JP4251791B2 - レーザ加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光軸が固定の光源から出力されたレーザ光を、2個の偏向手段によりfθレンズの予め定める位置に入射させ、fθレンズで集光したレーザ光により加工を行うレーザ加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光によりプリント基板に穴明けをするためのレーザ加工装置やマーキングを行うレーザ加工装置では、一般にレーザ発振器を固定しておく。そして、レーザ発振器から出力されたレーザ光を、回軸軸をねじれの位置に配置した回転自在の2個のミラーを介してfθレンズに入射させ、ワーク上に集光させて加工を行う。ここで、焦点距離fのfθレンズは、fθレンズの中心軸上の予め定めた点(以下、「設計上の偏向点」という。)を通り中心軸に対する角度θの光線が、焦点面内におけるfθレンズの中心軸から距離f×θ、かつレーザ光がワークに垂直に入射(集光)するように設計されている。したがって、設計上の偏向点におけるレーザ光の中心軸に対する角度θを選択することにより、レーザ光を水平方向の任意の位置に位置決めすることができる。
【0003】
しかし、例えば、設計上の偏向点を、fθレンズに近い側のミラーの反射面上に位置決めした場合、レーザ発振器側のミラーを回転させると、レーザ光は設計上の偏向点を通過しなくなってしまう。このため、ワークの表面を略焦点面に合わせて穴明けをする場合、穴の軸線が斜めになり、プリント基板の表と裏(或いは穴底)で穴の位置ずれが発生した。また、マーキングを行う場合、集光点がミラーで設定する位置からずれてしまい、加工精度が低下した。
【0004】
そこで、特開平5−228673号公報では、レーザ発振器とレーザ発振器に近い側のミラーとの間に第3のミラーを配置し、第3のミラーをレーザ光の光軸方向に移動させることにより、レーザ発振器に近い側のミラーで反射されたレーザ光の中心が前記第2のミラーの中心に一致するように制御している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
マーキングを行う場合、すなわち加工部が連続な場合、上記特開平5−228673号公報に開示された技術により、加工速度および加工精度を向上させることができる。
【0006】
しかし、プリント基板に穴明け加工をする場合、加工位置が不連続であり、しかも毎秒1000個程度の穴を加工しなければならない。このため、上記特開平5−228673号公報に開示された技術では応答が遅く、毎秒1000個程度の穴を加工するような装置には採用することができない。
【0007】
また、加工した穴の軸線を垂直に近付けるためには、2つの偏向手段を接近させる必要があり、偏向手段の形状や配置が制限されていた。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術における課題を解決し、レーザ発振器から出力されたレーザ光を、fθレンズの設計上の偏向点に位置決めすることにより加工した穴の軸線を垂直にすることができると共に、偏向手段の配置に自由度を持たせることができるレーザ加工装置を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、レーザ光を出力する光源と、前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を第1の方向に偏向させる第1の偏向手段と、前記第1の偏向手段で偏向された前記レーザ光を前記第1の方向と交差する第2の方向に偏向させる第2の偏向手段と、前記第1と第2の偏向手段により偏向されたレーザ光を集光するfθレンズと、を備えるレーザ加工装置において、前記第1の偏向手段と前記第2の偏向手段との間に、焦点距離が互いに異なる第1の凸レンズと第2の凸レンズとにより構成される補正光学系を設け、前記第1の凸レンズの焦点距離をf1、前記第2の凸レンズの焦点距離をf2、前記第1の凸レンズと前記第2の凸レンズとの主点間の距離の合計をKとするとき、前記第1の偏向手段の中心と前記第2の偏向手段の中心との距離を2f1+2f2+Kとし、前記第1の凸レンズを、当該凸レンズの主軸を前記第1の偏向手段の中心と前記第2の偏向手段の中心とを結ぶ直線と同軸となるように、かつ、前記第1の凸レンズの前側の主点を前記第1の偏向手段の中心からの距離がf1の位置に配置し、前記第2の凸レンズを、当該凸レンズの主軸を前記第1の偏向手段の中心と前記第2の偏向手段の中心とを結ぶ直線と同軸となるように、かつ、前記第2の凸レンズの後側の主点を前記第2の偏向手段の中心からの距離がf2の位置に配置することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
