本発明は、エンジンブロックの下側に設け、エンジンオイルを貯留させるオイルパンに関する。
従来から、エンジンの潤滑・冷却にはエンジンオイルが用いられている。このエンジンオイルは、エンジンの下部に設けられたオイルパンに貯留され、オイルポンプによってエンジン各部に循環される。エンジン各部を循環したエンジンオイルは、下方のオイルパン内に滴下する。そして、オイルパン内に滴下したエンジンオイルは、再度オイルポンプによってエンジン各部に循環される。この間、エンジンオイルはエンジン各部から熱を受け取って各部を冷却する。また、エンジンオイルは、エンジン各部で油膜を形成して各部品間の潤滑を促進すると共に、部品の酸化を防止するなどの役目もある。
ここで、エンジンの冷間始動直後は、オイルパン内部に貯留されたエンジンオイルは冷えており、粘度も高く、エンジン各部を循環して各部を潤滑させるのに適した状態ではない。そこで、冷間始動直後は、できるだけ早くエンジンオイルを昇温させて適切な粘度を有する状態にさせたい。このために、オイルパンを複数の区画に分け、冷間始動直後は一方の区画内のエンジンオイルが循環されやすい状況を作り、この区画内のエンジンオイルをより早期に昇温させ、その一方、暖機完了後は、エンジンオイルの過熱を回避してエンジンオイルを好ましい状態とすることが既に検討されている(特許文献1)。このようなエンジンオイルの早期昇温は、フリクションの早期低減による燃費向上にも寄与するものであり、近年の燃費向上に対する強い要望からも改善が望まれる点である。
図1は、特許文献1に記載されたオイルパン50の構造を説明する断面図であるが、エンジンオイルの昇温を効果的に行うべく、凹部51aを有するオイルパンセパレータ51をオイルパン52内に設け、凹部51a内にエンジンオイルの吸込口53aが位置するようにオイルストレーナ53を配置するとともに、凹部51aの側壁51a1の上部及び下部に凹部51aの内外を連通させる連通孔54、55を設けた構成を採用している。このような連通孔54、55のうち、凹部5aの側壁51a1の下部に設けた連通孔55は、エンジンオイルの粘度変化を利用して凹部51a内外のエンジンオイルの流通を制御するようになっている。すなわち、連通孔55の径を小径としておき、暖機時の粘度の高いエンジンオイルは連通孔55を通過する際の通油抵抗が大きいことを利用して凹部51a内外のエンジンオイルの混合を防止し、一方、暖機完了後の粘度の低いエンジンオイルは連通孔55を通過することができ、凹部51a内外のエンジンオイルの混合が行われる構成となっている。凹部51aの内外でエンジンオイルが混合されれば、低温の凹部51a外側のエンジンオイルによって、高温となった凹部51a内側のエンジンオイルの温度を低下させることができる。
一方、凹部51aの側壁51a1の上部に設けた連通孔54は、エンジンオイルの粘度に拘わらず凹部51aの内外でエンジンオイルを流通させることができ、主に、エンジンブロック56内部を循環し、オイルパンセパレータ51内(凹部51a内側)に滴下したエンジンオイルをオイルパンセパレータ51の凹部51aの内側から外側へ流出させる。このため、矢示57で示す様な、凹部51aの上部から流出したエンジンオイルが、エンジンオイルの粘度に応じて再び凹部51aの下部から凹部51a内に流入するというエンジンオイルの循環経路が形成され、エンジンオイルの混合を促進し、エンジンオイルを冷却するようになっている。混合されたエンジンオイルは吸込口53aから吸い上げられ、上部からエンジンブロック56内に供給される。
なお、オイルパンは、一般的に車両の下側に位置し、車両が走行することにより、矢示58で示すような走行風を受け、オイルパン52内のエンジンオイルが冷却されるようになっている。また、図1中、参照番号59は車両に取り付けたアンダーカバーである。
