JP4232394B2 - (ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の製造方法およびチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法 - Google Patents
(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の製造方法およびチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医農薬の原料、中間体等として有用な、側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体に関し、特に酸化に対して不安定なチオール型ヒダントイン誘導体を安定化したジスルフィド型ヒダントイン誘導体または(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体とその中間体に関する。
【0002】
また、ジスルフィド型ヒダントイン誘導体を経ることによる高純度のチオール型ヒダントイン誘導体に関する。
【0003】
本発明は、側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体を側鎖のα位にハロゲン原子を有する5−置換ヒダントイン誘導体と硫化剤との反応により製造する方法に関する。
【0004】
すなわち、医農薬の原料、中間体等として有用な、チオール型ヒダントイン誘導体の製造方法に関する。
【0005】
【従来の技術】
これまでに一置換型の5−(1−メルカプトアルキル)ヒダントイン類の製造法として反応性のチオール基を保護してヒダントイン環を形成するS保護法が知られている。その方法によるとブロモアセトアルデヒドジメチルアセタールとベンジルメルカプタンから容易に得られるベンジルチオアセトアルデヒドをBuchere法により5−(ベンジルチオメチル)ヒダントインとし、引き続きBirch還元により5−(1−メルカプトメチル)ヒダントインを製造している(J.Am.Chem.Soc.,1949,71,8232)。
【0006】
上記の方法では、原料価格が高いことに加えてベンジル基の除去に固体の金属ナトリウムや金属リチウムを液体アンモニア中にて使用するなど工業的実施において現実的でない。
【0007】
また、本発明の側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体をα位にハロゲン原子を有する5−置換ヒダントイン誘導体と硫化剤を直接反応させて得る方法で、工業的に利用しうる製造法は知られていない。
【0008】
さらに、5位の置換基がメルカプトメチル基の様なチオール型ヒダントイン誘導体は、空気酸化等を受けやすく、不安定であり、保存し難い等の問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、新規化合物である側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体を提供することを課題の一つとする。特に、保存中安定な式(2)
【化16】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なって、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基示す。)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体を提供することを課題の一つとする。
【0010】
式(2)
【化17】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なって、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体は、医農薬の原料として有用な誘導体であるが、酸化を受けやすく、単離、保存し難い。本発明では、この様なチオール型ヒダントイン誘導体の安定化方法を課題の一つとする。
【0011】
側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体を安価な原料から製造する方法を提供することを課題の一つとする。
【0012】
チオール型ヒダントイン誘導体の製造方法を提供することを課題の一つとし、その中間体である(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体並びに/若しくはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体およびそれらの製造方法を提供することを課題の一つする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
式(5)
【化18】
(但し、Xは、ハロゲン原子を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なって、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表される側鎖のα位にハロゲン原子を有する結合した5−置換ヒダントイン誘導体であるハロゲン型ヒダントイン誘導体と硫化剤を反応させることにより、側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体を得られることを見出し、更に、ジスルフィド型ヒダントイン誘導体とすることにより、安定化され、保存、取り扱いが容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、例えば、次の事項からなる。
【0015】
[1] 式(5)
【化19】
(但し、Xは、ハロゲン原子を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるハロゲン型ヒダントイン誘導体に、硫化剤を反応させることを特徴とする、式(1)
【化20】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示し、nは1〜7の整数を示す。)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体、および/または、式(4)
【化21】
