JP4251052B2 - 超音波パラメトリックスピーカ - Google Patents

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Description

本発明は、超音波パラメトリックスピーカに関するものである。
従来より、互いに異なる周波数の強力な超音波を発生する2台のスピーカを備えた超音波パラメトリックスピーカが提供されている。2台のスピーカから、互いに周波数の異なる強力な超音波を発生させると、2つの超音波が媒質(例えば空気)の非線形性によって干渉を起こし、これらの周波数の和と差の周波数をもつ波が発生する。ここで、差の周波数をもつ波が可聴域になるように、2台のスピーカから出力される超音波の周波数を設定しておけば、差の周波数の波が可聴域になり、発生した可聴音を聞くことができる(例えば特許文献1参照)。
従来の超音波パラメトリックスピーカでは、超音波の発生源として共振型の振動子を用いており、強力な超音波を発生させるためには共振点で駆動する必要があるから、発生する超音波の周波数が略固定されてしまい、それらの和と差の周波数も略固定されていた。したがって、生成される可聴音の周波数も略固定されることになる。
例えば共振周波数が約30kHzの振動子を用いる場合に、音圧は下がるものの29kHz或いは31kHzの超音波が出せたとすると、約2kHzの周波数範囲で可聴音が出せることになる。しかしながら、人間の可聴域は20Hz〜20kHzと言われ、約20kHzの周波数レンジを有しているので、共振型の振動子で出せる可聴音の周波数レンジはその10%程度であった。
また従来より、特許文献2に示されるように、超音波の発生源として、発熱体の発熱で媒質を膨張及び収縮させることで、超音波を発生させるものも提案されているが、このような圧力波発生装置を用いた超音波パラメトリックスピーカは存在しなかった。
特開平3−252299号公報(第1頁−第2頁) 特開平11−300274号公報(段落番号[0009]−[0011])
上述した従来のパラメトリックスピーカでは、超音波を発生させるために共振型の振動子を用いており、その周波数レンジが人間の可聴域の10%程度であるから、一般のスピーカのように人間の可聴域をカバーする任意の周波数の可聴音を発生させるためには、共振周波数の異なる振動子を複数設置することになり、スピーカのサイズが大きくなって、製造コストが高くなるという問題があった。また、音圧の大きな超音波を発生させるために、共振周波数が同一の振動子を複数配置することも考えられるが、振動子の数が増えるので、スピーカのサイズが大きくなり、製造コストが高くなるという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、小型で低コストの超音波パラメトリックスピーカを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、基板、該基板の表面の少なくとも一部に設けられた基板よりも熱伝導率が小さい断熱層、及び断熱層における基板と反対側の面に設けられ入力された電気信号に応じて発熱する薄膜状の発熱体からなり、発熱体の発熱による媒質の膨張及び収縮で超音波を発生させる1乃至複数の超音波発生手段と、1乃至複数の超音波発生手段から、差音の周波数が可聴域となるような周波数の異なる複数の超音波を発生させるための電気信号を生成する信号生成手段とを備え、信号生成手段は、可聴音の周波数を解析して基本周波数の超音波を変調した電気信号を生成する周波数解析・合成手段と、入力信号に基づいて超音波発生手段を駆動する変調周波数出力手段を具備し、超音波発生手段から出力される超音波の波形が周波数解析・合成手段で生成された電気信号の波形と略同じ波形になるように、周波数解析・合成手段で生成された電気信号を補正した信号を変調周波数出力手段に出力する補正手段を設けるとともに、当該補正手段を、周波数解析・合成手段で生成された電気信号をバイアスして正の値とするバイアス手段と、バイアス手段の出力の平方根を補正信号として変調周波数出力手段に出力する平方根出力手段とで構成したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、上記断熱層が多孔質層からなることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、上記基板は半導体基板であって、該半導体基板及び上記多孔質層がそれぞれシリコンからなることを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1の発明において、超音波発生手段は、基板に設けた断熱層の表面に複数の発熱体をアレイ状に配置して構成されており、信号生成手段に、超音波発生手段から出力される超音波が所望の位置で収束するように当該超音波発生手段の備える個々の発熱体に出力する電気信号を個別に位相制御する位相制御手段を設けたことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1の発明において、超音波発生手段から出力される超音波を反射して所望の位置で収束させる凹面形状の反射部材を、当該超音波発生手段からレイリー長以内に配置したことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1の発明において、信号生成手段から発熱体に出力される電気信号の振幅を調整する振幅調整手段を設けたことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1の発明において、基板に設けた断熱層の表面に複数の発熱体がアレイ状に配置して構成された超音波発生手段を複数備え、信号生成手段に、各超音波発生手段から出力される超音波の方向を制御するために、各超音波発生手段の備える個々の発熱体に出力する電気信号を個別に位相制御する位相制御手段を設けたことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1の発明において、超音波発生手段から出力される超音波のレイリー長を表示する表示手段を設けたことを特徴とする。
