JP4234473B2 - 液晶パネルおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶パネルに係り、特に電圧無印加時に液晶が垂直配向している状態を利用する液晶パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
CRTに置き換わる勢いで液晶ディスプレイは発展を遂げてきている。従来一般的に行われてきた液晶表示パネルの製造法を図5に例示すると、図5の上から下に向かって、まず、ステップS51で、配向制御膜を塗布していない基板2を準備し、ステップS52で、基板2上にポリイミドやポリアミック酸などからなる配向制御膜6を塗布し、ステップS53で焼成後、ラビングにより配向処理を施す。ついでステップS54で、基板同士を貼り合わせた後、ステップS55で、液晶1を注入して液晶表示パネルを作製する。
【0003】
従来、アクティブマトリクスを用いた液晶ディスプレイ(LCD)としては、正の誘電率異方性を持つ液晶材料を基板面に水平に、かつ対向する基板間で90度ツイストするように配向させたTN(ツイステッドネマチック)モードの液晶パネルが広く用いられている。しかし、このTNモードは視角特性が悪いという問題を有しており、視角特性を改善すべく種々の検討が行われている。
【0004】
これに替わる方式として、電圧無印加時に負の誘電率異方性を持つ液晶材料を垂直配向させ、かつ基板表面に設けた凹凸部や電極のスリットにより、電圧印加時の液晶の傾斜方向を規制するMVA (Multi−domain Vertical Alignment)方式があり、視角特性を大幅に改善することに成功している。
【0005】
MVA方式の液晶パネルを図1(A),1(B)および図2を例にして説明する。図1(A),1(B)はMVA方式の液晶パネルにおける液晶の配向を示す模式的斜視図であり、図2はMVA方式の液晶パネルにおける液晶の配向方向を示す模式的平面図である。
【0006】
このMVA方式の液晶パネルでは、2枚のガラス基板の間にある誘電率異方性が負の液晶1が、電圧無印加時には、図1(A)に示すように垂直配向されている。一方のガラス基板2には、TFT(thin film transistor、図示されていない)に接続された画素電極が形成されており、他方のガラス基板側3には対向電極が形成されている。そして、画素電極上および対向電極上に、それぞれ凹凸部4が交互に形成されている。
【0007】
TFTがオフ状態の場合、即ち電圧無印加時には、図1(A)に示すように、液晶は基板界面と垂直な方向に配向されている。そして、TFTをオン状態にした場合、即ち電圧印加時には、電界の影響により液晶が水平方向に傾斜するとともに、凹凸部の構造によって液晶1の傾斜方向が規制される。これにより液晶は図1(B)に示すように、一画素内において複数の方向に配向する。たとえば、図2のように凹凸部4が形成されている場合には、液晶1はA、B、CやDの方向にそれぞれ配向する。
【0008】
MVA方式では、配向制御膜で液晶の傾斜方向を規制する必要性がないため、TNモードを代表とする水平配向方式では必ずといっていいほど必要である、ラビングに代表される配向制御膜の配向処理工程を必要としない。これは、プロセス的にはラビングによる静電気やゴミの問題を回避でき、配向処理後の洗浄工程も不要となる利点を与える。また、配向的にもプレチルトのバラツキによるムラの問題等も無く、配向制御膜印刷機や焼成炉等の不使用による設備の簡略化、プロセスの簡略化、歩留まりの向上が可能となり、低コスト化が可能になるという利点もある。しかしながら、このMVA方式においても配向制御膜自体の設置は必要である。
【0009】
従って、MVA方式においても配向制御膜自体の設置を省略できるのであれば、液晶パネルの品質の向上、歩留まりの向上、設備の簡略化、プロセスの簡略化、低コスト化等多くの利益が得られる。
【0010】
さらに、液晶パネル用基板のマザーガラスにおいては、超大型化が急速に進んでおり、配向制御膜印刷装置自体の対応が困難な情勢もあり、配向制御膜省略のメリットは大きい。
【0011】
一方、液晶の配向性を高めるための技術としては、液晶を電離性放射線硬化樹脂マトリックス中に独立した粒子として存在させるもの(たとえば特許文献1参照。)、アルキル側鎖を有する高分子形成性モノマーを液晶とともに硬化させるもの(たとえば特許文献2参照。)、ポリマー網状組織でコーティングした層を有するもの(たとえば特許文献3参照。)、液晶材料として液晶骨格を持った光重合性アクリレートを併用するもの(たとえば特許文献4参照。)等が知られているが、配向制御膜自体を省略できる技術としては未完成であると考えられている。
【0012】
【特許文献1】
特開平5−113557号公報(特許請求の範囲)
【0013】
【特許文献2】
特開平6−265858号公報(特許請求の範囲)
【0014】
【特許文献3】
特開平6−289374号公報(特許請求の範囲)
【0015】
【特許文献4】
特開平8−15707号公報(特許請求の範囲)
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、いままで必要不可欠であると思われていた配向制御膜を省略できる技術を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルにおいて、当該液晶層が、液晶と架橋樹脂とを含んでなり、当該架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分(付着架橋構造部分)と、当該液晶層接触面から立ちあがる末端部分(立ち上がり末端部分)とを有する液晶パネルが提供される。
【0018】
当該液晶層が、架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分(疎水性長鎖末端部分)とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させて形成されたものであること、第一の化合物の架橋性構造部分が極性基構造部分を含んだものであること、極性基構造部分が不純物イオンを発生しないものであること、液晶層中における樹脂組成物の割合が0.1〜10重量%の範囲にあること、第一の化合物の100モルに対し、疎水性長鎖末端部分の割合が50〜95モルの範囲にあること、液晶が負の誘電率異方性を有すること、架橋が、エネルギー線により行われたものであること、疎水性長鎖末端部分が、炭素数6〜18のアルキル基を有すること、第一の化合物の架橋性構造部分が、1分子当たり2以上の重合性二重結合を有したものであること、とりわけ、第一の化合物として、下式(1)または(2)で表される化合物を少なくとも一つ含むこと、
【0019】
【化11】
【0020】
【化12】
【0021】
(式(1),(2)において、R1は疎水性長鎖末端部分、A1は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環、または窒素を含む、3価の基を表し、A2は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環を含む、4価の基を表し、B1,B2,B3はそれぞれ架橋性構造部分を表す。R1,B1,B2,B3は、それぞれ独立に選択できる。)
第一の化合物の架橋性構造部分が、重合活性基と直接結合するかまたは炭素1個を介して結合するベンゼン環構造を少なくとも一つ含むものであること、1以上の第一の化合物が、架橋性構造部分を有し、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たない第二の化合物を含んだものであること、第二の化合物が、芳香環とカルボニル基とをそれぞれ少なくとも一つずつ含むこと、とりわけ、第二の化合物として、下式(3)〜(6)で表される化合物を少なくとも一つ含むこと、
【0022】
【化13】
【0023】
【化14】
【0024】
【化15】
【0025】
【化16】
【0026】
(式(3)〜(6)において、A3とB4とは、それぞれ独立に、ビニレン基またはプロペニレン基を表わす。R3は二価の基を表し、R2とR4とは、それぞれ独立に、水素または枝分かれがあってもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環を表す。R2,R3,R4のうち少なくとも一つは芳香環を表す。k,m,n,pは、それぞれ独立に、0または1を表す。R2〜R4,A3,B4,k,m,n,pは、それぞれ独立に選択できる。)
