JP3581725B2 - アセトアルデヒドとヨウ化メチルの分離方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液からアセトアルデヒドとヨウ化メチルを効率的に分離する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液からアセトアルデヒドとヨウ化メチルを分離する方法としては、さまざまな方法があるが、多くの場合に複雑で多大の困難が伴う。なぜならば、アセトアルデヒドとヨウ化メチルは沸点が近く、実際上相互に分別できないという問題点を有しているからである。この問題点を解決するべく、特公平3−51696号公報、特公平2−39490号公報には、常圧下の沸点25〜55℃の沸点をもつ炭化水素とアセトアルデヒドの共沸を利用し、ヨウ化メチルと分離するもので、共沸物は、水によりアセトアルデヒドが洗い出され、炭化水素は再び共沸蒸留に供給されるという方法が開示されている。
【0003】
しかし、共沸物が水で処理される際、水相に抽出され、その結果、廃棄される炭化水素の補充が必要となるだけでなく、又、低沸点成分を取り扱うため高圧条件、あるいは低温冷却水を必要とするため、設備上、操業上、コストが高くなるという問題点を有する。
【0004】
また、第8族金属触媒及びヨウ化メチルの存在下、メタノール及び/又は酢酸メチルと一酸化炭素を連続的に反応させて、酢酸及び/又は無水酢酸を製造する方法において、反応器に再循環されるヨウ化メチルに富む液の中には、例えばアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどのようなカルボニル不純物が含まれていることが知られている。前記カルボニル不純物とヨウ化メチルを分離する方法として、カルボニル反応器へのヨウ化メチル再循環流を、カルボニルと反応して水溶性窒素含有誘導体を形成するアミノ化合物を反応させて、有機ヨウ化メチル相を水性誘導体相から分離し、ヨウ化メチル相を蒸留してカルボニル不純物を除去する方法が開示されている(特開平4−266843号公報)。
【0005】
しかし、前記カルボニル化反応器に再循環する有機流中に含まれるカルボニル不純物濃度は高く、十分な量とはいえず、又、含窒素化合物の除去という新たな問題を伴う。
【0006】
従って、本発明の目的は、アセトアルデヒドとヨウ化メチルを効率的に分離することにある。
【0007】
更に、本発明の2つめの目的は、特に、酢酸及び/又は無水酢酸の連続製造プロセスにおいて、容易に、カルボニル化反応器に再循環するプロセス液中に含まれるアセトアルデヒドを十分に除去すると共に、効率的にヨウ化メチルを反応器に再循環することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成するため鋭意検討した結果、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含有する混合液を蒸留する際に、塔頂温度、還流タンク温度、ならびに圧力を制御することによって、または、アルコールの存在下に、塔頂温度、還流タンク温度を制御することによって、アセトアルデヒドの縮合物であるパラアルデヒド、メタアルデヒドの生成、析出をコントロールすることができ、アセトアルデヒドとヨウ化メチルを効率的に分離できることを見出だし本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、メタノール及び/又は酢酸メチルを、第8族金属触媒とヨウ化メチルとを含む反応媒質中でカルボニル化し、前記カルボニル化の生成物を、前記生成物と未反応メタノール及び/又は酢酸メチルとヨウ化メチルを含む揮発性相と、前記第8族金属触媒を含む低揮発性相とに分離し、更に、前記揮発性相を蒸留して、生成物と、未反応メタノール及び/又は酢酸メチルとヨウ化メチルとを含むオーバーヘッドとを得、前記オーバーヘッドを前記カルボニル化反応器に再循環する方法であって、前記オーバーヘッドがアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液であり、前記オーバーヘッドを、 (i) 塔頂温度55℃以上、還流タンク温度25℃以上、1Kg/cm 2 以上の圧力で蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの生成を抑制してアセトアルデヒドを分離除去するか、または( ii )塔頂温度55℃未満、還流タンク温度25℃未満、及びメタノールの存在下に蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの形で生成したアセトアルデヒドを、蒸留塔缶出液組成がヨウ化メチル/メタノール重量比5/4〜1/2の混合溶液に溶解してアセトアルデヒドを分離除去し、反応器へ再循環する方法を提供する。