JP2012054762A - 薄膜音波出力装置 - Google Patents

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Yoshiki Nakajima
宜樹 中嶋
Tetsuhiko Muroi
哲彦 室井
Takemasa Usui
武順 薄井
Yoshihide Fujisaki
好英 藤崎
Nobuhiro Kinoshita
延博 木下
Yoshikuni Hirano
芳邦 平野
Hiroto Sato
弘人 佐藤
Keiji Ishii
啓二 石井
Genichi Motomura
玄一 本村
Hiroshi Hagiwara
啓 萩原
Akira Kiuchi
良 木内
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Abstract

【課題】本発明は、大面積の薄膜基板上へ容易に形成でき、無振動型の薄膜スピーカへの応用が可能な薄膜音波出力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】薄膜基板1と、
該薄膜基板上に形成された有機薄膜層2と、
該有機薄膜層上に形成され、電気信号が入力されることにより発熱する表面電極3と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜音波出力装置に関する。
従来から、情報表示用ディスプレイの大画面・高精細化・スリム化に伴い、ディスプレイ用の基板や表示素子は、極薄ガラスや薄型液晶パネル、有機EL(Electroluminescence)素子等を用いた薄型化・薄膜化が進められている。特に近年、超薄型・軽量で携帯性及び収納性に優れたディスプレイの実現を目指して、薄いプラスチックフィルム上に比較的低温で形成可能な有機TFT(Thin Film Transistor)や有機EL等の有機半導体を用いたフレキシブルディスプレイの研究が加速している。
ところで、これらのフレキシブルディスプレイをテレビ用のディスプレイにするためには、映像のみならず音声の出力も不可欠であり、スピーカの薄型化も同時に要求される。しかしながら、従来のスピーカは振動部を有し、フレキシブルディスプレイと物理的に接続して使用した場合、ディスプレイ自体が超薄膜・軽量のため、スピーカの振動に共振を起こし、画面が揺れてしまうという問題が生じる。もし、無振動の薄膜スピーカが実現できれば、その優れた構造を活かして、超薄膜型・大画面テレビの実現可能性が大きく高まることになる。
そこで、無振動型音波出力素子が研究されており、一例として、振動部を持たず、熱の上昇・下降を空気の疎密波に変換する「圧力波発生装置」及び「熱誘起超音波放出素子」が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。かかる特許文献1及び非特許文献1に記載の構成では、単結晶シリコン基板上に熱物性の大きく異なるポーラスシリコン層と表面電極を設けて、表面電極で発生した熱の大小を空気側に伝達することで音波を発生させている。
特開平11−300274号公報
H. Shinoda, T. Nakajima, K. Ueno & N. Koshida、"Thermally induced ultrasonic emission from porous silicon"、Nature、Vol 400、1999年8月26日
しかしながら、上述の特許文献1及び非特許文献1に記載の構成では、単結晶シリコンを用いているが、単結晶シリコンは大面積に形成することが困難であり、実用レベルでの供給が困難であるという問題があった。また、単結晶シリコンは非常に硬いため、扱う際に壊れやすいという欠点もあった。更に、単結晶シリコンは非常に高価であるため、今後は更なる価格高騰が予想され、低コストにスピーカを作製することが困難であるという問題もあった。
そこで、本発明は、大面積の薄膜基板上へ容易に形成でき、無振動型の薄膜スピーカへの応用が可能な薄膜音波出力装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第1の発明に係る薄膜音波出力装置は、薄膜基板と、
