JP4236327B2 - 無電解めっき液、無電解めっき方法、プリント配線板の製造方法およびプリント配線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、めっき応力が小さく層間剥がれがない無電解めっき膜を形成することができる無電解めっき液、この無電解めっき液を使用した無電解めっき方法、プリント配線板の製造方法およびプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層配線基板に対する高密度化の要請から、いわゆるビルドアップ多層配線基板が注目されている。このビルドアップ多層配線基板は、例えば特公平4−55555号公報に開示されているような方法により製造される。即ち、下層導体回路が形成されたコア基板上に、感光性樹脂からなる無電解めっき用接着剤を塗布し、これを乾燥したのち露光、現像処理することにより、バイアホール用開口を有する層間樹脂絶縁層を形成する。次いで、この層間樹脂絶縁層の表面を酸化剤等による処理にて粗化した後、該感光性樹脂層に露光、現像処理を施してめっきレジストを設け、その後、めっきレジスト非形成部分に無電解めっき等を施してバイアホールを含む導体回路パターンを形成する。そして、このような工程を複数回繰り返すことにより、多層化したビルドアップ配線基板が製造されるのである。
【0003】
また、このようなビルドアップ多層配線基板の導体回路の形成に使用される無電解めっきとしては、EDTAを錯化剤としたものが主流であり、例えば、特開昭63−158156号公報および特開平2−188992号公報(米国特許第5055321号明細書、米国特許第5519177号明細書) の実施例中に、このような無電解めっき液を使用して導体回路を形成した例が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、EDTAを錯化剤としためっき液では、析出しためっき膜に圧縮応力(拡がろうとする力)が発生し、めっき膜が樹脂絶縁層から剥離してしまうという問題が見られた。
【0005】
また、直径80μm以下の微細なバイアホール内には、めっきが析出しないという問題も見られた。
【0006】
本発明は、従来技術が抱える上述した問題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、めっき応力を低減することによりめっき膜と内層の剥離を防止することができ、微細なバイアホールであってもめっき膜を形成することが可能な無電解めっき液および該めっき液を使用した無電解めっき方法等を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、EDTAを錯化剤としためっき膜では該めっき膜中に水素を取り込んでしまい、この水素が応力発生源となって圧縮応力が発生することをつきとめた。
【0008】
また、この後検討をさらに進め、錯化剤を酒石酸に変えたり、特定の金属イオンを微量添加することにより析出反応による水素の発生を抑え、めっき膜中への水素の取込みを低減させることが可能であることを見い出した。
【0009】
さらに、微細なバイアホール内にめっき膜が析出しないのは、銅イオンの拡散が銅の析出速度よりも遅いためであり、銅イオンの濃度を上げるともに、この銅イオンの析出速度を抑制することにより、微細なバイアホール内にもめっき膜を充分な厚さで形成することができることを見い出し、以下に示す内容を要旨構成とする本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、第一の本発明は、粗化面が形成された樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成されたプリント配線板の製造方法であって、
0.025〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、0.03〜0.15mol/lの還元剤、0.02〜0.06mol/lの銅イオン、および、0.05〜0.3mol/lの酒石酸もしくはその塩、ならびに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを0.01〜0.05重量%の濃度で含む水溶液からなる無電解めっき液を調製する工程と、
前記無電解めっき液の温度が25〜40℃、前記無電解めっき液の銅の析出速度が1〜2μm/時間の条件で、前記無電解めっき液に浸漬した前記樹脂絶縁基板上に無電解銅めっきを行って、前記無電解めっき膜を形成する工程とを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【0011】
第二の本発明は、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、酒石酸もしくはその塩、ならびに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含む水溶液からなることを特徴とする無電解めっき液である。
【0012】
上記第一及び第二の本発明の無電解めっき液の比重は、1.02〜1.10であることが望ましい。
【0013】
第三の本発明は、基材を上記第一または第二の本発明の無電解めっき液に浸漬し、析出速度を、1〜2μm/時間に設定して無電解銅めっきを行うことを特徴とする無電解めっき方法である。
上記無電解めっき方法において、上記基材の表面は、粗化面が形成されていることが望ましい。
【0014】
第四の本発明は、樹脂絶縁基板を上記第一または第二の本発明の無電解めっき液に浸漬し、析出速度を、1〜2μm/時間に設定して無電解銅めっきを行い、導体回路を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【0015】
第五の本発明は、粗化面が形成された樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成されたプリント配線板において、
上記無電解めっき膜は、0〜+10kg/mm2 の応力を有することを特徴とするプリント配線板である。
【0016】
第六の本発明は、粗化面が形成された樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成されたプリント配線板において、
前記無電解めっき膜は、粗化面に追従して形成されてなるとともに、粗化面の凸部では、粗化面の凹部に比べて無電解めっき膜の厚さが相対的に厚くなっていることを特徴とするプリント配線板である。
ここでいう凹部、凸部は、一次アンカーの凹凸であり、凸部に形成されている二次アンカー等をいうものではない(図6参照)。
【0017】
第七の本発明は、下層導体回路が形成された基板上に層間樹脂絶縁層を介して上層導体回路が形成され、上記下層導体回路と上層導体回路がバイアホールを介して接続されたプリント配線板において、
上記上層導体回路は少なくとも無電解めっき膜からなり、上記層間樹脂絶縁層には粗化面が形成され、上記無電解めっき膜は、粗化面に追従して形成されてなるとともに、バイアホール底部にも上記層間樹脂絶縁層上に形成された無電解めっき膜の50〜100%の厚みの無電解めっき膜が形成されてなることを特徴とするプリント配線板である。