しかしながら、特許文献1記載の構造のオイルパン50では、前記のように凹部51aの側壁51a1の下部に設けた連通孔55がエンジンオイル内のゴミ、スラッジ等で目詰まりを起こし、オイルパンセパレータ51の凹部51a内にエンジンオイルが流入しなくなるという問題があった。特許文献1記載のオイルパン50は、前記のように凹部51a内にエンジンオイルの吸込口53aを備える構成となっているので、凹部51a内にエンジンオイルが流入せず、凹部51a内のエンジンオイル量が不足すると、エンジンの焼き付きを起こしかねない。また、凹部51a内のエンジンオイルの量が不足しないまでも、エンジンオイルは凹部51aの内外で循環し難くなることから、エンジンオイルを冷却する効果が低下し、問題となる。
また、凹部51a内外のエンジンオイルの流通をエンジンオイルの粘度に依存させた場合、連通孔55の位置や大きさの制約が大きくなる問題もある。すなわち、使用するエンジンオイルの種類等によっても温度と粘度との関係が異なること等に起因して、所望のエンジンオイルの循環が実現できないおそれがあった。例えば、エンジンを高負荷で運転しているときなどは、凹部51aの外側のエンジンオイルを大量に凹部51a内に流入させたいところ、連通孔55が小径であるために、凹部51a内への流入が規制され、エンジンオイルが混合されにくいという問題があった。
そこで、本発明は、オイルパン内に凹部を有するオイルパンセパレータを設けた二槽式オイルパンにおいて、エンジンの運転状態に応じて、より燃費向上が見込める温度のエンジンオイルをエンジン内に供給することのできる二槽式オイルパンを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するための本発明の二槽式オイルパンは、吸込口が配置される副室と前記吸込口が配置されない主室とに仕切るオイルパンセパレータをオイルパンの内部に備え、前記オイルパンセパレータは前記副室を形成する凹部を有し、前記副室がエンジンブロックの内部と連通され、前記凹部は前記主室と前記副室とを連通させる連通孔を有する二槽式オイルパンにおいて、前記副室内の温度に応じて開閉動作をすることにより前記主室と前記副室とを連通又は隔離する開閉弁を、前記オイルパンセパレータの底板部に設けたことを特徴とする。ここで、前記開閉弁はサーモスタット弁を用いることができる。サーモスタット弁は、前記副室内の温度に応じて開閉できるものであれば、どのようなものであっても良い。また、本発明における底板部とは、凹部の底面を含む部分だけでなく、凹部の側壁の下部、すなわち凹部の底面を含む部分から側壁に連続する周部を含む部分を指す。
このような二槽式オイルパンにおいて、前記開閉弁を、前記吸込口と対向する位置に設けた構成とすることができる。
さらに、前記のような二槽式オイルパンでは、前記オイルパンの底板部と前記オイルパンセパレータの底板部とを接近させて前記主室内のエンジンオイルが流通する絞り部を設けた構成とすることができ、また、前記連通孔を前記凹部の側壁に設け、当該連通孔を通じて前記副室から前記主室へ流出したエンジンオイルを前記絞り部に流通させ、当該絞り部を流通するエンジンオイルを前記開閉弁を通じて前記副室内に導入し、当該導入されたエンジンオイルを前記吸込口から吸い上げる構成とすることが望ましい。このとき、前記連通孔を前記凹部の側壁上部に設ける構成がより望ましい。
以上のような構成の二槽式オイルパンは、走行風により効率よくオイルパン内のオイルを冷却すべく、前記オイルパンの外周面に冷却フィンを設けた構成とすることができる。
また、本発明に用いる前記開閉弁の厚さを前記吸込口の下側に配置できる厚さとし、当該開閉弁を前記吸込口の下側に位置するように前記オイルパンセパレータに設けた構成とすることもできる。このような厚さの開閉弁としては、バイメタル弁を用いることができる。