<第1の実施形態>
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るレーザ加工機の平面図、図2は側面図である。
【0013】
レーザ発振器1から出力されるレーザ光の光路上には、アパーチャ2、固定のミラー3、第1の偏向手段4を構成する第1のミラー5、補正光学系7、第2の偏向手段11を構成する第2のミラー13およびfθレンズ14が配置されている。レーザ発振器1は、レーザ光を紙面と平行に出力する。
【0014】
ミラー5はモータ6に支持され、図1において紙面に垂直な回転の軸線Mの回りに、任意の角度に位置決め自在である。軸線Mはミラー5の反射面5a上に配置されている。そして、ミラー5は、反射面5aの中心(軸線M上の点であり、ミラー5の幅方向および長手方向の中心である。)がレーザ発振器1から出力されるレーザ光の中心に一致するように位置決めされている。
【0015】
補正光学系7は、焦点距離がf1である2枚の凸レンズ8、9を焦点距離の2倍である距離2f1を隔てて配置したものであり、軸線Mと凸レンズ8との距離および凸レンズ9とミラー13の回転の軸線Nとの距離はそれぞれf1である。
【0016】
なお、レンズには2個の主点があるが、ここでは、主点がレンズの中心にあるものとして説明する。
【0017】
ミラー13は、モータ12の回転軸に支持され、図1において紙面と平行(すなわち、軸線Mと90度ねじれの位置にある)軸線Nの回りに、任意の角度に位置決め自在である。軸線Nはミラー13の反射面13a上に配置されている。
【0018】
fθレンズ14は中心軸Sが加工対象15に垂直、かつ設計上の偏向点Hが反射面13aの中心Os(軸線N上の点であり、ミラー13の幅方向および長手方向の中心である。)に一致するように位置決めされている。
【0019】
加工対象15は、加工領域の中心を中心軸Sに合わせてテーブル16上に固定されている。
【0020】
このように構成された第1の実施の形態に係るレーザ加工機の動作は以下のようになる。
【0021】
図示を省略する制御装置は、加工プログラムに記載された加工個所のY座標に基づき、反射面5aを基準位置からY座標と符号が逆の角度−θyの位置に、また加工個所のX座標に基づき、反射面13aを基準位置から角度θxの位置にそれぞれ回転させた後、レーザ発振器1を動作させ、レーザ光を出力させる。
【0022】
レーザ発振器1から発振されたレーザ光は、アパーチャ2により外形を整形され、固定のミラー3、反射面5aを介してレンズ8に入射する。補正光学系7はミラー5で偏向されたレーザ光をミラー13の中心に入射させる機能を備えているので、レンズ9を出射したレーザ光は、図1に実線で示す光路bを通り、符号が逆転した角度θyで中心Osに入射する。そして、反射面13aで反射され、fθレンズ14を通り、加工対象15の表面に集光されて(アパーチャ2の像が結像されて)、加工対象15を加工する。
【0023】
反射面5aで反射されたレーザ光は中心Osすなわち設計上の偏向点Hを通るので、レーザ光はX軸方向およびY軸方向のいずれに関してもワーク15の表面に垂直に入射する。この結果、加工した穴の軸線は垂直になる。
【0024】
以上説明したように、本発明では、第1と第2の偏向手段の中間に補正光学系7を配置することにより、X軸方向とY軸方向の2つの偏向点を一致させることができるので、装置設計の自由度を増すことができる。
【0025】
なお、軸線Mと凸レンズ8との距離および凸レンズ9とミラー13の回転の軸線Nとの距離をそれぞれf1としたが、軸線Mと軸線Nとの距離を4f1とすれば、補正光学系7は軸線M、軸線N間のどの位置に配置しても良い。
【0026】