従来のように共振型の振動子を用いる場合、強力な超音波を発生させるためには共振点で駆動する必要があるから、発生する超音波の周波数が固定され、その結果差音の周波数も固定されてしまうが、上述のように請求項1の発明では信号生成手段の生成した電気信号で発熱手段を駆動することにより、媒質を膨張、収縮させて、所望の周波数の超音波を発生させており、共振点がないから任意の周波数の強力な超音波を発生させることができる。したがって、所望の周波数の可聴音を発生させることができ、周波数変調も容易に行えるという効果がある。ところで、超音波発生手段では発熱体の発熱による媒質の膨張および収縮で超音波を発生させているので、発熱体の発する熱量すなわち音圧の変化は信号生成手段から入力される電気信号の二乗に比例し、出力される音の周波数は信号生成手段から入力される電気信号の周波数の2倍になるが、請求項1の発明では周波数解析・合成手段で生成された電気信号を補正した信号を変調周波数出力手段に出力する補正手段を設けているので、超音波発生手段から出力される超音波の波形を、周波数解析・合成手段で生成された電気信号の波形と略同じ波形にすることができる。さらに、平方根出力手段はバイアス手段の出力の平方根を補正信号として変調周波数出力手段に出力しているので、音圧の変化の周波数を周波数解析・合成手段で生成された電気信号の周波数と一致させることができる。またバイアス手段は周波数解析・合成手段で生成された電気信号をバイアスして、正の値に変換しているので、周波数解析・合成手段で生成された電気信号が負の値をとる場合でも、平方根出力手段によって平方根の値を補正信号として出力することができる。
請求項2の発明では、多孔質層は熱伝導率が小さいため、発熱体から多孔質層への熱伝導が少なく、その結果、発熱体から媒質へ効率良く熱を伝導させることができ、より強力な超音波を発生させることができる。
請求項3の発明では、半導体の製造プロセスを利用して容易に作製できるという効果がある。
請求項の発明では、基板に設けた断熱層の表面にアレイ状に配置された複数の発熱体に出力する電気信号を位相制御手段が個別に位相制御することによって、複数の発熱体から出力される超音波を所望の位置で収束させて、超音波が収束する位置での音圧を向上させることができる。
請求項の発明では、凹面形状の反射部材によって超音波発生手段から出力される超音波を反射して、所望の位置に収束させることで、超音波が収束する位置での音圧を向上させることができる。また超音波発生手段から出力される超音波は、レイリー長以内であれば略平面波で進行すると考えられるので、超音波発生手段からレイリー長以内に反射部材を配置することによって、超音波発生手段から出力される超音波が減衰することなく反射部材で反射させることができる。
請求項の発明では、振幅調整手段によって、信号生成手段から発熱体に出力される電気信号の振幅を調整することで、超音波発生手段から出力される超音波の音圧を変化させ、媒質の非線形性によって生成される可聴音の音量を変化させることができる。
請求項の発明では、各超音波発生手段の備える個々の発熱体に出力する電気信号を位相制御手段が個別に位相制御しているので、複数の超音波発生手段から出力される超音波の方向を制御して、媒質の非線形性によって可聴音が生成される領域を変化させることができる。したがって可聴音を聞かせる対象が移動する場合でも対象の動きに合わせて可聴音が生成される領域を移動させることができる。
請求項の発明では、表示手段の表示をもとに、超音波発生手段の設置位置から超音波の進行方向に位置する壁などの反射体までの距離がレイリー長以上となるように超音波発生手段を設置することができ、媒質の非線形性によって生成される可聴音がレイリー長を超えた位置にある反射体で反射されたとしても、反射体による反射波は無指向性で分散されるためその音圧は低くなり、スピーカの指向性が損なわれるのを防止できる。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(基本構成1)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成1を図1〜図5に基づいて説明する。
図1は超音波パラメトリックスピーカの概略構成図であり、超音波を発生する超音波発生器1とホーン2とでそれぞれ構成される2個のスピーカ(音源)SP1,SP2と、一方のスピーカSP1の超音波発生器1を駆動して基本周波数(例えば40kHzで固定)の超音波を発生させる固定周波数出力手段3と、可聴音の原音を記憶した原音記憶手段4と、原音の周波数を解析して基本周波数の超音波を変調する周波数解析・合成手段5と、周波数解析・合成手段5の出力に基づいて他方のスピーカSP2の超音波発生器1を駆動し、周波数が可変の超音波を発生させる変調周波数出力手段6とで構成される。ここに、固定周波数出力手段3と原音記憶手段4と周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6とで、超音波発生手段たる超音波発生器1から差音の周波数が可聴域となるような周波数の異なる複数の超音波を発生させるための電気信号を生成する信号生成手段が構成される。
超音波発生器1は図2及び図3に示すような構造を有し、シリコンのような半導体基板10の表面の一部を陽極酸化することでナノ結晶構造を有するポーラスシリコンのような断熱層11を形成し、断熱層11における半導体基板10と反対側の面に、外部から入力された電気信号に応じて発熱する薄膜状の発熱体12を形成してある。また、半導体基板10の表面には、発熱体12の両端にそれぞれ接続された接続端子13,13が設けられている。なお、発熱体12には、ジュール熱を発生するアルミニウムのような電気抵抗体を用いてあり、固定周波数出力手段3又は変調周波数出力手段6から接続端子13,13を介して入力される電気信号により駆動される。
図4(a)は固定周波数出力手段3或いは変調周波数出力手段6から発熱体12に入力される電気信号Vsを示しており、発熱体12に周波数が超音波域の電気信号を入力すると発熱体12でジュール熱が発生する。なお、発熱体12の熱容量は十分小さく、ジュール熱によって発熱体12の温度が超音波域の周波数で変化するようになっている。発熱体12は周囲の媒質である空気層と熱交換を行うので、発熱体12近傍の空気層の温度Tが図4(b)に示すように超音波域の周波数で変化する。この温度変化によって空気が膨張及び収縮を繰り返して、空気の粗密が発生し、図4(c)に示すように入力された電気信号Vsの2倍の周波数を有する超音波が発生する。ここで、半導体基板10と発熱体12との間にはポーラスシリコンのような多孔質層からなる断熱層11を設けてあり、多孔質層は半導体基板10に比べて熱伝導率が低いので、断熱層11が存在しない場合に比べて発熱体12の発生した熱が半導体基板10側へ逃げるのを抑制できる。その結果、発熱体12から媒質へ効率良く熱を伝導させることができ、より強力な超音波を発生させることができる。なお、半導体基板10及び断熱層11(多孔質層)はそれぞれシリコンからなり、既存の半導体の製造プロセスを利用して容易に製造することができる。
