JP4245256B2 - ポリマー電解質リチウム二次電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極と負極との間にポリマー電解質が設けられてなる発電体を備えたポリマー電解質リチウム二次電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の薄型・軽量の高性能電池に対する要望の高まりに対応し、ポリマー電解質を用いたリチウム二次電池(ポリマー電解質リチウム二次電池)が実用化された。ポリマー電解質リチウム二次電池は、エネルギー密度が高く、かつ液漏れし難いので、携帯機器用電源として適しているが、高温で保存した場合に放電容量の低下が見られるという問題を有している。この原因としては、つぎのことが考えられる。
【0003】
ポリマー電解質は、ポリマー前駆体を重合させてなるポリマーの網目構造内に電解液が保持された構造をしている。このポリマー前駆体としては、一般に、分子量が500〜1500程度のポリアルキレングリコールジアクリレート等が単独で用いられているが、この前駆体から得たポリマーは、ポリマー自体の高温安定性が悪いので、高温で保存した場合に放電容量が低下する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みなされたものであって、高温での保存特性に優れたポリマー電解質リチウム二次電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を用いた負極と、正極との間にポリマー電解質が設けられてなる発電体を備えたポリマー電解質リチウム二次電池において、上記ポリマー電解質が、ポリマーの網目構造内に電解液が保持されてなるものであり、上記ポリマーが、下記の構成単位(1)および/または下記の構成単位(2)を含むものであり、上記構成単位(1)および/または構成単位(2)の総質量が、上記ポリマーの全質量の10〜50%の範囲であることを特徴とする。
【0006】
【化5】
〔構成単位(1)中、RはHまたはCH3 であり、互いに同じでも異なっていてもよい。また、nは1〜10の正数である。〕
【0007】
【化6】
〔構成単位(2)中、RはHまたはCH3 である。また、nは1〜10の正数である。〕
【0008】
上記の構成によれば、ポリマー自体の化学安定性が向上すること等に起因して、ポリマー自体の高温安定性が増すと考えられ、高温で保存した場合に放電容量が低下するといったことがない。よって、高温での保存特性に優れた電池となる。
また、特定の構成単位が特定の範囲に設定されているので、高温での保存特性に優れているとともに、その他の電池特性、例えば負荷特性等も良好な電池となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記ポリマーが、ポリアルキレングリコールジアクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジメタクリレートから誘導される構成単位を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を用いた負極と、正極との間にポリマー電解質が設けられてなる発電体を備えたポリマー電解質リチウム二次電池の製造方法において、上記製造方法が、ポリアルキレングリコールジアクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジメタクリレートからなるA成分と、下記の一般式(3)で表される二官能性化合物および/または下記の一般式(4)で表される単官能性化合物からなるB成分とを、電解液に溶解してポリマー前駆体溶液を作製する工程と、上記ポリマー前駆体溶液中のA成分およびB成分を重合し、ポリマーの網目構造内に電解液を保持させてなるポリマー電解質を作製する工程と、を備え、上記ポリマー前駆体溶液中のポリマー前駆体の総質量に対する上記B成分の質量比が、0.1〜0.5であることを特徴とする。
【0012】
【化7】
CH2 =CR−CO−O−Cn H2n−O−CO−CR=CH2 …(3)
〔式(3)中、RはHまたはCH3 であり、互いに同じでも異なっていてもよい。また、nは1〜10の正数である。〕
【0013】
【化8】
CH2 =CR−CO−O−Cn H2n−O−CH3 …(4)
〔式(4)中、RはHまたはCH3 である。また、nは1〜10の正数である。〕
【0014】
上記の構成によれば、良質なポリマー電解質を形成できるので、高温での保存特性と負荷特性に優れた電池を容易に得ることができる。
【0016】
また、上記の構成によれば、高温での保存特性と負荷特性とが好適にバランスした電池を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態であるラミネート外装体を用いたポリマー電解質リチウム二次電池について、実施例に基づいて具体的に説明する。
【0018】
(実施例1)
