JP4242952B2 - 酢酸の製造方法 - Google Patents
酢酸の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4242952B2 JP4242952B2 JP24459098A JP24459098A JP4242952B2 JP 4242952 B2 JP4242952 B2 JP 4242952B2 JP 24459098 A JP24459098 A JP 24459098A JP 24459098 A JP24459098 A JP 24459098A JP 4242952 B2 JP4242952 B2 JP 4242952B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- acetic acid
- carbonyl compound
- phase
- iodide
- water
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Landscapes
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製造工程中における不純物含有量を低減させ、より純度の高い酢酸を連続的に製造できる酢酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
酢酸の工業的な製法として、特公昭47−3334号公報には、水の存在下、ロジウム触媒と沃化メチルを用い、メタノールと一酸化炭素を連続的に反応させる方法が開示されており、その他にも、特開昭60−54334号公報及び特開昭60−239434号公報には、沃化物塩等の触媒安定化剤を添加し、従来の条件よりも低水分条件下で反応させる方法が開示されている。
【0003】
しかし、これらの方法により得られる酢酸中には微量の不純物が含有されており、その不純物が、酢酸の用途によっては悪影響を及ぼすことが知られている。例えば、エチレンと酢酸から酢酸ビニルを製造する場合には、酢酸に含まれる不純物が前記製造に用いるパラジウム系触媒を劣化させることが知られている。このような酢酸中の不純物としては、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド等のカルボニル化合物、沃化メチル、沃化ブチル、沃化ヘキシル等の沃化アルキル等が知られている(特開平4−266843号公報)。
【0004】
このような酢酸中の微量不純物を除去する方法として本発明者は、先に触媒の存在下、メタノールと一酸化炭素を反応させ、蒸留による分離処理を経たアセトアルデヒド及び沃化メチルを含む不純物を、水と接触させ、カルボニル化合物を含む水相と沃化メチルを含む有機相に分離し、有機相を反応工程に返送する酢酸の製造方法を提案している(特開平8−67650号公報)。
【0005】
この方法は、反応液中におけるアセトアルデヒド濃度を低下させ、より高純度の酢酸を得ることができる点において優れたものであるが、水相中に混入する沃化メチル量が多くなるほか、廃液中に残存する沃化メチルの量も多くなるという点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は、特開平8−67650号公報に記載の発明を改善するものであり、酢酸の製造方法において生成する不純物から、アセトアルデヒドと沃化メチルをより確実に分離採取し、高い純度の酢酸を連続的に得ることができる酢酸の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ロジウム触媒、沃化物塩及び沃化メチルの存在下、一酸化炭素とメタノール、ジメチルエーテル又は酢酸メチルを反応させる第1工程、
第1工程で得た反応液を蒸留し、カルボニル化合物を含む高揮発性相と低揮発性相に分離する第2工程、
第2工程で得たカルボニル化合物を含む高揮発性相を蒸留し、酢酸を含む生成物とカルボニル化合物を含む不純物に分離する第3工程、
第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を水と接触させることにより、沃化アルキルを含む有機相とカルボニル化合物を含む水相に分離する第4工程並びに
第4工程で得た有機相を反応工程に返送する第5工程、
を具備しており、
第4工程において、カルボニル化合物を含む不純物と水との接触を30〜60℃で行うことを特徴とする酢酸の製造方法を提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酢酸の製造方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の酢酸の製造方法を説明するための概念図である。
【0009】
まず、第1工程において、ロジウム触媒、沃化物塩及び沃化メチルの存在下、反応器10に一酸化炭素とメタノール、ジメチルエーテル又は酢酸メチルを連続的に供給して反応させる。このとき、反応器10内には攪拌機を取り付け、反応中は攪拌を行い、反応系が均一になるようにすることが好ましい。
【0010】
ロジウム触媒は、反応液中においてロジウム錯体に変化するものであれば特に限定されず、例えば、RhI3、[Rh(CO)2I2]-等のロジウム−沃素錯体、ロジウム−カルボニル錯体を挙げることができる。
ロジウム触媒の使用量は、反応液中において200〜1000ppmが好ましく、300〜600ppmが特に好ましい。
【0011】