ところで、2つのスピーカSP1,SP2から、それぞれ異なる周波数f1,f2の2つの超音波(一次波)が出力されると、これらの超音波が空気の非線形性によって互いに干渉し、これらの和(f1+f2)と差(f1−f2)の周波数を有する波(二次波)が発生する。したがって、周波数f1,f2の差(f1−f2)が可聴域となるように、それぞれのスピーカSP1,SP2から出力される超音波の周波数を設定すれば、可聴音を発生させることができる。
ここでは2つのスピーカSP1,SP2の内、一方のスピーカSP1の超音波発生器1を固定周波数出力手段3により駆動しており、スピーカSP1から基本周波数f1(例えば40kHzで固定)の超音波を発生させている。また、他方のスピーカSP2の超音波発生器1は変調周波数出力手段6により駆動されており、周波数f2が例えば40kHz〜60kHzの範囲で可変の超音波を発生させている。
例えば、原音記憶手段4に周波数が100Hz、2kHz、及び15kHzの可聴音の信号が記憶されている場合、周波数解析・合成手段5は原音記憶手段4に記憶されている可聴音の信号と基本周波数f1の信号とを合成して、40.1kHz、42kHz、及び55kHzの3種類の信号を生成し、その合成信号を変調周波数出力手段6に出力する。そして変調周波数出力手段6は、周波数解析・合成手段5から入力された信号に基づいて、スピーカSP2の超音波発生器1を駆動し、スピーカSP2から周波数が40.1kHzと42kHzと55kHzの3つの超音波の合成波を出力させる。
図1に示すようにスピーカSP1から周波数f1の超音波が出力されるエリアをA1、スピーカSP2から周波数f2の超音波が出力されるエリアをA2とすると、2つのエリアA1,A2が重なる領域(図1中に斜線で示すエリアA3)では、2つの超音波の差音(周波数が(f1−f2)の音)と和音(周波数が(f1+f2)の音)が発生する。ここに、スピーカSP2から出力される超音波は基本周波数(40kHz)の信号と原音(可聴音)の周波数(100Hz、2kHz、15kHz)の信号とを合成した超音波であるから、スピーカSP1から出力される基本周波数f1の超音波とスピーカSP2から出力される超音波との差音は可聴音となり、エリアA3では原音記憶手段4に記憶された周波数が100Hz、2kHz、及び15kHzの可聴音が生成される。尚、可聴音の進行する方向は、スピーカSP1,SP2の中点を通り、スピーカSP1,SP2を結ぶ線分に対して略直交する方向D1となり、可聴音の進行方向に鋭い指向性を持たせることができる。
上述のように、この超音波パラメトリックスピーカでは、発熱体12の発生するジュール熱によって、発熱体12近傍の空気層に超音波域の周波数の温度変化を与え、空気層を膨張及び収縮させることで超音波を発生させており、従来のように共振型の振動子を用いていないので、任意の周波数の超音波を発生させることができ、人間の可聴域を1つの超音波発生器1でカバーすることができる。また共振型の振動子を用いる場合は、任意の周波数の超音波を発生するために共振周波数の異なる振動子を複数用意する必要があるが、本発明の超音波発生器1は任意の周波数の超音波を発生できるので、任意の周波数の超音波を発生させるために、超音波発生器1を複数用意する必要がなく、スピーカが大型化したり、製造コストがアップするのを防止できる。また、本発明の超音波発生器1から出力される音波の音圧を周波数を変化させて測定したところ、図5に示すような実験結果が得られ、インパルス動作では音圧が約100Paの超音波を発生できることが確認できたので、共振型の振動子を用いる場合のように音圧の大きな超音波を発生させるために、共振周波数が同一の振動子を複数配置する必要がなく、スピーカが大型化したり、製造コストがアップするのを防止できる。
(基本構成2)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成2を図6に基づいて説明する。
図6は超音波パラメトリックスピーカの概略構成図であり、超音波を発生する超音波発生器1とホーン2とで構成されるスピーカSPと、可聴音の原音を記憶した原音記憶手段4と、原音の周波数を解析して基本周波数(例えば40kHzで固定)の超音波を変調する周波数解析・合成手段5と、周波数解析・合成手段5の出力に基づいてスピーカSPの超音波発生器1を駆動する変調周波数出力手段6とで構成される。ここに、原音記憶手段4と周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6とで、超音波発生手段たる超音波発生器1から差音の周波数が可聴域となるような周波数の異なる複数の超音波を発生させるための電気信号を生成する信号生成手段が構成される。尚、超音波発生器1は図2及び図3に示すような構造を有しており、基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカと同様の構造であるので、その説明は省略する。
ここで、原音記憶手段4に周波数が100Hz、2kHz、及び15kHzの可聴音が記憶されている場合、周波数解析・合成手段5は、原音記憶手段4に記憶されている原音の周波数と基本周波数とを合成し、40.1kHz、42kHz、及び55kHzの信号を発生し、これらの信号と基本周波数(40kHz)の超音波を出力させる信号とを合成して、変調周波数出力手段6に出力する。そして、変調周波数出力手段6は、周波数解析・合成手段5から入力された信号をもとに超音波発生器1を駆動し、スピーカSPから40.1kHz、42kHz、及び55kHzの超音波と基本周波数(40kHz)の超音波の合成波を出力させる。
ここで、スピーカSPから異なる周波数f1,f2の2つの超音波(一次波)が出力されると、これらの超音波が空気の非線形性によって互いに干渉し、これらの和(f1+f2)と差(f1−f2)の周波数を有する波(二次波)が発生する。
したがって、スピーカSPから、周波数が40.1kHz、42kHz、及び55kHzの超音波と基本周波数(40kHz)の超音波の合成波が出力されると、超音波が出力されるエリアA4で周波数の異なる複数の超音波が干渉して、これらの差音と和音が発生し、周波数が100Hz、2kHz、及び5kHzの原音(可聴音)が発生する。尚、発生した可聴音は、超音波の出力方向と同一の方向(図中の矢印D2)に進行するので、可聴音の進行方向に鋭い指向性を持たせることができる。
