JP4234928B2 - ラクタムの精製法 - Google Patents
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Description
本発明は、ラクタム、特にアミノニトリルの環化加水分解によって得られるラクタムの精製法に関する。特に、本発明は、アミノカプロニトリルの環化加水分解によって得られるε−カプロラクタムの精製法に関する。
【0002】
特にポリアミドそしてより具体的にはポリアミド−6の製造において使用される主要の化学中間体であるε−カプロラクタムを合成するための幾つかの方法が提案されている。最も広く使用されている方法のうちの1つは、工業的には、硫酸又はオレウムの存在下におけるシクロヘキサノンオキシムのベックマン転移よりなる。
【0003】
多くの研究の課題を構成する他の方法は、アミノカプロニトリルの環化加水分解によってε−カプロラクタムを得ることよりなる。この反応はフランス特許2029540に開示されているが、これは、溶剤及び触媒の存在下に液相で、又は米国特許2357484に開示されるようにアルミナを触媒として使用して気相で実施することができる。
【0004】
ヨーロッパ特許EP150295も、銅及びバナジウムを基材とする触媒の存在下にアミノカプロニトリルを気相で環化加水分解する方法に関する。
【0005】
これらの合成法によって得られるε−カプロラクタムは、特に糸、繊維などの如き最終製品の製造に満足な特性を示す重合体を製造するのを可能にする化学中間体又は単量体を得るためには精製されなければならない。
【0006】
シクロヘキサノンオキシムのベックマン転移によって得られるカプロラクタムの処理のために多数の精製法が提案されている。また、アミノカプロニトリルの環化加水分解によって得られるカプロラクタムの精製法も提案されている。かくして、米国特許5496941は、加水分解反応媒体から低沸点生成物及び高沸点生成物を分離することよりなる方法を開示している。この分離は、特にカプロラクタムの蒸留によって達成される。かくして回収されたカプロラクタムは、水素化、次いでイオン交換樹脂による処理か又は硫酸の存在下での蒸留のどちらか、そして最後に塩基の存在下での蒸留を受ける。
【0007】
他の精製法も提案されている。かくして、特許出願WO98/05636は、酸性溶剤を使用する液/液抽出によって又は樹脂による処理によって精製する方法を提供している。
【0008】
これらの方法では、特にポリアミド−6の如きポリアミドの製造において単量体として使用するのに要求される純度基準を満たす生成物を得るためには、カプロラクタムの最終的蒸留が一般に要求される。しかしながら、この最終的蒸留はカプロラクタムの高い損出をもたらし、これはプロセスの全体的な経済性を阻害する。
【0009】
かくして、ベックマン転移反応によって得られるカプロラクタムの精製の場合では、米国特許4301073は、溶剤による抽出工程、次いで塩基性媒体中での蒸留工程を含むカプロラクタムの精製法を提供している。蒸留残査は、カプロラクタムをできるだけ多く回収するために処理される。この処理は、更に蒸留すること、及びかくして蒸留されたカプロラクタムを抽出工程に再循環する前に強酸で処理することよりなる。この方法は、カプロラクタムの回収度を向上させることを可能にするが、しかし再循環前の処理のために酸を使用することを要件とする。この再循環法は複雑であり、そして酸処理を実施するためにはかなりの費用を必要とする。更に、この方法は、新規な反応(これは、新規な精製法を必要とする全く異なる不純物を生成する可能性がある)によって合成されるカプロラクタムの処理に置き換えることができない。
【0010】
本発明の目的のうちの1つは、これらの不利益を、アミノニトリルの環化加水分解から生じるラクタムの精製法及び装置であって、高純度のラクタムを高い回収率で得ることを可能にする精製法及び装置を提供することによって打破することである。
【0011】
この目的に対して、本発明は、アミノニトリル特にアミノカプロニトリルの環化加水分解によって得られるラクタム特にε−カプロラクタムの精製法であって、加水分解反応媒体からアンモニアを除去し次いで該媒体からラクタムを精製形態で回収することよりなる精製法を提供する。
【0012】
本発明に従えば、この回収は、塩基の存在下にラクタムの少なくとも1回の蒸留を使用し、随意として、ラクタムよりも揮発性の高い化合物を含む塔頂留分と、所望の純度を有する回収しようとするラクタムを含む留分と、ラクタム及び該ラクタムよりも揮発性の低い化合物を含む蒸留塔底生成物とを生成することによって実施される。
【0013】
