JP4245975B2 - 可変形状ミラーおよびその駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミラーの表面形状や曲率を変更可能な可変形状ミラーとその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば特開平2−101402公報は、このような可変形状ミラーの一例を開示している。この可変形状ミラーは、シリコンの枠部材と、枠部材にに支持された酸化珪素薄膜と、酸化珪素薄膜上に形成された反射鏡を兼ねる電極と、この電極に対向して配置された電極とを有している。酸化珪素薄膜上の反射鏡は、対向する二つの電極の間に電位差を与えることにより発生する静電引力によって凹状に変形される。さらに、反射鏡は、電圧を変えることによって、様々な曲率の凹形状に変形され得る。
【0003】
【特許文献1】
特開平2−101402公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、酸化珪素膜は、剛性が高く、変形し難いため、前述の可変形状ミラーは、大きな駆動力を必要とする。すなわち、対向電極間に極めて高い電圧を印加する必要がある。
【0005】
本発明は、この様な実状を考慮して成されたものであり、その目的は、駆動効率が向上された可変形状ミラーとその駆動方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ひとつには、可変形状ミラーに向けられており、以下の各項に列記する可変形状ミラーを含んでいる。
【0007】
1.本発明の可変形状ミラーは、枠部材と、前記枠部材に支持された可撓性薄膜と、前記可撓性薄膜に設けられたミラーとを有するミラー本体と、前記可撓性薄膜を変形させる駆動手段と、前記可撓性薄膜を加熱する加熱手段とを備えている。
【0008】
この可変形状ミラーにおいては、加熱手段により可撓性薄膜を加熱することにより可撓性薄膜の弾性率を低下させ、変形し易くすることができる。これにより、加熱前と比較して、一定の駆動力に対してミラーを大きく変形させることが可能になる。あるいは、加熱前と比較して、ミラーを同じく変形させるために必要な駆動力を減少させることが可能になる。つまり、駆動効率を高めることが可能になる。
【0009】
2.本発明の別の可変形状ミラーは、第1項の可変形状ミラーにおいて、前記可撓性薄膜近傍の温度を検出する温度センサーと、前記温度センサーの情報に基づいて加熱手段を制御し、可撓性薄膜の温度を一定に保つ温度制御手段とを更に備えている。
【0010】
この可変形状ミラーにおいては、さらに、ミラーを精度良く変形させることが可能になる。
【0011】
3.本発明の別の可変形状ミラーは、第1項または第2項の可変形状ミラーにおいて、前記可撓性薄膜は有機薄膜から成る。
【0012】
この可変形状ミラーにおいては、可撓性薄膜が有機薄膜から成るため、加熱に応じて可撓性薄膜の弾性率が好適に低下するので、駆動効率を良好に高めることが可能になる。
【0013】
4.本発明の別の可変形状ミラーは、第1項〜第3項の可変形状ミラーにおいて、前記可撓性薄膜に設けられた第一の電極と、第一の電極から間隔を置いて第一の電極に向き合って位置する第二の電極とを更に有しており、第一の電極と第二の電極は前記駆動手段を構成し、前記可撓性薄膜に設けられた前記ミラーは、第一の電極と第二の電極の間への電圧印加により第一の電極と第二の電極の間に発生する静電引力により変形される。
【0014】
この可変形状ミラーにおいては、加熱手段により可撓性薄膜を加熱することにより、加熱前と比較して、一定の印加電圧に対してミラーを大きく変形させることが可能になる。あるいは、加熱前と比較して、ミラーを同じく変形させるために必要な印加電圧を減少させることが可能になる。
【0015】
5.本発明の別の可変形状ミラーは、第4項の可変形状ミラーにおいて、前記可撓性薄膜に設けられた金属薄膜を有しており、この金属薄膜は前記ミラーと前記第一の電極とを兼ねている。
【0016】
6.本発明の別の可変形状ミラーは、第1項の可変形状ミラーにおいて、前記可撓性薄膜に設けられた駆動配線と、駆動配線を横切る磁界を発生させる磁界発生手段とを更に有しており、駆動配線と磁界発生手段は前記駆動手段を構成し、前記可撓性薄膜に設けられた反射面は、駆動配線に供給される電流と磁界との相互作用により発生する力により変形される。
【0017】
この可変形状ミラーにおいては、加熱手段により可撓性薄膜を加熱することにより、加熱前と比較して、一定の電流値に対してミラーを大きく変形させることが可能になる。あるいは、加熱前と比較して、ミラーを同じく変形させるために必要な電流値を減少させることが可能になる。
【0018】
7.本発明の別の可変形状ミラーは、第6項の可変形状ミラーにおいて、前記駆動配線は、大きな電気抵抗を有する発熱抵抗体から成り、発熱抵抗体は、前記加熱手段を構成し、電流の供給に対して容易に発熱する。
【0019】
この可変形状ミラーにおいては、ミラーを大きく変形させるために供給する電流を大きくすると、それに伴って駆動配線である発熱抵抗体の発熱量が大きくなり、これに応じて可撓性薄膜は弾性率が低下して変形し易くなる。従って、制御系を必要とすることなく、効率良く大きく変形させることが可能になる。
【0020】
8.本発明の別の可変形状ミラーは、第2項または第3項の可変形状ミラーにおいて、前記可撓性薄膜に設けられた駆動配線と、駆動配線を横切る磁界を発生させる磁界発生手段とを更に有しており、駆動配線と磁界発生手段は前記駆動手段を構成し、前記可撓性薄膜に設けられた反射面は、駆動配線に供給される電流と磁界との相互作用により発生する力により変形される。