上述のようにこの超音波パラメトリックスピーカでは、1つのスピーカSPから、差音の周波数が可聴域となるような周波数の異なる複数の超音波を発生させており、出力された超音波が空気の非線形性によって互いに干渉することで、可聴音を発生させているので、基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカに比べてスピーカ(音源)の数を少なくできるという利点がある。
(実施形態
本発明の実施形態を図7及び図8に基づいて説明する。本実施形態では、基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて、周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6との間に周波数補正手段7を設けている。周波数補正手段7は、超音波発生器1から出力される超音波の波形が周波数解析・合成手段5で生成された電気信号の波形と略同じ波形となるように、周波数解析・合成手段5で生成された電気信号を補正した信号を変調周波数出力手段6に出力するものであり、周波数解析・合成手段5で生成された電気信号波形(電圧波形)にバイアス電圧を加えて正の値とするバイアス電圧加算回路7aと、バイアス電圧加算回路7aの出力の平方根を補正信号として変調周波数出力手段6に出力する平方根回路7bとで構成される。尚、周波数補正手段7以外の構成は基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
ところで、基本構成1の超音波パラメトリックスピーカで説明したように超音波発生器1では、発熱体12に電気信号を印加し、発熱体12の発生するジュール熱によって、発熱体12近傍の空気層に温度変化を与え、空気層を膨張、収縮させることで超音波を発生させている。ここで、発熱体12の抵抗値をR、発熱体12に印加する電圧をV1とすると、発熱体12で発生する熱量Wは以下の式(1)で求められる。
W=V12/R …(1)
この式(1)から明らかなように、発熱体12で発生される熱量Wは電圧V1の二乗に比例するので、超音波発生器1から出力される超音波の音圧変化も電圧V1の二乗に比例することになる。
ここで、発熱体12に印加する電圧V1の振幅をAとして、電圧V1=Asinθと表すと、熱量Wは以下の式(2)で表される。
W=(Asinθ)2/R=A2(1−cos2θ)/2R …(2)
つまり、超音波発生器1から出力される超音波の周波数は、発熱体12に印加される電圧信号V1の周波数の2倍の周波数となってしまう。
したがって、周波数補正手段7では、原音記憶手段4に記憶された可聴音をそのままの音で再生できるように、周波数解析・合成手段5で生成された電圧信号V1にバイアス電圧Vbを加算して正の値とした後、平方根をとることで補正信号(=(V1−Vb)1/2)を求めている。なお図8(a)〜(c)は各部の波形図を示し、同図(a)は周波数解析・合成手段5で生成された電圧信号V1の波形図、同図(b)はバイアス電圧加算回路7aの出力信号の波形図、同図(c)は平方根回路7cの出力信号の波形図である。
そして、周波数補正手段7で生成された補正信号に基づいて変調周波数出力手段6が発熱体12を駆動すると、発熱体12の発生する熱量W(すなわち超音波の音圧変化)は変調周波数出力手段6からの入力信号の二乗に比例するので、式(1)より熱量W=(V1−Vb)/Rとなって、出力される超音波の波形を元の電気信号V1の波形に戻すことができる。つまり周波数補正手段7の平方根回路7bが平方根をとることで、発熱体12の発熱によって超音波に変換されたときに、超音波の波形を周波数解析・合成手段5で生成された電気信号の波形と略同じ波形(すなわち周波数)に戻すことができる。また電圧V1をV1=Asinθと表した場合、位相によって電圧V1の値は正又は負の値をとることがあり、電圧V1の値が負の場合には平方根回路7bで平方根を求めることができないので、バイアス電圧加算回路7aが周波数解析・合成手段5で生成された電圧信号V1にバイアス電圧Vbを加算して正の値とした後、平方根回路7bが平方根を求めることで補正信号を求めて、変調周波数出力手段6に出力している。
尚、本実施形態では基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6との間に周波数補正手段7を追加しているが、基本構成2で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6との間に周波数補正手段7を設けても良く、上述と同様の効果を得ることができる。
ところで、基本構成1、2で説明した超音波パラメトリックスピーカではコンパクトディスクなどの記録媒体(原音記憶手段4)に録音された音楽をD/A変換した後、増幅して、超音波発生器1に出力していたが、増幅の際にノイズ成分も同時に増幅されるため、音質が悪化する要因となっていた。そこで、基本構成1又は2において周波数解析・合成手段5で生成されたアナログ電気信号を、ノイズの影響を受けにくいデジタル信号に一旦変換し、変調周波数出力手段6においてデジタル信号の状態で増幅した後、アナログ信号に戻すパルス変調を行うようにしても良く、このようなパルス変調を行うことによってノイズ成分を低減することができる。
(参考例)
本発明の参考例を図9に基づいて説明する。本参考例では、基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて、周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6との間に、空気(媒質)の非線形性によって発生する高調波成分を抑制するように周波数解析・合成手段5で生成された電気信号を補正した信号を変調周波数出力手段6に出力する非線形波生成手段8を設けている。尚、非線形波生成手段8以外の構成は基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
