム材に係合する方法、立体編物の末端部にさらにトリム布を連結し、このトリム布に上記のプレート部材を固着して適宜のフレーム材に係合する方法、立体編物の末端部を溶着、縫製、樹脂加工等により処理した後、端部を押さえ部材で押さえてボルト止め等でフレームに固定する方法等を用いることができる。
【0014】
本発明の立体編物が、張設式の座席においてソフトな弾力感を有するためには、立体編物の圧縮弾性率が20〜150N/mmであることが好ましく、より好ましくは25〜100N/mm、最も好ましくは25〜80N/mmである。圧縮弾性率が150を越えるとソフトな弾力感が得られ難くなり、20未満であると着座時に底付き感が発生しやすくなる。立体編物の圧縮弾性率は、立体編物を構成する連結糸の繊度、単位面積当たりの連結糸の本数、連結糸の傾斜角度、立体編物の厚み、仕上げ加工時のヒートセット温度等の要因によって調整されるものであり、これらを十分考慮して設定する必要がある。
【0015】
本発明の立体編物は、減衰比が、好ましくは0.10〜0.35、より好ましくは0.13以上、0.30以下、最も好ましくは0.15〜0.30以下である場合、優れた衝撃吸収と共に、快適な座り心地を兼ね備えるものとなる。特に、乗り物用座席において大きな外部入力が加わったり、衝突の際に、人体への負荷を低減できる。
本発明の立体編物の連結糸に用いられる繊維としては、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸が挙げられる。立体編物に適度な弾性を付与し、圧縮回復性を良好にするにはモノフィラメント糸を用いることが好ましい。
【0016】
連結糸に用いる繊維素材としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維が挙げられる。このうち、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を連結糸の少なくとも50重量%以上用いると、弾力感のあるクッション性を有し、繰り返し又は長時間圧縮後のクッション性の耐久性が良好となるので好ましい。
【0017】
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形なものでもよいが、丸型断面が、立体編物のクッション性の耐久性及び耐摩耗性を向上させる上で好ましい。
立体編物が圧縮される際に、連結糸どうしが擦れ合って発生する耳障りな音を防止するには、連結糸にモノフィラメント糸とマルチフィラメント糸を、交編、糸複合等により併用し、マルチフィラメント糸を緩衝材として利用することが好ましい。
【0018】
立体編物の表裏の編地に用いる繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、綿、麻、ウール等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、リヨセル等の再生繊維等の任意の繊維が挙げられる。
繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型、不定形なものでもよい。
【0019】
繊維の形態は、原糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、エアー交絡糸、流体噴射加工糸等の嵩高加工糸のいずれのものを採用してもよい。連結糸のモノフィラメント糸が編地表面へ露出しないように被覆率を上げるには、マルチ糸の仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いることが好ましい。
本発明の立体編物の表裏の編地及び又は連結糸に用いられるモノフィラメント糸は、着色されていることが好ましい。着色方法は、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、立体編物状で染色したりプリントする方法等が用いられる。
【0020】
立体編物状で染色すると、立体形状を維持するのが困難であったり、加工性が悪い場合があるため、先染め及び原液着色が好ましい。
連結糸に用いるモノフィラメント糸には任意の繊度のものが用いられるが、ソフトな弾力感を得るためには250〜700デシテックスの繊度が好ましく、より好ましくは250〜500デシテックスである。表裏の編地に用いるマルチフィラメント糸の繊度は、通常、150〜2000デシテックスであり、フィラメント数は任意に設定できる。
【0021】
この際、編機の針1本にかかるモノフィラメント糸の繊度(T)(デシテックス)と全マルチ糸の繊度(d)(デシテックス)の間に、T/d≦0.9の関係を満たす場合、モノフィラメント糸をマルチフィラメント糸で被覆し、立体編物表面へのモノフィラメント糸の露出を防止し、モノフィラメント糸固有の光沢により立体編物表面がギラギラと光るギラツキを抑え、表面の風合いを良好にできるので好ましい。
【0022】
本発明の立体編物は、相対する2列の針床を有する経編機、丸編機、横編機等により編成される。編機のゲージは9〜28ゲージが好ましい。
連結糸は、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏編地に挿入状態又はタック状態で引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜してクロス状(X状)又はトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させ、座席として良好なクッション感を得る上で好ましい。この際、クロス状、トラス状共に連結糸が2本の連結糸で構成されていてもよく、1本の同一の連結糸が表又は裏面で折り返し、見かけ上2本となっている場合であってもよい。
【0023】
本発明の立体編物の厚み及び目付は、目的に応じて任意に設定できるが、厚みは3〜20mmが好ましい。厚みが3mm未満の場合、クッション性が低下することがあり、20mmを越えると立体編物の編立や仕上げ加工が難しくなることがある。目付は、好ましくは500〜2000g/m2、より好ましくは600〜1500g/m2である。