【0018】
第八の本発明は、樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成されたプリント配線板において、
上記無電解めっき膜は、ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属ならびに銅からなることを特徴とするプリント配線板である。
【0019】
上記第八の本発明のプリント配線板において、上記ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の含有量は、0.1〜0.5重量%であることが望ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
第一の本発明の無電解めっき液は、0.025〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、0.03〜0.15mol/lの還元剤、0.02〜0.06mol/lの銅イオン、および、0.05〜0.3mol/lの酒石酸もしくはその塩を含む水溶液からなることを特徴とする。
【0021】
また、第二の本発明の無電解めっき液は、アルカリ性化合物、還元剤、銅イオン、酒石酸もしくはその塩、ならびに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含む水溶液からなることを特徴とする。
【0022】
これら無電解めっき液は、酒石酸またはその塩を使用しているため、析出するめっき膜中への水素の取込み量が少なく、その結果めっき膜に引っ張り応力が発生し、その絶対値も従来の場合(EDTAをEDTAを錯化剤とした場合)と比較して小さく、適度の値であるため、めっき膜は基材に密着し、その結果めっき膜と基材との間の剥離が生じにくい。
【0023】
また、アルカリ性化合物を0.025〜0.25mol/l、還元剤を0.03〜0.15mol/lに調整することにより、めっき析出速度を1〜2μm/時間に低減させることができる。従って、この無電解めっき液を用いてバイアホール用開口にめっき膜を形成する場合、銅イオンを上記バイアホール用開口内に充分に拡散させることができ、微細なバイアホール内にも充分な厚さのめっき膜を形成することができる。
【0024】
上記第二の本発明の無電解めっき液は、酒石酸またはその塩に加え、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含んでいるので、水素の発生を抑制し、その結果めっき膜に適度の引っ張り応力が発生して基材に密着するため、めっき膜の剥離が生じにくい。
【0025】
これら無電解めっき液の比重は、1.02〜1.10に調整されていることが望ましい。微細なバイアホール用開口内にもめっき膜を析出させることができるからである。
【0026】
また、これら無電解めっき液の温度は、25〜40℃である。高すぎると析出速度が早くなってしまい、微細なバイアホール用開口内にめっき膜を析出させることが困難となるからである。
【0027】
さらに、上記無電解めっき液中には、0.01〜0.05重量%のニッケルイオン、鉄イオン、コバルトイオン等を含むことが望ましい。
ニッケルイオン等の濃度を上記範囲に設定することにより、上記ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の含有量を、0.1〜0.5重量%とすることができ、硬度が高く、かつ、樹脂絶縁層との密着性に優れためっき膜を形成することができるからである。
【0028】
上記第一の本発明の無電解めっき液において、上記アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
上記還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、NaBH4 、ヒドラジン等が挙げられる。
上記銅イオンを形成するための化合物としては、例えば、硫酸銅、塩化銅等が挙げられる。
上記酒石酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、これらの塩は、2個のカルボキシル基のうち、1個のみが上記金属により置換された塩であってもよく、2個とも上記金属により置換された塩であってもよい。
【0029】
上記第二の本発明の無電解めっき液において、上記ニッケルイオンを形成するための化合物としては、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル等が挙げられ、上記コバルトイオンを形成するための化合物としては、例えば、塩化コバルト等が挙げられ、上記鉄イオンを形成するための化合物としては、塩化鉄等が挙げられる。
【0030】
第三の本発明は、基材を上記した本発明の無電解めっき液に浸漬し、析出速度を上記した1〜2μm/時間に設定して無電解銅めっきを行う無電解めっき方法であり、
第四の本発明は、樹脂絶縁基板を上記した本発明の無電解めっき液に浸漬し、上記した無電解銅めっき方法により導体回路を形成するプリント配線板の製造方法である。
【0031】
ここで、上記樹脂絶縁基板とは、導体回路が形成されていない樹脂絶縁基板のみでなく、導体回路が形成され、その上にバイアホール用開口を有する層間樹脂絶縁層が形成された樹脂絶縁基板をも意味するものとする。
上記無電解めっき方法または上記プリント配線板の製造方法において、上記基材や上記樹脂絶縁基板を構成する樹脂絶縁層の表面は、粗化面が形成されていることが望ましい。
粗化面は凹部と凸部とからなり、めっき膜はこの凹凸をトレースして形成されるが、粗化面の凸部では、粗化面の凹部に比べて無電解めっき膜の厚さが相対的に厚くなっているため、以下のような利点を有するからである。
【0032】
すなわち、無電解めっき膜形成後に、めっきレジストを設け、続いて電気めっきを行って厚いめっき膜を形成し、めっきレジストを除去してめっきレジスト下の無電解めっき膜をエッチング除去する、いわゆるセミアディティブ法では、凹部の無電解めっき膜が凸部に比べて相対的に薄い方がエッチングしやすく、このエッチングにより容易にめっき膜全体を完全に除去することができるので、エッチング残りが発生することはなく、形成した回路間の絶縁信頼性にも優れる。
【0033】
上記第四の本発明のプリント配線板の製造方法により製造されたプリント配線板は、以下のような特性を有する。
即ち、第五の本発明のプリント配線板は、粗化面が形成された樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成され、上記無電解めっき膜は、0〜+10kg/mm2 の応力を有する。
【0034】
ここで、上記応力の値は+であるので、上記めっき膜には、引っ張り応力が発生している。この応力はスパイラル応力計(山本めっき社製)を用いて測定することができる。
また、このような応力の範囲ではめっき膜にふくれや剥がれが生じないため、導体回路の接続信頼性に優れる。
