JP4230713B2 - 電子部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC等電子部品に係り、特にエレクトロマイグレーション耐性等、金属配線における信頼性の向上を図った電子部品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品、たとえばD−RAMに代表されるようなメモリ−集積回路における高集積化は著しく、これに伴って各素子間を電気的に結合する配線の微細化が余儀無くされている。この微細化により、配線にはより高い電流密度と動作温度とが要求されると同時に、これに反比例するエレクトロマイグレーション耐性を向上し、高い信頼性を確保することが要求される。現在、この配線にはAlあるいはAl合金の金属薄膜が最も頻繁に利用されている。このような金属配線のエレクトロマイグレーション耐性は、Cu、Ti等といった遷移金属の微量添加や結晶粒成長による竹の節状の結晶粒界構造(バンブー構造)化によって向上してきたが、この耐性の向上だけでは、 0.1ミクロンレベルの配線の信頼性を確保することが困難である。最近の研究によれば、このエレクトロマイグレーション耐性あるいは配線中に誘起される引っ張り応力によるストレスマイグレーションに対する耐性は、単結晶配線を用いることにより著しく向上することが明らかとなり、金属薄膜の結晶性をできる限り単結晶に近付けることが高い信頼性を実現する手段として考えられている。
【0003】
現在、メモリー集積回路などの電子部品においては、金属配線はバリア層の有無はあるが、通常SiO2 層間絶縁膜に代表される非晶質薄膜表面上に形成される。したがって、下地結晶配列を引き継いで単結晶薄膜を形成させるという、いわゆるエピタキシャル結晶成長法を用いて、高い結晶性を有する金属薄膜を形成することができず、結果として極めて優れたエレクトロマイグレーション耐性を有し、信頼性の高い金属配線を得ることは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の電子部品においては、信頼性の高い金属配線を得ることは困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために、信頼性の高い金属配線を備えた電子部品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、金属配線が特に粒界エネルギーが固体の表面エネルギーの1/3で定義される多結晶における通常のランダム粒界の 88%以下の亜粒界を分散させた高配向結晶からなることが好ましい。このような低い粒界エネルギーを持つ亜粒界としては、たとえば、隣り合う結晶粒の配向軸を中心とした傾斜、回転およびその組み合わせでの相対角度が10度以内で規定される小角粒界や、Σ値が10以下の粒界、その粒界からのずれが 3度以内の粒界が挙げられる。ここで、この亜粒界は全粒界の90% 以上である。本発明ではこのような亜粒界の存在によって、ストレスマイグレーションによりボイドが発生するサイトが金属配線中に意図的に設けられ、しかも粒界エネルギーが小さいために1個当りのボイド体積を小さく抑えられ、ボイドの一部集中による金属配線の断線を避けることができる。従って、このような高配向結晶からなる金属配線は、下地の非晶質薄膜の存在しない状態においても良好な信頼性が得られる。
【0007】
また、基板上に絶縁層などを介して金属配線を形成した後に金属配線に電流を通電することにより、金属配線のストレスマイグレーション耐性の向上、サーマルエッチピットの発生の抑制が可能となる。なお、この電流の通電によれば非晶質薄膜を形成しない場合にも同様の効果が得られ、また他の膜が介在していても構わない。しかしながら、とくにこの様な処理による効果がみられるのは、金属配線中の粒界が小傾角粒界や粒界エネルギーの低い粒界で形成されている場合であり、ここでも上記の低い粒界エネルギーを持つ亜粒界を分散させた高配向結晶からなる金属配線を形成することが好ましい。何となれば、このような亜粒界では電流を流すことで粒界が移動可能であり、上述したような通電により粒界が金属配線から排出されて金属配線がより単結晶に近づくからである。また、電流通電量としては5×106 A/cm2 から2×107 A/cm2 の範囲の電流を流すことが望ましい。
【0008】
電流密度の限定理由としては5×106 A/cm2 以下であると、通電の効果が現れず、2×107 A/cm2 を越えると、金属配線自身のジュール加熱が顕在化して誘起される温度分布により、原子流束の発散量を増大して、エレクトロマイグレーションによるボイドが発生してしまい、配線形状を阻害し信頼性を悪化させるからである。また、通電時間としては金属配線の長さ形状により適性範囲が異なるが、通電による発熱の安定性および転位排出速度の観点から1分以上が望ましく、それ以上であれば問題はない。また、基板温度は室温であっても加熱しても構わないが、300℃以下が望ましくそれ以上に加熱するとサーマルエッチピットが生じるおそれがある。
【0009】
多層配線の場合通電は各金属配線形成ごとに行うことが望ましいが、2層以上の金属配線を同時に通電しても構わない。この場合、望ましくはビアの埋め込み部(導電接続部位)も金属配線と同種の材料を用いるが、添加物量の差は添加総量の合計が10at%以内であれば構わない。
【0010】
さらにまた、本発明では、金属配線と接続するパッド部を金属配線と同様単結晶あるいは低い粒界エネルギ−を持つ亜粒界を有する高配向結晶で構成し、かつその形状を金属配線から順次分岐した細線の集合体とすることによって、パッド部の信頼性を高めることができる。ここで順次分岐とは図4に示すように金属配線を中心軸とし、上下方向に枝状に細線が増えていくものであり分岐の数は上下同数である必要はない。また、分岐は金属配線に直交する必要はなく、角度θは90度以下であれば良い。このことにより配線内で発生移動してきたボイドが、配線上側のものは次々にパッド部の上方の細線に、また下側のボイドは次々にパッド部の下方の細線に移動し配線幅以上にボイドは成長すること無くパッド部外周部の細線に溜る。そして最外周部の細線においてボイドにより細線形成元素が無くなると、ボイドは隣接するつぎの細線に溜り、外部電源と繋がるワイヤーがボンディングされたパッド部中心部には欠陥を集結させないため、パッド部の寿命を極めて長くすることができる。
【0011】
また、分岐が順次進む構造のため金属配線との接続部での電流密度の急激な変化を避けることができ、電流密度の変化に伴う(Flux Divergence 、原子流束の発散)の緩和が可能であることより、(−)パッド部のボイドのみならず、(+)パッド部でのヒロックの分散にも効果がある。なお分岐する間隔は等間隔である必要は無い。
【0012】
また、分岐した細線は縦方向に走る細線で結ばれていることが望ましい。なお、細線の幅は金属配線幅以上が望ましい。
【0013】
さらに、パッド部において電流密度が金属配線の1/10以上の領域を細線の集合体とすることが効果的であり、それ以下の電流密度領域では連続膜で構わない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。金属配線の形成において考慮すべき下地の形成を含めて説明する。
【0015】
結晶性の高い金属薄膜を得るために最も問題となる点は、堆積する下地上に、堆積初期に薄膜の成長の起点となる多くの結晶核が同時に形成されてしまうことである。これらの結晶核は膜成長段階で堆積粒子の吸収、あるいは核と核との合体によって結晶成長が進んでいくが、この機構で結晶粒が成長できる大きさには限界があり、最終的に得られる薄膜は、各結晶粒ごとに方位配列の異なった多結晶となる。したがって、高い結晶性を有する薄膜を大きな領域に形成するためには核の発生を極力抑制することが重要となる。
【0016】
古典的議論から核発生を考えてみると、(1)式に表される堆積物質と下地物質との間の表面・界面エネルギー相関、
γf≦γs−γi …(1)
γf:堆積物質の表面エネルギー
γs:下地物質の表面エネルギー
γi:界面エネルギー
が成立する(濡れ角がゼロ)場合には、いわゆる層状成長が成立し、導かれる核発生密度がゼロとなる。
【0017】
ここで、界面エネルギーγiは、結晶−結晶において1.堆積物質と下地物質との格子整合、2.堆積物質と下地物質との間の原子間の結合エネルギーに支配される、と言われている。しかしながら、半導体装置における金属配線形成時のように、下地物質として非晶質物質が用いられる場合、この界面エネルギーや下地物質の表面エネルギーが何に支配されるか明らかでなかった。
【0018】
そこで、本発明者らは鋭意研究を行い、界面での原子配列相関を詳細に調べた結果、非晶質物質を下地とする場合においても界面の原子あるいは分子配列が、堆積物質の結晶配列に重要な影響を与えていることを見出した。すなわち、非晶質物質においてもその構造は完全に無秩序ではなく、短範囲の規則構造が成立していることがX線あるいは電子線等の回折現象により明らかにされている。前述のように、界面における原子配列を決定する界面エネルギーの大小は、 2〜 3周期の格子整合の度合いで定まり、ここでこの格子の大きさは非晶質物質の回折測定で現れるハローパターンの頂点に対応する原子間距離とほぼ等しい。したがって、この原子間距離を堆積物質の原子あるいは分子のある面間隔と一致させることにより界面エネルギーの減少が実現され、結果として非常に結晶性の高い薄膜を形成できるという知見が得られた。すなわち、基板上に形成された非晶質薄膜と、この表面上に形成された高配向の金属配線を備え、前記非晶質薄膜の回折測定で現れるハローパターンのピークに対応する原子間距離と、前記金属配線の第一隣接原子間距離で規定される所定の結晶面の面間隔が略整合していることが重要である。
【0019】
このとき、非晶質薄膜の原子間距離dsと金属配線の面間隔dfが整合していることが最も好ましいが多少のズレは許容でき、|df−ds|/ds≦0.25であることが望ましい。また、金属配線の第一隣接原子間距離で規定される特定結晶面は、たとえばfcc構造であれば(111) 、(200) 、(220) 、bcc構造では(200) 、(110) 、六方晶構造では(002) 、(110) であり、必ずしも配向面とは限らない。なお、非晶質薄膜の組成により整合の度合は変化し、このとき、非晶質薄膜中に金属配線を構成する主たる元素を含有することにより、より整合させることができる。