ところで、基本構成1の超音波パラメトリックスピーカで説明したように超音波発生器1では、発熱体12に電気信号を印加し、発熱体12の発生するジュール熱によって、発熱体12近傍の空気層に温度変化を与え、空気層を膨張、収縮させることで超音波を発生させている。図9に示すように2つの超音波発生器1,1から異なる周波数の超音波W1,W2を出力させると、2つの超音波W1,W2が重なり合うエリアA3では、超音波W1,W2が干渉してうなりが発生する。そして、このエリアA3における音圧が特定値以上(例えば120dB以上)であれば、空気の非線形性によって超音波の歪みが進行し、この歪み波に対する自己復調効果によって超音波の包絡線成分すなわち可聴音成分を復調している。この時同時に超音波がのこぎり波状に歪む現象が発生し(図9のW3)、この結果高調波成分が発生して、音質が低下するのであるが、本参考例では非線形波生成手段8が、周波数解析・合成手段5で生成された電気信号から可聴音の高調波成分を予め差し引いておくことで、超音波の歪みが進行したとしても、高調波成分の発生を抑制することができる。
尚、本参考例では基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6との間に非線形波生成手段8を追加しているが、基本構成2で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて周波数解析・合成手段5と変調周波数出力手段6との間に非線形波生成手段8を設けても良く、上述と同様の効果を得ることができる。
ところで上述したように媒質(例えば空気)の非線形性によって超音波を歪ませる条件の1つとして、超音波の音圧が一定値以上(例えば120dB以上)となることが必要であり、そのため超音波発生器1から効率良く超音波を放射させ、且つ、一定値以上の音圧が得られる領域を発生させる必要がある。
そこで、上述の実施形態1又は各基本構成において、図10に示すように先端ほど断面積が小さくなるような形状のホーン2’を超音波発生器1に取り付けても良く、ホーン2’内で超音波が通過する部位の断面積を先端に行くほど徐々に小さくすることで、超音波が伝搬している空気が圧縮されるから、音圧の向上を図ることができる。
また、一般に振動面が媒質に音波を放射するときには、振動面は媒質からの反作用を受けて、音が発生するのであるが、矩形の振動面の場合に振動面の一辺の長さが超音波の波長よりも小さくなると、振動面が振動しても振動面の周りの空気がすぐ横に逃げ、媒質に対する抵抗が無くなると、振動面の振動が仕事にならず、媒質(空気)にうまく伝わらなくなって、音の発生効率が悪化する。そこで、上述の実施形態1又は各基本構成において、発熱体12を円形若しくは矩形の形状に形成した場合に、発熱体12の直径若しくは短辺の長さを超音波の波長よりも大きくすることが望ましく、このような寸法に設定することで発熱体12から効率良く超音波を放射させることができる。
また上述の実施形態1又は各基本構成において、超音波発生器1に同じ電力量の電気信号を印加する場合、発熱体12の面積を小さくすると、電力集中が発生して音圧が向上するという利点がある。ここで、電力集中を発生させるために発熱体12のサイズを小さくした結果、発熱体12の短辺の長さが超音波の波長よりも短くなると、振動が媒質(空気)にうまく伝わらなくなるので、発熱体12のサイズを小さくする際には、発熱体12のサイズを超音波の波長よりも小さくするとともに、先端に行くほど断面積が大きくなるような形状のホーン2を超音波発生器1に取り付けることが望ましく、超音波を効率良く放射させることができる。
(基本構成3)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成3を図11及び図12に基づいて説明する。この超音波パラメトリックスピーカでは、上述した図6の超音波パラメトリックスピーカにおいて、基板10に設けた断熱層11の表面に9個の発熱体12a,12b…12iを3×3のアレイ状に形成してあり、変調周波数出力手段6で生成された電気信号の位相を制御して個々の発熱体12a,12b…に個別に入力する位相制御回路9a,9b…を信号生成手段に付加してある。尚、図11及び図12(b)では図示を簡単にするために、発熱体12a…および位相制御回路9a…の一部のみを省略して図示してある。また超音波パラメトリックスピーカの基本的な構成は基本構成2で説明した超音波パラメトリックスピーカと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、各々の位相制御回路9a…は、超音波発生器1から出力される超音波が所望の位置で収束するように超音波発生器1の備える個々の発熱体12a…に出力する電気信号を個別に位相制御している。例えば図12(b)に示すように、位相制御回路9a〜9cが一列に並んだ3個の発熱体12a〜12cの内、両側の発熱体12a,12cに出力する電気信号を同位相、中央の発熱体12bに出力する電気信号を発熱体12a,12cとは異なる位相に制御すると、発熱体12aから出力される超音波波形のピーク位置を結んでできる円C1の半径と、発熱体12cから出力される超音波波形のピーク位置を結んでできる円C3の半径とは同じ半径になるが、これらの円C1,C3の半径と発熱体12bから出力される超音波波形のピーク位置を結んでできる円C2の半径とは異なる半径になる。そして、発熱体12a,12b,12cからそれぞれ出力される超音波波形のピーク位置を結んでできる円C1,C2,C3が3つとも交差する位置(図12(b)中の領域E)が超音波の収束する領域となり、この領域Eでの音圧を高めることができる。すなわち位相制御回路9a…が各発熱体12a…に出力する電気信号の位相を制御することによって、各発熱体12a…から出力される超音波が収束する領域を制御し、所望の領域における超音波の音圧を高めることができる。
尚、基本構成1で説明した超音波パラメトリックスピーカにおいて、超音波発生器1から出力される超音波が所望の位置で収束するように超音波発生器1の備える個々の発熱体12a…に出力する電気信号を個別に位相制御する位相制御回路を付加しても良く、上述と同様の効果を得ることができる。
(基本構成4)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成4を図13に基づいて説明する。この超音波パラメトリックスピーカでは、上述した基本構成1、2の超音波パラメトリックスピーカにおいて、超音波発生器1から出力される超音波を反射して所望の位置で収束させる凹面形状の反射部材14を、超音波発生器1からレイリー長以内に配置している。尚、反射部材14以外は基本構成1、2で説明した超音波パラメトリックスピーカと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、図示及び説明は省略する。
