JP4249951B2 - セルロース系繊維の湿潤発熱加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロース系繊維の湿潤発熱加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維の親水性官能基に水分子が吸着することにより、吸着熱が発生し、その吸着熱が積算されて繊維が発熱することが知られている。従来から、そのような湿潤発熱効果を促すための繊維の加工技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、特開2000-178881号公報では、セルロース系布帛を、N−メチロール系樹脂加工剤とその反応触媒と分子中に水酸基とアミノ基および/またはカルボキシル基を有する水溶性物質を水に混合溶解した混合水溶液で処理し、さらに加熱処理するセルロース系布帛の加工法が開示されている。また例えば、特開2000-256962号公報では、分子中に少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸が付着及び/又は含浸され、次いで加熱処理され、必要によりアルカリ金属の塩基性水溶液でソーピング処理されたセルロース繊維であって、セルロース繊維中のポリカルボン酸含有量および塩型カルボキシル基量が特定範囲内の吸湿発熱性セルロース繊維が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術では湿潤発熱性能および洗濯耐久性が不十分であり、また風合いの硬化、加工時の変退色、および強力の低下等が問題となっていた。特に前者の技術ではホルムアルデヒドが発生し、安全性に問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は優れた湿潤発熱性能および洗濯耐久性をセルロース系繊維に付与でき、風合いの硬化、加工時の変退色、および強力の低下等の問題を起こさないセルロース系繊維の湿潤発熱加工方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明はさらに生産性および安全性にも優れたセルロース系繊維の湿潤発熱加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はセルロース系繊維にポリカルボン酸部分塩を付着キュアリング処理した後に、有機酸の水溶液で処理し、キュアリング工程で形成されたポリカルボン酸分子とセルロース系繊維の複数のエステル結合の一部を加水分解することによって、ポリカルボン酸分子がセルロース系繊維と連結された状態を確保しつつ、水分子が吸着可能な酸型カルボキシル基(− COOH )の数を増大させる工程を含むことを特徴とするセルロース系繊維の湿潤発熱加工方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のセルロース系繊維の湿潤発熱加工方法においてはまず、セルロース系繊維をポリカルボン酸および/またはその部分塩(以下、本発明ではポリカルボン酸および/またはその部分塩を含む概念で、単に「ポリカルボン酸」という)で付着キュアリング処理する工程を含む(本明細書中、単に「酸処理A」という)。
【0009】
本発明の対象となるセルロース系繊維は特に限定なく、木綿、麻等の天然セルロース類、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン、ポリノジック等の再生セルロース、テンセル等の精製セルロースがいずれも対象となる。またこれらのセルロース系繊維と合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミド等)、セルロース繊維どうし、またはセルロース系繊維と動物性繊維(例えば、羊毛、シルク等)の混紡、混撚、交織、交編体としてのセルロース系繊維も加工の対象となる。加工に付す時の形態は、ワタ、糸、織物、編物、不織布または繊維製品のいずれであってもよい。
【0010】
本発明において使用されるポリカルボン酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する有機化合物である。そのようなポリカルボン酸としては、例えば、各種の直鎖状脂肪族ポリカルボン酸、分岐状脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が使用できる。それらのポリカルボン酸は水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、炭素−炭素二重結合等を有していてもよく、またアミノ酸であってもよい。さらにポリカルボン酸は水溶性であっても、水不溶あるいは難溶性であってもよいが、反応性および作業性の点で水溶性のものがより好ましい。
【0011】