【0020】
また、界面エネルギーを支配するもう一つの要素として、結晶−結晶系と同様に結合エネルギーが挙げられる。すなわち、結合エネルギーを強くすることにより、界面エネルギーを低減することができる。そのためには、やはり非晶質薄膜中に金属配線の主成分となる金属元素Mを含有させればよい。あるいは非晶質薄膜中に、前記元素Mと金属間化合物を形成する元素Aを含有する、または非晶質薄膜中に、前記元素Mと全率固溶するか、完全固溶領域を有する元素Bを含有することが望ましい。なお金属配線の主成分となる金属元素Mとしては、通常Al、Cu、Au、Ag、Wなどが用いられる。
【0021】
一方、下地物質の表面エネルギーγsは、大きい程堆積物質が層状成長し易い。しかしながら、表面エネルギーは被測定物質の融点付近の状態で測定されるため、結晶化温度<融点である非晶質物質の表面エネルギーを測定することは実質不可能である。そこで、非晶質物質の表面エネルギーが何に影響されているのかを検討した結果、その結晶状態における表面エネルギーと相関があることがわかった。すなわち、下地物質の表面エネルギーγsを大きくするためには、非晶質薄膜を構成する物質の結晶状態における表面エネルギーが、少なくとも堆積物質である金属配線を構成する物質の表面エネルギーより高いことが好ましく、そのため、表面エネルギーと相関のある融点は高いことが望ましい。ただし、複数の元素から成る物質の表面エネルギーは、各構成元素の表面エネルギーを原子比により平均した値とする。
【0022】
基板は、特に規定されるものではなく、通常のSi基板、GaAs基板等の半導体基板、ITO等を具備したガラス基板等を用いることができる。その形状は平坦であっても溝を有していても良い。
【0023】
基板上に形成される非晶質薄膜としては、非晶質化可能な単金属、合金あるいは導電性を示す化合物等が用いられる。さらに前述のように、元素M、A、Bの少なくとも1種を含有する組成が望ましく、非晶質形成能を考えると遷移金属、半金属(メタロイド)、半導体の合金あるいは化合物であることがより好ましい。 具体的には、金属元素M、III B族元素(Sc、Y、La系列)、IVB族元素(Ti、Zr、Hf)、VB族元素(V、Nb、Ta)、VIB族元素(Cr、Mo、W)、VIII族元素(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、)及びB、C、N、O、P、Si、Geより選ばれた2種以上を含有する組成が挙げられる。また非晶質薄膜としてペロブスカイト型酸化物組成を有する化合物を用いてもよい。
【0024】
非晶質薄膜は、RHEED等の電子線回折やX線回折に代表される回折測定で、散漫(ブロード)な回折強度、換言すればハローピークが観測されるものであればよく、非晶質の不完全さに起因する金属間化合物等微結晶からの回折線が現れても何ら問題ない。さらに、全体が非晶質である必要もなく、結晶質の薄膜の表面のみが非晶質化していてもよい。
【0025】
また、この厚さは薄い方がよいが、基板が露出しない程度で、10〜1000オングストロームが望ましい。ただしそれ以上であっても、この上に形成される金属薄膜の結晶性を向上することは可能である。
【0026】
また、図2に示すように、この非晶質薄膜3は単層配線の下地として用いられるのみならず、多層配線においても各配線層を構成する金属配線2の下地として用いられ、また、縦方向の導電接続部位、たとえばビア4あるいはスルーホールの下地としても用いられる。さらに、基板1上に直接形成されても、SiO2 熱酸化膜等の絶縁層5、Ti、TiN等のバリア層6、密着層あるいは別の配線等の介在層を介して形成されていてもよい。このとき、これらの介在層は平坦であっても溝を有していても良い。なお図中、5´は素子分離領域となるSiO2 等の絶縁膜7はドープ層である。
【0027】
本発明においては、金属配線の下地として非晶質薄膜を形成することで、熱処理あるいはエレクトロマイグレーションによって発生するヒロック数をも激減させることが出来る。
【0028】
すなわち通常ヒロックは薄膜あるいは金属配線中に誘起される圧縮応力によって発生すると考えられており、圧縮応力を発生する余剰な体積がヒロックとして放出される。このときヒロックの発生点は応力集中部であり、ここでの薄膜の変形に対する抵抗がヒロック発生の有無を決定する。従来のWあるいはTiN薄膜の被覆では、これら薄膜が多結晶よりなるため、どうしても結晶粒界部が応力集中部となり亀裂を生じ、ここからヒロックが発生する。
【0029】
本発明者らは、多結晶体特有の上記弱点を非晶質化することによって回避できることを見出した。すなわち、非晶質薄膜を用いることによって、ヒロック発生点である応力集中部での変形抵抗を上昇させ、ヒロック発生を著しく抑止することが出来た。特にこの効果は、非晶質薄膜中に先に述べた元素M、A、Bを含む場合に顕著となる。何となればこの場合、金属配線を構成する主たる元素と非晶質薄膜中の元素との結合力が増大するため、金属配線に生じた圧縮応力集中を非晶質薄膜に均一に分散させることが可能となり、結果としてヒロックの発生頻度が激減すると考えられる。
【0030】
なお、上述したようなヒロック発生防止の観点からは、非晶質薄膜は特に金属配線の下地として形成される必要はなく、金属配線の一部を被覆していればよい。例えば、図3(a)(b)(c)(d)に示されるように、非晶質薄膜101を金属配線100の上部あるいは周囲等に形成してもよい。また、非晶質薄膜を金属配線の上部に形成する場合、ヒロック発生防止の効果は、前述のように非晶質薄膜と金属配線との原子間の結合力に起因するために、当然この非晶質薄膜を形成する前の金属配線の表面状態にも依存する。例えばAlを主体とする金属配線の場合、通常その表面は反射型高速電子線回折(RHEED)によって確認出来るようにAl酸化物に覆われている。すなわち、一度大気に晒したAl配線表面をRHEEDで観察すると、表面に生成した非晶質の酸化被膜によって、非晶質特有のハローパターンしか得られない。これに対して、この表面層をArのスパッタなどによって除去すると、Al薄膜に起因するリングあるいは配向した回折パターンが得られるようになる。従ってこのようなAl金属表面を実現した後に非晶質薄膜を形成すると、ヒロック抑制能力はさらに向上する。
【0031】
さらに、低抵抗配線材料としてのCuを金属配線に用いた場合には、レジスト除去工程におけるO2 アッシャーに対する耐酸化性が問題となる。このとき、特にTi、Zr、Hf、V、Ta、Nbを含有した非晶質薄膜は、結晶粒界を経路とする酸素の膜内への拡散を抑制し、Cuの耐酸化性を向上させる。
【0032】
また本発明においては、基板と金属配線との間に非晶質薄膜を形成することによって従来技術で生じていた粒界拡散による反応を抑制することができる。なかでも非晶質薄膜としてAl非晶質合金は、Alを主体とする金属配線との間で高抵抗の反応層を形成しないため、信頼性の高いコンタクト部を提供できる。さらに、Al非晶質合金としてTa、Nb、V、Mo、Wのうち1種を含む合金を用いることによりAlを主体とする金属配線と同時に微細加工が可能であり、他の非晶質合金に比べて工程数を削減することができる。このとき、Alの含有量は非晶質化を図る上で15at% 以上であることが好ましく、さらに非晶質薄膜の表面エネルギーを高く保持するためより好ましくは15〜80at% がよい。このようなAl非晶質合金としては、具体的にはTax Al1-x (0.20≦x≦0.85)、Nbx Al1-x (0.20≦x≦0.85)、Vx Al1-x (0.20≦x≦0.60)、Wx Al1-x (0.15≦x≦0.50)、Mox Al1-x(0.25≦x≦0.80)が挙げられる。またCu非晶質合金は、Cuを主体とする金属配線との密着性が良好で信頼性の高いコンタクト部を提供できる。このようなCu非晶質合金としては具体的にはTix Cu1-x (0.18≦x≦0.70)、Zrx Cu1-x (0.18≦x≦0.70)、Hfx Cu1-x (0.20≦x≦0.70)、Yx Cu1-x (0.10≦x≦0.53)、Tax Cu1-x (0.20≦x≦0.80)が挙げられる。さらに、低抵抗が要求されるCuを主体とする金属配線においては、Vx Co1-x (0.15≦x≦0.80)、Nbx Cr1-x (0.25≦x≦0.45)、Nbx Co1-x (0.22≦x≦0.55)、Tax Cr1-x (0.25≦x≦0.40)、Tax Co1-x (0.25≦x≦0.45)、Crx Co1-x (0.50≦x≦0.70)、Mox Co1-x (0.20≦x≦0.60)、Wx Co1-x (0.20≦x≦0.60)などの非晶質合金も、Cuを主体とする金属配線との間で固溶体を生成することがなく、反応による抵抗上昇を抑制でき好ましく用いることができる。また、これらの非晶質合金においては、Si、Ge、P、B等のいわゆるメタロイド元素を含有することにより非晶質としての安定性をさらに改善することができる。
【0033】
さらに、非晶質薄膜は、異なる非晶質物質を積層した複層構造であってもよい。このとき、最表面が上述したような表面エネルギーの高い非晶質合金等で構成されることが好ましく、複層構造の下層側ではB、Pを含むSiO2 、ポリイミド、TEOS、SiN等を用いても構わない。
【0034】
上述したような非晶質薄膜上に形成される金属配線は、特定の面方向に配向した結晶性の高い高配向結晶からなるものであり、高配向結晶の場合、各結晶粒の最稠密面の法線方向と金属配線の底面の法線方向との成す角が80°以内であることが好ましい。さらに単結晶からなる場合は、最稠密面と配線長手方向との成す角度が20°以下がよい。このとき金属配線の結晶構造がfcc構造の場合は最稠密面である(111)面、bcc構造の場合は(110)面、六方晶構造の場合は(0001)面をそれぞれ配線長手方向と平行に近い形で金属配線を形成する。また、配線の設計上の自由度を考えた場合、最稠密面が上面、つまり、最稠密面配向の金属配線を形成することが望ましい。
【0035】
この金属配線は単層配線のみならず多層配線や、その縦方向の導電接続部位、すなわちビアあるいはスルーホールにも用いることができる。特に縦方向の導電接続部位とその上下の配線層が異なる材料のときでも金属配線の結晶配向性の連続性を保つことができ、信頼性を向上することができる。また、この金属配線は、異種の金属や結晶状態の異なる金属を積層した複層構造でもよい。
【0036】