【0021】
この可変形状ミラーにおいては、加熱手段により可撓性薄膜を加熱することにより、加熱前と比較して、一定の電流値に対してミラーを大きく変形させることが可能になる。あるいは、加熱前と比較して、ミラーを同じく変形させるために必要な電流値を減少させることが可能になる。
【0022】
本発明は、ひとつには、可変形状ミラーの駆動方法に向けられており、以下の各項に列記する駆動方法を含んでいる。
【0023】
9.本発明の駆動方法は、枠部材と、前記枠部材に支持された有機薄膜と、前記有機薄膜に設けられたミラーと、前記有機薄膜に設けられた第一の電極と、第一の電極から間隔を置いて第一の電極に向き合って位置する第二の電極とを有する可変形状ミラーの駆動方法において、有機薄膜の温度を70℃から有機薄膜のガラス転移温度までの範囲に保つことを特徴とする。
【0024】
この駆動方法においては、有機薄膜の温度を70℃から有機薄膜のガラス転移温度までの範囲に保つ。この温度範囲においては、有機薄膜は、好適に小さい弾性率を示すと共に、安定して可逆的に変形し得る。これにより、外部環境の温度変化の影響に左右されることなく、ミラーを精度良く、しかも長期にわたって安定に変形させることが可能となる。
【0025】
10.本発明の別の駆動方法は、枠部材と、前記枠部材に支持された有機薄膜と、前記有機薄膜に設けられたミラーと、前記有機薄膜に設けられた駆動配線と、駆動配線を横切る磁界を発生させる磁石とを有する可変形状ミラーの駆動方法において、前記有機薄膜の温度を、70℃から、前記磁石の不可逆減磁温度または有機薄膜のガラス転移点温度のいずれかの低い方の温度まで範囲に保つことを特徴とする。
【0026】
この駆動方法においては、有機薄膜の温度を、70℃から、磁石の不可逆減磁温度または有機薄膜のガラス転移点温度のいずれかの低い方の温度まで範囲に保つ。この温度範囲においては、有機薄膜は、好適に小さい弾性率を示すと共に、安定して可逆的に変形し得る。また、磁石の磁力が不可逆に減少する減磁と呼ばれる現象も起きない。これにより、外部環境の温度変化の影響に左右されることなく、ミラーを精度良く、しかも長期にわたって安定に変形させることが可能となる。
【0029】
11.本発明の別の駆動方法は、枠部材と、前記枠部材に支持された有機薄膜と、前記有機薄膜に設けられたミラーと、前記有機薄膜に設けられた第一の電極と、第一の電極から間隔を置いて第一の電極に向き合って位置する第二の電極とを有する可変形状ミラーの駆動方法において、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも大きいときは、可変形状ミラーを加熱して有機薄膜の弾性率を低下させ、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも小さいときは、可変形状ミラーを加熱しないことを特徴とする。
【0030】
この駆動方法においては、必要に応じて、ミラーを、室温における最大変位量よりも大きく変形させたり、必要な変形量を最大電圧値よりも低い電圧で実現したりすることが可能になると共に、一方においては、加熱のための電力消費を効果的に抑えることが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
第一実施形態
本実施形態は、静電駆動型の可変形状シリンダミラーに向けられている。以下、図1〜図3を参照しながら本実施形態について説明する。
【0033】
図1は、本発明の第一実施形態の可変形状シリンダミラーの側断面図である。図2は、図1に示されたミラー基板の斜視図である。図3は、図1に示された駆動電極基板の斜視図である。
【0034】
図1に示されるように、本実施形態の可変形状シリンダミラー100は、ミラー基板110と、駆動電極基板120とを有している。
【0035】
ミラー基板110は、図1と図2に示されるように、矩形の貫通穴を持つ矩形の枠部材111と、枠部材111に支持された可撓性薄膜112と、可撓性薄膜112に設けられた反射性薄膜(すなわちミラー)113とを有している。
【0036】
可撓性薄膜112は、枠部材111の矩形の貫通穴に対辺に沿って延びる一対のスリット114を有している。スリット114の間の可撓性薄膜112の部分が撓み変形することにより、反射性薄膜(すなわちミラー)113が略円筒面形状に変形し得る。
【0037】
可撓性薄膜112は、これに限定されないが、好ましくは、有機薄膜である。有機薄膜は、これに限定されないが、例えば、ポリイミド膜であってよい。反射性薄膜(すなわちミラー)113は、これに限定されないが、例えば、金やアルミ等の金属薄膜から成り、その表面が光学的反射面として機能すると共に、それ自体が電極として機能する。
【0038】
このようなミラー基板110は、例えば、Si基板の上面にポリイミド等から成るフォトレジストや樹脂溶液を塗布・成膜して有機薄膜112を形成し、その全面に金やアルミ等の金属を成膜して金属薄膜113を形成し、その後、Si基板を周縁部を除いて異方性エッチングで除去し、有機薄膜112の一部を除去してスリット114を形成して作製し得る。
【0039】
駆動電極基板120は、図1と図3に示されるように、基板121と、基板121の上面に形成された、駆動電極122と、駆動電極122への電圧印加のための電極パッド124と、駆動電極122と電極パッド124とを電気的に接続する配線123と、駆動電極122の両側に位置する一対のヒーター126と、ヒーター126への通電のための電極パッド128と、ヒーター126と電極パッド128とを電気的に接続する配線127とを有している。
【0040】