【0035】
第六の本発明のプリント配線板は、粗化面が形成された樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成され、上記無電解めっき膜は、粗化面に追従して形成されてなり、粗化面の凸部では、粗化面の凹部に比べて無電解めっき膜の厚さが相対的に厚く(即ち、粗化面の凹部では、粗化面の凸部に比べて無電解めっき膜の厚さが相対的に薄く)なっていることを特徴とするプリント配線板である。
【0036】
従って、上記したセミアディティブ法により導体回路を形成する場合、粗化面を構成する凹凸のうち、凹部の無電解めっき膜の厚さが凸部のそれより相対的に薄く、凹部のめっき膜を容易にかつ完全に除去することができるので、エッチングを行った際にエッチング残りが発生することはなく、形成した回路間の絶縁信頼性にも優れる。
【0037】
第七の本発明のプリント配線板は、下層導体回路が形成された基板上に層間樹脂絶縁層を介して上層導体回路が形成され、上記下層導体回路と上層導体回路がバイアホールを介して接続されており、上記上層導体回路は少なくとも無電解めっき膜からなり、上記層間樹脂絶縁層には粗化面が形成され、上記無電解めっき膜は、粗化面に追従して形成されてなるとともに、バイアホール底部にも上記層間樹脂絶縁層上に形成された無電解めっき膜の50〜100%の厚みの無電解めっき膜が形成されてなる。
【0038】
上記プリント配線板は、上記無電解めっき液を用いてプリント配線板を製造しているので、直径が80μm以下の微細なバイアホール用開口であっても、その底面に充分な厚みを有するめっき膜が析出し、バイアホールの形成が可能となるのである。
【0039】
第八の本発明のプリント配線板は、樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成されており、上記無電解めっき膜は、ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属ならびに銅からなることを特徴とする。
【0040】
これらの金属塩の添加は、めっき膜中への水素の取込みを妨害し、めっきの圧縮応力を低減させるため、樹脂絶縁層との密着性に優れためっき膜となるからである。また、これらの金属は銅との合金をつくり硬度を高くすることができるため、樹脂絶縁層との密着性をさらに向上させることができる。
上記ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の金属の含有量が、0.1〜0.5重量%である場合に、硬度が高く、かつ、樹脂絶縁層との密着性に優れためっき膜が形成される。
【0041】
次に、本発明のプリント配線板を製造する方法をセミアディティブ法を例にとり説明する。
(1) まず、コア基板の表面に内層銅パターン(下層導体回路)が形成された基板を作製する。
このコア基板に対する導体回路を形成する際には、銅張積層板を特定パターン状にエッチングする方法、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、セラミック基板、金属基板などの基板に無電解めっき用接着剤層を形成し、この無電解めっき用接着剤層表面を粗化して粗化面とした後、無電解めっきを施す方法、または、上記粗化面全体に無電解めっきを施し、めっきレジストを形成し、めっきレジスト非形成部分に電解めっきを施した後、めっきレジストを除去し、エッチング処理を行って、電解めっき膜と無電解めっき膜からなる導体回路を形成する方法(セミアディティブ法)などを用いることができる。
【0042】
さらに、上記配線基板の導体回路の表面には、粗化面または粗化層を形成することができる。
ここで、上記粗化面または粗化層は、研磨処理、エッチング処理、黒化還元処理およびめっき処理のうちのいずれかの方法により形成されることが望ましい。
これらの処理のうち、黒化還元処理を行う際には、NaOH(20g/l)、NaClO2 (50g/l)、Na3 PO4 (15.0g/l)を含む水溶液からなる黒化浴(酸化浴)、および、NaOH(2.7g/l)、NaBH4 (1.0g/l)を含む水溶液からなる還元浴を用いて粗化面を形成する方法が望ましい。
【0043】
また、めっき処理により粗化層を形成する際には、硫酸銅(1〜40g/l)、硫酸ニッケル(0.1〜6.0g/l)、クエン酸(10〜20g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10〜100g/l)、ホウ酸(10〜40g/l)、界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(0.01〜10g/l)を含むpH=9の無電解めっき浴にて無電解めっきを施し、Cu−Ni−P合金からなる粗化層を形成する方法が望ましい。
この範囲で析出する被膜の結晶構造は針状構造になるため、アンカー効果に優れるからである。この無電解めっき浴には上記化合物に加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
【0044】
また、エッチング処理によって粗化層を形成する方法として、第二銅錯体および有機酸からなるエッチング液を酸素共存化で作用させ、導体回路表面を粗化する方法が挙げられる。
この場合、下記の式(1)および式(2)の化学反応によりエッチングが進行する。
【0045】
【化1】
【0046】
上記第二銅錯体としては、アゾール類の第二銅錯体が望ましい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅等を酸化する酸化剤として作用する。アゾール類としては、例えば、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールが挙げられる。これらのなかでも、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール等が望ましい。上記エッチング液中のアゾール類の第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%が望ましい。溶解性及び安定性に優れ、また、触媒核を構成するPdなどの貴金属をも溶解させることができるからである。
【0047】
また、酸化銅を溶解させるために、有機酸をアゾール類の第二銅錯体に配合する。上記有機酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
エッチング液中の有機酸の含有量は、0.1〜30重量%が望ましい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ溶解安定性を確保することができるからである。
上記式(2)に示したように、発生した第一銅錯体は、酸の作用で溶解し、酸素と結合して第二銅錯体となって、再び銅の酸化に寄与する。
【0049】
