JP4242987B2 - 気泡性緩衝材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気泡性緩衝材に係り、特にポリプロピレン系の気泡性緩衝材に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、ポリエチレンフィルムを成形可能温度に加熱した後、ドラム成形機で複数の凸部を形成し、この凸部の開口側を別のポリエチレンフィルムで塞ぐことで製作された気泡性緩衝材が知られている。
このような気泡性緩衝材は、梱包材として用いられることも多く、この場合には、非梱包物を容易に視認できるように透明性が求められる場合がある。また、緩衝材本来の機能を維持させるために、凸部には十分な弾力性と衝撃に対して破れることのない強度とが要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のポリエチレンフィルムを用いた場合には、以下のような問題がある。
▲1▼ポリエチレンフィルムでは、ある程度の透明性を確保することは可能であるが、限界があり、より透明性に優れた気泡性緩衝材を製造することができない。
▲2▼強い衝撃を受けると、場合によっては凸部が破れることがあるため、肉厚を厚くして強度を確保する必要がある。
▲3▼前記▲2▼により、気泡性緩衝材の薄肉化が困難である。
【0004】
ところで、これらの問題は、材料であるポリエチレンの特性に起因するところが大きい。このため、上記問題を解決するためには、気泡性緩衝材の材料として、ポリエチレンよりも透明性が高く高強度なポリプロピレン系樹脂を用いることが考えられる。
【0005】
ところが、通常のポリプロピレンフィルムは融点が高いため、凸部を成形する場合やフィルム同士を熱融着して互いに貼り合わせる場合に、成形温度、融着温度をより高く設定しなければならない。このため、高温で軟化した部分が凸部成形用のドラムや融着用の加熱ロールに融着し易く、これらからの剥離性が悪化して成型品の外観が損なわれる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、透明性、高強度、薄肉化、および安定した成形性の全てを満足する気泡性緩衝材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の気泡性緩衝材は、一方に開口した凸部を有する凸部形成フィルムと、前記凸部の開口側を塞ぐようにして前記凸部形成フィルムに貼り合わされる封止フィルムとで構成された気泡性緩衝材であって、前記凸部形成フィルムおよび封止フィルムのうちの少なくとも一方のフィルムは、多層のポリプロピレン系樹脂からなるとともに、互いに貼り合わされる一方の面側の融点よりも、これとは反対の他方の面側の融点が高いことを特徴とする気泡性緩衝材。
【0008】
このような本発明においては、材料としてポリプロピレン系樹脂を用いるので、従来のポリエチレンを用いた場合に比べて優れた透明性および高強度化が容易に実現される。また、高強度化に伴って薄肉化を促進することも可能である。
加えて、一方のフィルムを多層構造にして各面側で融点差を生じさせているため、例えば、凸部成形フィルムにそのような融点差を生じさせた場合には、凸部形成フィルムの高融点側の面を凸部成形用のドラムに密着させればよく、凸部形成フィルムが成形可能な温度に加熱されたり、封止フィルムと融着可能な温度に加熱されても、凸部形成フィルムのドラムと密着する高融点側の面が低融点側の面に比して軟化し難くなり、低融点側の軟化によって得られる成形性および融着状態を良好に維持しつつも、凸部形成フィルムの前記ドラムからの剥離性が向上し、気泡性緩衝材の成形性が向上する。
同様に、封止フィルムを多層構造にして各面側で融点差を生じさせた場合でも、熱融着用の加熱ロール等に高融点側を密着させればよく、密着した高融点側の過度の軟化が抑えられて加熱ロールからの剥離性が向上し、やはり気泡性緩衝材の成形性が向上する。
【0009】
また、本発明の気泡性緩衝材では、前記凸部形成フィルムおよび封止フィルムの両方を多層構造とし、それぞれのフィルムの各面側で融点差を生じさせることが好ましく、このような場合には、気泡性緩衝材の両面側での剥離性が向上し、気泡性緩衝材全体の成形性が格段に向上する。
【0010】
さらに、本発明の気泡性緩衝材では、前記多層のポリプロピレン系樹脂からなるフィルムの前記一方の面側と前記他方の面側との融点差が10℃以上であることが望ましく、より望ましくは20℃以上である。
