JP4248104B2 - シートベルト装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等のシートに着座した乗員の身体を、例えば緊急時にシートに拘束するシートベルト装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、車両の乗員等をシートに拘束するためのシートベルト装置として、連続ウェビングを用いた三点式シートベルト装置がある。
【０００３】
図３を参照すると、シートベルト装置２１０において、ウェビング２１１は、一端部を、リトラクター２１２に引出し可能に巻回されるとともに、他端部を、センターピラー２１３の下部に軸支されたアンカープレート２１４に、ウェビングガイドであるスルーアンカ２１５を介して係止される。ウェビング２１１は、アンカープレート２１４及びスルーアンカ２１５間に配設されたスルータング２１６を、車体におけるシート２１７近傍に立設されたバックル２１８に係合される。これによりウェビング２１１は、乗員（図示しない）をシート２１７に拘束する。
【０００４】
シートベルト装置２１０には、ウェビング２１１を案内するためのウェビングガイドとして、上記スルーアンカ２１５及びスルータング２１６の他に、図示しないスルーベルト、リトラクターの出口のウェビングガイド等が設けられる。
ウェビングガイドにはそれぞれ、長孔状のベルトスロット（ウェビング挿通間隙）が設けられており、ベルトスロットは、挿通されたウェビング２１１を摺接して案内する。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ウェビング２１１の良好な巻取り性、及びウェビング２１１引出し時の良好な操作感を確保するには、ベルトスロットとウェビング２１１との摺接部分における摩擦抵抗を可能な限り低く抑えることが必要である。そこで、被覆樹脂により表面形状を滑らかにしたり、また例えば米国特許第４，５８２，３４０号明細書に記載のように、低摩擦材を塗布する等して表面処理を施したりしている。
【０００６】
一方、インサート金具に被覆樹脂をモールド成形することにより形成されたスルーアンカでは、モールド材料によっては市場でユーザーが繰り返し使用しているうちに、スルーアンカとウェビング間の摩擦抵抗が増加して、巻取り引出しが重くなり（ウェビングとの摺接性の経時劣化）、巻取装置へのウェビング巻取性が低下するおそれがあった。
【０００７】
本発明はかかる事情に鑑み、簡易な構造でありながら、ウェビングガイドとウェビングとの良好な摺接性を持続することができるシートベルト装置を提供することを目的としている。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
乗員の身体をシートに拘束するウェビングと、
前記ウェビングと摺接して前記ウェビングを案内するウェビングガイドとを備えたシートベルト装置において、
前記ウェビングガイドは、インサート金具に被覆樹脂をモールド成形してなり、前記インサート金具及び前記被覆樹脂の表面にはメッキ処理が施されていることを特徴とするシートベルト装置を提供することによって達成される。
【０００９】
ここで、メッキとしてはクローム、ニッケル、無電解、コバルト、スズコバルト、硬質クロームの何れかが好ましいが、ゴミの付着が抑制されるものであれば、他のものであっても差し支えない。
【００１０】
本発明の上記構成によれば、ウェビングガイドと摺接して案内されたウェビングが、乗員の身体をシートに拘束する。ウェビングガイドは、インサート金具に被覆樹脂をモールド成形してなり、インサート金具及び被覆樹脂の表面にはメッキ処理が施されているので、ゴミの付着が抑制され、ウェビングとの摺接性に経時劣化が少なく、良好な摺接性を持続できる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、図示実施形態により、本発明を詳細に説明する。
図１は、本発明の一実施形態であるシートベルト装置のスルーアンカを示す正面図であり、図２は、図１のスルーアンカのＡ矢視断面図であり、図３は、スルーアンカの他の例を示す正面図である。
【００１２】
シートベルト装置において、ウェビングは、一端部を、リトラクターに引出し可能に巻回されるとともに、他端部を、車両のセンターピラーの下部に軸支されたアンカープレートに、ウェビングガイドであるスルーアンカを介して係止される。ウェビングは、アンカープレート及びスルーアンカ間に配設されたスルータングを、車体におけるシート近傍に立設されたバックルに係合させることにより、乗員をシートに拘束する。
【００１３】
図１及び図２を参照すると、スルーアンカ１０は、１枚の金属板を所要形状に加工されてなるインサート金具１１に、被覆樹脂１３をモールド成形により一体化し、この一体化したものの表面に、メッキ処理が施されて構成されている。
【００１４】