ポリカルボン酸の例としては、具体的には、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の直鎖状脂肪族ポリカルボン酸、これらの酸の分岐状脂肪族ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等の不飽和二塩基酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ナジック酸等の脂環族二塩基酸;トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸等の三塩基酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物等の四塩基酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ脂肪酸、o-、m-またはp-フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸等が例示できる。これらのうち好ましいポリカルボン酸はクエン酸、ブタンテトラカルボン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸である。
【0012】
上記に例示したポリカルボン酸は、カルボキシル基が部分的に塩の形態でもよい。部分的に塩の形態でよいとは、付着キュアリング処理によりポリカルボン酸分子が少なくとも1個のエステル結合によってセルロース系繊維と結合を形成できる限りにおいて、一部のカルボキシル基が塩を形成していてもよいという意味である。
【0013】
ポリカルボン酸の塩はアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム等)塩、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム等)塩等が好ましく、ポリカルボン酸の水溶性を向上する点で特にアルカリ金属塩が好ましい。またアンモニウム塩、低級アミン塩も好ましい塩である。
【0014】
本発明においては、上記したセルロース系繊維にポリカルボン酸を付着キュアリング処理するが、「付着キュアリング処理」とは、ポリカルボン酸を含有する溶液(以下、「薬剤配合液」という)にセルロース系繊維を含浸させ、ポリカルボン酸をセルロース系繊維に付着させた後、そのセルロース繊維を乾燥加熱し、エステル結合を通じてポリカルボン酸がセルロース系繊維に結合するような処理を意味している。
【0015】
薬剤配合液は、安全性取り扱いの容易性の観点から、水を溶媒として含有する水溶液で使用するが、ポリカルボン酸が常温で液体のとき、ポリカルボン酸の原液をそのまま使用することを妨げるものではない。
【0016】
ポリカルボン酸はセルロース系繊維に対して0.1〜30重量%、特に0.5〜15重量%付着させるのが好ましい。この付着量はポリカルボン酸のセルロース系繊維に対する付着量であり、薬剤配合液としてポリカルボン酸水溶液を使用する場合にはセルロース系繊維に含浸されるポリカルボン酸水溶液に含まれるポリカルボン酸の量が上記範囲内であればよい。付着量が少なすぎると十分な湿潤発熱性能が得られないおそれがある。付着量が多すぎると風合いの硬化、加工時の変退色、強力の低下等の問題が生じることがある。ポリカルボン酸は2種以上組み合わせて使用されてよく、その場合はそれらの合計付着量が上記範囲内であればよい。なおポリカルボン酸のセルロース系繊維への付着量は、薬剤配合液のポリカルボン酸濃度(重量%)に絞り率(%)を乗じることにより算出された値である。
【0017】
含浸は従来公知の浸漬法、パッド法、スプレー法、コーティング法等いずれの方法も使用できる。薬剤配合液のポリカルボン酸濃度またはセルロース系繊維に対する薬剤配合液の量は、ポリカルボン酸がセルロース系繊維に対して上記の量となる範囲で付着できれば、特に制限されない。特に薬剤配合液のポリカルボン酸濃度は、あまりに稀薄ではポリカルボン酸がセルロース系繊維に十分な量で接触(付着)できず、また濃厚すぎても均一な付着が困難であるため、0.1〜50重量%、特に0.5〜20重量%が好ましい。
【0018】
薬剤配合液は、必要に応じて、柔軟剤、pH調整剤、機能性付与剤(抗菌剤、消臭剤、撥水剤、撥油剤、SR加工剤等)、風合調整剤(ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等)を添加することができる。これらの薬剤は本発明の効果(特に、湿潤発熱性能および洗濯耐久性の向上効果)を妨害しない程度に添加することが望ましい。
柔軟剤としては、例えば、シリコン柔軟剤、ポリエチレン系柔軟剤、脂肪族アミド系柔軟剤等が使用できる。
【0019】
薬剤配合液のpHは酸性側であれば問題なく、通常はpHの調整を要することなく薬剤配合液のpHは一般に酸性側にある。しかし、pHがあまりに低いと、例えばpHが1より小さいとセルロースが加水分解を受けて繊維強度が低下する傾向があり、好ましくない。pH調整剤はこのような場合に、薬剤配合液のpHを1〜7程度に調整するために使用してよい。pH調整剤としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、蟻酸塩や酢酸塩等のモノカルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、アンモニア、2級アミン類、3級アミン類、4級アンモニウム塩ヒドロキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、イセチオン酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヒドロキシ酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が例示できる。更に上記のナトリウムに代えて、カリウム、アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性の低級アミンの塩も使用でき、単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