ところで、一般的に音源の面積をS、放射される音の波長をλとすると、音源からR=S/λで求められる距離R(この距離をレイリー長と言う)までは、音波が略平面波で進行して、音圧も減衰せずに略一定となり、音源からの距離が距離Rを超えると、球面拡散によって音圧が音源からの距離に反比例して距離減衰する。したがって、音源から放射される超音波が一定値以上の音圧を維持している領域は略レイリー長以内であると考えられるので、超音波発生器1からレイリー長R以内の距離L(L<R)に反射部材14を配置することで、超音波発生器1から出力された超音波が距離減衰する前に反射部材14で反射させることができ、反射部材14で反射された超音波を所望の位置に略収束させ、収束位置における超音波の音圧を向上させることができる。
なお、この超音波パラメトリックスピーカでは超音波発生器1から出力された超音波を、超音波発生器1からレイリー長R以内の位置に配置した凹面形状の反射部材14で反射することによって、超音波を所望の領域に収束させているが、図14に示すように基板10の表面を放物線状に湾曲する凹面形状に形成するとともに、この放物面に断熱層11を形成して、断熱層11の表面に複数個(例えば4個)の発熱体12を形成することで、各々の発熱体12から出力された超音波を放物線の焦点付近で収束させて、収束位置における超音波の音圧を向上させるようにしても良い。
ところで、上述のように音源からR=S/λで求められる距離R(レイリー長)までは音波が略平面波で進行して、音圧も減衰せずに略一定となり、音源からの距離が距離Rを超えると、球面拡散によって音圧が音源からの距離に反比例して距離減衰するので、一定値以上の音圧が得られる距離R(レイリー長)を長くとるためには、音源の面積Sを大きくすることが望ましい。
ここで、超音波発生器1の面積を大きくするために、従来は図15(a)に示すように複数個の円形の圧電振動子20をハニカム状に密に配列し、各圧電振動子20から出力される超音波を合成することで、複数個の圧電振動子20の総面積と略同じ面積を有する単一の圧電振動子で近似される超音波を生成していたが、各圧電振動子20が円形の場合は隣接する圧電振動子20の間に隙間21ができ、合成された超音波の波形に歪が発生する。そのため、図15(b)に示すように複数個の矩形の発熱体12をアレイ状に配設して超音波発生器1を構成するのが好ましく、発熱体12を隙間無く密に配列できるので、合成された超音波の波形に歪ができるのを抑制している。また図15(c)に示すように各発熱体12に開口部が円形のホーン2bを取り付けた場合は、ホーン2bの間に隙間22ができて、合成された超音波の波形に歪が発生するため、図15(d)に示すように開口部の形状が方形のホーン2aを各発熱体12に取り付けるのが好ましく、ホーン2aを隙間なく密に配列できるので、合成された超音波の波形に歪が発生するのを抑制することができる。
(基本構成5)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成5を図16に基づいて説明する。この超音波パラメトリックスピーカでは、上述した基本構成2の超音波パラメトリックスピーカにおいて、変調周波数出力手段6から発熱体12に出力される電気信号の振幅を調整する振幅調整手段15を設けてある。尚、振幅調整手段15以外の構成は基本構成2の超音波パラメトリックスピーカと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
上述のように本スピーカでは超音波発生器1から周波数の異なる超音波を出力させており、超音波が空気の非線形性によって干渉を起こして歪み、この歪み波に対する自己復調効果によって超音波の包絡線成分すなわち可聴音成分を復調しており、超音波発生器1から出力される超音波の音圧と、自己復調効果によって得られる可聴音の音圧とは比例している。本スピーカでは振幅調整手段15を用いて変調周波数出力手段6から発熱体12に出力される電気信号の振幅を制御しており、発熱体12から出力される超音波の音圧を変化させることで、空気の非線形性によって生成される可聴音の音量を調整することができる。尚、上述した基本構成1の超音波パラメトリックスピーカにおいて、信号生成手段から発熱体12に出力される電気信号の振幅を調整する振幅調整手段15を設けても良く、上述と同様に振幅調整手段15によって可聴音の音量を調整することができる。
ところで上述の実施形態1及び基本構成1〜5では超音波発生器1から周波数の異なる超音波を出力させ、これらの超音波が互いに干渉し、媒質(空気)の非線形性によって超音波の歪みが進行し、この歪み波に対する自己復調効果によって超音波の包絡線成分すなわち可聴音成分を復調しているのであるが、空気の非線形性によって超音波を歪ませる条件としては超音波の音圧の他に、超音波発生器1の放射面の面積と超音波の周波数とがあり、互いの相互関係によって超音波の歪みの程度や、超音波の歪みによって生成される可聴音の音圧が決定される。
そこで、図17に示すように、上述した基本構成2の超音波パラメトリックスピーカにおいて、基板10に設けた断熱層11の表面に複数個の発熱体12a,12b,12cをアレイ状に配置し、各々の発熱体12a〜12cへの電気信号の出力を個別に入/切するためのスイッチSWa〜SWcを設けても良く、スイッチSWa…を用いて通電する発熱体12a…を選択することで、超音波を出力できる領域(放射面)の外形面積、すなわち通電する発熱体12a…の数を可変にして、超音波の音圧を変化させることができ、その結果空気の非線形性によって生成される可聴音の音量を調整することができる。
(基本構成6)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成6を図18及び図19に基づいて説明する。本スピーカでは、上述した基本構成1の超音波パラメトリックスピーカにおいて、基板10に設けた断熱層11の表面に複数個(例えば4個)の発熱体12a〜12dを2×2のアレイ状に形成してある。そして、基本構成3と同様に変調周波数出力手段6又は固定周波数出力手段3で生成された電気信号の位相を制御して個々の発熱体12a…に個別に入力する位相制御回路9a…を信号生成手段に付加してある(図11参照)。尚、超音波パラメトリックスピーカの基本的な構成は基本構成1又は3と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