該薄膜基板上に形成された有機薄膜層と、
該有機薄膜層上に形成され、電気信号が入力されることにより発熱する表面電極と、を有することを特徴とする。
これにより、大面積で形成可能な有機薄膜により、表面電極で発生した熱を有効に反射することができ、効率よく空気の疎密波を発生させて音波を出力することができる。
第2の発明は、第1の発明に係る薄膜音波出力装置において、
前記有機薄膜層は、前記薄膜基板よりも熱伝導率が小さい有機材料を用いて形成されたことを特徴とする。
これにより、熱伝導率が小さい有機薄膜を用いて、熱エネルギーを効率よく音波に変換することができる。
第3の発明は、第1又は2の発明に係る薄膜音波出力装置において、
前記表面電極近傍から発生する音波の周波数が、前記表面電極に対して出力される交流信号の周波数と同一になるように音波周波数調整手段を更に有することを特徴とする。
これにより、入力される交流信号の正負の各々のピークで表面電極に発熱が発生するため、これを変換した音波の周波数が入力した交流信号の2倍となってしまう場合であっても、入力した交流信号と同じ周波数で入力信号に忠実に音波を出力することができ、スピーカとして要求される音声再現機能を果たすことができる。
第4の発明は、第3の発明に係る薄膜音波出力装置において、
前記音波周波数調整手段は、前記交流信号の周波数を前記表面電極に入力される前に半分にするか、前記交流信号に波高分のバイアス電圧を印加することを特徴とする。
これにより、簡素な回路を付加するだけで、出力される音波の周波数を、容易に表面電極に向けて供給される電気信号の周波数と同一にすることができ、薄型かつ省スペース化のスピーカの要請に応えることができる。
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る薄膜音波出力装置において、
前記薄膜基板及び前記有機薄膜層は、前記表面電極を複数配置可能な面積を有し、
複数の前記表面電極が前記有機薄膜層上にマトリクスアレイ状に配置され、前記複数の表面電極は、個別に電気信号の入力が可能であることを特徴とする。
これにより、複数の音源から音波を出力することができ、臨場感溢れる音響的効果を有して音声出力を行うことができる。
第6の発明は、第5の発明に係る薄膜音波出力装置において、
前記複数の表面電極に、位相をずらして交流信号を入力する位相制御手段を更に備え、
該位相制御手段が、前記複数の表面電極の配置に応じて位相をずらした前記交流信号を入力することにより、任意の方向へ音波を出力することを特徴とする。
これにより、音波を二次元的に移動させて出力することが可能となり、高い音響的効果を必要とするスピーカ等、種々の用途に応用が可能となる。
本発明によれば、大面積の無振動型音声出力手段を提供することができる。
本発明の実施例1に係る薄膜音波出力装置の一例を示した構成図である。図1(A)は、実施例1に係る薄膜音波出力装置の平面構成図である。図1(B)は、実施例1に係る薄膜音波出力装置の断面構成図である。 実施例1に係る薄膜音波出力装置に入力される入力信号、薄膜音波出力装置が発生する熱量及び音波の波形の一例を示した図である。図2(A)は、入力信号発生手段が発生させる入力信号の波形の一例を示した図である。図2(B)は、表面電極が発生させる熱量の波形の一例を示した図である。 入力信号にバイアスをかけて発生音波の周波数を調整する一例の説明図である。図3(A)は、入力信号発生手段で発生した入力信号の波形の一例を示した図である。図3(B)は、バイアスがかけられて調整された入力信号の波形の一例を示した図である。図3(C)は、発生熱量の波形の一例を示した図である。図3(D)は、発生音波の波形の一例を示した図である。 実施例1に係る薄膜音波出力装置の製造方法の一例を示した図である。図4(A)は、薄膜基板用意工程の一例を示した図である。図4(B)は、有機薄膜層形成工程の一例を示した図である。図4(C)は、表面電極形成工程の一例を示した図である。図4(D)は、接続端子形成工程の一例を示した図である。 実際に試作した薄膜音波出力装置の外観写真である。図5(A)は、試作した薄膜音波出力装置の平面構成を示した外観写真である。図5(B)は、試作した薄膜音波出力装置の斜視外観写真である。 本発明の実施例2に係る薄膜音波出力装置の一例の全体構成を示した図である。 実施例2に係る薄膜音波出力装置の位相制御手段により位相制御された入力信号波形を示した図である。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