この方法の態様( ii )において、オーバーヘッドの仕込み段より下部にメタノールを導入してもよい。さらに、本発明は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液からアセトアルデヒドを分離除去する方法であって、前記混合液を、 (i) 塔頂温度55℃以上、還流タンク温度25℃以上、1Kg/cm 2 以上の圧力で蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの生成を抑制してアセトアルデヒドを分離除去するか、または (ii) 塔頂温度55℃未満、還流タンク温度25℃未満、及びメタノールの存在下に蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの形で生成したアセトアルデヒドを、蒸留塔缶出液組成がヨウ化メチル/メタノール重量比5/4〜1/2の混合溶液に溶解し、アセトアルデヒドを分離除去する方法も含む。
【0010】
本発明の処理を受けるアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液を提供する反応の一例として酢酸製造プロセスについて説明する。
【0011】
第8族金属触媒、ヨウ化メチルの存在下、メタノールと一酸化炭素を反応させ反応液を酢酸、酢酸メチルおよびヨウ化メチルを含む揮発性相と第8族金属触媒を含む低揮発性相とに分離し、揮発性相を蒸留して、酢酸を含む生成物と酢酸メチル及びヨウ化メチルを含むオーバーヘッドを得、該オーバーヘッドを反応器に再循環する酢酸の製造プロセスである。
【0012】
前記プロセスで用いられる第8族金属触媒としては、ロジウム触媒、パラジウム触媒、モリブデン触媒、ニッケル触媒等が挙げられる。また、コバルト、イリジウム、白金、オスミウムおよびルテニウムからなる群から選ばれる1種以上の化合物を含有する化合物も、触媒として使用できる。触媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。前記触媒の中でもロジウム触媒がより好適に用いられる。ロジウム触媒は、反応液中で通常ロジウム錯体として存在する。従って、ロジウム触媒は反応条件下で、反応液に溶解する錯体に変化するものであればどのような形態で用いてもよい。具体的には、RhI3、[Rh(CO)2I2]−などのロジウムヨウ素錯体、ロジウムカルボニル錯体が有効に用いられる。その使用量は、反応液中の濃度で、200〜1000ppm、好ましくは300〜600ppmである。
【0013】
ヨウ化物塩は、特に低水分下でのロジウム触媒の安定化と副反応抑制のために添加されてもよい。このヨウ化物塩は反応液中で、ヨウ素イオンを発生するものであればいかなるものであってもよい。例を挙げるならば、LiI、NaI、KI、RbI、CsIのようなアルカリ金属ヨウ化物塩、BeI2、MgI2、CaI2等のアルカリ土類金属ヨウ化物塩、BI3、AlI3等のアルミニウム族金属ヨウ化物塩等がある。また金属ヨウ化物塩以外に有機ヨウ化物塩でもよく、例えば、四級ホスホニウムヨウ化物塩(トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの、ヨウ化メチル付加物又はヨウ化水素付加物等)、四級アンモニウムヨウ化物塩(三級アミン、ピリジン類、イミダゾール類、イミド類等の、ヨウ化メチル付加物又はヨウ化水素付加物等)が挙げられる。特にLiIなどのアルカリ金属ヨウ化物塩が好ましい。ヨウ化物塩の使用量は、反応液中いずれもヨウ化物イオンとして0.07〜2.5モル/リットルであり、好ましくは0.25〜1.5モル/リットルとなるような添加量がよい。
【0014】
本プロセスにおいて、ヨウ化メチルは触媒促進剤として使用され、反応液中5〜20重量%、好ましくは12〜16重量%存在させる。
