JP2004097047A - 培養装置および培養方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な操作により、細胞の成長に合わせた培養環境を達成し、細胞の効率的な増殖を図る。
【解決手段】底面積の異なる複数の培養容器2,3と、一の培養容器2から他の培養容器3へ移動させられて、各培養容器2,3の底面に、その底面の一部を構成するように配置される培養面部材4とを備える培養装置1を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】底面積の異なる複数の培養容器2,3と、一の培養容器2から他の培養容器3へ移動させられて、各培養容器2,3の底面に、その底面の一部を構成するように配置される培養面部材4とを備える培養装置1を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、細胞を培養するために用いられる培養装置および培養方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、間葉系幹細胞等の幹細胞は、様々な組織に分化でき、その組織を再生することができる細胞として知られている。間葉系幹細胞は、骨髄液に含まれている。しかしながら、骨髄液から採取可能な間葉系幹細胞はごく微量であり、組織の再生に必要な量の間葉系幹細胞を得るためには、骨髄液を培養することにより増殖させる必要がある。
【0003】
従来、間葉系幹細胞を培養するには、患者から採取した骨髄液を平坦な培養容器上に播種して、適当な培地内において培養する。骨髄液内の赤血球や白血球などの造血系の細胞は培地内に浮遊する一方、間葉系幹細胞は培養容器の底面に付着して増殖する性質を有している。したがって、培地交換によって造血系の細胞を廃棄することにより、培養容器の底面に付着して増殖した間葉系幹細胞のみを抽出することが可能となる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように培養容器の底面に付着して増殖する間葉系幹細胞の増殖速度は、それが置かれている空間的な培養環境に左右される傾向がある。すなわち、間葉系幹細胞は培養容器の底面に付着して増殖するため、付着可能な広さの底面積が必要であることは言うまでもないが、あまりに広すぎると逆に増殖速度が低下して、効率的に成長させることができないという不都合がある。
【0006】
このような不都合を回避するために、間葉系幹細胞の増殖度合に応じて、順次容積の大きな培養容器に移し替えることにより、間葉系幹細胞の適正な培養環境を維持することが考えられている。
しかしながら、培養容器を移し替えるには、一の培養容器の底面に付着して増殖した間葉系幹細胞を、スクレーパにより掻き取るか、トリプシン等の蛋白質分解酵素によって剥離させることが必要であり、間葉系幹細胞の健全性が損なわれる不都合がある。また、より損傷の少ないトリプシン等による場合には、剥離後にトリプシン等から細胞を遠心分離する工程が必要となるため、作業が繁雑になり、自動化が困難であるという不都合がある。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な操作によって間葉系幹細胞等の細胞の培養環境を維持し、効率的に増殖させることができる培養装置および培養方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、底面積の異なる複数の培養容器と、一の培養容器から他の培養容器へ移動させられて、各培養容器の底面に、その底面の一部を構成するように配置される培養面部材とを備える培養装置を提供する。
【0009】
この発明によれば、培養面部材を一の培養容器内に配置して、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、一の培養容器よりも底面積の大きな他の培養容器へ培養面部材を移動させて、該培養面部材を当該他の培養容器内に配置することにより、細胞に対して、一の培養容器内に配されていたときよりも広い培養スペースを与えることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の培養装置において、前記他の培養容器の底面積が、前記一の培養容器の底面積より大きく構成され、前記培養面部材が平板状に形成され、前記他の培養容器の底面に、前記培養面部材を収容する凹部が形成されている培養装置を提供する。
【0011】
この発明によれば、一の培養容器内において細胞を培養した後に、細胞が付着した平板状の培養面部材を、より広い底面積の他の培養容器へ移動させることにより、細胞に対して広い細胞スペースを与えることが可能となる。この場合において、他の培養容器の底面には、培養面部材を収容する凹部が形成されているので、培養面部材が凹部に収容されることにより、培養面部材の上面が他の培養容器の凹部以外の底面とともに、より広い平坦な底面を構成することができ、細胞の円滑な成長を促すことが可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明は、複数の培養容器と、一の培養容器から他の培養容器へ移動させられて、各培養容器の底面に、その底面の一部を構成するように配置される複数の培養面部材とを備え、前記一の培養容器が前記複数の培養面部材を同時に配置可能な底面積を有するとともに、その底面に、隣接する培養面部材の配置スペースを区切る仕切壁を備え、前記他の培養容器が前記一の培養容器の培養面部材1個当たりの底面積よりも大きな底面積を有する培養装置を提供する。
【0013】
この発明によれば、一の培養容器内に複数の培養面部材を配置した状態で細胞を培養すると、各培養面部材は、仕切壁によって区切られた配置スペース内に配置されるので、培養初期の細胞に比較的狭い快適な培養スペースを与えることが可能となる。また、一の培養容器内に複数の培養面部材を同時に配置することで、各培養面部材上の細胞に対して適正な培養スペースを与えつつ、密集して増殖することが可能となる。そして、その後に、細胞が成長した段階で、細胞が付着した各培養面部材を、培養面部材1個当たりの占有スペースが大きな他の培養容器にそれぞれ移動させることにより、細胞に対してより広い培養スペースを与えることが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の培養装置において、前記培養面部材に、該培養面部材が培養容器の底面に配置されたときに、該培養容器内に貯留される培地の液面上に露出する把持部が設けられている培養装置を提供する。