また、補正光学系7としては、上記の構成(アフォーカル系)に限らず、ミラー5で偏向されたレーザ光をミラー13の略中心に入射させるものであればよい。 なお、補正光学系7を設けない場合、図1中に点線で示すように、レーザ光は光路aを通り、中心Osから外れた点Otに入射する。この結果、加工した穴の軸線はY軸方向に傾く。また、入射位置が中心Osから外れるので、ミラー13の寸法を大きいものにしなければならないため、応答速度が遅くなる。
【0027】
<第2の実施形態>
図3は本発明の第2の実施の形態に係るレーザ加工機の要部平面図であり、図1と同じものまたは同一機能のものは同一符号を付して説明を省略する。なお、レーザ発振器1、アパーチャ2、およびミラー3は図示を省略してある。
【0028】
ミラー20は、ミラー3で反射されたレーザ光をミラー5に反射する。ミラー5の回転軸Mは紙面と垂直な方向であり、ミラー13の回転軸の方向は紙面内の斜め右上22.5度の方向である。
【0029】
補正光学系21は、レンズ8、9とミラー22とから構成されており、レンズ8、レンズ9の焦点距離はf1、レンズ14の焦点距離はFである。そして、レンズ8の中心からミラー22の中心までの距離l1と、ミラー22の中心からレンズ9までの距離l2との和(l1+l2)は2f1であり、l1とl2は異なる長さに設定されている。また、ミラー5の中心からレンズ8の中心までの距離、レンズ9の中心からミラー13の中心までの距離、およびミラー13の中心からfθレンズ14の中心までの距離は、それぞれf1である。
【0030】
このように構成された第2の実施の形態に係るレーザ加工機においても、上記第1の実施の形態の場合と同様に、ミラー5で偏向されたレーザ光はミラー13の略中心に入射する。
【0031】
この第2の実施形態は、補正光学系の配置に制限がある場合、すなわちレンズ8とレンズ9を同一の直線上に配置できない場合に有効である。また、図示のように、ミラー5、13に対するレーザ光の入射角を一般的な45度よりも小さくする(例えば、図示のように22.5度)と、ミラー5、13の大きさを入射角を45度にする場合に比べて小さく、すなわち、ミラー5、13の慣性モーメントを小さくすることができる。この結果、ミラー5、13の位置決めに要する時間を短縮することができるので、上記第1の実施形態に比べて、加工速度を速くすることができる。
【0032】
また、l1とl2を異なる長さに設定したので、ミラー22の表面が熱により損傷することを予防することができる。
【0033】
そして、上記第1および第2の実施の形態のいずれにおいても、補正光学系7によってミラー5で偏向されたレーザ光をミラー13の略中心に入射させることができるので、2つの偏向点を設計上の偏向点に一致、あるいは略一致させることができる。この結果、加工した穴の軸線は垂直になり、加工品質が向上する。また、高アスペクト比の穴を加工することができる。そして、上記従来技術のように、2つの偏向点を一致させるための可動部を設けないので、加工速度が低下することもない。
【0034】
なお、第1と第2の偏向手段としてミラーを回転させるものとしたが、音響光学素子等他の手段を用いてもよい。
【0035】
ところで、上記では、レンズ8、9の焦点距離をいずれもf1としたが、必ずしも両者を等しくする必要はない。
【0036】
次に、本発明を一般化して説明する。
【0037】
<第3の実施形態>
図4は本発明の第3の実施の形態に係る補正光学系を示す図であり、図1と同じものまたは同一機能のものは同一の符号を付して説明を省略する。なお、レーザ発振器1、アパーチャ2、ミラー3およびfθレンズ14は図示を省略してある。
【0038】
図中の符号は以下の通りである。
【0039】
S11:レンズ8の前側主点
S12:レンズ8の後側主点
S21:レンズ9の前側主点
S22:レンズ9の後側主点
D1 :アパーチャの径
L1 :レンズ8の主点間隔
L2 :レンズ9の主点間隔
a:ミラー5の中心からレンズ8の前側主点までの距離
b:レンズ9後側主点からミラー13の中心までの距離
d:レンズ8の後側主点からレンズ9の前側主点までの距離
f1:レンズ8の焦点距離
f2:レンズ9の焦点距離
L :ミラー5の中心からミラー13の中心までの距離
ここで、焦点距離f1、f2を定数とすると、レンズ8、9の中心軸であり、各レンズの主点を結ぶ主軸の上での距離a、距離b、距離d間には式1、2の関係が、また、角度θ1と角度θ2間には式3の関係が、また、ミラー5で反射されたレーザ光の直径D1とミラー13の鏡面に入射するレーザ光の直径D2との間には式4の関係がある。そして、ミラー5の中心からミラー13の中心までの距離Lは式5で表される。
