JP4236890B2 - 泥水を含む土砂の1次水切り装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水底の土砂をバケットで掬い上げた後、上記の土砂を最終的に脱水する2次水切り作業の前工程として、運搬を容易ならしめる程度に予備脱水する1次水切り作業用の水切り装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6および図7は、従来における水底浚渫、および浚渫土砂の処理を示す工程図である。
(図6参照)水面1に浮かべた作業船2が係留されている。この作業船に搭載されたショベルカー3Aは、水底4の土砂を掘削してバケットに掬い込み、
泥水を多量に含んだ土砂5を運搬船6に積み込む。
上記運搬船6は、押し船7に押されて矢印aのように岸辺に向かう。
岸辺では(図7参照)前記と異なるショベルカー3Bが持っていて、運搬船6で運ばれてきた泥水を含む土砂5をバケットで掬い込み、岸辺の空地に敷き広げる。敷き広げられた「泥水を含む土砂」は、自然乾燥によって「水分含有量の少ない土砂8」となり、ダンプカー9で搬出される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
図7に示したように、「多量の水分を含んだ土砂」を岸辺の空地に敷き広げようとすると、広大な空地が必要となる。作業条件によっても異なるが、一般に広大な空地を使用することは困難な場合が多い。
空地面積が不充分であると、泥水を含む土砂の敷き広げが意のごとくならず、結果的には土砂を積み上げてしまうことになる。
泥水を多く含む土砂を充分に敷き広げても、天日による自然乾燥には長時間を要する。
さらに雨天の日は乾燥が進まないのみでなく、せっかく半乾きになった土砂の含水率が再び増加してしまう。
泥水を含む土砂の敷き広げに充分な空地面積を手当て出来なかった場合は、浚渫した土砂の処理にいっそう長時間を必要とし、工事コストを上昇させる。
【0004】
泥水を多く含む土砂の処理については、前述のように自然乾燥期間が永いという問題の他に、イ.水底を掘削するショベルカー3Aの作業能率を低下させる。ロ.運搬船6の実効積載量を減少させる。ハ.運搬された土砂を揚陸するショベルカー3Bの作業能率を低下させる、といった諸問題を生じている。
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、浚渫した土砂の運搬,その他の処理を容易ならしめるため、ショベルのバケットによって「泥水を多く含んだ土砂」を掬い取ったとき、該バケットの中に入っている土砂の中から「含まれている泥水の大部分」を除去する技術を提供するにある。
バケットの中で含有泥水の大半を除去された土砂は、揚陸後の運搬や最終的な脱水処理が著しく容易になることを期待することができる。
前記のごとく、バケットの中で行なう予備的な脱泥水を1次水切りと名付け、揚陸後の最終的な脱水処理を2次水切りと名付ける。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次のとおりである。
すなわち、ショベルカー10のアーム10bの先端に装着されているバケット10cに、多孔板10d製の内張りを施して、二重構造とし、
バケット本体と多孔板との間隙空間を、真空ポンプ11により真空吸引する。
上記と併行して、バケット10cに起振機13を装着し、該バケット10cを振動させて内部の泥水まじり土砂に振動を与える。
振動を与えられた泥水まじり土砂は、泥水と砂礫とが分離しやすくなり、泥水成分は真空ポンプによりバキューム吸引される。
このようにして、バケットの中において泥水まじり土砂が1次水切りされる。
上記のように、多孔板ないしネットを用いて2重構造とするとともに、真空吸引手段を備え、かつ起振機13を設置した「本発明に係るバケット10c」は、図5に示したようにして水底の掘削に用いることもでき、図7に示したようにして土砂の揚陸に用いることもできる。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用して構成した本発明に係る1次水切り装置の模式図である。10は、ショベル系建設車両の1例としてのショベルカー、10aはその車体である。
アーム10bの先端に、バケット10cが装着されている。上記バケットに、多孔板製の内張り10dが設けられて2重構造になっている(構成の詳細は図2を参照して後に述べる)。