図1は、本発明の実施例1に係る薄膜音波出力装置の一例を示した構成図である。図1(A)は、実施例1に係る薄膜音波出力装置の平面構成図であり、図1(B)は、実施例1に係る薄膜音波出力装置の断面構成図である。
図1(A)、(B)において、実施例1に係る薄膜音波出力装置は、薄膜基板1と、有機薄膜層2と、表面電極3とを備える。また、実施例1に係る薄膜音波出力装置は、必要に応じて、接続端子4と、音波周波数調整手段6とを備えてよい。また、実施例1に係る薄膜音波出力装置は、関連構成要素として、入力信号発生手段5と、配線7とを備える。
図1(B)に示すように、実施例1に係る薄膜音波出力装置は、薄膜基板1の表面上に有機薄膜層2が形成され、有機薄膜層2の表面上に表面電極3が形成され、表面電極3の表面上に接続端子4が形成された構成となっている。
また、図1(A)に示すように、実施例1に係る薄膜音波出力装置は、薄膜基板1のほぼ全表面に有機薄膜層2が形成され、有機薄膜層2の中央部分に、表面電極3と接続端子4が形成された構成となっている。また、接続端子4には、配線7を介して入力信号発生手段5が接続され、入力信号発生手段5と接続端子4との間に、音波周波数調整手段6が挿入接続された構成となっている。
薄膜基板1は、薄膜状の基板であり、有機薄膜層2よりも熱伝導率が高い材料から構成される。薄膜基板1の材料としては、例えば、厚みが0.01〜0.1mm程度のアルミニウムや銅等の金属薄膜又は金属箔、グラファイト等の炭素系薄膜、又は熱伝導率の高いプラスチック薄膜等を用いるようにしてもよい。また、熱伝導性の高い有機フィルムを上述の材料と貼り合わせて用いるようにしてもよい。これらの材料は、安価であり、容易に大面積で形成することが可能である。この点、高価で大面積の形成が困難な単結晶シリコン基板とは大きく異なる。
薄膜基板1は、必ずしも薄膜状ではなく、ある程度の硬度を有する通常の基板を用いることも可能である。しかしながら、表面電極3で発生した熱を、有機薄膜層2で表面電極3側に反射できずに、有機薄膜層2を伝達した熱は、薄膜基板1に伝達されることになるが、その場合に、薄膜基板1は速やかに熱を放熱できるように、熱伝導性が高いことが好ましい。上述の金属や炭素系の材料は、薄膜状に形成することが容易であるし、同じ材料であれば、厚みを持たせるよりも、薄膜状の方が放熱効率は高い。また、薄膜音波出力装置を薄膜スピーカとして用いる場合には、薄膜基板1を用いる方が用途に沿う。よって、本実施例においては、薄膜基板1を用いた例を挙げて説明する。
薄膜有機層2は、表面電極3で発生した熱を裏面側の薄膜基板1に伝達させず、表面電極側に反射するための薄膜状の有機層である。有機材料の中には、熱伝導率の低いものが数多く存在する。よって、そのような熱伝導率の低い有機材料を用いて薄膜有機層2を形成することにより、表面電極3で発生した熱を効率よく反射し、表面電極近傍の空気を熱膨張及び熱収縮させ、疎密波を生成することができる。
有機薄膜層2は、少なくとも、薄膜基板1よりも熱伝導率の小さい有機材料から構成され、好ましくは、薄膜基板1より熱伝導率より著しく小さい有機材料から構成される。有機薄膜層2については、例えば、化学気相成長法(CVD、Chemical Vapor Deposit)で形成可能なポリパラキシリレン系薄膜、塗布法や印刷法で形成可能なオレフィン系熱架橋樹脂、フッ素系アモルファス高分子樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、紫外線硬化樹脂等、多くの有機材料が利用可能である。また、有機薄膜層2は、上述のように、CVD、塗布法、印刷法で形成可能であるので、CVD膜、塗布膜、印刷膜で構成され得る。
