JP4239202B2 - 棒状体の径測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばドリル刃等の棒状体の径を、特に直径が200μm以下の微小なドリル径を光学的に高精度に計測可能な棒状体の径測定方法に関する。
近時、プリント回路基板の高密度実装化に伴い、その多層化が図られており、またプリント回路基板にスルーホールを形成して複数の層間を電気的に接続することも行われている。このようなスルーホールは、専ら、例えば直径が50〜100μm程度の微小なドリル刃を用い、このドリル刃を高速回転させてプリント回路基板を所定深さの孔を穿いて形成される。この際、所定径のドリル刃を選択して用いることは勿論のこと、このドリル刃を芯ぶれのない状態でドリルのチャックに装着し、更にはドリル刃の先端位置を正確に把握して所定の深さまで孔を穿つことが重要である。しかしながらこの種の微小径のドリル刃の径(ドリル径)を機械的に計測したり、チャックへの装着状態等を機械的に確認することは一般的には非常に困難であり、通常、光学的な計測手段が用いられる(例えば特許文献1,2,3を参照)。
しかしながら特許文献1,2,3に示されるようなドリル刃の光学的な計測手法は、ドリル刃による光の遮光を利用してその遮光幅をラインセンサ等により計測しているだけであり、直径が200μm以下の微小径のドリル刃の径等を正確に計測することが困難であった。即ち、この種の計測には、専ら、その光源としてレーザ光等の単色平行光が用いられる。しかしドリル刃により遮光されるエッジ部において光の回折が生じるので、この回折の影響によりドリル刃の径等を正確に計測することが困難であると言う問題がある。
この点、本発明者は先にフレネル回折を生じた光の回折パターン(強度分布)をハイパボリックセカンド関数sech(x)を用いて近似した近似式を用いて、そのエッジ位置を簡易にしかも高精度に求める手法を提唱した(例えば特許文献4を参照)。
特開2003−170335号公報 特開平7−306020号公報 特開平7−260425号公報 特願2002−345958号
しかしながら直径が200μm以下の微小径のドリル刃の場合、そのドリル刃の両側部でそれぞれ回折した光が互いに干渉するので、上述した特許文献4にて提唱した手法をそのまま用いても上記ドリル刃の径(ドリル径)を正確に計測することができないと言う問題があった。即ち、特許文献4にて提唱した手法は、基本的にはフレネル回折の近似式を用いてその回折パターン(回折像)の相対的な光強度(光量)が[0.25]となる位置をエッジ位置として検出するものである。しかしドリル刃の両側部でそれぞれ回折した光が互いに合成されるので、ドリル径が小さい場合、その回折パターン(回折像)の光強度(光量)が[0.25]まで低下しないので、その両側部のエッジ位置自体を正確に求めることができないと言う問題があった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、例えば直径200μm以下の微小径のドリル刃の径(ドリル径)を簡易に、しかも高精度に計測することのできる棒状体の径測定方法を提供することにある。
本発明は微小径の棒状体(ドリル刃)に平行光を当てたときの回折パターン(回折像)が、その両側からのフレネル回折が合成されたものであり、光強度(光量)が[0.25]となる真のエッジ位置自体を検出することはできないが、その片側の回折パターンだけに着目した場合、例えば反対側の回折パターンの影響を実質的に無視し得る光強度(光量)が[0.5〜0.9]となる概略的なエッジ位置についてはその回折パターンから正確に求め得ること、そしてこの光強度(光量)が[0.5〜0.9]となる概略的なエッジ位置が求められれば、この概略的なエッジ位置から前述したフレネル回折の近似式に基づいて光強度(光量)が[0.25]となる真のエッジ位置を計算し得ることに着目してなされている。
そこで上述した目的を達成するべく本発明に係る棒状体の径測定方法は、複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサと、このラインセンサの上記複数の受光セルに向けて単色平行光を投光する光源と、軸方向を前記受光セルの配列方向と略直角にして上記単色平行光の光路に位置付けられた棒状体(例えばドリル刃)の径を、前記ラインセンサの出力を解析して求める演算部とを具備し、
