JP4240590B2 - 低炭素鋼冷延板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低炭素鋼冷延板の製造方法に関し、特にドラムキャスタ鋳造を含むプロセスにより深絞り特性に優れた低炭素鋼冷延板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スラブ連続鋳造設備で厚さ50mm以上の鋳塊を製造し、これを熱間圧延、冷間圧延設備にて圧延加工することにより、厚さ1mm前後の低炭素鋼冷延板を得ていた。
スラブ連続鋳造により得た鋳塊を圧延するためには大掛かりな圧延設備が必要であり、またこれらの設備の使用には多くのエネルギーを要するという問題がある。
【0003】
スラブ連続鋳造による問題を改善する方法として、ドラムキャスタ鋳造がある。ドラムキャスタ鋳造は、回転している一対の水冷ドラムの間に溶鋼を注湯することによって厚さ1〜10mmの薄鋳片を鋳造することができる。このため僅かな圧延によって最終製品である低炭素鋼冷延板を得ることができ、スラブ連続鋳造に比べて圧延プロセスの簡略化と、製造エネルギーの低減が可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ドラムキャスタ鋳造により得た薄鋳片から圧延した低炭素鋼冷延板は、スラブ連続鋳造を含むプロセスにより製造した低炭素鋼冷延板に比べ、深絞り特性が劣るという問題がある。
【0005】
したがって、本発明は、ドラムキャスタ鋳造により深絞り特性に優れる低炭素鋼冷延板を製造する方法の提供を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、ドラムキャスタ鋳造後圧延して得られた低炭素鋼冷延板の深絞り特性が、スラブ連続鋳造後圧延して製造した低炭素鋼冷延板に比べて劣るのは、低炭素鋼冷延板の結晶集合組織がに板材中の結晶粒の{111}面が板材の面法線方向を指向する割合が低いためであることを知見した。すなわち、スラブ連続鋳造後圧延して得られた低炭素鋼冷延は、結晶粒の{111}面が板材の面法線方向を指向する割合が高く優れた深絞り特性が得られるが、ドラムキャスタ鋳造後圧延して得られた低炭素鋼冷延板では結晶粒の{111}面が板材の面法線方向を指向する割合が低いため深絞り特性が劣っていた。
【0007】
本発明者等は、上記知見に基づき、鋳造条件や圧延時の圧下率、圧延温度、焼鈍条件等を検討した結果、これらの条件を制御することにより、結晶粒の{111}面が板材の面法線方向を指向する割合高くすることができることを見い出した。
【0008】
すなわち、本発明は、重量%で、0.1%以下のCを含有する低炭素鋼をドラムキャスタ鋳造し、得られた鋳塊に1000〜1200℃の熱処理を行い、圧下率50%以下の熱間圧延、圧下率40〜80%の冷間圧延を行い、その後800〜1000℃で焼鈍処理を行うことを特徴とする低炭素鋼冷延板の製造方法である。
本発明は、重量%で、0.1%以下のCを含有する低炭素鋼をドラムキャスタ鋳造し、得られた鋳塊に圧下率50%以下の熱間圧延を行い、当該熱間圧延後に600〜800℃の熱処理を行い、圧下率40〜80%の冷間圧延を行い、その後800〜1000℃で焼鈍処理を行うことを特徴とする低炭素鋼冷延板の製造方法である。
さらに、本発明において、熱間圧延は、鋳造後温度を保持したまま行うインライン圧延としてもよいが、ドラムキャスタ鋳造後、γ→α変態点以下まで冷却してもよい。
【0009】
本発明にかかる低炭素鋼冷延板の製造方法によれば、ドラムキャスタ鋳造によるプロセスの簡略化とエネルギー消費量の低減が図れると共に、ドラムキャスタ鋳造後のプロセスにおいて集合組織を制御し、低炭素鋼冷延板の結晶粒の{111}面が板材の面法線方向を指向する割合が高くなり、優れた深絞り特性が得られる。
【0010】