このような金属配線の配線材料としては低電気抵抗であり、fcc構造を有する純Al、純Cu、純Au、純Ag、Al−Cu、Al−Ti、Al−Cr、Al−Ta、Al−Mg、Al−In、Al−Li、Cu−Be、Cu−Ag、Au−Pt、Au−Ag、Au−Pd、Au−Cu、bcc構造を有する純W等が挙げられ、合金の場合、その溶質添加量は完全固溶範囲であることが望ましい。なお、この場合、Siを1wt%程度まで含有していてもよい。また、合金化により、金属配線の表面エネルギー(堆積物質の表面エネルギーγf)を下げることもできる。
【0037】
また、このような金属配線中、例えば、その粒界や上層、下層に、配線材料より低融点で、金属配線を構成する元素と金属間化合物をつくらないもので、かつ、基板あるいは介在層との親和力が金属配線を構成する元素より小さい元素を含有してもよい。例えば、Al又はAl合金を金属配線に用いる場合、Ga、In、Cd、Bi、Pb、Sn、Tlのうち少なくとも一種の元素、また、Cu又はCu合金のときにはPb、Tlのうち少なくとも一種の元素が挙げられる。
【0038】
さらに、金属配線の上を高融点金属もしくは高融点金属の珪化物、窒化物、酸化物、炭化物で被覆してもよい。
【0039】
このような構造を有する本発明の電子部品は以下のように製造することができる。
【0040】
まず、基板上に必要に応じて絶縁層やバリア層、密着層等を設けた後、スパッタ法等公知の堆積方法により、この上に形成される金属配線の特定結晶面の面間隔と整合するように非晶質薄膜を形成する。次に、真空を破ることなく、金属配線を形成する。あるいは、非晶質薄膜を形成後一度大気に晒した場合は、通常Arのバイアススパッタ等で表面をクリーニングした後、金属配線を形成する。ただし、非晶質薄膜がB、C、N、O等を含有し、非晶質薄膜の高い表面エネルギ−状態が酸素あるいは窒素雰囲気中でも保持される場合は、非晶質薄膜を大気に晒しても表面に酸化層等がほとんど形成されないので、表面をクリ−ニングすることなく、金属配線を形成してもよい。金属配線を形成するにあたっての成膜方法は、物理蒸着としてはスパッタ成膜、バイアススパッタ成膜、イオンビーム成膜が望ましい。また、化学蒸着としては、たとえばAlCVD法の場合は、TIBAなどアルキルアルミニウムや、DMAHなどアルキルアルミニウムハイドライドなどをソースガスとし、熱CVD法により成膜することが望ましい。このとき、SiやCu等を成膜中にソースガス中に混入させたり、成膜後、イオンインプランテーションあるいはスパッタ等で積層し熱処理することにより合金化を行っても構わない。
【0041】
さらに同様に、この上に絶縁層等を介して非晶質薄膜及び金属配線を形成して多層配線としてもよい。また、このとき、成膜後熱処理を加え、シードから結晶を成長させても良い。この場合、シードがたとえばSiの場合、前処理として最終的に希HF処理を施した後、水洗を行わないか、溶存酸素量が 10ppb以下の超純水環境下で洗浄し、その後、露点が−90℃以下の窒素中で乾燥することが望ましい。
【0042】
また、成膜基板表面を加工しグラフォエピタキシー法を用いても良い。先に、本発明では表面エネルギーの高い下地の非晶質薄膜上に成膜した金属薄膜の結晶配向性が極めて高く、しかも特定の面方向に配向することを述べた。これは下地の表面エネルギーが高いと蒸着した核の下地との濡れ角が小さく、例えばAlの場合エネルギーの低い(111)面が安定して成長するためと考える。しかしながらこの時成長核の面内方位はランダムであり、配線信頼性をさらに向上させるためにはさらに面内方位の制御が必須であった。これに対し本発明では、表面に溝が形成された非晶質薄膜を下地とすることにより、成膜される金属薄膜の結晶配向性のみならず面内方位の制御性が充分に向上する。ここで、非晶質薄膜は溝の底部及び側壁部が同一の物質で構成されても異なる物質で構成されてもよいが、特に溝の底部及び側壁部を異なる物質で構成して、金属薄膜の成膜時にこれらの部分での表面エネルギ−の差を利用することが望ましい。何となればこのような構成によれば、溝の底部及び側壁部のうち、表面エネルギ−がより高い部分に堆積物質が優先的に核発生し配向成長する一方、他の表面エネルギ−が低い部分との境界でもう一軸の方位制御を受ける結果、単結晶に近い金属薄膜を成膜できるからである。さらにこの場合は、金属薄膜の成膜前あるいは成膜後に非晶質薄膜に熱処理を施して結晶化させても、高い結晶性を有する金属薄膜を得ることが可能である。
【0043】
この時、溝の形状は短冊状あるいは、長方形、正方形、正三角形のいずれかあるいはその組み合わせが多数個並んだ状態が望ましく、しかもそれぞれの一辺が±5度以内の精度で平行に並んでおり、また、各々の溝の面積が、金属配線の平均結晶面積以下で、凸部の面積も溝と同様に金属配線の平均結晶面積以下が良い。なお、短冊状の溝の場合、溝幅、凸部幅が金属配線の平均結晶粒径以下であることが望ましい。
【0044】
非晶質薄膜上に金属配線を形成する場合、前述のように非晶質薄膜に表面酸化膜が形成されていないことが重要である。非晶質薄膜の表面酸化膜を除去する方法としては金属薄膜成膜直前にプラズマエッチングすることが望ましく、エッチング後は真空度が1×10-6Torr以下に保たれる事が重要である。金属薄膜の成膜方法としてはCVD法、PVD法いずれでもかまわないが、基板温度を上げて蒸着粒子のマイグレーションを促進することが望ましく、抵抗加熱以外に電子線照射、レーザービーム照射でも構わない。また、基板に対して斜めに蒸着粒子流が入射する斜め蒸着法も望ましい。
【0045】
さらに上述したような高配向結晶からなる金属配線は、AlまたはAl合金あるいはCuまたはCu合金からなる導電体層を堆積して金属薄膜を成膜するに際し、前記導電体層の堆積前または堆積中に表面エネルギ−の小さい元素を供給することによっても実現可能である。
【0046】
より具体的には、例えば、AlまたはAl合金からなる金属配線を形成する場合には、Ga,In,Cd,Bi,Pb,Sn,Tlからなる群より選ばれた1種類または2種類以上の元素、CuまたはCu合金からなる金属配線を形成する場合には、Pb,Tlからなる群より選ばれた1種類または2種類の元素を供給する。ここで、このような元素を供給して一原子層以上の制御層を形成したときのγfとγiの相関関係を図1を用いて考える。図1において1は基板、5は熱酸化膜からなる絶縁層、50は制御層、2は金属配線を示す。この場合には制御層を構成する元素の表面エネルギ−が小さいことから、図1(a)の状態よりも(b)の状態の方がγfとγiの和は小さくなる。従って上述したような元素を基板上に供給し、その上に金属配線となる導電体層を堆積させると、自由エネルギ−を最小にするために前記元素が導電体層表面に拡散する。この結果、堆積物質の表面エネルギ−が見かけ上減少してその結晶成長が層状成長に近づき、ひいては下地が基板上に形成された絶縁層、バリア層、密着層、非晶質薄膜層のいずれであっても、結晶性の高い金属薄膜を成膜することができる。これは、特に導電体層の堆積中に前記元素を供給する場合に著しく、前記元素の供給量は1/2原子層以上あれば充分である。さらに前記元素を供給することにより、堆積物質の表面拡散が著しく促進され、結晶の大粒径化も併せて達成される。これを図29を用いて説明する。図29(a)は、SiO2 絶縁層上にAlを500オングストローム蒸着したときの表面SEM写真であり、図29(b)はAlの蒸着時に1原子層のBiを供給したときの表面SEM写真である。図に見られるように、導電体層の堆積中にBiを供給すると、Biを供給しない場合には、400℃、3時間の真空中熱処理で得られる薄膜形態(膜凝集)が、基板を加熱することなくしかも堆積直後に得ることができる。
【0047】
また、基板上の化合物や合金からなるバリア層、密着層などを下地層として成膜し、さらに熱処理をした後導電体層を堆積する場合、導電体層を堆積する前処理として、前記化合物あるいは合金を構成する元素を少なくとも一種類含有させたプラズマで下地層をエッチングすることによっても結晶性、配向性の高い金属薄膜を成膜することが可能となる。この理由は前記エッチングにより化合物や合金からなる下地層表面の酸化が防止され、かつ表面の活性種をなくし安定な界面を形成できるためである。例えば、下地層が窒化物の場合、不活性ガスに窒素を混合したプラズマで表面をエッチングし、その上に導電体層を堆積することが望ましく、この時導電体層の堆積は、真空中でエッチングに連続して行うことが望ましいが、短時間大気に晒すことは構わない。またエッチングにあたって混合ガスによるエッチング後、化合物あるいは合金を構成する元素のみのプラズマに晒すことは構わない。また、これらのエッチングは基板にバイアス電位を印加した状態で行うことが望ましく、その電圧は、−100V以下が望ましい。その後の導電体層の堆積方法はスパッタ蒸着法、抵抗加熱蒸着法を始めとした物理蒸着法に加え、各種CVD法など問わない。また、このとき導電体層を形成する物質は、SiまたはWSi、MoSi、純Al、Al合金、純Cu、Cu合金、W、Au、Agいずれでも良い。なお、Al合金の場合Al−Cu合金、Al−Cr合金、Al−Mg合金がとくに望ましい。またはこれら物質を積層状に成膜しても構わない。
【0048】
例えばAlCVD法の場合は、TIBAなどのアルキルアルミニウムやDMAHなどアルキルアルミニウムハイドライドをソースガスとし、熱CVD法により成膜することが望ましい。このときSiやCuなどを成膜中にソースガス中に混入させたり、成膜後イオンインプランテーションあるいはスパッタ等で積層し熱処理することにより合金化を行っても構わない。
【0049】
このようにして金属薄膜の結晶性を向上させることにより、耐ストレスマイグレーションや耐エレクトロマイグレーション等、金属配線の信頼性に優れた電子部品を得ることができる。
【0050】
なお、本発明においては、上述したように基板上に非晶質薄膜および金属配線を順次形成して本発明の電子部品を製造した後に、高配向結晶からなる金属配線でのさらなる結晶粒成長を目的として、所定の熱処理を施してもよい。このとき、前記熱処理により非晶質薄膜が結晶化あるいは消失しても何ら問題はなく、むしろ前記高配向結晶の粒成長に起因してその結晶性が高められるため、金属配線の信頼性を一段と向上することができる。
【0051】
また、本発明は、前述のように金属配線の信頼性向上に係るものであるが、同様の技術を電子部品中のキャパシタや抵抗発熱体の電極部等にも応用することができる。