第二の化合物が5員環構造を有すること、第二の化合物に含まれる5員環構造が酸無水物構造あるいはイミド構造であること、とりわけ、第二の化合物として、下式(7)〜(10)で表される化合物を少なくとも一つ含むこと、
【0027】
【化17】
【0028】
【化18】
【0029】
【化19】
【0030】
【化20】
【0031】
(式(7)〜(10)において、XとYはそれぞれ独立して水素またはメチル基を表し、R7は5員環構造を有する2価の有機基を表す。R8,R10は水素または有機基を表し、R9は2価の有機基を表し、R8,R9,R10のうち少なくとも一つは5員環構造を有する。R11はテトラカルボン酸残基を構成する4価の有機基を表す。k,m,n,pはそれぞれ独立に0あるいは1を表し、qとrとはそれぞれ独立して0以上6以下の整数を表す。R8〜R10,k,m,n,p,q,rは、それぞれ独立に選択できる。)
電圧印加時には凹凸部もしくは電極の抜き部(スリット)により液晶が方向を規制されながら傾斜すること、配向制御膜を有さないこと等が好ましい。
【0032】
本発明の他の一態様によれば、一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルの製造方法において、架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分(疎水性長鎖末端部分)とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させて当該液晶層を形成し、形成された当該液晶層中で、架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分(付着架橋構造部分)と当該液晶層接触面から立ちあがる末端部分(立ち上がり末端部分)とを有するようになした液晶パネルの製造方法が提供される。
【0033】
本発明態様についても、上述した、本発明に係る液晶パネルについての、液晶、疎水性長鎖末端部分、付着架橋構造部分、極性基構造部分、架橋、架橋性構造部分、架橋樹脂、樹脂組成物、第一の化合物、第二の化合物、第三の化合物、凹凸部、電極抜き部、配向制御膜等に関する好ましい態様を適用できることはいうまでもない。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図、式、実施例等を使用して説明する。これらの図、式、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。これらの図において、同一の要素については同一の符号を付すものとする。なお、本明細書において「構造部分」とは、たとえば極性基構造部分という場合、極性基を有する部分を意味する。即ち極性基以外の化学的構造を含む場合もあり得る。たとえば極性基がCOOHである場合に、CH2COOHを極性基構造部分と考えることができる。この「構造部分」は、分子や架橋体の末端部にあっても、中間部にあってもよい。たとえば、CH2OCO−も極性基構造部分に含まれる。これに対し、「末端部分」とは、分子や架橋体の末端部を構成する部分であることを意味する。
【0035】
本発明に係る液晶パネルでは、一対の基板間にある液晶層が液晶と架橋樹脂とを含んでおり、この架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分(付着架橋構造部分)と、当該液晶層接触面から立ちあがる末端部分(立ち上がり末端部分)とを有する。この架橋樹脂は、液晶のダイレクタ方向を規制する役割を果たし、これにより、電圧無印加時に液晶が垂直方向に配向されるものと考えられる。
【0036】
具体的には、後述する疎水性長鎖末端部分が付着架橋構造部分と結合し、液晶層接触面から立ちあがった構造をとり、これにより、電圧無印加時に液晶が垂直方向に配向されるものと考えられる。
【0037】
この架橋樹脂は、架橋性構造部分とある程度の鎖長を成す構造部分とを有する1以上の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させて形成することが可能である。より具体的には、上記化合物として、架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分(疎水性長鎖末端部分)とを有する1以上の第一の化合物を使用することが好ましい。
【0038】
この際、付着架橋構造部分が実現するかどうかは、実際に架橋重合した場合に、液晶層接触面に付着した架橋状態が存在するかどうかを表面分析等で確認することにより知ることが可能である。付着の程度は、液晶パネルとしての表示性能の要求レベルの実情に応じて任意に定めることができる。
【0039】
ある程度の鎖長を成す構造部分が液晶層接触面から立ちあがった構造を有するようになるかどうかは、実際に液晶パネルを構成した場合に、配向制御膜がなくても配向性が得られるかどうかで判断できる。必要とする配向性のレベルは実情に応じて任意に定めることができる。疎水性長鎖末端部分を有する第一の化合物がこのような配向性を実現できる場合が多い。
【0040】
本発明においては、液晶層が、液晶と架橋樹脂とを含んでいると規定しているが、この架橋樹脂の構成要素の内、付着架橋構造部分は液晶層接触面に存在し、立ち上がり末端部分も付着架橋構造部分付近に存在する。従って、液晶とは別個の層をなしていると見なせる場合もある。架橋樹脂は液晶層の両側にある液晶層接触面に形成されるのが普通であるので、液晶層が、液晶が主に含まれる層と架橋樹脂よりなる層との二つよりなると見ることができる場合が多い。
【0041】
たとえば、架橋性構造部分とある程度の鎖長を成す構造部分とを有する1以上の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させてこの架橋樹脂を形成する場合には、架橋前には樹脂組成物は液晶と均一に混合された状態にあるのに対し、架橋樹脂が形成される状態では、架橋樹脂と液晶とがほぼ分離された状態となり得るのである。ただし、本発明では、液晶中に他の架橋樹脂が共存する態様であってもよい。
【0042】
また、上記第一の化合物は、一つの分子が架橋性構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有する場合に限られず、架橋性構造部分を有する化合物と疎水性長鎖末端部分を有する化合物との混合物であってもよい。
【0043】
付着架橋構造部分は、極性基構造部分を含んだものであることが好ましい。極性基構造部分があると、付着架橋構造部分が液晶層接触面により強固に付着するからである。極性基構造部分は、架橋樹脂についても、上記第一の化合物についての場合と同様の意味で使用されている。詳細については後述する。
【0044】
架橋性構造部分としては、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基等の重合性二重結合を有し、紫外線照射等のエネルギー線により他の分子と重合可能である光反応基を有する構造部分を例示することができる。第一の化合物の架橋性構造部分が、1分子当たり2以上の重合性二重結合を有したものであると、反応性が高くなり、また単体でも網目状の高分子膜を形成可能であるため、架橋構造を容易に構成でき、好ましい。たとえば一つの化合物の2以上の端部またはその近傍に重合性二重結合を有する場合を例示できる。ただし、第一の化合物としては、「1以上の第一の化合物」の全体として架橋性構造部分を有していれば十分であり、従って、たとえば1分子当たり一つの重合性二重結合を有し、ポリマー鎖を伸張するだけでそれ自身では架橋する能力のない化合物を含む場合も、「架橋性構造部分を有する1以上の第一の化合物」の範疇に属し得る。
【0045】
なお、本発明に係る架橋性構造部分はこのようにエネルギー線で架橋を生じるものが架橋構造を容易に実現でき、好ましいため、主に光官能性の基を有する構造について説明するが、他の種類のエネルギー線や熱等他のエネルギーによって架橋できるものも本発明の範疇に含まれることはいうまでもない。エネルギー線や熱は併用してもよい。
【0046】