上記演算部において、
<a> 前記棒状体により生じた前記単色平行光の回折パターンを前記棒状体の両側においてそれぞれ生じた左右2つの回折パターンに分け、
<b> フレネル回折の近似式を用いて各回折パターンの最初の立ち上がりの部分における他方の回折パターンの干渉を無視し得る部位(具体的にはフレネル回折の近似式において光量が[0.25〜0.9]となる位置)での概略的なエッジ位置をそれぞれ求め、
<c> これらの概略的なエッジ位置間の幅から前記フレネル回折を示す式またはその近似式を逆算して前記棒状体の径を算出することを特徴としている。
このようにして棒状体(例えばドリル刃)の径を計測する棒状体の径測定方法によれば、棒状体により生じた回折パターンを該棒状体の両側においてそれぞれ生じた左右2つの回折パターンに分けて捉え、これらの各回折パターンにおいて、例えばフレネル回折の近似式を用いて光量が[0.5〜0.9]となる位置での概略的なエッジ位置を求めるので、実質的に他方の回折パターンの影響を受けることなく、その概略的なエッジ位置をそれぞれ高精度に求めることができる。
その上で、これらの概略的なエッジ位置に従って光量が[0.25]となる前記棒状体の真のエッジ位置を前記フレネル回折の近似式を逆算して求めるので、棒状体による回折パターン(回折像)がその両側からのフレネル回折光が合成されたものであっても、前記棒状体の径を正確に求めることができる。従って棒状体が微小径であり、その両側部でそれぞれ生じたフレネル回折光がラインセンサの受光面上において合成された回折パターンをなす場合であっであっても、その径を正確に計測することができるので、その実用的利点が絶大である。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る棒状体の径測定方法について、微小径のドリル刃の径(ドリル径)の測定を例に説明する。
図1はこの径測定に用いられる計測装置の要部概略構成を示すものである。この計測装置は、概略的には一方向に所定のピッチwで配列した複数の受光セルを備えたラインセンサ(受光部)1と、このラインセンサ1の受光面に対峙して設けられて該ラインセンサ1の複数の受光セルに向けて所定の光線束幅の単色平行光4を投光する投光部2とを備える。またマイクロコンピュータ等により実現される装置本体3は、前記ラインセンサ1の出力(各受光セルの受光量)を解析することで前記単色平行光4の光路に位置付けられた、遮蔽物(検出対象物)7の前記受光セルの配設方向におけるエッジ位置を高精度に検出する役割を担う。
尚、投光部2は、例えば図2にその概略構成を示すようにレーザダイオード(LD)からなる光源2aが発した単色光(レーザ光)を反射するミラー(例えばアルミ蒸着により鏡面処理を施したプリズム)2bと、このミラー2bを介して導かれた単色光の光線束形状をスリット状に規定するアパーチャマスク(投光窓)2cと、このアパーチャマスク2cを介した光を平行光線束に変換して投射する投射レンズ(コリメータレンズ)2dとを備える。この投射レンズ2dと前記受光部1との間に検出対象物である遮蔽物7が位置付けられ、アパーチャマスク2cのスリットの長手方向に変位する上記遮蔽物7のエッジ位置が前記受光部1を介して検出される。
具体的にはアパーチャマスク2cは、その開口形状を矩形状のスリットとしたもので、前記光源2aは上記スリットに向けて所定の拡がり角で単色光を射出するように設けられる。特に光源2aとしてLDを用いた場合、このLDから楕円状の強度分布をもって射出するレーザ光は、アパーチャマスク2cに対して図中破線で示すように投射される。この際、上記レーザ光の長軸が、前記アパーチャマスク2cのスリットの長手方向となるように該LDとアパーチャマスク2cとを光学的に配置することが、投光部2を小型化する上で好ましい。尚、ミラー(プリズム)2dは、LDから発せられたレーザ光を略直角に反射させる光路を形成することで、LDとアパーチャマスク2c、ひいては投射レンズ2dとの光学的距離を維持しながら、投光部2の全体形状をコンパクト化する役割を担っている。尚、このような投光部2は、例えば前述したラインセンサ1と共に所定の隙間Lを形成したコの字状の筐体5に上記隙間を挟んで互いに対峙させて一体に組み込まれて、1つのセンシングユニットとして形成される。