このように、有機薄膜層2は、一般的に用いられている有機材料及び成膜方法を用いて形成可能であるので、安価に大面積の薄膜基板1上に形成することが可能である。この点、高価で大面積の形成が単結晶シリコンに更にポーラス加工を施したポーラスシリコンとは大きく異なる。
なお、有機薄膜層2の厚みは、出力したい音波により変化するが、例えば、0.01〜0.1mm程度の厚さで構成してもよい。
表面電極3は、電気信号が入力されることにより、熱を発生させる働きを行う。表面電極の材料としては、アルミニウム、タングステン、タンタル、クロム、モリブデン、白金、金、銀、銅等の金属膜、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物等の透明導電膜、有機導電性材料膜等を用いることができる。
上述の金属膜、透明導電膜、有機導電性材料膜は、従来の蒸着法やスパッタリング法を用いて形成可能な他、導電性ペーストや金属ナノ粒子含有材料等を用いて印刷法で形成することも可能である。
表面電極3は、少ない電力の供給で、効率良く発熱することが好ましい。表面電極3は、導電率が高い程電力消費は少なくなるが、熱の発生量が少なくなる。一方、表面電極3は、導電率が低い程熱の発生量は多くなるが、電力の消費が大きくなる。よって、電力の供給量と発熱量のバランスを考慮して、用途に応じた最適な材料を選択するようにしてよい。
表面電極3の厚みは、金属の抵抗値によって異なるが、例えば、10〜100nm程度としてもよい。
接続端子4は、外部から供給される入力信号の配線7又は電極(図示せず)を接続するための端子である。接続端子4は、例えば、表面電極3と同じ材料を用いて、同じ形成方法により形成してもよい。接続端子4の厚さは、外部の配線7と接続を行うため、表面電極3よりも厚く構成され、例えば、100〜500nm程度としてもよい。
なお、接続端子4は、表面電極3と外部からの配線7の接続を容易にするために必要に応じて設けられてよく、表面電極3に直接外部からの配線7が接続可能であれば、接続端子4を設けずに、直接外部からの配線7を表面電極3に接続する構成としてもよい。
入力信号発生手段5は、本実施例に係る薄膜音波出力装置に供給する入力信号を発生する手段である。入力信号には、音波と同様に、波動として伝達できる交流の電気信号を用いてよい。入力信号発生手段5は、出力させる音波に応じた波形の交流信号を発生させるため、例えば、正弦波発生手段と、変調手段を内部に備え、音声波に応じた波形の電気信号を生成するようにしてもよい。入力信号発生手段5で発生させた入力信号は、配線7及び接続端子4を介して表面電極3に入力される。
音波周波数調整手段6は、薄膜基板1、有機薄膜層2及び表面電極3で構成される素子が出力する音波が、入力信号発生手段5で発生する電気信号と周波数が異なる構成である場合に、出力する音波の周波数が入力信号発生手段5と同じ周波数となるように調整を行う手段である。なお、音波周波数調整手段6の具体的な機能及び構成については、後述する。
次に、図1及び図2を用いて、かかる構成を有する薄膜音波出力装置の動作について説明する。図2は、実施例1に係る薄膜音波出力装置に入力される入力信号、薄膜音波出力装置が発生する熱量及び音波の波形の一例を示した図である。
図2(A)は、入力信号発生手段5が発生させる入力信号の波形の一例を示した図である。図2(A)において、交流電気信号の1周期分が示されている。このように、入力信号発生手段5は、交流電気信号を発生させ、これを薄膜音波出力装置の表面電極3に入力信号として入力する。なお、図2(A)においては、理解の容易のため、正弦波に近い波形が示されているが、音声信号を表現するためには、音声信号に応じた変調がなされた交流信号が生成され、表面電極3に入力される。また、図2(A)においては、紙面の都合と理解の容易のために、1周期分のみが示されているが、実際には、複数周期の波形が連続して出力される。