疎水性長鎖末端部分は、液晶の配向方向を疎水性長鎖末端部分の長さ方向に均一に配向させる役割を有する。炭素数が3以上の直鎖部を有するとこの役割を発揮しやすい。疎水性長鎖末端部分は、炭素数6〜18のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数12〜18のアルキル基を有することがさらに好ましい。疎水性とは極性基等を有さず、化学的には親水性ではない程度のことを意味する。
【0047】
疎水性を必要とするのは、基板面等の液晶層接触面が通常紫外線等で親水化処理されるので、そのような親水性を有する液晶層接触面との付着を防止し、液晶層接触面から立ちあがった構造を取り易くするためである。典型的には、炭素と水素とからなることが好ましい。
【0048】
第一の化合物の架橋性構造部分が極性基構造部分を含んだものであると、付着架橋構造部分の液晶層接触面への付着が容易になり、より優れた配向性を実現できる。この目的のための極性基の種類や1分子当たりに含まれる数には特に制限はないが、樹脂組成物の架橋後の架橋樹脂としては、液晶パネルとしての信頼性を保つため、液晶内に不純物イオンを放出しないものであることも重要である。このためには、第一の化合物の架橋性構造部分の有する極性基構造部分が不純物イオンを発生しないものであることが好ましい。従って、たとえば、Clイオンを放出しやすい−SiCl3基のような官能基を有するものは避けた方が好ましい場合が多い。好ましい極性基としては、CN、CO、COOH、COOR、OH、ORを例示することができる。なお、Rは有機基を意味する。
【0049】
この液晶パネルは、たとえば次のように作製することができる。第一に、配向制御膜を塗布形成していない基板を用い、その間に、たとえば光反応基を有する構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有する紫外線硬化性化合物と液晶とを含んでなる液晶層を挟持した後、紫外線硬化して、疎水性長鎖末端部分と結合した付着架橋構造部分が基板表面上に形成されるようにする。
【0050】
図3(A),(B)に本発明の基本原理を例示する。液晶と樹脂組成物とを含む未硬化の液晶組成物の注入直後には図3(A)に示すように、架橋性構造部分31と疎水性長鎖末端部分32とを有する第一の化合物5と液晶1とは、液晶層接触面8に対し水平配向状態にある。液晶層接触面8の表面には何も形成されていない。
【0051】
なお、本発明において液晶層接触面というときは、単なる基板の面を意味するものではなく、実際に液晶層が接する層の面を意味する。たとえば、フィルタ層を介して基板と液晶層とが積層し、実際には液晶層が基板の表面ではなくフィルタの表面に接する場合には、本発明における液晶層接触面は液晶と接するフィルタ面を意味する。フィルタ面がたとえば親水化加工してあればその加工面を意味する。
【0052】
この状態で、たとえば紫外線を照射することにより、図3(B)に示すように、架橋性構造部分31が互いに架橋して付着架橋構造部分33を形成し、疎水性長鎖末端部分32は、液晶層接触面8から立ち上がる配置を取り、立ち上がり末端部分34を形成することが判明した。
【0053】
この様子を更に他の模式図で示すと、図6,7のように表せる。図6は液晶層接触面を横から見た図、図7は上から見た図である。図6から、付着架橋構造部分33が液晶層接触面8に付着している様子と立ち上がり末端部分34が立ち上がっている様子が、図7から、付着架橋構造部分33が絡み合って網目状構造を形成して液晶層接触面8に付着している様子が見られる。
【0054】
付着架橋構造部分33が実際に液晶層接触面に付着していることは、液晶層接触面を取り出し、洗浄等を行った後、その表面を分析することで容易に確認することができる。また、立ち上がり末端部分34が実際に立ち上がっていることは、液晶1が垂直配向を示す事実で容易に確認することができる。このようにして、電圧無印加時に液晶1を垂直配向させることが可能となる。
【0055】
この構成による配向は、従来からある高分子分散液晶(PDLC)と呼ばれるものとは異なり、液晶層全体に渡って液晶の配向を可能とするためのポリマーを形成するものではなく、液晶層接触面に形成された薄膜状の付着架橋構造部分33と立ち上がり末端部分34との協同作用により配向制御を行うものと考えることができる。なお、薄膜状の付着架橋構造部分33は、通常、二つの液晶層接触面のいずれにも生じる。
【0056】
本発明に使用できる第一の化合物としては、具体的には、上記式(1)または(2)で表される化合物を少なくとも一つ含むことが好ましい。式(1),(2)において、R1は疎水性長鎖末端部分、A1は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環、または窒素を含む、3価の基を表し、A2は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環を含む、4価の基を表し、B1,B2,B3はそれぞれ架橋性構造部分を表す。R1,B1,B2,B3は、それぞれ、他の箇所における式を含めて独立に選択できる。
【0057】
式(1)であらわされる化合物としては、下式(11)〜(13)の構造を有する材料を例示することができる。
【0058】
【化21】
【0059】
【化22】
【0060】
【化23】
【0061】
式(2)であらわされる化合物としては、下式(14),(15)の構造を有する材料を例示することができる。
【0062】
【化24】
【0063】
【化25】
【0064】
式(1),(2),(11)〜(15)で表される化合物を例にして、これまでに説明した架橋性構造部分、付着架橋構造部分、立ち上がり末端部分、疎水性長鎖末端部分、極性基構造部分について説明すると、B1,B2,B3が架橋性構造部分であって、付着架橋構造部分を形成する能力を有し、R1が立ち上がり末端部分または疎水性長鎖末端部分を形成し、OCO(またはCOO)結合が極性基構造部分を形成する。
【0065】
化合物の架橋性構造部分が極性基構造部分を含んだものの例としては、さらに、たとえば、下式(16),(17)の構造を有する材料を例示することができる。この場合は、COOH等が極性基構造部分を形成する。
【0066】
【化26】
【0067】
【化27】
【0068】
なお、紫外線等による第一の化合物の反応をよくするためには、第一の化合物の架橋性構造部分が、ベンゼン環を重合性二重結合等の重合活性基の近傍に導入したものであることが望ましい。より具体的には重合活性基と直接結合するかまたは炭素1個を介して結合するベンゼン環構造を少なくとも一つ含むものであることが望ましい。ベンゼン環が光に対する増感作用を有するためであり、また、配向性の向上にもつながるからである。さらに液晶の構造との類似性が高まるため、液晶への可溶性という点でも優れた材料を得やすい。このような材料としては、下式(18),(19)の構造を有する材料を例示することができる。
【0069】
【化28】
【0070】
【化29】
【0071】
なお、上記において、疎水性長鎖末端部分および極性基構造部分としては、アルキル鎖とカルボン酸基との組み合わせを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の化学構造も採用できることはいうまでもない。
【0072】
ここで、本発明に関し、付着架橋構造部分が極性基構造部分を含む場合について説明する。従来、架橋樹脂としては、図4(A)に示すように極性基構造部分41、すなわち材料中の極性が大きい部分が液晶層接触面8に吸着され、疎水性長鎖末端部分32が液晶層接触面8に対し垂直方向に立つように配列した状態を形成するものが知られている。この段階で液晶を基板面に対して垂直方向に配向させることが可能となる。しかし、この状態では熱的に不安定であり、液晶層接触面から解離し易い。
【0073】
検討の結果、図3(B)の付着架橋構造部分33に極性基構造部分を持たせることで、液晶層接触面からの解離を有効に防止でき、熱的にも安定化させることができることが判明した。この場合の付着架橋構造部分33と極性基構造部分とが存在する位置関係には特に制限はなく、材料の入手のし易さや、液晶層接触面からの解離防止性等から適宜決定することができるが、一つの典型例では、図4(B)に示すように、疎水性長鎖末端部分32と極性基構造部分41との間に付着架橋構造部分33のうちの架橋構造部分42が挟まれた構造とすることで、恐らく付着架橋構造部分33のうちの架橋構造部分42が被膜状になり、より安定した配向制御機能を発揮することになる。