沃化物塩は、特に低水分下でのロジウム触媒の安定化と副反応制御等のために添加されるものである。沃化物塩は、反応液中において沃素イオンを発生させるものであれば特に限定されず、LiI、NaI、KI、RbI、CsI等のアルカリ金属の沃化物塩、BeI2、MgI2、CaI2等のアルカリ土類金属の沃化物塩、BI3、AlI3等のアルミニウム族金属の沃化物塩等;4級ホスホニウム沃化物塩(トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の沃化メチル付加物又は沃化水素付加物等)、4級アンモニウム沃化物塩(3級アミン、ピリジン類、イミダゾール類、イミド類等の沃化メチル付加物又は沃化水素付加物)等を挙げることができる。これらの中でもアルカリ金属の沃化物塩が好ましく、LiIが特に好ましい。
沃化物塩の使用量は、反応液中における沃化物イオン量として、0.07〜2.5モル/Lが好ましく、0.25〜1.5モル/Lが特に好ましい。
【0012】
沃化メチルは触媒促進剤として用いられるもので、使用量は、反応液中において5〜20重量%が好ましく、12〜16重量%が特に好ましい。
【0013】
反応液中における水分濃度は、15重量%以下が好ましく、10重量%以下が特に好ましく、1〜5重量%がさらに好ましい。
反応温度は、150〜250℃が好ましく、180〜220℃が特に好ましい。
反応系の一酸化炭素分圧は、2〜30気圧が好ましく、4〜15気圧が特に好ましい。また、反応系における全圧力、即ち、一酸化炭素の分圧、副生物の分圧及び液体の蒸気圧との合計圧力は15〜40気圧が好ましい。
【0014】
このようにして第1工程において生成した反応液は、反応器10からライン11を経て、蒸留器12の高さ方向の中間部位に導入する。
【0015】
次に、第2工程において、蒸留器12で、第1工程から送った反応液を蒸留して、高揮発性相と低揮発性相に分離する。この工程で用いる「高揮発性相」と「低揮発性相」とは、両相の相対的な揮発の程度を意味するもので、絶対的な揮発の程度を意味するものではない。
【0016】
低揮発性相は、主としてロジウム触媒、沃化物塩を含み、少量の沃化メチル、水、酢酸、酢酸メチル(製造原料として用いた未反応のメタノール、ジメチルエーテルと、生成物の酢酸との反応物を意味する。以下、同様である。)を含んでおり、蒸留器12の下部からライン13を経て、反応器10に返送する。一方、高揮発性相は、酢酸と共に、酢酸メチル、沃化メチル及び水を含んでおり、塔頂留出物としてライン15を経て、分離器14に送る。
【0017】
次に、第3工程において、分離器(沃化メチル−酢酸スプリッターカラム)14で、第2工程から送った高揮発性相を蒸留し、酢酸を含む生成物と不純物に分離する。
【0018】
酢酸を含む生成物は、分離器14の下部からライン17を経て取り出す。この酢酸を含む生成物は、必要に応じて、活性炭、イオン交換樹脂、オゾン又は酸化剤による酸化等の常法で精製処理し、より高純度の酢酸を得る。
【0019】
不純物は、アセトアルデヒド等のカルボニル化合物、沃化メチル等のヨウ化アルキル、水、酢酸、酢酸メチルを含んでおり、塔頂留出物として分離器14の上部からライン20を経て取り出す。
【0020】
次に、第4工程において、抽出部25で、第3工程で得た不純物を水と接触させることにより、主として沃化メチル等の沃化アルキルを含む有機相と、主としてカルボニル化合物を含む水相に分離する。
【0021】
第4工程における不純物と水の接触は、30〜60℃、好ましくは35〜50℃の範囲で、常圧又は加圧下で行う。前記温度範囲で処理を行うことにより、アセトアルデヒド等のカルボニル化合物の抽出率を高く維持すると共に、沃化メチル等の沃化アルキルが水相中に混入することを抑制し、さらに沃化アルキルを反応工程に返送して再利用することにより、原料の有効利用と廃液中に混入する沃化アルキルによる環境への悪影響を防止できる。
【0022】
第4工程における処理時間は、有機相中に含まれるアセトアルデヒドの残存量(即ち、水相中におけるアルデヒド含有量)に応じて適宜設定できるものであり、通常は1時間以内で行う。有機相は次工程において反応器10に返送されるため、この場合における有機相中に含まれるカルボニル化合物の残存量は、特開平8−67650号公報8欄7〜22行に記載されているとおり、定常反応中における反応工程(反応器10)の反応液中のアセトアルデヒド濃度を400ppm以下に調整できる量であることが好ましく、350ppm以下に調整できる量であることが特に好ましく、300ppm以下に調整できる量であることがさらに好ましい。このように有機相中のアルデヒド残存量を調整することにより、製品酢酸中のアセトアルデヒド由来の有機沃化物、カルボニル不純物量が減少し、プロピオン酸量も減少させることができるので、ライン17で取り出した酢酸の精製処理が容易になる。
【0023】
抽出部25における不純物と水の接触は、不純物と水とを混合し、水相と有機相に分離できる装置を用いる方法であれば特に限定されるものではなく、このような装置としては、ミキサーとセトラーの組み合わせ、RDC(rotated disk contactor)、Karr塔、スプレー塔、充填塔、多孔板塔、邪魔板塔、脈動塔等の装置を挙げることができる。なお、前記装置には、上記温度範囲に設定保持するため、必要に応じて加温又は冷却装置を付加することができる。
【0024】
本発明の製造方法においては、第3工程と第4工程の間に、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を凝縮し、沃化アルキルに富む相と水に富む相に分離する第3a工程を設けることができる。
【0025】
