JP3626022B2 - 多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板の製造方法に関し、特に粗化めっきであるCu−Ni−P合金めっき層の未析出または異常析出を防止することができる多層プリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多層配線板の高密度化の要請から、いわゆる多層ビルドアップ配線基板と呼ばれる多層プリント配線板が注目されている。
この多層ビルドアップ配線基板は、コアと呼ばれる100〜1000μm程度のガラスクロス等で補強された樹脂基板の上に、銅等による配線層と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、コアを挟んだ配線層同士はスルーホールにより、また、層間樹脂絶縁層を挟んだ配線層はバイアホールにより、それぞれ電気的に接続されて構成されている。
【0003】
この多層ビルドアップ配線基板を製造する際には、例えば、特開平6−283860号公報に開示された方法を用いる。即ち、まず、基板上に形成された内層導体回路表面に無電解めっきによりCu−Ni−Pからなる針状合金の粗化層を設け、ついで、この粗化層の上に層間樹脂絶縁層を形成した後、この層間樹脂絶縁層にバイアホール形成用の開孔を設ける。
【0004】
その後、この基板にめっき処理を施し、開孔に導体を充填するとともに、層間樹脂絶縁層上に外層導体回路を形成する。さらに、このような導体回路の形成と層間樹脂絶縁層の形成とを繰り返すことにより多層化が図られる。
【0005】
このような特開平6−283860号公報に開示された方法によれば、多層ビルドアップ配線基板では、導体回路上に形成されたCu−Ni−Pからなる針状合金により、該導体回路とその上に形成される層間樹脂絶縁層との密着性を確保することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このCu−Ni−Pからなる針状合金めっき処理を行う際には、導体回路が形成された基板を、銅イオン、ニッケルイオン、錯化剤、次亜リン酸イオン等を含むめっき液に浸漬し、導体回路表面に針状めっきを析出させるのであるが、このような操作を行ってもめっき反応が進行しない場合(未析出)があり、逆に、反応が進行しすぎて導体回路以外の部分に針状めっきが析出する場合(異常析出)もあり、再現性のある結果を得ることができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、導体回路が形成された基板にCu−Ni−Pからなる針状合金めっき処理を行う際、異常析出や未析出を防止し、Cu−Ni−Pからなる針状合金めっき層を良好に形成することができる多層プリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0008】
発明者は、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、異常析出および未析出の原因が、めっき液中の溶存酸素濃度にあることを知見した。即ち、めっき液中の溶存酸素濃度が高いほどめっき反応が進行しにくくなり、一方、めっき液中の溶存酸素濃度が低くなるに従って、めっき反応が進行しやすくなる。通常、65〜75℃のめっき液は、液攪拌を目的として、空気バブリングされるため、めっき液中の溶存酸素濃度は3ppm以上と高く、導体回路が形成された基板をめっき液に浸漬しても、めっき反応は進行しにくい。また、めっき反応が進行するに伴って、発生する水素とめっき液中の酸素とが反応して液中の酸素濃度が減少し、そのため、異常析出現象が生じてしまう。以上の結果に基づいて、発明者が想到した発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1) 導体回路が設けられた基板上に、層間樹脂絶縁層と新たな導体回路とを順次積層形成し、多層化する多層プリント配線板の製造方法であって、前記導体回路が形成された基板を、0.007〜0.160mol/lの銅イオン、0.001〜0.023mol/lのニッケルイオン、錯化剤、次亜リン酸塩および界面活性剤を含む水溶液に浸漬し、その溶存酸素濃度を1.5〜2.5ppmに調整して前記導体回路上にCu−Ni−Pからなる針状または多孔質状の粗化層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。
【0009】