(但し、R1、R2、R3、R4およびnは、上記と同じ意味を示す。)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の製造方法。
[2] 硫化剤が水硫化ナトリウムまたは硫化ナトリウムと硫黄の組み合わせであることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
【0016】
[3] 式(5)
【化22】
(但し、Xは、ハロゲン原子を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるハロゲン型ヒダントイン誘導体に、硫化剤を反応させ、式(1)
【化23】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示し、nは1〜7の整数を示す。)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体、および/または、式(4)
【化24】
(但し、R1、R2、R3、R4およびnは、上記と同じ意味を示す。)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を製造する工程(A)とそれらを酸化した後、式(1)
【化25】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示し、nは1〜7の整数を示す。)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体とする工程(B)と式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を還元処理して式(3)
【化26】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体とする工程(C)とを含むことを特徴とするチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
【0017】
[4] 式(3)
【化27】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体を酸化処理することにより式(2)
【化28】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示す。)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体とし、精製単離する工程(D)と該ジスルフィド型ヒダントイン誘導体を還元処理して式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体とする工程(E)を含むことを特徴とするチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
【0018】
[5] R1、R2、R3が、水素原子であり、R4が、メチル基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の製造方法。
[6] R1、R2、R3が、水素原子であり、R4が、メチル基であることを特徴とする[3]に記載の製造方法。
[7] R1、R2、R3が、水素原子であり、R4が、メチル基であることを特徴とする[4]に記載の製造方法。
【0019】
[8] 式(3)
【化29】
(但し、R1、R2、R3 は水素原子であり、R 4 は、メチル基を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体を酸化処理することを特徴とする、式(2)
【化30】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を表す。)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体の製造方法。
[9] 酸化処理を酸化剤を使用して行うことを特徴とする[8]に記載の製造方法。
[10] 酸化剤が酸素、過酸化水素、ジ亜ハロゲン酸、ハロゲン、有機過酸および過硫酸塩から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする[9]に記載の製造方法。
【0020】
[11] 式(1)
【化31】
(但し、R1、R2、R3 は水素原子であり、R 4 は、メチル基を示し、nは1〜7の整数を示す。)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体、および/または、式(4)
【化32】
(但し、R1、R2、R3、R4およびnは、上記と同じ意味を示す。)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を、還元処理することを特徴とする、式(3)
【化33】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
【0021】
[12] 式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体が、式(2)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体であることを特徴とする[11]に記載の式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
[13] 還元処理が塩基を使用して電解還元する方法であることを特徴とする[11]または[12]に記載の製造方法。
【0022】
[14] 電解還元に際し、陽極側に鉱酸溶液、陰極側に塩基と還元処理される前記ヒダントイン誘導体溶液を使用し、その電極間をイオン交換膜で隔離することを特徴とする[13]に記載の製造方法。
[15] 還元後の反応液を反応に関与しない不活性ガスの存在下で中和、濃縮し、単離することを特徴とする[11]〜[14]に記載のチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明の詳細について説明する。
【0024】
本発明では、式(1)
【化34】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示し、nは1〜7の整数を示す。)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体、式(2)