この発明によれば、把持部を把持して培養面部材を培地内から引き上げることが可能となり、培養面部材を簡易に一の培養容器から他の培養容器へ移動させることが可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明は、一の培養容器の底面に、その底面の一部を構成する培養面部材を配置して、該培養面部材上において、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、細胞が付着した培養面部材を、前記一の培養容器よりも大きな底面積を有する他の培養容器へ移動させて、所定期間にわたる細胞の培養を継続する培養方法を提供する。
【0016】
この発明によれば、培養面部材を、より広い底面積を有する培養容器へ移動させるだけで、細胞の成長に合わせた適正な培養スペースを細胞に与えて、より快適な培養条件を達成し、細胞の成長を促進することが可能となる。
【0017】
請求項6に係る発明は、一の培養容器の底面に、その底面の一部を構成する複数の培養面部材を仕切壁を挟んで配置して、各培養面部材上において、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、細胞が付着した各培養面部材を、前記一の培養容器の培養面部材1個当たりの底面積より大きな底面積を有する他の培養容器へ移動させて、所定期間にわたる細胞の培養を継続する培養方法を提供する。
【0018】
この発明によれば、一の培養容器内においては、培養面部材を密集させることにより、各培養面部材上の培養初期の細胞にとって快適な、比較的狭い培養スペースを与えて、成長を促進し、他の培養容器内においては、各培養面部材上の培養後期の細胞にとって快適な、一の培養容器における場合よりも広い培養スペースを与えて、さらなる成長を促進することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明の各実施形態に係る培養容器について説明する前に、生体組織補填体としての骨補填体の製造工程について概略的に説明する。骨補填体を製造するには、図5に示されるように、まず、患者の腸骨等から骨髄液を採取する。採取された骨髄液は遠心分離機にかけられて、旋回されることにより、比重の重い骨髄細胞を抽出される。
【0020】
抽出された骨髄細胞は、予め調製されている培地とともに培養容器内に投入され混合される。培地の一部は取り出されて感染検査に回される。
この後に、混合された骨髄液および培地を所定の温度(例えば、37±0.5℃)およびCO2濃度(例えば、5%)等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が一次培養される。細胞の培養途中の所定の交換時期には、培養容器内から培地が廃棄される。そして、再度培地を混合されて培養工程が繰り返し継続される。廃棄された培地の一部は感染検査に回される。
【0021】
所定の培養期間が終了すると、培養容器内から培地が廃棄された後に、培養容器内にトリプシンのような蛋白質分解酵素が投入・混合される。これにより、培養容器の底面に付着して成長していた間葉系幹細胞が、主培養容器の底面から剥離される。そして、このように剥離された間葉系幹細胞は、遠心分離機にかけられることにより抽出される。
【0022】
抽出された間葉系幹細胞は、細胞数調整が行われた後に、骨補填材と適当な培地が投入された培養容器内に混合される。実際には、間葉系幹細胞を骨補填材に付着させ、培地内に投入する。そして、上記と同様にして、混合された間葉系幹細胞と培地を所定の温度(例えば、37±0.5℃)およびCO2濃度(例えば5%)等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が二次培養される。
【0023】
二次培養工程においても、一次培養工程と同様にして、定期的に培地の交換が行われ、投入される培地の一部および廃棄される培地の一部がそれぞれ、感染検査に回される。そして、所定の培養期間が経過したところで、出荷用の品質検査と感染検査のための検体抽出が行われ、製造された骨補填材は密封されて製品として提供される。
【0024】
以下に説明するこの発明の各実施形態に係る培養装置は、主に、上述した培養工程の内、一次培養工程において使用されるものであるが、二次培養工程において使用してもよい。
【0025】
この発明の一実施形態に係る培養装置について、図1を参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置1は、図1に示されるように、第1の培養容器2と第2の培養容器3とこれらの培養容器2,3の間を移動可能に設けられる培養面部材4とを備えている。
【0026】
第1の培養容器2および第2の培養容器3は、それぞれ上方に開口部を有する角皿状の容器であって、第2の培養容器3は、第1の培養容器2よりも広い底面積を有している。
前記培養面部材4は、各培養容器2,3の底面に沿って配置可能な薄肉の平板状の部材であって、第1の培養容器2の底面とほぼ同等の形状を有している。また、培養面部材4は、その端部に、該培養面部材4の表面に対して直交する方向に立ち上がる把持部5を備えている。把持部5は、培養面部材4が培養容器2,3の底面に配置されたときに、上方に延びて配置され、その先端が、培養容器2,3内に貯留される培地Aの液面上に突出する程度の長さ寸法を有している。
【0027】
このように構成された本実施形態に係る培養装置1を用いた細胞の培養方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置1を用いて細胞を培養するには、第1の培養容器2内に、該第1の培養容器2の底面に沿って培養面部材4を配置する。そして、この第1の培養容器2内に、所定の培地Aを貯留する。培養面部材4は、第1の培養容器2の底面とほぼ同等の形状に形成されているので、第1の培養容器2の底面に配置されると、該底面のほぼ全域を覆うように配置される。