図1〜図5を参照しながら実施例1の電池の概要を説明する。図1は、このポリマー電解質リチウム二次電池の外観を示す正面図である。図2は、ラミネート外装体の収納空間を示す断面図である。図3は、ラミネート外装体を構成するラミネート材の積層構造を示す断面図である。図4は、ラミネート外装体内に収納する発電素体(ポリマー電解質が配置されていないもの)の構造を示す断面図であり、図5は、この発電素体の斜視図である。
【0019】
図1、図2に示すように、この電池は、上下端と中央部とが封止部4a・4b・4cで封口されてなるラミネート外装体3の収納空間2に、ポリマー電解質を介して正負電極が対向配置されてなる発電体が収納された構造をしている。なお、図4、図5はポリマー電解質を配置する前の図(発電素体1)であるが、ポリマー電解質が配置された発電体も概ねこの図と同様である。以下、各部材毎にその内容を説明する。
【0020】
(1)正極の作製
正極活物質としてのコバルト酸リチウムと、導電剤としての黒鉛粉末およびケッチェンブラックと、結着剤としてのフッ素樹脂(PVdF)とを、90:3:2:5の質量比で混合したものを、ドクターブレード法により、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体22の片面に塗布した。その後、150℃で真空加熱処理して、厚み80μm、表面積52cm2 の正極活物質層9を有する正極5を作製した。
【0021】
(2)負極の作製
負極活物質としての黒鉛粉末〔X線回折法による(002)面の面間隔d002 が3.356Å、結晶子厚みLc値が800Å以上、平均粒子径8μm〕と、結着剤としてのフッ素樹脂(PVdF)とを、95:5の質量比で混合したものを、ドクターブレード法により、厚み16μmの銅箔からなる負極集電体23の片面に塗布した。その後、150℃で真空加熱処理して、厚み65μm、表面積58cm2 の負極活物質層10を有する負極6を作製した。
【0022】
(3)ラミネート外装体の作製
アルミニウム層11(厚み30μm)の両面に、各々、変性ポリプロピレンからなる接着剤層12・12(厚み5μm)を介してポリプロピレンからなる樹脂層13・13(厚み30μm)が接着された構造のラミネートシートを準備し、両端を重ね合わせ、その重ね合わせ部を接着し筒状体を形成した(図2参照)。
【0023】
(4)ポリマー前駆体溶液の作製
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(体積比で40:60)に、LiPF6 を1M(モル/リットル)の割合で溶かすことにより、電解液を準備し、この電解液に、A成分として、構成単位中にアルキレングリコール単位を複数個有し、両末端にアクリレート単位を有する化合物であるポリアルキレングリコールジアクリレートと、B成分として、上記一般式(3)で表される二官能性化合物との質量比が90(A成分):10(B成分)である二成分ポリマー前駆体を、質量比で、10(電解液):1(ポリマー前駆体)の割合で混合した。さらに、この混合液に、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレートを0.5質量%(5000ppm)添加して、ポリマー前駆体溶液を作製した。
【0024】
なお、本発明では、上記一般式(3)で表される二官能性化合物に代えて、前記一般式(4)で表される単官能性化合物を用いてもよく、二官能性化合物と単官能性化合物とを併用してもよい。
【0025】
また、上記ポリアルキレングリコールジアクリレートに代えて、構成単位中にアルキレングリコール単位を複数個有し、両末端にメタクリレート単位を有する化合物であるポリアルキレングリコールジメタクリレートを用いてもよく、ポリアルキレングリコールジアクリレートとポリアルキレングリコールジメタクリレートとを併用してもよい。また、本発明の目的を損なわないのであれば、その他のモノマーを用いてもよい。
【0026】
(5)電池の組み立て
上記正極5と負極6にそれぞれ正負極集電タブ7・8を取り付けた後、これらの電極を、ポリエチレン製の多孔質フィルム21を間に挟み込んだ状態で、正負極活物質面を対向させ重ね合わせて発電素体1を構成した。これを上記外装体3の収納空間2内に挿入した。その後、外装体3の封口部4aを熱溶着し、外装体3の収納空間2内にポリマー前駆体溶液を3ml注入し、外装体を60℃で3時間加熱して、ポリマー前駆体を重合した。これにより、電池容量が150mAhであるポリマー電解質リチウム二次電池を作製した。
【0027】
上記で作製した電池について、下記に示す方法で、充電保存特性試験、負荷特性試験を行った。
【0028】
(充電保存特性試験)
まず、各電池を、25℃、1C(150mAh)定電流、4.1V定電圧の条件で充電した。ついで、充電した電池を60℃で20日間保存した後、放電終止電圧が2.75Vになるまで1Cで放電して放電容量を測定した。そして、保存前の電池容量に対する保存後の電池容量の割合〔保存後の電池容量/保存前の電池容量×100(%)〕を求め、これを容量維持率とした。なお、この容量維持率が大きいほど充電保存特性に優れた電池といえる。