【化35】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示す。)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体、式(3)
【化36】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体および式(4)
【化37】
(但し、R1、R2、R3、R4およびnは、上記と同じ意味を示す。)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体等を総称して、側鎖のα位に硫黄原子が結合した5−置換ヒダントイン誘導体と呼ぶ。
【0025】
式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体は、医農薬の原料、中間体等として有用であるにも係わらず、これまでそれほど知られていない。特に式(3)
【化38】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体のうち、5,5−二置換ヒダントイン誘導体は知られていない。
【0026】
本発明の製造法によれば、式(2)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体を製造することも可能であり、有用な方法であるが、このようなチオール型ヒダントイン誘導体は、空気等による酸化を受けやすく、不安定であり、合成用の原料として使用するには保存、輸送が困難であり、取り扱いづらいものであることが分かった。
【0027】
本発明の式(2)
【化39】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、チオール型ヒダントイン誘導体と異なり、安定であり、保存、輸送がし易い。従って、側鎖のα位に硫黄原子の結合した5−置換ヒダントイン誘導体を本発明のジスルフィド型ヒダントイン誘導体の形で、取得しておくならば、必要なときに還元処理をして、チオール型誘導体とすることにより、有用な物質であるチオール型ヒダントイン誘導体を容易に用事調製することが可能である。
【0028】
すなわち、式(2)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、チオール型ヒダントインを安定化した誘導体として用いることができる。しかも、ジスルフィド型としておくことで、還元処理で硫黄等の副生成物を生成させずにチオール型ヒダントイン誘導体とすることができる。
【0029】
本発明の化合物の製造方法およびその中間体等の製造方法を述べる。
本発明の化合物は、下記の工程のいずれかまたは全てを組み合わせて使用することにより製造することができる。
【0030】
<工程A>
工程Aは、式(5)
【化40】
(但し、Xは、ハロゲン原子を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基示す。)で表されるハロゲン型ヒダントイン誘導体を硫化剤と反応して、中間体である式(1)
【化41】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示し、nは1〜7の整数を示す。)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体、および/または、式(4)
【化42】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じ意味を示す。)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を得る工程である。
<工程B>
工程Aで得られた(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体および/またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体は、単離するときには酸化することによりヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を(ポリ)スルフィド型誘導体としておくことが好ましい。この工程を工程Bとする。
【0031】
(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体とヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の混合物またはそれらから(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を単離除去した後のヒドロ(ポリ)スルフィド誘導体を酸化することによって(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体として単離することもできる。
【0032】
<工程C>
工程Cは、(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体および/またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を、反応液のままか単離後溶媒に溶解または懸濁し、還元処理することにより式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体を得る工程である。
【0033】
<工程D>
工程Dは、チオール型ヒダントイン誘導体を、単離後溶媒に溶解するか、硫化水素を除去した反応液のまま、酸化処理することにより、本発明の式(2)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体を得る工程である。ジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、安定であり、再結晶等により、精製することができる。
【0034】
<工程E>
さらに、工程Dで得られるジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、必要により還元して、式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体として、利用することができる。この工程を工程Eとする。
【0035】
工程Dを経て、工程Eによりチオール型ヒダントイン誘導体を得ることにより、高純度のチオール型ヒダントイン誘導体を得ることができる。