かくして、精製の段階で蒸留によって回収される蒸留塔底生成物又は残査は主としてラクタムを含み、そしてその不純物は主として塩及び反応副生物よりなる。この蒸留塔底生成物は、本発明に従えば、蒸留塔底生成物中に存在するラクタムの大部分を分離しそしてその分離したラクタムを精製プロセスの任意の段階に又は環化加水分解後に得られる媒体に再循環させることよりなる処理を受ける。
【0014】
本発明に従えば、この塔底生成物の処理は、例えばラクタムの薄層蒸発若しくはラクタムの晶出によってラクタムを回収するか、又は例えば不純物の大部分を水で抽出することによって他の不純物からラクタムを分離することのどちらかよりなる。
【0015】
ラクタムの晶出は、通常の晶出プロセスに従って溶剤として水、ラクタム飽和水溶液又はラクタムそれ自体を使用して実施することができる。それは、単一の工程で実施されるのが有益である。しかしながら、必要ならば、2つ又はそれ以上の晶出工程を使用することができる。晶出プロセス及びその実施のための条件は、例えば、ヨーロッパ特許EP943608及び米国特許4882430に説明されている。
【0016】
かくして得られたラクタムは、蒸留塔に予定のレベルで直接供給するか、又は該蒸留塔に入る反応媒体の流れに若しくはラクタムの精製回収のプロセスの他の段階で若しくは環化加水分解から生じる媒体に加えることのどちらかによって蒸留装置の塩基性媒体に再循環される。
【0017】
本発明の第二の具体例に従えば、蒸留塔底生成物は、薄膜又は薄層蒸発プロセスによって処理される。気化したラクタムは、晶出を使用する具体例の条件と同じ条件下に蒸留装置に再循環される。ラクタムの蒸発は、10ミリバール以下の圧力下に130〜150℃の温度で加熱することによって達成される。
【0018】
最後に、第三の具体例では、蒸留塔底生成物は、不純物特に塩を溶解させるために水で処理することができ、そして沈降によって分離後に回収されたラクタムは酸性媒体次いで塩基性媒体での蒸留によるラクタムの精製プロセスに再循環させるのが有益である。
【0019】
蒸留塔底生成物を処理するためのこれらの方法は、該塔底生成物中に存在するラクタムの少なくとも90重量%そして有益には少なくとも95重量%を回収することを可能にする。かくして、精製プロセスにおけるラクタムの損出は、関与するラクタムの3重量%未満に制限される。
【0020】
かくして、本発明の方法は、塩基蒸留による精製中にラクタムの損出を極めて低いレベルに制限することを可能にする。これらの損出は、プロセスの経済性に極めて僅かな影響を及ぼすに過ぎず、そして特に回収されたラクタムの品質は極めて高いレベルにある。
【0021】
本発明に従えば、回収しようとするラクタムを含む媒体は、アンモニアの蒸発後のアミノニトリルの環化加水分解のための反応媒体であってよい。該反応媒体は、アンモニアの蒸発前に水素化を受けることができよう。塩基蒸留に関与するこの反応媒体は、アンモニアの蒸発後に幾つかの予備処理を受けていてもよい。
【0022】
本発明の具体例では、加水分解反応媒体は、ラクタムよりもそれぞれ揮発性の低い及び高い生成物を除去するために処理される。この処理は米国特許5496941に開示されているが、これは、アンモニア、水及び他の揮発性生成物を蒸発させ次いでラクタムを蒸留することよりなる。かくして、本発明の塩基蒸留によって処理された加水分解反応媒体は、蒸留によって回収されたラクタムである。
【0023】
他の具体例では、特に環化加水分解を気相で実施するときには、反応媒体(これは、アンモニアの除去に先立って水素化を受けても又は受けなくてもよい)からアンモニアだけが抽出される。
【0024】
蒸留によって回収されたラクタム又はアンモニア不含反応媒体は、例えば塩基蒸留に供給する前に水素化又は酸化処理を受けることができる。
【0025】
他の具体例では、ラクタムの精製法は、酸性媒体中でイオン交換樹脂に通す処理、又は強酸例えば硫酸の存在下での蒸留を含むことができる。
【0026】
また、ラクタムの精製回収法はラクタムの1回又はそれ以上の連続的晶出を含むことができるが、かくして晶出したラクタムは本発明に従って塩基蒸留に供給される媒体を構成することができる。従って、本発明に従った蒸留プロセスは、多くの開示される精製法において使用されるラクタムの多くの他の公知の処理と組み合わすことができるラクタム精製法における1つの段階である。
【0027】
本発明の他の特徴に従えば、本発明の精製法は、各種生成物の連続的分離を実施するために連続して配置された幾つかの蒸留塔を含む蒸留プロセスにおいて使用することができる。
【0028】
