JP4239715B2 - ダブルモノクロ形分光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダブルモノクロ形の分光装置に関し、更に詳しくは、ダブルモノクロ形分光装置における前置分光器と主分光器の波長校正機構及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1に、従来のダブルモノクロ形分光装置における波長走査機構の一例を示す。この波長走査機構10は、回折格子を有する前置分光器11と、同じく回折格子を有する主分光器12とを備え、前置分光器11の回折格子の入射側に入口スリット13が、出射側に中間スリット14(これは主分光器12の入口スリットでもある)がそれぞれ配置され、主分光器12の出射側に出口スリット15が配置されている。光源からの光は入口スリット13を通過した後、まず前置分光器11の回折格子に入射する。入射した光はその回折格子によって分散し、分散した光のうち所定波長の単色光のみがスリット14を通過する。スリット14の前方には主鏡16が配置されており、スリット14を通過した単色光は主鏡16で反射した後、主分光器12の回折格子に入射する。後述のように、主分光器12の回折格子は前置分光器11の回折格子と連動しており、これにより、前置分光器11の出口スリット14から出射される単色光と同一波長の単色光が主分光器12の回折格子から出射して主鏡16で反射した後、出口スリット15を通過する。この出口スリット15を通過した単色光が本波長走査機構10の出力光であり、試料に投射される。
【0003】
本波長走査機構10の出力光の波長は、前置分光器11の回折格子と主分光器12の回折格子とが連動して回転することによって変化し、これにより波長走査が行なわれる。この波長走査のための駆動機構は、1本の送りネジ17と2本のサインバー18、19を基本要素とし、前置分光器11と主分光器12とを平行リンク20で接続した構成となっている(この構成を「送りネジ・サインバー方式」という)。
【0004】
しかし、この送りネジ・サインバー方式は多くの部品を必要とし、特に、前置分光器11の回折格子を滑らかに回転させるための高剛性かつ高精度の平行リンク機構20を実現するために、多数の部品が必要となる。また、前置分光器11と主分光器12との連動動作につき必要な精度を確保するためには、駆動源であるモータ21の制御では対応することができず、2本のサインバー18、19を厳密に調整しなければならない。この結果、調整作業が煩雑なものとなる。
【0005】
そこで本発明者等は、前置分光器の分散素子と主分光器の分散素子にそれぞれ独立の駆動手段(第1駆動手段及び第2駆動手段)を設け、両駆動手段を高度な制御により連動させる制御手段を備えた分光装置を提案した(特許文献1)。この連動制御では、前置分光器及び主分光器における分散素子の回転角と各分散素子からの出射光の波長との関係の非線形性を考慮するとともに、第1駆動手段の減速比と第2駆動手段の減速比も考慮している。
【0006】
【特許文献1】
特開平8-136344号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の連動制御機構を備えた分光装置では、それまでの送りネジ・サインバー方式のものに比べて波長走査機構の実現に必要な部品数が少なくなるため、装置全体の小型化が達成され、信頼性が向上した。また、両分光器間に機械リンクが存在しないため、両分光器の配置やグレーティング選択、マウント形式の選定の自由度が大きくなるという利点がもたらされた。
【0008】
しかし、このような高度な制御機構を備えた分光装置であっても、装置の組立を行った後、或いは長期間使用した後には、各分光器の波長の校正を行わなければならない。分光器により抽出される光の波長は、入口スリット、出口スリット及びその間の分光器(分散素子)の配置により決定されるが、これらの部品を組み立てた際に生ずる組み付け誤差が、分散抽出した光の波長に誤差を生じさせる。また、各分光器の駆動源の角度設定精度、分光器の精度も同様に抽出波長の精度に影響を及ぼす。ダブルモノクロ形分光装置においては、前置分光器と主分光器の波長がずれると光エネルギの抽出効率が著しく下がってしまい、上記の各種誤差は分光装置の性能に大きく影響を与える。
【0009】
上記特許文献1においては、その装置構成は開示されたものの、このような波長校正については教示するところがなかった。本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、容易且つ正確に、前置分光器及び主分光器の波長を校正することのできる機能を備えたダブルモノクロ形分光装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明は、入口スリットと出口スリットの間に前置分散素子と主分散素子を配置したダブルモノクロ形の分光装置において、