図2(B)は、表面電極3が発生させる熱量の波形の一例を示した図である。図2(A)に示した入力信号が表面電極3に供給されることにより、表面電極3は、入力信号の大きさに応じた熱量で発熱する。図2(A)と図2(B)を比較すると分かるように、発生熱量は、入力信号の最大値で最大の熱量を発生させているとともに、入力信号の最小値でも最大の熱量を発生させている。これは、発生する熱量は、電圧又は電流の正負に拘わらず、供給される電圧又は電圧の絶対値の大きさに比例して発熱量が変化するからである。よって、図2(B)に示される発生熱量は、図2(A)に示される入力信号が最大値の地点で最大の発熱量となり、入力信号が0のときに発熱量も0となり、入力信号が負の方向に絶対値を増加させるにつれて発熱量が増加し、入力信号が最小値をとったときに発熱量の2つめの最大値をとっている。つまり、入力信号の交流波形は、発生熱量の波形においては、正負の符号の区別が無くなり、総て正に変換された波形となる。
かかる表面電極3で発生する熱量の変化により、表面電極3の近傍の空気には、熱膨張と熱収縮が発生する。つまり、発生熱量が増加したときには熱膨張を生じ、発生熱量が低下したときには熱収縮を生じる。かかる熱膨張と熱収縮により、空気の疎密波を発生させ、音波を発生させることができる。
図2(C)は、表面電極3付近の空気から発生される音波の波形の一例を示した図である。図2(C)において、発生熱量の増加、減少に応じて、音波が発生している。上述のように、表面電極3近傍の空気の熱膨張と熱収縮の変化により、空気に疎密波が発生し、図2(C)に示すような音波が発生する。図2(C)において、発生音波は、波形については発生熱量とほぼ同一であるが、正負の符号を有する交流波形となっている。音波は、正負の符号を有する波動であるので、図2(B)に示した正の符号のみの発生熱量の波形は、図2(C)のような正負の符号を有する波形に変換される。
ここで、発生音波は、図2(A)に示した入力信号と比較すると、波形の数が2倍、つまり2倍の周波数になっている。これは、図2(B)において、入力電気信号が熱量に変換されたときに、負の電気信号波形が正の熱量波形に変換されるが、その際に、波形全体としては波高が小さくなった2倍の周波数の波形に変換されているからである。よって、この波形の0基準が移動すると、出力される音波の波形は入力信号の2倍の周波数となる。
図1(A)に示した音波周波数調整手段6は、このような図2で説明した場合において、図2(A)に示した入力信号と図2(C)に示した発生音波の周波数が同一となるような調整を行う。
例えば、入力信号発生回路5で発生させた入力信号の周波数を、音波周波数調整手段6で1/2の周波数の波形に変換し、変換した入力信号を表面電極3に入力するようにすれば、図2(B)に示す発生熱量の波形の周波数が、入力信号発生回路5で発生させた電気信号の周波数と同一になり、発生音波は、入力信号発生回路5で生成された電気信号と同一にすることができる。
音波周波数調整手段6に、そのような機能を持たせる場合には、音波周波数調整手段6は、入力された交流電気信号の周波数を1/2にする周波数変換回路として構成すればよい。
図3は、入力信号にバイアスをかけて発生音波の周波数を調整する一例を説明するための図である。図3(A)は、入力信号発生手段で発生した入力信号の波形の一例を示した図であり、図3(B)は、バイアスがかけられて調整された入力信号の波形の一例を示した図であり、図3(C)は、発生熱量の波形の一例を示した図であり、図3(D)は、発生音波の波形の一例を示した図である。
図3(A)は、入力信号発生手段で発生した入力信号の波形の一例を示した図である。図3(A)に示すように、入力信号発生手段5で発生した電気信号は、波高値Aの正弦波であると仮定する。ここでも、説明と理解の容易のため、正弦波の1周期分の電圧波形を示す。
図3(B)は、入力信号発生手段5で生成された電気信号に、波高値A分のバイアス電圧をかけた調整入力信号を示している。図3(A)で示した発生入力信号に、波高値A分のバイアス電圧を印加することにより、調整入力信号は、負の部分が生じず、最低電圧が0の電圧波形に変換される。