また、塩基性媒体又は酸性媒体次いで塩基性媒体中での蒸留による精製法を実施するためのこれらの装置も本発明の課題である。
【0029】
精製しようとするラクタムの塩基性媒体中での処理を実施するのに好適な本発明の第一具体例では、かかる装置は、精製しようとするラクタムが予定量の塩基と共に供給されるところの第一蒸留塔を含む。この塔(脱水塔として知られる)では、水が塔頂留分の形態で除去され、そしてラクタム及び塩基を含む蒸留塔底生成物が第二蒸留塔に供給される。
【0030】
この第二蒸留塔では、ラクタムよりも揮発性の高い生成物が塔頂留分の形態で取り出され、そして分離されたラクタムは第三蒸留塔に供給される。
【0031】
この第三蒸留塔では、ラクタムが蒸留されて塔頂留分として回収され、そして蒸留塔底生成物はラクタムの大部分を回収するために本発明の方法に従って有益下に処理することができる。蒸留塔底生成物から回収されたラクタムは第二蒸留塔に有益下に再循環される。
【0032】
本発明に従った第二具体例によれば、かかる装置は、連続して配置された3個の蒸留塔を含む。この第一塔は、第一具体例におけるように、水の大部分好ましくは全部を除去するのを可能にする脱水塔である。
【0033】
第二塔では、揮発性の最も低い化合物特にラクタムよりも揮発性の低い化合物が分離されて蒸留塔底生成物を構成し、そして塔頂で回収されたラクタムは第三塔に供給される。
【0034】
この最終塔では、精製ラクタムは、気相又は液相のどちらかで抜き出すことによって有益には中間留分の形態で集められる。ラクタムよりも揮発性の高い化合物より構成される塔頂留分が取り出され、そして蒸留塔底は好ましくは第二塔に再循環される。
【0035】
この具体例では、第二塔からの蒸留塔底生成物は、本発明の方法に従ってラクタムを回収するために処理されるのが有益である。かくして回収されたラクタムは第二塔に再循環されるのが有益である。
【0036】
好ましくは、処理しようとする媒体に塩基性化合物が添加され、その後に第一脱水段階に供給される。
【0037】
しかしながら、本発明は、精製しようとするラクタムを含む媒体を酸性媒体特に硫酸媒体での蒸留、次いで塩基性媒体での蒸留によって処理することよりなる方法に関する。このような処理は、本発明に従えば、上記の第二具体例に従った装置で使用される。
【0038】
この第二具体例では、処理しようとする媒体に酸を添加してから脱水塔に供給され、そして第二蒸留塔で生成された塔頂留分に塩基を添加してから第三蒸留塔に供給される。
【0039】
酸の存在によって発生された塩、例えば、アミン硫酸塩又は塩基の中和から生じた硫酸塩が除去され、そして第二蒸留塔で生成された蒸留塔底生成物中に放出される。この蒸留塔底生成物はラクタム回収処理を受けるのが有益であり、この処理は、本発明の場合には、有益には、
・蒸留塔底生成物を水で洗浄してアンモニウム及び/又はアミン硫酸塩の如き塩を溶解させること、水性相及びラクタムよりなる有機相の分離後の有機相は脱水塔に供給される媒体に再循環され若しくは第二塔に再循環されるのが好ましく、又は別法として薄層蒸発若しくは晶出の如き他の処理を受けるのが好ましいこと、
・ラクタムの蒸発を薄膜又は薄層蒸発器で実施すること、
・水、水性ラクタム溶液又はラクタムからラクタムを晶出させること、
のいずれかであってよい。これらの処理は組み合わせることができ、特に、蒸発又は晶出に先立って水洗を実施することができる。
【0040】
本発明の特徴に従えば、ラクタムは、溶剤を使用して又は使用せずに気相又は液相のどちらかでのアミノカプロニトリルの環化加水分解によって得られるε−カプロラクタムであるのが有益である。
【0041】
アミノニトリルは、例えば、アジポニトリルの部分水素化によって製造される。この反応は、特に次の特許文献、US4601859、US2762835、US2208598、DE4235466及びUS5981790に開示されている。
【0042】
環化加水分解反応媒体中に存在するアンモニアは蒸留又はフラッシングによって除去される。
【0043】
本発明の方法において供給される反応媒体は少なくとも99.9重量%のラクタムを含むことができる。この濃度範囲は、単に一例として挙げられるに過ぎない。かくして、より少ないラクタムを含む媒体も本発明の方法によって精製することができる。
【0044】
限定するものではないが、一例として、本発明に従った装置の第二具体例の各塔の操作条件を以下に記載する。
【0045】
第一脱水段階は、約100℃〜約130℃の温度及び約50ミリバール〜約200ミリバールの圧力において実施される。
【0046】