【0036】
それぞれの工程をより詳細に説明する。
工程Aは、式(5)で表されるハロゲン型ヒダントイン誘導体を溶媒に溶解または懸濁状態とした液に硫化剤を加えて反応させる。
【0037】
溶媒は、水が好ましいが、反応に影響がない限り、原料の溶解性を向上させる目的で、親水性溶媒、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等の溶媒を使用することもできる。
【0038】
硫化剤としては、水硫化ナトリウムまたは硫化ナトリウムと硫黄の組み合わせが好ましい。
【0039】
水硫化ナトリウムを使用する場合は、原料であるハロゲン型ヒダントイン誘導体に対して3〜15倍モル使用するのが好ましく、更に好ましくは5〜13倍モルである。水硫化ナトリウムは、水和物や水溶液なども使用可能である。使用量が、少ない場合には反応が進行し難く、多い場合には工業生産上のメリットが小さくなる。
【0040】
この混合液を加熱する事で反応を開始させる。加熱温度は、45℃を超える温度が必要であるが、60℃〜150℃が好ましく、更に好ましくは、85℃〜130℃である。60℃未満の温度、とりわけ、45℃以下では反応の進行が遅く、150℃より高い場合には、ヒダントイン環の分解などを含む副反応により収率が低下する。本反応は、常圧、加圧のいずれの設備においても実施可能である。これらの原料の混合順序は特に規定する必要がなく、いずれの原料から加えても問題はない。
【0041】
硫化剤として硫化ナトリウムと硫黄を使用する場合は、原料であるハロゲン型ヒダントイン誘導体に対して硫化ナトリウムを1〜5倍モル使用するのが好ましく、更に好ましくは、2〜4倍モルである。硫黄は1〜10倍モル使用するのが好ましく、更に好ましくは3〜7倍モルである。
【0042】
硫化ナトリウムと硫黄を使用する場合は、全ての原料を一括で混合する方法も適応可能であり、硫化ナトリウム水溶液と硫黄を予め混合した液と一つのハロゲン型ヒダントイン誘導体を含む液を混合する方法も適応可能である。
【0043】
硫化ナトリウムと硫黄を使用する場合の反応開始の加熱温度も45℃を超える温度が必要であり、60℃〜150℃が好ましく、更に好ましくは、85℃〜130℃である。
【0044】
反応終了後に反応液をpH調整することで式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体および/または式(4)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体、通常はそれらの誘導体の混合物として固体または結晶として取得することができる。
【0045】
pH調整は、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸により行い、これらの酸の一種または二種以上の混合液を使用しても良い。
【0046】
pHの低下に伴い生成する硫化水素を減圧下または反応装置下部から窒素などの不活性ガスを吹き込むことに拠って除去することで副反応を最小限にすることが好ましい。減圧、ガスの吹き込み両方を併用することで、より効率的に除去可能である。
【0047】
pHの調整は7以下とすることが好ましく、更に好ましくは5以下である。pH調整により白色の固体が析出してくる。析出した固体を遠心分離器やフィルター濾集することで固体を取得する事ができる。
【0048】
式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体および/または式(4)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体は、工程Bにより、ヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を酸化し、(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体として単離するのが好ましい。
【0049】
式(4)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体は、比較的高い水溶性を示すので、中和の前後、いずれかにおいて酸化処理を行い、式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体とすることで、回収率を向上することもできる。その際の酸化剤としては、空気、酸素、過酸化水素、ジ亜ハロゲン酸、ハロゲン、有機過酸、過硫酸塩などを使用することができる。通常は、充分空気で酸化可能であるので、空気を使用することが好ましい。生成する(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の結晶は、酸性水溶液に対して溶解性が低いので回収率が向上する。
【0050】
酸化処理は、pH処理の前後いずれでも可能である。酸化の温度は、高すぎると硫黄原子やヒダントイン環の酸化が起こる虞があるので、60℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以下であり、殊更好ましくは10℃以下である。低い方の温度は、反応液が凝固しない温度であれば問題はない。
【0051】
酸化処理の時間は、特に制限はなく、反応温度によっても異なるが、通常30分から2時間で充分である。
【0052】
更に回収率を向上させる目的で溶媒濃縮後に分離回収を行うことが好ましい。反応液の濃縮は、中和の前後いずれの場合に実施しても結晶回収率を向上させることができる。
【0053】
工程Cは、式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体および/または式(4)で表されるヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を還元処理することにより、式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体とする。このとき、(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体は、特に制限は受けず、第1の工程の反応液をそのまま使用することも可能であり、単離または別法で合成した(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体を使用することも可能である。
