JP4249856B2 - インジケータを有する滅菌バック用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療器具を滅菌する際に使用される滅菌バックに用いられる、インジケータを有するシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
手術用具等の医療器具は無菌であることが求められるため、滅菌処理が施される。医療器具等の被滅菌物は滅菌バックで包装され、例えばオートクレーブを用いて高温水蒸気で一定時間加熱したりエチレンオキサイドガスに一定時間暴露させることにより、滅菌処理が施されている。
【0003】
このような滅菌バックは、水蒸気やエチレンオキサイドガスは通過するが菌は通過しない滅菌紙と、プラスチック製シートとが周辺部で熱融着された袋状のものであり、被滅菌物が封入されて滅菌処理に供される。
【0004】
実開平6−29546号公報には、滅菌処理の完了を確認するために、滅菌温度の水蒸気やエチレンオキサイドガスにより反応して変色するインジケータ変色剤を滅菌紙の外装に付した滅菌バックが開示されている。しかし、インジケータ変色剤が、滅菌の際に水蒸気等により滅菌紙へ溶出して滅菌紙や被滅菌物を汚染したり、保存の際に水や消毒剤等と接触または湿気を吸収して反応性の低下や脱色による変色異常を起こしてしまうという問題があった。さらに滅菌紙が不透明なため、滅菌処理完了をインジケータ変色剤により確認した後、バックを裏返して被滅菌物の確認をしなければならず、操作が煩雑であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の課題を解決するためなされたもので、滅菌の際に滅菌紙や被滅菌物を汚染せず、滅菌完了が的確かつ簡便に確認できる、滅菌インジケータインキ層を有する滅菌バック用シートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明の滅菌バック用シート1は、実施例に対応する図1を参照して説明すると、同一または異なるビニル基含有化合物重合体あるいはアミド基含有化合物重合体からなる、基材フィルム10と被覆フィルム14とが、ポリウレタン及び/又はエポキシ樹脂を含むラミネート層13を介して接着され、滅菌温度の水蒸気変色性またはエチレンオキサイドガス変色性の滅菌インジケータインキ層11が、基材フィルム10または被覆フィルム14と、ラミネート層13との接着面の少なくとも一部に形成されている。
【0007】
滅菌バック用シート1がこのラミネート層13を有していると、耐熱性に優れ、水蒸気での滅菌の際にフィルムが剥がれない。さらにフィルムやインジケータインキ層の劣化を防止することができ、実用的な滅菌バック用シートを得ることができる。
【0008】
ラミネート層は、ポリウレタン及び/又はエポキシ樹脂を含んでいてもよい。ポリウレタンは、ウレタン化ポリエーテル、ウレタン化ポリエステル、およびウレタン化ポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。これらのポリウレタンは耐熱性を有し、滅菌温度の水蒸気やエチレンオキサイドガスを透過するドライラミネート剤である。ポリウレタンがウレタン化ポリエステルであると一層好ましい。
【0009】
ラミネート層は、1〜7g/m2の厚さに塗布されていることが好ましい。ラミネート層が、前記ポリウレタンを主剤として他の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂を加えたものであってもよい。
【0010】
ビニル基含有化合物重合体やアミド基含有化合物重合体は、耐熱性、菌バリア性、物理的強度に優れたものが用いられる。ビニル基含有化合物重合体はポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルから選ばれる少なくとも一種類、アミド基含有化合物重合体はナイロンであることが好ましい。
【0011】
基材フィルムとして厚さ5〜20μmポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましく、8〜15μmであるとなお好ましい。
【0012】
被覆フィルムとして厚さ15〜100μmの無延伸ポリプロピレンを用いることが好ましい。この厚さにすることにより、適度な滅菌温度の水蒸気やエチレンガスオキサイドガスを透過させることができる。20〜40μmであるとなお好ましい。被覆フィルムは複数を重積させていてもよい。
