JP4231675B2 - 培養方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、培養方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、間葉系幹細胞等の幹細胞は、様々な組織に分化でき、その組織を再生することができる細胞として知られている。間葉系幹細胞は、骨髄液に含まれている。しかしながら、骨髄液から採取可能な間葉系幹細胞はごく微量であり、組織の再生に必要な量の間葉系幹細胞を得るためには、骨髄液を培養することにより増殖させる必要がある。
【0003】
従来、間葉系幹細胞を培養するには、患者から採取した骨髄液を平坦な培養容器上に播種して、適当な培地内において培養する。骨髄液内の赤血球や白血球などの造血系の細胞は培地内に浮遊する一方、間葉系幹細胞は培養容器の底面に付着して増殖する性質を有している。したがって、培地交換によって造血系の細胞を廃棄することにより、培養容器の底面に付着して増殖した間葉系幹細胞のみを抽出することが可能となる。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように培養容器の底面に付着して増殖する間葉系幹細胞の増殖速度は、それが置かれている空間的な培養環境に左右される傾向がある。すなわち、間葉系幹細胞は培養容器の底面に付着して増殖するため、付着可能な広さの底面積が必要であることは言うまでもないが、あまりに広すぎると逆に増殖速度が低下して、効率的に成長させることができないという不都合がある。
【0006】
このような不都合を回避するために、間葉系幹細胞の増殖度合に応じて、順次容積の大きな培養容器に移し替えることにより、間葉系幹細胞の適正な培養環境を維持することが考えられている。
しかしながら、複数の培養容器に移し替える作業は繁雑であり、これを自動的に行う場合には、培養容器間で細胞や培地を移動させる手段が必要となる他、多数の容器を収納しておくスペースが必要となり、装置が大型化するという不都合がある。また、間葉系幹細胞の培養は、患者毎に異なる培養容器を使用し、一度使用された培養容器を再利用することはない。したがって、1人の患者の間葉系幹細胞の培養に多数の培養容器を使用したのでは、廃棄物が多くなり、資源の無駄が増大する不都合もある。
【0007】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、単一の容器で、間葉系幹細胞の培養環境を維持し、効率的に増殖させることができる培養方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
本発明の培養方法は、培養容器の内部に細胞を含む培地を部分的に貯留し、該培養容器の軸心回りに回転させながら、前記培養容器の内面と前記培地との接触面積が広くなる方向に前記軸心の鉛直方向の傾斜角度を変更して培養することを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、傾斜角度の変更により培地と培養容器内面との接触面積が広くなるので、培養の経過とともに広い面積を必要とする細胞の培養に最適な環境を実現することが可能となる。
【0013】
また、本発明の培養方法は、上述の培養方法において、前記培養容器の内部に生体組織補填材を配置することが好ましい。
この発明によれば、生体組織補填材を足場にして細胞を成長させ、生体組織補填体を製造することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の各実施形態に係る培養装置について説明する前に、生体組織補填体としての骨補填体の製造工程について概略的に説明する。骨補填体を製造するには、図5に示されるように、まず、患者の腸骨等から骨髄液を採取する。採取された骨髄液は遠心分離機にかけられて、旋回されることにより、比重の重い骨髄細胞を抽出される。
【0015】
抽出された骨髄細胞は、予め調製されている培地とともに培養容器内に投入され混合される。培地の一部は取り出されて感染検査に回される。
この後に、混合された骨髄液および培地を所定の温度(例えば、37±0.5℃)およびCO2濃度(例えば5%)等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が一次培養される。細胞の培養途中の所定の交換時期には、培養容器内から培地が廃棄される。そして、再度培地を混合されて培養工程が繰り返し継続される。廃棄された培地の一部は感染検査に回される。
【0016】
所定の培養期間が終了すると、培養容器内から培地が廃棄された後に、培養容器内にトリプシンのような蛋白質分解酵素が投入・混合される。これにより、培養容器の底面に付着して成長していた間葉系幹細胞が、主培養容器の底面から剥離される。そして、このように剥離された間葉系幹細胞は、遠心分離機にかけられることにより抽出される。
【0017】
抽出された間葉系幹細胞は、細胞数調整が行われた後に、骨補填材と適当な培地が投入された培養容器内に混合される。実際には、間葉系幹細胞を骨補填材に付着させ、培地内に投入する。そして、上記と同様にして、混合された間葉系幹細胞と培地を所定の温度(例えば、37±0.5℃)およびCO2濃度(例えば5%)等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が二次培養される。
【0018】
二次培養工程においても、一次培養工程と同様にして、定期的に培地の交換が行われ、投入される培地の一部および廃棄される培地の一部がそれぞれ、感染検査に回される。そして、所定の培養期間が経過したところで、出荷用の品質検査と感染検査のための検体抽出が行われ、製造された骨補填材は密封されて製品として提供される。
【0019】
以下に説明するこの発明の一実施形態に係る培養装置は、主に、上述した培養工程の内、一次培養工程において使用されるものであるが、二次培養工程において使用してもよい。
この発明の一実施形態に係る培養装置について、図1を参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置1は、両端が閉塞され、内部に細胞入り培地Aを貯留可能な円筒状の培養容器2と、この培養容器2をその中心に配される軸心3回りに回転させる回転駆動手段4と、培養容器2の軸心3の鉛直方向の角度を変化させる角度変更手段5とを備えている。
【0020】
前記培養容器2には、例えば、その閉塞された先端面2aに、培養すべき細胞、例えば、骨髄細胞および培地A、例えば、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)、抗生剤を84:15:1の配合比率で混合したものを供給する供給口6が設けられている。供給口6は、供給後には密封状態に閉塞されるようになっている。なお、ウシ胎児血清に代えてヒト血清を用いてもよい。
【0021】
また、培養容器2には、図示しないガス供給手段が接続され、内部の雰囲気が0.5%CO2濃度に維持されるようになっている。また、培地Aの温度は、37℃±0.5℃に維持されるようになっている。
回転駆動手段4および角度変更手段5は、それぞれ、指令信号に応じて回転させられるモータにより構成されている。
【0022】
このように構成された本実施形態に係る培養装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置1を用いて細胞を培養するには、まず、患者から採取した骨髄液を遠心分離機にかけることにより、骨髄液から骨髄細胞を抽出する。抽出された骨髄細胞は、培養容器2に設けられた供給口6から培養容器2内部に供給される。また、所定量の培地Aも供給口6から培養容器2内部に供給される。
【0023】
このとき、培養容器2は、図1に示すように、角度変更手段5を作動させることにより、培養容器2の先端面2aが低くなるように、培養容器2の軸心3を水平方向に対して角度θだけ傾斜させられている。これにより、培養容器2内部に供給された細胞入り培地Aは培養容器2の先端部分に部分的に貯留される。すなわち、細胞入り培地Aは、培養容器2内面の内の比較的狭い面積のみに接触する。したがって、この面積を細胞の初期の増殖に適した面積に設定しておけば、細胞にとって快適な培養環境に設定されることになり、細胞の増殖を促進することができる。
【0024】
次いで、この状態で所定期間だけ静止した状態に保持する静置培養期間を経過させることにより、培地A内に浮遊している骨髄細胞の内、付着性の間葉系幹細胞を培養容器2の内面に付着させることが可能となる。
そして、静置培養期間が終了した時点で、回転駆動手段4を作動させることにより、図4に示されるように、培養容器2をその軸心3回りに回転させる。これにより、細胞が付着している培養容器2内面を間欠的に露出させ、あるいは培地A内に浸しながら培養を継続することが可能となる。これにより、さらに効率的に細胞を増殖させることができる。
また、これによれば、培地Aに接触している培養容器2内面の面積を維持しながら、細胞が増殖可能な面積を実質的に広げることが可能となる。
【0025】