セルロース系繊維にポリカルボン酸を付着させた後は、キュアリング処理を行って、セルロース系繊維の水酸基と当該繊維に付着したポリカルボン酸のカルボキシル基とを反応させ、エステル結合を形成する。
キュアリング処理にはその前に乾燥工程を含んでもよく、繊維の搬送が簡便になる。また、この乾燥後に後述する製品縫製工程、プリーツ付与工程を経てもよい。乾燥を行う場合、乾燥条件は特に制限されず、通常50〜150℃で10秒〜20分間加熱する。乾燥方法は従来公知の方法、例えば熱シリンダー、テンター等を使用することができる。
【0021】
キュアリング処理は通常130〜180℃で10秒〜20分間加熱する。キュアリング方法は従来公知の方法、例えばベーキングマシン、遠赤外線等の方法を使用することができる。
【0022】
キュアリング処理が終了した段階では、繊維に付着したポリカルボン酸の比較的多くのカルボキシル基がセルロース系繊維の水酸基と反応しエステル結合を形成していると考えられる。
【0023】
本発明においてはキュアリング処理を行った後に、セルロース系繊維を有機酸の水溶液(以下、「単に「酸水溶液」という」で処理する(本明細書中、単に「酸処理B」という)工程を含む。酸水溶液に、キュアリング処理を終了したセルロース系繊維を含浸させることにより、キュアリング工程で形成されたエステル結合を適度に加水分解する。「適度に」とはキュアリング工程で形成されたポリカルボン酸分子とセルロース系繊維の複数のエステル結合の一部を加水分解することによって、ポリカルボン酸分子がセルロース系繊維と連結された状態を確保しつつ、水分子が吸着可能な酸型カルボキシル基(−COOH)の数を増大させるという意味で使用している。例えば、ポリカルボン酸としてクエン酸を使用する場合、当該酸処理Bの直前でクエン酸は、保持する3個のカルボキシル基のうち平均して2個のカルボキシル基がエステル結合によってセルロース系繊維と連結されていると考えられる。このような状態のクエン酸および繊維を本発明の酸処理Bに供することによって、1個のエステル結合を保持しつつ、残りのエステル結合を加水分解し、結果として水分子が吸着可能な酸型カルボキシル基の数を増大させ得る。また、係る処理により、洗濯耐久性を低下させることなく湿潤発熱効果を大幅に改善できると考えられる。
【0024】
本発明で使用される有機酸は水溶液中で水素イオンを生成し、セルロース系繊維とポリカルボン酸とのエステル結合の加水分解を促進するものであれば特に制限されない。有機酸の具体例として、例えば、ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。
【0025】
上記の酸の中でも汎用性、取り扱い性の観点から有機酸、特に酢酸、クエン酸、中でも酢酸を使用するようにすることが望ましい。
【0026】
酸処理Bの条件、例えば、酸水溶液の酸濃度および温度、酸水溶液とセルロース系繊維との接触時間(含浸時間)等は互いに影響し合い、また酸の種類、セルロース系繊維の種類等に依存するため、一概には規定できないが、以下の範囲が一般的である;
【0027】
酸水溶液の酸濃度は通常、0.001〜50重量%、好ましくは0.001〜10重量%が適当である。酸水溶液の温度は特に制限されないが、通常、10〜80℃が適当である。
含浸時間は通常、30分間以下、特に5秒〜20分間が適当である。
これらの条件は強すぎるとポリカルボン酸分子内の全てのエステル結合が加水分解されるおそれがあり、洗濯耐久性の向上効果が得られ難いので好ましくない。一方、これらの条件は弱すぎるとエステル結合が加水分解され難く、酸型カルボキシル基の数が有効に増大されないおそれがあり、湿潤発熱性能の向上効果が得られ難いので好ましくない。
【0028】
酸の種類およびセルロース系繊維の種類に基づいて酸処理Bのより好ましい条件を規定すると、詳しくは以下の通りになる;
例えば、綿100%の生地またはポリエステル65%/綿35%の生地を酢酸水溶液で処理する場合には、酸濃度0.1〜10重量%および温度10〜80℃の水溶液に生地を5秒〜10分間、特に1〜3分間含浸させることがより好ましい。
また例えば、綿100%の生地またはポリエステル65%/綿35%の生地をクエン酸水溶液で処理する場合には、酸濃度0.1〜10重量%および温度10〜80℃の水溶液に生地を5秒〜10分間含浸させることがより好ましい。
【0029】
酸処理Bの後は、通常、水洗および乾燥を行う。
水洗は、有機酸が残留して繊維強度が低下しないように十分に行えば良い。
乾燥は前記酸処理Aで述べた乾燥と同様の条件および方法で行えばよい。
【0030】
本発明においては製品縫製、プリーツ付与工程を含んでもよい。その場合、製品縫製は本発明の上記一連の処理の前または後で行っても良いし、または上記の処理工程中、例えば、キュアリング処理の直前または直後に行っても良い。またプリーツ付与は製品縫製後、何時行っても良いが、処理後良好にプリーツを保持する観点からは、製品縫製直後、かつキュアリング処理直前に行うことが好ましい。
【0031】
本発明の方法の代表的なプロセスを以下に例示する;
〔加工方法1〕
第1工程:酸処理A工程、
第2工程:酸処理B工程、
第3工程:水洗工程、
第4工程:乾燥工程、
第5工程:製品縫製工程。
〔加工方法2〕
第1工程:製品縫製工程、