この工程の処理は、分離器14の塔頂留出物に充分な水が含まれている場合に好適なもので、塔頂留出物を凝縮器18に送り、主としてカルボニル化合物、沃化アルキル、酢酸を含む下相液と、主として水、酢酸と、若干の酢酸メチルを含む上相液に分離し、下相液はライン30から取り出し、上相液はライン32から取り出す(以下、「下相液30」、「上相液32」という)。したがって、第3a工程を設けた場合は、第4工程の処理を前記下相液30に対して行う。
【0026】
また、本発明の製造方法においては、第3工程と第4工程の間に、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を多段蒸留塔26で蒸留する第3b工程を設けることができる。この第3b工程は、第3a工程を設けた場合には、その後に設け、前記下相液30に対して処理することが好ましい。
【0027】
この工程における蒸留処理の方法は特に限定されるものではなく、一般的な多段蒸留塔を用いた蒸留法を適用する。この蒸留処理により、塔頂抜取液としてカルボニル化合物を含む濃縮液を得た後、第4工程の処理をする。この第3b工程の処理により、さらにカルボニル化合物の除去率を高めることができる。塔底抜取液は主として沃化アルキルを含むもので、反応器10に返送する。
【0028】
なお、この第3b工程においては、蒸留塔を形成する金属に腐食が生じることがあるが、それは蒸留塔内に下記式(I)で表される反応で生成する沃化水素が存在することが原因であるものと推定される。
【0029】
CH3I+H2O ⇔ CH3OH+HI (I)
上記式(I)の反応は平衡反応であり、蒸留塔内に沃化メチルが大過剰に存在するために沃化水素が発生するものであるので、蒸留塔内にメタノールを添加し、前記平衡反応を原系に戻すことにより、沃化水素の発生を抑制し、金属腐食を抑制することができる。このときのメタノールの添加量は、沃素イオン量の0.1〜55モル倍であることが好ましく、6〜11モル倍であることが特に好ましい。
また、メタノールは低沸点成分であり、沃化水素と水の共沸温度が127℃であることから、メタノールの添加は蒸留塔の底部付近から行うことが好ましい。さらに、メタノールの添加により、蒸留塔内に少量含まれる酢酸と反応して酢酸メチルが生成されるが、その生成量は微量であるため、第4工程の処理に悪影響を及ぼすほどカルボニル化合物濃度を低下させることはない。
【0030】
次に、第5工程において、第4工程で得た沃化メチル等を含む有機相を反応工程(反応器10)に返送し、再度反応に用いる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0032】
実施例1、2、比較例1、2
図1に示す製造工程にしたがって、酢酸を連続的に製造した。
(第1工程)
反応器10に、所要量のロジウム触媒、沃化リチウム及び沃化メチルを仕込み、そこに一酸化炭素とメタノールを連続的に供給し、187℃で反応させて、酢酸を生成させた。このとき、アセトアルデヒドが220g/hrの割合で生成した。反応液中のアセトアルデヒド濃度は230ppmであった。
【0033】
(第2工程)
反応器10で生成した反応液を、ライン11から蒸留器12に送って蒸留し、低揮発性相と高揮発性相に分離した。
主としてロジウム触媒、沃化物塩を含み、さらに少量の沃化メチル、水、酢酸を含む低揮発性相は、蒸留器12の下部からライン13を経て、反応器10に返送した。
一方、酢酸と共に、酢酸メチル、沃化メチル及び水を含む高揮発性相は、塔頂留出物としてライン15を経て、スプリッターカラム14に送った。
【0034】
(第3工程)
スプリッターカラム14において、高揮発性相を蒸留し、酢酸を含む生成物をライン17から取り出し、塔頂留出物として、アセトアルデヒド等のカルボニル化合物、沃化メチル等のヨウ化アルキル、水、酢酸、酢酸メチルを含む不純物を取り出し、凝縮器18に送った。なお、乾燥処理後の酢酸を含む生成物中における各成分の濃度は、酢酸が99.5重量%以上、沃化ヘキシルが10ppb、プロピオン酸が290ppmであった。また、メチルペンタン等のアルカン類を3g/hrの割合で除去できたので、スプリッターカラム14の塔頂部でのアルカン類の蓄積を防止でき、アルカン類除去のための装置も不要となった。さらに、この結果、凝縮器18における下相液と上相液(水相)との比重差を0.9g/cc以上にすることができるため、次の第3a工程の処理を容易にできることになる。
【0035】
(第3a工程)
凝縮器18において40℃で凝縮処理して、主としてカルボニル化合物、沃化アルキル、酢酸、酢酸メチルを含む下相液30と、主として水、酢酸と、若干の酢酸メチルを含む上相液32を分取した。下相液30の組成は、下記のとおりであった。
<下相液30の組成>
沃化メチル 86.7重量%
アセトアルデヒド 0.080重量%
水 0.7重量%
酢酸 6.2重量%
酢酸メチル 6.3重量%
パラアルデヒド 0.03重量%
メチルペンタン 0.01重量%
その他 0.01重量%。
【0036】
(第3b工程)
下相液30を80段蒸留塔26に送り、下記の条件で蒸留処理した。
<蒸留条件>
還流比:170
仕込量:100重量部(138g/hr)
抜取量:塔頂から0.42重量部、塔底から99.94重量部
仕込み段:上から70段目
塔頂温度:54℃
塔底温度:82℃
その結果、塔頂抜取液及び塔底抜取液として、下記組成のものを得た。
<塔頂抜取液の組成>
沃化メチル 70.0重量%
アセトアルデヒド 25.2重量%
水 0.7重量%
酢酸 0.0重量%
酢酸メチル 0.5重量%
パラアルデヒド 0.04重量%
メチルペンタン 2.8重量%
その他 0.76重量%
<塔底抜取液の組成>
沃化メチル 86.7重量%
アセトアルデヒド 0.007重量%
水 0.7重量%
酢酸 6.2重量%
酢酸メチル 6.3重量%
パラアルデヒド 0.02重量%