ショベルカーの車体の10aに真空ポンプ11が搭載されていて、気水分離機能を有するセパレートタンク12、およびクションホース15を介して前記バケット10cの2重構造の間隙空間(バケット本体の底板および側板と、多孔板10dとの間隔部分)をバキューム吸引している。
前記セパレートタンク12で分離された泥水は排水管19によってショベルカー10外に導かれ、泥水タンク14に注入される(この泥水の処理は、図4を参照して後に詳しく述べる)。
さらに前記のバケット10cには起振機13が設置されている。本例の起振機は油圧式のものであって、母体であるショベルカー10の作用機用の油圧ポンプ(走行用エンジンで回転駆動される構造である)の吐出油を、図示しない操作弁および油圧ホースを介して供給されるようになっている。
【0007】
図2は、前記のバケット10cの2面図である。底板および側板に対向離間せしめて、多孔板10dが内張りされて2重構造をなし、その間隙空間にサクションホース15(図1について既述)が接続されている。
上記多孔板10dで囲まれている空間は大気に開放されており、この空間を加圧する手段は設けられていない。
前記バケット10cをショベルカーのアームに対して接続する根本部分の近くに、油圧式の起振機13が設置されている。Pは圧力油送入管路、Tはタンク戻り管路、Drはドレーン戻り管路である。
バケット10cをこのように構成すると、掬い込んだ泥水まじり土砂に振動を加えることができる。泥水まじり土砂に振動を与えると、泥水(流動成分)と砂礫とが分離しやすくなる。この状態でサクションホース15によってバキューム吸引すると、気泡まじり泥水が多孔板10dを通して濾し取られる。
本例の多孔板10dは、パンチングプレートで補強した金網を用いた。外見的には多孔板が主体に見えるが、機能的にはネット(濾し網)である。本発明においては、バケットに内張りされて、ネット(濾し網)として機能する部材をネット状の内張りと呼ぶ。
【0008】
図3は、前記の油圧式起振機13の模式的な断面図である。
本実施形態では、ケース16aの両端それぞれから回転軸16bが突出している型式の油圧モータ16を用いた。
回転軸が突出している両端部のそれぞれに、偏心重錘(A)17と、偏心重錘(B)18とを固着する。
上記2個の偏心重錘(A),(B)は、相互に偏心量が等しく、かつ、回転位相が等しくなるように、回転軸16bに固着されている。
このように構成した起振機を用いると、(イ)母体であるショベルカーから動力源としての圧力油の供給を受け得るので便利であり、(ロ)バケットの本体が平行移動で円を描くように振動するので、泥水を砂礫とを有効に分離させることができる。
【0009】
図4は、本発明を適用して構成した1次水切り装置を用いて、土砂を陸揚げしながら1次水切りしている状態の模式図である。
本図4に描かれているショベルカー10は、前掲の図1で詳細を説明したように構成されていて、そのバケット10cで泥水まじり土砂を掬いとると、該バケット10cの中で泥水を濾し取ることができる(すなわち1次水切りされる)。
泥水を濾し取られた土砂は、そのままダンプカー9に積み込んで搬出する。
濾し取られた泥水は、ショベルカー10から放出され、排水管19を経て泥水タンク14に注入される。この泥水タンク14は沈殿槽として用いられる。
上澄みの水は、図外のポンプによって河川,海,湖沼の何れかへ放流される。
沈殿した泥は、公知の脱水機20によって固化(ケーキ化)された上で搬出される。
以上のようにして、天日干しの空地を必要とせず、晴雨にかかわらず、浚渫した土砂を1次水切りすることができる。
1次水切りされた土砂の2次水切りは、従来の技術を適用して容易に行なうことができる。
【0010】
図5は、水底の掘削に本発明に係る1次水切りを適用した実施形態を示す。
作業船2にショベルカー10(図1参照)を搭載しても良い。上記ショベルカーは自走機能を有しているので積み下ろしに便利である。
本実施形態においては、ショベル機械を設置されている作業船を用い、そのバケット10cを本発明に係る構成(図2)とした。真空吸引や圧力油送給といった支援は作業船から受けるようになっている。
上記のように構成されたバケット機械21で水底の土砂を掬い上げ、1次水切りしてから運搬船6に積み込むと、該運搬船6に積み込まれる土砂の含水率が少ないので運送高率が良い。
