JP4242996B2 - クッション材成形金型の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、捲縮形態を有する合成繊維の短繊維からなるマトリックス中に該短繊維より低い融点を有するバインダー繊維が分散混入された繊維集合体を成形するために、金型内へ該繊維集合体を充填して加熱成形する金型構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車、航空機等の複雑な形状を有するシート用クッション材として安価なウレタンフォームが多用されてきた。しかしながら、ウレタンフォームは、燃焼時に有毒ガスを発生すること、リサイクル使用が困難、通気性が悪く蒸れ易い等の問題を有するため、これに代わる成形素材が切望されてきた。
【0003】
このような問題から、近年、ウレタンフォームを代替するための素材として、合成繊維の短繊維からなるマトリックス中に該短繊維より低い融点を有するバインダー繊維が分散混入された繊維集合体を使用した繊維構造体が、上記の諸問題を解決することが出来る素材として注目されてきた。このクッション材は、金型のキャビティ内へ繊維集合体を充填し、これを熱成形することで繊維集合体中に含まれるバインダー繊維を溶融させ、繊維集合体を構成する繊維同士を熱融着させて形成されたものである。
【0004】
従来、成形金型内へ綿を充填するための金型としては、パンチングプレートを叩き出しにより変形させ、成形品の反転形状を作り、これに枠材を組み付けていったものと、電鋳により成形品形状を反転させたものがある。
【0005】
通常、自動車や電車等のシート形状は複雑な三次元形状をしており、単純に平板をカットしたり、折り曲げたりするだけでは金型に必要とされる三次元形状は得られない。このため、所定のクッション材形状を形成させるために、まず木型、樹脂型にパンチングプレートをあててハンマー等により叩いて形状を出す方法がある。
【0006】
しかしながら、このような方法では、必ず木型が必要となってくるため、金型完成後は不要となる木型を予め製作しておく必要がある。また、この木型はNC工作機械などにより、三次元状に切削加工して作るために、非常に高価なものとなる。さらには、木型製作に二週間以上の時間を要し、金型製作時間が長くなるといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた従来技術が有する諸門題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、「捲縮形態を有する合成繊維の短繊維からなるマトリックス中に該短繊維より低い融点を有するバインダー繊維が分散混入された繊維集合体を金型キャビティ内へ充填し、充填した繊維集合体からクッション材を熱成形するための通気性金型を安価に、かつ短時間に製造できる金型の製造方法を提供すること」にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ここに、請求項1に係わる本発明によれば、
「捲縮形態を有する合成繊維の短繊維からなるマトリックス中に該短繊維より低い融点を有するバインダー繊維が分散混入された繊維集合体を充填してクッション材へと熱成形するための金型の製造方法において、
前記クッション材を賦型する全型形状を、三次元形状データとして切削加工装置に記憶させ、
前記三次元形状データを基にして、前記切削加工装置によって板状の形状保持部材群を切り出し、
前記形状保持部材群を組み合わせて金型形状を反映する骨格を形成し、
形成された前記骨格に沿って、柔軟構造を有する通気性金型壁を貼り付けることを特徴とするクッション材成形金型の製造方法」が提供される。
【0009】
また、請求項2に係わる本発明によれば、「請求項l記載の製造方法において、柔軟構造を有する通気性金型壁として、大きな曲率を有する部分に対して、金網、金属製織物、金属製編物、金属細線からなる不織布、或いはエキスパンドメタルを使用することを特徴としたクッション材成形金型の製造方法」が提供される。
【0010】