a)入口スリットを入射した主光線が前置分散素子及び主分散素子を経て出口スリットに至るような前置分散素子及び主分散素子の角度位置であるゼロ次光位置を記憶する記憶手段と、
b)前記前置分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前記主分散素子を回転させ、光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前記主分散素子の角度位置を検出する主分散素子校正手段と、
c)前記主分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前記前置分散素子を回転させ、前記光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前記前置分散素子の角度位置を検出する前置分散素子校正手段と、
を備え、
前記複数の所定波長に対して前記主分散素子の角度位置の校正及び前記複数の所定波長に対して前記前置分散素子の角度位置の校正を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る前置分散素子と主分散素子の波長校正の手順は、上記同様、次の通りである。
a)入口スリットを入射した主光線が前置分散素子及び主分散素子を経て出口スリットに至るような前置分散素子及び主分散素子の角度位置であるゼロ次光位置をそれぞれ検出し、記憶しておく。
b)前置分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で主分散素子を回転させ、光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する主分散素子の角度位置を検出する。
c)主分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前置分散素子を回転させ、前記光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前置分散素子の角度位置を検出する。
なお、b)とc)の前後は逆でもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る校正を行うに際しては、水銀ランプや重水素ランプのように、既知の波長の輝線を含む光を用いる。校正しようとする波長範囲内に複数の輝線を含む一つ又は複数のそのような光(校正光)を用いて上記校正を行うことにより、その波長範囲内での前置分光器及び主分光器の波長校正を行うことができる。
【0013】
まず、前置分光器と主分光器のゼロ次光位置を定めるために、入口スリット、出口スリットと各分光器の幾何学的な位置関係により、両分光器の仮のゼロ次光位置を定める。その状態で、入口スリットから校正光(この場合は、何の光でも構わない)を導入し、出口スリットから出射する光の強度を測定しつつ、前置分光器及び主分光器をそれぞれ微小角範囲内で回転させる。その間に、出口スリットからの出射光の強度が最も大きくなったときの前置分光器及び主分光器の角度位置が、それぞれのゼロ次光位置である。
【0014】
次に、前置分光器をそのゼロ次光位置に置き、入口スリットから校正光を入射する。出口スリットから出射する光の強度を測定しつつ、主分光器を回転させることにより、校正光の輝線スペクトルを得る。その輝線スペクトルの中の既知の輝線の波長とその時の主分光器の角度位置とを対応させることにより、所定波長に対する主分光器の角度位置が検出される。
【0015】
前置分光器の波長校正も同様にして行う。すなわち、主分光器をゼロ次光位置に置き、入口スリットから校正光を入射する。出口スリットから出射する光の強度を測定しつつ、前置分光器を回転させることにより、校正光の輝線スペクトルを得る。その輝線スペクトルの中の既知の輝線の波長とその時の前置分光器の角度位置とを対応させることにより、所定波長に対する前置分光器の角度位置が検出される。
【0016】
【発明の効果】
本発明に係るダブルモノクロ形分光装置では、上記のように各分光器を回転駆動させつつ出口スリットから出射する光の強度を測定すればよいため、コンピュータ等による自動化が容易である。従って、そのような校正操作を行う機能を簡単且つ低コストでダブルモノクロ形分光装置に付加することができ、分光装置の知識にあまり長けていない人でも容易に装置のメンテナンスを行うことができるようになる。また、製造時においては、校正に要する時間及び手間が大幅に短縮され、生産性が大きく向上する。