作業船上のショベル機械21で1次水切りをした場合は、図4に示した揚陸場での1次水切りを省略することもできる。また、1次水切りを2回繰り返して行なうこともできる。何れにするかは諸種の作業条件を勘案して任意に選べば良い。
なお、図5のようにして作業船上で1次水切りしたときは、発生した泥水を貯える泥水タンクを作業船2に設置することが望ましい。該泥水を河川湖沼等に放流することが許される場合は、作業船に泥水タンクを設けなくても良い。
【0011】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げて、その構成,作用を明らかならしめたように、本発明装置を適用して1次水切りを行なうと、浚渫された泥水まじり土砂の運搬や最終脱水処理(2次水切り)を迅速容易に行なうことができ、
特に、広大な空地を必要とせず、雨天に煩わされる虞が無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の1実施形態を設けたショベルカーの模式的な平面図である。
【図2】前掲の図1におけるバケットの詳細を説明するための2面図である。
【図3】前掲の図1,図2に示した起振機の詳細を説明するための拡大断面図である。
【図4】本発明に係る装置を用いて、泥水を含む土砂を陸揚げしている状態の模式図である。
【図5】本発明に係る装置を用いて水底を掘削している情態の模式図である。
【図6】浚渫作業の従来例を説明するための模式図である。
【図7】浚渫された泥水まじり土砂を揚陸して処理する従来例を描いた模式図である。
【符号の説明】
2・・・作業船、3A,3B・・・ショベルカー、5・・・泥水を含む土砂、6・・・運搬船、9・・・ダンプカー、10・・・ショベルカー、10c・・・バケット、10d・・・多孔板、11・・・真空ポンプ、12・・・セパレートタンク、13・・・起振機、14・・・泥水タンク、15・・・サクションホース、16・・・油圧モータ、16a・・・ケース、16b・・・回転軸、17・・・偏心重錘・A、18・・・偏心重錘・B、19・・・排水管、20・・・脱水機、21・・・ショベル機械
Claims (2)
- バケットによって掘削された土砂を、運搬容易な状態まで脱水する1次脱水装置において、
前記のバケットが、その本体部分に対して間隙を設けて設置されたネット状の内張りを有するとともに、ショベル系建設車両のアームに装着されていて、
上記ネット状の内張りで囲まれた、バケットの本体部分と反対側の空間は大気圧に開放されており、
前記バケットとネット状の内張りとの間隙を負圧ならしめるように真空吸引する手段が設けられるとともに、
前記のバケットに起振機が装着されていて、
前記の起振機は油圧式の起振機であって、ショベル系建設車両の作業機用油圧ポンプの吐出油を、操作弁を介して供給される配管を備えていて、
前記ショベル系建設車両に、走行用エンジンによって回転駆動される真空ポンプが搭載されるとともに、
上記真空ポンプの吸入側を前記バケットの2重構造の間隙内に接続する配管が設けられていて、
該真空ポンプに、吐出される泥水まじり空気を気水分離する手段、および、処理された水を車両外に送出する配管が設けられていることを特徴とする、泥水を含む土砂の1次水切り装置。 - バケットを備えて水底の土砂を掘削する浚渫船が、上記のバケットで掬い取った泥水まじり土砂を、運搬に容易なように脱水する1次脱水装置であって、
バケットを備えたショベル機構が作業船に搭載されており、
該バケットの本体部分が、ネット状の内張りを備えた2重構造になっていて、
上記のネット状の内張りで囲まれた、バケットの本体部分と反対側の空間が大気圧に開放されており、
上記バケットの本体部分とネット状の内張りとの間隙を真空吸引する手段が設けられるとともに、
前記のバケットに起振機が装着されており、
かつ、前記の起振機は油圧式の起振機であって、前記作業船の作業機構用油圧ポンプの吐出油を、操作弁を介して供給される配管を備えていて、
前記作業船に搭載され、該作業船のエンジンによって回転駆動される真空ポンプの吸入側を前記バケットの2重構造の間隙内に接続する配管が設けられていて、
該真空ポンプに、吐出される泥水まじり空気を気水分離する手段、および、発生した泥水を貯える泥水タンクが設けられていることを特徴とする、泥水を含む土砂の1次水切り装置。
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