JP4244690B2 - 電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電縫鋼管の製造方法に係わり、特に、コイル毎に鋼帯を巻き戻して順次送り込むバッチ方式の製造工程で、生産性を従来より高める技術改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
電縫鋼管は、一般に、素材の鋼帯を走行させた状態で、一群の成形ロールによって円筒状に連続的に成形した後、突き合せた鋼帯の幅方向端部を溶接して製造される。図示していないが、溶鋼を連続鋳造して得た鋼鋳片を加熱炉で所定温度に加熱してから、熱間圧延で一定幅の鋼帯とする。この鋼帯は、巻き取られて、一本の重量が約40トン程度のコイルになっている。そして、このコイルをアンコイラーで一本ずつ巻き戻して、製造ラインに順次送り込むことで電縫鋼管とされる。この場合、先行するコイルの鋼帯後端(以下、単に後端)と、後行させるコイルの鋼帯先端(以下、単に先端)とを溶接で一体化させ、所謂「連続操業」を行う方法と、溶接せずに一定距離離して不連続操業(回分操業とかバッチ操業ともいう)を行う方法がある。また、先行コイルと後行コイルの鋼帯同士を溶接せずに電縫鋼管としてから、先行電縫鋼管の後端に後行電縫鋼管の先端を追突させ、両者を噛み合った状態で後の定形(絞り)工程を通過させる不連続操業もある(例えば、特許公報1参照)。
【0003】
これらの操業のうち、通常行われる不連続操業は、まず、図4に示すように、アンコイラー1で巻きもどされた鋼帯2が、レベラー18で平坦にした後、エッジ・ミラー3で端部を整え、、エッジ・ベンド・ロール5で始まり多段のフィンパス・ロール(一段のみ図示)6で終わる一群の成形ミル7に鋼帯面を水平にして一定速度で送り込まれる。これら成形ミル7で円筒状に成形された鋼帯2は、その突き合わされた幅方向端部(以下、単に突き合わせ部とかシーム部という)を高周波抵抗溶接機8等で加熱され、スクイズ・ロール9で押さえて圧着、溶接し、一応の管体10とされる。その管体10には、上記溶接で内外面にビード(図示していないが、通常の溶着部に生じたじゅず状突起物)が生じているので、該ビードを切削手段11で切削除去する。さらに、超音波探傷器12での疵検査後、熱処理としてシーム・アニラーなる焼鈍装置13で溶接部(前記シーム部)の焼鈍及び水噴射ノズル14での冷却が順次施される。その後、サイザー15のような絞り圧延機で寸法を整えてから、払い出し用の搬送ライン上で走間切断機16により所望される長さに切断されて、所望特性を有する電縫鋼管17とする。また、接合方法を上記溶接に代え、鍛接とすると、鍛接鋼管になる。
【0004】
ところで、厚み19mm、幅2200mmの鋼帯2でかかる不連続操業の工程を経て電縫鋼管17を製造する現状を、先行コイルの尾端位置と後行コイルの先端位置の時間間隔で示すと、図3に示すようになる。つまり、先行コイルの尾端がレベラー出側を抜けてから90秒後に、後行コイルがレベラー出側を通過する。その先端速度は、先行コイルの尾端速度と同じである。そして、該先端をエッジ・ミラー(記号:E/M)へ噛み込ませるために一度減速(これを、E/Mスレッディング速度という)してから、再度先行コイルの尾端速度に戻す。その後、スクイズ・ロール(記号:SQ)で溶接するのに時間を必要とするので、後行コイルの先端が成形ミルの最終圧延機であるフィンパス・ロール(記号:FP)の入側に達したら、スクイズ・ロールの出側に至るまで再度減速(FP〜SQ間スレッディング速度という)し、その後は当初の速度に戻す。
【0005】
従って、スクイズ・ロールの出側位置で比較すると、先行コイルの尾端と後行コイルの先端とは、時間にして約3分の間隔があり、バッチ方式の電縫鋼管製造工程での生産性を阻害する一因になっていた。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−198330号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、コイル毎に鋼帯を巻き戻して順次送り込むバッチ方式の製造工程を用いても、生産性を従来より高めることの可能な電縫鋼管の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0009】