ヒーター126は、これに限定されないが、例えば、ペルチェ素子で構成される。あるいは、比較的大きな電気抵抗を有する薄膜パターンであってもよい。このような薄膜パターンは、例えば、ニッケルクロム合金の薄膜パターンをスパッタなどで形成したり、酸化ルテニウム系抵抗体ペーストを印刷して形成したりすることが可能である。
【0041】
このようなミラー基板110と駆動電極基板120は、図1に示されるように、駆動電極122がスリット114の間の有機薄膜112の部分と向き合うように、接着などの手法によって固定されている。つまり、駆動電極122と金属薄膜113は間隔を置いて向き合って位置している。
【0042】
可変形状シリンダミラー100は更に、有機薄膜112の温度を検出するための温度センサー137と、温度センサー137の情報に基づいてヒーター126を制御する温度制御回路135とを有している。温度センサー137は、図示されるように、有機薄膜112の近くに配置され、有機薄膜112の温度を直接検出してもよいが、例えばヒーター126に内蔵され、間接的に有機薄膜112の温度を検出してもよい。
【0043】
ミラーの変形動作
可変形状シリンダミラー100において、電源130により金属薄膜113と駆動電極基板120との間に電圧を印加する。一例においては、金属薄膜113を接地してグランド電極とし、駆動電極基板120の電極パッド124に適当な電位を与えてもよい。電圧印加により、駆動電極122と金属薄膜113の間に静電引力が発生し、有機薄膜112は、静電引力により、その弾性率と釣り合うまで、円筒面形状に撓み変形を起こす。結果として、金属薄膜113すなわちミラーがシリンダ状に変形される。
【0044】
電源130により金属薄膜113と駆動電極基板120との間に印加する電圧を増減させることにより、有機薄膜112の撓み具合、すなわちミラー113の曲率を変えることができる。つまり、可変形状シリンダミラー100は、電源130により、駆動電極122と金属薄膜113の間に印加する電圧を制御することにより、ミラー113の集光力を変化させることが可能である。
【0045】
ヒーターの働き
本実施形態の可変形状シリンダミラー100では、図3に示されるように、駆動電極基板120にヒーター126が設けられている。電極パッド128を介してヒーター126に電流を供給することにより、ヒーター126を加熱させることが可能である。ヒーター126の真上にはシリコン等から成る枠部材111が位置しており、ヒーター126から発生された熱は枠部材111を介して有機薄膜112に伝わる。
【0046】
有機薄膜112は例えばポリイミド樹脂から成る。ポリイミド樹脂の弾性率の温度特性を図4に示す。図4から分かるように、ポリイミド樹脂は、温度が高くなるにつれて弾性率が減少する。つまり、有機薄膜112が変形し易くなる。
【0047】
従って、本実施形態の可変形状シリンダミラー100では、ヒーター126により有機薄膜112を加熱することにより、加熱前と比較して、一定の駆動電圧に対してミラー113を大きく変形させることが可能になる。あるいは、加熱前と比較して、ミラー113を同じく変形させるために必要な駆動電圧を減少させることが可能になる。
【0048】
金属薄膜113と駆動電極122の初期のギャップは、枠部材111の厚みで設定されている。静電引力を利用した可変形状ミラーでは、初期のギャップの約1/3が変形制御可能な範囲であり、それ以上変形させると、グランド電極と駆動電極とが張り付いてしまう、プルインと呼ばれる現象が生じることが判明している。このため、金属薄膜113と駆動電極122の初期のギャップは、必要な最大変形量の約3倍以上に設定される必要がある。
【0049】
可変形状ミラー100の最大変形量を大きくするには、金属薄膜113と駆動電極122の初期のギャップを大きくする必要がある。金属薄膜113と駆動電極122の間に発生する静電引力は、ギャップの二乗に反比例して減少する。このため、金属薄膜113と駆動電極122を大きくすると、必要な静電引力、従って、必要な電圧は極めて大きくなる。
【0050】
しかし、デバイスの駆動に適用できる電圧は、配線123の絶縁破壊限界の他、様々な要因により制限されるため、無限に高くすることは不可能であり、仕様上で許容される最大電圧で使用される。
【0051】
従って、実際には、許容される最大電圧に基づいてギャップの量が実質的に規定されてしまうため、最大変形量もそのギャップの1/3に制限されてしまう。
【0052】
本実施形態の可変形状シリンダミラー100では、ヒーター126により有機薄膜112を加熱することにより必要な駆動電圧を低減させることが可能であるため、従来と同じ最大電圧に対して、より大きいギャップを持つように可変形状ミラーを設計・製作することが可能となる。結果として、従来と比較して、大きな最大変形量を持つ可変形状ミラーを提供することが可能となる。
【0053】
さらに具体的に解析を行なうと以下のように説明できる。
【0054】
静電引力を利用した駆動において、有機薄膜の弾性率Eと電圧V、電極間ギャップX、変形量X1の関係は、次の式で表される。
【0055】
E・X1 2/2=εSV2/(X−X1)2
ここで、εはギャップの誘電率、Sは電極の面積である。
【0056】
上式から、弾性率Eと電圧Vの二乗が比例しているため、有機薄膜の弾性率Eが減少すると、所定の変形量X1を得るための必要な電圧Vが減少することが理解できる。
【0057】
また、ギャップXを大きくすると、駆動に必要な電圧Vが二乗で増加するため、大きな変形が可能な可変形状ミラーを得ることが容易ではないことが分かる。
【0058】
温度の制御