本発明は、基板上に内層導体回路または外層導体回路を形成した後、前記導体回路が形成された基板を、0.007〜0.160mol/lの銅イオン、0.001〜0.023mol/lのニッケルイオン、錯化剤、次亜リン酸塩および界面活性剤を含む水溶液に浸漬し、その溶存酸素濃度を1.5〜2.5ppmに調整して前記導体回路上にCu−Ni−Pからなる針状または多孔質状の粗化層を形成することに特徴がある。このような本発明の構成によれば、めっき液中の溶存酸素濃度を1.5〜2.5ppmに調整しているため、初期の溶存酸素濃度が低く、上記導体回路上への未析出がない。また、めっき反応が進行しても溶存酸素濃度を一定の範囲に保持しているため、異常析出を防止することができる。溶存酸素濃度は、不活性ガスのバブリングにより減り、逆に空気のバブリングにより高くなる。そこで、不活性ガスまたは空気のバブリングを行うことにより、溶存酸素濃度を調整する。溶存酸素濃度の測定は、Orbisphere Laboratories Japan社製の酸素計 3600により行う。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等を使用することができる。
【0010】
Cu−Ni−Pからなる針状合金の粗化層は、その全体の厚みが1〜7μmであるのが望ましい。
上記厚みにした場合、層間樹脂絶縁層の間隔、および、導体回路の間隔を従来の多層プリント配線板に比べて小さく設定することができ、多層プリント配線板の高密度化及び軽量化を図ることができるからである。
【0011】
Cu−Ni−Pからなる合金の粗化層の形状は、針状または多孔質状である。上記粗化層をめっき処理により形成する際、上記粗化層の形状は、界面活性剤の種類等により変化するが、針状または多孔質状の粗化層を形成できる条件を選択する必要がある。
【0012】
また、上記Cu−Ni−Pからなる合金の粗化層の表面には、イオン化傾向が銅よりも大きく、かつ、チタン以下である金属、または、貴金属からなる被覆層が形成されていることが望ましい。また、この粗化層被覆層の厚さは、0.1〜2μmが好ましい。
これらの金属の被覆層が形成されることにより、電解質溶液と粗化層との直接の接触を防止することができる。
【0013】
イオン化傾向が銅より大きく、かつ、チタン以下である金属としては、例えば、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス等が挙げられ、これらのなかでは、スズ、ニッケル、コバルト、鉄、鉛等が、緻密な酸化膜を形成することができるので有利である。また、上記貴金属としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム等が挙げられる。従って、上記粗化層被覆層には、上記金属および上記貴金属から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの金属および貴金属のうちでは、特にスズが好ましい。スズは、無電解置換めっきにより薄い層を形成でき、粗化層の凹凸に沿って析出形成できるからである。
上記金属としてスズを用いる場合には、ホウフッ化スズ−チオ尿素液または塩化スズ−チオ尿素液を使用する。この場合、Cu−Snの置換反応により0.1〜2μm程度のSn層が形成される。また、貴金属を用いる場合には、スパッタや蒸着などの方法を採用することができる。
【0014】
次に、本発明において、導体回路の表面にCu−Ni−Pからなる合金のめっき層を析出成長させ、粗化層を形成するためのめっき方法について説明する。
本発明では、内層導体回路または外層導体回路が形成された基板を、錯化剤、銅化合物、ニッケル化合物、次亜リン酸塩、アセチレン含有ポリオキシエチレン系界面活性剤からなるめっき水溶液中に浸漬し、基板に振動または揺動を与える方法により、または、金属イオンを供給せしめることにより、Cu−Ni−Pからなる多孔質または針状の合金を析出成長させ、合金の粗化層を形成する。なお、めっき水溶液は、銅イオン濃度、ニッケルイオン濃度、次亜リン酸イオン濃度、錯化剤濃度が、それぞれ0.007〜0.160mol/l、0.001〜0.023mol/l、0.1〜1.0mol/l、0.01〜0.2mol/lとなるように調整しておくことが望ましい。また、界面活性剤の濃度は、0.01〜10g/lとなるように調整しておくのが望ましい。
【0015】
上記錯化剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、EDTA、クワドロール、グリシン等が挙げられる。
アセチレン含有ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、下記の(1)、(2)式のような構造を有するものを使用することが最適である。このような界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール等のアルキンジオール等が挙げられる。これらの市販品としては、例えば、日信化学工業社製のサーフィノール104(多孔質状)、同440、同465、同485(いずれも針状)等が挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
(上記(1)式中、m、nは、その和が3〜30となる整数を表し、上記(2)式中、R1 およびR2 はアルキル基、R3 およびR4 は水素原子または低級アルキル基を表す。)