【0052】
たとえば、キャパシタの下部電極を形成する際、その下地となる非晶質薄膜の回折測定で現れるハローパターンのピーク位置に対応する原子間距離と、下部電極の第一隣接原子間距離で規定される特定結晶面の面間隔が略整合していることにより、非晶質薄膜と下部電極の間の界面エネルギーが減少され、非常に結晶性の高い下部電極を形成できる。したがって、その上に形成される誘電体薄膜の結晶性も向上する。
【0053】
また、抵抗発熱体として非晶質薄膜を用いることにより、均一かつ経時変化の少ない電気抵抗特性が得られる。さらにこの非晶質薄膜上に非晶質薄膜の原子間距離と電極の面間隔が略整合するように電極膜を堆積すると、電極の結晶性が改善されて大電流印加時にも劣化が抑えられる。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。
【0055】
(実施例1)図5、図6を用いて本実施例を説明する。
【0056】
4000オングストローム熱酸化膜(SiO2 )からなる絶縁層5を有する6インチシリコンウェハ基板1を用い、以下に示すように非晶質薄膜3及び金属配線2を順次スパッタ形成した。すなわちまず、図5に示すマルチターゲットスパッタ装置により非晶質薄膜3としてAlTa膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。図5において8は高周波電源、9は整合回路、10はマスフローコントローラ、11はターゲットを示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット : 100mmφのAlTaモザイクターゲット(同心円状)
基板温度 :室温(25℃)
スパッタガス:Arガス
圧力 :0.20Pa
印加電力 :10W/cm2
膜厚 :500 オングストローム
【0057】
組成分析の結果、形成された膜はAl40Ta60(数値は原子組成比で以下も同様とする)であった。また、X線回折から膜は非晶質であり、ハローパターンの頂点に対応する原子間距離dsは2.34オングストロームであった。一方、Alの(111) の面間隔dfは2.34オングストロームであることから、|df−ds|/ds=0 となり、金属配線を構成する主たる元素を非晶質薄膜中に含有し、適当な組成とすることにより金属配線の特定結晶面の面間隔と整合させることができることがわかった。なお、本実施例ではモザイクターゲットを用いたが、2元ターゲットを用いた同時スパッタ法や、各元素を積層する等の方法で成膜しても同様に非晶質薄膜が得られた。
【0058】
次いで、真空を破ることなくAl40Ta60膜上にAlをスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット : 100mmφのAlターゲット
基板温度 :室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力 : 1Pa
印加電力 : 5W/cm2
膜厚 :4000オングストローム
【0059】
こうして作成したAl膜をX線回折により配向性および結晶性を評価したところ、(111) ロッキング曲線の半値幅(配向半値幅)は1.2°であり、また(hhh)反射以外のブラッグ反射(例えば(200) 、(220) 等)は、一切観測されなかった。
【0060】
そして、このように作成された図6に示される層構造の膜を 0.5μm 幅、1mm長の四端子パターンに加工し、エレクトロマイグレーション(EM)試験を行った。試験条件は配線温度 200℃、電流密度 2×106 A/cm2 である。その結果、1000時間の通電後も破断することなく、良好な信頼性が得られていることが確認された。なおここでは、EM加速試験中の電気抵抗が試験開始直後の値の10%上昇した時点で、配線破断とみなし、以下についても同様とする。
【0061】
同様にして(非晶質薄膜/金属配線)の組合せとして(W75N25/Al)、(Pt21Zr79/Pt)、(Cu50Ti50/Cu)、(Ag55Cu45/Ag)、(Fe80B20/Fe)なるものを作成し、同様に配向半値幅を評価したところ、Al、Pt、Cu、Agは(111) 配向で半値幅はれぞれ1.3 °、1.4 °、1.8 °、1.6 °であり、Feは(110) 配向で(110) 反射の配向半値幅は1.7 °であった。
【0062】
(実施例2)実施例1と同様にしてNi30Ta70(融点1500℃)から成る非晶質薄膜を形成し、この上にAl(融点 660℃)から成る金属配線を形成した。すなわち、非晶質薄膜は金属配線より融点が高く、金属配線を構成する主たる元素との間で金属間化合物を形成し得る元素を含んでいる。このとき、Ni30Ta70のハローパターンの頂点に対応する原子間距離dsは2.33オングストロームで、Al(111) の面間隔df=2.34オングストロームと略整合している。これを実施例1と同様に評価したところ(111) 配向半値幅が0.9 °という良好な結晶性が観測され、また、EM試験でも、1000時間通電で破断することなく良好な信頼性が得られていることが確認された。
【0063】
同様にして(非晶質薄膜/金属配線)の組合せとして(Pd80Si20/Al)、(Ag55Cu45/Al)、(W70Zr30/Al)なるものを作成し、同様に評価したところ、(111)配向半値幅は、それぞれ1.9 °、1.8 °、1.2 °であった。
【0064】
(実施例3)実施例1と同様にしてCo基合金であるCo80Zr9 Nb11から成る非晶質薄膜を作成し、この上にAlから成る金属配線を形成した。このとき、Co80Zr9 Nb11のハローパターンの頂点に対応する原子間距離dsは2.04オングストロームで、Al( 200)面間隔距離df=2.02オングストロームと略整合している。これを実施例1と同様に評価したところ、(111) 配向および良好な結晶性が観測され、またEM試験でも、1000時間通電で破断することなく良好な信頼性が得られていることが確認された。同様にして(非晶質薄膜/金属配線)の組合せとして(Co80Zr8 Nb12/Al)、(Co85Zr6 Nb9 /Al)、(Co88Zr3 Ta9 /Al)、(Co90Hf6 Pd4 /Al)なるものを作成し同様に評価したところ、いずれも(111)配向半値幅が1.2 °という良好な結晶性が得られていることが確認された。
【0065】
また、図7に示すような、絶縁層5上にバリア層6として多結晶であるTiN/Ti層を形成した後、この上に非晶質薄膜3(Co80Zr9 Nb11)を形成したものや、さらには表1に示されるようにこの後一旦大気に晒したもの、その後Arのバイアススパッタを行ったもの等の上に、それぞれAl金属配線2を形成し、これらの結晶配向性をCuKα線を用いたX線回折によるAl(111) ロッキング曲線の半値幅で評価した。表1に示すように、非晶質薄膜を設けないもの、大気に晒してArバイアススパッタを行わなかったものは、結晶配向が著しく低下している。
【表1】
【0066】
(実施例4)実施例1と同様にして、表2に示す非晶質薄膜および金属配線を形成した。表2に併せて示すように、本実施例においては非晶質薄膜に結晶状態において金属配線より表面エネルギーが大きいものを用いている。
【表2】
【0067】
いずれも非晶質薄膜におけるハローパターンの頂点に対応する面間隔dsと、Alの格子間距離dfとは略整合している。これらを実施例1と同様に評価したところ、表2に示されるようにいずれも(111) 配向および良好な結晶性が観測され、またEM試験でも、1000時間通電で破断することなく良好な信頼性が得られていることが確認された。
【0068】
このとき、非晶質薄膜として用いているTiB2 等のホウ化物、その他、炭化物、窒化物等は、その表面エネルギーが大きいので好ましい。なお、このときの表面エネルギーは、近似式:△Esv=Yλ2 / 4π2 X0
△Esv:表面エネルギー
Y :ヤング率
λ :原子間で力の及ぶ距離(X0 で近似)
X0 :原子間距離
で求めることができる。
【0069】
同時に、比較例としてSiO2 上に直接金属配線を実施例1と同様に形成した。SiO2 のハローパターンの頂点に対応する原子間距離dsと最も近いAl(111) 面間隔dfとは略整合せず、また、SiO2 の表面エネルギーはAlより小さい。これを実施例1と同様に評価したところ、(111)配向半値幅は8.2 °と大きく、また同条件のEM試験においても10時間以内で配線破断となった。
【0070】
(実施例5)図8を用いて本実施例を説明する。
【0071】
本実施例においては、図8に示すような縦方向の導電接続部位、すなわちビア4が形成されている。具体的にはまず、Si基板1上に膜厚1000オングストロームのSiO2 熱酸化膜を絶縁層5として形成した後、下層金属配線2´としてAl、Cu、WあるいはMoSi2 からなる薄膜を4000オングストローム堆積した。この薄膜上に熱CVDによりSiO2 層間絶縁膜5´を3000オングストローム堆積した。この層間絶縁膜5´に、通常のPEP、RIE工程により、径50μmのビア4(あるいはスルーホール)を形成した。
【0072】
次にビア4中に、選択CVD法を用いてWを埋め込み、エッチバックにより平坦化した後、本発明による非晶質薄膜3としてCo80Zr9 Nb11薄膜をスパッタにより200 オングストローム形成した。引き続き、一度大気に晒されたCo80Zr9 Nb11表面についてArのRFプラズマクリーニングを行った後、スパッタにより金属配線2として純Al薄膜を4000オングストローム堆積し、そのAl薄膜の結晶配向性をCuKα線を用いて測定されたAl(111) ロッキング曲線の半値幅により評価した。このとき入射X線をコリメータによりφ50μm まで絞ってビア近傍の半値幅の変化とその分布を調べたが、場所による変化はなく一様に半値幅は1.3 °と良好な結晶配向性を示した。
【0073】
(実施例6)図9を用いて本実施例を説明する。
【0074】
実施例5と同様に、ビア4を形成した後、図9に示すように非晶質薄膜3としてNi62Nb38を 300オングストローム、スパッタにより形成した。その結果、図9に示すようにビアの側壁が多少薄くなるが、コンフォーマルにNiNb膜が形成された。この上に、連続的にスパッタにより金属配線2として純Al薄膜を4000オングストローム形成した。実施例5と同様に評価したところ、一様に半値幅1.35°が得られた。
【0075】
(実施例7)図10を用いて本実施例を説明する。