【0074】
このような構造を実現すると、従来から液晶配向に用いられてきた配向制御膜印刷といった処理を要することなく、配向制御膜を採用する場合と同等レベルの安定した液晶の配向制御が可能となる。
【0075】
上記の構造を有する第一の化合物は、単独で使用してもよいが、複数混合したり、架橋剤、触媒、反応促進剤等の他の物質を共存させていてもよい。
【0076】
1以上の第一の化合物が、架橋性構造部分を有し、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たない第二の化合物を含んだものであることが好ましい場合がある。たとえば、疎水性長鎖末端部分を持たない、1分子中に複数の重合活性基を有する架橋性構造部分のみからなる第二の化合物を共存させることにより、液晶層接触面に付着した付着架橋構造部分から立ちあがる立ち上がり末端部分の相互間隔を広く開けた状態とすることができ、このことにより、液晶の垂直配向性をより高めることも可能である。特に、立ち上がり末端部分としてアルキル基を使用する場合、アルキル基同士は吸着し易いという性質があるため、このように相互間隔を広く開けた状態とすることは有用である。第二の化合物は複数使用してもよい。
【0077】
なお、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たないかどうかは、立ち上がり末端部分の相互間隔を広く開けた状態とすることができ、このことにより、液晶の垂直配向性をより高められるかどうか等から適宜定めることができる。単なるメチル基やエチル基は、一般的には、疎水性長鎖末端部分には該当しない。
【0078】
更に、イオントラップ等の信頼性向上に関する役割を有する他の剤を共存させたり、本発明に係る第一の化合物にこの役割を持たせたりすることもできる。このようにすることにより、第一の化合物の選択範囲を大きく広げることも可能である。
【0079】
第二の化合物が、芳香環とカルボニル基とをそれぞれ少なくとも一つずつ含むことが好ましい。液晶層接触面への付着がより強固なものとなるためである。
【0080】
このような第二の化合物としては、上記式(3)〜(6)で表される化合物を例示できる。式(3)〜(6)において、A3とB4とは、それぞれ独立に、ビニレン基またはプロペニレン基を表わす。R3は二価の基を表し、R2とR4とは、それぞれ独立に、水素または枝分かれがあってもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環を表す。R2,R3,R4のうち少なくとも一つは芳香環を表す。k,m,n,pは、それぞれ独立に、0または1を表す。R2〜R4,A3,B4,k,m,n,pは、それぞれ、他の箇所における式を含めて独立に選択できる。
【0081】
ここで、上で述べた二価の基(R3)とは、例えばメチレン基や1,4‐フェニレン基,4,4’−ビフェニレン基などのことを言う。すなわち以下のようなものである。
【0082】
【化30】
【0083】
式(3)〜(6)で表される化合物としては以下のようなものがある。
【0084】
【化31】
【0085】
【化32】
【0086】
【化33】
【0087】
【化34】
【0088】
また、第二の化合物が5員環構造を有することも同様に好ましい。5員環構造としては、シクロペンタン,シクロペンテン,シクロペンタジエン,フラン,ピロール,インデン,無水コハク酸,無水マレイン酸,無水フタル酸等の酸無水物構造,コハク酸イミド,マレイン酸イミド,フタル酸イミド等のイミド構造が挙げられる。上記の構造を有するものとしては、具体的には以下のようなものがある。なお、置換基の場所は例示した場所には限らない。
【0089】
第二の化合物としては、上記式(7)〜(10)で表される化合物を例示できる。式(7)〜(10)において、XとYはそれぞれ独立して水素またはメチル基を表し、R7は5員環構造を有する2価の有機基を表す。R8,R10は水素または有機基を表し、R9は2価の有機基を表し、R8,R9,R10のうち少なくとも一つは5員環構造を有する。R11はテトラカルボン酸残基を構成する4価の有機基を表す。k,m,n,pはそれぞれ独立に0あるいは1を表し、qとrとはそれぞれ独立して0以上6以下の整数を表す。R8〜R10,k,m,n,p,q,rは、それぞれ、他の箇所における式を含めて独立に選択できる。
【0090】
式(7)〜(10)で表される化合物としては以下のようなものがある。
【0091】
【化35】
【0092】
【化36】
【0093】
【化37】
【0094】
【化38】
【0095】
式(3)〜(10)で表される化合物を用いると、共鳴安定化のためより少ないエネルギーで反応するようになる。すなわち芳香環やカルボニル基や5員環の無い場合に比べて反応しやすくなる。また、これにより重合開始剤の添加量を少なくすることもできるので、信頼性の向上にもつながる。たとえば、重合開始剤が多いと分子量の小さい反応生成物が副生することがあるため、添加量の少ないことが望ましい。
【0096】
第二の化合物は、架橋性構造部分を有するが、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たないため、疎水性長鎖末端部分を持ち、重合活性基を一つ有する第三の化合物と共に使用すると、この疎水性長鎖末端部分が立ち上がり末端部分を構成できるため好ましい。第三の化合物は複数使用してもよい。
【0097】
第三の化合物としては、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0098】
【化39】
【0099】
このような長鎖アルキル基を有するようなものを用いると、このアルキル基の部分が網目状の付着架橋構造部分の平面より延び上がり、これにより液晶が垂直配向性を示すので、式(3)〜(10)で表される化合物と混合し、たとえば、液晶として負の誘電率異方性を有する液晶を用い、エネルギーとして紫外線を照射することにより、配向制御膜を塗布しなくても垂直配向の液晶パネルを作製することができる。この場合、電圧印加時には凹凸部もしくは電極の抜き部により液晶が方向を規制されながら傾斜するようにしておけば、特定の方位に傾斜させることが可能である。
【0100】
なお、アルキル基同士の親和性が大きいことから、上記すべての化合物について、疎水性長鎖末端部分がアルキル基を含む場合には、疎水性長鎖末端部分の立ち上がりを妨げないよう、架橋性構造部分がアルキレン構造を有さないか、あっても短い方が望ましい場合が多い。従って、このような場合には、式(3)〜(6)のR3や式(7)〜(10)のCH2の長さについてはこの点からの配慮を加える必要がある場合が多い。
【0101】
本発明に使用できる液晶については特に制限はなく、公知のものを使用することができる。たとえば、メルク社製のMLC−6608を例示することができる。
【0102】
本発明に係る液晶パネルの製造方法では、一対の基板間に液晶層が挟持された架橋性構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させて当該液晶層を形成し、形成された液晶層中で、架橋樹脂が、付着架橋構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有するようにする。疎水性長鎖末端部分が液晶層接触面から立ちあがった構造を有するようにすることが好ましい。
【0103】
本発明に係る液晶パネルの製造方法を図8により例示すると、図8の上から下に向かって、まず、ステップS81で、配向制御膜を塗布していない基板2を準備し、ステップS82で貼り合わせた後、ステップS83で、液晶と樹脂組成物とを含む未硬化の液晶組成物9を注入し、ステップS84で、紫外線を照射することで、液晶と架橋樹脂とよりなる液晶層10が形成された液晶表示パネルが作製される。液晶層10は基板2とシール材7とでシールされる。液晶組成物の注入は、真空注入方式によるよりも、滴下注入法による方が、製造工程が簡略化し低コスト化に寄与する。また、真空注入工程と比較して、液晶の材料選択性が大となり、垂直配向性の向上に寄与する。
【0104】