銅の溶解やアゾール類の酸化作用を補助するために、ハロゲンイオン、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン等を上記エッチング液に加えてもよい。また、塩酸、塩化ナトリウム等を添加して、ハロゲンイオンを供給することができる。エッチング液中のハロゲンイオン量は、0.01〜20重量%が望ましい。形成された粗化面と層間樹脂絶縁層との密着性に優れるからである。
【0050】
エッチング液を調製する際には、アゾール類の第二銅錯体と有機酸(必要に応じてハロゲンイオンを有するものを使用)を、水に溶解する。また、上記エッチング液として、市販のエッチング液、例えば、メック社製、商品名「メック エッチボンド」を使用する。上記エッチング液を用いた場合のエッチング量は0.1〜10μmが望ましく、1〜5μmが最適である。エッチング量が10μmを超えると、形成された粗化面とバイアホール導体との接続不良を起こし、一方、エッチング量が0.1μm未満では、その上に形成する層間樹脂絶縁層との密着性が不充分となるからである。
【0051】
粗化層または粗化面は、イオン化傾向が銅より大きくチタン以下である金属または貴金属の層(以下、金属層という)で被覆されていてもよい。このような金属としては、例えば、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマスなどが挙げられる。また、貴金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用して複数の層を形成してもよい。
【0052】
これらの金属層は粗化層を被覆し、層間樹脂絶縁層を粗化処理して局部電極反応を防止して導体回路の溶解を防止する。これらの金属の厚さは0.1〜2μmが望ましい。
【0053】
上記金属層を構成する金属のなかでは、スズが望ましい。スズは無電解置換めっきにより薄い層を形成することができ、粗化層に追従することができるからである。
スズからなる金属層を形成する場合は、ホウフッ化スズ−チオ尿素を含む溶液、または、塩化スズ−チオ尿素を含む溶液を使用して置換めっきを行う。この場合、Cu−Snの置換反応により、0.1〜2μm程度のSn層が形成される。
貴金属からなる金属層を形成する場合は、スパッタや蒸着などの方法を採用することができる。
【0054】
なお、コア基板には、スルーホールが形成され、このスルーホールを介して表面と裏面の配線層が電気的に接続されていてもよい。
また、スルーホールおよびコア基板の導体回路間にはビスフェノールF型エポキシ樹脂などの低粘度の樹脂が充填されて、平滑性が確保されていてもよい。
【0055】
(2) 次に、上記(1) で作製した基板の上に、有機溶剤を含む粗化面形成用樹脂組成物を塗布、乾燥して粗化面形成用樹脂組成物の層を設ける。
【0056】
上記粗化面形成用樹脂組成物は、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して難溶性の未硬化の耐熱性樹脂マトリックス中に、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質が分散されたものが望ましい。
なお、本発明で使用する「難溶性」「可溶性」という語は、同一の粗化液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」といい、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0057】
上記耐熱性樹脂マトリックスとしては、例えば、熱硬化性樹脂や熱硬化性樹脂(熱硬化基の一部を感光化したものも含む)と熱可塑性樹脂との複合体などを使用することができる。
【0058】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂を感光化する場合は、メタクリル酸やアクリル酸などを用い、熱硬化基を(メタ)アクリル化反応させる。特にエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートが最適である。
【0059】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミドなどを使用することができる。
【0060】
上記酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質は、無機粒子、樹脂粒子、金属粒子、ゴム粒子、液相樹脂および液相ゴムから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0061】
上記無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、ドロマイトなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アルミナ粒子は、ふっ酸で溶解除去することができ、炭酸カルシウムは塩酸で溶解除去することができる。また、ナトリウム含有シリカやドロマイトはアルカリ水溶液で溶解除去することができる。
【0062】
上記樹脂粒子としては、例えば、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂など)、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂など挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記エポキシ樹脂は、酸や酸化剤に溶解するものや、これらに難溶解性のものを、オリゴマーの種類や硬化剤を選択することにより任意に製造することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をアミン系硬化剤で硬化させた樹脂はクロム酸に非常によく溶けるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をイミダゾール硬化剤で硬化させた樹脂は、クロム酸には溶解しにくい。
【0063】
上記樹脂粒子は予め硬化処理されていることが必要である。硬化させておかないと上記樹脂粒子が樹脂マトリックスを溶解させる溶剤に溶解してしまうため、均一に混合されてしまい、酸や酸化剤で樹脂粒子のみを選択的に溶解除去することができないからである。
【0064】
上記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、スズ、亜鉛、ステンレス、アルミニウムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ゴム粒子としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、多硫系剛性ゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ABS樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記液相樹脂としては、上記熱硬化性樹脂の未硬化溶液を使用することができ、このような液相樹脂の具体例としては、例えば、未硬化のエポキシオリゴマーとアミン系硬化剤の混合液などが挙げられる。
上記液相ゴムとしては、例えば、上記ゴムの未硬化溶液などを使用することができる。