【0054】
還元処理としては、通常ポリスルフィドを還元可能な方法であれば、可能である。還元剤としては、例えば、亜鉛−硫酸系、錫−硫酸系、リチウムアルミニウムハイドライド、ナトリウムボロンハイドライド、トリフェニルフォスフィン−含水アルコール系等があげられるが、還元剤として使用した反応物が不純物として残存しないこと等から、電解還元法が好ましい。
【0055】
電解のための設備は、陽極セルと陰極セルからなる装置を使用してセル間を電解膜により隔離する。電解膜としてはガラスフィルター、イオン交換膜などが使用可能である。陽極側の電極材質は、鉛、白金、白金被覆チタン、黒鉛、過酸化鉛などにより、陰極側の電極材質は、鉛、亜鉛、黒鉛、銀などが適している。
【0056】
(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体は、pH7以下の溶液として電解可能であるがこの領域では、溶解度が低いために生産性が低くなる。一方、pH7より高いpH領域では(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体が容易に溶解可能であることから生産性の上で好ましい。すなわち、塩基でアルカリ性にして電解還元するのが好ましい。用いる塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく使用でき、これらの塩基は一種または二種以上を混合して使用することも可能である。
【0057】
原料である(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体またはヒドロ(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体のアルカリ溶液を陰極液として使用する。陽極液は、水素イオン以外のカチオンを含まない塩酸、硫酸などの鉱酸を用いるのがよい。陰極液、陽極液とも循環装置を設置することで連続的に電解還元することも可能である。
【0058】
電解還元は、通常実施する温度で実施可能であり、好ましくは室温以下である。通電量は、電解還元の装置等によっても異なるが、液体クロマトグラフィで分析することにより、ポリスルフィド型ヒダントイン誘導体が希望量より減少したことを確認する。但し、後に述べる第3の工程の反応を実施するならば、ジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、残留していても問題はない。
【0059】
電解還元完了後の反応液は、窒素などの雰囲気下にて硫酸、塩酸、硝酸などでpH4以下とした後に(減圧)濃縮することで、式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体の結晶を得ることができる。必要に応じて再結晶やイオン交換樹脂などにより精製結晶を取得可能であるが、酸化を受けやすいため操作中空気に接触することにより、ジスルフィド型ヒダントイン誘導体が生成してくる。
【0060】
工程Dは、式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体を酸化処理することにより、式(2)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体を製造する。
【0061】
この酸化処理には、チオール型ヒダントイン誘導体を溶媒に溶解して使用することが可能である。溶媒は水が好ましく、必要によりpHをアルカリ側にすることにより、溶解性を増加して行うことができる。反応の邪魔をしない限り、アルコール等の他の溶媒を使用することも可能である。
【0062】
工程Dの反応は、工程Cの反応で電解した後のpH調整、酸化処理等の前の反応液をそのまま使用することも可能であるが、この場合は、窒素等の不活性ガスを導入し、残留している硫化水素を追い出しておくことが好ましい。硫化水素が残留していると、ジスルフィド型ヒダントイン誘導体だけでなく、ポリスルフィド型ヒダントイン誘導体が、生成してくる。
【0063】
酸化反応は、非常に進みやすく、空気中の酸素でも充分に酸化できる。その他の酸化剤使用も可能であり、酸素、過酸化水素、ジ亜ハロゲン酸、ハロゲン、有機過酸、過硫酸塩等が例示できる。酸化力が強すぎるとヒダントイン環や硫黄を酸化する虞があるため、空気の導入も含めて、酸化剤の添加、酸化反応は、できるだけ低温で行うことが好ましい、具体的には、60℃以下が好ましく、更に好ましくは30℃以下、殊更好ましくは10℃以下である。反応温度の下限は、反応液が凝固しない範囲であれば問題はない。
【0064】
反応の終了は、液体クロマトグラフィ等で確認できるが、反応時間としては、温度により異なるが、通常30分から2時間で充分である。
【0065】
ジスルフィド型ヒダントイン誘導体の単離は、反応液を酸性とすることにより可能である。回収率を増す目的で、当然、濃縮、冷却することも可能である。この操作だけでも、80%以上の純度のジスルフィド型ヒダントイン誘導体が得られ、不純物は主にトリスルフィド、テトラスルフィド体である。このジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、精製することを目的として、水を加えて、一度80℃以上に加熱し、完全に溶解してから室温以下に冷却し、遠心分離等で単離することにより、95%以上の純度とすることができる。
【0066】
工程Dで得られるジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、還元することにより、チオール型ヒダントイン誘導体として、用事に調製して、利用することが可能である。この工程を工程Eとする。工程Eの還元条件は、工程Cの還元条件と同一の条件で可能である。
【0067】
本発明の式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体の具体的化合物を例示すると、5−メチル−5−メルカプトメチル−ヒダントイン、5−メチル−5−(1−メルカプトエチル)−ヒダントイン、5−エチル−5−メルカプトメチル−ヒダントイン、5−エチル−5−(1−メルカプトエチル)−ヒダントイン、5−メチル−5−(1−メチル−1−メルカプトエチル)−ヒダントイン、5−ターシャリーブチル−5−メルカプトメチル−ヒダントイン、5−ベンジル−5−メルカプトメチル−ヒダントイン、5−フェニル−5−メルカプトメチル−ヒダントイン、5−メルカプトメチル−ヒダントイン、5−(1−メルカプトエチル)−ヒダントイン、5−(1−ベンジル−1−メルカプトメチル)−ヒダントインがあげられる。式(2)で表されるジスルフィド型のヒダントイン誘導体はこれらから得ることができる。