【0013】
滅菌インジケータインキ層11がエチレンガスオキサイドで変色するためには、ニコチン酸アミドとフェノール性水酸基を有する化合物とを含有していることが好ましい。滅菌インジケータインキ層11がニコチン酸アミド、イソニコチン酸、タルク、メジウム(東洋インキ(株)製)を含有するエチレンオキサイドガス用グラビアインキの層であってもよい。フェノール性水酸基を有する化合物には、例えばビスフェノールA、ビスフェノールB、tert−ブチルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル、p−オキシ安息香酸プロピル、p−オキシ安息香酸ブチル、サリチル酸、サリチルアニリド、サリチルアミド、サリチル酸フェニル、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−メチレンジフェノール、4,4−チオ−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ヘキシル、没食子酸ドデシル、没食子酸オクチル、またはこれらの金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、ニッケル塩、コバルト塩が挙げられる。
【0014】
滅菌温度の水蒸気で変色するために、滅菌インジケータインキ層11が酸化ビスマス、チオ尿素、タルク、メジウム(東洋インキ(株)製)を含むオートクレーブ用グラビアインキの層であることが好ましい。滅菌インジケータインキ層11が、有機酸およびその金属塩の少なくとも一種とモノアゾ染料とを含有、または遷移金属化合物と硫黄とを含有していてもよい。モノアゾ染料としては、例えばC.I.(カラーインデックス)ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージレッド117、C.I.ディスチャージレッド137、C.I.ディスチャージバイオレット43が挙げられる。滅菌温度の水蒸気とエチレンオキサイドガスの両方で変色するために、滅菌インジケータインキ層11が、モノアゾ染料として例えば、C.I.ディスチャージレッド58、C.I.ディスチャージレッド88、C.I.ディスチャージレッド110、C.I.ディスチャージレッド117、C.I.ディスチャージレッド137、C.I.ディスチャージバイオレット43、ディスチャージブルー102を含んでいてもよい。有機酸としては例えば、アクリル酸、アジピン酸、L−アスパラギン酸、アゼライン酸、安息香酸、アントラニル酸、イソフタル酸、イタコン酸、ウンデシレン酸、クエン酸、グルタコン酸、クレソチン酸、サリチル酸、シアヌル酸、ジグリコール酸、DL−酒石酸、スルファニル酸、セバシン酸、ソルビン酸、テレフタル酸、ナフテン酸、ニコチン酸、馬尿酸、バルビツール酸、ピバリン酸、ピルビン酸、フタル酸、フマル酸、ベンジル酸、マレイン酸、マロン酸、メタクリル酸、メタニル酸が挙げられる。これら有機酸の金属塩としては、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0015】
滅菌インジケータインキ層11が、pH染料、アゾ染料、ロイコ染料のインジケータを含んでいてもよい。蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス、乾熱滅菌、放射線滅菌、ホルマリン殺菌等の滅菌処理に応じて、指標となるインジケータの少なくとも一種類を適宜選択し、滅菌インジケータインキ層11に含ませてもよい。
【0016】
滅菌インジケータインキ層11は、滅菌インジケータインキを印刷することによって形成することができる。印刷には、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、ナイフコーター印刷を挙げることができる。
【0017】
基材フィルム10、ラミネート層13、および被覆フィルム14が、透明または半透明であることが好ましい。
【0018】
この滅菌バック用シート1を有する本発明の滅菌バック2が、図2に示されている。滅菌バック2は、滅菌インジケータシート1と、滅菌紙21とが周辺部22で熱融着されている。滅菌インジケータシート1の基材フィルム10と被覆フィルム14のいずれが、滅菌紙21と熱融着していてもよい。熱融着するフィルムには、熱融着できる重合体、例えばポリプロピレンを含んでいる。滅菌紙21はクラフト紙、グラシン紙、滅菌包装材料専用に製造された滅菌紙が用いられる。滅菌包装材料専用の滅菌紙であると一層好ましい。