【0066】
上記液相樹脂や液相ゴムを用いて上記感光性樹脂組成物を調製する場合には、耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質が均一に相溶しない(つまり相分離するように)ように、これらの物質を選択する必要がある。
上記基準により選択された耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とを混合することにより、上記耐熱性樹脂マトリックスの「海」の中に液相樹脂または液相ゴムの「島」が分散している状態、または、液相樹脂または液相ゴムの「海」の中に、耐熱性樹脂マトリックスの「島」が分散している状態の感光性樹脂組成物を調製することができる。
【0067】
そして、このような状態の感光性樹脂組成物を硬化させた後、「海」または「島」の液相樹脂または液相ゴムを除去することにより粗化面を形成することができる。
【0068】
上記粗化液として用いる酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸や、蟻酸、酢酸などの有機酸などが挙げられるが、これらのなかでは有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。
上記酸化剤としては、例えば、クロム酸、アルカリ性過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウムなど)の水溶液などを用いることが望ましい。
また、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液が望ましい。
【0069】
本発明において、上記無機粒子、上記金属粒子および上記樹脂粒子を使用する場合は、その平均粒径は、10μm以下が望ましい。
また、特に平均粒径が2μm未満であって、平均粒径の相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子との混合粒子を組み合わせて使用することにより、無電解めっき膜の溶解残渣をなくし、めっきレジスト下のパラジウム触媒量を少なくし、しかも、浅くて複雑な粗化面を形成することができる。そして、このような複雑な粗化面を形成することにより、浅い粗化面でも実用的なピール強度を維持することができる。
【0070】
上記粗粒子と微粒子とを組み合わせることにより、浅くて複雑な粗化面を形成することができるのは、使用する粒子径が粗粒子で平均粒径2μm未満であるため、これらの粒子が溶解除去されても形成されるアンカーは浅くなり、また、除去される粒子は、相対的に粒子径の大きな粗粒子と相対的に粒子径の小さな微粒子の混合粒子であるから、形成される粗化面が複雑になるのである。
また、この場合、使用する粒子径は、粗粒子で平均粒径2μm未満であるため、粗化が進行しすぎて空隙を発生させることはなく、形成した層間樹脂絶縁層は層間絶縁性に優れている。
【0071】
上記粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであることが望ましい。
この範囲では、粗化面の深さは概ねRmax=3μm程度となり、セミアディテイブ法では、無電解めっき膜をエッチング除去しやすいだけではなく、無電解めっき膜下のPd触媒をも簡単に除去することができ、また、実用的なピール強度1.0〜1.3kg/cmを維持することができるからである。
【0072】
上記粗化面形成用樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、10重量%以下であることが望ましい。
粗化面形成用樹脂組成物の塗布を行う際には、ロールコータ、カーテンコータなどを使用することができる。
【0073】
(3) 上記(2) で形成した粗化面形成用樹脂組成物層を乾燥して半硬化状態とした後、バイアホール用開口を設ける。
粗化面形成用樹脂組成物層を乾燥させた状態では、導体回路パターン上の上記樹脂組成物層の厚さが薄く、大面積を持つプレーン層上の層間樹脂絶縁層の厚さが厚くなり、また導体回路と導体回路非形成部の凹凸に起因して、層間樹脂絶縁層に凹凸が発生していることが多いため、金属板や金属ロールを用い、加熱しながら押圧して、層間樹脂絶縁層の表面を平坦化することが望ましい。
【0074】
バイアホール用開口は、粗化面形成用樹脂組成物層に紫外線などを用いて露光した後現像処理を行うことにより形成する。また、露光現像処理を行う場合には、前述したバイアホール用開口に相当する部分に、黒円のパターンが描画されたフォトマスク(ガラス基板が好ましい)の黒円のパターンが描画された側を粗化面形成用樹脂組成物層に密着させた状態で載置し、露光、現像処理する。
【0075】
4)次に、粗化面形成用樹脂組成物層を硬化させて層間樹脂絶縁層とし、この層間樹脂絶縁層を粗化する。
粗化処理は、上記層間樹脂絶縁層の表面に存在する、無機粒子、樹脂粒子、金属粒子、ゴム粒子、液相樹脂、液相ゴムから選ばれる少なくとも1種の可溶性の物質を、上記した酸、酸化剤、アルカリなどの粗化液を用いて除去することにより行う。粗化面の深さは、1〜5μm程度が望ましい。
【0076】
(5) 次に、層間樹脂絶縁層を粗化した配線基板に触媒核を付与する。
触媒核の付与には、貴金属イオンや貴金属コロイドなどを用いることが望ましく、一般的には、塩化パラジウムやパラジウムコロイドを使用する。なお、触媒核を固定するために加熱処理を行うことが望ましい。このような触媒核としてはパラジウムが好ましい。
【0077】
(6) 次に、粗化面全面に無電解めっき膜を形成する。上記無電解めっき液としては、上述した本発明の無電解めっき液を用いる。
めっき液組成としては、例えば、NiSO4 (0.001〜0.003mol/l)、硫酸銅(0.02〜0.04mol/l)、酒石酸(0.08〜0.15mol/l)、水酸化ナトリウム(0.03〜0.08mol/l)、37%ホルムアルデヒド(0.03〜0.06mol/l)を含む水溶液が望ましい。無電解めっき膜の厚みは0.1〜5μmが望ましく、0.5〜3μmがより望ましい。
【0078】
(7) ついで、無電解めっき膜上に感光性樹脂フィルム(ドライフィルム)をラミネートし、めっきレジストパターンが描画されたフォトマスク(ガラス基板が好ましい)を感光性樹脂フィルムに密着させて載置し、露光、現像処理することにより、めっきレジストパターンを形成する。
【0079】
(8) 次に、めっきレジスト非形成部に電解めっきを施し、導体回路およびバイアホールを形成する。
ここで、上記電解めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましく、その厚みは、1〜20μmが望ましい。
【0080】
(9) さらに、めっきレジストを除去した後、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、塩化第二銅などのエッチング液で無電解めっき膜を溶解除去して、独立した導体回路とする。この場合、上記エッチングによりパラジウム触媒核も除去されているため、特にクロム酸などでパラジウム触媒核を溶解除去する必要はない。