【0017】
【実施例】
図2に、本発明の一実施例であるダブルモノクロ形分光装置の光学系図(a)及び主要要素の配置を示す斜視図(b)を示す。
図2(a)に示すように、本実施例の分光装置30は、前置分光器として凹面鏡31と凹面回折格子32を組み合わせたモンクギリーソン形分光器を、主分光器として2枚の凹面鏡33a、33bと平面回折格子34を組み合わせたツェルニターナ形分光器を、それぞれ備えている。また、前置分光器の回折格子32の入射側に入口スリット35、出射側に中間スリット36(これは主分光器の入口スリットでもある)がそれぞれ配置され、主分光器の出射側に出口スリット37が配置されている。光源部38からの光は、その一部がスリット35を通過して凹面鏡31で反射した後、前置分光器の回折格子32に入射する。入射した光は回折格子32によって分散し、分散した光のうち所定波長の単色光がスリット36を通過して凹面鏡33aで反射した後、主分光器の回折格子34に入射する。後述のように、主分光器の回折格子34は前置分光器の回折格子32と連動しており、これにより、前置分光器の出口スリット36から出射する光と同一波長の光が主分光器の回折格子34から出射してスリット37を通過する。このスリット37を通過する光(単色光)が本波長走査機構30の出力光(以下「出射光線束」という)である。
【0018】
図2(b)に示すように、本実施例の波長走査機構は、回折格子を回転させるための駆動手段として、前置分光器の回折格子32を回転させる第1駆動部41と、主分光器の回折格子34を回転させる第2駆動部42とを備えている。これらの二つの駆動部41、42は機械的に独立しており、いずれも減速機とステッピングモータを組み合わせた構成となっている。また、本実施例の波長走査機構はマイクロコンピュータを用いて構成された制御部40を備え、制御部40から第1駆動部41及び第2駆動部42に第1制御信号Sc1及び第2制御信号Sc2がそれぞれ供給される。第1駆動部41及び第2駆動部42は、それぞれ第1制御信号Sc1及び第2制御信号Sc2に基づいて動作し、これにより回折格子32及び34が連動する。このような連動動作により、出射光線束の波長が順次変化し、波長走査が実現される。
【0019】
このような機構を備えた波長走査機構30における波長走査の動作は前記特許文献1に詳しく記載されているが、ここでは、前置分光器及び主分光器の自動校正の動作を説明する。このような自動校正動作のために、本実施例の波長走査機構30では、出口スリット37の後に光度計43を備え、その光度計43からの光強度信号Sdを制御部40に送る。制御部40は、光度計43から入力した光強度信号Sdと、前置分光器及び主分光器の各駆動部41、42への出力信号Sc1、Sc2に基づき、図3に示すような手順で各分光器の制御の校正を行う。
【0020】
まず、前置分光器の回折格子32及び主分光器の回折格子34を、光学系(図2(a))の幾何学的配置から決定した、ゼロ次光が入口スリット35から入射して出口スリット37から出射するような角度位置(仮ゼロ次光位置)に置く(ステップS1)。そして、光源38を点灯し(ステップS2)、光度計43の出力信号Sdを参照しつつ、第1駆動部41に第1制御信号Sc1を送り、前置分光器の回折格子32を徐々に回転させる(ステップS3)。仮ゼロ次光位置の前後適当な範囲内で前置分光器の回折格子32を回転させることにより、光度計43の出力信号Sdが最大となる前置分光器の回折格子32の角度位置を検出し、それを前置分光器のゼロ次光位置として決定する(ステップS4)。主分光器の回折格子34についても同様の操作を行うことにより、主分光器のゼロ次光位置を決定する(ステップS5、S6)。こうして決定された両分光器の回折格子32、34のゼロ次光位置を、制御部40内に設けられた記憶部に記憶する(ステップS7)。
【0021】
次に、主分光器の回折格子34を上記のゼロ次光位置に置き(ステップS8)、制御部40は光度計43からの強度信号Sdを入力しつつ前置分光器の回折格子32を所定範囲内で回転駆動する(ステップS9)。これにより、所定波長範囲内の、光源38の輝線スペクトルが作成される(ステップS10)。光源38に、既知の波長を有する輝線を含むものを使用することにより、前置分光器の回折格子32の角度位置(厳密には、制御部40から第1駆動部41への制御信号Sc1)と波長との関係が校正される(ステップS11)。このような波長の校正を校正波長の全てについて行ったか否かを判定し(ステップS12)、未だ終了していない場合はステップS9に戻り、次の校正波長について同様に前置分光器の回折格子32の角度位置と波長との関係を校正する。全ての校正波長における校正が終了すると、主分光器における波長校正を終える(ステップS12→S13)。