メチルペンタン 0.01重量%
その他 0.01重量%。
【0037】
(第4工程)
第3b工程で得た塔頂抜取液580g/hrを抽出部25となる充填塔(理論段数は表1に示す)に送り、表1に示す温度及び時間で水と接触させ、水相と有機相に分離した。
水相は、別途設けた分離塔に供給して蒸留し(理論段8段、還流比0.3)、留出液としてアセトアルデヒドを取り出し、缶出液として水を取り出した。この水は、凝縮器18に返送した。
【0038】
(第5工程)
第4工程で得た有機相は、塔底抜取液とともに反応器10に返送した。定常反応中における反応器10のアセトアルデヒド濃度は230ppmであった。
【0039】
なお、実施例1、2の第3b工程の仕込み液の沃素イオン濃度は16ppmであり、缶出液の沃素イオン濃度は29ppmであった。また、第3b工程の80段蒸留塔の任意の段における水相中の沃素イオン濃度は、塔底から32段が0.30重量%、15段が0.47重量%、10段が0.54重量%、4段が0.46重量%であった。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1及び2は、塔頂抜取液中のアセトアルデヒドの92%、91%を除去できた。これは、塔頂抜取液の全量580g/hrを処理して、134g/hrのアセトアルデヒドを除去できたことになり、反応器10におけるアセトアルデヒド生成量220g/hrの61%を除去できたことになる。また、実施例1及び2は、アセトアルデヒドを除去すると共に、沃化メチルを反応器に返送して再利用するため、廃液中における沃化メチル濃度を減少できた。
得られた製品酢酸の過マンガン酸タイム(過マンガン酸還元性物質試験)は190分であった。過マンガン酸タイムは、JIS K1351に記載の方法による、酢酸中の極微量な還元性不純物の存在量を調べる品質試験であり、その時間(分)が長いほど純度が高いことを示すものである。
【0042】
実施例3
実施例1と同様にして酢酸を製造した。ただし、第3b工程においては、80段蒸留塔のボトム気相部から、蒸留塔に存在する沃素イオン濃度の10モル倍量のメタノールを10g/hrで添加し、82℃で連続蒸留処理した。その結果、多段蒸留塔内における沃素イオン濃度は1ppm以下になった。
【0043】
試験例1
実施例3の酢酸の製造方法を適用した場合における、メタノール添加による沃素イオン濃度の変化について試験した。試験では、表2に示す組成の反応系で、表2に示す条件でバッチ式で反応させた場合における反応前後の沃素イオン濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
本発明例1及び2は、処理後の沃素イオン濃度が0重量%になっていた。これは上記したとおり、式(I)で表される平衡反応を原系に戻すことにより、沃化水素の生成が抑制されたためである。この結果、蒸留塔内における金属腐食性が低下するため、汎用材料であるSUS316Lを蒸留塔の形成材料として用いることができる。また、このように金属の腐食を抑制できるので、腐食が大きい場合のように、液中に溶出した鉄、ニッケル等の金属イオンが反応器に再循環することによる酢酸反応速度の低下や水性ガスシフト反応の増加によりCO原単位の減少を防止できる。
一方、メタノールの添加量が55モル倍を超える比較試験例2、3、4の場合には、下記式で表される副反応が生じるため、沃化水素量が返って増加するものと推定される。
CH3I+CH3OH ⇒ HI+CH3OCH3↑
【0046】
【発明の効果】
本発明の酢酸の製造方法によれば、アルデヒドの除去率を高め、反応系におけるアセトアルデヒドの含有量を減少させることができる。このため、酢酸中の不純物量を少なくすることができるので、精製処理が容易となり、より高純度の酢酸を製造することができる。また、反応系において沃化メチルを有効に再利用できると共に、廃液中への沃化メチルの混入量を減少させることができるので、環境に悪影響を与えることが殆どない。さらに、多段蒸留塔を適用した場合における蒸留塔を形成する金属の腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の酢酸の製造方法を説明するための概念図である。
Claims (5)
- ロジウム触媒、沃化物塩及び沃化メチルの存在下、一酸化炭素とメタノール、ジメチルエーテル又は酢酸メチルを反応させる第1工程、第1工程で得た反応液を蒸留し、カルボニル化合物を含む高揮発性相と低揮発性相に分離する第2工程、第2工程で得たカルボニル化合物を含む高揮発性相を蒸留し、酢酸を含む生成物とカルボニル化合物を含む不純物に分離する第3工程、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を水と接触させることにより、沃化アルキルを含む有機相とカルボニル化合物を含む水相に分離する第4工程並びに第4工程で得た有機相を反応工程に返送する第5工程、を具備しており、第4工程において、カルボニル化合物を含む不純物と水との接触を30〜60℃で行うことを特徴とする酢酸の製造方法。
- さらに、第3工程と第4工程の間に、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を凝縮し、沃化アルキルに富む相と水に富む相に分離する第3a工程を具備する請求項1記載の酢酸の製造方法。
- さらに、第3工程と第4工程の間に、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を多段蒸留塔で蒸留する第3b工程を具備する請求項1記載の酢酸の製造方法。