(10)次に、導体回路の表面に粗化層または粗化面を形成する。
上記粗化層または粗化面の形成は、上記(1) において説明した方法を用いることにより行う。
【0081】
(11)次に、この基板上に、上記粗化面形成用樹脂組成物を用い、上述した方法と同様の方法により層間樹脂絶縁層を形成する。
【0082】
(12)次に、 (3)〜(10)の工程を繰り返してさらに上層の導体回路を設け、その上にはんだパッドとして機能する平板状の導体パッドやバイアホールなどを形成する。最後にソルダーレジスト層およびハンダバンプ等を形成することにより、多層プリント配線板の製造を終了する。なお、以下の方法は、セミアディティブ法によるものであるが、フルアディティブ法を採用してもよい。
【0083】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
A.粗化面形成用樹脂組成物の調製
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、分子量:2500)の25%アクリル化物をジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に溶解させた樹脂液34重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)2重量部、感光性モノマーであるカプロラクトン変成トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製、商品名:アロニックスM325)4重量部、光重合開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学社製)2重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部、感光性モノマー(日本化薬社製 KAYAMER PM−21)10重量部、および、エポキシ樹脂粒子( 三洋化成社製 ポリマーポール) の平均粒径1.0μmのもの15重量部と平均粒径0.5μmのもの10重量部を混合した後、N−メチルピロリドン(NMP)30.0重量部添加しながら混合し、ホモディスパー攪拌機で粘度7Pa・sに調整し、続いて3本ロールで混練して感光性の粗化面形成用樹脂組成物(層間樹脂絶縁材)を調製した。
【0084】
B.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ0.6mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図1(a)参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に下層導体回路4とスルーホール9を形成した。
【0085】
(2) スルーホール9および下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2 (40g/l)、Na3 PO4 (16g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(19g/l)、NaBH4 (5g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール9を含む下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図1(b)参照)。
【0086】
(3) ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含む樹脂充填剤10を、基板の片面にロールコータを用いて塗布することにより、下層導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、加熱乾燥させた後、他方の面についても同様に樹脂充填剤10を導体回路4間あるいはスルーホール9内に充填し、加熱乾燥させた(図1(c)参照)。
【0087】
(4) 上記(3) の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、100℃で1時間、120℃で3時間、150℃で1時間、180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填剤10を硬化した。
【0088】
このようにして、スルーホール9や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の表層部および下層導体回路4の表面を平坦化し、樹脂充填材10と下層導体回路4の側面4aとが粗化面を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面9aと樹脂充填材10とが粗化面を介して強固に密着した絶縁性基板を得た(図1(d)参照)。
【0089】
(5) 上記基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけて、下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面と内壁とをエッチングすることにより、下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図2(a)参照)。エッチング液として、イミダゾール銅 (II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部およびイオン交換水78重量部を混合したものを使用した。
さらに、この基板をホウふっ化スズ(0.1mol/l)−チオ尿素(1.0mol/l)を含む溶液からなる無電解スズ置換めっき浴に50℃で1時間浸漬し、上記粗化層の表面に厚さ0.3μmのスズ置換めっき層を設けた。ただし、このめっき層についは、図示しない。
【0090】
(6) 上記Aに記載の方法により調製した粗化面形成用樹脂組成物を、上記(5) の処理を終えた基板の両面に、ロールコータを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行い、厚さ60μmの粗化面形成用樹脂組成物層2を形成した(図2(b)参照)。さらに、この粗化面形成用樹脂組成物層2上に粘着剤を介してポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付した。
【0091】
(7) 上記(6) で粗化面形成用樹脂組成物層2を形成した基板1の両面に、遮光インクによって厚さ5μmの黒円が描画された厚さ5mmのソーダライムガラス基板を黒円が描画された側を粗化面形成用樹脂組成物層2に密着させ、超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 強度で露光した後、DMDG溶液でスプレー現像し、100μmの直径のバイアホール用開口6を形成した。この後、100℃で1時間、150℃で5時間の加熱処理を施し、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れたバイアホール用開口6を有する厚さ50μmの層間樹脂絶縁層2を形成した(図2(c)参照)。なお、バイアホールとなる開口には、粗化層を部分的に露出させた。