第2工程:酸処理A工程、
第3工程:酸処理B工程、
第4工程:水洗工程、
第5工程:乾燥工程。
【0032】
〔加工方法3〕
第1工程:酸処理A工程における含浸付着工程および乾燥工程、
第2工程:製品縫製工程、
第3工程:酸処理A工程におけるキュアリング工程、
第4工程:酸処理B工程、
第5工程:水洗工程、
第6工程:乾燥工程。
〔加工方法4〕
第1工程:酸処理A工程、
第2工程:製品縫製工程、
第3工程:酸処理B工程、
第4工程:水洗工程、
第5工程:乾燥工程。
〔加工方法5〕
第1工程:酸処理A工程における含浸付着工程および乾燥工程、
第2工程:製品縫製工程、
第3工程:プリーツ付与工程、
第4工程:酸処理A工程におけるキュアリング工程、
第5工程:酸処理B工程、
第6工程:水洗工程、
第7工程:乾燥工程。
【0033】
いずれの加工方法においても、キュアリング処理の後であれば何時でも、ソーピング、柔軟剤付与等の処理を行なうことができる。
【0034】
以上のような本発明の方法によると、湿潤発熱性能および洗濯耐久性が向上するだけでなく、風合いの硬化、加工時の変退色、および強力の低下等の問題が起こらない。また生産性および安全性が向上する。
【0035】
【実施例】
(実施例1)
表1に記載の生地に表2に記載の薬剤配合液を含浸させ、マングル(絞り率60%)にて絞った後、乾燥(130℃×2分)、キュアリング(160℃×2分)を行った。更に表3に記載の20℃の酸水溶液を1分間含浸(酸処理B)後、水洗、乾燥(130℃×2分)を行い、湿潤発熱性繊維製品を得た。なお、絞り率とは絞った直後に生地に含浸されている薬剤配合液重量の含浸前の乾燥生地重量に対する割合である。
【0036】
(実施例2〜4)
表2に記載のように薬剤配合液の配合を変更した以外は実施例1と同様の条件にて加工を行った。
(実施例5 )
表3に記載のように酸処理Bの条件を変更した以外は実施例1と同様の条件にて加工を行った。
(実施例6)
表1に記載のように加工生地を変更した以外は実施例1と同様の条件にて加工を行った。
【0037】
(比較例1)
表3の酸処理Bを行わないこと以外は実施例1と同様の条件にて加工を行った。
(比較例2)
表2の薬剤配合液を使用し酸処理を行わなかった以外は実施例1と同様の条件にて加工を行った。
【0038】
(比較例3)
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸4重量%及び乳酸ナトリウム4重量%を溶解させた水溶液に、実施例1と同様の生地を浸せき後、マングル(絞り率120%)にて絞った。乾燥(100℃×10分)、キュアリング(170℃×2分)の後、25℃の5%炭酸ナトリウム水溶液に10秒間浸せきし、ソーピングを行った。更に水洗後、乾燥(80℃×20分)を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
(評価)
得られた湿潤発熱加工繊維製品の薬剤付加率、湿潤発熱性能、洗濯耐久性、引裂強力、風合い及び加工時の変退色について評価した。
評価方法
(1)薬剤付加率
薬剤付加率は次式により求めた。
【数1】
【0043】
(2)湿潤発熱性試験方法
サンプル及び未加工生地を、60℃で12時間乾燥させた。更に、25℃のデシケータ内に2時間放置し、絶乾状態とした。その後、35℃、99%RHの雰囲気中に移し、10分間にわたり、湿潤発熱による温度の経時変化を測定した。(「データストッカーTRH-DM3」(神栄(株)製)使用)。その時のサンプルと未加工生地との温度差の最大値を湿潤発熱性の評価尺度とした。
【0044】
(3)洗濯耐久性
洗濯(JIS L0217 103法に準拠)10回後のサンプルにつき、湿潤発熱性評価を行った。
(4)引裂強力
JIS L1096 8.15.5D法(ペンジュラム法)に準拠した方法にて、生地緯方向の引裂強力を測定した。
【0045】
(5)風合い
加工後のサンプルにつき、風合いを手触りにて評価した。
○:柔軟;
×:硬い。
(6)加工時の変退色
加工前後のサンプルにつき、変色の度合いを目視にて評価した。
○:変色なし;
×:変色あり。
【0046】
【表4】
【0047】
【発明の効果】
本発明の方法により、優れた湿潤発熱性能および洗濯耐久性をセルロース系繊維に付与でき、しかも風合いの硬化、加工時の変退色、および強力の低下等の問題は起こらない。本発明の方法は従来からの設備で実施できるので、生産性にも優れている。また本発明の方法ではホルムアルデヒドは発生しないので、安全性にも優れている。
Claims (2)
- セルロース系繊維にポリカルボン酸部分塩を付着キュアリング処理した後に、有機酸の水溶液で処理し、キュアリング工程で形成されたポリカルボン酸分子とセルロース系繊維の複数のエステル結合の一部を加水分解することによって、ポリカルボン酸分子がセルロース系繊維と連結された状態を確保しつつ、水分子が吸着可能な酸型カルボキシル基(− COOH )の数を増大させる工程を含むことを特徴とするセルロース系繊維の湿潤発熱加工方法。
- ポリカルボン酸部分塩が、ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸の部分塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の物質である請求項1に記載の加工方法。
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