本発明において、熱間圧延、冷間圧延は組織中に歪みを導入し、その後再結晶によって新たな集合組織とする役割を有する。熱間圧延では圧延中及び圧延後の高温状態において再結晶する。また冷間圧延ではその後の焼鈍処理時に再結晶する。
【0011】
再結晶粒の面方位は、圧延前の集合組織、圧延後の加工組織と共に再結晶時における結晶粒内の析出物の分布及び炭素の固溶度の影響を受ける。したがって、熱間圧延時の圧下率を50%以下、冷間圧延時の圧下率を40〜80%とすることで再結晶前の加工組織が制御され、優れた深絞り特性が得られる。
【0012】
熱間圧延の圧下率を50%以下とするのは、薄鋳片から1mm程度の冷延鋼板とする際、冷間圧延時に十分な圧下率を得るためには熱間圧延の圧下率を小さくせざるを得ないためである。
また、熱間圧延は、1000〜1200℃の範囲で行うことが望ましい。1000℃未満では熱間圧延後の再結晶が生じず、加工組織が残ってしまうことによる板材の伸びの低下が予測されるからであり、また、1200℃を超えると再結晶粒の粗大化による板材の強度低下が予想されるからである。
冷間圧延の圧下率を40〜80%とするのは以下の理由による。すなわち、焼鈍によって発生する再結晶粒の面方位は冷間圧延時の圧下率に依存し、圧下率70%程度の冷間圧延組織から深絞り特性にとって好ましい板面に平行な{111}面が発生するため、70%から大きくずれた圧下率では{111}面が板面と平行でなくなり、γが低下するからである。
【0013】
冷間圧延後にA3点に近い800〜1000℃で焼鈍を行うことにより、再結晶集合組織が改善され、深絞り特性が向上する。焼鈍温度が800℃未満ではこの効果が不十分であり、また、1000℃を超えると焼鈍中に結晶粒が粗大化し板材の強度が低下するためである。望ましい焼鈍温度は850〜950℃である。焼鈍時間は、1min〜30minの範囲とすることが望ましい。1min未満では効果が不十分であり、また、30minを超えると結晶粒が粗大化して強度が低下するからである。
【0014】
本発明においては、熱間圧延前・後の熱処理によって{111}面の成長を促進させるMnS、AlNを析出させ、{111}面の成長を阻害する粒内炭化物を粗大化させ、炭素固溶度を低下させることが良好な深絞り特性を得るために有効である。MnSは熱間圧延前の1000〜1200℃の熱処理で、AlNは熱間圧延後の600〜800℃の熱処理によって析出する。熱間圧延前の望ましい熱処理温度は1050〜1150℃、熱間圧延後の望ましい熱処理温度は650〜750℃である。
【0015】
熱処理時間を長時間とすると結晶粒の粗大化による強度の低下が予想されるため、熱間圧延前の熱処理は10分以下とし、また、熱間圧延後の熱処理は60分以下とすることが望ましい。より望ましい熱処時間は、熱間圧延前の熱処理については5分以下、熱間圧延後の熱処理については30分である。
【0016】
熱間圧延は、鋳造後温度を保持したまま行うインライン圧延でも、ドラムキャスタ鋳造後、γ→α変態点以下まで冷却後再加熱して行ってもよいが、冷却後再加熱することにより、冷却時と再加熱時に生じるαとγの相変態によって結晶粒の径、方位が均一となるため深絞り特性がより向上する。
【0017】
本発明は、重量%で0.1%以下のCを含有する低炭素鋼冷延板の製造に用いる。ここで、Cを0.1%以下とするのは、C濃度が低いほど深絞り特性が高くなるためである。なお、他の元素、つまり、Mn、Si、P、S、Al、N等の元素については特に限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施の形態に基づき説明する。
表1に示す組成の低炭素鋼をドラムキャスタ鋳造し、板厚2.0mmのドラムキャスタ鋳片を得た。ドラムキャスタ鋳造は、鋳造速度40m/min、鋳造温度1585℃で行った。その後、図1および表2に示す条件でNo.1〜10の低炭素鋼冷延板を得た。図1に、本発明にかかる製造方法を図示する。図1において、熱延とは熱間圧延であり、冷延とは冷間圧延である。表2には、図1における各工程の有無、条件および得られた低炭素鋼冷延板の厚さ、深絞り特性の評価結果であるγ値を示す。