【0028】
培地Aは、例えば、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)、抗生剤を84:15:1の配合比率で混合したものである。なお、ウシ胎児血清に代えてヒト血清を用いてもよい。
培地A内には、骨髄液から抽出した骨髄細胞を投入する。また、第1の培養容器2は、所定の培養条件、例えば、培地Aに接触する雰囲気が、37±0.5℃、5%CO2濃度となるように維持する。
【0029】
この状態で、所定の静置培養期間を経過させることにより、培地A内に投入された骨髄細胞の内、付着性の間葉系幹細胞が第1の培養容器2の底面に配されている培養面部材4の上面に付着して成長し始める。第1の培養容器2は、培養面部材4と同程度の比較的狭い底面積を有しているが、成長初期の間葉系幹細胞にとっては、比較的棲みやすい快適な培養スペースとなっている。その結果、間葉系幹細胞は、効率的に増殖することになる。
【0030】
その後、所定の培養期間が経過することにより細胞が充分に増殖し、それ以上増殖するのにスペースが狭くなってきた場合に、図1の(a)および(b)にそれぞれ矢印で示されるように、培養面部材4を第1の培養容器2内から取り出し、第1の培養容器2と同様の培地Aを貯留した第2の培養容器3内に投入する。図中、鎖線で示されているのは、第2の培養容器3内に配置された状態の培養面部材4である。
【0031】
第2の培養容器3の底面積は、第1の培養容器2よりも広く形成されているので、この移動により、培養面部材4上に付着している間葉系幹細胞にとっては、第1の培養容器2よりも広い培養スペースが提供される。これにより、間葉系幹細胞は、快適な培養条件下において増殖を促進され、効率的に増殖させられることになる。
【0032】
このように、本実施形態に係る培養装置1および培養方法によれば、底面積の異なる2つの培養容器2,3間で培養面部材4を移動させるだけで、培養面部材4上に付着して成長する間葉系幹細胞に対し、その成長に合わせた快適な培養スペースを提供することが可能となる。したがって、間葉系幹細胞は、常に効率的に成長して、迅速に必要細胞数まで増殖させられることになる。
【0033】
なお、本実施形態に係る培養装置1では、培養容器2,3を2個用する場合について説明したが、これに代えて、3個以上使用して順次培養スペースを広げていくようにしてもよい。この場合、培養容器3の底面にまで付着して成長した間葉系幹細胞を底面から剥離させるために、培養容器3の底面に温度応答性処理を施すことにしてもよい。
【0034】
温度応答性処理は、温度応答性高分子ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を共有結合で固定することにより行われる。温度応答性処理された領域は、32℃を境界温度として、それ以上では、市販の細胞用培養容器と同程度の弱い疎水性を呈するが、温度を境界温度以下に冷却することにより高い親水性を呈するようになる領域である。したがって、例えば、37℃で培養した後に32℃以下に冷却することにより、培養容器3の底面を高い親水性を呈するように変化させ、容易に間葉系幹細胞を剥離させることができる。このようにすれば、トリプシン処理や遠心分離工程を行う必要がなく、細胞を健全な状態で回収することができる。
【0035】
また、図2に示されるように、第2の培養容器3に、前記培養面部材4より大きな第2の培養面部材6を配置しておき、第3の培養容器7へ移動させる際には、その第2の培養面部材6上に第1の培養面部材4を搭載したままの状態で移動させることにしてもよい。
【0036】
さらに、比較的厚さの厚い培養面部材4’を使用する場合には、図3に示されるように、第2の培養容器3’の底面に培養面部材4’の厚さ寸法と同等の深さを有する凹部8を形成しておき、第2の培養容器3’へ培養面部材4’を移動させる際に、当該凹部8内に培養面部材4’を収容するように構成してもよい。このようにすることで、凹部8内に収容された培養面部材4’の上面が、第2の培養容器3’の底面の内、凹部8以外の部分と面一に配される。したがって、培養面部材4’上の間葉系幹細胞は、その成長を段差によって阻まれることなく、第2の培養容器3’の底面上にまで広がるように成長することが可能となる。
【0037】
なお、第2の培養容器3の底面に凹部8を設けることなく、培養面部材4の周囲に角度の小さいテーパ面(図示略)を設けることにしてもよい。このようにすることで、培養面部材4上の間葉系幹細胞がテーパ面を下って第2の培養容器3の底面上にまで広がるように成長することが可能となる。
【0038】
次に、この発明の第2の実施形態に係る培養装置について、図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置10は、図4に示されるように、第1および第2の培養容器11,12と、これら第1および第2の培養容器11,12間で移動させられる3個の培養面部材13,14,15とを備えている。
【0039】
3個の培養面部材13,14,15は、ほぼ同一形状に形成されている。各培養面部材13,14,15は、第1の実施形態における培養面部材4と同様に、平板状に形成された端部に培地Aの液面上に露出する把持部21を備えている。
第1の培養容器11は、図4に示されるように、底面を3つの配置スペース16,17,18に区切る2枚の仕切壁19,20を有している。各配置スペース16,17,18は、それぞれ1個の培養面部材13,14,15を配置できる程度の底面積を有している。これにより、3個の培養面部材13,14,15を第1の培養容器11内に配置すると、3個の培養面部材13,14,15が仕切壁19,20を挟んで並んで配置されるようになっている。
【0040】
第2の培養容器12は、3個用意されており、各々が、各培養面部材13,14,15の形状よりも大きな底面積を有している。すなわち、第2の培養容器12の底面積は、第1の培養容器11の培養面部材13,14,15、1個当たりの底面積、すなわち各配置スペース16,17,18の底面積よりも大きく形成されている。