融点差が10℃よりも小さいと、極端に薄いフィルムを用いて成形する時など、場合によっては凸部成形時や熱融着時の熱で高融点側(ドラムや加熱ロールと接触する側)の軟化が促進される可能性があり、剥離性が阻害されて成形性が悪化するおそれがある。
【0011】
そして、本発明の気泡性緩衝材では、前記多層のポリプロピレン系樹脂からなるフィルムは3層構造であってもよい。
このような構成では、凸部の大きさ違いや厚さ違い、あるいは強度違い等の種々の気泡性緩衝材を製造する際に、凸部の成形性、各フィルムの融着性、あるいは要求される強度等に応じた融点の材料で中間層を形成すればよいから、成形温度、成形時間、融着温度、融着時間等、製造時の各種パラメータを大きく変える必用がなく、それらの製造が容易に行われる。
【0012】
また、本発明の気泡性緩衝材では、前記凸部形成フィルムおよび封止フィルムの互いに貼り合わされる面側同士の融点差が20℃以内であることが望ましい。
融点差が20℃よりも大きいと、熱融着時の加熱温度によっては、各フィルム同士が均一に軟化せず、熱融着を良好に行えない場合がある。また、一方のフィルムが過度に加熱される可能性があるから、ドラムまたは加熱ロールと密着する面が著しく軟化するおそれがあり、剥離性が阻害される心配がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る気泡性緩衝材10を示す断面図、図2は、気泡性緩衝材10の要部を拡大して示す断面図である。
【0015】
気泡性緩衝材10は、一方に開口した凸部20Aを有する凸部形成フィルム20と、凸部20Aの開口側を塞ぐようにして凸部形成フィルム20に熱融着された封止フィルム30とで構成され、凸部20A内の空気(気泡)による弾性によって良好な緩衝作用を生じさせている。
【0016】
凸部形成フィルム20は、ポリプロピレン製であり、図2に拡大して示すように、下方から上方に向けて第1、第2層21,22が形成された多層構造を有している。
第1層21は、高融点(Tm:160〜165℃)のホモポリプロピレン(耐熱PP)からなる。第2層22は、コポリプロピレンの中のランダム(2元または3元)ポリプロピレン、またはこのランダムポリプロピレンにゴム性または金属性のエラストマーを混合したものであり、第1層21よりも低融点(Tm:80〜155℃)化が図られている。そして、実際に各層21,22を形成する材料としては、それぞれの融点差が10℃以上となる材料が選択される。つまり、融点が160℃の材料で第1層21を形成する場合には、融点が80℃以上でかつ150℃よりも低い融点の材料で第2層が形成される。
【0017】
一方、封止フィルム30は単層のポリプロピレン製であり、具体的には、ランダムポリプロピレン、またはこのようなコポリマーに低融点化のためのエラストマーを混合したものであって、これと熱融着される凸部形成フィルム20の第2層22と同じ低い融点(Tm:80〜155℃)を有している。そして、実際の封止フィルム30および凸部形成フィルム20の第2層を形成する材料としては、それぞれの融点差が20℃以内の材料が選択される。つまり、融点が100℃の材料で凸部形成フィルム20の第2層22を形成する場合には、融点が80〜120℃の材料で封止フィルム30が形成される。
【0018】
次に、図3〜図4に基づき、気泡性緩衝材10の製造装置であるドラム成形機40、および気泡性緩衝材10の製造方法を説明する。
【0019】
図3において、ドラム成形機40は、凸部形成フィルム20に凸部20Aを形成した後、この凸部形成フィルム20と封止フィルム30とを熱融着する装置であり、送り装置41から案内ロール42A,42B,43Bを通って繰り出された凸部形成フィルム20を加熱する赤外線ヒータ43と、この凸部形成フィルム20が巻回される凸部20A形成用の成形ドラム44と、別の送り装置45から案内ロール46A,46B,46Cを通って繰り出された封止フィルム30を凸部形成フィルム20に熱融着する加熱ロール(シールロール)47と、以上によって製造された気泡性緩衝材10を送り出す搬送手段48と、これら各部を統括駆動制御するための操作盤49とを備えている。
【0020】
これらのうち、成形ドラム44は、軸方向および周方向に沿って複数形成された凹部44Aを備えている。凹部44Aは、図4に拡大して示すように、成形ドラム44の金属製の外周部分に穿設された貫通孔50の所定深さ位置に、シリコン成形品からなる易離型性材としての底面部材51を配置することで形成されており、底面部材51が有する弾性力で貫通孔50内に保持されている。図5にも示すように、底面部材51の周縁には複数の切欠部51Aが設けられ、各切欠部51Aによって成形ドラム44内と凹部44Aとが連通することにより、各凹部44Aを成形ドラム44内から真空吸引可能になっている。