本実施形態の可変形状シリンダミラー100では、温度制御回路135は、温度センサー137で検出される情報に基づいて、有機薄膜112の温度を一定に保つように、ヒーター126を制御するとよい。このように、有機薄膜112の温度を一定に保つことにより、有機薄膜112の弾性率が一定に保たれる。その結果、外部環境の温度変化の影響に左右されることなく、ミラー113を精度良く変形させることが可能となる。
【0059】
この制御においては、有機薄膜112を70℃以上にまで加熱することを前提とすると、室温との差が大きくなるため、冷却装置を特に用意しなくても温度制御が可能である。このため、ヒーター126の選択の自由度が拡大する。
【0060】
また、代表的な有機薄膜であるポリイミド膜を、例えば室温25度から70℃に加熱すると、弾性率は約10%低下する。また、110℃に加熱すると20%、160℃に加熱すると約50%、弾性率が低下する。これにより、同じ変形量を得るのに必要な駆動電流を大幅に低減することが可能である。
【0061】
逆に、70℃以下の温度では、ポリイミド膜の弾性率の低下が小さいため、駆動電流の低減の効果は少ない。
【0062】
さらに、有機薄膜112は通常内部に水分を含んでおり、環境湿度により水分の含有量が変化すると、有機薄膜の弾性率が変化してしまう。70℃以上に加熱することにより、有機薄膜に含まれる水分を常にほぼ除去することができる。その結果、環境湿度の影響を受けずに、可変形状ミラーを安定して動作させることが可能となる。
【0063】
一方、有機薄膜112はガラス転移点温度(Tg)以上では、材料物性の粘性的な性質が急激に大きくなり、クリープ変形などの不可逆な変形を起こす。このため、Tg点以下の温度で使用するのが、長期的な品質の安定性から妥当である。ガラス転移点温度は、例えば、ポリイミド材料では300℃程度である。
【0064】
これらの事実を考慮すると、温度制御は、有機薄膜112の温度を70℃から有機薄膜112のガラス転移温度までの範囲に保つとよい。この温度範囲においては、有機薄膜112は、好適に小さい弾性率を示すと共に、安定して可逆的に変形し得る。これにより、外部環境の温度変化の影響に左右されることなく、ミラー113を精度良く、しかも長期にわたって安定に変形させることが可能となる。
【0065】
第一変形例
以下、第一変形例について、図5と図6を参照しながら説明する。本変形例は、ミラー基板110に代えて代替可能な別のミラー基板に向けられている。
【0066】
図5は、本発明の第一実施形態の第一変形例におけるミラー基板の斜視図である。図6は、図5に示されるVI−VI線に沿ったミラー基板の側面断面図である。
【0067】
本変形例のミラー基板140は、図5と図6に示されるように、円形の貫通穴を持つ矩形の枠部材141と、枠部材141に支持された可撓性薄膜142と、可撓性薄膜142に設けられた反射性薄膜(すなわちミラー)143とを有している。
【0068】
可撓性薄膜142は、枠部材141の円形の貫通穴の全周にわたって支持されている。このため、枠部材141の円形の貫通穴の内側の可撓性薄膜142の部分が均等に撓み変形することにより、反射性薄膜(すなわちミラー)143が略球面形状に変形し得る。
【0069】
つまり、本変形例のミラー基板140は、上述した駆動電極基板120と組み合わせることにより、可変形状円形ミラーを構成し得る。このように構成された可変形状円形ミラーの利点等は、上述した本実施形態の可変形状ミラー100と同様である。
【0070】
第二変形例
以下、第二変形例について、図7を参照しながら説明する。本変形例は、静電駆動型の別の可変形状ミラーに向けられている。
【0071】
図7は、本発明の第一実施形態の第二変形例の可変形状ミラーの側断面である。図7において、図1〜図3に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明は省略する。
【0072】
図7に示されるように、本変形例の可変形状ミラー100Aは、可変形状ミラー100の構成に加えて、有機薄膜112と金属薄膜113を介して枠部材111の上に設けられた枠状のスペーサー151と、スペーサー151に支持された別の駆動電極基板150とを有している。駆動電極基板150は、貫通穴153を有する基板152と、貫通穴153を取り囲む駆動電極154とを有している。駆動電極154は、有機薄膜112に設けられた金属薄膜113と向き合っている。
【0073】
言い換えれば、本変形例の可変形状ミラー100Aは、下側の駆動電極基板120と、上側の駆動電極基板150と、それらの間に位置するミラー基板110Aとで構成され、ミラー基板110Aは、矩形の枠部材111と、有機薄膜112と、金属薄膜113と、枠状のスペーサー151とを有している。
【0074】
本変形例の可変形状ミラー100Aにおいては、電源130により金属薄膜113と下側の駆動電極122の間に電圧が印加されると共に、電源132により金属薄膜113と上側の駆動電極154の間にも電圧が印加される。金属薄膜113と下側の駆動電極122の間の電圧は電源130によって制御され、金属薄膜113と上側の駆動電極154の間の電圧は電源132によって制御される。
【0075】
これにより、有機薄膜112は、下方に撓み変形し得るだけでなく、上方にも撓み変形し得る。その結果、金属薄膜113すなわちミラーは、上側の駆動電極基板150の貫通穴153を通って入射する光に対して、正の光学パワーを持ち得るだけでなく、負の光学パワーをも持ち得る。
【0076】
つまり、金属薄膜113と下側駆動電極122の間の印加電圧と金属薄膜113と上側駆動電極154の間の印加電圧を適当に制御することにより、金属薄膜113すなわちミラーを、凹面にも凸面にも変形させることが可能でなる。
【0077】
本変形例の可変形状ミラー100Aにおいて、下側駆動電極122と上側駆動電極154が共に複数の部分から成り、電源130と電源132がそれぞれ下側駆動電極122と上側駆動電極154の各部の電位を制御する構成としてもよい。これにより、金属薄膜113すなわちミラーを、例えば、凹面と凸面が混在するような、より複雑な様々な形状に変形させることも可能となる。
【0078】
本変形例の可変形状ミラー100Aの利点等は、上述した本実施形態の可変形状ミラー100と同様である。つまり、ヒーター126により有機薄膜112を加熱してその弾性率を低下させることにより、駆動効率を高めることが可能である。
【0079】
他の変形例
本実施形態では、有機薄膜は、ポリイミド膜に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂、アクリレート系のフォトレジストなどであってもよい。また、可撓性薄膜は好ましくは有機薄膜であるが、これに限定されるものではなく、無機薄膜であってもよい。無機薄膜は、これに限定されないが、例えば、アルミ、金、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン等の膜であってもよい。結局、可撓性薄膜は、可撓性を持つ如何なる材料の膜であってもよい。
【0080】
また、枠部材は、シリコンを用いた例をあげたが、化学的あるいは物理的なエッチングなどの加工と可撓性薄膜の形成やパターニングが可能なプロセスとの親和性がある材料であれば、特にシリコンに限定されるものではない。
【0081】
また、本実施形態では、反射性薄膜(すなわちミラー)113が金属薄膜で構成され、金属薄膜が電極を兼ねているが、反射性薄膜(すなわちミラー)と電極は別の部材で構成されていもよい。この場合、反射性薄膜(すなわちミラー)が導電性を有する必要がないため、使用する材料の選択の幅が広がる。
【0082】
さらに、本実施形態では、枠部材111の厚みによって、初期の金属薄膜113と駆動電極122の間の初期のギャップの量を設定しているが、別途にスペーサ部材等を用いて初期のギャップの量を調整してもよい。
【0083】
第二実施形態
本実施形態は、電磁駆動型可変形状ミラーに向けられている。以下、図8と図9を参照しながら本実施形態について説明する。
【0084】
図8は、本発明の第二実施形態の電磁駆動型可変形状ミラーの斜視図である。図9は、図8のIX−IX線に沿った可変形状ミラーの側面断面図である。
【0085】
図8と図9に示されるように、本実施形態の可変形状ミラー200は、一対の永久磁石210と、それらの間に位置するミラー基板220とを備えている。
【0086】
ミラー基板220は、円形の貫通穴を持つ矩形の枠部材221と、枠部材221に支持された可撓性薄膜222と、可撓性薄膜222の内部を延びる複数の駆動配線231と、可撓性薄膜222に設けられた反射性薄膜(すなわちミラー)226とを有している。
【0087】
図9に示されるように、反射性薄膜(すなわちミラー)226は、これに限定されないが、例えば、金やアルミ等の金属薄膜から成り、その表面227が光学的反射面として機能する。可撓性薄膜222は、枠部材221の貫通穴の内側の部分が変形し得、これにより、反射性薄膜(すなわちミラー)226が変形し得る。
【0088】
可撓性薄膜222は、駆動配線231の上下に位置する基層223と保護層224から成る。基層223と保護層224は、それぞれ、これに限定されないが、好ましくは、有機薄膜である。有機薄膜は、これに限定されないが、例えば、ポリイミド膜であってよい。また、駆動配線231は、これに限定されないが、例えば、アルミや金や銅等の薄膜パターンであってよい。
【0089】
このようなミラー基板220は、例えば、シリコンから成る枠部材221にポリイミド等から成る基層223を形成し、その下面にアルミや金等から成る金属薄膜226を形成し、基層223の上面の全面に金やアルミや銅等の金属をスパッタリングや蒸着により成膜した後にパターニングして駆動配線231を形成し、さらにその全面にポリイミド等から成る保護層224を成膜して作製し得る。
【0090】
駆動配線231は、枠部材221の貫通穴の部分を横切って、言い換えれば、反射性薄膜(すなわちミラー)226を横切って延びている。さらに、駆動配線231は、永久磁石210によって作り出される磁界を横切って、好ましくは直交して延びている。複数の駆動配線231の両端は、それぞれ、互いに電気的に接続されている。
【0091】
駆動配線231は配線232を介して電源233に接続される。電源233は、所定の電流値の電流を供給し得る定電流回路で構成されている。これは、電圧を一定に保持する駆動では、温度変化に伴って駆動配線231の電気抵抗の値が変化するため、駆動配線231に流れる電流が変化し、結果として、ミラー226の変形量が変わってしまうからである。
【0092】
ミラー基板220は更に、ペルチェ素子やコイルヒータ等から成る温度調整器240と、有機薄膜222の温度を検出するための温度センサー244と、温度センサー244の情報に基づいて温度調整器240を制御する温度制御回路242とを有している。
【0093】
ミラーの変形動作
可変形状ミラー200において、永久磁石210は、有機薄膜222の面に略平行で駆動配線231を横切る磁界を作り出している。電源233により駆動配線231に電流が供給される。駆動配線231を電流と永久磁石210で作り出された磁界との相互作用により、有機薄膜222の面に略直交する方向を持つローレンツ力が発生する。その結果、枠部材221の貫通穴の内側に位置する有機薄膜222の部分が、有機薄膜222の面に略直交する方向に撓み変形を起こす。
【0094】
有機薄膜222の撓み変形の方向は、駆動配線231を流れる電流の方向に応じて決まる。また、撓み変形の大きさは、駆動配線231を流れる電流の方向に依存する。すなわち、電源233により、駆動配線231に流す電流の向きを制御することにより、ミラー226を凸面にも凹面にも変形させることができると共に、駆動配線231に流す電流の大きさを変えることにより、ミラー226の変形の程度を変えることができる。
【0095】
温度調整器の働き
本実施形態の可変形状ミラー200においては、温度調整器240により、有機薄膜222を加熱することが可能である。第一実施形態で説明したように、有機薄膜は、温度が高くなるにつれて弾性率が減少し、結果として、変形し易くなる。従って、可変形状ミラー200では、温度調整器240により有機薄膜222を加熱することにより、加熱前と比較して、一定の駆動電流に対してミラー226を大きく変形させることが可能になる。あるいは、加熱前と比較して、ミラー226を同じく変形させるために必要な駆動電流を減少させることが可能になる。
【0096】
ミラー226を大きく変形をさせるために、駆動配線231に流す電流を大きくすればよい。しかし、あまり大きい電流を流すと、駆動配線231が破壊される恐れがある。駆動配線231の膜厚を厚くすることによって、駆動配線231が破壊されてしまう電流の上限値を高めることはできる。しかし、その反面、ミラー226の反射面227は、駆動配線231の形状の影響を受けてしまい、滑らかな曲面にならなくなってしまう。
【0097】
このような理由から、電磁駆動型の可変形状ミラーにおいて、駆動に適用できる電流は、様々な要因により、その上限が制限されている。
【0098】
温度調整器240は、有機薄膜222を70℃以上にまで加熱することを前提とすると、室温との差が大きくなるため、冷却装置を特に用意しなくても温度制御が可能である。
【0099】
例えば、代表的な有機薄膜であるポリイミド膜を、室温25度から70℃に加熱すると、弾性率は約10%低下する。また、110℃に加熱すると20%、160℃に加熱すると約50%、弾性率が低下する。これにより、同じ変形量を得るのに必要な駆動電流を大幅に低減することが可能である。
【0100】
逆に、70℃以下の温度では、ポリイミド膜の弾性率の低下が小さいため、駆動電流の低減の効果は少ない。
【0101】
また、有機薄膜222は通常内部に水分を含んでおり、環境湿度により水分の含有量が変化すると、有機薄膜の弾性率が変化してしまう。70℃以上に加熱することにより、有機薄膜に含まれる水分を常にほぼ除去することができる。その結果、環境湿度の影響を受けずに、可変形状ミラーを安定して動作させることが可能となる。
【0102】
一方、有機薄膜222はガラス転移点温度(Tg)以上では、材料物性の粘性的な性質が急激に大きくなり、クリープ変形などの不可逆な変形を起こす。このため、Tg点以下の温度で使用するのが、長期的な品質の安定性から妥当である。
【0103】
また、永久磁石210は、高温に保持すると、不可逆な磁力の減少を起こす、減磁と呼ばれる現象が起こる。このため、あまり高い温度での可変形状ミラー100の使用は、可変形状ミラー100の駆動効率を時間の経過と共に低下させてしまう。
【0104】
具体的には、例えばネオジム系の磁石では、不可逆な減磁を避ける使用温度は、110℃以下が適当である。なお、使用温度は、厳密には、磁石の種類に応じてパーミアンス係数と温度による減磁曲線データより適宜設定されるとよい。
【0105】
これらの事実を考慮すると、温度制御は、有機薄膜222の温度を、70℃から、永久磁石210の不可逆減磁温度または有機薄膜222のガラス転移点温度のいずれかの低い方の温度まで範囲に保つとよい。この温度範囲においては、有機薄膜222は、好適に小さい弾性率を示すと共に、安定して可逆的に変形し得る。また、永久磁石210の磁力が不可逆に減少する減磁も起きない。これにより、外部環境の温度変化の影響に左右されることなく、ミラー226を精度良く、しかも長期にわたって安定に変形させることが可能となる。
【0106】
本実施形態において、有機薄膜は、ポリイミド膜に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂、アクリレート系のフォトレジストなどであってもよい。
【0107】
また、枠部材は、シリコンを用いた例をあげたが、化学的あるいは物理的なエッチングなどの加工と可撓性薄膜の形成やパターニングが可能なプロセスとの親和性がある材料であれば、特にシリコンに限定されるものではない。配線も蒸着等で形成しているが、さらにメッキを行なうなどにより、抵抗値などの電気的な特性を調整することも有効である。
【0108】
また、本実施形態では、駆動配線231の全てに同じ電流値の電流を供給する駆動しているが、これに限定されるものではなく、駆動配線231のそれぞれに別々な電流値の電流を供給して、ミラー226の変位量を場所によって変化させてもよい。
【0109】
第三実施形態
本実施形態は、別の電磁駆動型の可変形状ミラーに向けられている。本実施形態の可変形状ミラーは、第二実施形態の可変形状ミラーに類似しており、一部を除いて、第二実施形態の可変形状ミラーと同じ構成をしている。以下、図8と図9を参照しながら本実施形態について説明する。
【0110】
本実施形態の可変形状ミラーは、図8の可変形状ミラー200において、駆動配線231が大きな電気抵抗を有する発熱抵抗体から成り、温度調整器240と温度センサー244と温度制御回路242が省かれた構成を有している。