本発明の二槽式オイルパンは、前記のように、前記副室内の温度に応じて開閉動作をすることにより前記主室と前記副室とを連通又は隔離する開閉弁を有しているが、このような開閉弁をオイルパンセパレータに装着するために、前記開閉弁の周囲にシール材を備えたシール部を有し、前記オイルパンセパレータが前記主室と前記副室とを連通する開口と、当該開口から前記開閉弁が前記主室及び前記副室に臨むように前記シール部を嵌着する固定部とを有する構成とすることができる。ここで、前記開閉弁の周囲に鍔部を設けるとともに当該鍔部をシール材で被覆して前記シール部を形成し、さらに、前記固定部は、前記開口の周囲に位置して前記シール部を嵌着する溝部と、当該溝部と連続し当該溝部側が小径であるテーパ部とが形成された構成とすることができる。
さらに、前記のような開閉弁をオイルパンセパレータに装着するための構成として、前記オイルパンセパレータに前記主室と副室とを連通する開口を設け、前記開閉弁を前記開口から前記主室及び副室に臨むように配置し、当該開閉弁をオイルパンに取り付けたドレインプラグによって支持するようにすることができる。このとき、前記開閉弁の直径を前記オイルパンに設けたオイルドレインの直径よりも小径とすることが望ましい。
本発明によれば、凹部を有するオイルパンセパレータによってオイルパン内を主室と副室とに仕切り、副室内の温度に応じて開閉動作をすることにより主室と副室とを連通又は隔離する開閉弁を、前記オイルパンセパレータの底板部に設けたので、副室内のエンジンオイル温度に応じて、開閉弁を通じて主室内のエンジンオイルを確実に副室内に流入させ、副室内に流入したエンジンオイルを吸込口から吸い上げることができる。これによりエンジンの運転状態に応じて、より燃費向上が見込める温度のエンジンオイルをエンジン内に供給することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
まず、本発明の二槽式オイルパン1について図を参照しつつ説明する。図2は、二槽式オイルパン1を断面とした説明図である。二槽式オイルパン1は、オイルドレイン2aを備え、そのオイルドレイン2aにドレインプラグ10が取り付けられ、下面に冷却フィン2bを設けたオイルパン2の内部に、凹部3aを有するオイルパンセパレータ3が設けられている。オイルパンセパレータ3の凹部3aはエンジンブロック7と連通する副室5を形成している。すなわち、オイルパン2内はこのオイルパンセパレータ3によって主室4と副室5とに仕切られている。副室5内にはオイルストレーナ6の吸込口6aが配置されている。また、凹部3aの側壁3a1には、主室4と副室5とを連通させる連通孔8が設けられている。この連通孔8は、凹部3aの側壁3a1のできるだけ上側に設けることが好ましく、このため、本実施例の二槽式オイルパン1では、主室4及び副室5に貯留させるエンジンオイル量の下限レベルをわずかに下回る位置に設けている。
オイルパンセパレータ3には、図に示すように副室5内に感温部9aが位置するように本発明の開閉弁に相当するサーモスタット弁9が取り付けられている。このサーモスタット弁9は、温度が上昇し、感温部9a内のサーモワックスが溶融して膨張すると弁体9bを開き、温度が下降し、感温部9a内のサーモワックスが収縮するとスプリング9cの作用と相俟って弁体9bを閉じる形式のものである。ここで、副室5内には、前記のようにオイルストレーナ6の吸込口6aが配置されているが、サーモスタット弁9は、この吸込口6aの近傍に位置するようにオイルパンセパレータ3取り付けられている。すなわち、サーモスタット弁9は、サーモスタット弁9を通じて主室4から副室5内に流入したエンジンオイルが効率よく吸込口6aから吸い上げられるように、吸込口6aの近傍に取り付けられる。
より具体的には、サーモスタット弁9は、図2に示すようにオイルパンセパレータ3の底板部3a2に取り付けられる。ここで、底板部3a2は、図3に示したオイルパンセパレータ3の側面図においてハッチングを施して示したように、オイルパンセパレータ3が備える凹部3aの底面部分3b(底面を含む部分)だけでなく、側壁3a1の下縁付近、すなわち、底面部分3bから側壁3a1に連続する周部3cまでを含む部分をいうものとする。これは、車両が傾いたり、車両の旋回に伴う遠心力が加わったりしてエンジンオイルの油面が傾いた場合でも油面から露出しないように凹部3a内の下部に位置させた吸込口6aから、主室4より副室5内に流入したエンジンオイルを効率よく吸い上げることができる位置にサーモスタット弁9を取り付ける意図である。また、このようにサーモスタット弁9を底板部3a2に取り付けることにより、副室5内に貯留するオイル滓や鉄粉等の塵をサーモスタット弁9を通じて主室4内へ排出することができる。