このように構成された投光部2により、図3および図4にその光学系をそれぞれ模式的に示すように、上記アパーチャマスク2cおよび投射レンズ2dを通して平行光に変換されたスリット状の断面形状を有する平行光線束(単色平行光)4がラインセンサ(受光部)1に向けて投射される。この平行光線束の断面形状の大きさは、例えば長辺9mm×短辺3mmであり、これに対して上記平行光線束を受光するラインセンサ1の受光面の大きさは、例えば長辺8.7mm×短辺0.08mmである。即ち、それぞれの長辺の寸法はほぼ等しく設けられている。
ちなみに平行光線束の断面形状における短辺の寸法(3mm)をラインセンサ1の受光面の短辺寸法(0.08mm)よりもかなり大きく設定しているのは、投光器と受光器との平行度の調整を容易化すると共に、投光器または受光器が傾いた場合においても、図4に示すようにアパーチャマスク2cのスリットの長辺側エッジ2hによるフレネル回折の影響を避ける為である。但し、このスリット状の平行光線束(単色平行光)4には、前述したアパーチャマスク2cを用いて光線束形状を整形した際、図3に示すようにアパーチャマスク2cのスリットの短辺側エッジ2eにおけるフレネル回折の影響により生じた非平行光線成分が含まれることが否めない。しかしこの非平行光線成分の影響については、後述するようにラインセンサ1の出力を正規化して補正するようにすれば良い。
尚、前記装置本体3は、前記ラインセンサ1の出力(各受光セルの受光量)を取り込んで該ラインセンサ1の受光面上における光強度分布を求める入力バッファ3aを備える。特に装置本体3は、その初期設定処理として予め前記投光部2から投光された所定の光線束幅の単色平行光の全てを前記ラインセンサ1にて受光し、このときの光強度分布に基づいて前記投光部2が投光する単色平行光の回折パターンを求めると共に、後述するようにこの回折パターンの逆数に従って前記各受光セルの受光量に対する正規化パラメータを求める回折パターン検出手段3bを備える。この回折パターンは、上述したアパーチャマスク2cに形成されたスリットの短辺側エッジ2eにおけるフレネル回折の影響により生じた非平行光線成分に起因するものである。
更に装置本体3は、上記回折パターン検出手段3bにより求められた正規化パラメータに従って前記ラインセンサ1の出力を正規化する正規化手段3cと、この正規化手段3cにて正規化処理した前記ラインセンサ1の出力(正規化出力)に従って前記遮蔽物(検出対象物)7の端部(エッジ)の位置、具体的にはラインセンサ1における受光セルの配列方向の位置を検出するエッジ検出部3bとを備える。またこの計測装置においては上記装置本体3は、更に上記エッジ検出部3dの出力を利用して、ドリル径を測定するドリル径測定部3e、またドリルの芯ぶれを検出する芯ぶれ検出部3f、およびドリル刃の先端位置を検出する先端位置検出部3gを備えて構成される。
ちなみに上記エッジ検出部3dは、基本的には前記単色平行光の一部が遮蔽物(検出対象物)7にて遮られたとき、その端部(エッジ)においてフレネル回折が生じること、そしてフレネル回折を生じて前記ラインセンサ1の受光面に到達する光の強度が、以下に説明するようにエッジ位置近傍で急峻に立ち上がり、エッジ位置から離れるに従って振動しながら収束する分布特性を持つことに着目して、ラインセンサ1の受光面上での光強度分布に従って前記遮蔽物7の端部(エッジ)の位置を高精度に検出するように構成される。
即ち、前記遮蔽物7がラインセンサ1の一端側から前記単色平行光4の光路を遮る板状のものである場合、該遮蔽物7のエッジにおけるフレネル回折による光強度分布は、図6に示すようにエッジ位置近傍で急峻に立ち上がり、エッジ位置から離れるに従って振動しながら収束する。このような光強度分布の特性は、単色平行光の波長をλ[nm]、検査対象物(遮蔽物7)のエッジから受光面までの距離をz[mm]、受光面上でのエッジ位置x[μm]を[0]としたとき、∫を[x=0]から[(2/λz)1/2・x]までの積分を示す演算記号として
光強度 =(1/2){[1/2+S(x)]2+[1/2+C(x)]2
S(x) =∫sin(π/2)・U2dU
C(x) =∫cos(π/2)・U2dU
として表される。但し、Uは仮の変数である。
また上式中の関数S(x),C(x)については、専ら数学公式集に示されるようにフレネル関数を用いて、xが大きいところでは
S(x)’≒(1/2)−(1/πx)cos(πx2/2)
C(x)’≒(1/2)+(1/πx)sin(πx2/2)