【0019】
滅菌インジケータインキ層11が、滅菌完了を示す図形24または文字であることが好ましい。
【0020】
三方の周辺部22で融着された滅菌バック2に被滅菌物20が挿入され、残る一方を熱融着して、封入された後、滅菌バック2ごと滅菌処理を施す。基材フィルム10、ラミネート層13、および被覆フィルム14が、透明または半透明であると、滅菌インジケータインキ層11による滅菌完了の確認と被滅菌物の確認とが同時にできるので効率がよい。
【0021】
滅菌バックを連続して製造するために、帯状の滅菌バック用シート1と帯状の滅菌紙とを重ね合わせて、長手の両端を熱融着したものをロール状に巻いていることが好ましい。これを所望の長さに切断し、切断した部位を熱溶融すると、滅菌バックが効率よく製造できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の滅菌バック用シートの実施例について詳細に説明する。
図1は、滅菌バック用シート1の実施例を示す断面図である。
【0023】
滅菌バック用シート1は、図1に示すとおり、基材フィルム10上に滅菌インジケータインキ層11を有し、ラミネート層13を介して被覆フィルム14に接着されている。
【0024】
本発明を適用するインジケータを有する滅菌バック用シートを試作した例を実施例1〜6に示す。インジケータが付された滅菌紙であって本発明を適用外の例を比較例1〜2に示す。
【0025】
(実施例1)
酸化ビスマス13重量部、チオ尿素20重量部、タルク7重量部、メジウム(東洋インキ(株)製)65重量部、酢酸エチル17重量部を混合し、オートクレーブ用(AC用)グラビアインキを得る。ポリエチレンテレフタレート(PET)製で厚さ12μmの基材フィルムに、オートクレーブ用グラビアインキを自走式プルーファーを用いて丸印状にグラビア印刷し、滅菌インジケータインキ層を形成した。その上にポリウレタン(PU)をコーター印刷で塗布し4±1g/m2のラミネート層を形成し、さらにポリプロピレン(PP)製で厚さ12μmの被覆フィルムで被った後、ゴムローラーで圧着し、40時間熟成させて、滅菌バック用シートを得た。
【0026】
(実施例2)
ポリウレタンに代えて、エポキシ樹脂(EP)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、滅菌バック用シートを得た。
【0027】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート製の基材フィルムに代えてポリプロピレン製の基材フィルムを用いたことと、ポリプロピレン製の基材フィルムに代えてポリエチレンテレフタレート製の基材フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、滅菌バック用シートを得た。
【0028】
(実施例4〜6)
ニコチン酸アミド10重量部、イソニコチン酸18重量部、タルク1重量部、メジウム(東洋インキ(株)製)70重量部、n−プロピルアルコール20重量部を混合してエチレンオキサイドガス用(EOG用)グラビアインキを得た。実施例1〜3のオートクレーブ用グラビアインキに代えて、このエチレンオキサイドガス用グラビアインキを用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして、各々実施例4〜6の滅菌バック用シートを得た。
【0029】
(比較例1)
滅菌紙であるクラフト紙に、滅菌インジケータインキとして実施例1のオートクレーブ用グラビアインキを印刷し、シートとした。
【0030】
(比較例2)
滅菌紙であるクラフト紙に、滅菌インジケータインキとして実施例4のエチレンオキサイドガス用グラビアインキを印刷し、シートとした。
【0031】
(滅菌バック用シートの性能評価試験)
実施例1〜3および比較例1で得られたシートに、水蒸気温度121℃で20分間のオートクレーブ滅菌処理を施した。滅菌インジケータインキ層は、滅菌前には白色を示していたが、滅菌後には黒褐色に変色した。
【0032】
実施例4〜6および比較例2で得られたシートに、エチレンオキサイドガス滅菌処理を施した。滅菌インジケータインキ層は、滅菌前には白色を示していたが、滅菌後には黄色に変色した。
【0033】
印刷された滅菌インジケータインキ層の変色前後の色調の明瞭性、形状として滲みやむらの有無について、印刷直度および滅菌後に目視により観察し、優良であったものを◎、良好であったものを○、不良であったものを△とする三段階で評価した。