【0040】
【数1】
式3から明らかなように、f1>f2にすると、角度θ2の絶対値は角度θ1の絶対値よりも大きくなる。この結果、ミラー5の回転角度を小さくできるので、高能率の加工をすることができる。
【0041】
また、f1<f2の場合、角度θ2の絶対値は角度θ1の絶対値よりも小さいので、ミラー5の位置決め角度の誤差が大きい場合であっても、高精度の加工をすることができる。
【0042】
なお、レンズ8、9は単レンズに限られるものではなく、レンズ収差を補正してレーザ光の歪みを小さくするために使用される複数のレンズで構成された組合せレンズであってもよい。組合せレンズを用いる場合にも、合成焦点距離および主点位置を用いて上記の式1〜式5を適用することができる。
【0043】
このように、本実施の形態によれば、軸の回りに回転自在のミラー5とミラー13との間に、ミラー5で偏向されたレーザ光をミラー13の中心に入射させる補正光学系7を設けたので、加工する穴の軸線は垂直になり、加工品質が向上する。また、高アスペクト比の穴を加工することができる。そして、ミラー5に入射したレーザ光はミラー5の角度に関係なく、ミラー13の略中心に入射するので、ミラー13を小さくできる。また、2つの偏向点を一致させるための可動部がないので、加工速度を向上させることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、第1の偏向手段と前記第2の偏向手段との間に、前記第1の偏向手段の偏向中心で偏向された前記レーザ光を前記第2偏向手段の偏向中心に入射させる補正光学系を配置したので、加工する穴の軸線は垂直になり、加工品質が向上する。また、高アスペクト比の穴を加工することができる。
【0045】
さらに、第1の偏向手段に入射したレーザ光は第1の偏向手段の角度に関係なく、第2の偏向手段の略中心に入射するので、第2の偏向手段を小さくできる。また、2つの偏向点を一致させるための可動部がないので、加工速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレーザ加工機の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るレーザ加工機の側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るレーザ加工機の要部平面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る補正光学系を示す図である。
【符号の説明】
5 ミラー
5a ミラー5の中心
7 補正光学系
8 凸レンズ
9 凸レンズ
13 ミラー
13a ミラー13の中心
M ミラー5の回転軸
N ミラー13の回転軸
f1 凸レンズ8、9の焦点距離
Claims (1)
- レーザ光を出力する光源と、前記レーザ光の光路上に配置され、前記レーザ光を第1の方向に偏向させる第1の偏向手段と、前記第1の偏向手段で偏向された前記レーザ光を前記第1の方向と交差する第2の方向に偏向させる第2の偏向手段と、前記第1と第2の偏向手段により偏向されたレーザ光を集光するfθレンズと、を備えるレーザ加工装置において、
前記第1の偏向手段と前記第2の偏向手段との間に、焦点距離が互いに異なる第1の凸レンズと第2の凸レンズとにより構成される補正光学系を設け、
前記第1の凸レンズの焦点距離をf1、前記第2の凸レンズの焦点距離をf2、前記第1の凸レンズと前記第2の凸レンズとの主点間の距離の合計をKとするとき、
前記第1の偏向手段の中心と前記第2の偏向手段の中心との距離を2f1+2f2+Kとし、
前記第1の凸レンズを、当該凸レンズの主軸を前記第1の偏向手段の中心と前記第2の偏向手段の中心とを結ぶ直線と同軸となるように、かつ、前記第1の凸レンズの前側の主点を前記第1の偏向手段の中心からの距離がf1の位置に配置し、
前記第2の凸レンズを、当該凸レンズの主軸を前記第1の偏向手段の中心と前記第2の偏向手段の中心とを結ぶ直線と同軸となるように、かつ、前記第2の凸レンズの後側の主点を前記第2の偏向手段の中心からの距離がf2の位置に配置することを特徴とするレーザ加工装置。
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