【0092】
(8) バイアホール用開口6を形成した基板を、クロム酸を含む溶液に2分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、層間樹脂絶縁層2の表面を粗面(深さ5μm)とし、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図2(d)参照)。
さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付着させた。
【0093】
(9) 次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ3μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図3(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003mol/l
酒石酸 0.20mol/l
硫酸銅 0.03mol/l
HCHO 0.05mol/l
NaOH 0.10mol/l
α、α’−ビピリジル 40 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.1 g/l
〔無電解めっき条件〕
33℃の液温度
上記工程を経た基板を縦に切断して、その断面を顕微鏡により観察した。図6は、形成された無電解銅めっき膜の厚さを表す模式的な部分拡大断面図である。
図6に示したように、層間樹脂絶縁層2の粗化面の凹部に形成された無電解銅めっき膜12は、粗化面の凸部に形成された無電解銅めっき膜12に比べて、その厚さが相対的に薄くなっている。そのために、後述するエッチング工程で、凹部のめっき膜をも完全に除去することができる。
【0094】
(10)市販の感光性ドライフィルムを無電解銅めっき膜12に熱圧着することにより貼り付け、クロム層によって、めっきレジスト非形成部分がマスクパターンとして描画された厚さ5mmのソーダライムガラス基板を、クロム層が形成された側を感光性ドライフィルムに密着させて、110mJ/cm2 で露光した後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト3を設けた(図3(b)参照)。
【0095】
(11)ついで、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜13を形成した(図3(c)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 180 g/l
硫酸銅 80 g/l
添加剤 1 ml/l
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1.2 A/dm2
時間 30 分
温度 室温
【0096】
(12)めっきレジスト3を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなる厚さ18μmの導体回路(バイアホール7を含む)5を形成した(図3(d)参照)。
【0097】
(13)上記 (5)〜(12)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の層間樹脂絶縁層と導体回路とを形成し、多層配線板を得た。但し、Sn置換は行わなかった(図4(a)〜図5(b)参照)。
(14)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量:4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)6.67重量部、同じくビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコートE−1001−B80)6.67重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマー(日本化薬社製 KAYAMER PM−21)6重量部、アクリル酸エステル重合物からなるレベリング剤(共栄化学社製、商品名:ポリフローNo.75)0.36重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調製し、この混合組成物に対して光重合開始剤としてイルガキュアI−907(チバガイギー社製)2.0重量部、光増感剤としてのDETX−S(日本化薬社製)0.2重量部、DMDG0.6重量部を加えることにより、粘度を25℃で1.4±0.3Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0098】
(15)次に、多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、クロム層によってソルダーレジスト開口部のパターンが描画された厚さ5mmのソーダライムガラス基板を、クロム層が描画された側をソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、200μmの直径の開口を形成した。
そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件で加熱処理してソルダーレジスト層を硬化させ、開口を有し、その厚さが20μmのソルダーレジスト層14を形成した。
【0099】
(16)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル(30g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10g/l)、クエン酸ナトリウム(10g/l)を含むpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(2g/l)、塩化アンモニウム(75g/l)、クエン酸ナトリウム(50g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10g/l)を含む無電解めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0100】
(17)この後、ソルダーレジスト層14の開口にはんだペーストを印刷して、200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)17を形成し、はんだバンプ17を有する多層配線プリント基板を製造した(図5(c)参照)。
【0101】
(比較例1)
無電解めっき液として下記のものを使用したほかは、実施例1と同様にして多層配線プリント基板を製造した。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 40 g/l
硫酸銅 10 g/l
HCHO 6 ml/l
NaOH 6 g/l