さらに、請求項3に係わる本発明によれば、「請求項1記載の製造方法において、前記の形状保持部材群をレーザー切削加工機で切出すことを特徴としたクッション材成形金型の製造方法」が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)〜(b)は、本発明で使用する金型壁のみを取り出して、模式的にそれぞれ例示した側断面図であって、通気性金型による繊維集合体のクッション材への熱成形の工程を例示したものである。なお、この図1において、参照符号lは繊維集合体、参照符号2は通気性の雄金型壁、そして参照符号3は通気性の雌金型壁をそれぞれ示す。
【0012】
その際、図1(a)は、繊維集合体1を雌金型壁3のキャビティ内に充填して熱成形を開始するための最初の充填工程を示し、図1(b)は、成形しようとするクッション材の硬軟度を調整するために、雌金型壁3のキャビティ内に充填した繊維集合体1を雄金型壁2によって圧縮する工程を示している。
【0013】
そして、図1(c)は、図1(b)に例示した圧縮工程で圧縮された繊維集合体1に、例えば図示した矢印の方向に熱風を貫流させた後、更に必要に応じて冷却風を貫流することで、バインダー繊維を溶融させ、溶融させたバインダー繊維によって繊維集合体1を構成する繊維同士を固化結合させる工程を示したものである。このような工程を経て所定の形状に成形された成形品は、クッション材として金型から取り出されることとなる。
【0014】
なお、図1(a)の充填工程においては、繊維集合体1は、予めマトリックス繊維とバインダー繊維とを所定の比率で混綿したものである。その際、必要に応じて混綿後に開繊処理しても良いし、開繊せずに混綿したままにしておいても良い。
【0015】
本発明においては、前記雄金型壁2及び前記雌金型壁3として、簡単な形状変更が可能な柔軟構造を有する通気性金型壁を使用する。したがって、このようなな柔軟構造を有する前記金型壁2と3としては、通常、肉厚が0.8mmから2.0mm程度であるパンチングプレートを使用することができる。また、金属製織物、金属製編物、金属製不織布、或いはエキスパンドメタルなどを使用することもできる。
【0016】
ただし、パンチングプレートを使用する場合、金型壁面の曲率が緩やかなところでは、パンチングプレートを使用しても、パンチングプレートに開口させられた孔群を変形させてしまうこともなく、比較的容易に叩き出し加工が可能であるが、金型コーナー部などの曲率が大きいところでは、叩き出しによる形状出しが困難であり、加熱等によりパンチングプレートを部分的に引き伸ばすことにより形状を合わせていく。
【0017】
特に球面の場合は、パンチングプレートを局部的に引き伸ばしたり、縮めたりする必要があるために、引き伸ばした部分は材料の肉厚が薄くなり、強度不足で変形が起こり易くなる問題がある。また、引き伸ばすことにより、パンチングプレートの丸穴が楕円に変形し、場合によっては、変形した楕円の端部から亀裂が入り金型の破損に繋がることも起こる。
【0018】
また、縮める部分ついては、皺が発生したりする問題があるために、作り直し等の発生する可能性が高くなる。この様な加工法は作業者の熟練に頼る部分が大きく、製作に要する期間も長いためコストアップに繋がる。
【0019】
そこで、本発明では、金型壁面の曲率が大きくなる場合には、既に述べたような金属製織物、金属製編物、金属製不織布、或いはエキスパンドメタルを使用する。このような材料は通気性を有すると共に、容易に成形するクッション材の形状に合せて形状を変形させることが可能である。
【0020】
しかしながら、前記の柔構造を有する通気性金型壁は、前述の図1(b)に例示した圧縮工程などにおいて大きな力が作用すると容易に変形してしまうという問題がある。また、図1(c)に例示した熱成形工程などにおいては、金型に繰り返し熱応力が作用するため、これによっても変形し易いという問題がある。また、作業者の不注意などによって金型を変形させてしまうといった事態も予想される。
【0021】
本発明の一大特徴とする所は、「前記の柔構造を有する金型を使用して、安価且つ短時間に通気性金型を製造できる方法を提供すること」にある。そこで、この方法について以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図2は、前記の方法を達成するための形状保持部材の切削加工装置を模式的に例示した説明図である。
該図2において、参照符号4は切削加工装置であって、この切削加工装置4は、前記クッション材を賦型する金型形状を、三次元形状データとして切削加工装置4本体に記憶させ、記憶させた前記三次元形状データを基にして、前記切削加工装置の切削加工ヘッド4aを制御することによって、板状の形状保持部材群5を切り出す記憶演算制御装置4bを少なくとも有する。