【0029】
(負荷特性試験)
まず、各電池を、25℃、1C(150mAh)定電流、4.1V定電圧の条件で充電した。ついで、充電した電池について、放電終止電圧が2.75Vになるまで0.2Cで放電した時の放電容量(0.2C容量)と、放電終止電圧が2.75Vになるまで3Cで放電したときの放電容量(3C容量)とを測定した。そして、0.2C容量に対する3C容量の割合〔3C容量/0.2C容量×100(%)〕を求め、これを負荷率とした。なお、この負荷率が大きいほど負荷特性に優れた電池といえる。
【0030】
(結果)
上記試験の結果、容量維持率は74%であり、負荷率は81%であった。この結果より、実施例1の電池は、充電保存特性と負荷特性とが好適にバランスした電池であることが確認できた。
【0031】
<実験の部>
上記の結果を踏まえて、実験の部においては、ポリマー前駆体の組成と、充電保存特性および負荷特性との関係を調べた。
【0032】
上記ポリマー前駆体として、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA、分子量1000)と下記の化学式(5)で表される化合物との質量比を95:5、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、60:40、70:30にしたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー電解質リチウム二次電池を作製した。そして、これらの電池を用いて、上記実施例1と同様な方法で、充電保存特性試験および負荷特性試験を行い、その結果を下記の表1に示した。
【0033】
【化9】
CH2 =CCH3−CO−O−C5 H10−O−CO−CCH3=CH2 …(5)
【0034】
また、ポリマー前駆体として、PPGDAと下記の化学式(6)で表される化合物との質量比を95:5、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、60:40、70:30にしたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー電解質リチウム二次電池を作製した。そして、これらの電池を用いて、上記実施例1と同様な方法で、充電保存特性試験および負荷特性試験を行い、その結果を下記の表2に示した。
【0035】
【化10】
CH2 =CCH3−CO−O−C5 H10−O−CH3 …(6)
【0036】
また、ポリマー前駆体として、PPGDAのみを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリマー電解質リチウム二次電池を作製した。そして、この電池を用いて、上記実施例1と同様な方法で、充電保存特性試験および負荷特性試験を行い、その結果を下記の表2に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表1および表2から、特定の二官能性化合物または特定の単官能性化合物を用いたNo.1〜16の電池は、それらを用いていないNo.17の電池と比べ、充電保存特性が良好であることがわかった。また、ポリマー前駆体に対する特定の二官能性化合物等の質量比が0.1〜0.5であるNo.2〜6、No.10〜14の電池は、充電保存特性が良好であることに加えて、負荷特性も良好であることがわかった。これは、ポリプロリレングリコールジアクリレートから誘導される構成単位と、特定の二官能性化合物から誘導される上記特定の構成単位(1)等との割合が、好適にバランスしていたためと考えられる。
【0040】
〔その他の事項〕
なお、実施例1では、発電素体とポリマー前駆体溶液を電池ケース(ラミネート外装体)に収納した後にゲル化処理(重合硬化)を行ったが、これに限定するものではなく、ポリマー電解質を予め作製しておき、それを正負電極の間に配置した後、電池ケースに収納する方法を採用してもよい。
【0041】
また、本発明のポリマー電解質電池は、図1〜図5に示す構造に限定されず、また正極、負極等についても、上記に記載したものに限定されない。上記以外の正極活物質としては、例えば、LiNiO2 、LiMnO2 、LiFeO2 、LiMn2 O4 等が使用でき、負極活物質としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛質材料、部分的に黒鉛構造を持つ炭素質材料等のリチウムイオンを吸蔵放出することのできる炭素材料等が使用できる。
【0042】