なお、サーモスタット弁9のオイルパンセパレータ3への取り付けは、図4に示したように、サーモスタット弁9の周囲に設けた鍔部9dを締結部材16で挟み、この締結部材16をボルト15で締めてサーモスタット弁9をオイルパンセパレータ3へ取り付けている。
本実施例の二槽式オイルパン1は、前記のようにオイルパン2内にオイルパンセパレータ3を設けた二槽構造となっているが、図2に示すようにオイルパン2の底板部2cとオイルパンセパレータ3の底板部3a2を接近させて主室4内のエンジンオイルが流通する絞り部13を設けている。このように絞り部13を設けることによって、前記のように凹部3aの側壁3a1の上部に連通孔8を設けたことと相俟って、矢示14で示したように、連通孔8を通じて副室5から主室4へ流出したエンジンオイルを絞り部13に流通させ、絞り部13を流通するエンジンオイルをサーモスタット弁9を通じて副室5内に導入し、その導入されたエンジンオイルを吸込口6aから吸い上げるエンジンオイルの循環経路が形成される。
以上のように構成した二槽式オイルパン1の各部の機能、動作について、エンジンオイルの状態の変化に沿って説明する。
まず、暖まっていないエンジンの始動前は、主室4、副室5内のエンジンオイルは冷えた状態となっている。この段階で、連通孔8によって主室4と副室5とは連通した状態となっており、油面の高さも、主室4と副室5とではほぼ同一の高さとなっているが、エンジンが暖まっておらず、エンジンオイルが冷えた状態ではサーモスタット弁9は閉じており、主室4と副室5との間のエンジンオイルの流通はほとんどない。このため、主室4、副室5両室のエンジンオイルが混合されることはない。
この状態からエンジンを始動させると、副室5内のエンジンオイルがオイルストレーナ6の吸込口6aから吸い上げられ、エンジン上部からエンジンブロック7内に供給される。エンジンブロック7内を循環したエンジンオイルは、再び副室5内に滴下する。このように、エンジンの暖機が完了しておらず、エンジンオイルが冷えた状態のときは、副室5内のエンジンオイルのみがエンジンブロック7内を循環する。すなわち、副室5内の少量のエンジンオイルのみを循環させるので、エンジンオイルの早期の昇温を図ることができ、エンジン各部のフリクションを軽減することができる。エンジン各部のフリクションが軽減されれば、燃費を向上させることができる。
ここで、本実施例の二槽式オイルパン1は従来の一般的なオイルパンと同様に、車両の下面側に取り付けられ、走行することにより図2中、矢示12によって示し、アンダーカバー11によって整流された車速風によって冷却がされる。こうのような冷却効果は、後述するように暖機完了後はエンジンオイルに好都合であるが、暖機時にはエンジンオイルの昇温の妨げとなる。しかし、本実施例の二槽式オイルパン1では、暖機時にはサーモスタット弁9は閉じた状態となっており、絞り部13内のオイルは流動していないことから、絞り部13内のオイルが保温材の役割を果たし、副室5内のエンジンオイルの早期昇温に寄与することができる。
このように、副室5内の少量のエンジンオイルを循環させれば、エンジンオイルの早期昇温、ひいては燃費向上を図ることができるが、エンジンオイルの過度の昇温はエンジンオイルの劣化を早めることとなり、好ましくない。このため、ある程度のエンジンオイルの昇温が達成されると、副室5内に配置されたサーモスタット弁9の感温部9a内のサーモワックスが溶融して膨張し、弁体9bを開く。弁体9bが開くと、主室4内の未だ冷えた状態のエンジンオイルがサーモスタット弁9を通じて副室5内に流入し、流入したエンジンオイルは、サーモスタット弁9がオイルストレーナ6の吸込口6aの近傍に位置していることから、即座に吸込口6aから吸い上げられ、エンジンブロック7内を循環する。