なお、このようなバイアス電圧の付加は、音波周波数調整手段6で行う。この場合、音波周波数調整手段6は、バイアス電圧付加回路として構成されてよい。
図3(C)は、表面電極3で発生する熱量の波形の一例を示した図である。図3(C)に示すように、総て正の符号の入力信号が表面電極に入力されるため、発生熱量は、符号の変換は生じず、調整入力信号とほぼ同様の波形となる。
図3(D)は、表面電極3付近の空気で発生する音波の波形の一例を示した図である。音波は、正負の符号を有する波動であるので、図3(C)で示した発生熱量の波形において、0基準が移動し、正負の波形が生じるが、図3(D)に示す発生音波の波形は、図3(A)で示した発生入力信号の波形とほぼ同一となっている。
このように、入力信号発生手段5で生成された入力電気信号に、音波周波数調整手段6において、負の波形部分が無くなるように波高値以上のバイアス電圧を付加し、バイアス付加後の調整された入力信号を表示電極3に入力することにより、発生熱量の波形を調整後の入力信号とほぼ同一とし、発生入力信号と同一の周波数を有する音波を出力することができる。
このように、音波周波数調整手段6は、種々の手法を用いて、出力する音波の周波数を調整することができる。なお、本実施例においては、入力信号発生手段5で発生した入力信号が、表面電極3に入力される前に、周波数を調整したり、バイアスを調整したりして出力の音波の周波数を調整する例を挙げて説明したが、音波周波数調整手段6が入力信号発生手段5に組み込まれて、最初から調整済みの入力信号を出力するように構成してもよい。
また、音波周波数調整手段6は、最終的に出力される音波の周波数を適切にすることができれば、その他の手法が用いられてもよいし、接続箇所も種々の位置であってよい。
次に、図4を用いて、実施例1に係る薄膜音波出力装置の製造方法について説明する。図4は、実施例1に係る薄膜音波出力装置の製造方法の一例を示した図である。なお、図4において、今まで説明した構成要素と同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略するものとする。
図4(A)は、薄膜基板用意工程の一例を示した図である。薄膜基板用意工程においては、薄膜基板1が用意される。薄膜基板1の材料は、金属薄膜、金属箔、炭素系薄膜又はプラスチック薄膜等の熱伝導率が高い材料が用いられてよく、0.01〜0.1mm程度の厚さであってよい点は、図1において説明した通りである。
図4(B)は、有機薄膜層形成工程の一例を示した図である。有機薄膜層形成工程においては、薄膜基板1の表面上に、有機薄膜層2が形成される。有機薄膜層2は、有機薄膜を形成する種々の手法を用いて形成してよく、例えば、CVD等の成膜方法の他、塗布法や印刷法により形成してもよい。これらの手法によれば、大面積に有機薄膜層2を形成することができる。また、有機薄膜層2の厚さは、例えば、0.01〜0.1mm程度であってよい。また、用いられる材料については、薄膜基板1よりも熱伝導率の低い種々の有機材料が用いられてよいが、図1において説明したので、その詳細な説明を省略する。
図4(C)は、表面電極形成工程の一例を示した図である。表面電極形成工程においては、有機薄膜層2の表面上に、導電膜が形成される。導電膜は、金属膜、透明導電膜又は有機導電性材料膜等が用いられてよく、蒸着法、スパッタリング法等の伝統的な成膜方法の他、導電性ペーストや金属ナノ粒子含有材料を用いた印刷法等、種々の方法で形成することができる。
なお、表面電極3は、有機薄膜層2の全体を覆うように形成する必要はなく、音源として機能させたい箇所に形成すればよい。また、表面電極の厚さは、例えば、10〜100nm程度であってよい。
図4(D)は、接続端子形成工程の一例を示した図である。接続端子形成工程においては、表面電極3の表面上に、接続端子4が形成される。なお、接続端子4は、表面電極3の上を覆うように形成されてさえいれば、表面電極3をはみ出して、有機薄膜層2の上にも跨るように形成されても何ら問題は無い。接続端子4は、例えば、表面電極4と同じ材料で、同じ形成方法で形成されてもよい。また、厚さは、表面電極3より厚ければよく、例えば、100〜500nm程度で形成されてもよい。
このように、実施例1に係る薄膜音波出力装置は、一般的な薄膜形成工程を繰り返し行うことにより、容易に製造することができる。
図5は、実際に試作した薄膜音波出力装置の外観写真である。図5(A)は、試作した薄膜音波出力装置の平面構成を示した外観写真であり、図5(B)は、試作した薄膜音波出力装置の斜視外観写真である。
図5(A)において、図1において説明した構成要素に対応して参照符号が付されている。試作した薄膜音波出力装置は、薄膜基板1にはアルミニウムを用い、有機薄膜層2にはポリパラキシリレン薄膜を用い、表面電極3及び接続端子4にはアルミニウムを用いた。
実際に試作した薄膜音波出力装置の接続端子4に、外部からバイアス電圧が印加されていない正弦波の電気信号を入力した所、入力周波数の2倍の周波数の音波を確認することができた。出力された音波は、周波数特性にも優れており、ダイナミックレンジが広いことも分かった。これは、振動が無く、いかなる周波数においても共振が発生しないため、広い周波数領域で入力信号に忠実な周波数応答が可能なためである。また、図3において説明したように、バイアス電圧を有し、負の波形部分を有しない任意の電気信号を入力すると、入力にほぼ等しい出力信号を得ることができる。
このように、実施例1に係る薄膜音波出力装置によれば、大面積で厚さの薄い無振動型の薄膜音波出力装置として構成できるだけでなく、優れた周波数特性、広いダイナミックレンジを実現することができ、音響的特性にも優れた音声出力を行うことができる。
図6は、本発明の実施例2に係る薄膜音波出力装置の一例の全体構成を示した図である。図6において、実施例2に係る薄膜音波出力装置は、薄膜基板1と、有機薄膜層2と、表面電極3と、接続端子4とを備える点は、実施例1に係る薄膜音波出力装置と同様である。しかしながら、実施例2に係る薄膜音波出力装置は、薄膜基板1及び有機薄膜層2が表面電極3及び接続端子4を複数包含するように十分大きな面積で構成され、複数の表面電極3及び接続端子4がマトリクスアレイ状に配置されている点で、実施例1に係る薄膜音波出力装置と異なっている。
また、図6において、実施例2に係る薄膜音波出力装置は、表面電極3が、接続端子4及び配線7を介して、薄膜基板1の外部に存在する入力信号発生手段5に接続されている点と、入力信号発生手段5と接続端子4との間に、音波周波数調整手段6が必要に応じて接続される点は、実施例1に係る薄膜音波出力装置と同様である。
しかしながら、実施例2に係る薄膜音波出力装置は、入力信号発生手段5と接続端子4との間に、更に位相制御手段8が挿入接続されている点で、実施例1に係る薄膜音波出力装置と異なっている。
このように、複数の小さな表面電極3及び接続端子4を、大面積の有機薄膜層2上にアレイ状に配置する構成としてもよい。これにより、有機薄膜層2上に、複数の音源をマトリクスアレイ状に配置することができ、臨場感のある音声出力を行うことができる。
なお、個々の接続端子4には、個々に配線7が接続されており、外部から個々の表面電極に各々独立して電気信号の入力が可能なように構成されている。よって、複数の表面電極3は、各々個別に音声出力を制御することが可能である。
薄膜基板1の外部に設けられた位相制御手段8は、各表面電極3に入力する電気信号の位相を個別に独立して位相制御するための制御手段である。位相制御手段8が、隣接する表面電極3へ印加する電気信号の位相を制御することにより、任意の方向へ音波を出力することができる。
図7は、実施例2に係る薄膜音波出力装置において、位相制御手段8により位相制御された入力信号波形を示した図である。なお、図7のA〜Gは、図6に示した表面電極3及び接続端子4の組のA〜Gに対応している。つまり、図6の最上段のアレイ行の表面電極3及び接続端子4について、左から右に順にA〜Gの記号が付されているが、図7のA〜Gの表示は、図6の表面電極3及び接続端子4に対応している。
図7において、A〜Gについて、序々に位相が遅れてゆく入力信号波形が示されている。これにより、A〜Gの方向に、順に音声が出力されるような音声出力が可能となり、左から右に音声が移動するように音声出力を行うことができる。