【0076】
実施例5と同様に、ビア4を形成した後、図10に示すように非晶質薄膜3としてAl40Ta60をスパッタにより形成した。このとき、ビア4を形成した基板とターゲットの間に、コリメータを設けることにより、堆積粒子の直進性を向上させた結果、ビア4の側壁にはほとんど非晶質層が形成されずに、ビア4の底面と層間絶縁膜5´上に 100オングストロームのAlTa非晶質薄膜3を形成することができた。一度大気に晒し、ArのRFバイアススパッタクリーニングを行った後、金属配線2として純Al薄膜をスパッタにより4000オングストローム堆積した。実施例5と同様に評価したところ、一様に半値幅 1.1°が得られた。
【0077】
(実施例8)図11を用いて本実施例を説明する。
【0078】
図11に示すように下層の金属配線2´を形成する際に、まずSiO2 熱酸化膜からなる絶縁層5上に非晶質薄膜3´としてAl40Nb60を形成した後、連続的に純Alから成る下層金属配線2′を4000オングストローム堆積した。この下層金属配線2′のロッキング曲線の半値幅は 1.2°であった。このAl下層金属配線2′の上に実施例5と同様にSiO2層間絶縁膜5´およびビア4を形成した。次に、TIBA(トリイソブチルアルミニウム)を原料ガスとした熱CVD法により、このビア4をAlで選択的に埋め込んだ。このビア4を埋め込んだAlは下にあるAlの結晶配向性を引き継いで、下層金属配線2′と同じロッキング曲線の半値幅を示した。引き続き、連続的に非晶質薄膜3としてAl40Nb60をスパッタにより 250オングストローム堆積した。一度大気に晒し、ArのRFプラズマによるバイアスクリーニングを行った後、スパッタあるいはTIBAを用いた熱CVD法により金属配線2としてAl膜を4000オングストローム堆積した。このAl膜の結晶配向性の分布は一様であり、そのロッキング半値幅は 1.2°であった。また、Al堆積する前に、通常のPEP工程とイオンミリング工程により、ビア4の部分の非晶質薄膜3を除去した後、Alを堆積したものにおいても、ビア部分も含めて、やはり配向性は均一であり、半値幅も 1.2°と変わらなかった。
【0079】
一方、比較例として本発明による非晶質薄膜を介在させない場合には、いずれの場合も、非晶質SiO2 上のAlの半値幅は約 8°であり、また配向性の均一性も悪く、特にビア部分での配向性の乱れが著しかった。
【0080】
(実施例9)図12,13を用いて本実施例を説明する。
【0081】
図12(a)に示すように、非晶質SiO2 からなる絶縁層5が表面に形成されたSi基板1を用意し、まず非晶質SiO2 上にスパッタ法により非晶質薄膜3を1000オングストローム堆積した後(図12(b))、配線を形成する部分を残して、残りの非晶質薄膜3をエッチングにより取り除いた(図12(c))。この上に5000オングストロームの膜厚を有する非晶質SiO2 からなる絶縁層5を均一に堆積した(図12(d))。次に、非晶質薄膜3上のSiO2のみをエッチングにて除去し、配線を埋め込むための溝を形成した(図12(e))。この結果、溝の底面は非晶質薄膜3となった。本実施例では、この溝の幅つまり金属配線幅は 0.8μm とした。また溝の深さは4000オングストロームとした。こうして用意した配線用の溝を有する基板1上に、低エネルギーのイオンビームを照射して非晶質薄膜3表面の酸化膜を除去した後、トリイソブチルアルミニウム((C4 H9 )3 Al)を原料ガスとする熱CVD法によりアルミニウムを堆積し、金属配線4を得た(図12(f))。溝中にのみアルミニウムが堆積する選択成長は基板温度を 300℃以下にすることにより実現した。表3に非晶質薄膜3としてAl非晶質合金を溝底面に形成した場合の溝中のアルミニウム堆積速度を基板温度に対して示す。Al非晶質合金としてはAl30Ta70、Al40Nb60、Al50V50を選んだ。また、選択成長を確認するために溝部以外のSiO2 との選択成長の有無を表3に併せて示した。さらに比較例として溝底部に非晶質SiO2 、多結晶シリコン、多結晶銀を形成した場合のアルミニウム堆積速度と選択成長の有無を示す。Al非晶質合金上に比べ、非晶質SiO2 上、多結晶シリコン上では 300℃以下にて十分なアルミニウム堆積速度が実現できず、埋め込まれたアルミニウムの表面形状も悪い。また、多結晶銀上の堆積速度もAl非晶質合金上に比べると小さく、また、配線長手方向に対してアルミニウムの埋め込みが不連続になっている箇所が見られた。
【0082】
次に、選択的に埋め込まれたアルミニウムの結晶性をX線回折によって調べた結果を表4に示す。ここで、アルミニウムの配向性の評価はAl(111) 回折ピークのロッキング曲線の半値幅を測定することにより行った。Al非晶質合金を下地とする溝へ埋め込まれたアルミニウムは、(111) 半値幅が約 1°の(111) 高配向膜である。
【0083】
また、Al非晶質合金を底面とする溝に埋め込まれたアルミニウムを透過電子顕微鏡により観察したところ、アルミニウム結晶粒径は配線幅とほぼ同じ 1μm程度であり、配線長手方向にこれら(111) 結晶粒が亜粒界(小角粒界)によって接した構造になっていることがわかった。さらに、部分的ではあるが配線長手方向に長さ10μm 以上にわたって 1個の結晶粒になっている領域も存在することが確認された。これは、(111) 高配向結晶からなるAl配線よりもさらにストレスマイグレーション耐性、エレクトロマイグレーション耐性の優れた、単結晶からなるアルミニウム配線が部分的に実現されていることを示している。
【0084】
最後に、本実施例にて形成したアルミニウム埋め込み配線のエレクトロマイグレーション耐性を調べるために行った加速試験の結果を図13に示す。試験条件は基板温度 150℃、電流密度 1×10 7A/cm2 である。抵抗変化率の経時変化から従来のアルミニウム配線が1時間以内に破断するのに比べ非常に高い信頼性を有していることが確認された。
【表3】
【表4】
【0085】
(実施例10)図14を用いて本実施例を説明する。
【0086】
図14に示すように、機能素子31が形成された半導体基板1上にCVD法を用いてSiO2 絶縁層5を形成し、コンタクト部となるべき領域をエッチングにより除去して接続孔32を設ける。コンタクト特性を良好にするため、接続孔底面の半導体基板1上に形成された自然酸化膜をフッ酸洗浄により取り除き、再酸化を防ぐために酸素含有量の低い超純水によりリンスし、高純度窒素ガスパージにより乾燥する。この基板上にマルチターゲットスパッタ装置によりAlTa非晶質薄膜3を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAl−Taモザイクターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:400オングストローム
【0087】
組成分析の結果、形成された膜はAl55Ta45であった。またX線回折から膜は非晶質であった。なお、本実施例では非晶質薄膜3をスパッタ法により作成したが、CVD法や蒸着法等によっても同様な非晶質薄膜が形成できる。また非晶質薄膜3のスパッタにおいてAlTaモザイクターゲットを用いたが、AlとTaの2元ターゲットを用いた同時スパッタ法やAlおよびTaを交互に薄く積層する等の方法によっても同様に非晶質薄膜が得られる。
【0088】
さらにこの上に真空を破ることなくAl膜をスパッタ法により形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0089】
こうして作成したAl膜をX線回折により配向性および結晶性を評価したところ、(111)ロッキング曲線の半値幅は1.0°であり、良好な配向性が観測された。なお、本実施例ではAl膜をスパッタ法により形成したが、CVD法や蒸着法によって形成しても同様な効果が得られる。
【0090】
この後、通常のリソグラフィ技術により所望のパターンにレジストを形成し、塩素を含むエッチングガスを用いてAl膜およびAlTa非晶質薄膜3のドライエッチングを同時に行い、Al膜を金属配線2に加工した。加工後SEMによる観察を行ったが残渣も認められず、加工性は良好であった。この試料をフォーミングガス(N2:H2=9:1)中で450℃、15分熱処理を施した後、接合部のリーク電流及びコンタクト抵抗を測定したが、熱処理前と変化せず、良好なバリア性が確認された。
【0091】
(実施例11)図15を用いて本実施例を説明する。
【0092】
Al金属配線のエレクトロマイグレーション耐性を調べるため、酸化膜の付いたシリコン基板上にAlTa非晶質薄膜とAl膜を実施例10と同様の条件で成膜し、これを用いて図15に示すような陽極21、陰極22、及びこれらの各電極を接続し、0.8μmの配線幅を有する配線部23を具備した試験基板24を作成した。この試験基板のAl膜をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、実施例10と同様に(111)ロッキング曲線の半値幅は、1.0°であった。
【0093】
この試験基板24に対し、試験温度を200℃とし、電流密度が2×106A/cm2 に相当する電流を流し、その平均故障時間を測定したところ、1000時間以上の値を示し、高いエレクトロマイグレーション耐性を有していることがわかった。
【0094】
(実施例12)実施例10と同様の方法で機能素子を形成した基板上にAlMo非晶質薄膜を形成した。組成分析の結果、形成された膜はAl60Mo40であった。またX線回折から膜は非晶質であった。この上に作成したAl膜をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)のロッキング曲線の半値幅は1.1°であり、良好な配向性が観測された。
【0095】
この後、通常のリソグラフィ技術により所望のパターンにレジストを形成し、塩素を含むエッチングガスを用いてAl膜およびAl−Mo非晶質薄膜のドライエッチングを同時に行い、Al膜を金属配線に加工した。加工後SEMによる観察を行ったが残渣も認められず、加工性は良好であった。この試料をフォーミングガス(N2:H2=9:1)中で450℃、15分熱処理を施した後、接合部の断面を観察したところ、アロイスパイクは見られず良好なバリア性が確認された。
【0096】