【0041】
このように構成された本実施形態に係る培養装置10を用いた細胞の培養方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置10を用いて細胞を培養するには、第1の実施形態と同様の培地Aを貯留した第1の培養容器11の底面に、3個の培養面部材13,14,15を仕切壁19,20を挟んで並べて配置し、骨髄細胞を投入する。
【0042】
第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18の底面は、各培養面部材13,14,15とほぼ同等の形状を有しているので、3個の培養面部材13,14,15をそれぞれ配置スペース16,17,18に配置すると、第1の培養容器11の底面のほぼ全域が覆われる。そして、第1の培養容器11を、第1の実施形態と同様の所定の培養条件に維持することにより、細胞の培養が開始され、骨髄細胞中の間葉系幹細胞が各培養面部材13,14,15の上面に付着して成長し始める。
【0043】
第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18は、各培養面部材13,14,15と同程度の比較的狭い底面積を有しており、成長初期の間葉系幹細胞にとっては、比較的棲みやすい快適な培養スペースとなっている。その結果、間葉系幹細胞を、効率的に増殖させることができることになる。また、第1の培養容器11内に3個の培養面部材13,14,15を同時に配置しているので、同一培養条件において細胞を密集して培養することができる。
【0044】
その後、所定の培養期間が経過することにより細胞が充分に増殖し、それ以上増殖するのに配置スペース16,17,18が狭くなってきた場合に、図4の(a)および(b)にそれぞれ矢印で示されるように、各培養面部材13,14,15を第1の培養容器11内から取り出し、第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18より底面積の大きな第2の培養容器12内に投入する。これにより、培養面部材13,14,15上に付着している間葉系幹細胞にとっては、第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18よりも広い培養スペースが提供される。その結果、間葉系幹細胞は、快適な培養条件下において増殖を促進され、効率的に増殖させられることになる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、簡易な操作により、細胞に対して、その成長に合わせた快適な培養スペースを与えることを可能とし、効率的な増殖を達成することができるという効果がある。したがって、体内に補填する必要数の間葉系幹細胞を迅速に確保し、あるいは、その後の二次培養工程によって製造される骨補填体を迅速に製造することができるという効果がある。
【0046】
なお、上記第2の実施形態においては、第1の培養容器11内に3カ所の配置スペース16,17,18を設け、3個の培養面部材13,14,15を同時に配置して培養することにしたが、これに代えて、2個あるいは4個以上の培養面部材を同時に配置することにしてもよい。また、第2の培養容器12内に仕切壁を設けて、第1の配置スペース16,17,18より大きな底面積を有する配置スペースを構成することにしてもよい。
【0047】
また、この発明においては、骨髄液から抽出した間葉系幹細胞を培養する場合について説明したが、骨髄液のみならず末梢血や臍帯血から抽出することにしてもよい。また、間葉系幹細胞に限定されるものではなく、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞等の体細胞の培養にも使用できる。
【0048】
また、培養面部材4,4’,13,14,15に付着した細胞は、トリプシンのような蛋白質分解酵素を用いて剥がされた後に2次培養されるが、これに代えて、培養面部材4,4’,13,14,15の表面に、所定の温度を境界として疎水性と親水性とが切り替わる温度応答性処理を施すことにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、簡易な操作により、培養される細胞に対して、細胞の成長に合わせて順次増大する底面積の底面を提供することができるので、細胞に快適な培養環境を与えて効率的な増殖を促し、必要量の細胞を迅速に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る培養装置を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図2】図1の培養装置の変形例を示す縦断面図である。
【図3】図1の培養装置の他の変形例を示す縦断面図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る培養装置を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図5】この発明を適用する培養工程を説明する説明図である。
【符号の説明】
1,10 培養装置
2,3,3’,11,12 培養容器
4,4’,13,14,15 培養面部材
5 把持部
8 凹部
16,17,18 配置スペース
19,20 仕切壁
【発明の属する技術分野】
この発明は、細胞を培養するために用いられる培養装置および培養方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、間葉系幹細胞等の幹細胞は、様々な組織に分化でき、その組織を再生することができる細胞として知られている。間葉系幹細胞は、骨髄液に含まれている。しかしながら、骨髄液から採取可能な間葉系幹細胞はごく微量であり、組織の再生に必要な量の間葉系幹細胞を得るためには、骨髄液を培養することにより増殖させる必要がある。
【0003】