【0068】
本発明の原料である式(5)
【化43】
(但し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一または異なって、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるハロゲン型ヒダントイン誘導体は公知の方法で製造したものを使用することができる。
【0069】
例えば、α−ハロゲノケトンと青酸またはその塩をpHを5〜9に調整しながら反応し、シアンヒドリンを生成させた後、生成したシアンヒドリンと炭酸アンモニウム塩類とを反応させることにより得られる。
【0070】
また、式(6)
CR1R2(X)C(NHR3)R4(CN) (6)
(但し、Xは、ハロゲン原子を表し、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一または異なっていてもよい、水素原子、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数7〜9のアラルキル基、または、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の枝分かれしていてもよいアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換していてもよいアリール基を示す。)で表されるアミノアセトニトリル誘導体とシアン酸塩を反応させる方法によって、得ることもできる。
【0071】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
また、本実施例では、高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)分析を行っているが分析条件は以下の通りである。
【0073】
<HPLC条件>
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex(登録商標) NN−G + NN−816
(NN−G:ガードカラム、長さ6cm、内径0.6cm)
(NN−816:長さ25cm、内径0.8cm)
カラム温度条件:40℃
溶離液:0.1%H3PO4+0.008MKH2PO4
流量:1.0mL/min
検出:RI、UV(検出波長 210nm)
【0074】
また、実施例中では化合物については下記の様に略記することがある。
【0075】
<実施例1>
500mLの4つ口フラスコに冷却管、撹拌翼、温度計をセットし、5−クロロメチル−5−メチルヒダントイン50g(0.31モル)と精製水138g、70%水硫化ナトリウム246g(3.1モル)を加えて懸濁状態とした。撹拌しながら反応容器を100℃となるように加熱し、100℃となってから3時間撹拌した。反応液の一部をサンプリングしてHPLCにより分析したところ、原料の5−クロロメチル−5−メチルヒダントインは認められず(転化率100%)、液中成分濃度からの収率は以下の通りであった。
【0076】
液中成分 収率 選択率
チオール体 81% 81%選択率
スルフィド体 12% 12%選択率
ジスルフィド体 2.6% 2.6%選択率
トリスルフィド体 4.3% 4.3%選択率
【0077】
<実施例2>
500mLの4つ口フラスコに冷却管、撹拌翼、温度計をセットし、5−クロロメチル−5−メチルヒダントイン50g(0.31モル)と精製水138g、70%水硫化ナトリウム24.6g(0.31モル)を加えて懸濁状態とした。撹拌しながら反応容器を100℃となるように加熱し、100℃となってから3時間撹拌した。反応液の一部をサンプリングしてHPLCにより分析したところ液中成分濃度からの収率は以下の通りであった。原料クロロ体の転化率は45%であった。
【0078】
液中成分 収率 選択率
チオール体 37% 82%選択率
スルフィド体 5.4% 12%選択率
ジスルフィド体 1.4% 3%選択率
トリスルフィド体 1.0% 2%選択率
【0079】
<実施例3>
実施例1の反応温度を45℃とした以外は、実施例1に従い反応した。液中成分濃度からの収率は以下の通りであった。原料クロロ体の転化率は5%であった。
【0080】
液中成分 収率 選択率
チオール体 4.8% 95%選択率
スルフィド体 0.1% 2%選択率
【0081】
<実施例4>
500mLの4つ口フラスコに冷却管、撹拌翼、温度計をセットし、5−クロロメチル−5−メチルヒダントイン50g(0.31モル)と精製水319.6g、硫黄29.3g(固形、0.91モル)、硫化ナトリウム9水和物95.9g(0.47モル)を加えて懸濁状態とした。反応容器を100℃となるように加熱し、100℃となってから4時間撹拌した。反応液の一部をサンプリングしてHPLCにより分析したところ、原料の5−クロロメチル−5−メチルヒダントインは認められず(転化率100%)、液中成分の収率は以下の通りであった。
【0082】
液中成分 収率 選択率
チオール体 15% 15%選択率
スルフィド体 1.2% 1.2%選択率
ジスルフィド体 51% 51%選択率
トリスルフィド体 29% 29%選択率
テトラスルフィド体 3.8% 3.8%選択率
【0083】
<実施例5>
500mLの4つ口フラスコに冷却管、撹拌翼、温度計をセットし、5−クロロメチル−5−メチルヒダントイン50g(0.31モル)と精製水169.6gを加えて懸濁状態とした。冷却管、撹拌翼、温度計をセットした300mLの4つ口フラスコにて、硫黄29.3g(固形、0.91モル)と硫化ナトリウム9水和物95.9g(0.47モル)、精製水150gを加えて40℃にて0.5時間撹拌して調整した懸濁液を上記の500mLフラスコに40℃にて加えた。反応容器を100℃となるように加熱し、100℃となってから4時間撹拌した。反応液の一部をサンプリングしてHPLCにより分析したところ、原料の5−クロロメチル−5−メチルヒダントインは認められず(転化率100%)、液中成分の収率は以下の通りであった。
【0084】
液中成分 収率 選択率
チオール体 14% 14%選択率
スルフィド体 0.8% 0.8%選択率