このようにサーモスタット弁9を通じて主室4内のエンジンオイルが副室5内に流入するようになれば、エンジンブロック7内を循環し、副室5内に戻ってきたエンジンオイルも連通孔8を通じて主室内に流出するようになる。暫くこのようなエンジンオイルの循環が継続されると主室4内、副室5内のエンジンオイルの混合が促進され、早期に昇温していた副室5内のエンジンオイルは適度に冷却されて過度に昇温することもなく、両室のエンジンオイルは適度な温度域まで昇温する。
ところが、エンジンを、例えば高負荷状態で連続運転させると、主室4内と副室5内のエンジンオイルを合わせた量であっても、過度の昇温となる場合がある。このような傾向を回避すべく、暖機完了後のエンジンオイルは適度に冷却されることが望ましい。本実施例の二槽式オイルパン1は、前記のように矢示12で示した車速風によって冷却がされる。また、本実施例の二槽式オイルパン1は、オイルパン2の下面に冷却フィン2bを備えているので、これによっても冷却が促進される。さらに、本実施例の二槽式オイルパン1は、前記のように、図2に示すようにオイルパン2の底板部2cとオイルパンセパレータ3の底板部3a2を接近させて主室4内のエンジンオイルが流通する絞り部13を設けており、エンジンオイルをこの絞り部13を流通させることにより冷却を促進している。
この絞り部13を流通させることによる冷却効果の原理について説明すると以下の如くである。まず、オイルパン2の放熱量自体は基本的には車速風が当たるオイルパン2の外周の面積(放熱面積)の影響が大きく、同一条件下において、放熱面積が同一であれば、放熱量も同一である。そこで、絞り部13を設けて、オイルパン2の放熱面積に対するエンジンオイルの流量を減少させれば、冷却効率を高めることができる。すなわち、絞り部13の径を小径とし、絞り部13の体積を小さくすれば、その単位体積あたりの放熱面積が大きくなり、冷却効果を高めることができる。
また、このような絞り部13を設け、前記のように矢示14で示したエンジンオイルの循環経路が形成されると、二槽式オイルパン1内の広範囲に亘って撹拌作用を付与することができるので、主室4内と副室5内のエンジンオイルの混合を促進し、冷却効果をさらに高めることができる。
次に本発明の実施例2について、図5及び図6を参照しつつ説明する。この実施例2の二槽式オイルパン20と実施例1の二槽式オイルパン1とは、二槽式オイルパン1の開閉弁が感温部9aにサーモワックスを用いたサーモスタット弁9であるのに対し、実施例2の二槽式オイルパン20では薄型のバイメタル弁21を開閉弁として用いた点で相違する。なお、他の構成要素については、実施例1の二槽式オイルパンと同一であるので、同一の構成要素については図面中、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図6は、実施例2の二槽式オイルパン20を断面とした図5におけるバイメタル弁21の取り付け部を拡大した断面図である。バイメタル弁21は、フレーム21aに、二枚の熱膨張率の異なる金属板21b1と21b2を張り合わせてなる弁体21bを取り付けて構成している。このようなバイメタル弁21は実施例1のサーモワックス弁9と比較すると非常に薄く形成できる利点がある。実施例2の二層式オイルパン20では、バイメタル弁21のこのような利点を生かして、バイメタル弁21をオイルストレーナ6の吸込口6aの直下に配置している。
このように構成した二槽式オイルパン21はエンジンの暖機が進み、副室5内のエンジンオイルが昇温すると、金属板21b1と21b2の熱膨張率が異なることに起因して弁体21bが図に示したように開弁状態となる。バイメタル弁21が開弁状態となると、主室4内のエンジンオイルが絞り部13を通過して冷却された後、バイメタル弁21を通じて副室5内へ流入する。副室5内へ流入する冷却されたエンジンオイルは即座に矢示22のようにオイルストレーナ6の吸込口6aから吸い上げられる。また、このようにバイメタル弁21(開閉弁)を吸込口6aよりも下方に設置すると、バイメタル弁21が開いておらず、絞り部13にエンジンオイルの流れが生じていない場合であっても、高温のエンジンオイルは上方に分布し、低温のエンジンオイルは下方に分布することから、バイメタル弁21の解放直後にも低温のエンジンオイルを積極的に吸込口6aから吸い上げることができる。