従来、間葉系幹細胞を培養するには、患者から採取した骨髄液を平坦な培養容器上に播種して、適当な培地内において培養する。骨髄液内の赤血球や白血球などの造血系の細胞は培地内に浮遊する一方、間葉系幹細胞は培養容器の底面に付着して増殖する性質を有している。したがって、培地交換によって造血系の細胞を廃棄することにより、培養容器の底面に付着して増殖した間葉系幹細胞のみを抽出することが可能となる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
【非特許文献1】
吉川,「骨髄間葉系細胞による培養真皮、培養骨−骨髄間葉系細胞による再生医療−」,バイオインダストリー,株式会社シーエムシー出版,2001年,第18巻,第7号,p.46−53
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように培養容器の底面に付着して増殖する間葉系幹細胞の増殖速度は、それが置かれている空間的な培養環境に左右される傾向がある。すなわち、間葉系幹細胞は培養容器の底面に付着して増殖するため、付着可能な広さの底面積が必要であることは言うまでもないが、あまりに広すぎると逆に増殖速度が低下して、効率的に成長させることができないという不都合がある。
【0006】
このような不都合を回避するために、間葉系幹細胞の増殖度合に応じて、順次容積の大きな培養容器に移し替えることにより、間葉系幹細胞の適正な培養環境を維持することが考えられている。
しかしながら、培養容器を移し替えるには、一の培養容器の底面に付着して増殖した間葉系幹細胞を、スクレーパにより掻き取るか、トリプシン等の蛋白質分解酵素によって剥離させることが必要であり、間葉系幹細胞の健全性が損なわれる不都合がある。また、より損傷の少ないトリプシン等による場合には、剥離後にトリプシン等から細胞を遠心分離する工程が必要となるため、作業が繁雑になり、自動化が困難であるという不都合がある。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な操作によって間葉系幹細胞等の細胞の培養環境を維持し、効率的に増殖させることができる培養装置および培養方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、底面積の異なる複数の培養容器と、一の培養容器から他の培養容器へ移動させられて、各培養容器の底面に、その底面の一部を構成するように配置される培養面部材とを備える培養装置を提供する。
【0009】
この発明によれば、培養面部材を一の培養容器内に配置して、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、一の培養容器よりも底面積の大きな他の培養容器へ培養面部材を移動させて、該培養面部材を当該他の培養容器内に配置することにより、細胞に対して、一の培養容器内に配されていたときよりも広い培養スペースを与えることが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の培養装置において、前記他の培養容器の底面積が、前記一の培養容器の底面積より大きく構成され、前記培養面部材が平板状に形成され、前記他の培養容器の底面に、前記培養面部材を収容する凹部が形成されている培養装置を提供する。
【0011】
この発明によれば、一の培養容器内において細胞を培養した後に、細胞が付着した平板状の培養面部材を、より広い底面積の他の培養容器へ移動させることにより、細胞に対して広い細胞スペースを与えることが可能となる。この場合において、他の培養容器の底面には、培養面部材を収容する凹部が形成されているので、培養面部材が凹部に収容されることにより、培養面部材の上面が他の培養容器の凹部以外の底面とともに、より広い平坦な底面を構成することができ、細胞の円滑な成長を促すことが可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明は、複数の培養容器と、一の培養容器から他の培養容器へ移動させられて、各培養容器の底面に、その底面の一部を構成するように配置される複数の培養面部材とを備え、前記一の培養容器が前記複数の培養面部材を同時に配置可能な底面積を有するとともに、その底面に、隣接する培養面部材の配置スペースを区切る仕切壁を備え、前記他の培養容器が前記一の培養容器の培養面部材1個当たりの底面積よりも大きな底面積を有する培養装置を提供する。
【0013】
この発明によれば、一の培養容器内に複数の培養面部材を配置した状態で細胞を培養すると、各培養面部材は、仕切壁によって区切られた配置スペース内に配置されるので、培養初期の細胞に比較的狭い快適な培養スペースを与えることが可能となる。また、一の培養容器内に複数の培養面部材を同時に配置することで、各培養面部材上の細胞に対して適正な培養スペースを与えつつ、密集して増殖することが可能となる。そして、その後に、細胞が成長した段階で、細胞が付着した各培養面部材を、培養面部材1個当たりの占有スペースが大きな他の培養容器にそれぞれ移動させることにより、細胞に対してより広い培養スペースを与えることが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の培養装置において、前記培養面部材に、該培養面部材が培養容器の底面に配置されたときに、該培養容器内に貯留される培地の液面上に露出する把持部が設けられている培養装置を提供する。
この発明によれば、把持部を把持して培養面部材を培地内から引き上げることが可能となり、培養面部材を簡易に一の培養容器から他の培養容器へ移動させることが可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明は、一の培養容器の底面に、その底面の一部を構成する培養面部材を配置して、該培養面部材上において、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、細胞が付着した培養面部材を、前記一の培養容器よりも大きな底面積を有する他の培養容器へ移動させて、所定期間にわたる細胞の培養を継続する培養方法を提供する。
【0016】
この発明によれば、培養面部材を、より広い底面積を有する培養容器へ移動させるだけで、細胞の成長に合わせた適正な培養スペースを細胞に与えて、より快適な培養条件を達成し、細胞の成長を促進することが可能となる。