【0023】
なお、このような切削加工装置としては、レーザー切削加工装置、放電切削加工装置、電動ソー等を挙げることができる。しかしながら、その取扱いが簡単なこと、切削加工へッド4aの位置決め制御が容易であること、切削加工に要するエネルギー制御が容易であることなどの理由から、レーザー切削加工機を使用することが好ましい。
【0024】
本発明の金型の製造方法では、複雑な三次元形状を直接形成させずに、二次元形状を有する板状の形状保持部材群5を先ず切り出す。この時、例えば通常の直角三次元座標系を例にとって説明すると、X−Z平面とY−Z平面とでそれぞれ、必要な間隔を置いて板状の形状保持部材群5を所定の数だけ切り出す。そして、これらの切り出した形状保持部材群5を、図3に模式的に例示した斜視図に示したように金型形状を井桁状(碁盤の目状)に組み上げて、金型の形状を反映する骨格を製作する。
【0025】
このようにして井桁状に組み上げた金型形状を反映する骨格の上端面は、既に熱成形するクッション材の三次元形状を形成している。このため、この面に柔軟構造を有する前述のような金型壁材料を貼り合せていくことで、この金型壁材料を、任意の三次元形状に変形させることが可能となる。そして、このようにして製作される金型は、その製作時間を短縮でき、かつ製造コストも極めて安価となる。
【0026】
なお、前記の金型骨格は、クッション材形状を賦型する金型キャビティの外側に設けられることは当然である。つまり、図1(a)を参照して説明すると、雄金型壁2では、凸状に変形された金型壁面の外壁面側(繊維集合体と直接接触する側)ではなく、内壁面側に設けられる。また、逆に雌金型壁3では、凸状に変形された金型壁面の内壁面側(繊維集合体と直接接触する側)ではなく、外壁面側に設けられる。
【0027】
前述のような金型としては、その金型壁2又は3として、図4に示したようなエキスパンドメタル(菱形の大きな開口を有する金属板であって、菱形の開口部が容易に変形できるような構造を採る)を使用する場合を例にとって説明する。なお、エキスパンドメタルとしては、所謂「ラス織り」という構造をもったものが知られている。なお、簡単に三次元形状に変形できる柔構造の材料としては、金属製織物、金属製編物、或いは金属製不織布を好適に使用することができることは言うまでもない。
【0028】
そこで、前述の柔軟構造を有するエキスパンドメタルのような金型壁材料を曲率の大きなコーナー部6に対して、エキスパンドメタルの様な柔軟構造物であれば伸び縮みの自由度が大きく、簡単に三次元曲面を形成させることが可能である。特に球面の様な場合においても、エキスパンドメタルの菱形の開口部分をさらに潰れた菱形にしていくことで、容易に球面形状に沿わせることが可能である。
【0029】
また、平面を伸ばす場合は、菱形の開口部分を引き伸ばし、この開口部の形状を正方形に近づけることにより、容易に変形させることが出来る。なお、このような変形作業を実施する場合においては、より容易に変形させるために凸状の治具を用いることも有効である。このような場合、凸状の治具を用いてもパンチングプレートの様にハンマーで叩いたり、バーナーで加熱・軟化させる必要は無く、単に治具を押付ける、もしくは軽く叩くことにより形状出しが可能である。
【0030】
また、円筒形状の様な単純に曲げ加工が出来るものであるならば、このような部分に対してはパンチングプレートの様な板材を使用しても加工の手間にはならない。なお、井桁状に組み上げた金型骨格の形状保持部材同士を溶接、もしくは銀蝋などにより固定し、一体化させることにより製作される。
【0031】
そして、最終的に、以上に述べた様な手順で雄金型と雌金型を製作し、完全な金型としての金型の製作を完了する。
【0032】
次に、本発明のクッション材は繊維集合体によって製造されることは既に述べた通りであって、従来のようにウレタンフォームを使用する方法とは基本的に異なる。この場合、既にある従来のクッション材の形状を金型へ転写することができれば、切削加工機への三次元データの入力作業を短縮できることになり、金型形状を図面上に設計し、これを入力する場合に比較して金型の製作をより円滑、短期間かつ安価に行うことができる。
【0033】