形成された液晶層中で、架橋樹脂が、付着架橋構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有するようにしたり、疎水性長鎖末端部分が液晶層接触面から立ちあがった構造を有するようにするには、液晶、架橋性構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有する1以上の第一の化合物、その他の共存材料の組み合わせや濃度、架橋反応温度、架橋手段、与えるエネルギーの強度等を適宜選択することによって行うことができる。液晶層中における樹脂組成物の割合、すなわち、樹脂組成物と液晶とを含む未硬化の液晶組成物中における、樹脂組成物の濃度としては、0.1〜10重量%が好ましい。また、第一の化合物の100モルに対し、疎水性長鎖末端部分の割合が50〜95モルの範囲にあることが好ましい。適切な割合の付着架橋構造部分と立ち上がり末端部分とが形成されるからである。なお、第一の化合物の100モルに対し、疎水性長鎖末端部分の割合が50〜95モルの範囲とは、たとえば、第一の化合物が、上記したように架橋性構造部分を有する化合物と疎水性長鎖末端部分を有する化合物との混合物である場合、その混合物に対する疎水性長鎖末端部分の割合が、その混合物の100分子に対して50〜95個であることを意味する。
【0105】
本発明に係る液晶パネルの製造方法についても、上述した、本発明に係る液晶パネルについての、液晶、疎水性長鎖末端部分、付着架橋構造部分、極性基構造部分、架橋、架橋性構造部分、架橋樹脂、樹脂組成物、第一の化合物、第二の化合物、第三の化合物、凹凸部、電極抜き部、配向制御膜等に関する態様を適用できることはいうまでもない。
【0106】
本発明に係る液晶パネルによれば、配向制御膜が設置されていなくても、電圧無印加時に液晶が垂直配向するようになすことができる。ただし、配向制御膜を設置してもよい。
【0107】
また、本発明に係る液晶パネルの製造方法によれば、配向制御膜印刷機や焼成炉等の不使用による設備の簡略化が実現でき、またプロセスを簡略化でき、これにより、液晶パネルの品質の向上、歩留まりの向上、低コスト化等多くの利益が得られる。また、液晶パネル用基板のマザーガラスの超大型化にも対応が容易になる。
【0108】
本発明は、液晶が、負の誘電率異方性を有し、電圧無印加時にほぼ垂直配向し、電圧印加時には基板上に形成された凹凸部もしくは電極の抜き部により方向を規制されながら傾斜するようになした液晶パネルについて適用する場合に特に有用である。
【0109】
本発明に係る液晶パネルは、駆動装置等を付設することにより、もっとも典型的には、パーソナルコンピュータのディスプレーやテレビジョン受像器等の液晶表示装置に利用することができるが、液晶の作用により、光線の透過の仕方を制御する機能を必要とするその他のどのような用途にも使用することができることは言うまでもない。たとえば、液晶シャッタ、液晶プロジェクタ、液晶ビュイファインダーを例示することができる。
【0110】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。
【0111】
[実施例1]
評価用セルにはITO(インジウム錫酸化物)を電極として表面に形成したガラス基板2枚を用い、配向制御膜を形成せず、セル厚4.25μmとなるように張り合わせた。このようにして作製した評価用セルの表面に紫外線を1500mJ/cm2照射してセル表面を親水化処理した。
【0112】
次に、下式(20)で表されるモノマーを作製し、負の誘電率異方性を有するメルク社製の液晶(液晶A)の100重量部に対し、このモノマーを0.5重量部、Irg651(チバスペシャルティケミカルズ社製イルガキュア651を0.1重量部添加して、評価用セルに注入し、封止をした。式(20)のR51部分はアルキル基であり、ここではC12H25を用いた。この式(20)で表されるモノマーが、架橋性構造部分と疎水性長鎖末端部分とを有する第一の化合物に該当する。
【0113】
【化40】
【0114】
この直後の評価用セルの配向状態を観察したところ、電圧無印加時に流動性配向が見られ、水平配向と垂直配向が混在した状態であった。
【0115】
その後、流動性配向の消去等の目的のため、評価用セルを90℃で30分アニール処理し、冷却後、無偏光の紫外線を300mJ/cm2照射し、モノマーを架橋した。その後配向を観察したところ、電圧無印加時に、評価用セルの全領域で完全な垂直配向が得られていた。
【0116】
[比較例1]
式(20)で表されるモノマーに代えて、同量のラウリルアクリレートCH2=CHCOOC12H25を使用した以外は実施例1と同様の実験を行った。
【0117】
その結果、紫外線照射前後でほとんど配向に変化が見られず、電圧無印加時に良好な垂直配向を得ることができなかった。
【0118】
次に、液晶の100重量部に対して、モノマーを1.5重量部、重合開始剤としてIrg651を0.1重量部添加し、紫外線照射を行ったが、それでも、電圧無印加時に、全体に垂直配向を得ることはできなかった。
【0119】
[実施例2]
式(20)で表されるモノマーに代えて同量のラウリルアクリレートCH2=CHCOOC12H25を使用し、更に、液晶の100重量部に対して0.15重量部の、式(21)で表される、架橋性構造部分を有し、疎水性長鎖末端部分を持たない第二の化合物を使用した以外は実施例1と同様の実験を行った。この場合、ラウリルアクリレートが疎水性長鎖末端部分を有していたと見なすことができる。
【0120】
【化41】
【0121】
その結果、電圧無印加時に、全面に垂直配向を得ることができた。ただし、図1,2に示したMVA構造を有するTFT液晶パネルに適用し、クロスニコル下による顕微鏡観察を行った結果、図9(A)に示すような白い線状の欠陥(配向不十分の部分)が観察された。このような白い線状の欠陥は、ざらついた感じの画像を与える原因となり得る。このような欠陥は、式(21)で表される化合物の量を調整することにより解消することができ、図9(B)に示すような欠陥(のない表示面が観察された。
【0122】
[実施例3]
式(20)に代えて、式(20)−1で表されるモノマーを使用した以外は、実施例1と同様の実験を行った。
【0123】
その結果、紫外線照射のみでは、照射前後でほとんど配向に変化が見られなかったが、重合開始剤としてIrg651を液晶の100重量部に対して0.1重量部添加し、紫外線照射を行った結果、全体に垂直配向を得ることができた。ただし、僅かに液晶が傾斜し、グレーかかった領域が部分的に残っていた。
【0124】
そこで、式(21)で表されるモノマーを、実施例2の場合と同様に添加したところ、MVAパネルにおいて、図9(B)に示すような完全に全面垂直配向を得ることができた。また液晶駆動時における、ダイレクタ方向においても全く問題無くスイッチングさせることができていた。
【0125】
【化42】
【0126】
[実施例4]
実施例1と同様の実験を、R51のアルキル基の長さを変化させて行い、配向状態の変化を見た。
【0127】
炭素数6(C6H13)より長くしていくと顕著な垂直配向が得られた。特に、ベンゼン環を導入したものについては炭素数7〜8程度の長さのもので顕著な垂直配向が得られた。単純なアルキルについても炭素数10〜12程度の長さで顕著な垂直配向が得られた。
【0128】
一方、炭素数が18(C18H37)を超えたものについては、アルキルが折れ曲がって直鎖となっていないためか、垂直配向性が低下していく様子が見られた。また、炭素数18を超える程度以上から、モノマーの濃度分布に起因すると思われる配向むらが見られるようになった。
【0129】
[比較例2]
極性基構造部分が不純物イオンを有する場合の影響を見るためのモデル実験として、基板表面の水酸基と化学結合可能な材料、ステアリルトリクロロシランCH3(CH2)17SiCl3を、液晶の100重量部に対して2.0重量部添加した以外は実施例1と同様にして、評価用セルを作製した。その結果、垂直配向させることはできたが、セルの電圧保持率はゼロで、導通状態であった。不純物として液晶中にH+やCl-が溶出していることが判明した。同様に、SDSやCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)のように末端の親水基がイオン系の材料は全てイオン性不純物が液晶中に放出されてしまい、保持率がTFT駆動可能なレベル(97%程度以上)を大幅に下回る結果であった。
【0130】
[実施例5]