(実施例13)実施例10と同様の方法で機能素子を形成した基板上にAlNbSi非晶質薄膜を形成した。組成分析の結果、形成された膜は、Al40Nb55Si5 であった。またX線回折から膜は非晶質であった。この上に作成したAl膜をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)ロッキング曲線の半値幅は1.3°であり、良好な配向性が観測された。この後、通常のリソグラフィ技術により所望のパターンにレジストを形成し、塩素を含むエッチングガスを用いてAl膜およびAlNbSi非晶質薄膜のドライエッチングを同時に行い、Al膜を金属配線に加工した。加工後SEMによる観察を行ったが残渣も認められず、加工性は良好であった。この試料をフォーミングガス(N2:H2=9:1)中で450℃、15分熱処理を施した後、接合部の断面を観察したところ、アロイスパイクは見られず、良好なバリア性が確認された。またSiを含むことにより非晶質薄膜の熱安定性は向上し、より高温の熱処理によっても結晶化や反応は認められなかった。なお、この効果はGe、P、Bでも同様であった。
【0097】
(実施例14)図16を用いて本実施例を説明する。
【0098】
4000オングストローム熱酸化膜からなる絶縁層5を有する6インチシリコンウェハ基板1を用い、まず図5に示されるマルチターゲットスパッタ装置によりPtZr非晶質薄膜3を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのPtZrモザイクターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:500オングストローム
【0099】
組成分析の結果、形成された膜はPt21Zr79であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。
【0100】
次いで、真空を破ることなくPtZr膜上にPtをスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのPtターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:1000オングストローム
【0101】
こうして作成した下部電極としてのPt膜33をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)配向半値幅が1.4 °と良好な結晶性が観測された。
【0102】
次にこの下部電極上に、RFマグネトロンスパッタ法により誘電体薄膜としてチタン酸ストロンチウム膜34を形成した。ターゲットはチタン酸ストロンチウム焼結体を用いた。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのSrTiO3ターゲット
基板温度:500℃
スパッタガス:Ar/O2
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:5000オングストローム
【0103】
X線回折により得られた誘電体薄膜の配向性及び結晶性を評価したところ、Pt膜33の(111)配向を引継ぎ、(111)配向半値幅は1.5 °となった。この誘電体薄膜上に上部電極としてAu膜35を蒸着し、キャパシタ特性を評価したところ比誘電率、漏れ電流とも良好な値であった。一方、熱酸化膜上に直接形成したPt膜の配向半値幅は9.2 °であり、この上に上記と同条件でチタン酸ストロンチウム膜を形成した場合、配向半値幅は9.5 °であった。
【0104】
(実施例15)実施例14と同様に4000オングストローム熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハ基板を用い、マルチターゲットスパッタ装置により非晶質薄膜としてPt21Zr79膜を形成した。
【0105】
次いで真空を破ることなくこの非晶質Pt21Zr79膜上にスパッタにより下部電極としてPtTi膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのPt/Ti2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:1000オングストローム
【0106】
こうして作成したPtTi膜を組成分析した結果、Pt88Ti12であった。X線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)配向半値幅は1.4°と良好な結晶性が観測された。
【0107】
次にこの下部電極上にRFマグネトロンスパッタ法によりチタン酸ジルコン酸鉛の強誘電体薄膜を成長させた。ターゲットは酸化鉛を10mol%過剰に加えたチタン酸ジルコン酸鉛の粉末を1200℃で焼結したものを用いた。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのPb(ZrTi)O3ターゲット(PbO 10mol% RICH )
基板温度:600℃
スパッタガス:Ar/O2
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:5000オングストローム
【0108】
X線回折により得られた強誘電体薄膜の配向性及び結晶性を評価したところ、PtTi膜の(111)配向を引継ぎ、(111)配向半値幅は1.9 °となった。一方熱酸化膜上に直接形成したPtTi膜の配向半値幅は9.2 °であり、この上に上記と同条件でチタン酸ジルコン酸鉛を形成した場合、配向半値幅は9.8 °であった。
【0109】
(実施例16)図17を用いて本実施例を説明する。
【0110】
ガラス基板1´上に図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置により抵抗発熱体膜12としてAlTa非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTa2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
【0111】
組成分析の結果、形成された膜はAl25Ta75であった。X線回折測定よりこの膜は非晶質であった。この上に同一チャンバ内でAl薄膜をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
【0112】
作成したAl膜の結晶性をX線回折により評価したところ、(111)ロッキング曲線の半値幅が1.0°の配向膜であった。
【0113】
次にこのAl膜をリソグラフィ工程及びエッチング工程により加工して電極13、13´とし、さらに酸化防止、耐摩耗性向上のためSiO2 絶縁膜14をコーティングした。こうして作成したサーマルヘッドを実際にプリンタに装着して記録実験を行ったところ、微細なパターンにおいても記録濃度ゆらぎが従来に比べて小さかった。またAl電極も劣化が生じなかった。
【0114】
(実施例17)図18を用いて本実施例を説明する。
【0115】
凸部を有するガラス基板1´上に図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置により抵抗発熱体12としてAlNb非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlNb2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
【0116】
組成分析の結果、形成された膜はAl40Nb60であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。
【0117】
このAlNb膜をリソグラフィ工程及びエッチング工程により加工して凸部とその周辺にのみ残した。再びチャンバ内に搬送しArバイアスクリーニングを施した後、Al膜をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
【0118】
平坦部に形成されたAl膜の結晶性をX線回折により評価したところ、(111)ロッキング曲線の半値幅が1.2°の配向膜であった。
【0119】
次にこのAl膜をリソグラフィ工程及びエッチング工程により加工して電極13、13´とし、さらに酸化防止、耐摩耗向上のためSiO2絶縁膜14をコーティングした。こうして実施例16と同条件で記録実験を行ったところ、優れた特性を示した。
【0120】
(実施例18)図19を用いて本実施例を説明する。
【0121】
4000オングストローム熱酸化膜からなる絶縁層5を有する6インチシリコンウェハ基板1を用い、まず図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりAlTa非晶質薄膜3を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTa2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:1000オングストローム
【0122】
組成分析の結果、形成された膜はAl45Ta55であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。
【0123】
次いで、このAlTa非晶質薄膜3表面に通常のリソグラフィ工程及びRIE工程により、溝38を形成した。溝38の深さは100オングストローム、溝38の幅は1000オングストロームとした。
【0124】
次に溝38を加工したAlTa非晶質薄膜3にArバイアスクリーニングを施した後、Al膜をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0125】
こうして作成したAl膜をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)配向半値幅は1.2 °と良好な結晶性が観測された。
【0126】
さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によると、非晶質薄膜3に形成された溝38の長手方向にAlの<211>方向が揃った結果、亜粒界のみを有するAl膜となっていることがわかった。
【0127】
次にこのAl膜を加工して金属配線2とし、EM試験を行った。具体的には、上記Al膜に対し、通常のリソグラフィ工程及びRIE工程を適用して、図15に示すような陽極、陰極、及びこれらを接続し、0.8μmの配線幅を有する配線部を具備した試験基板を作成した。次いで、この試験基板の配線部に対し、試験温度を200℃とし、電流密度が2×106 A/cm2 に相当する電流を流したが、1000時間経過後も破断は生じなかった。これはAl膜が高配向である上に亜粒界のみが形成された膜のため、エレクトロマイグレーション耐性が飛躍的に向上したことを示している。