また、電解液についても、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒にLiPF6 を溶かしたものに限定されない。例えば、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ―ブチロラクトン等の有機溶媒や、これらとジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の低沸点溶媒との混合溶媒に、LiBF4 、LiClO4 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 、LiN(C2 F5 SO2 )2 等の溶質を溶かした溶液等も用いることができる。
【0043】
さらに、外装体についても、アルミニウムラミネート材からなるものに限定されない。また、5層構造に限定されるものでもない。ただし、柔軟で形状自由性が大きいことからアルミニウムラミネート材が好ましく、この場合、腐食防止性や電気絶縁性の観点から、アルミニウム層を樹脂層で覆った3層構造以上のものが好ましい。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、ポリマー電解質の網目構造を構成するポリマーの高温安定性が改善されるので、高温下で保存した場合に放電容量が低下せず、保存特性に優れた電池を提供できる。特に、ポリアルキレングリコールジアクリレート等と特定の二官能性化合物等とを特定の割合で用いた場合には、保存特性と負荷特性とが好適にバランスした電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるポリマー電解質リチウム二次電池の外観を示す正面図である。
【図2】ラミネート外装体の収納空間を示す断面図である。
【図3】ラミネート外装体の構成材料であるラミネート材の断面図である。
【図4】ポリマー電解質リチウム二次電池の発電素体を示す断面模式図である。
【図5】ポリマー電解質リチウム二次電池の発電素体を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 発電素体
2 収納空間
3 ラミネート外装体
4a〜c 封口部
5 正極
6 負極
7 正極集電タブ
8 負極集電タブ
9 正極活物質層
10 負極活物質層
21 多孔質フィルム
22 正極集電体
23 負極集電体
Claims (3)
- リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を用いた負極と、正極との間にポリマー電解質が設けられてなる発電体を備えたポリマー電解質リチウム二次電池において、
上記ポリマー電解質が、ポリマーの網目構造内に電解液が保持されてなるものであり、
上記ポリマーが、下記の構成単位(1)および/または下記の構成単位(2)を含むものであり、
上記構成単位(1)および/または構成単位(2)の総質量が、上記ポリマーの全質量の10〜50%の範囲である、
ことを特徴とするポリマー電解質リチウム二次電池。
【化1】
―(CH2 ―CR)―
|
CO−O−Cn H2n−O−CO …(1)
|
−(CR―CH2 )―
〔構成単位(1)中、RはHまたはCH3 であり、互いに同じでも異なっていてもよい。また、nは1〜10の正数である。〕
【化2】
―(CH2 ―CR)―
| …(2)
CO−O−Cn H2n−O−CH3
〔構成単位(2)中、RはHまたはCH3 である。また、nは1〜10の正数である。〕 - 上記ポリマーが、ポリアルキレングリコールジアクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジメタクリレートから誘導される構成単位を有する、
請求項1記載のポリマー電解質リチウム二次電池。 - リチウムイオンを吸蔵放出する炭素材料を用いた負極と、正極との間にポリマー電解質が設けられてなる発電体を備えたポリマー電解質リチウム二次電池の製造方法において、上記製造方法が、
ポリアルキレングリコールジアクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジメタクリレートからなるA成分と、下記の一般式(3)で表される二官能性化合物および/または下記の一般式(4)で表される単官能性化合物からなるB成分とを、電解液に溶解してポリマー前駆体溶液を作製する工程と、
上記ポリマー前駆体溶液中のA成分およびB成分を重合し、ポリマーの網目構造内に電解液を保持させてなるポリマー電解質を作製する工程と、を備え、
上記ポリマー前駆体溶液中のポリマー前駆体の総質量に対する上記B成分の質量比が、0.1〜0.5である、
ことを特徴とするポリマー電解質リチウム二次電池の製造方法。
【化3】
CH2 =CR−CO−O−Cn H2n−O−CO−CR=CH2 …(3)
〔式(3)中、RはHまたはCH3 であり、互いに同じでも異なっていてもよい。また、nは1〜10の正数である。〕
【化4】
CH2 =CR−CO−O−Cn H2n−O−CH3 …(4)
〔式(4)中、RはHまたはCH3 である。また、nは1〜10の正数である。〕
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