このような無電解めっき液から析出するCu−Ni−P合金は、その表面は、針状あるいは多孔質状になる。多孔質合金の場合は、その微孔の数は、1cm2 当たり100,000〜1,000,000の範囲内にあり、一般には、3,000,000〜300,000,000の範囲に含まれるものである。また、その微孔の径は、0.01〜100μmの範囲内、一般には0.1〜10μmの範囲に含まれるものである。
【0018】
本発明では、上記導体回路上に形成する層間樹脂絶縁層として無電解めっき用接着剤を用いることが望ましい。この無電解めっき用接着剤は、硬化処理された酸または酸化剤に可溶性の耐熱性樹脂粒子が、酸あるいは酸化剤に難溶性の未硬化の耐熱性樹脂中に分散されてなるものが最適である。酸あるいは酸化剤の溶液で処理することにより、耐熱性樹脂粒子が溶解除去されて、この接着剤層の表面に蛸つぼ状のアンカーからなる粗化面を形成できるからである。
【0019】
上記無電解めっき用接着剤において、特に硬化処理された上記耐熱性樹脂粒子としては、1)平均粒径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、2)平均粒子径が相対的に大きな粒子と平均粒子径が相対的に小さな粒子を混合した粒子が望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成できるからである。
使用できる耐熱性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との複合体等が挙げられる。複合させる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)等が挙げられる。また、酸や酸化剤の溶液に溶解する耐熱性樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂(特にアミン系硬化剤で硬化させたエポキシ樹脂がよい)、アミノ樹脂等が挙げられる。
また、本発明で使用されるソルダーレジストとしては、例えば、エポキシ樹脂アクリレートおよびイミダゾール硬化剤からなるものが挙げられる。
【0020】
次に、本発明の多層プリント配線板を製造する一方法について説明する。
(1) まず、コア基板の表面に内層銅パターン(内層導体回路)を形成した配線基板を作製する。
このコア基板への内層導体回路の形成は、銅貼積層板をエッチングすることにより行うか、または、以下の方法により行う。即ち、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、セラミック基板、金属基板等の基板上に無電解めっき用接着剤の層を形成し、続いて、この接着剤層表面を粗化した後、電解めっきにより導体層を形成し、この導体層をエッチングして内層導体回路を形成する。
【0021】
なお、コア基板には、スルーホールが形成され、このスルーホールを介して表面と裏面の配線層が電気的に接続される。
また、スルーホールおよびコア基板の内層導体回路間には樹脂が充填され、平滑性が確保されていてもよい。
特に本発明では、コア基板の内層導体回路表面、スルーホールのランド表面に、前述した方法により多孔質または針状のCu−Ni−Pからなる合金の粗化層を形成する。
即ち、めっき液の溶存酸素濃度を1.5〜2.5ppmに調整した後、内層導体回路が形成された基板をめっき液に浸漬し、上記内層導体回路の上にCu−Ni−Pからなる合金の粗化層を形成する。
なお、この粗化層の表面に、イオン化傾向が銅よりも大きく、かつ、チタン以下である金属、または、貴金属からなる被覆層を形成してもよい。
【0022】
(2) 次に、上記(1) で作製した配線基板の上に、層間樹脂絶縁層を形成する。特に本発明では、層間樹脂絶縁層の材料として前述した無電解めっき用接着剤を用いることが望ましい。
(3) 形成した無電解めっき用接着剤層を乾燥した後、必要に応じてバイアホール形成用の開孔を設ける。感光性樹脂の場合は、露光、現像してから熱硬化することにより、また、熱硬化性樹脂の場合は、熱硬化したのちレーザー加工することにより、上記層間樹脂絶縁層にバイアホール形成用の開孔を設ける。
【0023】
(4) 次に、硬化した上記無電解めっき用接着剤層(層間樹脂絶縁層)の表面に存在する酸や酸化剤に可溶性の樹脂粒子を酸または酸化剤によって溶解除去し、無電解めっき用接着剤層の表面を粗化する。
ここで、上記酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸等の鉱酸;蟻酸、酢酸等の有機酸等が挙げられるが、特に有機酸を用いることが望ましい。有機酸を用いると、粗化処理の際、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。
一方、上記酸化剤としては、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)の水溶液を用いることが望ましい。
【0024】
(5) 次に、層間樹脂絶縁層表面を粗化した配線基板に触媒核を付与する。