次に本発明の実施例3について、図7及び図8を参照しつつ説明する。この実施例3の二槽式オイルパン30と実施例1の二槽式オイルパン1とは、二槽式オイルパン1が図4に示すようにボルト15と締結部材16を用いてオイルパンセパレータ3に取り付けられているのに対し、実施例3の二槽式オイルパン30では図に示すようにボルト15、締結部材16等を用いずに装着できる構成となっている点で相違する。なお、他の構成要素については、実施例1の二槽式オイルパンと同一であるので、同一の構成要素については図面中、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
サーモスタット弁(開閉弁)31とオイルパンセパレータ3とは別部品であり、一体成形できるものではないため、二槽式オイルパン30の製造工程においてオイルパンセパレータ3にサーモスタット弁31を取り付ける工程が必要となる。これは、実施例1の二槽式オイルパン1でも同様であるが、実施例1の二槽式オイルパン1では、締結部材16を用いてボルト締めすることによってオイルパンセパレータ3へサーモスタット弁9を取り付けていた。しかし、このようなボルト止めを行うと、部品点数が多くなり、また、製造時における工程数も多くなる。そこで、実施例3の二槽式オイルパン30では、サーモスタット弁31を以下のような構成としている。
すなわち、サーモスタット弁31は、周囲の鍔部31dに弾性を有するシール材32で被覆したシール部31eを有している。また、一方のオイルパンセパレータ3は、主室4と副室5とを連通する開口33aと、この開口33aからサーモスタット弁31が主室4及び副室5に臨むようにシール部31eを嵌着する固定部33bとを有している。ここで、固定部33bには、図8に示すように開口33aの周囲に位置する溝部33b1とこの溝部33b1に連続するテーパ部33b2とが形成されている。このテーパ部33b2は図8に示すように溝部33b1側が小径となっている。
このような構成とすることにより、シール部31eを溝部33b1へ嵌め込んでサーモスタット弁31をオイルパンセパレータ3に装着することができる。このような装着は、サーモスタット弁31を、図8(a)中、矢示34で示すように固定部33b内へ押し込めばよい。このとき、固定部33bは溝部33b1へ近づくほど小径となったテーパ部33b2を有し、また、シール部31eを構成するシール材32が弾性を有することから、サーモスタット弁31を押し込んでいくと、シール部31eはテーパ部33b2に当接し、シール材32をその弾性により変形させつつ溝部33b1に向かって進む。シール部31eが溝部33b1に到達すると、シール材32が元の形状に復帰してシール部31eが溝部33b1に嵌合されてサーモスタット弁31のオイルパンセパレータ3への装着が完了する。
このように実施例3の二槽式オイルパン30では、サーモスタット弁30をオイルパンセパレータ3へ装着する際に、実施例1の二槽式オイルパン1のようにボルト止めする工程が不要であるので、製造工程を簡略化し、製造時間を短縮することができる。また、このような構成とすれば、部品点数を削減でき、サーモスタット弁31周辺の部品を温めるために消費されるエネルギを削減できる。
なお、実施例3の二槽式オイルパン30ではサーモスタット弁31側のシート部31eを固定部33b側、すなわちオイルパンセパレータ3側に設けた溝部33b1に嵌着する構成としたが、サーモスタット弁31の周囲に溝を設け、この溝にオイルパンセパレータ3に設けた開口の周縁を嵌着するようにしてもよい。