【0015】
また反応液中の水分濃度は15重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは1〜5重量%である。
【0016】
また本プロセスの反応は連続反応であるので、原料メタノールが酢酸と反応して生成する酢酸メチルが0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜5重量%存在しており、反応液中、残りの主成分は生成物でありかつ反応溶媒でもある酢酸である。
【0017】
本プロセスにおけるカルボニル化の典型的な反応温度は約150〜250℃であり、約180〜220℃の温度範囲が好ましい。反応器中の一酸化炭素分圧は広範囲に変動し得るが、典型的には約2〜30気圧、好ましくは4〜15気圧である。全反応器圧は副生成物の分圧と含まれる液体の蒸気圧とのために、約15〜40気圧の範囲内である。
【0018】
以下、酢酸製造のプロセスを図面に基いて説明する。
【0019】
図1はメタノールから酢酸へのカルボニル化に用いられる反応−酢酸回収系を示すフロー図である。
【0020】
図1に示すメタノールから酢酸への反応−酢酸回収系は、カルボニル化反応器10、フラッシャー12及びヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14を含む。カルボニル化反応器10では通常、反応液体内容物が自動的に一定レベルに維持されている。この反応器には、新鮮なメタノール、十分な水が必要に応じて連続的に導入されて、反応媒質中に、測定可能な水濃度を維持する。代替え蒸留系も、粗酢酸回収手段と、触媒溶液、ヨウ化メチル及び酢酸メチルを反応器に再循環させる手段とを備える限り、使用可能である。
【0021】
好ましいプロセスでは、一酸化炭素を、カルボニル化反応器10に、内容物の撹拌に用いる撹拌機のすぐ下において連続的に導入する。ガス状供給材料はこの手段によって反応液中で全体に分散する。ガス状パージ流を反応器から排出してガス状副生成物の蓄積を阻止し、一定総反応器圧における設定一酸化炭素分圧を維持する。反応器温度は自動的に制御され、一酸化炭素供給材料は好ましい総反応器圧を維持するために充分な反応速度で導入される。液体生成物はカルボニル化反応器10から一定レベルを維持するために十分な速度で取り出されてフラッシャー12にその頂部とその底部との中間点においてライン11を介して導入される。
【0022】
フラッシャー12では、触媒溶液が底部流13(主として、触媒とヨウ化物塩とを、少量の酢酸メチル、ヨウ化メチル及び水と共に含む酢酸)として取り出され、カルボニル化反応器10に戻される。フラッシャー12のオーバーヘッド15は主として生成物の酢酸をヨウ化メチル、酢酸メチル及び水と共に含む。
【0023】
ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14の底部近くの側面からライン17により取り出される生成物酢酸(底部流としても取り出され得る)は、当業者によって、自明の方法で更に精製される。主としてヨウ化メチルと酢酸メチルのほかに若干の水と酢酸を含む、ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14からのオーバーヘッド20はライン21を介してカルボニル化反応器10に再循環される。オーバーヘッド20は凝縮すると、充分な水が存在する場合には、典型的に二つの液相に分かれる。下相30は主としてヨウ化メチルプラス若干の酢酸メチルと酢酸から成り、上相32は主として水と酢酸プラス若干の酢酸メチルから成る。
【0024】
ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14からの下相30、上相32、又は分離していない場合には総オーバーヘッド20、またはこれらの流れを、ヨウ化メチル、酢酸メチル、水及び不純物を含む他の再循環生成物と一緒にして、再循環流21を形成することができる。
【0025】
ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14からの下相30、上相32、又は総オーバーヘッド20又は再循環流21は蒸留塔40に導入され、本発明の処理が施される。蒸留塔、分離等は技術上の周知の適当ないかなる装置でも用いることができる。また、蒸留塔の段数は何段でも構わないが、設備費等の都合上、1本の蒸留塔で実施できない場合は、2本以上の蒸留塔を用いることによって本発明の処理を行ってもさしつかえない。