【0111】
駆動配線231を構成する発熱抵抗体は、これに限定されないが、例えば、チタンやニッケルクロム合金等の金属パターンから成る。金属パターンは、例えば、スパッタ等により形成されたり、酸化ルテニウム系抵抗体ペーストを印刷して形成される。
【0112】
本実施形態の可変形状ミラーにおいては、ミラー226を変形させるために、電源233により配線232を介して一定の電流を駆動配線231に流すと、永久磁石210により駆動配線231に略直交する磁界が作り出されているため、フレミングの左手の法則に従う電磁力により、有機薄膜222の面に略直交する方向に駆動力が発生する。枠部材221で裏打ちされていない有機薄膜222の領域は、駆動配線231に発生する駆動力により撓み変形を生じる。その結果、ミラー226は略球面に変形する。
【0113】
このとき、駆動配線231は、大きな電気抵抗を有しているため、それを流れる電流により発熱する。従って、有機薄膜222の弾性率が温度上昇により低下する。このため、電流値が一定であっても、加熱前より、ミラー226を大きく変形させることが可能となる。
【0114】
ミラー226をより大きく変形させるために、より大きな電流値を流すと、その分、駆動配線231の発熱量も増える。このため、有機薄膜222の弾性率が更に低下し、可変形状ミラーの駆動効率が更に向上する。
【0115】
従って、本実施形態の可変形状ミラーでは、駆動のために一定値の電流を駆動配線に供給すると、有機薄膜222の温度が、その電流値に対応した温度に自動的に変化する。ミラー226を大きく変形させるための大きな電流に対しては、それに応じて有機薄膜222の温度が高くなり、弾性率が低下するため、ミラー226の大きな変形を助ける。つまり、特に複雑な温度制御機構を必要とすることなしに、必要な変形量に応じた駆動効率(駆動感度)が自動的且つ無段階に選択される。
【0116】
さらに、有機薄膜の温度を高く設定するほど有機薄膜の線膨張係数に従う伸び変形が増加するため、より大きな変形を必要とする場合ほど温度を高く設定することは、必要な駆動電流を低減させる。
【0117】
前述したように、温度が高いほど、有機薄膜の弾性率は低下し、駆動電流に対する変位量の割合、つまり駆動効率(駆動感度)が向上する。これは反面、極めて微小な量の変形を制御するには敏感過ぎる場合がある。
【0118】
しかし、本実施形態の可変形状ミラーでは、ミラー226を小さく変形させるための電流は小さいため、有機薄膜222の温度は比較的低く、駆動感度が大きく向上されない。このため、ミラー226の小さい変形量を良好に制御することが可能になる。
【0119】
つまり、本実施形態の可変形状ミラーの駆動方法においては、必要なミラー226の変位量が比較的大きいときは有機薄膜222の温度を比較的高く保ち、必要なミラー226の変位量が比較的大きいときは有機薄膜222の温度を比較的低く保つ。これにより、必要なミラー226の変形量に応じて、好適な駆動効率あるいは好適な制御性を得ることが可能となる。
【0120】
また、本実施形態の可変形状ミラーにおいては、温度制御系を必要とすることなしに、必要なミラー226の変形量に適した制御性と駆動効率の向上を達成することが可能である。
【0121】
本実施形態においても、第二実施形態と同様な変形が可能である。
【0122】
第四実施形態
本実施形態は、第一実施形態の可変形状ミラーの駆動方法に向けられている。以下、図1〜図3を参照しながら本実施形態について説明する。
【0123】
本実施形態では、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも大きいときは、可変形状ミラーを加熱して有機薄膜の弾性率を低下させる。また、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも小さいときは、可変形状ミラーを加熱しない。
【0124】
可変形状シリンダミラー100においては、電源130により金属薄膜113と駆動電極基板120との間に電圧を印加することにより、駆動電極122と金属薄膜113の間に静電引力を発生させ、これにより有機薄膜112を円筒面形状すなわちシリンダ状に撓み変形させ、金属薄膜113すなわちミラーをシリンダ状に変形させることができる。金属薄膜113と駆動電極基板120との間に印加する電圧を増減させることにより、有機薄膜112の撓み具合、すなわちミラー113の曲率を変えることができる。
【0125】
可変形状ミラーに与える電圧値は、様々な要因、例えば電源の性能や配線などの絶縁破壊特性などにより上限がある。このため、駆動量を増加させるために、無限に高い電圧を印加することは不可能であり、結果的に変形量が制限を受ける。
【0126】
本実施形態では、必要なミラー113の変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも大きいときは、ヒーター126により有機薄膜を加熱して、有機薄膜の弾性率を低下させる。これにより、ミラー113を、室温における最大変位量よりも大きく変形させることが可能になる。あるいは、ミラー113を、必要な変形量を最大電圧値よりも低い電圧で実現することが可能になる。
【0127】
一方、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも小さいときは、ヒーター126による有機薄膜の加熱は行なわない。このため、加熱のための電力消費を効果的に抑えることが可能となる。
【0128】
ここで、静電駆動型の可変形状ミラーの駆動においては電流を流さないため、可変形状ミラー自体の消費電力は小さく、温度制御系の消費電力が支配的であるため、可変形状ミラー全体の消費電力の削減に特に有効である。