としてそれぞれ近似することができる。従って基本的には上記近似式S(x)’,C(x)’を用いることにより、前記ラインセンサ1の各受光セルによる受光強度から前述したエッジ位置を計算することができる。
しかしながら実際に計算してみると、図6に示すように関数S(x),C(x)とその近似式S(x)’,C(x)’とは、その立ち上がり以降の収束部分(2山目以降)において非常に良好に近似するものの、最初の立ち上がり部分(1山目)において大きなずれがあることが否めない。特にこの最初の立ち上がり部分の特性はエッジ検出において重要な役割を担うものであり、その特性のずれはエッジ位置の検出精度の低下の要因となる。
そこで本発明者は先に特許文献4にて単色平行光のフレネル回折による受光面上での光強度分布の最初の立ち上がり部分、特にその1山目の分布特性が、a,b,cをそれぞれ係数として
y=a・sech(bx+c)
なるハイパボリックセカンド関数sech(x)に極めて良好に近似することを見出し、このハイパボリックセカンド関数sech(x)を用いて前記ラインセンサの出力(光強度)を解析し、前記フレネル回折による受光面上での光強度分布において光強度(相対値)が0.25となる位置xoを前記遮蔽物7の前記受光セルの配列方向におけるエッジ位置として検出することを提唱した。
具体的には、上述したハイパボリックセカンド関数を前述したフレネル回折による光強度分布の式に当て嵌めて該光強度分の最初の立ち上がり部分(1山目)までを近似すると、そのハイパボリックセカンド関数sech(x)は
光強度 =1.37sech{1.98(2/λz)1/2x−2.39}
として示される。この近似式は3桁程度の精度で光強度分布の理論式に一致する。但し、λは光の波長[nm]、zはエッジから受光面までの距離[mm]、xは受光面上でのエッジ位置を[0]とする座標[μm]であり、これらの実用的な単位の下で上記各係数を設定している。
このようなハイパボリックセカンド関数sech(x)を用いたエッジ位置の検出処理のアルゴリズムについて説明すると、ハイパボリックセカンド関数sech(x)を用いて近似される光強度の逆関数を計算すると、
Y=(y/1.37)
X=1.98(2/λz)1/2
とおいて、
X=2.39−ln{[1+(1−Y2)1/2]/Y}
として表すことができる。
そこで前述したエッジ検出部3dにおいては、基本的には、例えば図7に示す手順に従って先ずラインセンサ1における複数(m個)の受光セルから求められる正規化された各受光強度y1,y2,〜ymから、互いに隣接して前述した基準光強度[0.25]よりも大きい受光強度を得た受光セルCnと、上記基準光強度[0.25]よりも小さい受光強度を得た受光セルCn-1とをそれぞれ求めている(ステップS1)。つまり複数の受光セル(C1,C2,〜Cm)間のそれぞれにおいて受光強度が[0.25]となる、互いに隣接する2つの受光セルCn,Cn-1を求める。そしてこれらの各受光セルCn,Cn-1の受光強度yn,yn-1を上述した係数[1.37]で除算してX-Y座標上での光強度Yn,Yn-1に変換する(ステップS2)。
しかる後、これらの各受光セルCn,Cn-1の受光強度Yn,Yn-1が得られる該受光セルCn,Cn-1の受光面上での位置Xn,Xn-1を、前述した近似式に従って
Xn=2.39−ln{[1+(1−Yn2)1/2]/Yn}
Xn-1=2.39−ln{[1+(1−Yn-12)1/2]/Yn-1}
としてそれぞれ逆変換によりX軸上の相対位置を計算し(受光位置算出手段;ステップS3)、これらの位置Xn,Xn-1から図8にその概念を示すように受光セルCnの位置と、受光強度が[0.25]となるエッジ位置との差Δxを
Δx=W・[Xn/(Xn−Xn-1)]
なる補間演算により計算する(補間演算手段;ステップS4)。尚、上記差Δxは、受光強度が[0.25]となるエッジ位置xoから受光セルCnの位置までの距離であるので、ラインセンサ1の受光面全体において1番目の受光セルC1から測ったときのエッジの絶対位置xは、nを光量Y2を得た受光セルのセル番号、受光セルの配列ピッチをWとしたとき
x=n・W−Δx
として求めることが可能となる。また上記逆変換において求められる相対位置Xn,Xn-1は、
X=1.98(2/λz)1/2
として示されるように[1.98(2/λz)1/2]倍された値であるが、上記補間演算で比をとることにより実質的にこの項は削除される。