α、α’−ビピリジル 40 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.1 g/l
【0102】
このようにして製造した実施例1および比較例1のプリント配線板について、温度121℃、相対湿度100%、圧力2気圧で168時間放置し、電源層であるプレーン導体層(メッシュパターンでない)に膨れが発生するか否かを確認した。
【0103】
また、導体回路間の導体残りについては、(12)の工程を終了した後、その表面を顕微鏡で観察することにより、評価した。また、製造したプリント配線板をバイアホール部分で切断してバイアホールのつきまわり性を調べた。なお実施例1、比較例1とも導体回路間の樹脂表面をクロム酸で除去する処理は行っていない。評価結果を下記の表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
上記表1に示した結果より明らかなように、実施例1に係るプリント配線板では、膨れや導体残りが発生しておらず、バイアホールまわりのつきまわり性も良好であるのに対し、EDTAを使用した比較例1に係るプリント配線板は、膨れや導体残りが発生している。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように上記第一および第二の本発明の無電解めっき液によれば、酒石酸またはその塩を使用しているため、析出するめっき膜中への水素の取込み量が少なく、その結果めっき膜の応力が低減し、めっき膜および層間の剥離が生じにくい。また、めっき析出速度を従来に比べて低減させることができるので、微細なバイアホール用開口内にも充分な厚さのめっき膜を形成することができる。さらに、エッチングによりめっき膜を完全に除去することができる。
【0107】
また、第五〜第七の本発明のプリント配線板によれば、上記酒石酸を含む無電解めっき液を用いるので、粗化された樹脂絶縁層上に該樹脂絶縁層との密着性に優れ、剥離しにくい無電解めっき膜が形成され、バイアホール内にも充分な厚みを有する無電解めっき膜が形成されているため、信頼性に優れたプリント配線板を提供することができる。
【0108】
また、第八の本発明のプリント配線板によれば、上記酒石酸、銅イオンおよびニッケルイオン等を含む無電解めっき液を用いるので、粗化された樹脂絶縁層上に該樹脂絶縁層との密着性に優れ、硬度が高く、かつ、樹脂絶縁層との密着性に優れためっき膜が形成されているため、信頼性に優れたプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、本発明のプリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明のプリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明のプリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明のプリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明のプリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の方法により形成した無電解めっき膜の厚さを模式的に表す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 層間樹脂絶縁層(無電解めっき用接着剤層)
4 下層導体回路
4a 粗化面
5 上層導体回路
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
9a 粗化面
10 樹脂充填材
12 無電解銅めっき膜
13 電気銅めっき膜
14 ソルダーレジスト層(有機樹脂絶縁層)
15 ニッケルめっき膜
16 金めっき膜
17 ハンダバンプ
Claims (6)
- 粗化面が形成された樹脂絶縁基板上に少なくとも無電解めっき膜からなる導体回路が形成されたプリント配線板の製造方法であって、
0.025〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、0.03〜0.15mol/lの還元剤、0.02〜0.06mol/lの銅イオン、および、0.05〜0.3mol/lの酒石酸もしくはその塩、ならびに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを0.01〜0.05重量%の濃度で含む水溶液からなる無電解めっき液を調製する工程と、
前記無電解めっき液の温度が25〜40℃、前記無電解めっき液の銅の析出速度が1〜2μm/時間の条件で、前記無電解めっき液に浸漬した前記樹脂絶縁基板上に無電解銅めっきを行って、前記無電解めっき膜を形成する工程とを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。 - 請求項1に記載のプリント配線板の製造方法により得られるプリント配線板であって、
前記無電解めっき膜は、0〜+10kg/mm2の応力を有することを特徴とするプリント配線板。 - 前記無電解めっき膜は、粗化面に追従して形成されてなるとともに、粗化面の凸部では、粗化面の凹部に比べて無電解めっき膜の厚さが相対的に厚くなっている請求項2に記載のプリント配線板。
- 下層導体回路が形成された基板上に層間樹脂絶縁層を介して上層導体回路が形成され、前記下層導体回路と上層導体回路がバイアホールを介して接続されたプリント配線板において、
前記上層導体回路は少なくとも無電解めっき膜からなり、前記層間樹脂絶縁層には粗化面が形成され、前記無電解めっき膜は、粗化面に追従して形成されてなるとともに、バイアホール底部にも前記層間樹脂絶縁層上に形成された無電解めっき膜の50〜100%の厚みの無電解めっき膜が形成されており、
前記無電解めっき膜は、0.025〜0.25mol/lのアルカリ性化合物、0.03〜0.15mol/lの還元剤、0.02〜0.06mol/lの銅イオン、および、0.05〜0.3mol/lの酒石酸もしくはその塩、ならびに、ニッケルイオン、コバルトイオンおよび鉄イオンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを0.01〜0.05重量%の濃度で含む水溶液からなる無電解めっき液を用いて、前記無電解めっき液の温度が25〜40℃、前記無電解めっき液の銅の析出速度が1〜2μm/時間の条件で、前記層間樹脂絶縁層上に無電解銅めっきを行うことにより形成されていることを特徴とするプリント配線板。 - 前記無電解めっき膜は、ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属ならびに銅からなる請求項2〜4のいずれか1に記載のプリント配線板。
- 前記ニッケル、鉄およびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の無電解めっき膜中の含有量は、0.1〜0.5重量%である請求項5に記載のプリント配線板。
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