【0021】
また、成形ドラム44の外周部分は、内蔵された図示しないヒータによって40〜100℃に加熱されている。すなわち、この図示しないヒータおよび外部に配置された前記赤外線ヒータ43で加熱手段が構成され、この加熱手段によって凸部形成フィルム20が両面側から60〜155℃に加熱されるようになっている。
【0022】
このような成形ドラム44においては、加熱されて軟化した凸部形成フィルム20は、高融点側である第1層21が成形ドラム44の外周に密着するように巻回されている。そして、凹部44Aをドラム内から真空吸引することにより、これに巻回された凸部形成フィルム20には凹部44Aの形状に対応した凸部20Aが形成される。
【0023】
なお、凹部44Aをドラム内部から吸引するのではなく、凹部44Aに嵌合する押圧子によって、凸部形成フィルム20を凹部44A内に押し込んで凸部形成フィルム20に凸部20Aを形成してもよい。
【0024】
加熱ロール47は、表面温度が80〜155℃まで加熱されるものであり、この範囲の融着温度で封止フィルム30を凸部形成フィルム20に押圧しながら互いを熱融着するように構成されている。
【0025】
搬送手段48は、成形ドラム44から剥離した気泡性緩衝材10を直下に案内する一対のコンベア48A,48Bと、案内された気泡性緩衝材10を水平方向に送り出す受け台48Cとを備えているとともに、一方のコンベア48Bが可倒式になっており、製造開始時に送り出された気泡性緩衝材10の先端を各コンベア48A,48B間に容易に位置させることが可能である。
【0026】
このような本実施形態においては、以下のようにして気泡性緩衝材10を製造する。
先ず、ロール状に巻かれた凸部形成フィルム20および封止フィルム30をそれぞれ送り装置41,45に装着し、各フィルム20,30を成形ドラム44まで案内して巻回させる。この際、凸部形成フィルム20の高融点側を成形ドラム44に密着させる。
そして、成形ドラム44に巻回された凸部形成フィルム20を、赤外線ヒータ43および40〜100℃とされた成形ドラム44自身の外周表面で60〜155℃まで加熱し、成形可能な状態に軟化させるとともに、成形ドラム44内からの真空吸引を行って凸部形成フィルム20に凸部20Aを形成する。
この後、凸部形成フィルム20とこれに重ねられた封止フィルム30とを、80〜155℃に加熱された加熱ロール47で熱融着する。
最後に、熱融着によって一体とされた各フィルム20,30を成形ドラム44から剥離させて気泡性緩衝材10を得る。
【0027】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)凸部形成フィルム20および封止フィルム30の材料としてポリプロピレンが用いられているので、従来のポリエチレンを用いた場合に比べて優れた透明性および高強度化を容易に実現でき、気泡性緩衝材を梱包材として用いた場合などに非梱包物を容易に視認できるうえ、凸部20A側およびその開口部側から大きな衝撃が加わっても破れる等の心配がない。
また、各フィルム20,30の高強度化に伴って薄肉化を促進することもでき、薄肉化に伴ってコストも削減できる。
さらに、ポリプロピレン製であるから、二次加工性、ガスバリア性、防湿性も向上させることができる。
【0028】
(2)凸部成形フィルム20は多層構造とされて各面側で融点差があるから、凸部形成フィルム20の高融点側の面を成形ドラム44に密着させることにより、凸部形成フィルム20が成形可能な温度に加熱されたり、封止フィルム30と融着可能な温度に加熱されても、凸部形成フィルム20のドラムと密着する高融点側の面が低融点側の面に比して軟化し難くなり、低融点側の軟化によって得られる成形性および融着状態を良好に維持しつつも、凸部形成フィルム20の成形ドラム44からの剥離性を向上させることができ、気泡性緩衝材10の成形性を向上させることができる。
【0029】
(3)凸部形成フィルム20の第1層21と第2層22との融点差が10℃以上となるように各層21,22の材料が選択されるから、凸部20A成形時や熱融着時の熱で高融点側(成形ドラム44と密着する側)である第1層21が軟化するのをより確実に防止でき、剥離性が阻害されて成形性が悪化する心配がない。
【0030】