【0022】
校正波長としては、例えば、重水素ランプや水銀ランプ等の光源38の既知の輝線波長を用いることができる。重水素ランプの場合、例えば486.0nm, 656.1nm等の輝線波長を用いることができる。水銀ランプの場合、194.1nm, 253.7nm, 296.7nm, 365.0nm, 404.7nm,435.8nm, 507.4nm(253.7nmの2次光), 546.1nm, 579.0nm,761.0nm(253.65nmの3次光), 809.4nm(404.7nmの2次光)等の輝線波長を用いることができる。
【0023】
前置分光器についても同様に校正を行う。すなわち、前置分光器の回折格子32をゼロ次光位置に置き(ステップS13)、光度計43からの強度信号Sdを入力しつつ主分光器の回折格子34を所定範囲内で回転駆動する(ステップS14)。これにより光源38の輝線スペクトルが作成され(ステップS15)、主分光器の回折格子34の角度位置(厳密には、制御部40から第2駆動部42への制御信号Sc2)と波長との関係が校正される(ステップS16)。全ての校正波長についてこのような波長校正が終了したとき(ステップS17)、校正作業を終了する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来のダブルモノクロ形分光装置の光学要素配置図。
【図2】 本発明の一実施例であるダブルモノクロ形分光装置の光学系図(a)及び光学要素配置図(b)。
【図3】 本実施例のダブルモノクロ形分光装置の波長走査機構による、前置分光器及び主分光器の校正の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…波長走査機構
11…前置分光器
12…主分光器
13…入口スリット
14…中間スリット
15…出口スリット
16…主鏡
30…波長走査機構
32…前置回折格子
34…主回折格子
35…入口スリット
36…中間スリット
37…出口スリット
38…光源
40…制御部
41…第1駆動部
42…第2駆動部
43…光度計
Sc1…第1制御信号
Sc2…第2制御信号
Sd…光強度信号
Claims (2)
- 入口スリットと出口スリットの間に前置分散素子と主分散素子を配置したダブルモノクロ形の分光装置において、
a)入口スリットを入射した主光線が前置分散素子及び主分散素子を経て出口スリットに至るような前置分散素子及び主分散素子の角度位置であるゼロ次光位置を記憶する記憶手段と、
b)前記前置分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前記主分散素子を回転させ、光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前記主分散素子の角度位置を検出する主分散素子校正手段と、
c)前記主分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前記前置分散素子を回転させ、前記光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前記前置分散素子の角度位置を検出する前置分散素子校正手段と、
を備え、
前記複数の所定波長に対して前記主分散素子の角度位置の校正及び前記複数の所定波長に対して前記前置分散素子の角度位置の校正を行うことを特徴とするダブルモノクロ形分光装置。 - 入口スリットと出口スリットの間に前置分散素子と主分散素子を配置したダブルモノクロ形の分光装置において、
a)入口スリットを入射した主光線が前置分散素子及び主分散素子を経て出口スリットに至るような前置分散素子及び主分散素子の角度位置であるゼロ次光位置をそれぞれ検出し、記憶しておくステップと、
b)前記前置分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前記主分散素子を回転させ、光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前記主分散素子の角度位置を検出する主分散素子校正ステップと、
c)前記主分散素子をゼロ次光位置に置いた状態で前記前置分散素子を回転させ、光源の輝線スペクトルの複数の所定波長に対する前記前置分散素子の角度位置を検出する前置分散素子校正ステップと、を有し、前記複数の所定波長に対して前記主分散素子の角度位置の校正及び前記複数の所定波長に対して前記分散素子の角度位置の校正を行うことを特徴とするダブルモノクロ形分光装置の校正方法。
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