すなわち、本発明は、アンコイラーで各鋼帯コイル毎に鋼帯を巻き戻し、レベラーにて歪矯正を行い、エッジ・ミラーで端部を整え、成形ミルで円筒状に成形した後、その突き合わしたシーム部を誘導コイルで加熱し、スクイズ・ロールで押さえて圧着、溶接して管体とする電縫鋼管の製造方法において、後行コイルの鋼帯先端が、先行コイルの鋼帯尾端に60〜90秒遅れて先行コイルの尾端速度と同じ速度で走行開始し、該後行コイルの鋼帯先端がレベラー通過後、先行コイルの尾端速度より30〜40%速い速度で走行し、該後行コイルの鋼帯先端速度が4〜5m/minの速度でエッジ・ミラーを通過し、該エッジ・ミラーの出側から前記成形ミルの入側までを前記先行コイルの尾端速度より30〜40%速くなるように増速し、さらに成形ミル入側よりフィンパス・ロールの一段目だけを4〜5m/minになるようにし、二段目以降を前記先行コイルの尾端速度と同じ速度に再度戻すことを特徴とする電縫鋼管の製造方法である。この場合、前記先行コイルの尾端速度を、10〜40m/minとするのが良く、さらに好ましくは、12〜20m/minとする。
【0010】
本発明によれば、コイル毎に鋼帯を巻き戻して順次送り込むバッチ方式の製造工程を用いても、後行コイルの先端速度を該製造工程の位置に応じて従来より増速するようにしたので、生産性を従来より高めることが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明の対象は、鋼帯コイルを一個づつアンコイラーで巻き戻し、製造工程へ順次送る所謂「バッチ方式」の電縫鋼管の製造方法である。つまり、図4に示したように、アンコイラー1で巻き戻した鋼帯2をエッジ・ミラー3で端部を整えた後、エッジ・ベンド・ロール5で始まり多段のフィンパス・ロール6で終わる一群の成形ミル7で円筒状に成形した後、その突き合わしたシーム部を高周波抵抗溶接機8で加熱し、スクイズ・ロール9で押さえて圧接、溶接して管体10とする電縫鋼管17の製造工程を利用し、その操業方法を改善するものである。
【0013】
そのため、発明者は、前記した従来の操業方法での先行コイルの尾端位置と後行コイルの先端位置の時間間隔(図3参照)、約3分を少しでも短縮できれば生産性が向上するので、製造工程において短縮可能な位置を検討した。その結果、下記の数ケ所でそれが実現できることを見出し、本発明を完成させた。以下に、本発明に係る製造方法での先行コイルの尾端と後行コイルの先端との時間間隔を模式的に示す図1に基づき、本発明を説明する。なお、この説明例では、熱間圧延で製造した幅1930mm、厚み22mm、長さ110mの鋼帯コイルを使用した場合である。
【0014】
まず、先行コイルの尾端がレベラー出側を抜けてから90秒後に、先行コイルの尾端速度と同じ速度で後行コイルの先端の走行を開始することについては、アンコイラーに後行コイルをセットする時間に制約されるので、上記90秒はあまり短縮できない。ただし、セット作業に対する熟練度が高い作業者によれば、60秒まで短縮できるので、下限を60秒とした。なお、前記先行コイルの尾端速度については、鋼管の素材鋼種、サイズ等により異なるが、本発明では、10〜40m/minとする。10m/min未満だと現在の設備能力に対して遅すぎ、40m/min超えだと速すぎるからである。
【0015】
次に、後行コイルの先端をエッジ・ミラー(記号:E/M)へ噛み込ませるために一度減速(これを、E/Mスレッディング速度という)してから、再度先行コイルの尾端速度に戻すことについては、該E/Mスレッディング速度を4〜5m/minに減速することにした。減速の上限を5m/minとしたのは、それ以上速いと減速した効果が発揮されず、エッジ・ミラーへのコイル先端の噛み込みが円滑に行えないことがあるからである。また、減速の下限を4m/minとしたのは、その速度で十分に噛み込みが行われるからである。
【0016】
引き続いて、先端がエッジ・ミラー通過後は、従来は前記一定速度に戻していたが、成形ミルの入側まではピンチロールしかなく、走行の大きな抵抗(障害)になるものがない。そこで、その区間で増速が可能かどうかを検討した。その結果、該エッジ・ミラーの出側から前記成形ミルの入側(記号:PF)までを前記先行コイルの尾端速度より30〜40%速い速度に増速できることがわかった。30%未満だと、増速効果が小さ過ぎ、40%超えだと、速すぎて搬送能力不足となるため不都合だからである。
【0017】