【0034】
また、シートを水に20分間浸漬した後に先と同様にしてオートクレーブ滅菌処理を施す耐水性試験、またはシートをエタノールに20分間浸漬した後に先と同様にしてオートクレーブ滅菌処理を施す耐薬品性試験を行った。各試験後、滅菌インジケータインキ層の色調の明瞭性、形状について観察し、三段階で評価した。結果を表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表から明らかなように、滅菌インジケータインキ層は、印刷直後および滅菌後の変色前後の色調が明瞭であり、滲みやムラがない。さらに滅菌バック用シートは耐水性および耐薬品性に優れている。
【0037】
この滅菌バック用シートを有する滅菌バック2は、図2に示すとおり、実施例1の滅菌バック用シート1の被覆フィルム14と、クラフト紙21とを重ね合わせ、周辺部22の三方をヒートシーラーにより熱融着させることにより試作される。
【0038】
これに被滅菌物であるガーゼ20を挿入し、残る一辺を熱融着して封入する。この滅菌バック2にオートクレーブ滅菌処理を施す。滅菌インジケータインキ層11が所定の色調を示すことにより、滅菌処理が完了したことを確認することができる。
【0039】
なお、基材フィルム10が滅菌インジケータインキ層11の滅菌完了後の色調に近似した色素の含まれる標準色表示インキ層12を有していると、滅菌バック2上で標準色表示枠25として観察され滅菌インジケータインキ層の図形24の色調と対比できるため好ましい。
【0040】
このシートはレトルト食品の包装用材として用いることもできる。
【0041】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明の滅菌バック用シートは、基材フィルムと被覆フィルムとの間に滅菌インジケータインキ層を有している。このシートと滅菌紙とを重ね合わせ、周辺部を熱融着した滅菌バックは、滅菌紙や被滅菌物を汚染せず、水やアルコール等に影響を受けない。そのため滅菌完了を示す滅菌インジケータインキ層の色の変化により、的確かつ簡便に滅菌の完了が確認できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する滅菌バック用シートの実施例を示す断面図である。
【図2】本発明を適用する滅菌バックの実施例の見取り図である。
【符号の説明】
1は滅菌バック用シート、2は滅菌バック、10は基材フィルム、11は滅菌インジケータインキ層、12は標準色表示インキ層、13はラミネート層、14は被覆フィルム層、20は被滅菌物、21は滅菌紙、22は周辺部、24は滅菌インジケータインキ層の図形、25は標準色表示枠である。
Claims (5)
- 同一または異なるビニル基含有化合物重合体あるいはアミド基含有化合物重合体からなる、基材フィルムと被覆フィルムとが、ポリウレタン及び/又はエポキシ樹脂を含むラミネート層を介して接着され、滅菌温度の水蒸気変色性またはエチレンオキサイドガス変色性の滅菌インジケータインキ層が、該基材フィルムまたは該被覆フィルムと、該ラミネート層との接着面の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする滅菌バック用シート。
- 前記ラミネート層が、ウレタン化ポリエーテル、ウレタン化ポリエステル、およびウレタン化ポリエステルポリオールから選ばれる少なくとも一種類の主剤である前記ポリウレタンと、前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はシリコン樹脂とを、含むことを特徴とする請求項1に記載の滅菌バック用シート。
- 前記ビニル基含有化合物重合体が、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリ塩化ビニルから選ばれる少なくとも一種類、前記アミド基含有化合物重合体がナイロンであることを特徴とする請求項1に記載の滅菌バック用シート。
- 前記基材フィルム、前記ラミネート層、および前記被覆フィルムが、透明または半透明であることを特徴とする請求項1に記載の滅菌バック用シート。
- 請求項1に記載の滅菌バック用シートと滅菌紙とが、周辺部で熱融着されていることを特徴とする滅菌バック。
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