その後、所定の培養期間が経過することにより細胞が充分に増殖し、それ以上増殖するのにスペースが狭くなってきた場合に、図2に示されるように、角度変更手段5を作動させて、培養容器2の軸心3の水平方向に対する傾斜角度θを小さくする。これにより、培地Aが接触している培養容器2内1面の面積が広げられ、培養に適した培養環境に設定されることになる。
さらに、角度変更手段5を作動させて、図3に示されるように、培養容器2の軸心3を略水平に設定することにより、培地Aが接触している培養容器2内面の面積を最も広げることが可能となる。
【0026】
このように本実施形態に係る培養装置1によれば、培養容器2の傾斜角度θを変更するだけで、培養に適した培養環境を更新することができるので、複数の培養容器を用意することなく、簡易に、細胞の効率的な培養を行うことができる。また、培養容器2を軸心3回りに回転させることにより、培地Aの液面を変動させて、内面に付着している細胞を間欠的に露出させることができる。これにより、細胞にとってさらに適した培養環境を提供し、より効率的に増殖させることができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、培養容器2の内部の一部に細胞入り培地Aを貯留することにしたが、これに代えて、培養容器2のほぼ全体に細胞入り培地Aを充填することにしてもよい。培地A内の間葉系幹細胞は底面にのみ付着して増殖するので、これを利用して、培養容器2を軸心3回りに回転させることにより、培養容器2の底面を変動させ、細胞の付着する面積を漸次広げていくことができる。
【0028】
この場合に、培地Aは培養容器2内に貯留しておくことにしてもよいが、供給口と排出口を設けて、培養容器2内を流動するようにすることにしてもよい。これにより、適度の培地Aの交換が行われるので、培地A内の養分等を常に補給して、細胞の効率的な培養を行うことができる。
また、この場合、培地Aの流動方向に沿って、複数の部屋を区画形成してもよい。例えば、培養容器2内に、軸心3に沿う方向に貫通する複数の孔を有するハニカム体(図示略)を挿入しておくことにしてもよい。これによれば、ハニカム体の各孔により区画される部屋の各底面に細胞が付着して増殖するので、回転駆動手段4の作動により、細胞の付着する底面を変動させて面積を広げていくことができる。
【0029】
また、円筒状の培養容器2を例に挙げて説明したが、これに代えて、他の任意の形態の培養容器2を採用してもよい。
さらに、培養容器2内に、ブロック状または顆粒状のβリン酸三カルシウム多孔体等からなる生体組織補填材を投入しておくことにしてもよい。この場合には、細胞が生体組織補填材を足場として成長する二次培養を行うことができる。
βリン酸三カルシウムに代えて、他のセラミクス多孔体、コラーゲン、ポリ乳酸、多孔性の金属等を採用することにしてもよい。
【0030】
また、骨髄細胞に含まれる間葉系幹細胞を培養する場合を例に挙げて説明したが、これに代えて、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞あるいは軟骨細胞等の他の細胞を培養する場合に適用してもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上、説明したように、この発明に係る培養装置によれば、同一の培養容器内において増殖させられる細胞に対して、成長に合わせて順次、培地に接触する培養容器内面の面積を増大させることができるので、細胞に対して快適な培養環境を与えて効率的な増殖を促し、必要量の細胞を迅速に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の第1の実施形態に係る培養装置であって、培養初期の状態を示す模式図である。
【図2】 図1の培養装置における培養中期の状態を示す模式図である。
【図3】 図1の培養装置における培養終期の状態を示す模式図である。
【図4】 図1の培養装置における培養容器の回転を示す模式図である。
【符号の説明】
A 培地
1 培養装置
2 培養容器
3 軸心
4 回転駆動手段
5 角度変更手段
Claims (2)
- 培養容器の内部に細胞を含む培地を部分的に貯留し、該培養容器の軸心回りに回転させながら、前記培養容器の内面と前記培地との接触面積が広くなる方向に前記軸心の鉛直方向の傾斜角度を変更して培養する培養方法。
- 前記培養容器の内部に生体組織補填材を配置する請求項1に記載の培養方法。
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