ジスルフィド体 53% 53%選択率
トリスルフィド体 29% 29%選択率
テトラスルフィド体 3.0% 3.0%選択率
【0085】
<実施例6>
実施例1の反応液を用いて晶析を実施した。反応液の入った500mLの4つ口フラスコを25℃まで冷却し、反応器下部からグラスフィルター付きのガラス管より窒素を吹き込みながらpH3となるように95%硫酸を加えた。酸性化処理した後に反応液を半量以下に濃縮、結晶を吸引ろ過したところ、83%の回収率であり各成分の比率は、下記の通りであった。
【0086】
結晶中成分 成分比率
チオール体 0.3%
スルフィド体 0.9%
ジスルフィド体 61.6%
トリスルフィド体 33.7%
テトラスルフィド体 3.5%
【0087】
<比較例1>
実施例6でのpH調整を8としたところ、結晶の析出は見られず均一な溶液のままであった。
【0088】
<実施例7>
実施例1の反応液を用いて晶析を実施し、窒素の吹き込みと微減圧を併用しながらpH調整を行った以外は、実施例6に従って実施したところ、82%の回収率であり各成分の比率は、下記の通りであった。
【0089】
結晶中成分 成分比率
チオール体 0.2%
スルフィド体 0.9%
ジスルフィド体 65.0%
トリスルフィド体 31.3%
テトラスルフィド体 2.6%
【0090】
<実施例8>
実施例1の反応液に室温にて空気を吹き込みながら5時間反応した。反応後の液を減圧下に濃縮して約半量とした。濃縮後の操作は、実施例6と同様の操作を行い、pH調整後の反応液から吸引ろ過により結晶を取得した。91%の回収率であり各成分の比率は、下記の通りであった。
【0091】
結晶中成分 成分比率
チオール体 0.1%
スルフィド体 1.0%
ジスルフィド体 70.1%
トリスルフィド体 26.7%
テトラスルフィド体 2.1%
【0092】
<実施例9>
実施例1の反応液に室温にて30%過酸化水素水(1.1倍モル対チオール体モル数)を加えて5時間反応した。反応後の液を減圧下に濃縮して約半量とした。濃縮後の操作は、実施例6と同様の操作を行い、pH調整後の反応液から吸引ろ過により結晶を取得した。91%の回収率であり各成分の比率は、下記の通りであった。
【0093】
結晶中成分 成分比率
チオール体 0.1%
スルフィド体 0.8%
ジスルフィド体 70.0%
トリスルフィド体 26.9%
テトラスルフィド体 2.2%
【0094】
<実施例10>
実施例4の反応液を冷却し、反応液中のスラリーを吸引ろ過により除去した。スラリー除去後のろ液を減圧下に濃縮して約半量とした。濃縮後の操作は、実施例7と同様の操作を行い、pH調整後の反応液から吸引ろ過により結晶を取得した。90%の回収率であり各成分の比率は、下記の通りであった。
【0095】
結晶中成分 成分比率
チオール体 1.2%
スルフィド体 1.0%
ジスルフィド体 61.5%
トリスルフィド体 32.0%
テトラスルフィド体 4.3%
【0096】
<実施例11>
実施例6と同様にして、取り上げた結晶をアンモニア水に溶解して10%溶液とした。この溶液を電解槽の陰極側にセットし、陽極側に3%硫酸を加えた。陰極側には銀電極、陽極側には白金電極を使用して、両セル間をイオン交換樹脂(旭硝子社製 セレミオン膜)により隔離した。電解槽全体を約15℃以下を保つように冷却しながら電極間に15V加電圧したところ1.5Aの初期電流値を示していた。通電を約15時間実施した。陰極液の一部をサンプリングしてHPLC分析を実施したところ以下のような結果であった。
【0097】
液中成分 転化率
ジスルフィド体 98%
トリスルフィド体 100%
テトラスルフィド体 100%
【0098】
液中成分 収率
チオール体 92%
ジスルフィド体 8%
(収率は、(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の総モル数基準)
【0099】
<実施例12>
実施例6と同様にして、取り上げた結晶をアンモニア水に溶解して10%溶液とした。この溶液をもちいて実施例11と同様の方法により通電を約5時間実施した。陰極液の一部をサンプリングしてHPLC分析を実施したところ以下のような結果であった。
【0100】
液中成分 転化率
トリスルフィド体 100%
テトラスルフィド体 100%
【0101】
液中成分 収率
チオール体 12%
ジスルフィド体 88%
(収率は、(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の総モル数基準)
【0102】
<実施例13>
実施例6と同様にして、取り上げた結晶を25%水酸化ナトリウムに溶解して10%溶液とした。この溶液をもちいて実施例11と同様の方法により通電を約15時間実施した。陰極液の一部をサンプリングしてHPLC分析を実施したところ以下のような結果であった。
【0103】
液中成分 転化率
ジスルフィド体 98%
トリスルフィド体 100%
テトラスルフィド体 100%
【0104】
液中成分 収率
チオール体 90%
ジスルフィド体 10%
(収率は、(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体の総モル数基準)
【0105】
<実施例14>
実施例11と同様に行った電解還元後の反応液150gを200ml4つ口フラスコに入れて、反応装置下部から窒素ガスを吹き込み反応系内の硫化水素の除去を行った。
【0106】
除去操作の後に、反応液を95%硫酸にてpH3に調整した後に30%過酸化水素水(1倍モル対チオール体のモル数)を10℃以下を保ちながら滴下し、10℃にて30分間撹拌した。この反応液の一部をサンプリングしてHPLC分析したところ、反応液中のチオール体のピーク消失が確認できた。
【0107】
処理液を減圧下に3倍濃縮した後に析出した結晶を吸引濾集、結晶の1.5倍重量の精製水で結晶洗浄を行った所、結晶の回収率は88%であり、乾燥後の結晶は、以下の様な組成であった。
【0108】
結晶中成分 成分比率
ジスルフィド体 96.3%
トリスルフィド体 2.5%
テトラスルフィド体 1.2%
【0109】
得られた結晶を液中濃度5%となるように精製水に加え、80℃にて加熱して30分間撹拌することで完全に溶解した。この液を減圧下に4倍濃縮した後に25℃まで徐々に冷却を行った。冷却により析出してくる結晶を吸引濾集、結晶の1.5倍重量の精製水で結晶洗浄を行ったときの結晶の回収率は71%であり、ジスルフィド体のみが含まれていた(赤外吸収スペクトル(単位cm−1)3800−2800(ブロード)、1768、1731、1715、1402、1296、1258、1177、1101、1018、870、771、650、573)。