立体編物の仕上げ加工方法は、先染め糸や原液着色糸を使用した立体編物の場合、生機を精練、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。連結糸又は表裏を構成する編地に用いる糸のいずれかが未着色である立体編物の場合、生機をプレセット、精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。
仕上げ加工後の立体編物は、溶着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理したり、熱成形等により所望の形状にして、座席等が構成される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
本発明の立体編物の各種物性の測定方法は以下の通りである。
(a)面伸長率(F)、(B)
立体編物(41cm角)の連結糸をほぼ中央部でカットし、表側と裏側の編地をそれぞれ分離する。
4隅に高さ15cmの足を取付けた、内径が1辺30cm、外径が1辺41cmの四角形の板状の金属枠(上面に40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止め性を付与)と、内径が1辺30cm、外径が1辺41cmの四角形の板状の金属枠(下面に40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止め性を付与)の間に、立体編物の表側及び裏側の編地を弛まないように連結糸側を下にして挟み、周囲を万力で固定する。
【0025】
島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状圧縮治具により、張設した表側編地の中央部を100mm/分の速度で圧縮し、245Nの荷重時の変位を測定して圧縮撓み量(M)(mm)とする。
さらに次式により表側編地の面伸長率(F)及び裏側編地の面伸長率(B)を求める。
F(%)={(1502+M2)0.5−150}×100/150
B(%)={(1502+M2)0.5−150}×100/150
【0026】
(b)裏側編地の破断強度
立体編物の連結糸をほぼ中央部分でカットして裏側編地を分離した後、裏側編地を5cm×20cmにカットした試験片を、タテ方向及びヨコ方向それぞれ3枚づつ採取する。
島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)を用い、試験片を自重で垂らした状態で、つかみ間隔10cmで上下のチャックに固定し、10cm/minの速度で試験片を引張り、破断強度(N/cm)を測定する。値は3回測定した平均値とする。
【0027】
(c)圧縮弾性率E(N/mm)
島津オートグラフAG−B型((株)島津製作所製)を用い、直径100mmの円盤状圧縮治具により、剛体面上に置いた15cm角、任意の厚みの立体編物を、10mm/minの速度で250Nの荷重になるまで圧縮し、直ぐに10mm/minの速度で開放する。この際に得られる図1に示す荷重−変位曲線のうち、行き(圧縮)の曲線の立ち上がり部分の略直線領域の傾きを下式により算出し、圧縮弾性率(E)(N/mm)とする。値は、3枚の試験片を測定した平均値とする。
圧縮弾性率(E)(N/mm)={荷重(P)(N)}/{変位(ε)(mm)}
【0028】
(d)クッション性
座部が幅52cm、奥行き47cm、高さ32cmの角型金属パイプ材からなる座席フレーム(背もたれなし)を作製する。幅62cm×奥行き57cmの立体編物(4隅をそれぞれ9cm角カット)を弛まないように座席フレーム上に置き、立体編物の4辺をフレームを覆うように直角に折り返し、立体編物の折り返した4辺を金属板からなる押さえ部材によりフレームに押さえつけて、1辺に対し4箇所ボルト止めした座席1を作製する。押さえ部材の内側及び座席フレームの周囲4辺には、立体編物がスリップしないように40番のサンドペーパーをそれぞれ貼付しておき、ボルトの位置には立体編物に穴を開けておく。
【0029】
座席1に65Kgの男性が5分間座り、クッション性を以下の4段階で官能評価する。
◎:非常に連結糸の弾力性を感じ、クッション性が良好
○:やや連結糸の弾力性を感じクッション性が良好
△:底付き感はないが連結糸の弾力感が乏しくクッション性がやや不良
×:連結糸が完全に押し潰され底付き感が生じクッション性が不良
【0030】
(e)座席での立体編物の破断強さ
(4)で作成した座席を80℃の恒温槽に2時間放置する。恒温槽から20℃の環境に取り出した直後に、座席上で激しく膝をつく状態想定して、座席上1mの高さから直径14.5cm、重さ12.5Kgの鉄球を立体編物の中央部に自由落下させ、立体編物の裏側編地の破断状況を外観評価する。
◎:全く外観変化がない
△:1cm未満の破断が見られる
×:1cm以上の破断が見られる。
【0031】
(f)立体編物の減衰比
4隅に高さ15cmの足を取付けた、内径が1辺30cm、外径が1辺41cmの四角形の板状の金属枠(上面に40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止め性を付与)と、内径が1辺30cm、外径が1辺41cmの四角形の板状の金属枠(下面に40番のサンドペーパーを貼りつけて滑り止め性を付与)の間に立体編物を弛まない様に挟み、周囲を万力で固定する。
【0032】
立体編物の上面中心部から高さ60mmの位置にレーザー変位計(キーエンス社製LK−085)を下向き垂直に設置する。立体編物の上面中心部からおもり下面までの距離が25mmの高さの位置に(レーザー変位計からおもり上面までの距離が5mmの位置)に重量2Kgのおもり(直径100mm、高さ30mm)を固定する。おもり上面中心部にレーザー変位計の焦点を合わせ、おもりの高さ分(30mm)を考慮し、立体編物の上面が0mmになるように位置を補正し、立体編物の上におもりを自由落下させる。レーザー変位計と接続したデータ収集システム(キーエンス社製NR−2000)により、図2のような、時間の経過に対するおもりの下面の変位を示す自由振動減衰曲線を得る。図3の拡大図に示すように、減衰波形から2個目の振幅χ2から7個目の振幅χ7を読み取り、隣り合う振幅(χiとχi+1の関係)を図4に示すように、X−Y軸にプロットする。これらの点が一直線上に乗るので、この直線の勾配tanθを用いて次式により減衰比(ξ)を算出する。