(4)互いに融着される封止フィルム30と凸部形成フィルム20の第2層22とは、共にランダムポリプロピレン、またはこれにエラストマーを混合したものであり、それぞれ低融点であるから、凸部形成フィルム20と封止フィルム30との融着温度も80〜155℃と高融点側に何ら熱影響を及ぼすことのない程度に低く設定でき、熱融着を行っても凸部形成フィルム20の成形ドラム44からの剥離性が低下する心配がない。
【0031】
(5)特に、凸部形成フィルム20および封止フィルム30は、互いに貼り合わされる面側同士の融点差が20℃以内となるように各材料が選択されるため、各フィルム20,30が均一に軟化し、熱融着を良好に行える。また、一方のフィルムが過度に加熱される心配がないから、成形ドラム44または加熱ロール47と密着する面が著しく軟化するのを防止でき、剥離性を良好に維持できる。
【0032】
(6)凸部形成フィルム20は高融点側の第1層21がホモポリプロピレンで形成されているので、自身が高融点であるという特性をそのまま活かすことができ、高融点化を容易に実現できる。
また、低融点側の第2層22がランダムポリプロピレンで形成されているので、高融点のホモポリプロピレンとの融点差を容易に生じさせることができる。特に、ランダムポリプロピレンにエラストマーを混合した場合には、低融点化を一層容易に実現でき、凸部形成フィルム20の各面で融点差を簡単かつ確実に生じさせることができる。
【0033】
(7)凸部形成フィルム20の凸部20A成形時の温度を60〜155℃にし、凸部形成フィルム20と封止フィルム30との熱融着時の温度を80〜155℃にすることで、それぞれの温度を適切に設定したので、凸部20Aの成形不良や各フィルム20,30の融着不良、さらには成形ドラム44からの剥離不良を防止でき、各フィルム20,30をポリプロピレン製とした場合でも、気泡性緩衝材10の製造を確実かつ効率的に行える。
【0034】
(8)ドラム成形機40の加熱手段は、赤外線ヒータ43および成形ドラム44により、凸部形成フィルム20を両面側から加熱可能に構成されているため、凸部形成フィルム20を短時間で適切な成形温度にすることができ、生産性をさらに向上させることができる。
【0035】
(9)成形ドラム44の凹部44Aの底面は、シリコン成形品である底面部材51で形成されているため、凹部44A内での凸部20Aの剥離性を一層向上させることができ、気泡性緩衝材10の凸部20Aをより確実に形成できる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図6には、本発明の第2実施形態に係る気泡性緩衝材の断面図が示されている。なお、以下の各実施形態では、前記第1実施形態と同じ構成には同一符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0037】
図6において、気泡性緩衝材を構成する凸部形成フィルム20は単層のポリプロピレン製であり、具体的には、ランダムポリプロピレン、またはこのようなコポリマーに低融点化のためのゴム性または金属性のエラストマーを混合したものであって、低い融点(Tm:80〜155℃)を有している。
【0038】
これに対し、封止フィルム30は、ポリプロピレン製であり、上方から下方に向けて第1、第2層31,32が形成された多層構造を有している。
第1層31は、高融点(Tm:160〜165℃)のホモポリプロピレンからなる。第2層32は、コポリプロピレンの中のランダム(2元または3元)ポリプロピレン、またはこのランダムポリプロピレンにエラストマーを混合したものであり、第1層31よりも低く凸部形成フィルム20と同じ低融点(Tm:80〜155℃)化が図られている。
【0039】
そして、実際に各層31,32を形成する材料としては、それぞれの融点差が10℃以上となる材料が選択される。つまり、融点が160℃の材料で第1層21を形成する場合には、融点が80℃以上でかつ150℃よりも低い融点の材料で第2層が形成される。
また、第2層32および凸部形成フィルム20を形成する材料としては、それぞれの融点差が20℃以内の材料が選択される。つまり、融点が100℃の材料で封止フィルム30の第2層32を形成する場合には、融点が80〜120℃の材料で凸部形成フィルム20が形成される。
すなわち、本実施形態では、第1実施形態の各フィルム20,30の材料構成を逆転させた構造になっている。
【0040】
本実施形態によれば、各フィルム20,30がポリプロピレン製であることにより、前述した(1)の効果を同様に得ることができる。