インサート金具１１の図中上部には、スルーアンカ１０をセンターピラーに回動自在に支持させるためのボルト等（図示しない）を嵌挿するボルト嵌挿孔１６が穿設される。インサート金具１１は、例えば鋼板等の金属板の打ち抜き加工により、所要形状に形成されており、スルーアンカ１０の耐荷重性能を確保する。インサート金具１１の材質としては、所定の荷重に耐えられるように、例えば所定の板厚の炭素鋼鋼材（ＪＩＳ ＳＣ材）等が挙げられる。また、このインサート金具１１に熱処理を施すことによって、所定の荷重に耐えられるように構成してもよい。
【００１５】
被覆樹脂１３は、インサート金具１１の周囲に、所要形状となるように、モールド成形され、該被覆樹脂１３によってウェビングが挿通するウェビング挿通間隙１４及びウェビングが摺接する部位（以下、「ウェビング摺接面１５」という。）が形成される。この被覆樹脂１３は、好ましくは機械的強度の高い樹脂からなり、その具体例としては、ポリアミド６等のポリアミド系樹脂、ポリアセタール及びポリプロピレンに強化剤を入れた樹脂、又はポリカーボネート等が挙げられる。ここで、後述するクロームメッキとのマッチングが良好な樹脂としては、例えば三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製のレニーＥ４０ポリアミド樹脂や東洋紡株式会社製の東洋紡ナイロン−６（メッキグレード Ｔ−７７７−０２，Ｔ−７７９）などがある。
【００１６】
前記インサート金具１１及び被覆樹脂１３の表面には、ゴミの付着を抑制して良好な摺接性を持続できるようにメッキ処理が施されている。このインサート金具１１及び被覆樹脂１３の表面に施すメッキとしては、クローム、ニッケル、無電解、コバルト、スズコバルト、硬質クロームの何れかが好ましい。金属面にメッキを施したものについて、良好な摺接性が持続できるというデータについては、例えば本出願人により先に出願された特願平１１−２５６２６０号によって証明されいる。この原理は被覆樹脂にメッキを施したものにおいても成り立つので、本願はこの原理を応用したものである。
【００１７】
次に、本実施形態の作用を説明する。
シートベルト装置において、乗員をシートに拘束するウェビングは、スルーアンカ１０のウェビング挿通間隙１４に挿通され、ウェビング摺接面１５との間で摺接されることにより、スルーアンカ１０に案内される。スルーアンカ１０は、ウェビングをウェビング摺接面１５との間で優れた摺接性を以て摺接させ、案内する。ウェビング摺接面１５はメッキ処理が施された被覆樹脂であるので、ゴミの付着が少なく、良好な摺接性が持続できる。
【００１８】
以上のように上記実施形態によれば、ウェビングガイドであるスルーアンカ１０は、スルーアンカ１０のインサート金具１１に被覆樹脂１３をモールドした後、被覆樹脂１３の表面にメッキ処理を施すことにより、ウェビング摺接面１５を形成し、ゴミの付着を抑制した。
したがって、簡易な構造でコスト低減を図ることができるものでありながら、スルーアンカ１０とウェビングとの摺接性に経時劣化が少なく、優れた摺接性が持続できる。
【００１９】
なお、インサート金具の形状、該インサート金具にモールド成形される被覆樹脂（ウェビング挿通間隙等）の形状、メッキ処理部の範囲等は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更、改良が可能であることは言うまでもない。例えば、メッキ処理が非常に高価になることを考慮しなければ、ウェビング摺接面にのみメッキ処理を施してもよい。
【００２０】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ウェビングガイドはインサート金具に被覆樹脂をモールド成形してなり、インサート金具及び被覆樹脂の表面にはメッキ処理を施したので、ゴミの付着を抑制できる。
したがって、簡易な構造でコスト低減を図ることができるものでありながら、ウェビングガイドとウェビングとの良好な摺接性を持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態であるシートベルト装置のスルーアンカを示す正面図である。
【図２】図１のスルーアンカのＡ矢視断面図である。
【図３】従来のシートベルト装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
１０ スルーアンカ
１１ インサート金具
１３ 被覆樹脂
１４ ウェビング挿通間隙
１５ ウェビングと摺接する部位（ウェビング摺接面）
１６ ボルト嵌挿孔

Claims (1)

1. 乗員の身体をシートに拘束するウェビングと、前記ウェビングと摺接して前記ウェビングを案内するウェビングガイドとを備えたシートベルト装置において、前記ウェビングガイドは、インサート金具に被覆樹脂をモールド成形してなり、前記インサート金具及び前記被覆樹脂の表面にはメッキ処理が施されていることを特徴とするシートベルト装置。

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