【0026】
以下、2本の蒸留塔を用いて実施する場合について図2を用いて説明する。
【0027】
ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14からの下相30、上相32、又は総オーバーヘッド20又は再循環流21は蒸留塔40に導入され、塔底からヨウ化メチル再循環流をライン46を介して反応器に再循環される。塔頂からは留出液44が得られる。
【0028】
蒸留塔40の留出液44は蒸留塔60に導入され、本発明の処理を受け、アセトアルデヒドの大半を除去したヨウ化メチル再循環流はライン66を介して蒸留塔40の上部に再循環される。あるいは、アセトアルデヒドの大半を除去したヨウ化メチルに富む液が塔頂から得られる場合は、塔頂留出液が蒸留塔40に再循環される。
【0029】
通常、ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム14からの総オーバーヘッド20のプロセス液は、ヨウ化メチル5〜90重量%、アセトアルデヒド0.05〜50重量%、酢酸メチル0〜15重量%、酢酸0〜80重量%、水分0.1〜40重量%およびその他のカルボニル不純物を含んでいる。
【0030】
上記のようなアセトアルデヒドを含むプロセス液はヨウ化メチル、酢酸メチル等の有用成分を含んでいるため、カルボニル化反応器10に循環し、再使用されてる。従って、これらのプロセス液よりできる限りアセトアルデヒドが分離除去されたのちに、反応器に循環されるのが好ましい。
【0031】
アセトアルデヒドが充分に除去されなかった場合、アセトアルデヒドがプロセス液中に蓄積されて、アセトアルデヒドのアルドール縮合が促進され、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどの還元性物質やヨウ化ヘキシル等のヨウ化アルキルの副生速度が増加し、これらカルボニル不純物が多量に含まれた製品酢酸が得られることになる。
【0032】
アセトアルデヒドとヨウ化メチルを分離するには、アセトアルデヒドとヨウ化メチルの沸点が近いため、困難を要するだけでなく、また、ヨウ化メチルなど、非水系での蒸留濃縮は、パラアルデヒド、メタアルデヒドを生成させ、アセトアルデヒドの濃縮に妨げとなるばかりでなく、メタアルデヒドがプロセス内で析出し、安全運転が行えなくなる。
【0033】
パラアルデヒドは、アセトアルデヒドの三量体であり、沸点124℃、融点10℃の液体である。パラアルデヒドはアセトアルデヒドから一般に0〜−10℃程度の低温で発生しやすく、生成限界温度は55℃である。実験室において、20℃で発生することを確認した。
【0034】
メタアルデヒドは、アセトアルデヒドの四〜六量体であり、融点140〜246℃の白色針状結晶である。メタアルデヒドはパラアルデヒドよりも低温で生成し、一般にアセトアルデヒドから一般に−10〜−40℃程度で発生する。実験室では5℃程度でも発生することを確認した。−40℃以下にすると、高分子重合がおこる。又、パラアルデヒド、メタアルデヒドには、立体異性体があり、融点、溶媒への溶解度が異なることを確認した。
【0035】
ここに示したように、パラアルデヒド、メタアルデヒドの生成は温度に影響を受ける。すなわち、蒸留塔内での操作圧力、操作温度を制御することで、アセトアルデヒドを分離除去することが可能となった。
【0036】
すなわち、蒸留塔において塔頂温度55℃以上、還流タンク温度25℃以上、1Kg/cm2の圧力で蒸留することによって、パラアルデヒド、メタアルデヒドの生成を抑制することができ、かつ、ヨウ化メチルとアセトアルデヒドの分離効率が向上することを見出だした。又、塔頂コンデンサーから還流タンクを経て蒸留塔内に戻るまでの滞留時間を短くすることも、パラアルデヒド、メタアルデヒドの生成を抑制する上で効果的である。
【0037】