ここで、各々の位相制御回路9a…が発熱体12a…に出力する電気信号の位相を変化させることによって、超音波発生器1から出力される超音波の進行方向を変化させることができる。例えば2つの発熱体12a,12bの配列方向と平行し、基板10の表面と略直交する平面内では、発熱体12a,12bに出力する電気信号の位相が同位相であれば、発熱体12a,12bの中点を通り、発熱体12a,12bを結ぶ線分に対して略垂直な方向D3に超音波が進行する(図18(b)参照)。一方、発熱体12a,12bに出力する電気信号の位相が異なっていれば、斜め前方の方向D4に超音波が進行する(図18(c)参照)。
本スピーカでは図19(a)(b)に示すように複数個の発熱体12a…がアレイ状に配設された超音波発生器1,1を2つ備えており、各々の超音波発生器1,1において各位相制御回路9a…が発熱体12a…に出力する電気信号の位相を制御することによって、各々の超音波発生器1,1から出力される超音波の方向を制御し、超音波が交差する領域F1,F2を変化させることができる。ここで、各々の超音波発生器1,1から出力される超音波が交差する領域において、波の重ね合わせで空気の非線形性が得られる音圧(例えば120dB)以上まで上昇するように、各発熱体12a…から出力される超音波の音圧を調整しているので、各々の超音波発生器1,1から出力される超音波の進行方向を制御することによって、可聴音の発生する領域F1,F2を変化させることができ、可聴音を聴かせる人などの対象が移動する場合でも対象の動きに合わせて可聴音が生成される領域を移動させることができる。
なお一般的にスピーカの指向性は音の放射面の面積に依存し、この面積が大きいほど指向性が鋭くなる。したがって図20(a)(b)に示すように各々の超音波発生器1,1において、基板10に設けた断熱層11の表面に複数個の発熱体12a〜12cをアレイ状に配置し、図17に示したような方法で通電する発熱体12a〜12cを選択することによって、超音波を出力できる領域(放射面)の外形面積を変化させるようにしても良く、放射面の外形面積を変化させることで超音波発生器1,1から送波される超音波の指向性、すなわち超音波の広がり角を変化させることができる。そして、超音波の広がり角を制御することで、超音波発生器1,1から送波される超音波が交差する領域の大きさを変化させて、可聴音が生成される範囲を変化させることができる。例えば図20(a)に示すように各々の超音波発生器1,1において2個の発熱体12a,12bに通電する場合は、図20(b)に示すように1個の発熱体12aのみに通電する場合に比べて超音波の広がり角が小さくなるので(θ1<θ3,θ2<θ4)、超音波発生器1,1から送波される超音波が交差する領域が狭くなり、その結果可聴音が生成される範囲がG2からG1に狭くなる。このように、放射面の外形面積を変化させることで超音波発生器1,1から送波される超音波の指向性、すなわち超音波の広がり角を変化させて、可聴音が生成される範囲を変化させることができ、可聴音を聴く人が複数いる場合には可聴音が生成される範囲を広げることで対応できる。
(基本構成7)
本発明に係る超音波パラメトリックスピーカの基本構成7を図21及び図22に基づいて説明する。尚、超音波パラメトリックスピーカの基本的な構成は上述した基本構成1又は2の超音波パラメトリックスピーカと同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、図示及び説明は省略する。
ところで、超音波発生器1から送波される超音波の初期音圧が、空気の非線形性が得られる特定値以上(例えば120dB以上)の音圧である場合、超音波発生器1からの距離がレイリー長以下であれば初期音圧が維持されるため、レイリー長以内の領域では空気の非線形性によって超音波が干渉を起こして歪みが発生し、この歪み波に対する自己復調効果によって超音波の包絡線成分すなわち可聴音成分が復調される。この領域(可聴音発生領域)の幅は狭く、指向角は20°程度と鋭くなっており、領域内で生成される可聴音の音圧は高くなっている。
ここで、図21(b)に示すように可聴音発生領域H1内に壁面のような可聴音の反射体23が存在すると、可聴音発生領域H1内で生成された可聴音が反射体23によって反射されて、可聴音の指向性が損なわれてしまう。一方、図21(a)に示すように可聴音の反射体23が可聴音発生領域H2の領域内には存在せず、可聴音発生領域H2の外側(すなわち超音波発生器1からレイリー長R以上の距離)に存在する場合は、可聴音発生領域H2で生成された可聴音が反射体23で反射されたとしても、反射体23による反射波は無指向性で分散されるため、反射波の音圧は低く、可聴音の指向性が損なわれることはない。
したがって、超音波発生器1にレイリー長が記載された表示ラベル(図示せず)を貼着するなどして、レイリー長を表示しておけば、ユーザは表示ラベルの表示を見て、超音波発生器1の設置位置から超音波の放射方向D5の正面に存在する壁などの反射体までの距離がレイリー長R以上になるように、超音波発生器1の設置位置を決定することができ、可聴音発生領域H2の領域内に可聴音の反射物体23が存在しないように超音波発生器1を設置することで、壁などの反射体による可聴音の反射の影響を低減し、可聴音の指向性が損なわれるのを防止できる。
ところでレイリー長Rは音源の面積をS、音の波長をλとすると、R=S/λで表される。ここで、単一周波数の音を出力する場合には波長λも単一の長さなので、レイリー長Rは一定となるが、音声のように複数の周波数の音が存在する場合はレイリー長Rが最長となる音、つまり最大周波数の音の波長からレイリー長Rを求めることとする。上述のように表示ラベルでレイリー長を表示する場合は、原音の周波数に合わせてレイリー長Rの表示を変更することができないため、人間の耳で聴くことができる可聴音が約20kHzまでということから、20kHzを最大周波数としてこの時の波長λ=17mmからレイリー長を求め、表示レベルに表示すれば良い。
なお本スピーカではレイリー長を記載した表示レベルで表示手段を構成しているが、表示手段を上記のものに限定する趣旨のものではなく、例えば液晶モニタのような表示装置を用い、周波数解析・合成手段5において原音に含まれる周波数の最大値を求め、最大周波数の音の波長からレイリー長Rを計算して、図示しない液晶モニタにレイリー長Rを表示するようにしても良い。この場合は原音に含まれる音の最大周波数からレイリー長Rを求めているので、レイリー長Rを正確に求めることができ、液晶モニタの表示をもとに可聴音発生領域H2の領域内に可聴音の反射物体23が存在しないように超音波発生器1を設置することで、壁などの反射体による可聴音の反射を低減し、可聴音の指向性が損なわれるのを防止できる。