この補間演算については前述した近似式を用いて実行しても良いが、上述した2つの受光セルCn,Cn-1間での光強度の変化が直線的であると見なし得る場合には、単純な直線補間であっても良い。またここでは隣接する受光セル間で光強度が[0.25]となる位置を見出し、その位置をセル境界とする2つの受光セルCn,Cn-1を特定したが、単に上記位置を挟む2つ以上の受光セルを特定しても良い。但し、この場合には必ず前述した近似式を用いて補間演算を行うことで、その演算精度の低下を防止するようにすれば良い。また上述した逆変換については、例えば予めその計算値を記憶したテーブルを用いることで、その演算処理負担を大幅に軽減して瞬時に実行することが可能である。
尚、前記受光セルCn,Cn-1の受光面上での相対位置Xn,Xn-1と、受光強度が[0.25]となる位置(エッジ位置)xoと受光セルCnの位置との差Δx、また受光セルCnでの受光強度、および前記単色平行光の波長λとに着目すれば、前記ハイパボリックセカンド関数sech(x)から遮蔽物7のエッジとラインセンサ1の受光面との距離、即ち、光路方向の距離zを求めることも可能である(ステップS5)。具体的にこの距離計算は、基本的には前述した1山目のフレネル回折を近似した前述した式
光強度A(x)=1.37・sech{1.98(2/λz)1/2x−2.39}
から距離zについて解き、
z=(2/λ){1.98・x/[arcsech(A(x)/1.37)+2.39]}2
として遮蔽物7のエッジとラインセンサ1の受光面との距離zを計算することによって行うことができる。
この場合、前述した受光セルの配列方向のエッジ位置を求める際に、光強度が[0.25]よりも大きい強度が得られた受光セルCnの位置を利用して、この位置とエッジ位置との差Δxから、
z=(2/λ){1.98・Δx/[arcsech(yn/1.37)+2.39]}2
として計算すれば、遮蔽物7のエッジとラインセンサ1の受光面との距離zを簡単に求めることができる。特に上式中の分母の項は、前述した
Xn=2.39−ln{[1+(1−Yn2)1/2]/Yn}
に相当するので、上述した演算を
z=(2/λ){1.98・Δx/Xn}2
として更に簡単に計算することが可能となる。
ところで遮蔽物7が前述したように微小径の棒状体、例えばドリル刃である場合、ドリル刃の両側部において単色平行光4のフレネル回折が生じるので、ラインセンサ1の受光面におけるフレネル回折パターンは、例えば図9(a)に示すようにドリル刃の中心位置の両側においてそれぞれ振動しながら収束するような対称性を有するパターンとなり、またラインセンサ1の各受光セルでの受光強度は図9(b)に示すようになる。しかもドリル径が200μm以下である場合、その受光強度が[0.25]まで低下しなくなることがある。これ故、前述したようにしてフレネル回折の近似式を用いて光量が[0.25]となる位置を正確に求めることができなくなる。
しかしながら図9(a)に示す回折パターンは、図9(c)に示すように近似的には遮蔽物(ドリル刃)7の両側においてそれぞれ生じたフレネル回折が合成したものであると看做すことができる。従って、例えば半径rの遮蔽物(ドリル刃)7を通過した光の強度A(x)は、その左側の回折パターンの光強度A(x)Lと、右側の回折パターンの光強度A(x)Rとを合成した
A(x)=A(x)L+A(x)R
=1.37sech{−1.98(2/λz)1/2(x+r)−2.39}
+1.37sech{1.98(2/λz)1/2(x−r)−2.39}
として捉えることができる。しかしドリル径が細くなると、左側および右側の回折パターンの光強度A(x)L,A(x)Rにおける[0.25]付近での重なりが大きく影響し、ラインセンサ1の受光面上での光強度が[0.25]を大きく上回るようになるので、前述したように光量が[0.25]となる位置をそのエッジ位置として直接検出することはできなくなる。
そこで本発明においては、上述した左側および右側の回折パターンの光強度A(x)L,A(x)Rにおいて、その最初の立ち上がり部分における他方の回折パターンの影響を殆ど受けることのない部位、具体的には光強度(光量)が[0.5〜0.9]となる部位に着目し、例えば図10にその処理手順を示すように光強度(光量)が[0.75]となる概略的なエッジ位置XR,XLをそれぞれ求めるようにしている(ステップS11,12)。そしてこれらの左右の概略的なエッジ位置XR,XLから回折パターンA(x)においてその光量が[0.75]となる遮光幅2aを求め(ステップS13)、この遮光幅2aに従って前述したドリル刃の半径rを逆算することでそのドリル径2rを求めるものとなっている(ステップS14)。