又、蒸留塔において塔頂温度55℃未満、還流タンク温度25℃未満で蒸留することによって、塔頂でアセトアルデヒドがパラアルデヒド、メタアルデヒドに変化し高沸点化することにより、塔底側に移動してくるので、アセトアルデヒドをパラアルデヒド、メタアルデヒドの形で、缶出液から除去することを見い出した。しかし、メタアルデヒドは、特にヨウ化メチルに対して溶解度の低い固体であるため析出し、蒸留塔の多孔板、充填物のみならず各ノズルや配管、バルブなどを閉塞させ、操業上の障害となる。本発明者らは、メタアルデヒドがメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールに溶解することを見出だした。すなわち、アルコールの存在下に蒸留することで、閉塞を防止することが可能となった。
【0038】
本発明で使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂環式アルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、エチレングリコール等の多価アルコールなど、どの様なアルコールでも用いられるが、好ましくは原料としても用いられるメタノールである。
【0039】
又、メタアルデヒドの溶解度を詳細に検討した結果、ヨウ化メチル<<アセトアルデヒド=メタノール<ヨウ化メチルとメタノールの混合溶液の順に溶解度が増加し、又、ヨウ化メチルとメタノールの混合溶液において溶解度の最適点があることを見出だした。酢酸の連続製造プロセスにおける、蒸留塔缶出液組成において、ヨウ化メチル/メタノール重量比が3/1ならば再結晶化温度は18℃、5/4ならば12℃、3/4ならば6℃、1/2ならば−9℃以下であることを確認した。保温状況にもよるが、好ましいヨウ化メチル/メタノール重量比は5/4〜1/2である。
【0040】
アルコールの仕込み位置としては、アルコールが塔頂から損失しないような分離のできる仕込み段であればよいが、好ましくは本発明の処理を受けるアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液の仕込み段より下部である。
【0041】
又、パラアルデヒド、メタアルデヒドの生成、分解は、温度、時間のほかに、共存する酸強度の影響も受けるようである。
【0042】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。例中の部は特記しない限り重量基準である。
【0043】
実施例1
図1、及び2に示す酢酸製造の試験装置の操作中、ヨウ化メチル−酢酸スプリッタ−カラム14のオーバーヘッド20を凝縮した後の分液槽下相液30を総段数80段(Sieve Tray)の蒸留塔40の上から70段目に導入して、還流比270、塔頂温度54℃、塔底温度82℃の条件で蒸留した。仕込み量を100部として、塔頂から0.033部、塔底から99.67部抜き取った。設備の都合上、2本目の蒸留塔60に、蒸留塔40の塔頂留出液を仕込み、パラアルデヒド及びメタアルデヒドの生成しない条件、塔頂温度56℃、還流タンク温度32℃、塔頂圧力2.5kg/cm2Gで、蒸留した。蒸留塔60は理論段8段の充填塔で、上から4段目に蒸留塔40の塔頂留出液全量が仕込まれた。又、還流比は40、塔底温度は74℃であった。
蒸留塔60への仕込量を100部として、塔頂から38.5部のアセトアルデヒド濃縮液(アセトアルデヒド濃度88.1wt%)が分離除去され、ヨウ化メチルに富む液(ヨウ化メチル82.8wt%)は缶出液として塔底から61.5部抜き取られ、蒸留塔40に再循環された。また、製品酢酸中のヨウ化ヘキシルの濃度は28ppbであった。
表1に反応液の組成を、表2に蒸留塔40への仕込み液、蒸留塔40の塔頂抜取液組成を、表3に蒸留塔60への仕込み液、蒸留塔60の留出液、缶出液組成をそれぞれ示す。
【0044】
【表1】
【表2】
【表3】
比較例1
ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラムからのオーバーヘッド20について蒸留を行わず、そのまま反応器に循環した。その結果、アセトアルデヒドは分離除去されず、製品酢酸中のヨウ化ヘキシルの濃度は100ppbであった。また、ヨウ化メチル−酢酸スプリッタ−カラムの底部付近から取り出された湿潤生成物流は蒸留により乾燥されるが、この乾燥した生成物液中のプロピオン酸濃度は620ppmであった。
【0045】
実施例2