ξ=[loge(tanθ)]/π
【0033】
【実施例1】
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッシェル機を用い、表側編地を形成する筬(L1、L2)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.2cN/dtex、沸水収縮率2.2%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、3本引き揃えインターレース加工糸)をオールインの配列で供給した。連結糸を形成する筬(L3)から、390デシテックスのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント糸をオールインの配列で供給した。さらに裏側編地を形成する筬(L5、L6)から、500デシテックス/144フィラメント、強度5.5cN/dtex、沸水収縮率2.7%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントの高強力ポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸の3本引き揃えインターレース加工糸)をオールインの配列で供給した。打ち込み13.5コース/2.54cmとし、以下に示す編組織で、連結糸が部分的にクロス構造(×構造)を形成する立体編物を編成した。得られた立体編物を3%幅出しして170℃×2分で乾熱ヒートセットし、表1に示す物性を有する立体編物を得た。
(編組織)
L1:2322/1011/
L2:1011/1211/
L3:3410/4367/
L5:1110/0001/
L6:2210/2234/
【0034】
【実施例2】
実施例1において、編組織を以下とした以外は実施例1と同様にして、表1に示す物性を有する立体編物を得た。
(編組織)
L1:1211/1011/
L2:1011/1211/
L3:3410/4367/
L5:1110/0001/
L6:2210/2234/
【0035】
【実施例3】
実施例1において、表側編地を形性する筬(L1、L2)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.8cN/dtex、沸水収縮率7.0%のポリエチレンテレフタレート原糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を、連結糸を形成する筬(L3)から、390デシテックスのポリエチレンテレフタレートモノフィラメントをオールインの配列で供給した以外は実施例1と同様にして、表1に示す物性を有する立体編物を得た。
【0036】
【実施例4】
実施例2において、表側編地を形成する筬(L1、L2)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.1cN/dtex、沸水収縮率1.0%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、黒色先染め糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を供給した以外は実施例2と同様にして、表1に示す物性を有する立体編物を得た。
【0037】
【実施例5】
実施例4において、裏側編地を形成する筬(L6)から、500デシテックス/144フィラメント、3.3cN/dtex、沸水収縮率8.5%のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を供給した以外は実施例1と同様にして、表1に示す物性を有する立体編物を得た。
【0038】
【実施例6】
実施例3において、裏側編地を形成する筬(L5、L6)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.1cN/dtex、沸水収縮率1.0%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、黒色先染め糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を供給した以外は実施例3と同様にして、表1に示す物性を有する立体編物を得た。
【0039】
【比較例1】
実施例1において、表側編地を形成する筬(L1、L2)に裏側編地に用いた糸と同一の糸を用い、裏側編地と同一の編組織とした以外は実施例1と同様にして、表2に示す物性を有する立体編物を得た。この立体編物は、面伸長率比が小さく、クッション性が劣り、減衰比が小さく衝撃吸収性が劣るものであった。
(編組織)
L1:3422/1022/
L2:0111/1000/
L3:3410/4367/
L5:1110/0001/
L6:2210/2234/
【0040】
【比較例2】
実施例4において、裏側編地を形成する筬(L5、L6)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.8cN/dtex、沸水収縮率7.0%のポリエチレンテレフタレート原糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート原糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を供給した以外は実施例4と同様にして、表2に示す物性を有する立体編物を得た。
この立体編物は、面伸長率が大き過ぎ、クッション性、破断強さが劣るものであった。また、裏側編地の面伸長率が小さいため、減衰比が小さく衝撃吸収性が劣るものであった。
【0041】
【比較例3】