そして、該成形ミル入側よりフィンパス・ロールの入側までを前記先行コイルの尾端速度と同じ速度で走行させるが、前記したように、従来は、後行コイルの先端がフィンパス・ロール(記号:FP)の入側に達したら、スクイズ・ロールの出側に至るまで再度減速(FP〜SQ間スレッディング速度という)していた。そこで、発明者は、このフィンパス・ロールの入側からスクイズ・ロールの出側までの減速について鋭意見直しを行った。その結果、多段に配置したフィンパス・ロールの一段目だけを4〜5m/minに減速し、二段目以降を前記先行コイルの尾端速度と同じ速度に再度戻すだけでも、問題が生じないことを見出し、本発明の重要ポイントとした。ここでの減速を4〜5m/minとしたのは、5m/min超えだと減速効果が発揮できず、先端部がロールに円滑に噛み込まず、4m/minあれば噛み込むからである。
【0018】
【実施例】
図4に示した電縫鋼管の製造工程を用い、従来の及び本発明に係る製造方法で多数本の電縫鋼管を製造した。製品のサイズは、外径609.6mmφ×肉厚22mmで、アンコイラーより鋼帯の走行を開始する前記先行コイルの尾端速度は、14m/minとし,後行コイルは、先行コイルの尾端がアンコイラーを離れてから90秒経過後に走行を開始させた。図2にその様子を模式的に示した。従来例及び本発明例での製造工程を走行する鋼帯あるいは管体の速度は、表1に示す通りである。
【0019】
【表1】
Figure 0004244690
【0020】
その結果が図2であるが、スクイズ・ロールの出側位置での先行コイルの尾端と後行コイルの後端との時間間隔は、従来法では3分であったが、本発明では約1分と短縮できた。また、これにより、同一鋼種及びサイズの電縫鋼管の生産速度(本/時間)が従来より20%向上した。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、後行コイルの先端速度を製造工程の位置に応じて増速するようにしたので、生産性を従来より高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電縫鋼管の製造方法における先行コイルの尾端と後行コイルの先端との時間間隔を模式的に示す図である。
【図2】実施例で得た先行コイルの尾端と後行コイルの先端との時間間隔を示す図である。
【図3】従来の電縫鋼管の製造方法における先行コイルの尾端と後行コイルの先端との時間間隔を示す図である。
【図4】一般的なバッチ方式の電縫鋼管の製造工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 アンコイラー
2 鋼帯
3 エッジ・ミラー
4 ピンチローラー
5 エッジ・ベンド・ロール
6 フィンパス・ロール
7 成形ミル
8 高周波抵抗溶接機
9 スクイズ・ロール
10 管体
11 切削手段
12 超音波探傷器
13 焼鈍装置
14 水噴射ノズル
15 サイザー
16 走間切断機
17 電縫鋼管
18 レベラー

Claims (2)

  1. アンコイラーで各鋼帯コイル毎に鋼帯を巻き戻し、レベラーにて歪矯正を行い、エッジ・ミラーで端部を整え、成形ミルで円筒状に成形した後、その突き合わしたシーム部を誘導コイルで加熱し、スクイズ・ロールで押さえて圧着、溶接して管体とする電縫鋼管の製造方法において、
    後行コイルの鋼帯先端が、先行コイルの鋼帯尾端に60〜90秒遅れて先行コイルの尾端速度と同じ速度で走行開始し、該後行コイルの鋼帯先端がレベラー通過後、先行コイルの尾端速度より30〜40%速い速度で走行し、該後行コイルの鋼帯先端速度が4〜5m/minの速度でエッジ・ミラーを通過し、該エッジ・ミラーの出側から前記成形ミルの入側までを前記先行コイルの尾端速度より30〜40%速くなるように増速し、さらに成形ミル入側よりフィンパス・ロールの一段目だけを4〜5m/minになるようにし、二段目以降を前記先行コイルの尾端速度と同じ速度に再度戻すことを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
  2. 前記先行コイルの尾端速度を、10〜40m/minとすること特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の製造方法。
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