【0019】
図1および表2において、ドラムキャスタ鋳造後に再加熱を行ったNo.3については、室温(20℃)以下に冷却後、1100℃に再加熱した。また、熱間圧延前の熱処理である熱処理▲1▼は1100℃×5minで行い、1100℃で熱間圧延後、熱間圧延後の熱処理である熱処理▲2▼は700℃×30minの条件で行った。その後、冷間圧延を行い、1min焼鈍を施した。
【0020】
また、従来例として、表1に示す組成の低炭素鋼をスラブ連続鋳造後、1100℃で圧下率90%の熱間圧延、圧下率70%の冷間圧延を行い、720℃×1minの焼鈍処理を施し、厚さ0.8mmの低炭素鋼冷延板を得た(No.11)。
【0021】
得られたNo.1〜11の低炭素鋼冷延板について深絞り特性の指標であるγ値を求めた。結果を表2に示す。なお、γは圧延方向に対して0°、45°、90°の角度の引張試験片を15%引張り、引張り前後の板幅と評点距離を測定することにより求めた。
【0022】
比較例であるNo.1と本発明例であるNo.5は、ともにドラムキャスタ鋳造後、圧下率40%の熱間圧延、圧下率70%の冷間圧延を行っているが、その後の焼鈍温度が異なり、900℃で焼鈍処理を施したNo.5はγ値が1.19と高いのに対し、720℃の焼鈍処理を施したNo.1はγ値が0.91と低い。
No.2は、No.5の熱間圧延前後に熱処理▲1▼、▲2▼を施したものであるが、熱処理を行うことによりγ値が1.28とさらに向上している。
No.3は、No.2のドラムキャスタ鋳造後、冷却、再加熱を行ったものであり、γ値1.32とさらに良好なγ値が得られる。
No.4は、No.2の熱間圧延時の圧下率を変化させたものであり、圧下率が高い方がγ値が高くなることがわかる。
【0023】
冷間圧延時の圧下率を変化させたNo.2,6,7を比較すると、圧下率70%でγ値が最も高く、80%を越えるとγ値が低くなることがわかる。
焼鈍温度を変化させたNo.2,8,9,10を比較すると、焼鈍温度900℃で最もγ値が高くなり、800℃未満では十分なγ値が得られないことがわかる。
また、スラブ連続鋳造によるNo.11は、γ値は1.22であり、本発明によりドラムキャスト鋳造によっても、スラブ連続鋳造と同等の深絞り特性が得られることが確認された。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
本発明により、プロセスの簡略化とエネルギー消費量の低減が図れるドラムキャスタ鋳造によっても、スラブ鋳造と同等の深絞り特性を有する低炭素鋼冷延板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明低炭素鋼冷延板の製造プロセスを示す図である。
Claims (3)
- 重量%で、0.1%以下のCを含有する低炭素鋼をドラムキャスタ鋳造し、得られた鋳塊に1000〜1200℃の熱処理を行い、圧下率50%以下の熱間圧延を行い、圧下率40〜80%の冷間圧延を行い、その後800〜1000℃で焼鈍処理を行うことを特徴とする低炭素鋼冷延板の製造方法。
- 重量%で、0.1%以下のCを含有する低炭素鋼をドラムキャスタ鋳造し、得られた鋳塊に圧下率50%以下の熱間圧延を行い、当該熱間圧延後に600〜800℃の熱処理を行い、圧下率40〜80%の冷間圧延を行い、その後800〜1000℃で焼鈍処理を行うことを特徴とする低炭素鋼冷延板の製造方法。
- ドラムキャスタ鋳造後、α変態点以下まで冷却する請求項1または2に記載の低炭素鋼冷延板の製造方法。
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