次に本発明の実施例4について図9乃至図11を参照しつつ説明する。この実施例4の二槽式オイルパン40と実施例1の二槽式オイルパン1とは、二槽式オイルパン1が図4に示すようにボルト15と締結部材16を用いてオイルパンセパレータ3に取り付けられているのに対し、実施例4の二槽式オイルパン40では図に示すようにボルト15、締結部材16等を用いずに装着できる構成となっている点で相違する。なお、他の構成要素については、実施例1の二槽式オイルパンと同一であるので、同一の構成要素については図面中、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
実施例1の二槽式オイルパン1は、外側のオイルパン2にのみオイルドレイン2aを備えた構成となっているので、エンジンオイル交換時、副室5内のエンジンオイルを十分に昇温させ、サーモスタット弁9を開弁させてから副室5内のエンジンオイルを抜くことが必要となる。
そこで、図9に全体の断面を示し、図10にドレインプラグ61を装着した部分を拡大して示した二槽式オイルパン60のように、オイルパン2とオイルパンセパレータ3とにそれぞれオイルドレイン2a、3bを設け、オイルパンセパレータ3に設けたオイルドレイン2aを閉塞するプラグ61aを備えたドレインプラグ61を使用することが考えられる。このような構成とすれば、ドレインプラグ61を取り外すことにより、主室4、副室5内のエンジンオイルを抜き取ることができる。
ところで、実施例1の二槽式オイルパン1や、図9に示した二槽式オイルパン60の構成とした場合、二槽式オイルパン1、60が備えるサーモスタット弁9は、オイルパン2の内側に位置しており、サーモスタット弁9に何らかの異常が生じ、サーモスタット弁9の点検作業、交換作業等を行う必要があるときは、二槽式オイルパン1(60)をエンジンブロック7から取り外さなければならない。
そこで、図11に示した実施例4の二槽式オイルパン40では、サーモスタット弁42をオイルパンセパレータ3に設けた開口3cから主室4(絞り部13)及び副室5から臨むように配置し、オイルパン2に設けたオイルドレイン2aにねじ込んで装着するドレインプラグ43によって支持するようにした。このとき、サーモスタット弁42はオイルパンセパレータ3に固定されておらず、ドレインプラグ43によって支持されているのみである。
すなわち、ドレインプラグ43は、サーモスタット弁42の主室4側に位置する端部42aが当接する凹部43a1を有する支持台43aを備えており、シール加工された鍔部42bを周縁に有するサーモスタット弁42を、その鍔部42bがオイルパンセパレータ3の外周面に密着させるようにして支持した状態でオイルドレイン2aに装着されている。
ここで、サーモスタット弁42の直径、すなわち、鍔部42bの直径φAは、図12に示したようにオイルドレイン2aの直径φBよりも小径としている。このような構成とすれば、ドレインプラグ43を取り外すことにより、オイルパン2の内部に配置されたサーモスタット弁42を、オイルドレイン2aを通じて取り出すことができる。これにより二槽式オイルパン40をエンジンブロック7から取り外すことなくサーモスタット弁42の点検作業、交換作業を容易に行うことができる。
なお、実施例4のサーモスタット弁42はドレインプラグ43とは別体であるが、サーモスタット弁42とドレインプラグ43を固着した構成とすることもできる。このようにすれば、ドレインプラグ43を取り外したときに同時にサーモスタット弁42を取り出すことができるので便利である。
次に、本発明の実施例5について図13に基づいて説明する。