この場合、金型製作の手順としては、まず目的とするクッション材の三次元形状を、三次元形状測定装置により計測していく。この計測の方法としては、図6(a)に示される接触式のアーム型触針式測定装置11により、接触子をクッション材の表面に当て、X−Z面或いはY−Z面の座標データを読み取っていく。なお、この接触式の計測方法とは別の非接触式の測定装置としては、図6(b)に示されるレーザー式の計測装置により、クッション材の表面を一気にスキャンし、座標データを読み取っていくこともできる。
【0034】
この様にして得られた座標データをコンピュータ内で三次元の金型壁面としてモデル化し、その後必要な形状保持部材群を切出すためのデータを作成し、前述の図2に例示した様なレーザー切削加工装置で形状保持部材群を切り取っていく。そして、これらの形状保持部材群を組み合わせて、図3に示したような金型骨格を形成し、最終的に柔構造を有する金型壁材料で貼り合わせて金型を製造することは既に述べた所である。
【0035】
ここで最後に、念のため本発明の方法によって製造される金型を使用してクッション材へと熱成形する繊維集合体についても、ここで簡単に説明しておく。
【0036】
まず、繊維集合体のマトリックスを構成する合成繊維の短繊維としては、特に限定されることはないが、例えば通常のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバラクトン、またはこれらの共重合エステルからなる短繊維、及至これらの繊維の混綿体、または上記のポリマー成分の内の2種類以上からなる複合繊維等が好適である。また、短繊維の断面形状は、円形、扁平、異形または中空のいずれであっても良い。
【0037】
さらに、この場合の捲縮は、顕在捲縮であることが好ましく、この顕在捲縮は、クリンパー等による機械的な方法、紡糸時の異方冷却による方法、サイドバイサイド型あるいは偏心シースコア型複合繊維の加熱による方法等で得ることが出来る。
【0038】
一方、バインダー繊維としては、例えばポリウレタン系エラストマーやポリエステル系エラストマー等を接着性成分とする繊維(複合繊維でも良い)を成形する製品の要求性能に合わせて混合すればよい。
【0039】
【発明の効果】
以上に述べた本発明の方法によれば、「捲縮形態を有する合成繊維の短繊維からなるマトリックス中に該短繊維より低い融点を有するバインダー繊維が分散混入された繊維集合体を金型キャビティ内へ充填し、充填した繊維集合体からクッション材を熱成形するための通気性金型を安価に、かつ短時間に製造できる金型の製造方法を提供することができる。」という格別顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 通気性金型を使用して繊維集合体をクッション材へと熱成形する方法を模式的に例示した側断面図である。
【図2】 井桁状に組み上げる形状保持部材群を切り出すための切削加工方法を模式的に例示した説明図である。
【図3】 形状保持部材群を井桁状に組み上げた金型骨格を模式的に例示した斜視図である。
【図4】 本発明で使用するエキスパンドメタルの説明図である。
【図5】 本発明による金型を表した図である。
【図6】 本発明のクッション材の三次元形状の形状計測方法を例示した説明図である。
Claims (3)
- 捲縮形態を有する合成繊維の短繊維からなるマトリックス中に該短繊維より低い融点を有するバインダー繊維が分散混入された繊維集合体を充填してクッション材へと熱成形するための金型の製造方法において、
前記クッション材を賦型する金型形状を、三次元形状データとして切削加工装置に記憶させ、
前記三次元形状データを基にして、前記切削加工装置によって二次元形状を有する板状の形状保持部材群を切り出し、
前記形状保持部材群を井桁状に組み合わせて金型形状を反映する骨格を形成し、形成された前記骨格に沿って、柔軟構造を有する通気性金型壁を貼り付けることを特徴とするクッション材成形金型の製造方法。 - 請求項1記載の製造方法において、柔軟構造を有する通気性金型壁として、大きな曲率を有する部分に対して、金属製織物、金属製編物、金属製不織布、或いはエキスパンドメタルを使用することを特徴としたクッション材成形金型の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法において、前記の形状保持部材群をレーザー切削加工機で切出すことを特徴としたクッション材成形金型の製造方法。
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