脱水された留分は第二蒸留塔に供給され、ここで高沸点生成物の第二分離段階が蒸留塔底生成物の生成によって実施される。この塔の操作条件は、150℃未満の塔底温度及び5〜10ミリバールの圧力である。かくして生成された塔頂留分は、ラクタムよりも高い沸点を有する不純物を100ppm未満で含む。この塔頂留分は更なる蒸留塔に供給されるが、この操作条件は150℃未満の塔底温度及び5〜10ミリバールの圧力である。
【0047】
中間留分として生成されるラクタム特にε−カプロラクタムは、特に織物用途に向けたポリアミドの製造に要求される基準を満たす純度を示す。好ましくは、この中間留分は、高沸点を有する生成物を極めて低い濃度で得るために塔から気相で抜き出される。しかしながら、この中間留分を液相で抜き出すことも可能であり、これは本発明の範囲から逸脱しない。
【0048】
塔底で得られる蒸留塔底生成物は、本発明の具体例では、第二蒸留塔に再循環される。
【0049】
本発明のラクタムの精製法に従った本発明の好ましい具体例では、第二塔底に集められた蒸留塔底生成物は、ラクタムの分離段階に、例えば、150℃未満の温度において5〜10ミリバールの圧力下に薄膜又は薄層蒸発プロセスに供給される。
【0050】
本発明の他の好ましい具体例では、この蒸留塔底生成物は、ラクタムそしてより具体的にはカプロラクタムを回収するために晶出プロセスを受ける。
【0051】
また、加水分解媒体中に存在する遊離塩基の中和から生じる塩、より具体的には硫酸塩を抽出するために、この蒸留塔底生成物を水で処理することも可能である。ラクタムを含む回収された有機相は、脱水塔若しくは第二塔に再循環されるか、又は薄膜若しくは薄層蒸発或いは晶出の如きラクタムの更なる分離工程を受けるかのどちらかである。
【0052】
本発明に従えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び金属炭酸塩、例えば、水酸化ナリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム又は混成炭酸塩よりなる群から選択される塩基を塩基性化合物として使用することができる。好ましくは、水酸化ナトリウム水溶液が使用される。塩基の添加量は、広い範囲内で変動することができる。有益には、それは、カプロラクタム又はラクタム1kg当たり塩基0.05〜2gである。
【0053】
先に記載したように、この塩基は、脱水段階に供給される処理しようとする媒体か又は装置の第二具体例の第二塔から生じる塔頂留分のどちらかに添加され、その後にそれが第三塔に供給される。
【0054】
本発明に従えば、酸好ましくは硫酸を脱水段階に供給される媒体に添加することも可能である。酸の添加量は、処理しようとする媒体中に存在する塩基遊離塩基の量の関数として決定される。この遊離塩基の量は、媒体の電位差滴定によって測定される。酸の添加量は遊離塩基1モル当たり酸0.5モル〜1モルそして好ましくは遊離塩基1モル当たり酸0.7〜0.9モルの間である。この濃度範囲は、溶融可能な塩、及び媒体の弱い腐食作用を得るのを可能にする。
【0055】
本発明の他の利益及び詳細については、添付の図面を参照しながら行う実施例の詳細な説明に照らしてより一層明らかになるであろう。
【0056】
図1は、本発明の装置の第一具体例のブロック図を示す。図2は、本発明の装置の第二具体例のブロック図を示す。
【0057】
例1
アジポニトリルの半水素化によって得られたアミノカプロラクタムの環化加水分解から生じた媒体を、アンモニアの蒸留(ストリッピング)前に水素化によって処理した。得られた媒体を、イオン交換樹脂に通すことによって処理した。これらの処理を実施するための条件は、上記の特許又は特許出願に特に特許出願WO98/05636及びFR2786180に開示されている。
【0058】
この媒体は約65重量%のカプロラクタムを含み、そして次の純度特性、
過マンガン酸塩価(PNMnO4):35
揮発性塩基含量(NVB):1.8meq/kg
UV価(NUV):0.5
を示す。
【0059】
これらの特性は、過マンガン酸塩価(PNMnO4)に対しては“Standard ISO 8660”、揮発性塩基含量(NVB)に対しては“Standard ISO 8661”、そしてUV価(NUV)に対しては“Standard ISO 7059”に開示される標準化操作に従って測定される。
【0060】