【0128】
(実施例19)図20を用いて本実施例を説明する。
【0129】
4000オングストローム熱酸化膜からなる絶縁層5を有する6インチシリコンウェハ基板1を用い、通常のリソグラフィ工程及びRIE工程により、溝を形成した。
【0130】
この基板1上に図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりNiTa非晶質薄膜3を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのNiTa2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:1000オングストローム
【0131】
組成分析の結果、形成された膜はNi50Ta50であった。X線回折測定よりこの膜は非晶質であった。また、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、NiTa非晶質薄膜3表面には溝30が均一に形成されており、溝30の深さは100オングストローム、溝30の幅は1000オングストロームであった。
【0132】
次いで、溝30を有するNiTa非晶質薄膜3にArバイアスクリーニングを施した後、実施例18と同様にAlをスパッタした。作成したAl膜をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)配向半値幅は0.9 °と良好な結晶性が観測された。
【0133】
さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)観察によると、非晶質薄膜3に形成された溝30の長手方向にAlの<211>方向が揃った結果、亜粒界のみを有するAl膜となっていることがわかった。
【0134】
(実施例20)4000オングストローム熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハ基板を用い、図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりAlNb非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlNb2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:1000オングストローム
【0135】
組成分析の結果、形成された膜はAl40Nb60であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。
【0136】
次いで、このAlNb非晶質薄膜に通常のリソグラフィ工程及びRIE工程により、溝を形成した。溝の深さは100オングストローム、膜の幅は1000オングストロームとした。
【0137】
次に溝を加工したAlNb非晶質薄膜にArバイアスクリーニングを施した後、金属薄膜としてAl−0.1 at%Cu合金をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlCu合金ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0138】
こうして作成したAlCu膜をX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)配向半値幅は0.9 °と良好な結晶性が観測された。またこの膜に450℃、30分の熱処理を加えると(111)配向はさらに向上し、(111)配向半値幅は0.7 °となった。
【0139】
さらに透過型電子顕微鏡(TEM)観察によると、非晶質薄膜に形成された溝の長手方向にAlの<211>方向が揃った結果、亜粒界のみを有するAlCu膜となっていることがわかった。また実施例18と同条件で金属配線を形成しEM試験を行ったところ、1000時間経過後も配線破断を生じなかった。
【0140】
(実施例21)図21,22を用いて本実施例を説明する。
【0141】
Si(100)6インチ基板1上に熱酸化膜を絶縁層5として1000オングストローム形成後、以下に示す7試料を作成した。すなわちNo.1は、絶縁層5としての非晶質SiO2 (表面エネルギー:605erg/cm 2 )についてリソグラフィー工程およびRIE工程によりL/S(0.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに表面を加工した(図21(a))。L/Sは図22に示す。No.2は、熱酸化膜上に多結晶Ta(表面エネルギー:2150erg/cm 2)をスパッタして500オングストロームのTa膜39を形成し、さらに非晶質SiO2をスパッタし200オングストロームのSiO2 膜43を形成後、SiO2膜43をL/S(0.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに加工した(図21(b))。No.3は、熱酸化膜上に多結晶Taをスパッタし200オングストロームのTa膜39を形成後、Ta膜39をL/S(0.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに加工した(図21(c))。No.4は、熱酸化膜上に非晶質Ni62Nb38(表面エネルギー:1326erg/cm 2)をスパッタし200オングストロームのNiNb膜40を形成後、NiNb40膜をL/S(0.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに加工した(図21(d))。No.5は、熱酸化膜上に非晶質Ta−60at%Al(表面エネルギー:1640erg/cm 2)をスパッタし200オングストロームのTaAl膜41を形成後、TaAl膜41をL/S(0.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに加工した(図21(e))。No.6は、熱酸化膜上に非晶質Ta−60at%Alをスパッタして100オングストロームのTaAl膜41を形成し、さらに非晶質SiO2 をスパッタし100オングストロームのSiO2 膜43を形成後、SiO2 膜43およびTaAl膜41をL/S(0.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに加工した(図21(f))。No.7は、熱酸化膜上に200オングストロームの多結晶Si(表面エネルギー:730erg/cm 2 )を堆積後、得られたSi膜42をL/S(o.3/0.3μm)で溝の深さ200オングストロームに加工した(図21(g))。以上それぞれの最終形状の断面図を図21に示す。次いで、以上の下地の上にそれぞれ純Alを基板温度200℃で4000オングストローム成膜後、四端子形状に加工を行い、EM試験を行った。測定部配線幅は1μm、長さ2000μmである。また、試験の条件は150℃、1×107 A/cm2 とした。結果を表5に示す。
【表5】
【0142】
(実施例22)Si(100)6インチ基板上に熱酸化膜を1000オングストローム形成後、Ta−40at%Alをスパッタにより200オングストローム成膜し、それぞれ表6に示すL/SにRIEにて加工し溝を形成した。これらについて、到達真空度10-10 torr台の高真空スパッタ内でAlTa膜表面の表面酸化膜をArプラズマエッチングにより除去後、続けて純Alを4000オングストローム成膜した。この後EM試験を実施例21と同様に行った。結果を表6に示す。
【表6】
【0143】
(実施例23)図23を用いて本実施例を説明する。
【0144】
4000オングストローム熱酸化膜からなる絶縁層5を有する6インチシリコンウェハ基板1を用い(図23(a))、通常のリソグラフィ工程及びRIE工程により、溝36を形成した(図23(b))。溝36の深さは100オングストローム、溝36の幅は1500オングストロームとした。
【0145】
この上に図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりAlTa非晶質薄膜3を形成した(図23(c))。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTa2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:1000オングストローム
【0146】
組成分析の結果、形成された膜はAl75Ta25であった。X線回折測定よりこの膜は非晶質であった。続いて基板1を450℃、30分加熱したところ、AlTa非晶質薄膜3は結晶化してAl3 Taの金属間化合物を形成し、粒径1〜2μmで亜粒界を有する多結晶膜37となった(図23(d))。この上に同一チャンバ内で金属配線2としてのAl膜をスパッタした(図23(e))。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0147】
作成したAl膜についてX線回折により配向性及び結晶性を評価したところ、(111)配向半値幅は0.3 °まで向上し、かつAl膜中に残存する結晶粒界はほとんどが亜粒界であった。
【0148】
次にこのAl膜からなる金属配線2について、EM試験を行った。具体的には、上記Al膜を通常のリソグラフィ工程及びRIE工程により加工して作成した、図15に示すような陽極、陰極、及びこれらを接続し、0.8μmの配線幅を有する配線部を具備した試験基板を用いた。この試験基板の配線部に対し、試験温度を200℃とし、電流密度が2×106 A/cm2 に相当する電流を流したが、1000時間経過後も破断は生じなかった。これはAl膜の結晶性が単結晶に近いため、エレクトロマイグレーション耐性が飛躍的に向上したことを示している。
【0149】
(実施例24)4000オングストローム熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハ基板を用い、通常のリソグラフィ工程及びRIE工程により、溝を形成した。溝の深さは500オングストローム、溝の幅は5000オングストローム、溝と溝との間隔は3000オングストロームとした。