実施例1における蒸留塔40の塔頂抜取液を蒸留塔60に導入して、パラアルデヒド及びメタアルデヒドを生成させる条件、塔頂温度28.7℃、還流タンク温度−10℃で蒸留を行った。蒸留塔60におけるその他の条件は還流比15、総段数は20段のオールダーショーで、塔底温度64.6℃、塔頂圧力1.033kg/cm2であった。又、蒸留塔60の上から17段目にメタノール溶液100部を導入した。蒸留塔40の塔頂液100部を蒸留塔60に導入し、塔頂から74部を抜き取り、蒸留塔40の上部へ再循環した。また、残りの26部が缶出液として分離除去された。又、メタノールを仕込むことにより、蒸留塔下部ノズルの閉塞を防止し、缶出液を抜き取ることができた。
製品酢酸中のヨウ化ヘキシルの濃度は40ppbであった。
表4に蒸留塔60への仕込み液、蒸留塔60の留出液、缶出液組成を示す。
【0046】
【表4】
比較例2(メタノールを仕込まない条件)
メタノール溶液を仕込まない以外は、実施例2と同様に実施した結果、メタアルデヒド結晶析出のため、蒸留塔下部ノズルが閉塞し、運転ができなくなってしまった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によって、アセトアルデヒドとヨウ化メチルが効率的に分離できるようになった。更には、酢酸及び/又は無水酢酸の連続製造プロセスにおいて、容易に、カルボニル化反応器に再循環するプロセス液中に含まれるアセトアルデヒドを十分に除去すると共に、効率的にヨウ化メチルを反応器に再循環できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタノールから酢酸へのカルボニル化に用いられる反応−酢酸回収系のフロー図を示す。
【図2】アセトアルデヒドとヨウ化メチルを分離する蒸留系のフロー図の一例を示す。
【符号の説明】
10 カルボニル化反応器
12 フラッシャー
14 ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラム
30 分液槽下相
40,60 蒸留塔
Claims (3)
- メタノール及び/又は酢酸メチルを、第8族金属触媒とヨウ化メチルとを含む反応媒質中でカルボニル化し、前記カルボニル化の生成物を、前記生成物と未反応メタノール及び/又は酢酸メチルとヨウ化メチルを含む揮発性相と、前記第8族金属触媒を含む低揮発性相とに分離し、更に、前記揮発性相を蒸留して、生成物と、未反応メタノール及び/又は酢酸メチルとヨウ化メチルとを含むオーバーヘッドとを得、前記オーバーヘッドを前記カルボニル化反応器に再循環する方法であって、前記オーバーヘッドがアセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液であり、前記オーバーヘッドを、 (i) 塔頂温度55℃以上、還流タンク温度25℃以上、1Kg/cm 2 以上の圧力で蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの生成を抑制してアセトアルデヒドを分離除去するか、または( ii )塔頂温度55℃未満、還流タンク温度25℃未満、及びメタノールの存在下に蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの形で生成したアセトアルデヒドを、蒸留塔缶出液組成がヨウ化メチル/メタノール重量比5/4〜1/2の混合溶液に溶解してアセトアルデヒドを分離除去し、反応器へ再循環する方法。
- ( ii )において、オーバーヘッドの仕込み段より下部にメタノールを導入する請求項1記載の方法。
- アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含む混合液からアセトアルデヒドを分離除去する方法であって、前記混合液を、(i)塔頂温度55℃以上、還流タンク温度25℃以上、1Kg/cm 2 以上の圧力で蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの生成を抑制してアセトアルデヒドを分離除去するか、または (ii) 塔頂温度55℃未満、還流タンク温度25℃未満、及びメタノールの存在下に蒸留し、パラアルデヒドまたはメタアルデヒドの形で生成したアセトアルデヒドを、蒸留塔缶出液組成がヨウ化メチル/メタノール重量比5/4〜1/2の混合溶液に溶解し、アセトアルデヒドを分離除去する方法。
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