【0017】
請求項6に係る発明は、一の培養容器の底面に、その底面の一部を構成する複数の培養面部材を仕切壁を挟んで配置して、各培養面部材上において、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、細胞が付着した各培養面部材を、前記一の培養容器の培養面部材1個当たりの底面積より大きな底面積を有する他の培養容器へ移動させて、所定期間にわたる細胞の培養を継続する培養方法を提供する。
【0018】
この発明によれば、一の培養容器内においては、培養面部材を密集させることにより、各培養面部材上の培養初期の細胞にとって快適な、比較的狭い培養スペースを与えて、成長を促進し、他の培養容器内においては、各培養面部材上の培養後期の細胞にとって快適な、一の培養容器における場合よりも広い培養スペースを与えて、さらなる成長を促進することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明の各実施形態に係る培養容器について説明する前に、生体組織補填体としての骨補填体の製造工程について概略的に説明する。骨補填体を製造するには、図5に示されるように、まず、患者の腸骨等から骨髄液を採取する。採取された骨髄液は遠心分離機にかけられて、旋回されることにより、比重の重い骨髄細胞を抽出される。
【0020】
抽出された骨髄細胞は、予め調製されている培地とともに培養容器内に投入され混合される。培地の一部は取り出されて感染検査に回される。
この後に、混合された骨髄液および培地を所定の温度(例えば、37±0.5℃)およびCO2濃度(例えば、5%)等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が一次培養される。細胞の培養途中の所定の交換時期には、培養容器内から培地が廃棄される。そして、再度培地を混合されて培養工程が繰り返し継続される。廃棄された培地の一部は感染検査に回される。
【0021】
所定の培養期間が終了すると、培養容器内から培地が廃棄された後に、培養容器内にトリプシンのような蛋白質分解酵素が投入・混合される。これにより、培養容器の底面に付着して成長していた間葉系幹細胞が、主培養容器の底面から剥離される。そして、このように剥離された間葉系幹細胞は、遠心分離機にかけられることにより抽出される。
【0022】
抽出された間葉系幹細胞は、細胞数調整が行われた後に、骨補填材と適当な培地が投入された培養容器内に混合される。実際には、間葉系幹細胞を骨補填材に付着させ、培地内に投入する。そして、上記と同様にして、混合された間葉系幹細胞と培地を所定の温度(例えば、37±0.5℃)およびCO2濃度(例えば5%)等の培養条件に維持することにより、所定時間にわたって一定培養条件下で細胞が二次培養される。
【0023】
二次培養工程においても、一次培養工程と同様にして、定期的に培地の交換が行われ、投入される培地の一部および廃棄される培地の一部がそれぞれ、感染検査に回される。そして、所定の培養期間が経過したところで、出荷用の品質検査と感染検査のための検体抽出が行われ、製造された骨補填材は密封されて製品として提供される。
【0024】
以下に説明するこの発明の各実施形態に係る培養装置は、主に、上述した培養工程の内、一次培養工程において使用されるものであるが、二次培養工程において使用してもよい。
【0025】
この発明の一実施形態に係る培養装置について、図1を参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置1は、図1に示されるように、第1の培養容器2と第2の培養容器3とこれらの培養容器2,3の間を移動可能に設けられる培養面部材4とを備えている。
【0026】
第1の培養容器2および第2の培養容器3は、それぞれ上方に開口部を有する角皿状の容器であって、第2の培養容器3は、第1の培養容器2よりも広い底面積を有している。
前記培養面部材4は、各培養容器2,3の底面に沿って配置可能な薄肉の平板状の部材であって、第1の培養容器2の底面とほぼ同等の形状を有している。また、培養面部材4は、その端部に、該培養面部材4の表面に対して直交する方向に立ち上がる把持部5を備えている。把持部5は、培養面部材4が培養容器2,3の底面に配置されたときに、上方に延びて配置され、その先端が、培養容器2,3内に貯留される培地Aの液面上に突出する程度の長さ寸法を有している。
【0027】
このように構成された本実施形態に係る培養装置1を用いた細胞の培養方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置1を用いて細胞を培養するには、第1の培養容器2内に、該第1の培養容器2の底面に沿って培養面部材4を配置する。そして、この第1の培養容器2内に、所定の培地Aを貯留する。培養面部材4は、第1の培養容器2の底面とほぼ同等の形状に形成されているので、第1の培養容器2の底面に配置されると、該底面のほぼ全域を覆うように配置される。
【0028】
培地Aは、例えば、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)、抗生剤を84:15:1の配合比率で混合したものである。なお、ウシ胎児血清に代えてヒト血清を用いてもよい。
培地A内には、骨髄液から抽出した骨髄細胞を投入する。また、第1の培養容器2は、所定の培養条件、例えば、培地Aに接触する雰囲気が、37±0.5℃、5%CO2濃度となるように維持する。
【0029】
この状態で、所定の静置培養期間を経過させることにより、培地A内に投入された骨髄細胞の内、付着性の間葉系幹細胞が第1の培養容器2の底面に配されている培養面部材4の上面に付着して成長し始める。第1の培養容器2は、培養面部材4と同程度の比較的狭い底面積を有しているが、成長初期の間葉系幹細胞にとっては、比較的棲みやすい快適な培養スペースとなっている。その結果、間葉系幹細胞は、効率的に増殖することになる。
【0030】