- さらに、第3工程と第4工程の間に、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を凝縮し、沃化アルキルに富む相と水に富む相に分離する第3a工程と、第3工程で得たカルボニル化合物を含む不純物を多段蒸留塔で蒸留する第3b工程を具備しており、前記第3a工程の処理の後に前記第3b工程の処理をする請求項1記載の酢酸の製造方法。
- 蒸留時において、多段蒸留塔に存在する沃素イオン量の0.1〜55モル倍量のメタノールを供給する請求項3又は4記載の酢酸の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24459098A JP4242952B2 (ja) | 1998-08-31 | 1998-08-31 | 酢酸の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24459098A JP4242952B2 (ja) | 1998-08-31 | 1998-08-31 | 酢酸の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000072712A JP2000072712A (ja) | 2000-03-07 |
JP4242952B2 true JP4242952B2 (ja) | 2009-03-25 |
Family
ID=17120995
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP24459098A Expired - Lifetime JP4242952B2 (ja) | 1998-08-31 | 1998-08-31 | 酢酸の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4242952B2 (ja) |
Families Citing this family (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7271293B2 (en) * | 2004-03-02 | 2007-09-18 | Celanese International Corporation | Control method for process of removing permanganate reducing compounds from methanol carbonylation process |
US7223886B2 (en) * | 2004-03-02 | 2007-05-29 | Celanese International Corporation | Removal of permanganate reducing compounds from methanol carbonylation process stream |
JP4489487B2 (ja) * | 2004-04-02 | 2010-06-23 | ダイセル化学工業株式会社 | ヨウ化水素の分離方法 |
US7820855B2 (en) | 2008-04-29 | 2010-10-26 | Celanese International Corporation | Method and apparatus for carbonylating methanol with acetic acid enriched flash stream |
CN101823770B (zh) * | 2010-04-23 | 2011-04-27 | 西南化工研究设计院 | 一种制备羰化碘化铑溶液的方法 |
ES2646749T5 (es) | 2010-12-15 | 2021-10-21 | Daicel Corp | Procedimiento para producir ácido acético |
JP6139024B2 (ja) | 2014-10-02 | 2017-05-31 | セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション | 酢酸の製造方法 |
US9561994B2 (en) | 2015-01-30 | 2017-02-07 | Celanese International Corporation | Processes for producing acetic acid |
US9487464B2 (en) | 2015-01-30 | 2016-11-08 | Celanese International Corporation | Processes for producing acetic acid |
US10413840B2 (en) | 2015-02-04 | 2019-09-17 | Celanese International Coporation | Process to control HI concentration in residuum stream |
US9505696B2 (en) | 2015-02-04 | 2016-11-29 | Celanese International Corporation | Process to control HI concentration in residuum stream |
US9512056B2 (en) | 2015-02-04 | 2016-12-06 | Celanese International Corporation | Process to control HI concentration in residuum stream |