式(20)で表されるモノマーと、アルキレン骨格を有する二官能モノマーCH2=CHCOO(CH2)11OCOCH=CH2とをモル比で20:1のわりあいで混合し、液晶Aの100重量部に対して0.5重量部溶かして、実施例1と同様に処理した評価用セルに注入し、封止をした。ここで、式(20)で表されるモノマーのR51としてはC18H37を用い、開始剤としてIrg651を液晶の100重量部に対し0.1重量部添加した。
【0131】
90℃、30分のアニール処理を施した後の配向状態を観察したところ、ITO電極部等で部分的に垂直配向をしていた。無偏光の紫外線を300mJ/cm2照射した後の配向状態を観察したところ、電圧無印加時に垂直配向を示した。ただし、図9Bに示すような完全に欠陥が解消した状態には至らなかった。
【0132】
[実施例6]
式(22)で表されるモノマーと式(21)で表されるモノマーとをモル比で20:1の割合に混合したもの、および式(23)で表されるモノマーと式(21)で表されるモノマーとをモル比で20:1の割合に混合したものを、液晶Aの100重量部に対して、それぞれ0.4重量部溶かして、実施例1と同様に処理した評価用セルに注入し、封止をした。ここで、式(22)のR81と式(23)のR91とはアルキル基を意味し、ここでは、C12H25を使用した。開始剤としてIrg651を液晶Aの100重量部に対し0.1重量部添加した。
【0133】
【化43】
【0134】
【化44】
【0135】
90℃、30分のアニール処理を施した後、無偏光の紫外線を300mJ/cm2照射したパネルの配向状態を確認したところ、両者とも、電圧無印加時に良好な垂直配向状態を得ることができた。
【0136】
これらの紫外線照射後のセルを解体し、液晶をイソプロピルアルコールにて洗い流し、液晶と接していた側の基板表面を観察したところ、ポリマーの皮膜が残存していることが確認された。再度基板を張り合わせ、液晶を注入し、配向状態を観察したところ、解体前に得られていた垂直配向状態とおおよそ同一の垂直配向状態が得られていることが確認できた。
【0137】
[実施例7]
図1,2に示したMVA構造を有するTFT液晶パネルに、式(20)−2で表されるモノマーと式(21)で表されるモノマーとをモル比で20:1の割合に混合し、液晶Aの100重量部に対し0.1重量部溶かして実施例1と同様に処理した評価セルに注入し、封止をした。ここで、R51およびR52としてはC12H25を用い、開始剤としてIrg651を、液晶の100重量部に対し0.1重量部添加した。
【0138】
90℃、30分のアニール処理を施した後、無偏光の紫外線を300mJ/cm2照射したパネルの配向状態を確認したところ、電圧無印加時に、従来MVAパネルと同レベルの黒輝度を得ることが出来た。また液晶駆動時におけるダイレクタ方向においても全く問題無くスイッチングさせることができることが確認された。
【0139】
TFT側の突起を電極抜き部に変更して同様の実験を行ったが、同様の好結果を得た。
【0140】
【化45】
【0141】
[実施例8]
洗浄を行ったガラス基板の一方に三井化学社製の熱硬化性シール剤を用いてシールパターンを形成し、エタノールを用いて、もう一方の基板に粒径が4μmのスペーサ(積水ファインケミカル製)を湿式散布した。両基板を貼りあわせ、真空パックした後に135℃にて焼成を行い、空パネルを形成した。
【0142】
本発明に係る、架橋性構造部分を有し、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たない第二の化合物として、式(24)で表される化合物を使用し、疎水性長鎖末端部分を持ち、重合活性基を一つ有する第三の化合物として、式(25)で表される化合物を使用し、これらを混合した。
【0143】
【化46】
【0144】
【化47】
【0145】
混合比は、モル比として式(24)で表される化合物:式(25)で表される化合物=1:15とした。この混合物を液晶Aの100重量部に対し2重量部混合した。さらに重合開始剤としてIrg184(イルガキュア184)を、液晶の100重量部に対し0.1重量部混合した。
【0146】
上記混合物を空パネルに注入した後、紫外線を照射して液晶表示パネルを作製した。紫外線は10mW/cm2で1分照射し、照射は室温で行った。電圧無印加時に、紫外線の照射前は水平配向であったが、紫外線を照射した後は均一な垂直配向となった。
【0147】
[実施例9]
第二の化合物として、式(26)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0148】
【化48】
【0149】
[実施例10]
第二の化合物として、式(27)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0150】
【化49】
【0151】
[実施例11]
第二の化合物として、式(28)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0152】
【化50】
【0153】
[実施例12]
第二の化合物として、式(29)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0154】
【化51】
【0155】
[実施例13]
第二の化合物として、式(30)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0156】
【化52】
【0157】
[実施例14]
第二の化合物として、式(31)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0158】
【化53】
【0159】
[実施例15]
第二の化合物として、式(32)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0160】
【化54】
【0161】
[実施例16]
第二の化合物として、式(33)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0162】
【化55】
【0163】
[実施例17]
第二の化合物として、式(34)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0164】
【化56】
【0165】
[実施例18]
第二の化合物として、式(35)のモノマーを用いたこと以外は実施例8と同様にして液晶表示パネルを作製した。紫外線を照射することにより、電圧無印加時に均一な垂直配向を得ることができた。
【0166】
【化57】
【0167】
しかしながら、この液晶パネルに、30Hz、10Vの電圧を1時間印加すると、印加後の表示面に白線が若干観察された。
【0168】
これはこのモノマーを用いた時の網目構造が柔らかく、電圧印加により発生した配向乱れが電圧を取り除いた後も残り易くなるためであると考えられる。
【0169】
上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0170】
(付記1) 一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルにおいて、
当該液晶層が、液晶と架橋樹脂とを含んでなり、
当該架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分(付着架橋構造部分)と、当該液晶層接触面から立ちあがる末端部分(立ち上がり末端部分)とを有する、
液晶パネル。
【0171】
(付記2) 当該液晶層が、架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分(疎水性長鎖末端部分)とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させて形成されたものである、付記1に記載の液晶パネル。
【0172】
(付記3) 前記第一の化合物の架橋性構造部分が極性基構造部分を含んだものである、付記1または2に記載の液晶パネル。
【0173】
(付記4) 前記極性基構造部分が不純物イオンを発生しないものである、付記3に記載の液晶パネル。
【0174】
(付記5) 前記液晶層中における樹脂組成物の割合が0.1〜10重量%の範囲にある、付記2〜4のいずれかに記載の液晶パネル。
【0175】
(付記6) 前記第一の化合物の100モルに対し、疎水性長鎖末端部分の割合が50〜95モルの範囲にある、付記2〜5のいずれかに記載の液晶パネル。
【0176】
(付記7) 前記液晶が負の誘電率異方性を有する、付記1〜6のいずれかに記載の液晶パネル。
【0177】
(付記8) 前記疎水性長鎖末端部分が、炭素数6〜18のアルキル基を有する、付記2〜7のいずれかに記載の液晶パネル。
【0178】
(付記9) 前記第一の化合物の架橋性構造部分が、1分子当たり2以上の重合性二重結合を有したものである、付記2〜8のいずれかに記載の液晶パネル。
【0179】
(付記10) 前記第一の化合物として、下式(1)または(2)で表される化合物を少なくとも一つ含む、付記2〜9のいずれかに記載の液晶パネル。
【0180】
【化58】
【0181】
【化59】
【0182】
(式(1),(2)において、R1は疎水性長鎖末端部分、A1は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環、または窒素を含む、3価の基を表し、A2は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環を含む、4価の基を表し、B1,B2,B3はそれぞれ架橋性構造部分を表す。R1,B1,B2,B3は、それぞれ独立に選択できる。)
【0183】
(付記11) 前記第一の化合物の架橋性構造部分が、重合活性基と直接結合するかまたは炭素1個を介して結合するベンゼン環構造を少なくとも一つ含むものである、付記2〜10のいずれかに記載の液晶パネル。
【0184】
(付記12) 前記1以上の第一の化合物が、架橋性構造部分を有し、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たない第二の化合物を含んだものである、付記2〜11のいずれかに記載の液晶パネル。
【0185】
(付記13) 前記第二の化合物が、芳香環とカルボニル基とをそれぞれ少なくとも一つずつ含む、付記12に記載の液晶パネル。
【0186】
(付記14) 前記第二の化合物として、下式(3)〜(6)で表される化合物を少なくとも一つ含む、付記13に記載の液晶パネル。
【0187】
【化60】
【0188】
【化61】
【0189】
【化62】
【0190】
【化63】
【0191】
(式(3)〜(6)において、A3とB4とは、それぞれ独立に、ビニレン基またはプロペニレン基を表わす。R3は二価の基を表し、R2とR4とは、それぞれ独立に、水素または枝分かれがあってもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環を表す。R2,R3,R4のうち少なくとも一つは芳香環を表す。k,m,n,pは、それぞれ独立に、0または1を表す。R2〜R4,A3,B4,k,m,n,pは、それぞれ独立に選択できる。)
【0192】
(付記15) 前記第二の化合物が5員環構造を有する、付記12〜14のいずれかに記載の液晶パネル。
【0193】
(付記16) 前記第二の化合物に含まれる5員環構造が酸無水物構造あるいはイミド構造である、付記15に記載の液晶パネル。
【0194】
(付記17) 前記第二の化合物として、下式(7)〜(10)で表される化合物を少なくとも一つ含む、付記15または16に記載の液晶パネル。
【0195】
【化64】
【0196】
【化65】
【0197】
【化66】
【0198】
【化67】
【0199】
(式(7)〜(10)において、XとYはそれぞれ独立して水素またはメチル基を表し、R7は5員環構造を有する2価の有機基を表す。R8,R10は水素または有機基を表し、R9は2価の有機基を表し、R8,R9,R10のうち少なくとも一つは5員環構造を有する。R11はテトラカルボン酸残基を構成する4価の有機基を表す。k,m,n,pはそれぞれ独立に0あるいは1を表し、qとrとはそれぞれ独立して0以上6以下の整数を表す。R8〜R10,k,m,n,p,q,rは、それぞれ独立に選択できる。)
【0200】
(付記18) 電圧印加時には凹凸部もしくは電極の抜き部により液晶が方向を規制されながら傾斜する、付記1〜17のいずれかに記載の液晶パネル。
【0201】
(付記19) 一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルの製造方法において、
架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分(疎水性長鎖末端部分)とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、液晶の存在下架橋させて当該液晶層を形成し、
形成された当該液晶層中で、架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分(付着架橋構造部分)と当該液晶層接触面から立ちあがる末端部分(立ち上がり末端部分)とを有するようになした、
液晶パネルの製造方法。
【0202】
(付記20) 前記第一の化合物の架橋性構造部分が極性基構造部分を含んだものである、付記19に記載の液晶パネルの製造方法。
【0203】
(付記21) 前記極性基構造部分が不純物イオンを発生しないものである、付記20に記載の液晶パネルの製造方法。
【0204】
(付記22) 前記液晶層中における樹脂組成物の割合が0.1〜10重量%の範囲にある、付記19〜21のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0205】
(付記23) 第一の化合物の100モルに対し、疎水性長鎖末端部分の割合が50〜95モルの範囲にある、付記19〜22のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0206】
(付記24) 前記液晶が負の誘電率異方性を有する、付記19〜23のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0207】
(付記25) 前記架橋が、エネルギー線により行われたものである、付記19〜24のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0208】
(付記26) 前記疎水性長鎖末端部分が、炭素数6〜18のアルキル基を有する、付記19〜25のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0209】
(付記27) 前記第一の化合物の架橋性構造部分が、1分子当たり2以上の重合性二重結合を有したものである、付記19〜26のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0210】
(付記28) 前記第一の化合物として、下式(1)または(2)で表される化合物を少なくとも一つ含む、付記19〜27のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0211】
【化68】
【0212】
【化69】
【0213】
(式(1),(2)において、R1は疎水性長鎖末端部分、A1は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環、または窒素を含む、3価の基を表し、A2は枝分かれがあってもよい脂肪族鎖、または置換基があってもよい芳香環、または置換基があってもよい脂環を含む、4価の基を表し、B1,B2,B3はそれぞれ架橋性構造部分を表す。R1,B1,B2,B3は、それぞれ独立に選択できる。)
【0214】
(付記29) 前記第一の化合物の架橋性構造部分が、重合活性基と直接結合するかまたは炭素1個を介して結合するベンゼン環構造を少なくとも一つ含むものである、付記19〜28のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0215】
(付記30) 前記1以上の第一の化合物が、架橋性構造部分を有し、疎水性長鎖末端部分を実質的に持たない第二の化合物を含んだものである、付記19〜29のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0216】
(付記31) 前記第二の化合物が、芳香環とカルボニル基とをそれぞれ少なくとも一つずつ含む、付記30に記載の液晶パネルの製造方法。