本発明の二槽式オイルパンは、冷間始動直後は、できるだけ早くエンジンオイルを昇温させて適切な粘度を有する状態にすべく、オイルパンを複数の区画(主室4と副室5)に分け、冷間始動直後は一方の区画(副室5)内のエンジンオイルが循環されやすい状況を作り、この区画内のエンジンオイルをより早期に昇温させ、その一方、暖機完了後は、エンジンオイルの過熱を回避してエンジンオイルを好ましい状態にしようとするものである。このため、暖機が進むにつれて、主室4内と副室5内のエンジンオイルの混合比率が徐々に高められ、適切な温度状態が保たれるようになっていることが望ましい。このように暖機が進むにつれて主室4内と副室5内のエンジンオイルの混合比率を徐々に高めるためには、主室4と副室5とを連通する開口の面積を徐々に広くし、主室4から副室5内へ流入する低温のエンジンオイルの量を増すことが考えられる。
そこで、実施例5の二槽式オイルパンでは、オイルパンセパレータ3の底部に作動温度の異なる複数のサーモスタット弁46、47、48を装着して暖機の進み具合に応じて主室4と副室5内のエンジンオイルの混合比率を変化させるようにしている。複数のサーモスタット弁46、47、48のうち、サーモスタット弁46、47は暖機が進むにつれて、すなわち、副室5内のエンジンオイルの温度が高くなるにつれて開弁するものであり、サーモスタット弁46よりもサーモスタット弁47の作動温度が高くなっている。従って、副室5内のエンジンオイルの昇温が進むと先ずサーモスタット弁46が開弁し、その後、さらに昇温が進むとサーモスタット弁47が開弁して主室4と副室5とを連通する開口の面積が広くなり、主室4から副室5内へ流入する低温のエンジンオイルの量が増す。
一方、サーモスタット弁48は、副室5内エンジンオイルの昇温が進むと閉弁する構造となっている。これは、極低温時におけるエンジン始動時は、エンジンオイルの粘度が非常に高いことを考慮した措置である。すなわち、エンジン始動初期に副室5内の粘度の非常に高いエンジンオイルのみを循環させていると、エンジンブロック7側からに副室5へのエンジンオイルの戻りが悪く、副室5内のエンジンオイルが不足する事態が考えられる。そこで、サーモスタット弁48は極低温時に主室4と副室5とを流通させ、循環するエンジンオイルの不足を回避するようにしている。
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
従来の二槽式オイルパンの概略構成を示す断面図である。
実施例1の二槽式オイルパンの概略構成を示す断面図である。
図2に示した二槽式オイルパンを構成するオイルパンセパレータの側面図である。
図2に示した二槽式オイルパンにおけるサーモスタット弁をオイルパンセパレータに取り付けた部分を拡大した断面図である。
実施例2の二槽式オイルパンの概略構成を示す断面図である。
図5に示した二槽式オイルパンにおけるバイメタル弁をオイルパンセパレータに取り付けた部分を拡大した断面図である。
実施例3の二槽式オイルパンの概略構成を示す断面図である。
図7に示した二槽式オイルパンにおけるサーモスタット弁をオイルパンセパレータに取り付ける部分を拡大した断面図であり、(a)は、取り付け前、(b)は、取り付け後を示すものである。
ひとつのドレインプラグを取り外すことにより主室と副室のエンジンオイルを抜き取ることができる二槽式オイルパンの一例を示す断面図である。
図9に示した二槽式オイルパンにおけるドレインプラグを装着した部分を拡大した一部断面図である。
実施例4の二槽式オイルパンの概略構成を示す断面図である。
図11に示した二槽式オイルパンにおけるサーモスタット弁をオイルパンセパレータに装着した部分を拡大した一部断面図である。
実施例5の二槽式オイルパンに装着したオイルパンセパレータの底部を拡大した断面図である。
符号の説明
1、20、30、40、50 二槽式オイルパン
2、52 オイルパン
2b 冷却フィン
3、51 オイルパンセパレータ
3a、51a 凹部
3a2 底板部
4 主室
5 副室
6 ストレーナ
6a 吸込口
7 エンジンブロック
8 連通孔
9、31、42、46、47、48 サーモスタット弁
10、43、61 ドレインプラグ
11 アンダーカバー
13 絞り部
15 ボルト
16 締結部材
21 バイメタル弁
31d 鍔部
31e シール部
32 シール材
33a 開口
33b 固定部
33b1 溝部
33b2 テーパ部