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッシェル機を用い、表側の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.1cN/dtex、沸水収縮率1.0%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、黒色先染め糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を、L1ガイドに1イン1アウトの配列で、L2ガイドに1アウト1インの配列で供給した。
【0042】
連結糸を形成する筬(L3)から、390デシテックスのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント糸をオールインの配列で供給し、さらに裏側編地を形成する筬(L5、L6)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.1cN/dtex、沸水収縮率1.0%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、黒色先染め糸、3本引き揃えインターレース加工糸)をオールインの配列で供給した。
【0043】
打ち込み13.5コース/2.54cmで、以下に示す編組織で連結糸が部分的にクロス構造(×構造)を形成し、表側編地がメッシュ組織となる立体編物を編成した。得られた立体編物を3%幅出しして170℃×2分で乾熱ヒートセットし、表2に示す物性を有する立体編物を得た。この立体編物は、面伸長率が大き過ぎ、クッション性、破断強さが劣るものであった。
(編組織)
L1:1011/1222/2322/2111/
L2:2322/2111/1011/1222/
L3:3410/4367/
L5:1110/0001/
L6:2210/2234/
【0044】
【比較例4】
6枚筬を装備した14ゲージ、釜間13mmのダブルラッシェル機を用い、表側の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)及び裏側の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)から、500デシテックス/144フィラメント、強度4.1cN/dtex、沸水収縮率1.0%のポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸、黒色先染め糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を供給した。
連結糸を形成する(L3、L4)から、390デシテックスのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント糸を、L1、L3、L5ガイドに1イン1アウトの配列で、L2、L4、L6ガイドに1アウト1インの配列で供給した。
【0045】
打ち込み15.5コース/2.54cmで、以下に示す編組織で連結糸が部分的にクロス構造(×構造)を形成する表裏メッシュ組織の立体編物を編成した。得られた立体編物を170℃×2分で30%幅出しして乾熱ヒートセットし、表2に示す物性を有する立体編物を得た。この立体編物は、表裏の編地の面伸長率が大きいため、減衰比が大で衝撃吸収性の高いものであったが、破断強さとクッション性が劣るものであった。
(編組織)
【0046】
【比較例5】
実施例2において、裏側編地を形成する筬(L5、L6)から500デシテックス/144フィラメント、3.3cN/dtex、沸水収縮率8.5%のポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸(167デシテックス/48フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート仮撚加工糸、3本引き揃えインターレース加工糸)を供給した以外は実施例2と同様にして、表2に示す物性を有する立体編物を得た。この立体編物は、裏側編地の破断強度が低く、立体編物の破断強さが劣るものであった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【発明の効果】
本発明の立体編物は、連結糸の弾力感を十分に感じられる良好なクッション性を有し、軽量、かつ、破断強度の高い立体編物である。特に、立体編物をフレームに張設して、座部及び/又は背部を形成する座席に好適に用いられる。さらに、本発明の立体編物は、衝撃吸収性に優れ、衝突安全性の高い座席に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】立体編物の圧縮−回復曲線グラフ。
【図2】立体編桃の自由振動減衰曲線グラフ。
【図3】図2の自由振動減衰曲線の部分拡大グラフ。
【図4】図3から得られる振幅のプロットグラフ。
Claims (5)
- 表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸とから構成された立体編物であり、表側編地はアンダーラップが2針以下の編組織で構成され、裏側編地は破断強度4cN/dtex以上、トータル繊度が300dtex以上の繊維を少なくとも20重量%用い、少なくとも1枚の筬がアンダーラップが3針以上のトリコット編からなる編組織で構成され、表側編地の面伸長率(F)と裏側編地の面伸長率(B)との比(F/B)が1.1以上3.5以下であり、裏側編地のタテ及びヨコ方向の破断強度が140N/cm以上であることを特徴とする立体編物。
- 圧縮弾性率が20〜150N/mmであることを特徴とする請求項1記載の立体編物。
- 立体編物の減衰比が0.10〜0.35であることを特徴とする請求項1又は2記載の立体編物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体編物が、フレームに張設されて、座部及び/又は背部を形成していることを特徴とする座席。
- 座席が乗物用である請求項4記載の座席。
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