触媒核の付与には、貴金属イオンや貴金属コロイド等を用いることが望ましく、一般的には、塩化パラジウムやパラジウムコロイドを使用する。なお、触媒核を固定するために加熱処理を行うことが望ましい。このような触媒核としてはパラジウムが好ましい。
【0025】
(6) 次に、触媒核を付与した層間樹脂絶縁層の表面に無電解めっきを施し、粗化面全面に無電解めっき膜を形成する。無電解めっき膜の厚みは、0.5〜5μmが好ましい。
次に、無電解めっき膜上にめっきレジストを形成する。
【0026】
(7) 次に、めっきレジスト非形成部に5〜20μmの厚みの電気めっきを施し、外層導体回路およびバイアホールを形成する。
また、電気めっき後に、エッチングレジストとして、ニッケル、スズ、コバルト、貴金属から選ばれる少なくとも1種以上の金属層を形成してもよい。
これらの金属層上には、Cu−Ni−Pからなる合金めっきが析出しやすいからである。また、これらの金属層はメタルレジストとして作用するため、この後のエッチング工程でも過剰エッチングを防止するという効果を奏する。
ここで、上記電気めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましい。
さらに、めっきレジストを除去した後、そのめっきレジストの下に存在していた無電解めっき膜を、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶液からなるエッチング液で溶解除去し、独立した外層導体回路とする。
【0027】
(8) ついで、(1) の場合と同様に、めっき液の溶存酸素濃度を1.5〜2.5ppmに調整した後、外層導体回路が形成された基板をめっき液に浸漬し、上記外層導体回路の上に多孔質なCu−Ni−Pからなる合金の粗化層を形成する。
この粗化層の表面に、イオン化傾向が銅よりも大きく、かつ、チタン以下である金属、または、貴金属からなる被覆層を形成してもよい。
【0028】
(9) 次に、この基板上に層間樹脂絶縁層として、無電解めっき用接着剤の層を形成する。
(10)さらに、上記 (3)〜(8) の工程を繰り返して上層の外層導体回路を設け、片面3層の6層両面多層プリント配線板を得る。
【0029】
なお、以上の説明は、セミアディティブ法と呼ばれる方法によりプリント配線板を製造する例であるが、無電解めっき用接着剤層を粗化した後、触媒核を付与し、めっきレジストを設けて、無電解めっきを行い導体回路を形成する、いわゆるフルアディティブ法にも適用することが可能である。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
A.無電解めっき用接着剤の調製
1)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、分子量:2500)の25%アクリル化物35重量部、感光性モノマー(東亜合成社製、アロニックスM325)3.15重量部、消泡剤0.5重量部およびN−メチルピロリドン(NMP)3.6重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
【0031】
2)ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成社製、ポリマーポール)の平均粒径1.0μmのもの7.2重量部および平均粒径0.5μmのもの3.09重量部を別の容器にとり、攪拌混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合し、別の混合組成物を調製した。
【0032】
3)イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)2重量部、光重合開始剤であるベンゾフェノン2重量部、光増感剤であるミヒラーケトン0.2重量部およびNMP1.5重量部をさらに別の容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
そして、1)、2)および3)で調製した混合組成物を混合することにより無電解めっき用接着剤を得た。
【0033】
B.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅貼積層板を出発材料とした(図1(a)参照)。まず、この銅貼積層板をドリル削孔し、続いてめっきレジストを形成した後、この基板に無電解銅めっき処理を施してスルーホール9を形成し、さらに、銅箔を常法に従いパターン状にエッチングすることにより、基板の両面に内層銅パターン(内層導体回路)4を形成した。
【0034】
内層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2 (40g/l)、Na3 PO4 (6g/l)の水溶液を酸化浴(黒化浴)とする酸化浴処理を行い、そのスルーホール9を含む内層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図1(b)参照)。