【0217】
(付記32) 前記第二の化合物として、下式(3)〜(6)で表される化合物を少なくとも一つ含む、付記31に記載の液晶パネルの製造方法。
【0218】
【化70】
【0219】
【化71】
【0220】
【化72】
【0221】
【化73】
【0222】
(式(3)〜(6)において、A3とB4とは、それぞれ独立に、ビニレン基またはプロペニレン基を表わす。R3は二価の基を表し、R2とR4とは、それぞれ独立に、水素または枝分かれがあってもよいアルキル基または置換されていてもよい芳香環を表す。R2,R3,R4のうち少なくとも一つは芳香環を表す。k,m,n,pは、それぞれ独立に、0または1を表す。R2〜R4,A3,B4,k,m,n,pは、それぞれ独立に選択できる。)
【0223】
(付記33) 前記第二の化合物が5員環構造を有する、付記30〜32のいずれかに記載の液晶パネルの製造方法。
【0224】
(付記34) 前記第二の化合物に含まれる5員環構造が酸無水物構造あるいはイミド構造である、付記33に記載の液晶パネルの製造方法。
【0225】
(付記35) 前記第二の化合物として、下式(7)〜(10)で表される化合物を少なくとも一つ含む、付記33または34に記載の液晶パネルの製造方法。
【0226】
【化74】
【0227】
【化75】
【0228】
【化76】
【0229】
【化77】
【0230】
(式(7)〜(10)において、XとYはそれぞれ独立して水素またはメチル基を表し、R7は5員環構造を有する2価の有機基を表す。R8,R10は水素または有機基を表し、R9は2価の有機基を表し、R8,R9,R10のうち少なくとも一つは5員環構造を有する。R11はテトラカルボン酸残基を構成する4価の有機基を表す。k,m,n,pはそれぞれ独立に0あるいは1を表し、qとrとはそれぞれ独立して0以上6以下の整数を表す。R8〜R10,k,m,n,p,q,rは、それぞれ独立に選択できる。)
【0231】
【発明の効果】
本発明により、配向制御膜の助けがなくとも、電圧無印加時に液晶が垂直配向するようになすことができる。特にMVA方式に代表される垂直配向型において、配向制御膜形成工程を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A),1(B)は、MVA方式の液晶パネルにおける液晶の配向を示す模式的斜視図である。
【図2】MVA方式の液晶パネルにおける液晶の配向方向を示す模式的平面図である。
【図3】図3(A),3(B)は、本発明の基本原理を例示する図である
【図4】図4(A),4(B)は、付着架橋構造部分が極性基構造部分を含む場合について説明する模式図である。
【図5】液晶表示パネルの製造法の概略を説明するフロー図である。
【図6】液晶層接触面を横から見た模式図である。
【図7】液晶層接触面を上から見た図である。
【図8】本発明に係る液晶表示パネルの製造法の概略を説明するフロー図である。
【図9】図9(A),(B)はクロスニコル下によるTFT液晶パネル顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 液晶
2 基板
3 基板
4 凹凸部
5 第一の化合物
6 配向制御膜
7 シール材
8 液晶層接触面
9 未硬化の液晶組成物
10 液晶層
31 架橋性構造部分
32 疎水性長鎖末端部分
33 付着架橋構造部分
34 立ち上がり末端部分
41 極性基構造部分
42 架橋構造部分
Claims (20)
- 一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルにおいて、
当該液晶層が、液晶および、架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、当該配向制御膜を表面に有さない基板面間に投入し、当該液晶の存在下架橋させて形成された架橋樹脂と当該液晶とを含んでなり、
前記架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分と、当該架橋構造部分に結合した前記疎水性末端部分とを有し、
前記基板間と前記液晶層との間には前記架橋樹脂以外に配向を制御する物質が存在しない液晶パネル。 - 前記第一の化合物の架橋性構造部分が極性基構造部分を含んだものである、請求項1に記載の液晶パネル。
- 前記極性基構造部分が不純物イオンを発生しないものである、請求項2に記載の液晶パネル。
- 前記液晶層中における樹脂組成物の割合が0.1〜10重量%の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記第一の化合物の100モルに対し、疎水性末端部分の割合が50〜95モルの範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記第一の化合物の架橋性構造部分が、1分子当たり2以上の重合性二重結合を有したものである、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記第一の化合物の架橋性構造部分が、重合活性基と直接結合するかまたは炭素1個を介して結合するベンゼン環構造を少なくとも一つ含むものである、請求項1〜7のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記1以上の第一の化合物が、架橋性構造部分を有し、疎水性末端部分を実質的に持たない第二の化合物を含んだものである、請求項1〜8のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記第二の化合物が、芳香環とカルボニル基とをそれぞれ少なくとも一つずつ含む、請求項9に記載の液晶パネル。
- 前記第二の化合物が5員環構造を有する、請求項9〜11のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記第二の化合物に含まれる5員環構造が酸無水物構造あるいはイミド構造である、請求項12に記載の液晶パネル。
- 前記第二の化合物として、下式(7)〜(10)で表される化合物を少なくとも一つ含む、請求項12または13に記載の液晶パネル。
- 一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルにおいて、
当該液晶層が、液晶および、架橋構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分とを有する架橋樹脂を含み、
前記液晶が接触する液晶層接触面には、前記架橋樹脂が形成されており、
前記基板間と前記液晶層との間には前記架橋樹脂以外に配向を制御する物質が存在しない
液晶パネル。 - 一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルにおいて、
当該液晶層が、液晶および、架橋構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分とを有する架橋樹脂を含み、
前記液晶層が、前記液晶が主に含まれる層と前記架橋樹脂よりなる層とからなり、
前記基板間と前記液晶層との間には前記架橋樹脂よりなる層以外に配向を制御する層が存在しない
液晶パネル。 - 前記液晶が負の誘電率異方性を有する、請求項1〜16のいずれかに記載の液晶パネル。
- 前記疎水性末端部分が、炭素数6〜18のアルキル基を有する、請求項1〜17のいずれかに記載の液晶パネル。
- 電圧印加時には凹凸部もしくは電極の抜き部により液晶が方向を規制されながら傾斜する、請求項1〜18のいずれかに記載の液晶パネル。
- 一対の基板間に液晶層が挟持された液晶パネルの製造方法において、
液晶および、架橋性構造部分と炭素数が3以上の直鎖部を有する疎水性末端部分とを有する1以上の第一の化合物を含んでなる樹脂組成物を、当該配向制御膜を表面に有さない基板面間に投入し、当該液晶の存在下架橋させて当該液晶層を形成し、
形成された当該液晶層中で、架橋樹脂が、液晶層接触面に付着した架橋構造部分と当該架橋構造部分に結合した前記疎水性末端部分とを有し、前記基板間と前記液晶層との間には前記架橋樹脂以外に配向を制御する物質が存在しないようになした、
液晶パネルの製造方法。
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