US9540303B2 (en) | 2015-04-01 | 2017-01-10 | Celanese International Corporation | Processes for producing acetic acid |
KR102673536B1 (ko) * | 2016-07-07 | 2024-06-11 | 주식회사 다이셀 | 아세트산을 제조하는 방법 |
-
1998
- 1998-08-31 JP JP24459098A patent/JP4242952B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000072712A (ja) | 2000-03-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3244385B2 (ja) | 高純度酢酸の製造方法 | |
JP6465934B2 (ja) | メタノールのカルボニル化工程のストリームからの過マンガン酸還元性化合物の除去 | |
JP5078606B2 (ja) | メタノールのカルボニル化工程のストリームからの過マンガン酸還元性化合物の除去 | |
JP4242952B2 (ja) | 酢酸の製造方法 | |
JP3332594B2 (ja) | 酢酸の精製方法 | |
JP3105326B2 (ja) | カルボニル化プロセス流からのカルボニル不純物の除去 | |
JP3803114B2 (ja) | カルボニレーションプロセスの間に形成される希薄水性流よりの酢酸の回収 | |
KR100450813B1 (ko) | 카보닐화공정스트림으로부터카보닐불순물을제거하는방법 | |
EP0487284B1 (en) | Removal of carbonyl impurities from a carbonylation process stream | |
KR20000049277A (ko) | 카보닐화 공정 스트림으로부터 과망간산염 환원 화합물 및 알킬요오다이드를 제거하는 방법 | |
JP2018030831A (ja) | 低い酢酸ブチル含量を有する酢酸生成物の製造方法 | |
JP4907835B2 (ja) | フッ素化アルカン酸の精製方法 | |
EP3369722B2 (en) | Method for producing acetic acid | |
US10428005B2 (en) | Method for producing acetic acid | |
JPH0940590A (ja) | アセトアルデヒドの分離除去方法 | |
JP3581725B2 (ja) | アセトアルデヒドとヨウ化メチルの分離方法 | |
EP3398930B1 (en) | Method for producing acetic acid | |
EP3369721B1 (en) | Method for producing acetic acid | |
US10308581B2 (en) | Method for producing acetic acid | |
EP0504277A1 (en) | SECONDARY OXIDATION RHODIUM RECOVERY PROCESS. | |
KR19990078263A (ko) | 로듐 촉매 회수방법 | |
EP3401303B1 (en) | Acetic acid production method | |
EP3617180B1 (en) | Method for producing acetic acid | |
EP3401302B1 (en) | Method for producing acetic acid | |
US10550058B2 (en) | Method for producing acetic acid |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050526 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20080929 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081014 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20081027 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20081209 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20081226 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109 Year of fee payment: 3 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109 Year of fee payment: 3 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120109 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130109 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130109 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140109 Year of fee payment: 5 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |