JP4236159B2 - 歩行型電動管理機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は歩行型電動管理機の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な歩行型管理機は、動力源から耕耘軸へ動力を伝達することで、耕耘軸に備えた耕耘爪の回転により耕耘し、さらに耕耘爪にて走行する耕耘機であり、フロントタイン式管理機と言われている。このようなフロントタイン式管理機において、操作性を高めて作業者の負担を軽くするとともに作業環境を高めるために、動力源をエンジンから電動モータに変更した形式の、管理機の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特許第3182930号公報(第2頁、図1−図2、図6)
【0004】
特許文献1による従来の技術の概要を、図16で詳しく説明する。
図16(a)〜(c)は従来の歩行型電動管理機の概要図(その1)であり、特許第3182930号公報の図1、図2及び図6をまとめて再掲する。なお、符号は振り直した。(a)は歩行型電動管理機300を側方から見た断面構成を表し、(b)は歩行型電動管理機300の平面構成を表し、(c)は操作ハンドル306周りの平面構成を表す。
【0005】
従来の歩行型電動管理機300は、機体301の下部に耕耘軸302を取付け、この耕耘軸302に耕耘爪303を取付け、機体301の上部にモータ軸が横向きの電動モータ304を取付け、機体301の後部にバッテリ305を取付け、機体301から後方へ操作ハンドル306を延ばし、この操作ハンドル306のうち、上部中央部にメインスイッチ311、ランプ312並びにバッテリ残量計313を取付け、左グリップ314の近傍に正転スイッチ315を取付け、右グリップ316の近傍に逆転スイッチ317を取付け、これらの電気部品304,305,311〜313,315,317同士をワイヤハーネス(電線)318にて接続した耕耘機である。
電動モータ304は、正転スイッチ315を操作したときに正転するとともに、逆転スイッチ317を操作したときに逆転する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで歩行型電動管理機300は、耕耘爪303で耕耘するときの耕耘反力に応じて、機体301に上向き力を受ける。この上向き力は、畑などの農耕地の硬さによって異なるとともに、耕耘爪303の回転速度にほぼ比例すると考えられる。
【0007】
歩行型電動管理機300には、上向き力によって耕耘爪303が上方へ跳び上がる、いわゆるダッシング現象(跳び上がり現象とも言う。)が発生し得る。歩行型電動管理機300の自重が上向き力よりも十分に大きい場合には、耕耘爪303が土中へ十分に喰い込むことにより、ダッシング現象を抑制できるので、耕耘性能を十分に発揮することができる。一方、歩行型電動管理機300の自重に対して、上向き力がはるかに大きい場合には、ダッシング現象の影響が大きい。
【0008】
ダッシング現象が生じると、歩行型電動管理機300の直進走行性が低下するとともに、耕耘性能を十分に確保することができず、耕耘仕上り性も劣る。しかも、歩行型電動管理機300を操縦する作業者の負担が大きい。
【0009】
さらには、一箇所の農耕地であっても硬さは不均一であり、大幅に異なる場合もある。特に、耕耘爪303を高速回転させて硬い農耕地を耕耘した場合には、耕耘反力が大きいので、ダッシング現象の影響が大きい。ダッシング現象を抑制するためには、硬さの変化に応じて、その度に耕耘爪303の回転速度を切換え操作することになる。これでは、作業者の負担が大きいとともに、熟練を要するので、改良の余地がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、歩行型電動管理機において、ダッシング現象の発生をより抑制することができるとともに、耕耘性能をより高めることができ、しかも、作業者の負担を軽減することができる技術を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、機体の上部に電動モータを取付け、機体の下部に耕耘軸を介して耕耘爪を取付け、機体から後方へ操作ハンドルを延ばすことで、電動モータの動力を耕耘軸に伝達し、この耕耘軸に取付けた耕耘爪で耕耘作業を行わせるようにした歩行型電動管理機において、
この歩行型電動管理機は、電動モータの実速度を検出する速度検出部と、電動モータの設定速度を調節する速度調節操作部と、設定速度に予め設定された一定の上乗せ速度を加えたダッシングしきい値に対して実速度が超えたという条件を達成したときに、ダッシング現象が発生したと判断し、設定速度を一定値だけ減少させるように制御する制御部と、を備え、
制御部は、ダッシングしきい値に対して実速度が最初に超えた時点から、一定の基準時間が経過するまでに、ダッシングしきい値に対して実速度が超えた回数が、一定の基準回数に達したときに、ダッシング現象が発生したと判断する構成である、ことを特徴とする。
請求項2は、請求項1において、速度調節操作部は、設定速度を複数の段階に切り換え操作するものであり、制御部は、ダッシング現象が発生したと判断したときに、設定されている前記設定速度を1段階下げるように制御する構成である、ことを特徴とする。
【0012】
電動モータの実速度を検出する速度検出部と、電動モータの設定速度を調節する速度調節操作部と、設定速度に予め設定された一定の上乗せ速度を加えたダッシングしきい値に対して実速度が超えたという条件を達成したときに、ダッシング現象が発生したと判断し、設定速度を一定値だけ減少させるように制御する制御部とを備えたので、ダッシングしきい値に対して実速度が超えたときに、ダッシング現象が発生したと判断して、電動モータの設定速度を一定値だけ減少させる(減速制御する)ことができる。
【0013】
機体に受ける上向き力の大きさは、耕耘爪の回転速度にほぼ比例すると考えられる。このため、農耕地を耕耘している最中にダッシング現象が発生したときには、その時点の耕耘爪の回転速度が大き過ぎることを、制御部が自動的に判断するようにした。ダッシング現象が発生した時点で、耕耘爪を駆動する電動モータの実速度を、自動的に一定値だけ速やかに減少させることができる。この結果、機体に受ける上向き力を低減することができるので、ダッシング現象をより抑制することができる。
【0014】
ダッシング現象をより抑制することにより、歩行型電動管理機の蛇行を抑制することができるので、直進走行性を高めるとともに操縦性を高めることができる。このため、作業者の負担を軽減することができる。さらには、ダッシング現象を自動的に抑制するので、作業者は農耕地の硬さに注意を払う必要がない。作業に熟練を要しないので、初心者であっても比較的容易に耕耘作業をすることができる。しかも、耕耘性能をより高めるとともに、耕耘仕上り性をも高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は歩行型電動管理機(歩行型電動作業機)の作業者から見た方向に従う。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0016】
図1は本発明に係る歩行型電動管理機の斜視図である。歩行型電動管理機10は、動力源としての電動モータ11の動力を耕耘軸12に伝達することで、この耕耘軸12に取付けた作業負荷としての複数の耕耘爪13・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)で耕耘作業を行わせるとともに、耕耘爪13・・・にて走行させるようにし、さらに、耕耘爪13・・・の上をフェンダ14で覆うとともに、フェンダ14の上に上部カバー15を被せた、自走式の歩行型電動作業機であり、フロントタイン式管理機(耕耘機)と称する。耕耘軸12は、機体幅方向へ水平に延びた回転軸である。フェンダ14は土砂飛散防止カバーである。
【0017】
図2は本発明に係る歩行型電動管理機の左側面図である。歩行型電動管理機10は、上部カバー15の上端部に設けたキャリアハンドル16を片手で掴んで持ち運ぶことが可能な、極めて小型の管理機であり、機体17から後方へ(より具体的には、機体17の後部から後上方へ)延びる操作ハンドル18、及び、機体17の後下部から下方へ延びる抵抗棒19を備える。
【0018】
操作ハンドル18は長手中央部にスライド機構18aを備える。スライド機構18aのロックを外して、操作ハンドル18の上半部を上下にスライドさせることで、グリップ70,80の高さを作業者の身長や好みに合わせて設定することができる。
作業者は、操作ハンドル18を操縦しつつ、走行する歩行型電動管理機10の後から連れ歩きながら作業をすることができる。
抵抗棒19は、土中に差込んで耕耘爪13・・・による耕深量を設定するとともに、耕耘爪13・・・の牽引力に対する抵抗力を付加する棒である。
【0019】
なお、想像線にて示す洗浄ボックス111に、機体17の下半部並びに耕耘爪13・・・を入れることで、耕耘軸12(図1参照)や耕耘爪13・・・を洗浄することができる。この場合には、上を開放した洗浄ボックス111にフェンダ14を被せてセットすることになる。
【0020】
図3は本発明に係る歩行型電動管理機の平面図であり、上部カバー15の後上部に、コントロールボックス20を取付けたことを示す。
コントロールボックス20は、機体幅中心CLの表示部21と左側の洗浄スイッチ22と右側の充電ソケット23とを備える。操作ハンドル18は、機体17(図1参照)の後方へ延びる途中から左右に分かれ、それらの左右端に左のグリップメンバ70並びに右のグリップメンバ80を取付けた、平面視略Y字状のハンドルである。左右のグリップメンバ(把持部)70,80の詳細については後述する。
【0021】
図4は本発明に係る歩行型電動管理機の上部カバーを外した平面図であり、車幅中央CLに電動モータ11を配置するとともに、複数のバッテリ31・・・を電動モータ11の周囲に且つ電動モータ11に隣接させて分散させて配置したことを示す。
このように複数のバッテリ31・・・を、電動モータ11の周囲に且つ機体幅中心CLに対して左右対称に配置することで、平面視略矩形状のフェンダ14のほぼ全面にわたって配列することができる。
【0022】
より具体的に説明すると、複数のバッテリ31・・・は機幅方向に(左右に)4列に配列したものであって、電動モータ11の左側の第1列32、第1列32の右隣で電動モータ11の前側の第2列33、第2列33の右隣で電動モータ11の前側の第3列34、第3列34の右隣で電動モータ11の右側の第4列35の順に整列している。このようにして、複数のバッテリ31・・・を電動モータ11の左右並びに前側に配列することができる。
なお、この図でコントロールボックス20については、理解を容易にするために開示した。
【0023】
図5は本発明に係る歩行型電動管理機のフェンダ、上カバー、電動モータ並びにバッテリ周りの分解図であり、複数のバッテリ31・・・を機体幅方向に横長に向け、各列32〜35毎にバッテリホルダ36,37で挟み込んで、フェンダ14の上に載置し、フェンダ14の上に上部カバー15を被せることで、バッテリ31・・・を収納できることを示す。
【0024】
具体的には、フェンダ14は、機体17の上端に一体に形成することで設けた、平面視略矩形状の部材であって、この部材は概ね平坦な底14aの周囲の縁14bを囲うことで、平底状のトレイとしたものである。底14aは、バッテリ31・・・を受ける支持台14c・・・を有する。フェンダ14に対して上部カバー15は着脱可能である。フェンダ14と上部カバー15とで囲ったスペースSpに、電動モータ11並びに電動モータ11に電力を供給する複数のバッテリ31・・・を収納することができる。
【0025】
電動モータ11は機体17の上端部、すなわちフェンダ14の上部にボルト止めにて取付けた、作業用電動モータである。
このようにして、機体17の上部に電動モータ11並びに複数のバッテリ31・・・を取付けることができる。38・・・はバッテリホルダ36,37の位置決め用弾性支持片である。
【0026】
図6は図4の6−6線断面図であり、上記図2に対応し、左側方から見た歩行型電動管理機10の断面構造を示す。
この図は、機体17の下部に伝動機構40並びに耕耘軸12を介して複数の耕耘爪13・・・を取付け、電動モータ11の動力を伝動機構40並びに耕耘軸12を介して耕耘爪13・・・に伝達するようにしたことを示す。詳しく説明すると、電動モータ11のモータ軸11aを下方へ延ばし、このモータ軸11aの真下に伝動機構40を配置した。
【0027】
伝動機構40は、モータ軸11aにカップリング41を介して連結した機構であり、モータ軸11aと同軸上に配置するほぼ垂直な伝動軸42と、伝動軸42の下部から水平な耕耘軸12へ動力を伝達するウォームギヤ機構43とからなる。ウォームギヤ機構43は、伝動軸42に形成したウォーム44と、耕耘軸12にスプライン結合したウォームホイール45(以下、「ホイール45」と言う。)と、からなる。
【0028】
このようにして、耕耘軸12にホイール45を取付け、ホイール45にウォーム44を噛み合わせ、このウォーム44の一端から上方へ伝動軸42を延し、この伝動軸42をカップリング41を介して電動モータ11に連結し、ウォームギヤ機構43及び伝動軸42を伝動ケースとしての機体17に一括収納することができる。46はリッド、47・・・は軸受である。
【0029】
電動モータ11の中心Cm、すなわちモータ軸11aの中心Cmは耕耘軸12の中心Csよりも後方へ距離Diだけ離れた位置にある。この距離Diは、ウォーム44並びにホイール45の大きさによって決まる。なお、ウォームギヤ機構43を他のギヤ機構、例えば「ベベルギヤ機構」や「ねじ歯車機構」に変更してもよい。ベベルギヤ機構に変更することで、耕耘軸12の中心Csにモータ軸11aの中心Cmを合致させることができる。
【0030】
ところで、機体17は、後上部から後上方へ延びる筒状のハンドル支持部51及び後上部から下方へ延びる筒状の抵抗棒支持部57を一体に形成したものである。ハンドル支持部51に操作ハンドル18を差し込んでロックレバー52でロックすることにより、機体17に操作ハンドル18を取付けることができる。
【0031】
ハンドル支持部51は、内部に一対の固定電極(機体側端子)53,54を一体に備える。操作ハンドル18は、外周面に可動電極(ハンドル側端子)55を一体に備える。一対の固定電極53,54並びに可動電極55の組合わせ構造は、ハンドル装着スイッチ56を成す。ハンドル支持部51内に上から操作ハンドル18を差し込んでセットすることによって、一対の固定電極53,54間を可動電極55で電気的に接続することができる。
また、抵抗棒支持部57に下から抵抗棒19を差込んでピン58により取付けることができる。
【0032】
さらにこの図は、電動モータ11の上端に取付けた回転センサ(速度検出部)61によって、電動モータ11の回転速度(すなわち、実速度)を検出するようにしたこと、第3列34のバッテリ31・・・が前後に4個並べた配列であること、及び、上部カバー15の後上部に受信器62を取付けたことを示す。
【0033】
図7は図4の7−7線断面図である。第1列32のバッテリ31・・・は、前後に9個並べるとともに、さらに最後部の3個の上に2個を重ねることで、合計11個の配列からなる。フェンダ14に対する上部カバー15の止め機構65は、フェンダ14の係合凸部66に上部カバー15の掛け部67を掛ける着脱可能な、いわゆるスナップフィット型式の構造である。
【0034】
上記図4〜図7を参照しつつ以上をまとめると、本発明は、電動モータ11のモータ軸11aを下方へ延ばし、このモータ軸11aの真下に伝動機構40を配置し、さらに、バッテリ31・・・を電動モータ11の周囲に且つ電動モータ11に隣接させて配置することにより、電動モータ11と共に重量物であるバッテリ31・・・をも、耕耘爪13・・・のほぼ真上に且つ歩行型電動管理機10の重心Gr近傍に配置することができる。
すなわち、図4及び図6に示すように、歩行型電動管理機10の重心Grは、電動モータ11の中心Cmと耕耘軸12の中心Csとの間に、且つ、車幅中心CL上にある。
【0035】
この結果、バッテリ31・・・を搭載した歩行型電動管理機10の重量バランスを高めることができる。従って、歩行型電動管理機10の蛇行を抑制し、直進走行性を高めて操縦性を高めることができるとともに作業性を高めることができるので、作業者の負担を軽減することができる。しかも、耕耘仕上り性をも高めることができる。
【0036】
さらには、バッテリ31の重量が耕耘爪13・・・のほぼ真上に掛かるので、バッテリ31・・・の重量を作業者が支える必要はない。このため、作業者の負担をより軽減することができる。
さらにまた、バッテリ31・・・の重量を耕耘爪13・・・のほぼ真上に掛けることにより、耕耘爪13・・・の喰い込み性を高めることができるので、耕耘反力によるダッシング現象の発生をより抑制することができる。しかも、耕耘爪13・・・による耕深量が増大するので、耕耘性能をより高めることができる。
【0037】
さらにまた、軽量の歩行型電動管理機10であっても、耕耘爪13・・・の喰い込み性を高めてダッシング現象を抑制するために、耕耘爪13・・・の前又は上にカウンタウエイト等の重量物を配置して耕耘爪13・・・側への重量配分を増す必要はない。このため、歩行型電動管理機10を旋回させるときに、操作ハンドル18を押し下げて耕耘爪13・・・を持上げ操作するのに、押し下げ力が増すことはない。従って、作業者の負担を軽減することができるとともに操縦性を高めることができる。
【0038】
さらにまた、複数個のバッテリ31・・・を、電動モータ11の左右両側に分散させて配置することにより、バッテリ31・・・の重量を左右の耕耘爪13・・・にほぼ均等に掛けることができる。この結果、左右の耕耘爪13・・・の喰い込み性が概ね均等になるので、歩行型電動管理機10に作用する左右の耕耘反力同士を概ね均等にすることができる。このため、ローリング現象(歩行型電動管理機10の重心Grを通る前後方向軸まわりに、歩行型電動管理機10が回転する現象)の発生をも抑制することができる。従って、歩行型電動管理機10の蛇行をより一層抑制し直進走行性を高めて操縦性を高めることができるとともに、作業性をより一層高めることができ、耕耘仕上り性をも高めることができる。
【0039】
また、複数個のバッテリ31・・・を、電動モータ11の前側に分散させて配置することにより、バッテリ31・・・の重量を耕耘爪13・・・の前側に掛けることができる。この結果、耕耘爪13・・・の喰い込み性をより高めてダッシング現象を一層抑制することができる。
【0040】
図8は本発明に係る左右のグリップメンバ周りの斜視図であり、左右のグリップメンバ70,80の外観を示す。ここで、右のグリップメンバ80は一方の把持部であり、左のグリップメンバ70は他方の把持部である。
【0041】
左のグリップメンバ70は、操作ハンドル18の左先端に取付けた操作部71Aと、操作部71Aの後上部から後方へ延びたグリップ部(握り部分)71Bと、からなる樹脂製一体成形品である。
【0042】
操作部71Aは上面71aに、作業開始操作ボタン72及びメイン操作ボタン73を備える。作業開始操作ボタン72は、作業用電動モータ11(図6参照)の回転・停止操作をするプッシュ式操作部材である。メイン操作ボタン73は、電源の入り・切り操作をするプッシュ式操作部材である。これらの操作ボタン72,73は、グリップ部71Bを握った左手LHの親指Thで押すことができる位置にあり、どちらかを選択して押すことになる。
【0043】
より具体的なボタン配置を説明すると、操作部71Aは上面71aのうち、機体幅中心CL寄りの位置、すなわち内側寄りの位置に作業開始操作ボタン72を配置し、また、作業開始操作ボタン72の左隣、すなわち作業開始操作ボタン72の近傍で機体幅外寄りの位置にメイン操作ボタン73を配置したものである。
【0044】
このように本発明は、作業中での使用頻度の高い作業開始操作ボタン72を、機体幅中心CL寄りの位置に配置するとともに、作業中での使用頻度の低いメイン操作ボタン73を、機体幅外寄りの位置に配置したことを特徴とする。
グリップ部71Bを握った手LHの親指Thによって、操作ボタン72,73を押すのであるから、機体幅中心CL寄りの位置に配置された作業開始操作ボタン72は押し易く、機体幅外寄りの位置に配置されたメイン操作ボタン73は若干押し難い。
【0045】
このようにすることで、作業中での使用頻度の高い作業開始操作ボタン72の操作性をより高めることができるとともに、作業者の負担を軽減することができる。一方、作業中での使用頻度の低いメイン操作ボタン73については、作業開始操作ボタン72よりも若干操作性を低くすることにより、作業者が意図することなく操作することを、より防止することができる。このように、人間工学的な配慮をした。
【0046】
一方、右のグリップメンバ80は、操作ハンドル18の右先端に取付けた操作部81Aと、操作部81Aの後上部から後方へ延びたグリップ部(握り部分)81Bと、からなる樹脂製一体成形品である。このような右のグリップメンバ80は、グリップ部81Bの下部に作業準備レバー82を備える。
作業準備レバー82は、グリップ部81を握った右手RHの人差し指Fiで引くことができる位置にある、トリガ状(引金状)の取っ手からなる、操作部材である。
【0047】
操作部81Aは上面81aに複数個、例えば3個の変速操作ボタン83・・・を備える。これらの変速操作ボタン83・・・は、作業用電動モータ11(図6参照)の回転速度を複数段階(例えば3段階)に切換え操作するプッシュ式操作部材、すなわち速度調節操作部である。変速操作ボタン83・・・は、グリップ部81Bを右手RHで握るとともに作業準備レバー82を引きつつ、その右手RHの親指Thで押すことができる位置にあり、1個を選択して押すことになる。
【0048】
より具体的なボタン配置を説明すると、3個の変速操作ボタン83・・・は、機体幅中心CL寄りの位置から右外方へ向かってこの順に横一列に配列した低速ボタン83a、中速ボタン83b、高速ボタン83cである。
低速ボタン83aを押せば電動モータ11を低速回転に操作することができ、中速ボタン83bを押せば電動モータ11を中速回転に操作することができ、高速ボタン83cを押せば電動モータ11を高速回転に操作することができる。
【0049】
図9(a)〜(c)は本発明に係る左のグリップメンバの構成図であり、(a)は左のグリップメンバ70の断面構成を示し、(b)は左のグリップメンバ70の側面構成を示し、(c)は左のグリップメンバ70の平面構成を示す。
【0050】
左のグリップメンバ70は、作業開始操作ボタン72によってオン・オフ操作する作業開始スイッチ74(モータスイッチ74)と、メイン操作ボタン73によってオン・オフ操作するメインスイッチ75と、これらのスイッチ74,75のスイッチ信号を符号化、すなわち無線信号化するエンコーダ(信号符号化回路)76と、を前上部に取付け、さらに、エンコーダ76の信号を無線信号として発する左の発信器77を操作部71Aの前部に取付けたものである。
【0051】
作業開始スイッチ74並びにメインスイッチ75は、対応する操作ボタン72,73を押しているときだけオンになるとともに、操作ボタン72,73から手を放すとオフになる、周知の接点自動復帰式の押し釦スイッチである。
【0052】
78はエンコーダ76を設けた基板、79はエンコーダ用バッテリである。なお、グリップ部71Bは側面に、エンコーダ用バッテリ79を交換するときに開閉するリッド71bを備える。スナップフィット型式のリッド71bを開けることで、図示せぬ開口からエンコーダ用バッテリ79を交換することができる。
【0053】
図10(a)〜(c)は本発明に係る右のグリップメンバの構成図であり、(a)は右のグリップメンバ80の断面構成を示し、(b)は右のグリップメンバ80の側面構成を示し、(c)は右のグリップメンバ80の平面構成を示す。
【0054】
右のグリップメンバ80は、トリガ状の作業準備レバー82を支持ピン84を介して前後スイング可能に取付けるとともに、この作業準備レバー82を実線にて示すオフ位置にリターンスプリング85で弾発し、作業準備レバー82によってオン・オフ操作する作業準備スイッチ86を内部に取付けたものである。
【0055】
作業準備スイッチ86は、作業準備レバー82を想像線にて示すオン位置にスイング操作しているときだけオンになるとともに、作業準備レバー82から手を放すとオフになる、接点自動復帰式の押し釦スイッチであって、基板87に設けたものである。すなわち作業準備スイッチ86は、トリガ状の取っ手82によって接点を開閉する、周知のトリガスイッチである。
【0056】
さらに右のグリップメンバ80は、低速ボタン83aによってオン・オフ操作する低速スイッチ91と、中速ボタン83bによってオン・オフ操作する中速スイッチ92と、高速ボタン83cによってオン・オフ操作する高速スイッチ93と、これらのスイッチ91〜93及び作業準備スイッチ86の各スイッチ信号を符号化、すなわち無線信号化するエンコーダ(信号符号化回路)94と、を前上部に取付け、さらにエンコーダ94の信号を無線信号として発する右の発信器95を操作部81Aの前部に取付けたものである。エンコーダ94は上記基板87に設けることになる。
【0057】
低速スイッチ91、中速スイッチ92及び高速スイッチ93は各々対応する低速・中速・高速ボタン83a〜83cを押しているときだけオンになるとともに、低速・中速・高速ボタン83a〜83cから手を放すとオフになる、周知の接点自動復帰式の押し釦スイッチからなる、変速操作スイッチである。
【0058】
なお、本発明は、「トリガ状の取っ手」からなる作業準備レバー82を、グリップ部81の下部に前後スイング可能に取付け、さらに、作業準備レバー82の周りを囲うレバー用ガード96を、右のグリップメンバ80に一体に形成したことを特徴とする。
従って、作業者が意図することなく作業準備レバー82をスイングさせたり、障害物が作業準備レバー82に当たってスイングさせる心配はない。
【0059】
97はエンコーダ用バッテリである。なお、グリップ部81Bは側面に、エンコーダ用バッテリ97を交換するときに開閉するリッド81bを備える。スナップフィット型式のリッド81bを開けることで、図示せぬ開口からエンコーダ用バッテリ97を交換することができる。
【0060】
ここで一旦図1に戻って説明を続ける。この図1は、左右の発信器77,95から発信された無線信号を、機体17側の受信器62で受信することができることを示す。
【0061】
図11は本発明に係る歩行型電動管理機の電気回路図である。この図は、想像線にてコントロールボックス20、左のグリップメンバ70及び右のグリップメンバ80を示す。
上述のように、左のグリップメンバ70は作業開始スイッチ74、メインスイッチ75、エンコーダ76及び発信器77を備える。右のグリップメンバ80は作業準備スイッチ86、低速スイッチ91、中速スイッチ92、高速スイッチ93、エンコーダ94及び発信器95を備える。
【0062】
一方、コントロールボックス20は、受信器62で受信した無線信号を解読するデコーダ(信号解読回路)101、制御部102及びモータ駆動回路103を備える。
【0063】
従って、左右のグリップメンバ70,80の各スイッチ信号、すなわち操作信号をエンコーダ76,94にて符号化し、その符号化信号を発信器77,95にて無線信号として発信し、その無線信号を受信器62にて受信し、その受信した符号化信号をデコーダ101にて解読し、その解読信号を制御部102に発することができる。
【0064】
ここで「無線信号」とは、無線にて発信器77,95から受信器62へ送信することができる信号のことであり、例えば赤外線や電波等の電磁波による信号がある。赤外線を無線信号として採用した場合には、発信器77,95を発光素子とし、受信器62を受光素子とすればよい。
【0065】
さらにコントロールボックス20は、上述のように表示部21、洗浄スイッチ22及び充電ソケット23を備える。
表示部21は、歩行型電動管理機10の作業状況、バッテリ31の電力残量や充電状況、洗浄ボックスによる洗浄状況等を表示する表示器である。
洗浄スイッチ22は、洗浄ボックスによる洗浄作業をするときに、電動モータ11の回転・停止操作をするするスイッチであって、操作ボタンを押しているときだけオンになるとともに、操作ボタンから手を放すとオフになる、周知の接点自動復帰式の押し釦スイッチである。
充電ソケット23は、外部から充電コード24を差し込む接続器であり、充電器25を介してバッテリ31に充電することができる。
【0066】
制御部102は洗浄スイッチ22、充電器25、ハンドル装着スイッチ56、回転センサ61及び洗浄ボックス装着スイッチ117から信号を受けるとともに、デコーダ101から受信信号を受けて(すなわち、受信器62の信号に応じて)、表示部21に表示信号を発するとともに、モータ駆動回路103を介して電動モータ11を回転制御するものである。
【0067】
洗浄ボックス装着スイッチ117は次のような構成である。上述のように、洗浄ボックス111にフェンダ14を被せたときには、洗浄ボックス111にフェンダ14を止め機構112でセットすることになる。この止め機構112は、フェンダ14の一対の係合凸部113,113に洗浄ボックス111の一対の掛け部114,114を掛ける着脱可能な、いわゆるスナップフィット型式の構造である。
【0068】
一対の係合凸部113,113は導電性の固定電極の役割を果たす。一対の掛け部114,114は、洗浄ボックス111に導電性のヒンジピン115を介して取付けたものであり、ヒンジピン115に電気的に接続された可動電極116,116を備える。係合凸部113,113(すなわち固定電極113,113)、可動電極116,116並びにヒンジピン115の組合わせ構造は、洗浄ボックス装着スイッチ117を成す。
係合凸部113,113に掛け部114,114を掛け止めることにより、一対の係合凸部113,113間を可動電極116,116並びにヒンジピン115で電気的に接続することができる。
【0069】
図12(a)、(b)は本発明に係る制御部によるモータ速度制御の概念を説明する説明図である。
(a)は、上記図11に示す制御部102による、モータ速度制御形態を表すタイムチャートであって、横軸を時間とし縦軸を電動モータ11の設定速度SOとして表す。設定速度SOは、上記図11に示す高速スイッチ93、中速スイッチ92及び低速スイッチ91に対応させて予め設定した一定の速度(高速Hn、中速Mn並びに低速Ln)であり、Hn>Mn>Lnの関係にある。
例えば、(a)に示すように時間の経過とともに、設定速度SOを0(零)から低速Ln、中速Mn、高速Hnの順に段階的に大きくなるように設定することができる。
【0070】
(b)は、上記図11に示す電動モータ11の現実の回転速度(実速度)の形態を表すタイムチャートであって、横軸を時間とし縦軸を電動モータ11の実速度SNとして表す。(b)によれば、(a)の設定速度SOに応じて実速度SNが0(零)から低速Ln、中速Mn、高速Hnの順に段階的に大きくなることが判る。
【0071】
ここで、電動モータ11の実速度SNを設定速度SOに設定し、歩行型電動管理機で耕耘しているときに、ダッシング現象が発生したことを考える。上述のようにダッシング現象とは、耕耘反力によって耕耘爪が上方へ跳び上がる現象のことである。ダッシング現象が発生すると、耕耘爪に掛かる耕耘反力は一時的に急減する。負荷が急減するので、電動モータ11の実速度SNは一時的に急増する。従って、設定速度SOに対して実速度SNが急増したことが判れば、ダッシング現象が発生したことを判断できる。
【0072】
しかし、単に設定速度SOに対して実速度SNが急増したか否かにより、ダッシング現象の発生を判断することはできない。何故なら、制御部102は、実速度SNが設定速度SOになるように速度制御を実行している。このため、実速度SNが設定速度SOを超えたというだけで、判断するのでは、安定した速度制御をすることができないからである。
【0073】
この点を踏まえ、制御部102によって安定した速度制御をしつつ、ダッシング現象の発生を判断するためには、設定速度SOに一定速度αを加えた、しきい値SLを設定し、しきい値SLを実速度SNが超えた(SN>SL)ときに、ダッシング現象が発生したと判断すればよい。以下、一定速度αのことを「上乗せ速度α」と言い、しきい値SLのことを「ダッシングしきい値SL」と言うことにする。
【0074】
本発明の制御部102は、設定速度SOに上乗せ速度αを加えた、ダッシングしきい値SLを設定したことを特徴とする。上乗せ速度αは、ダッシング現象の発生を判断するのに適切な値であって、予め設定された一定の速度である。
【0075】
具体的なダッシングしきい値SLは、次の▲1▼〜▲3▼のようになる。
▲1▼現実の設定速度SOが低速Lnであるときのダッシングしきい値SLは、Lnに上乗せ速度αを加算した値である(SL=Ln+α)。
▲2▼現実の設定速度SOが中速MnであるときのSLは、Mnにαを加算した値である(SL=Mn+α)。
▲3▼現実の設定速度SOが高速HnであるときのSLは、Hnにαを加算した値である(SL=Hn+α)。
【0076】
さらに制御部102は、実速度SNがダッシングしきい値SLを超えたときに(SN>SL)、歩行型電動管理機にダッシングが発生したと判断して、現実の設定速度SOを一定値だけ減少させるように制御することを特徴とする。
【0077】
具体的には現実の設定速度SOを1段階下げることによって、一定値だけ減少させる。例えば、現実の設定速度SOが高速Hnであるときには、設定速度SOを高速Hnから中速Mnに下げる。現実の設定速度SOが中速Mnであるときには、設定速度SOを低速Lnに下げる。現実の設定速度SOが低速Lnであるときには、設定速度SOを最低速Xnに下げる。「最低速Xn」の値は、予め設定された速度であって、低速Lnよりも小さく且つ零よりも大きい値である(Ln>Xn>0)。
【0078】
ここで、現実の設定速度SOを一定値だけ減少させる場合の「一定値」とは、予め設定した値、すなわち所定値のことである。上述の例における一定値は、「Hn−Mn」、「Mn−Ln」、「Ln−Xn」の各々の値である。但し、「Hn−Mn」と「Mn−Ln」と「Ln−Xn」とは、互いに同一の値に限定されるものではなく、互いに異なる値であってもよい。また、現実の設定速度SOの大きさに応じた、一定の比率の値とすることもできる。
【0079】
ここで、歩行型電動管理機にダッシング現象が発生したと、制御部102が判断することについては、さらに次の追加条件を加えることによって、判断をより確実に行うようにした。なお、この追加条件の有無については任意である。
【0080】
この追加条件とは、(b)に示すように最初に「SN>SL」になった時点Daから、一定の時間Tsが経過するまでに、「SN>SL」の状態を一定回数Nsだけ繰り返したときに、歩行型電動管理機にダッシング現象が発生したと判断することである。
一定の時間Tsとは、予め設定した基準時間Tsのことである。一定回数Nsとは、予め設定した基準回数Nsのことである。これらの基準時間Ts及び基準回数Nsは、ダッシング現象の発生を判断するのに適切な値である。
【0081】
一般的なダッシング現象は、耕耘爪の跳び上がり時間が極く短時間であり、しかも、その跳び上がり現象が反復する傾向にある。このような傾向を応用することで、ダッシング現象の発生を、より一層的確に行うことができる。
【0082】
次に、上記制御部102をマイクロコンピュータとした場合において、図12に示す制御概念を含む、モータ制御のの制御フローについて、図11及び図12を参照しつつ図13〜図15に基づき説明する。図中、ST××はステップ番号を示す。特に説明がないステップ番号については、番号順に進行する。
なお、この制御フローは、例えばバッテリ31をセットすることによって制御部102による制御がスタートするとともに、バッテリ31を外すことによって制御部102による制御がエンドになる。
【0083】
図13は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その1)である。
ST01;初期設定をする。例えば電動モータ11の設定速度SOを低速Lnに設定するとともに、カウント時間Tc及びダッシング回数Ncを0(零)にリセットする。「低速Ln」とは、低速スイッチ91で設定した速度と同じ値である。
ST02;ハンドル支持部51に操作ハンドル18をセットしたか否かを調べ、YESでST03に進み、NOでST12に進む。ハンドル装着スイッチ56がオンであれば操作ハンドル18をセットしたと判定する。
【0084】
ST03;メインスイッチ75がオンであるか(オンのスイッチ信号があったか)否かを調べ、YESでST04に進み、NOでST09に進む。
ST04;作業準備スイッチ86がオンであるか否かを調べ、YESでST05に進み、NOでST09に進む。
ST05;作業開始スイッチ74(モータスイッチ74)がオンであるか否かを調べ、YESでST06に進み、NOでST09に進む。
【0085】
ST06;上記ST02、ST03、ST04及びST05の条件が満たされれば、電動モータ11を回転させる。
すなわち、▲1▼ハンドル支持部51に操作ハンドル18をセットしたという条件、及び、▲2▼メイン操作ボタンを押した(メインスイッチ75がオンである)という条件下において、▲3▼作業準備レバーを引いた(作業準備スイッチ86がオンである)という条件と、▲4▼作業開始操作ボタンを押した(作業開始スイッチ74がオンである)という条件との、二つの条件が満たされたときに、電動モータ11を回転させる。
【0086】
ST07;電動モータ11の設定速度SOを読み込む。設定速度SOは低速スイッチ91、中速スイッチ92又は高速スイッチ93のオンのスイッチ信号による。高速スイッチ93をオンにすれば、設定速度SOは高速Hnである。中速スイッチ92をオンにすれば、設定速度SOは中速Mnである。低速スイッチ91をオンにすれば、設定速度SOは低速Lnである。
なお、高速Hn、中速Mn並びに低速Lnの値は予め設定された一定の速度であり、Hn>Mn>Lnの関係にある。また、各スイッチ91〜93によって速度が設定されないときの、設定速度SOは低速Lnである。
【0087】
ST08;電動モータ11の実速度SNを計測した後に、出結合子A1に進む。実速度SNは、電動モータ11の現実の回転数(回転速度)を回転センサ61で計測すればよい。
【0088】
ST09;電動モータ11を停止させる。
すなわち、▲1▼メイン操作ボタンを再び押した(メインスイッチ75がオフである)という条件、▲2▼作業準備レバーを放した(作業準備スイッチ86がオフである)という条件、▲3▼作業開始操作ボタンを再び押した(作業開始スイッチ74がオフである)という条件の、いずれかの条件が満たされたときに、電動モータ11を停止させる。
【0089】
ST10;設定速度SOを低速Lnに設定する。すなわち、初期設定の状態に戻す。
ST11;カウント回数Ncを0(零)にリセットした後に、ST02に戻る。
ST12;フェンダ14に洗浄ボックス111をセットしたか否かを調べ、YESでST13に進み、NOでST18に進む。洗浄ボックス装着スイッチ117がオンであれば洗浄ボックス111をセットしたと判定する。
ST13;洗浄スイッチ22がオンであるか否かを調べ、YESでST14に進み、NOでST18に進む。
【0090】
ST14;上記ST02、ST12及びST13の条件が満たされれば、電動モータ11を回転させる。
すなわち、▲1▼ハンドル支持部51から操作ハンドル18を外したという条件下において、▲2▼フェンダ14に洗浄ボックス111をセットしたという条件と、▲3▼洗浄スイッチ22がオンであるという条件との、二つの条件が満たされたときに、電動モータ11を回転させる。
【0091】
ST15;設定速度SOを洗浄速度Wnに設定する。洗浄速度Wnは、洗浄ボックス111内で耕耘爪を水洗するのに最適な電動モータ11の回転数である。
ST16;電動モータ11の実速度SNを計測する。実速度SNは、電動モータ11の現実の回転数を回転センサ61で計測すればよい。
【0092】
ST17;電動モータ11を設定速度SOで速度制御した後に、ST02に戻る。すなわち、実速度SNが設定速度SOになるように制御する。なお、設定速度SOの制御信号出力はPI制御ならPI出力、PID制御ならPID出力に相当する。この制御信号出力はパルス幅変調信号(PWM信号)であってもよい。
【0093】
ST18;電動モータ11を停止させる。すなわち、▲1▼フェンダ14から洗浄ボックス111を外したという条件と、▲2▼洗浄スイッチ22がオフであるという条件の、いずれかの条件が満たされたときに、電動モータ11を停止させる。
ST19;設定速度SOを低速Lnに設定した後に、ST02に戻る。すなわち、初期設定の状態に戻す。
【0094】
図14は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その2)であり、図13の出結合子A1から、本図の入結合子A1を経てST101に進んだことを示す。
【0095】
ST101;設定速度SOに上乗せ速度αを加えた値をダッシングしきい値SLとする。
ST102;実速度SNがダッシングしきい値SL以下であるか否かを調べ、YESでST103に進み、NOでST104に進む。
ST103;電動モータ11を設定速度SOで速度制御した後に、出結合子A2及び図13の入結合子A2を経てST02に戻る。すなわち、実速度SNが設定速度SOになるように制御する。なお、設定速度SOの制御信号出力はPI制御ならPI出力、PID制御ならPID出力に相当する。この制御信号出力はパルス幅変調信号(PWM信号)であってもよい。
【0096】
ST104;タイマが作動中であるか否かを調べ、YESならST107に進み、NOならST105に進む。
ST105;タイマのカウント時間Tcをリセットする(Tc=0)。
ST106;タイマをスタートさせる。すなわち、実速度SNがダッシングしきい値SLを、初めて超えた(SN>SL)という条件のときに、カウント時間Tcのカウントを開始する。このカウント開始時点は、上記図12(b)に示す時点Daに相当する。
【0097】
ST107;タイマのカウント時間Tcが基準時間Tsを超えたか否かを調べ、YESでST108に進み、NOでST110に進む。
ST108;タイマをストップさせる。
ST109;ダッシング回数Ncをリセットした(Nc=0)後に、ST103に進む。
ST110;ダッシング回数Ncを1回加算する(Nc=Nc+1)。
【0098】
ST111;ダッシング回数Ncが基準回数Nsに達したか否かを調べ、YESならダッシング現象が発生したと判断してST112に進み、NOならST103に進む。
すなわち、ST102で最初に「SN>SL」になった時点から、ST107でカウント時間Tcが基準時間Tsを経過するまで(Tc≦Ts)に、「SN>SL」の状態を繰り返した回数Nc、すなわち、ダッシング回数Ncが基準回数Nsに達した(Nc≧Ns)ときに、歩行型電動管理機にダッシング現象が発生したと、最終的に判断する。
【0099】
ST112;ダッシング回数Ncをリセット(Nc=0)した後に、出結合子A3に進む。
【0100】
図15は本発明に係る制御部の制御フローチャート(その3)であり、図14の出結合子A3から、本図の入結合子A3を経てST201に進んだことを示す。
ST201;現実の設定速度SOが高速Hn、中速Mn、低速Lnのどれであるか判断する。設定速度SOが高速HnならST202に進み、設定速度SOが中速MnならST203に進み、設定速度SOが低速LnならST204に進む。
【0101】
ST202;現実の設定速度SOを中速Mnに下げた後に、出結合子A2及び図13の入結合子A2を経てST02に戻る。
ST203;現実の設定速度SOを低速Lnに下げた後に、出結合子A2及び図13の入結合子A2を経てST02に戻る。
ST204;現実の設定速度SOを最低速Xnに下げた後に、出結合子A2及び図13の入結合子A2を経てST02に戻る。
【0102】
上記図1、図8、図11及び図12を参照しつつ以上をまとめる。
本発明は、図1に示すように機体17の上部に電動モータ11を取付け、機体17の下部に耕耘軸12を介して耕耘爪13・・・を取付け、機体17から後方へ操作ハンドル18を延ばすことで、電動モータ11の動力を耕耘軸12に伝達し、この耕耘軸12に取付けた耕耘爪13・・・で耕耘作業を行わせるようにした歩行型電動管理機10が、次の特徴を有するものである。
【0103】
すなわち本発明は、制御部102(図11参照)が、「作業準備レバー82の操作が続行中である」という条件で、電動モータ11の回転を続行させるように制御するようにし、歩行型電動管理機10の作業中には操作し続ける作業準備レバー82を備えた方のグリップメンバ80に、電動モータ11の回転速度を変えるための変速操作ボタン83・・・を備えたので、作業準備レバー82を操作し続ける手RHによって、変速操作ボタン83・・・をも容易に操作することができる。
【0104】
ここで、「作業準備レバー82の操作が続行中であるという条件」とは、上記図13に示す制御フローにおいて、ST06で電動モータ11を始動させた後に、ST04の条件が満たされ続けているとき、すなわち、作業準備レバー82を引き続けている(作業準備スイッチ86がオンを続行中である)という条件のことである。
【0105】
さらには、歩行型電動管理機10は、図11及び図12に示すように、電動モータ11の実速度SNを検出する速度検出部61と、電動モータ11の設定速度SOを調節する速度調節操作部83・・・(図8参照)と、設定速度SOに予め設定された一定速度αを加えたしきい値SLに対して実速度SNが超えたという条件を達成したときに現実の設定速度SOを一定値だけ減少させるように制御する制御部102と、を備えたことを特徴とする。
【0106】
従って、しきい値SLに対して実速度SNが超えたときに、ダッシング現象が発生したと判断して、電動モータ11の現実の設定速度SOを一定値だけ減少させる(減速制御する)ことができる。
【0107】
図1に示すように、機体17に受ける上向き力の大きさは、耕耘爪13・・・の回転速度にほぼ比例すると考えられる。このため、農耕地を耕耘している最中にダッシング現象が発生したときには、その時点の耕耘爪13・・・の回転速度が大き過ぎることを、制御部102が自動的に判断するようにした。ダッシング現象が発生した時点で、耕耘爪13・・・を駆動する電動モータ11の実速度SNを、自動的に一定値だけ速やかに減少させることができる。この結果、機体17に受ける上向き力を低減することができるので、ダッシング現象をより抑制することができる。
【0108】
ダッシング現象をより抑制することにより、歩行型電動管理機10の蛇行を抑制することができるので、直進走行性を高めるとともに操縦性を高めることができる。このため、作業者の負担を軽減することができる。さらには、ダッシング現象を自動的に抑制するので、作業者は農耕地の硬さに注意を払う必要がない。作業に熟練を要しないので、初心者であっても比較的容易に耕耘作業をすることができる。しかも、耕耘性能をより高めるとともに、耕耘仕上り性をも高めることができる。
【0109】
なお、上記本発明の実施の形態において、速度検出部61、速度調節操作部83・・・及び制御部102の取付け位置は任意である。
速度検出部61は、電動モータ11の実速度を直接的に又は間接的に検出するものであればよい。例えば、速度検出部61にて耕耘軸12の回転数を検出し、この回転数を演算することにより、電動モータ11の実速度を求めるようにしてもよい。
【0110】
作業準備レバー82は、トリガ状の取っ手に限定されるものではなく、例えば把持部80とともに握るレバーであってもよい。
速度調節操作部83(変速操作ボタン83)の個数は任意である。
制御部102は、マイクロコンピュータの構成に限定されるものではなく、例えば、それぞれの操作部材72,73,82,83・・・によって作動する各スイッチを電気的に接続した構成(ハードウエア)によるものであってもよい。
【0111】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、電動モータの実速度を検出する速度検出部と、電動モータの設定速度を調節する速度調節操作部と、設定速度に予め設定された一定の上乗せ速度を加えたダッシングしきい値に対して実速度が超えたという条件を達成したときに、ダッシング現象が発生したと判断し、設定速度を一定値だけ減少させるように制御する制御部とを備えたので、ダッシングしきい値に対して実速度が超えたときに、ダッシング現象が発生したと判断して、電動モータの設定速度を一定値だけ減少させる(減速制御する)ことができる。
【0112】
このため、農耕地を耕耘している最中にダッシング現象が発生したときには、その時点の耕耘爪の回転速度が大き過ぎることを、制御部が自動的に判断するようにした。ダッシング現象が発生した時点で、耕耘爪を駆動する電動モータの実速度を、自動的に一定値だけ速やかに減少させることができる。この結果、機体に受ける上向き力を低減することができるので、ダッシング現象をより抑制することができる。
【0113】
ダッシング現象をより抑制することにより、歩行型電動管理機の蛇行を抑制することができるので、直進走行性を高めるとともに操縦性を高めることができる。このため、作業者の負担を軽減することができる。さらには、ダッシング現象を自動的に抑制するので、作業者は農耕地の硬さに注意を払う必要がない。作業に熟練を要しないので、初心者であっても比較的容易に耕耘作業をすることができる。しかも、耕耘性能をより高めるとともに、耕耘仕上り性をも高めることができる。
さらに、請求項1は、制御部は、ダッシングしきい値に対して実速度が最初に超えた時点から、一定の基準時間が経過するまでに、ダッシングしきい値に対して実速度が超えた回数が、一定の基準回数に達したときに、ダッシング現象が発生したと判断する構成である、ことを特徴とする。
請求項2は、請求項1において、速度調節操作部は、設定速度を複数の段階に切り換え操作するものであり、制御部は、ダッシング現象が発生したと判断したときに、設定されている前記設定速度を1段階下げるように制御する構成である、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る歩行型電動管理機の斜視図
【図2】本発明に係る歩行型電動管理機の左側面図
【図3】本発明に係る歩行型電動管理機の平面図
【図4】本発明に係る歩行型電動管理機の上部カバーを外した平面図
【図5】本発明に係る歩行型電動管理機のフェンダ、上カバー、電動モータ並びにバッテリ周りの分解図
【図6】図4の6−6線断面図
【図7】図4の7−7線断面図
【図8】本発明に係る左右のグリップメンバ周りの斜視図
【図9】本発明に係る左のグリップメンバの構成図
【図10】本発明に係る右のグリップメンバの構成図
【図11】本発明に係る歩行型電動管理機の電気回路図
【図12】本発明に係る制御部によるモータ速度制御の概念を説明する説明図
【図13】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その1)
【図14】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その2)
【図15】本発明に係る制御部の制御フローチャート(その3)
【図16】従来の歩行型電動管理機の概要図
【符号の説明】
10…歩行型電動管理機、11…電動モータ、12…耕耘軸、13…耕耘爪、17…機体、18…操作ハンドル、61…速度検出部(回転センサ)、83,83a,83b,83c…速度調節操作部(変速操作ボタン)、102…制御部、SL…しきい値(ダッシングしきい値)、SN…電動モータの実速度、SO…電動モータの設定速度、α…一定速度(上乗せ速度)。
Claims (2)
- 機体の上部に電動モータを取付け、機体の下部に耕耘軸を介して耕耘爪を取付け、機体から後方へ操作ハンドルを延ばすことで、電動モータの動力を耕耘軸に伝達し、この耕耘軸に取付けた耕耘爪で耕耘作業を行わせるようにした歩行型電動管理機において、
この歩行型電動管理機は、
前記電動モータの実速度を検出する速度検出部と、
前記電動モータの設定速度を調節する速度調節操作部と、
前記設定速度に予め設定された一定の上乗せ速度を加えたダッシングしきい値に対して前記実速度が超えたという条件を達成したときに、ダッシング現象が発生したと判断し、前記設定速度を一定値だけ減少させるように制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ダッシングしきい値に対して前記実速度が最初に超えた時点から、一定の基準時間が経過するまでに、前記ダッシングしきい値に対して前記実速度が超えた回数が、一定の基準回数に達したときに、前記ダッシング現象が発生したと判断する構成である、ことを特徴としたことを特徴とする歩行型電動管理機。 - 前記速度調節操作部は、前記設定速度を複数の段階に切り換え操作するものであり、前記制御部は、ダッシング現象が発生したと判断したときに、設定されている前記設定速度を1段階下げるように制御する構成である、ことを特徴とした請求項1記載の歩行型電動管理機。
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