【0035】
(2) エポキシ樹脂を主成分とする樹脂充填剤10を、基板の両面に印刷機を用いて塗布することにより、内層導体回路4間またはスルーホール9内に充填し、加熱乾燥を行った。即ち、この工程により、樹脂充填剤10が内層導体回路4の間あるいはスルーホール9内に充填される(図1(c)参照)。
【0036】
(3) 上記(2) の処理を終えた基板の片面を、ベルト研磨紙(三共理化学社製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層導体回路4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、ついで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。そして、充填した樹脂充填剤10を加熱硬化させた(図1(d)参照)。
【0037】
このようにして、スルーホール9等に充填された樹脂充填剤10の表層部および内層導体回路4上面の粗化層4aを除去して基板両面を平滑化し、樹脂充填剤10と内層導体回路4の側面とが粗化面4aを介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面と樹脂充填剤10とが粗化面9aを介して強固に密着した配線基板を得た。
【0038】
(4) さらに、露出した内層導体回路4およびスルーホール9のランド上面に厚さ2μmのCu−Ni−Pからなる多孔質な合金の粗化層11を形成し、さらにこの粗化層11の表面に厚さ0.3μmのSn層を設けた(図2(a)参照)。但し、Sn層については図示しない。
【0039】
その粗化層11の形成方法は以下のようである。即ち、基板をアルカリ脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸とからなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した。
次に、硫酸銅(3.2×10−2mol/l)、硫酸ニッケル(2.4×10−3mol/l)、クエン酸(5.2×10−2mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.7×10−1 mol/l)、ホウ酸(5.0×10−1 mol/l)、界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(1.0g/l)の水溶液からなるpH=9で液温が70℃の無電解銅めっき浴に、液攪拌を兼ねて窒素ガスをバブリングさせ、めっき液中の溶存酸素濃度を2.1ppmに低下させた。
バブリングを終了してから1分後、触媒を活性化させた基板をバブリング処理を施しためっき液浸漬し、続いて、基板を浸漬した30秒後に、空気のバブリングを開始し、めっき液中の溶存酸素濃度を1.9〜2.1ppmに調整した。
溶存酸素濃度の測定は、Orbisphere Laboratories Japan社製の酸素計 3600により行った。
上記めっき処理により、内層導体回路4およびスル−ホ−ル9のランドの表面のニッケル層上に、厚さ5μmのCu−Ni−Pからなる針状合金の粗化層11を設けた。
【0040】
(5) 基板の両面に、上記Aにおいて記載した組成の無電解めっき用接着剤をロールコータを用いて2回塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥を行った(図2(b)参照)。
【0041】
(6) 上記(5) で無電解めっき用接着剤の層を形成した基板の両面に、直径85μmの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cm2 強度で露光した。これをジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)溶液でスプレー現像することにより、その接着剤の層に直径85μmのバイアホール形成用開孔6を形成した。さらに、当該基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 で露光し、100℃で1時間、その後150℃で5時間の加熱処理を行うことにより、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた開孔(バイアホール形成用開孔6)を有する厚さ18μmの層間樹脂絶縁層2(2a、2b)を形成した(図2(c)参照)。
【0042】
(7) バイアホール形成用開孔6を形成した基板を、クロム酸水溶液(700g/l)に73℃で20分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去してその表面を粗化し、粗化面を得た。その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした(図2(d)参照)。