具体的には右側の回折パターンA(x)Rから、光量が[0.75]となるエッジ位置XRを次のようにして求める。即ち、光強度y
y=1.37sech{1.98(2/λz)1/2X−1.21}
において、
Y=y/1.37
と置くと、
sech-1(Y)=±ln[{1+(1−Y2)1/2}/Y]
=X’−1.21
但し、0<y≦1.37 ,0<Y≦1.0,X’=1.98(2/λz)1/2
となる。
そこで今、102セルからなるラインセンサ1の各受光セルでの計測値(正規化したデータy0,y1,y2,…y101)で、[n−1]番目のセルとn番目のセルとの間に光強度が[0.75]となる位置が存在し、上記[n−1]番目およぴn番目のセルでの光強度がyn-1,ynであったとすると、
Yn-1=yn-1/1.37 ,Yn=yn/1.37
として、前述した図8に示した場合と同様に光強度が[0.75]となる位置を
X’n-1=1.21−ln[{1+(1−Yn-12)1/2}/Yn-1]
X’n=1.21−ln[{1+(1−Yn2)1/2}/Yn]
としてそれぞれ写像することができる。この結果、これらの写像位置からそのエッジ位置XR
R[μm]=w{n−X’n/(X’n−X’n-1)}
として補間処理により簡単に、しかも正確に求めることができる。但し、wはセルの幅である。尚、前述したようにX’n,X’n-1は、本来のセルの位置ではなく、1.98(2/λz)1/2倍された値であるが、上述したように比を求めることで実質的にはこの項が消去されるので、距離zが不明であっても正確に補間処理を行い得る。
また同様にして左側の回折パターンA(x)Lから、光量が[0.75]となるエッジ位置XLを求める。そしてこれらの各回折パターンA(x)R,A(x)Lからそれぞれ求めたエッジ位置XR,XLに従って、光量[0.75]となる位置での遮光幅2aを
2a=XR−XL
として求める。
次いで前述した右側および左側の回折パターンの光強度A(x)R,A(x)Lを合成した回折パターンを表す式に上記光量[0.75]と遮光幅2aの半分の値aとを代入し、ドリル刃の半径rを逆算して求める。このrの逆算については、例えばニュートン法を利用して数値計算するようにすれば良い。
具体的には
f(r)=1.37sech{−1.98(2/λz)1/2(a+r)−2.39}
+1.37sech{1.98(2/λz)1/2(a−r)−2.39}−0.75
とすれば、その微分は
f'(r)=−2.71(2/λz)1/2
×sech{−1.98(2/λz)1/2(a+r)−2.39}
×tanh{−1.98(2/λz)1/2(a+r)−2.39}
−2.71(2/λz)1/2
×sech{1.98(2/λz)1/2(a−r)−2.39}
×tanh{1.98(2/λz)1/2(a−r)−2.39}
となる。
そこでrの初期値r0を
r0={a−0.845(λz)1/2}/2
とし、
n=rn-1−f(rn-1)/f'(rn-1)
n=1,2,3,…
として[rn−rn-1]の絶対値が、例えば0.01以下となるまで繰り返し計算すれば、その収束したrをドリルの半径として求めることが可能となる。従ってドリル径については、上記半径rの2倍として、具体的には2rnとして求めることが可能となる。
尚、このようにして計算されるドリル径(半径r)については、ドリル刃とラインセンサ1との距離zが予め分かっている場合には、例えば図11に示すように遮光幅2aと直径2rとの関係として予めテーブル化して記憶しておくようにすれば良い。このようなテーブル3hを用いれば、その都度、上述したニュートン法を用いた逆算処理が不要となるので、ドリル径の計測を簡単に行うことが可能となる。
尚、ドリル径が或る程度太く、右側および左側の回折パターンの光強度A(x)R,A(x)L間の干渉が無視できる場合には、片方の回折パターンの光強度A(x)R,A(x)Lを用いるだけで、例えば
0.75=1.37sech{1.98(2/λz)1/2(a-r)−2.39}
を解くだけで、