図1を説明すると、この媒体は、本発明に従えば、管路3を経てカプロラクタム1kg当たり0.6gの純水酸化ナトリウム(濃厚溶液の形態で)を添加した後、管路1を経て第一蒸留塔2に供給される。第一蒸留塔2は、130℃未満の底部温度及び70ミリバールの圧力を有する。塔頂留分4は水より構成される。蒸留塔底生成物5は0.5重量%未満の量の水を含む。この蒸留塔底生成物5は、還流下7、8に作動する第二蒸留塔6に供給される。塔頂留分9(これは、カプロラクタム及び該カプロラクタムよりも低い沸点を有する化合物より本質上なる)が取り出される。取り出されるカプロラクタムの量は、供給されたカプロラクタムの0.5重量%に相当する。カプロラクタムを含む蒸留塔底生成物10は、第三蒸留塔11(これも、還流下12、13に作動する)に供給される。塔頂留分14は、適合する純度を有するカプロラクタムより構成される。
【0061】
純度特性は、
過マンガン酸塩価(PNMnO4):1.5
揮発性塩基含量(NVB):0.28meq/kg
UV価(NUV):0.025
である。
【0062】
蒸留塔底生成物17(これは主としてカプロラクタムよりなり、そして不純物としてカプロラクタムよりも高い沸点を有する化合物を含む)は、10ミリバールの圧力及び150℃の温度で作動するスクレーパ付薄膜蒸発器16に供給される。蒸発したカプロラクタムは、管路15を経て第三塔11に再循環される。蒸発されない生成物は管路18を経て取り出される。第一蒸留塔2に供給されたカプロラクタムと第三塔11の頂部14で生成されたカプロラクタムとの重量平衡は、関与するカプロラクタムの99.1%が高い好適な純度で回収されることを示す。
【0063】
例2
カプロラクタムの精製法の第二具体例に従って、図2に概略的に示される本発明に従った装置において、アンモニアの蒸留(ストリッピング)後のアミノカプロニトリル加水分解媒体を処理する。この媒体の特性は次の如くである。
過マンガン酸塩価(PNMnO4):381
揮発性塩基含量(NVB):232meq/kg
UV価(NUV):12
更に、電位差滴定によって測定した遊離塩基の濃度は、媒体又は溶液1kg当たり189meqである。
【0064】
図2を説明すると、この媒体は、本発明に従えば、処理しようとする媒体中に存在する遊離塩基1モル当たり0.8モルの硫酸(濃厚溶液の形態で)を管路23を経て添加した後、管路21を経て第一蒸留塔22に供給される。第一蒸留塔22は、130℃未満の底部温度及び70ミリバールの圧力を有する。塔頂留分24は水より構成される。蒸留塔底生成物25は0.5重量%未満の量の水を含む。この蒸留塔底生成物25は、還流下27、28に作動する第二蒸留塔26に供給される。この第二塔26から生じる塔頂留分29(これは、カプロラクタム及び該カプロラクタムよりも低い沸点を有する化合物より本質上なる)は、この塔頂留分にカプロラクタム1kg当たり0.6gの純水酸化ナトリウム(濃厚溶液の形態で)を管路39を経て添加した後に、第三蒸留塔31(これも、還流下32、33に作動する)に供給される。第三塔31から塔頂留分34(これは、カプロラクタムよりも低い沸点を有する化合物よりなる)が取り出される。蒸留塔底生成物35は、例示される具体例では、第二塔26に再循環される。この第三塔31から、精製カプロラクタムが中間留分40の形態で抜き出される。この抜出操作は、塔の上方部においてガス状の形態で又は塔の下方部において液状の形態のどちらかで実施される。
【0065】
生成したカプロラクタムの特性は、
過マンガン酸塩価(PNMnO4):2
揮発性塩基含量(NVB):0.25meq/kg
UV価(NUV):0.03
である。
【0066】
本発明の方法に従えば、第二塔26からの蒸留塔底生成物30(これは主としてカプロラクタムよりなり、そしてカプロラクタムよりも高い沸点を有する化合物と硫酸による遊離塩基の中和によって形成された塩とを不純物として含む)は、10ミリバールの圧力及び150℃の温度で作動するスクレーパ付薄膜型蒸発器36に供給される。蒸発したカプロラクタムは、図示される具体例では、管路37を経て第二塔26に再循環される。蒸発されない生成物は管路38を経て取り出される。第一蒸留塔22に供給されたカプロラクタムと第三塔31からの中間留分40の形態で生成されたカプロラクタムとの重量平衡は、関与するカプロラクタムの98.9%が高い好適な純度で回収されることを示す。
【0067】
例3
第二塔からの蒸留塔底生成物30を水の添加によって処理して約80重量%のカプロラクタムを含む溶液を得ることを除いて、例2を反覆する。この混合物に撹拌を施す。撹拌後、2つの液相が形成される。下方の相は、620重量%のアミン硫酸塩(これは、精製プロセスにおいて脱水塔に仕込んだカプロラクタム中に存在するアミンの量の約70%に相当する)を含む水性相である。上方の相(これは、カプロラクタムより本質上なる)は第一蒸留塔に再循環される。この方法によって、蒸留塔に仕込んだカプロラクタムの99%は、この生成物をポリアミドの製造に特に織物用途に使用するのに好適な高い純度で回収される。