封止フィルム30の各面側で融点差があるから、熱融着用の加熱ロール47に高融点側の第1層31を密着させることにより、密着した第1層31の過度の軟化が抑えられて加熱ロール47からの剥離性を向上させることができ、構成は異なるが、やはり気泡性緩衝材の成形性を向上させて(2)の効果も同様に得ることができる。
封止フィルム30の第1層31と第2層32との融点差が10℃以上となるように各層31,32の材料が選択されるから、熱融着時の熱で高融点側(加熱ロール47と密着する側)である第1層31が軟化するのをより確実に防止でき、剥離性が阻害されて成形性が悪化する心配がなく、(3)の効果も得ることができる。
また、他の同様な構成により、(4)〜(6)の効果も同様に得ることができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
図7には、本発明の第3実施形態に係る気泡性緩衝材が示されている。
本実施形態では、凸部形成フィルム20および封止フィルム30の両方が多層構造とされ、それぞれ第1層21,31、第2層22,32を有している。各層21,22,31,33の具体的な材料は第1、第2実施形態と同じである。
【0042】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(6)の効果に加え、以下の効果がある。
すなわち、各フィルム20,30において、各面側に融点差があるから、それぞれの高融点側を成形ドラム44、加熱ロール47に密着させることにより、成形ドラム44および加熱ロール47の両方からの剥離性を向上させることができ、成形性を格段に向上させることができる。
【0043】
〔第4実施形態〕
図8に示す第4実施形態では、各フィルム20,30の第1層21,31と第2層22,32との間に、中間層としての第3層23,33が設けられている。
この第3層23,33の具体的な材料は、ポリプロピレン系樹脂の中から、凸部20Aの大きさや肉厚からくる成形性や、各フィルム20,30の融着性、あるいは要求される強度等を勘案して、それに応じた融点のものを選択してよく、例えば、第1層21,31および第2層22,32のいずれかと同じ材料か、あるいは通常のポリプロピレンである。
【0044】
このような本発明によれば、凸部20Aの大きさ違いや厚さ違い、あるいは強度違い等の種々の気泡性緩衝材を製造する際に、凸部20Aの成形性、各フィルム20,30の融着性、あるいは要求される強度等に応じた融点の材料で第3層23,33を形成すればよいから、成形温度、成形時間、融着温度、融着時間等、製造時の各種パラメータを大きく変える必用がなく、それらを容易に製造できる。
【0045】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記第1、第2実施形態では、凸部形成フィルム20、封止フィルム30が共にポリプロピレン製であったが、単層のフィルム側をそれぞれポリエチレン等の他のポリオレフィン系樹脂としてもよい。
【0046】
また、各フィルム20,30として、単層構造、2層構造、3層構造のものがある場合、各構造のフィルムの組合せは、各実施形態の組合せに限定されず、例えば、図9に示すように、一方のフィルムを単層構造とし、他方のフィルムを3層構造としてもよく、図示を省略するが、一方を2層構造とし、他方を3層構造としてもよい。
そして、多層構造としては、2層構造、3層構造に限らず、4層以上の場合でも本発明に含まれる。
要するに、いずれの多層構造のフィルムにおいても、貼り合わせ側の融点よりも、これとは反対側の融点が大きければよく、層数は任意である。
【0047】
さらに、気泡性緩衝材10の厚さや凸部20Aの大きさ、形状等も、その実施にあたって適宜決められてよく、前記各実施形態のものに限定されない。
【0048】
【実施例】
本発明の実施例として、図8に示す第4実施形態に基づき、凸部形成フィルムおよび封止フィルムを共に3層構造とした場合の気泡性緩衝材(第1〜第3実施例)を製造し、また、図9に基づき、一方のフィルムを3層構造、他方のフィルムを単層構造にした気泡性緩衝材(第4、第5実施例)を製造し、比較例として、ポリエチレン製のフィルムを用いて厚さ違いの気泡性緩衝材(第1、第2比較例)を製造し、これらの透明性、強度、および成形性を比較した。各実施例、比較例で使用した各フィルムの材料および諸特性を表1、表2に示し、比較結果を表3に示す。なお、表3において、○は良、△は可、×は不可である。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