2r=2a−0.845(λz)1/2
としてその半径rを求めることができる。即ち光量[0.75]での遮光幅2aからその光学系の規定値である[0.845(λz)1/2]を引くだけで、簡単にドリルの直径(ドリル径)2rを求めることができる。
次表は上述した径測定方法を用いて、公称0.04mm〜1.00mmなる線径の各種電線の径を測定した場合の、光量が[0.75]となる位置での遮光幅2aと、この遮光幅2aから求められた電線径の測定値とを対比して示したものである。
Figure 0004239202
尚、電線の公称径は、その表面に塗布された保護膜等を含まないものであるから、実際の線径とは多少異なっている。この表に示す測定結果から明らかなように、本発明によれば線径が細く、その両側部でのフレネル回折の重なりが問題となるような場合であっても、非常に精度良くその線径を測定し得ることが裏付けられ、直径が200μm以下のドリル刃の径を測定する場合においても、実用上十分に活用できることが明らかとなった。
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。ここではドリル刃の径を測定する場合を例に説明したが、電線等の径を図る場合にも同様に適用することができることは言うまでもない。即ち、微細な針状・糸状のものであって遮光性を有するものであれば、その径を図る場合に有効に活用することができる。またここでは光量が[0.75]となる位置での遮光幅2aを求めたが、他方の回折パターンの影響がない部位においてその遮光幅2aを求めるようにすれば良く、実用的には、例えば光量が[0.5〜0.9]となる範囲の任意の位置にて、その遮光幅2aを求めるようにすれば十分である。またラインセンサ1として前述した仕様以外のものを適宜採用可能であり、要はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
本発明の径測定方法に用いられる計測装置の要部概略構成を示す図。 図1に示す計測装置における光学系の詳細を示す図。 図2に示す光学系を矢視A-A方向から見た状態を模式的に示す図。 図2に示す矢視B-B方向から見た状態を模式的に示す図。 遮蔽物のエッジによりフレネル回折を生じた光の強度パターンを示す図。 フレネル回折による光強度分布の理論値と、関数を用いた近似特性とを対比して示す図。 フレネル回折パターンからのエッジ検出処理の手順の一例を示す図。 図7に示すエッジ検出の処理概念を示す図。 微小径のドリル刃により生じる回折パターンと本発明の計測原理を説明する為の図。 本発明の一実施形態に係る径測定方法の処理手順を示す図。 光量[0.75]の位置での遮光幅2aとドリルの直径2rとの関係を示すテーブルの構成例を示す図。
符号の説明
1 ラインセンサ
2 投光部(光源)
3 装置本体
3a 回折パターン検出部
3d エッジ検出部
3e ドリル径計測部
3h テーブル
7 遮蔽物(ドリル刃)

Claims (3)

  1. 複数の受光セルを一方向に所定のピッチで配列したラインセンサと、
    このラインセンサの上記複数の受光セルに向けて単色平行光を投光する光源と、
    軸方向を前記受光セルの配列方向と略直角にして上記単色平行光の光路に位置付けられた棒状体の径を、前記ラインセンサの出力を解析して求める演算部とを具備し、
    上記演算部は、前記棒状体により生じた前記単色平行光の回折パターンを前記棒状体の両側においてそれぞれ生じた左右2つの回折パターンに分け、フレネル回折の近似式を用いて各回折パターンの最初の立ち上がりの部分における他方の回折パターンの干渉を無視し得る部位での概略的なエッジ位置をそれぞれ求め、これらの概略的なエッジ位置間の幅から前記フレネル回折を示す式またはその近似式を逆算して前記棒状体の径を算出することを特徴とする棒状体の径測定方法。
  2. 前記回折パターンの最初の立ち上がりの部分における他方の回折パターンの干渉を無視し得る部位での概略的なエッジ位置は、前記回折パターンを近似したフレネル回折の近似式において光量が[0.25〜0.9]となる位置として求められる請求項1に記載の棒状体の径測定方法。
  3. 前記棒状体はドリル刃であり、前記棒状体の径はドリル径である請求項1に記載の棒状体の径測定方法。
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