その後、所定の培養期間が経過することにより細胞が充分に増殖し、それ以上増殖するのにスペースが狭くなってきた場合に、図1の(a)および(b)にそれぞれ矢印で示されるように、培養面部材4を第1の培養容器2内から取り出し、第1の培養容器2と同様の培地Aを貯留した第2の培養容器3内に投入する。図中、鎖線で示されているのは、第2の培養容器3内に配置された状態の培養面部材4である。
【0031】
第2の培養容器3の底面積は、第1の培養容器2よりも広く形成されているので、この移動により、培養面部材4上に付着している間葉系幹細胞にとっては、第1の培養容器2よりも広い培養スペースが提供される。これにより、間葉系幹細胞は、快適な培養条件下において増殖を促進され、効率的に増殖させられることになる。
【0032】
このように、本実施形態に係る培養装置1および培養方法によれば、底面積の異なる2つの培養容器2,3間で培養面部材4を移動させるだけで、培養面部材4上に付着して成長する間葉系幹細胞に対し、その成長に合わせた快適な培養スペースを提供することが可能となる。したがって、間葉系幹細胞は、常に効率的に成長して、迅速に必要細胞数まで増殖させられることになる。
【0033】
なお、本実施形態に係る培養装置1では、培養容器2,3を2個用する場合について説明したが、これに代えて、3個以上使用して順次培養スペースを広げていくようにしてもよい。この場合、培養容器3の底面にまで付着して成長した間葉系幹細胞を底面から剥離させるために、培養容器3の底面に温度応答性処理を施すことにしてもよい。
【0034】
温度応答性処理は、温度応答性高分子ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を共有結合で固定することにより行われる。温度応答性処理された領域は、32℃を境界温度として、それ以上では、市販の細胞用培養容器と同程度の弱い疎水性を呈するが、温度を境界温度以下に冷却することにより高い親水性を呈するようになる領域である。したがって、例えば、37℃で培養した後に32℃以下に冷却することにより、培養容器3の底面を高い親水性を呈するように変化させ、容易に間葉系幹細胞を剥離させることができる。このようにすれば、トリプシン処理や遠心分離工程を行う必要がなく、細胞を健全な状態で回収することができる。
【0035】
また、図2に示されるように、第2の培養容器3に、前記培養面部材4より大きな第2の培養面部材6を配置しておき、第3の培養容器7へ移動させる際には、その第2の培養面部材6上に第1の培養面部材4を搭載したままの状態で移動させることにしてもよい。
【0036】
さらに、比較的厚さの厚い培養面部材4’を使用する場合には、図3に示されるように、第2の培養容器3’の底面に培養面部材4’の厚さ寸法と同等の深さを有する凹部8を形成しておき、第2の培養容器3’へ培養面部材4’を移動させる際に、当該凹部8内に培養面部材4’を収容するように構成してもよい。このようにすることで、凹部8内に収容された培養面部材4’の上面が、第2の培養容器3’の底面の内、凹部8以外の部分と面一に配される。したがって、培養面部材4’上の間葉系幹細胞は、その成長を段差によって阻まれることなく、第2の培養容器3’の底面上にまで広がるように成長することが可能となる。
【0037】
なお、第2の培養容器3の底面に凹部8を設けることなく、培養面部材4の周囲に角度の小さいテーパ面(図示略)を設けることにしてもよい。このようにすることで、培養面部材4上の間葉系幹細胞がテーパ面を下って第2の培養容器3の底面上にまで広がるように成長することが可能となる。
【0038】
次に、この発明の第2の実施形態に係る培養装置について、図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置10は、図4に示されるように、第1および第2の培養容器11,12と、これら第1および第2の培養容器11,12間で移動させられる3個の培養面部材13,14,15とを備えている。
【0039】
3個の培養面部材13,14,15は、ほぼ同一形状に形成されている。各培養面部材13,14,15は、第1の実施形態における培養面部材4と同様に、平板状に形成された端部に培地Aの液面上に露出する把持部21を備えている。
第1の培養容器11は、図4に示されるように、底面を3つの配置スペース16,17,18に区切る2枚の仕切壁19,20を有している。各配置スペース16,17,18は、それぞれ1個の培養面部材13,14,15を配置できる程度の底面積を有している。これにより、3個の培養面部材13,14,15を第1の培養容器11内に配置すると、3個の培養面部材13,14,15が仕切壁19,20を挟んで並んで配置されるようになっている。
【0040】
第2の培養容器12は、3個用意されており、各々が、各培養面部材13,14,15の形状よりも大きな底面積を有している。すなわち、第2の培養容器12の底面積は、第1の培養容器11の培養面部材13,14,15、1個当たりの底面積、すなわち各配置スペース16,17,18の底面積よりも大きく形成されている。
【0041】
このように構成された本実施形態に係る培養装置10を用いた細胞の培養方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る培養装置10を用いて細胞を培養するには、第1の実施形態と同様の培地Aを貯留した第1の培養容器11の底面に、3個の培養面部材13,14,15を仕切壁19,20を挟んで並べて配置し、骨髄細胞を投入する。
【0042】
第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18の底面は、各培養面部材13,14,15とほぼ同等の形状を有しているので、3個の培養面部材13,14,15をそれぞれ配置スペース16,17,18に配置すると、第1の培養容器11の底面のほぼ全域が覆われる。そして、第1の培養容器11を、第1の実施形態と同様の所定の培養条件に維持することにより、細胞の培養が開始され、骨髄細胞中の間葉系幹細胞が各培養面部材13,14,15の上面に付着して成長し始める。
【0043】