さらに、粗面化処理した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック社製)を付与することにより、層間絶縁材層2の表面およびバイアホール用開孔6の内壁面に触媒核を付着させた。
【0043】
(8) 次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.8μmの無電解銅めっき膜12を形成した(図3(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 60 g/l
硫酸銅 10 g/l
HCHO 6 ml/l
NaOH 10 g/l
α、α’−ビピリジル 80 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.1 g/l
〔無電解めっき条件〕
60℃の液温度で20分
【0044】
(9) 市販の感光性ドライフィルムを無電解銅めっき膜12に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、めっきレジスト3を設けた(図3(b)参照)。
【0045】
(10)ついで、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ13μmの電気銅めっき膜13を形成した(図3(c)参照)。
【0046】
(11)めっきレジスト3を5%KOH水溶液で剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなるL/S=28/28で厚さ11μmの外層導体回路5(バイアホール7を含む)を形成した。
【0047】
(12)外層導体回路5を形成した基板に対し、上記(4) と同様の処理を行い、外層導体回路5の表面に厚さ2μmのCu−Ni−Pからなる合金の粗化層11を形成した(図3(d)参照)。
【0048】
(13)上記 (5)〜(12)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の外層導体回路5および粗化層11を形成し、最後に開孔を有するソルダーレジスト層14の形成、ニッケルめっき膜15および金めっき膜16の形成を行った後、はんだバンプ17を形成し、はんだバンプ17を有する多層プリント配線板を得た(図4(a)〜図5(c)参照)。
【0049】
(比較例1)
上記実施例1における(4) のCu−Ni−Pからなる合金の粗化層を設ける工程において、以下のような条件でめっきを行ったほかは、実施例1と同様にして多層プリント配線板を得た。
すなわち、基板をめっき液に浸漬する前に、めっき液に空気のバブリングを行った。このとき、めっき液の溶存酸素濃度は、3.4ppmであった。空気バブリングを止めた後、基板をめっき液に浸漬してめっき処理を行った。このとき、めっき時間とともに、めっき液中の溶存酸素濃度は、3.4ppmから0.6ppmへ低下した。なお、(4) の工程におけるその他の条件は、(4) に記載した条件と同様である。
【0050】
上記実施例1および比較例1で得られた100枚の多層プリント配線板について、断面を光学顕微鏡で観察して、Cu−Ni−P合金からなる粗化層の未析出および異常析出を検査した。
その結果、実施例1では、未析出および異常析出は観察されなかったが、比較例1では、37%の多層プリント配線板に未析出が観察され、55%の多層プリント配線板に、異常析出が観察された。
【0051】
【発明の効果】
以上説明のように本発明の構成からなる多層プリント配線板によれば、導体回路にCu−Ni−Pからなる針状合金のめっき処理を施す際、めっきの未析出や異常析出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 層間樹脂絶縁層(無電解めっき用接着剤層)
3 めっきレジスト
4 内層導体回路(内層銅パターン)
4a 粗化面
5 外層導体回路
6 バイアホール形成用開孔
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
9a 粗化面
10 樹脂充填剤
11 粗化層
12 無電解めっき膜
13 電解めっき膜
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき膜
16 金めっき膜
17 はんだバンプ
Claims (1)
- 導体回路が設けられた基板上に、層間樹脂絶縁層と新たな導体回路とを順次積層形成し、多層化する多層プリント配線板の製造方法であって、前記導体回路が形成された基板を、0.007〜0.160mol/lの銅イオン、0.001〜0.023mol/lのニッケルイオン、錯化剤、次亜リン酸塩および界面活性剤を含む水溶液に浸漬し、その溶存酸素濃度を1.5〜2.5ppmに調整して前記導体回路上にCu−Ni−Pからなる針状または多孔質状の粗化層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
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