【0129】
本実施形態の駆動方法によれば、必要に応じて、ミラーの変位量の増大や駆動電圧の低減を図ると共に、消費電力を効果的に抑えることが可能となる。
【0130】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施の形態を述べたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【0131】
【発明の効果】
本発明によれば、駆動効率の向上された可変形状ミラーが提供される。また、本発明によれば、可変形状ミラーの駆動効率を向上させ得る駆動方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施形態の可変形状シリンダミラーの側断面図である。
【図2】 図1に示されたミラー基板の斜視図である。
【図3】 図1に示された駆動電極基板の斜視図である。
【図4】 ポリイミド樹脂の弾性率の温度特性を示している。
【図5】 本発明の第一実施形態の第一変形例におけるミラー基板の斜視図である。
【図6】 図5に示されるVI−VI線に沿ったミラー基板の側面断面図である。
【図7】 本発明の第一実施形態の第二変形例の可変形状ミラーの側断面である。
【図8】 本発明の第二実施形態の電磁駆動型可変形状ミラーの斜視図である。
【図9】 図8のIX−IX線に沿った可変形状ミラーの側面断面図である。
【符号の説明】
100…可変形状シリンダミラー、110…ミラー基板、111…枠部材、112…可撓性薄膜、113…ミラー、120…駆動電極基板、122…駆動電極、126…ヒーター、130…電源、135…温度制御回路、137…温度センサー、200…可変形状ミラー、210…永久磁石、220…ミラー基板、221…枠部材、222…可撓性薄膜、226…ミラー、226…反射面、231…駆動配線、233…電源、240…温度調整器、242…温度制御回路、244…温度センサー。
Claims (11)
- 枠部材と、前記枠部材に支持された可撓性薄膜と、前記可撓性薄膜に設けられたミラーとを有するミラー本体と、
前記可撓性薄膜を変形させる駆動手段と、
前記可撓性薄膜を加熱する加熱手段とを備えている、可変形状ミラー。 - 前記可撓性薄膜の温度を検出する温度センサーと、
前記温度センサーの情報に基づいて加熱手段を制御し、可撓性薄膜の温度を一定に保つ温度制御手段とを更に備えている、請求項1に記載の可変形状ミラー。 - 前記可撓性薄膜は有機薄膜から成る、請求項1または請求項2に記載の可変形状ミラー。
- 前記可撓性薄膜に設けられた第一の電極と、第一の電極から間隔を置いて第一の電極に向き合って位置する第二の電極とを更に有しており、第一の電極と第二の電極は前記駆動手段を構成し、前記可撓性薄膜に設けられた前記ミラーは、第一の電極と第二の電極の間への電圧印加により第一の電極と第二の電極の間に発生する静電引力により変形される、請求項1〜請求項3のいずれかひとつに記載の可変形状ミラー。
- 前記可撓性薄膜に設けられた金属薄膜を有しており、この金属薄膜は前記ミラーと前記第一の電極とを兼ねている、請求項4に記載の可変形状ミラー。
- 前記可撓性薄膜に設けられた駆動配線と、駆動配線を横切る磁界を発生させる磁界発生手段とを更に有しており、駆動配線と磁界発生手段は前記駆動手段を構成し、前記可撓性薄膜に設けられた反射面は、駆動配線に供給される電流と磁界との相互作用により発生する力により変形される、請求項1に記載の可変形状ミラー。
- 前記駆動配線は、大きな電気抵抗を有する発熱抵抗体から成り、発熱抵抗体は、前記加熱手段を構成し、電流の供給に対して容易に発熱する、請求項6に記載の可変形状ミラー。
- 前記可撓性薄膜に設けられた駆動配線と、駆動配線を横切る磁界を発生させる磁界発生手段とを更に有しており、駆動配線と磁界発生手段は前記駆動手段を構成し、前記可撓性薄膜に設けられた反射面は、駆動配線に供給される電流と磁界との相互作用により発生する力により変形される、請求項2または請求項3に記載の可変形状ミラー。
- 枠部材と、前記枠部材に支持された有機薄膜と、前記有機薄膜に設けられたミラーと、前記有機薄膜に設けられた第一の電極と、第一の電極から間隔を置いて第一の電極に向き合って位置する第二の電極とを有する可変形状ミラーの駆動方法において、有機薄膜の温度を70℃から有機薄膜のガラス転移温度までの範囲に保つことを特徴とする、可変形状ミラーの駆動方法。
- 枠部材と、前記枠部材に支持された有機薄膜と、前記有機薄膜に設けられたミラーと、前記有機薄膜に設けられた駆動配線と、駆動配線を横切る磁界を発生させる磁石とを有する可変形状ミラーの駆動方法において、前記有機薄膜の温度を、70℃から、前記磁石の不可逆減磁温度または有機薄膜のガラス転移点温度のいずれかの低い方の温度まで範囲に保つことを特徴とする、可変形状ミラーの駆動方法。
- 枠部材と、前記枠部材に支持された有機薄膜と、前記有機薄膜に設けられたミラーと、前記有機薄膜に設けられた第一の電極と、第一の電極から間隔を置いて第一の電極に向き合って位置する第二の電極とを有する可変形状ミラーの駆動方法において、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも大きいときは、可変形状ミラーを加熱して有機薄膜の弾性率を低下させ、必要なミラーの変位量が、最大電圧値に対する室温での最大変位量よりも小さいときは、可変形状ミラーを加熱しないことを特徴とする、可変形状ミラーの駆動方法。
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