第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18は、各培養面部材13,14,15と同程度の比較的狭い底面積を有しており、成長初期の間葉系幹細胞にとっては、比較的棲みやすい快適な培養スペースとなっている。その結果、間葉系幹細胞を、効率的に増殖させることができることになる。また、第1の培養容器11内に3個の培養面部材13,14,15を同時に配置しているので、同一培養条件において細胞を密集して培養することができる。
【0044】
その後、所定の培養期間が経過することにより細胞が充分に増殖し、それ以上増殖するのに配置スペース16,17,18が狭くなってきた場合に、図4の(a)および(b)にそれぞれ矢印で示されるように、各培養面部材13,14,15を第1の培養容器11内から取り出し、第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18より底面積の大きな第2の培養容器12内に投入する。これにより、培養面部材13,14,15上に付着している間葉系幹細胞にとっては、第1の培養容器11の各配置スペース16,17,18よりも広い培養スペースが提供される。その結果、間葉系幹細胞は、快適な培養条件下において増殖を促進され、効率的に増殖させられることになる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、簡易な操作により、細胞に対して、その成長に合わせた快適な培養スペースを与えることを可能とし、効率的な増殖を達成することができるという効果がある。したがって、体内に補填する必要数の間葉系幹細胞を迅速に確保し、あるいは、その後の二次培養工程によって製造される骨補填体を迅速に製造することができるという効果がある。
【0046】
なお、上記第2の実施形態においては、第1の培養容器11内に3カ所の配置スペース16,17,18を設け、3個の培養面部材13,14,15を同時に配置して培養することにしたが、これに代えて、2個あるいは4個以上の培養面部材を同時に配置することにしてもよい。また、第2の培養容器12内に仕切壁を設けて、第1の配置スペース16,17,18より大きな底面積を有する配置スペースを構成することにしてもよい。
【0047】
また、この発明においては、骨髄液から抽出した間葉系幹細胞を培養する場合について説明したが、骨髄液のみならず末梢血や臍帯血から抽出することにしてもよい。また、間葉系幹細胞に限定されるものではなく、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞等の体細胞の培養にも使用できる。
【0048】
また、培養面部材4,4’,13,14,15に付着した細胞は、トリプシンのような蛋白質分解酵素を用いて剥がされた後に2次培養されるが、これに代えて、培養面部材4,4’,13,14,15の表面に、所定の温度を境界として疎水性と親水性とが切り替わる温度応答性処理を施すことにしてもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、簡易な操作により、培養される細胞に対して、細胞の成長に合わせて順次増大する底面積の底面を提供することができるので、細胞に快適な培養環境を与えて効率的な増殖を促し、必要量の細胞を迅速に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る培養装置を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図2】図1の培養装置の変形例を示す縦断面図である。
【図3】図1の培養装置の他の変形例を示す縦断面図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係る培養装置を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図5】この発明を適用する培養工程を説明する説明図である。
【符号の説明】
1,10 培養装置
2,3,3’,11,12 培養容器
4,4’,13,14,15 培養面部材
5 把持部
8 凹部
16,17,18 配置スペース
19,20 仕切壁
Claims (6)
- 底面積の異なる複数の培養容器と、
一の培養容器から他の培養容器へ移動させられて、各培養容器の底面に、その底面の一部を構成するように配置される培養面部材とを備える培養装置。 - 前記他の培養容器の底面積が、前記一の培養容器の底面積より大きく構成され、
前記培養面部材が平板状に形成され、
前記他の培養容器の底面に、前記培養面部材を収容する凹部が形成されている請求項1に記載の培養装置。 - 複数の培養容器と、
一の培養容器から他の培養容器へ移動させられて、各培養容器の底面に、その底面の一部を構成するように配置される複数の培養面部材とを備え、
前記一の培養容器が前記複数の培養面部材を同時に配置可能な底面積を有するとともに、その底面に、隣接する培養面部材の配置スペースを区切る仕切壁を備え、
前記他の培養容器が前記一の培養容器における各培養面部材の配置スペースの底面積よりも大きな底面積を有する培養装置。 - 前記培養面部材に、該培養面部材が培養容器の底面に配置されたときに、該培養容器内に貯留される培地の液面上に露出する把持部が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の培養装置。
- 一の培養容器の底面に、その底面の一部を構成する培養面部材を配置して、該培養面部材上において、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、
細胞が付着した培養面部材を、前記一の培養容器よりも大きな底面積を有する他の培養容器へ移動させて、所定期間にわたる細胞の培養を継続する培養方法。 - 一の培養容器の底面に、その底面の一部を構成する複数の培養面部材を仕切壁を挟んで配置して、各培養面部材上において、所定期間にわたる細胞の培養を行った後に、
細胞が付着した各培養面部材を、前記一の培養容器の培養面部材1個当たりの底面積より大きな底面積を有する他の培養容器へ移動させて、所定期間にわたる細胞の培養を継続する培養方法。
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