【0110】
<実施例15>
実施例11と同様に行った電解還元後の反応液150gを200ml4つ口フラスコに入れて、95%硫酸にてpH3に調整した後に30%過酸化水素水(1倍モル対チオール体のモル数)を10℃以下を保ちながら滴下し、10℃にて30分間撹拌した。この反応液の一部をサンプリングしてHPLC分析したところ、反応液中のチオール体のピーク消失が確認できた。
【0111】
処理液を減圧下に3倍濃縮した後に析出した結晶を吸引濾集、結晶の1.5倍重量の精製水で結晶洗浄を行った所、結晶の回収率は89%であり、乾燥後の結晶は、以下の様な組成であった。
【0112】
結晶中成分 成分比率
ジスルフィド体 79.5%
トリスルフィド体 11.5%
テトラスルフィド体 9.0%
【0113】
<実施例16>
実施例11と同様に行った電解還元後の下記の様な液中比率の反応液150gを200ml4つ口フラスコに入れて、
【0114】
液中成分 空気処理前の比率
チオール体 92%
ジスルフィド体 8%
【0115】
反応装置下部から25℃にて15時間、空気を吹き込んだ。反応液を95%硫酸にてpH3に調整した後に、この反応液の一部をサンプリングしてHPLC分析したところ、液中の各成分の比率は、以下の通りであった。
【0116】
結晶中成分 成分比率
チオール体 6.0%
ジスルフィド体 82.2%
トリスルフィド体 6.5%
テトラスルフィド体 5.3%
【0117】
処理液を減圧下に3倍濃縮した後に析出した結晶を吸引濾集、結晶の1.5倍重量の精製水で結晶洗浄を行った所、結晶の回収率は84%であり、乾燥後の結晶は、以下の様な組成であった。
【0118】
結晶中成分 成分比率
チオール体 0.1%
ジスルフィド体 87.1%
トリスルフィド体 6.9%
テトラスルフィド体 5.6%
【0119】
得られた結晶を液中濃度5%となるように精製水に加え、80℃にて加熱して30分間撹拌することで完全に溶解した。この液を減圧下に2倍濃縮した後に25℃まで徐々に冷却を行った。冷却により析出してくる結晶を吸引濾集、結晶の1.5倍重量の精製水で結晶洗浄を行ったときの結晶の回収率は44%であり乾燥後の結晶は以下の様な組成であった。
【0120】
結晶中成分 成分比率
ジスルフィド体 98.3%
テトラスルフィド体 1.7%
【0121】
<LC−Mass分析による物質の確認>
本発明の(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体は、下記の液体クロマトグラフィー質量分析により確認可能である。結果は表1に示す。
溶離液流速 1ml/min.
試料濃度 約100ppm
試料注入量
UV検出波長 200−360nm
(フォトダイオードアレイ検出器使用)
質量分析計 Thermoques社 LCQ Advantage
イオン化法 エレクトロスプレーイオン化法
スキャン範囲 m/z50−1000
MS/MSコリジョンエネルギー 35%
【0122】
【表1】
【0123】
【発明の効果】
本発明により、医農薬の原料、中間体等として、有用な新規なジスルフィド型のヒダントイン誘導体が提供できた。
【0124】
医農薬の原料、中間体等として直接的には、チオール型のヒダントイン誘導体が有用であるが、チオール型の誘導体は酸化を受けやすく、保存、輸送に不便である。しかるに、本発明のジスルフィド型ヒダントイン誘導体は、安定に保存、輸送できるため、必要なときに還元処理することにより有用なチオール型ヒダントイン誘導体を用事に調製し、利用することができる。
【0125】
また、側鎖のα位にハロゲン原子を有するヒダントイン誘導体と硫化剤を反応させることにより、側鎖のα位に硫黄原子が結合した種々のヒダントイン誘導体を製造することが可能となった。その様な側鎖のα位に硫黄原子が結合したヒダントイン誘導体を還元処理し、更に酸化することにより、ジスルフィド型ヒダントイン誘導体を製造可能になった。
Claims (15)
- 式(5)
- 硫化剤が水硫化ナトリウムまたは硫化ナトリウムと硫黄の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 式(5)
- 式(3)
- R1、R2、R3が、水素原子であり、R4が、メチル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- R1、R2、R3が、水素原子であり、R4が、メチル基であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- R1、R2、R3が、水素原子であり、R4が、メチル基であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
- 酸化処理を酸化剤を使用して行うことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
- 酸化剤が酸素、過酸化水素、ジ亜ハロゲン酸、ハロゲン、有機過酸および過硫酸塩から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
- 式(1)で表される(ポリ)スルフィド型ヒダントイン誘導体が、式(2)で表されるジスルフィド型ヒダントイン誘導体であることを特徴とする請求項11に記載の式(3)で表されるチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
- 還元処理が塩基を使用して電解還元する方法であることを特徴とする請求項11または12に記載の製造方法。
- 電解還元に際し、陽極側に鉱酸溶液、陰極側に塩基と還元処理される前記ヒダントイン誘導体溶液を使用し、その電極間をイオン交換膜で隔離することを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
- 還元後の反応液を反応に関与しない不活性ガスの存在下で中和、濃縮し、単離することを特徴とする請求項11〜14に記載のチオール型ヒダントイン誘導体の製造方法。
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