なお、図6において、A〜Gの表面電極3及び接続端子4に接続された配線7は、総て独立して各々が位相制御手段8に接続され、更に各々が個別に音波周波数調整手段5に接続されている。音波周波数調整手段5は、実施1において説明したように、必要に応じて設けられてよく、入力信号発生手段5から出力された入力信号を調整し、適切な周波数の音波を出力するように調整を行ってよい。
音波周波数調整手段5及び位相制御手段8の双方を備えることにより、各々の表面電極3付近の空気から出力される音波の周波数を適切な周波数としつつ、任意の方向に移動するように音声を出力することができる。
なお、実施例2に係る薄膜音波出力装置の製造方法は、従来の半導体素子の微細化方法であるフォトリソグラフィー法を用いて、有機薄膜層2や表面電極3を1mm以下の大きさに微細化し、無数に集積化することにより、より複雑な音波出力の制御を可能にできる。また、有機薄膜層2や表面電極3の加工方法として、ウェットエッチングやドライエッチング等が挙げられる。
なお、図6においては、アレイをマトリクス状のアレイとした例を挙げて説明したが、用途に応じて、単に直線状に表面電極3を配置する線形アレイや、千鳥状に表面電極3を配置する千鳥アレイとして構成すること等も可能である。このように、アレイの配置形状は、用途に応じて、種々の配置構成とすることができる。
このように、実施例2に係る薄膜音波出力装置によれば、大画面の有機薄膜層2の表面上にアレイ状に複数の表面電極3を配置し、各々個別に電気信号の入力を可能に構成したことにより、アレイの任意の箇所の音源から音声出力を行ったり、音源が移動するような音声出力を行ったりすることができ、用途に応じた種々の複雑な音声出力が可能となり、音響的効果の高い音声出力を行うことができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
本発明は、無振動型の音声出力器として種々の用途に利用することができ、例えば、薄型のディスプレイのスピーカ等に利用することができる。
1 薄膜基板
2 有機薄膜層
3 表面電極
4 接続端子
5 入力信号発生手段
6 音波周波数調整手段
7 配線
8 位相制御手段

Claims (6)

  1. 薄膜基板と、
    該薄膜基板上に形成された有機薄膜層と、
    該有機薄膜層上に形成され、電気信号が入力されることにより発熱する表面電極と、を有することを特徴とする薄膜音波出力装置。
  2. 前記有機薄膜層は、前記薄膜基板よりも熱伝導率が小さい有機材料を用いて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜音波出力装置。
  3. 前記表面電極近傍から発生する音波の周波数が、前記表面電極に対して出力される交流信号の周波数と同一になるように音波周波数調整手段を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜音波出力装置。
  4. 前記音波周波数調整手段は、前記交流信号の周波数を前記表面電極に入力される前に半分にするか、前記交流信号に波高分のバイアス電圧を印加することを特徴とする請求項3に記載の薄膜音波出力装置。
  5. 前記薄膜基板及び前記有機薄膜層は、前記表面電極を複数配置可能な面積を有し、
    複数の前記表面電極が前記有機薄膜層上にマトリクスアレイ状に配置され、前記複数の表面電極は、個別に電気信号の入力が可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜音波出力装置。
  6. 前記複数の表面電極に、位相をずらして交流信号を入力する位相制御手段を更に備え、
    該位相制御手段が、前記複数の表面電極の配置に応じて位相をずらした前記交流信号を入力することにより、任意の方向へ音波を出力することを特徴とする請求項5に記載の薄膜音波出力装置。
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