比較の結果、第1〜第4実施例までが、外観上良好な透明性および成形性が得られ、また、強い衝撃を加えた場合でも凸部の破れ等が生じず、十分な強度が得られた。第5実施例は、透明性および強度については良好であるが、成形性に関して他の実施例よりも劣る。しかし、この成形状態も凸部の形状が多少不均一になっている程度で、許容できる範囲であり、製品として何ら支障を来すものではない。
一方、第1比較例は、特に強度が各実施例に比較して著しく劣っており、衝撃によって凸部が容易に破れてしまった。透明性および成形性に関しては、製品として問題となる程度ではないが、各実施例と比較すると透明感に欠け、また、凸部の形状が良好でない部分があった。
第2比較例では、凸部形成フィルムとして第1比較例よりも厚いものを使用したため、強度および成形性(熱融着時のドラム側への熱影響が小さい)が幾分改善されている。しかし、このうち強度に関しては、衝撃を加えた際に凸部が依然として破れる場合があった。透明性に関しても第1比較例と同様に幾分透明感に欠ける。
また、各比較例では、特に強度を実施例程度に向上させるためには、より厚いフィルムを用いる必要があり、薄肉化が困難であるといえる。
以上により、本発明の気泡性緩衝材が従来のポリエチレン製の気泡性緩衝材よりも優れ、前記目的を達成できることが明らかになった。
【0053】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、従来のポリエチレン製の気泡性緩衝材に比べ、透明性、高強度、および成形性を向上させることができ、加えて薄肉化をも促進できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る気泡性緩衝材を示す断面図である。
【図2】前記気泡性緩衝材の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】前記気泡性緩衝材の製造装置の概略を示す構成図である。
【図4】前記製造装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】前記製造装置の構成部材を示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る気泡性緩衝材を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る気泡性緩衝材を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る気泡性緩衝材を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 気泡性緩衝材
20 凸部形成フィルム
21 第1層
22 第2層
23 第3層
20A 凸部
30 封止フィルム
31 第1層
32 第2層
33 第3層
Claims (5)
- 一方に開口した凸部を有する凸部形成フィルムと、前記凸部の開口側を塞ぐようにして前記凸部形成フィルムに貼り合わされる封止フィルムとで構成された気泡性緩衝材であって、
前記凸部形成フィルムおよび封止フィルムのうちの少なくとも一方のフィルムは、多層のポリプロピレン系樹脂からなるとともに、互いに貼り合わされる一方の面側の融点よりも、これとは反対の他方の面側の融点が高いことを特徴とする気泡性緩衝材。 - 請求項1に記載の気泡性緩衝材において、前記凸部形成フィルムおよび封止フィルムの両方が多層のポリプロピレン系樹脂からなるとともに、互いに貼り合わされる一方の面側の融点よりも、これとは反対の他方の面側の融点が高いことを特徴とする気泡性緩衝材。
- 請求項1または請求項2に記載の気泡性緩衝材において、前記多層のポリプロピレン系樹脂からなるフィルムの前記一方の面側と前記他方の面側との融点差が10℃以上であることを特徴とする気泡性緩衝材。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の気泡性緩衝材において、前記多層のポリプロピレン系樹脂からなるフィルムは3層構造であることを特徴とする気泡性緩衝材。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の気泡性緩衝材において、前記凸部形成フィルムおよび封止フィルムの互いに貼り合わされる面側同士の融点差が20℃以内であることを特徴とする気泡性緩衝材。
Priority Applications (1)
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