【0068】
例4
第二塔からの蒸留塔底生成物30をカプロラクタムの1つの段階おける晶出プロセスによって処理することを除いて、例2を反覆する。蒸留塔底生成物を減圧下に濃縮させて約8重量%の水濃度を得る。濃縮溶液は40℃の温度にあるが、次いでこれを約10℃/hrの冷却速度で20℃の領域の温度に冷却させる。形成した結晶を焼結ガラスフィルターによるろ過によって回収する。回収された水性母液を可能性のある再循環のために貯蔵する。カプロラクタム結晶の固体ケーキをカプロラクタムの飽和水溶液で洗浄する。湿った塩基として洗浄する程度は1〜5回であるのが有益である。回収されたカプロラクタムは、蒸留プロセスに再循環させるのに十分な純度を有する。この方法によって、蒸留塔に仕込んだカプロラクタムの99%は、この生成物をポリアミドの製造に特に織物用途に使用するのに好適な高い純度で回収される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の装置の第一具体例のブロック図を示す。
【図2】 本発明の装置の第二具体例のブロック図を示す。
【符号の説明】
2、22:第一蒸留塔
6、26:第二蒸留塔
11、31:第三蒸留塔
16:スクレーパ付薄膜蒸発器
Claims (13)
- アミノニトリルの環化加水分解によって得られるラクタムを精製するに際し、加水分解反応媒体からアンモニア及び随意成分としての溶剤を除去し、次いで、下記よりなる蒸留工程によって反応媒体から該ラクタムを回収することよりなるラクタムの精製法において:
・ラクタムを脱水する第一の蒸留
・ラクタムより低い揮発性の化合物又は高い揮発性の化合物を分離する第二及び第三の蒸留
精製されたラクタムを第三塔から抜き出し、塩基性化合物をラクタムに少なくとも第二又は第三蒸留工程への供給前に加え、酸性化合物をラクタムに第一蒸留工程中に加えること、及びラクタムよりも揮発性の低い化合物を含む塔底留分をラクタムの大部分を回収するために処理し且つこの回収されたラクタムを精製プロセスに再循環させることを特徴とするラクタムの精製法。 - 蒸留塔底留分の処理が、水、ラクタム水溶液及びラクタムよりなる群から選択される溶剤からラクタムを晶出させるプロセスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 蒸留塔底生成物の処理がラクタムの薄層蒸発プロセスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 蒸留塔底生成物の処理が、蒸留塔底生成物を水洗しそしてラクタムを有機相で回収することを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
- 添加される塩基性化合物の量がラクタム1kg当たり塩基性化合物0.05g〜2gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
- 塩基性化合物がアルカリ金属水酸化物から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
- 酸性化合物が硫酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
- 酸性化合物の添加量が、精製しようとするラクタム中に存在する遊離塩基1モル当たり0.5〜1モルであることを特徴とする請求項1〜4又は7記載の方法。
- 精製されたラクタムを第三蒸留工程の塔頂留分として回収し、この第三蒸留工程の塔底留分がラクタムより低揮発性の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
- 精製されたラクタムを第三蒸留工程の塔底留分として回収し、第二蒸留工程の塔底留分がラクタムより低揮発性の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
- ラクタムが、カプロラクタムであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
- 環化加水分解を、気相中又は液相中で行なうことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
- 環化加水分解を、液相中で、溶媒の存在下で行なうことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
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