また図22に示すように、超音波の放射方向D5の正面に、超音波の指向角で決まる可聴音発生領域H2以上の大きさを有する可聴音吸収部材24を、超音波発生器1からの距離がレイリー長R以上の位置に配置しても良く、可聴音発生領域H2で生成された可聴音がレイリー長Rを超えた位置に存在する反射体で反射されることによって無指向性の反射波が発生するのを軽減することもできる。
基本構成1の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 同上に用いる超音波発生器の断面図である。 同上に用いる超音波発生器の上面図である。 同上の動作を説明し、(a)は超音波発生器に入力される電気信号の波形図、(b)は発熱体の近傍の空気層の温度を示す波形図、(c)はスピーカから出力される音波の波形図である。 同上から出力される超音波の音圧の周波数特性である。 基本構成2の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 実施形態の超音波パラメトリックスピーカを示し、(a)は概略構成図、(b)は要部のブロック図である。 同上の各部の波形図を示し、(a)は周波数解析・合成手段の出力波形、(b)はバイアス電圧加算回路の出力波形、(c)は平方根回路の出力波形である。 参考例の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 同上の実施形態1又は各基本構成に用いるホーンの外観斜視図である。 基本構成3の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 同上を示し、(a)は発熱体の配置を示した平面図、(b)は超音波が収束する領域の説明図である。 基本構成4の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 同上の別の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 (a)は従来の超音波発生器の概略図、(b)は基本構成4の超音波発生器の概略図、(c)(d)は超音波発生器に取り付けるホーンの外観斜視図である。 基本構成5の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 同上の別の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。 基本構成6の超音波パラメトリックスピーカを示し、(a)は発熱体の配置を示した平面図、(b)(c)は超音波の進行方向の説明図である。 (a)(b)は超音波の進行方向を制御することで可聴音が生成される領域を変化させる場合の説明図である。 (a)(b)は超音波の広がり角を調整することで可聴音が生成される領域を変化させる場合の説明図である。 基本構成7の超音波パラメトリックスピーカを示し、(a)(b)は反射部材による反射の影響を示した説明図である。 同上の別の超音波パラメトリックスピーカの概略構成図である。
符号の説明
1 超音波発生器
3 固定周波数出力手段
6 変調周波数出力手段
10 半導体基板
11 断熱層
12 発熱体
SP1,SP2 スピーカ

Claims (8)

  1. 基板、該基板の表面の少なくとも一部に設けられた基板よりも熱伝導率が小さい断熱層、及び断熱層における基板と反対側の面に設けられ入力された電気信号に応じて発熱する薄膜状の発熱体からなり、発熱体の発熱による媒質の膨張及び収縮で超音波を発生させる1乃至複数の超音波発生手段と、前記1乃至複数の超音波発生手段から、差音の周波数が可聴域となるような周波数の異なる複数の超音波を発生させるための電気信号を生成する信号生成手段とを備え、前記信号生成手段は、可聴音の周波数を解析して基本周波数の超音波を変調した電気信号を生成する周波数解析・合成手段と、入力信号に基づいて前記超音波発生手段を駆動する変調周波数出力手段を具備し、超音波発生手段から出力される超音波の波形が周波数解析・合成手段で生成された電気信号の波形と略同じ波形になるように、周波数解析・合成手段で生成された電気信号を補正した信号を変調周波数出力手段に出力する補正手段を設けるとともに、当該補正手段を、周波数解析・合成手段で生成された電気信号をバイアスして正の値とするバイアス手段と、バイアス手段の出力の平方根を補正信号として変調周波数出力手段に出力する平方根出力手段とで構成したことを特徴とする超音波パラメトリックスピーカ。
  2. 上記断熱層が多孔質層からなることを特徴とする請求項1記載の超音波パラメトリックスピーカ。
  3. 上記基板は半導体基板であって、該半導体基板及び上記多孔質層がそれぞれシリコンからなることを特徴とする請求項2記載の超音波パラメトリックスピーカ。
  4. 前記超音波発生手段は、前記基板に設けた前記断熱層の表面に複数の前記発熱体をアレイ状に配置して構成されており、前記信号生成手段に、前記超音波発生手段から出力される超音波が所望の位置で収束するように当該超音波発生手段の備える個々の発熱体に出力する電気信号を個別に位相制御する位相制御手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の超音波パラメトリックスピーカ。
  5. 前記超音波発生手段から出力される超音波を反射して所望の位置で収束させる凹面形状の反射部材を、当該超音波発生手段からレイリー長以内に配置したことを特徴とする請求項記載の超音波パラメトリックスピーカ。
  6. 前記信号生成手段から前記発熱体に出力される電気信号の振幅を調整する振幅調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の超音波パラメトリックスピーカ。
  7. 前記基板に設けた前記断熱層の表面に複数の前記発熱体がアレイ状に配置して構成された前記超音波発生手段を複数備え、前記信号生成手段に、各超音波発生手段から出力される超音波の方向を制御するために、各超音波発生手段の備える個々の発熱体に出力する電気信号を個別に位相制御する位相制御手段を設けたことを特徴とする請求項記載の超音波パラメトリックスピーカ。
  8. 前記超音波発生手段から出力される超音波のレイリー長を表示する表示手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の超音波パラメトリックスピーカ
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