【0150】
この基板上に図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりAlNb非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlNb2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:400オングストローム
【0151】
組成分析の結果、形成された膜はAl75Nb25であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。続いて基板を450℃、30分加熱したところ、AlNb非晶質薄膜は結晶化してAl3 Nbの金属間化合物を形成するとともに溝の中に埋め込まれ、単結晶となった。この後、基板表面をポリッシングにより平坦化した。続いて再びチャンバ内に搬送し、Arバイアスクリーニングを施した後、金属薄膜としてAl−0.1 at%Cu合金をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlCu合金ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0152】
こうして作成したAlCu膜をRIE工程により加工して金属配線を形成し、実施例23と同条件でEM試験を行ったところ、1000時間後も配線破断を生じなかった。
【0153】
(実施例25)図24を用いて本実施例を説明する。
【0154】
図24に示すように、絶縁層5として熱酸化膜を1000オングストローム形成したSiウェハ基板1上に、金属配線2となる純Al薄膜を4000オングストロームスパッタにより形成した。このAl薄膜を形成後、連続的にAlTa非晶質薄膜3の厚さを100、300、500オングストロームと変えたものを、それぞれAlとTaのモザイクよりなるターゲットを用いたスパッタにより形成して取り出した。また、一部の試料はAl薄膜を形成後、一度大気に晒し、再びスパッタ装置内にウェハを導き、AlTa非晶質薄膜3を純Al薄膜上に形成した。この時、この大気に晒した試料は非晶質薄膜3を形成する前に基板1側を電極としたRF−Arプラズマにより表面酸化物を除去した。ただし表面酸化物の除去にあたっては、RHEEDを用いて、Al薄膜の明瞭な回折パターンが観測されるまでプラズマエッチングを行った。なお非晶質薄膜3の組成はAl20Ta80であった。
【0155】
この様にして形成した純Al薄膜からなる金属配線2およびAlTa非晶質薄膜3の積層構造について、金属配線2でのヒロックの発生頻度を調べるために、これらの薄膜試料に対し450℃、30分の熱処理をフォーミングガス(N2 −H2 )中で行った。光学顕微鏡および触針式膜厚計を用いて測定したヒロック密度を表7に示す。表7に示されるように、非晶質薄膜3の存在によって、ヒロック数が著しく減少し、かつ非晶質薄膜3の厚さが100オングストロームにおいても、この効果が維持できることが分かった。
【表7】
【0156】
(実施例26)絶縁層として熱酸化膜を1000オングストローム形成したSiウェハ基板上に、金属配線となる純Cu薄膜を4000オングストロームスパッタにより形成した。このCu薄膜を形成後、連続的にCuZr非晶質薄膜を100、300、500オングストローム、あるいはNiNb非晶質薄膜を100、300、500オングストローム2元スパッタ蒸着により形成した。また、一部の試料はCu薄膜を形成後、一度大気に晒し、再びスパッタ装置内にウェハを導き、CuZrあるいはNiNb非晶質薄膜を純Cu薄膜上に形成した。この時、この大気に晒した試料は非晶質薄膜を形成する前に基板側を電極としたRF−Arプラズマにより表面酸化物を除去した。ただし表面酸化物の除去にあたっては、RHEEDにより、Cu薄膜の明瞭な回折パターンが観測されるまでプラズマエッチングを行った。なお非晶質薄膜の組成はCu50Zr50、あるいはNi65Nb35であった。
【0157】
この様にして形成した純Cu薄膜からなる金属配線およびCuZrあるいはNiNb非晶質薄膜の積層構造について、薄膜の耐酸化性を調べるために、これらの薄膜試料に対し500℃、30分の熱処理を大気中で行った。なおここで、CuとNiは全率固溶する。結果を表8に示す。表8に示されるように純Cu薄膜では、酸化の進行に伴う体積膨脹により薄膜表面に著しい凹凸を生じるのに対して、CuZrあるいはNiNb非晶質薄膜を積層したものは、触針式膜厚計を用いた表面荒さの評価では表8に示すように、有為な差は生じなかった。
【表8】
【0158】
(実施例27)図25を用いて本実施例を説明する。
【0159】
4000オングストロームの熱酸化膜からなる絶縁層5を有する6インチシリコンウェハ基板1を用い、まずSnを1原子層(ML)基板上に蒸着しSn膜51を堆積した。このときのKセル温度は1100℃、基板温度は450℃である。次いで真空を破ることなくSn膜51を堆積した基板1上に金属配線2としてのAl膜を1000オングストローム蒸着した。このときKセル温度は1050℃、基板温度は室温である。
【0160】
こうして作成したAl膜についてX線回折によって配向性を評価したところ、(111)配向半値幅2.0 °の良好な結晶性が観測された。
【0161】
Snの他、Ga,In,Cd,Bi,Pb,Tlについても同様の結果が得られた。
【0162】
(実施例28)4000オングストロームの熱酸化膜からなる絶縁層を有する6インチシリコンウェハ基板を用い、まずPbを1原子層基板上に蒸着した。蒸着条件はKセル温度600℃、基板温度は室温である。次いで、真空を破ることなくPbを蒸着した基板上にCu膜を1000オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1200℃、基板温度は室温である。
【0163】
こうして作成したCu膜についてX線回折によって配向性を評価したところ、(111)配向半値幅4.0 °の良好な結晶性が観測された。
【0164】
Pbの他、Tlについても同様の結果が得られた。
【0165】
(実施例29)4000オングストローム熱酸化膜からなる絶縁層を有する6インチシリコンウェハ基板を用い、マルチターゲットスパッタ装置によりAlTa非晶質薄膜層を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTaモザイクターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
膜厚:400オングストローム
【0166】
組成分析の結果、形成された膜はAl55Ta45であった。またX線回折から膜は非晶質であった。
【0167】
次いで、この上に真空を破ることなくSnを1原子層蒸着した。蒸着条件は実施例27と同様である。さらに真空を破ることなくSnを蒸着した基板上にAl膜を1000オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1050℃、基板温度は室温である。
【0168】
こうして作成したAl膜についてX線回折によって配向性を評価したところ、(111)配向半値幅1.6 °の良好な結晶性が観測された。
【0169】
(実施例30)熱酸化膜からなる絶縁層を有する(111)5インチシリコンウェハ基板を用い、0.5 及び1原子層(ML)のBiをそれぞれ蒸着した。このときのKセル温度は、600℃、基板温度は室温である。次いでBiを蒸着したそれぞれの基板上に真空を破ることなくAl膜を100オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1050℃、基板温度は室温である。また比較のため、基板上に直ちにAl膜を蒸着した試料も作成した。
【0170】
こうして作成したAl膜についてRHEEDおよびX線回折によって配向性および結晶性を評価した。図26にこれらの試料におけるRHEED写真を示す。Biを蒸着しない試料においては、図26(a)に示すように、(111)と(100)配向が混合したRHEEDパターンとなった。一方Biを1原子層蒸着した試料においては、図26(b)に示すように(100)配向は観測されず、(111)配向半値幅0.3 °の良好な結晶が得られた。また、Biを0.5 原子層蒸着した試料においては(111)配向半値幅は0.5 °であったが、やはり(100)配向は観測されなかった。また、Al膜の表面形状をSEMを用いて観察したところ、Biを蒸着した試料では、高い表面平滑性を有することが確かめられた。
【0171】
なお、Al膜の組成をAESを用いて分析したところ、BiがAl膜表面、Al膜の粒界、Al膜と熱酸化膜の界面に存在していることがわかった。
【0172】
Biの他、Ga,In,Cd,Sn,Pb,Tlについても同様の結果が得られた。
【0173】
(実施例31)4000オングストロームの熱酸化膜からなる絶縁層を有する6インチシリコンウェハ基板を用い、まずBiを1原子層蒸着した。このときのKセル温度は600℃、基板温度は室温である。次いで、Biを蒸着したそれぞれの基板上に真空を破ることなくAl膜を500オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1050℃、基板温度は室温である。また比較のため、基板上に直ちにAl膜を蒸着した試料を作成した。
【0174】
得られたAl膜をSEMを用いて観察したところ、Biを蒸着した試料では結晶粒が粒径1890±20オングストロームまで粒成長しているのに対し、Biを蒸着しない試料では、結晶粒の粒径は980±20オングストロームであった。 なお、Al膜の組成をAESを用いて分析したところ、BiがAl膜表面、Al膜の粒界、Al膜と熱酸化膜の界面に存在していることがわかった。
【0175】
Biの他、Ga,In,Cd,Sn,Pb,Tlについても同様の結果が得られた。
【0176】
(実施例32)4000オングストロームの熱酸化膜からなる絶縁層を有する6インチシリコンウェハ基板を用い、Biを1原子層基板上に蒸着した。蒸着条件は実施例31と同様である。次いで、真空を破ることなくBiを蒸着した基板上にAl膜を500オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1050℃、基板温度は400℃である。また比較のため基板上に直ちにAl膜を蒸着した試料を作成した。
【0177】
得られたAl膜をSEMを用いて観察したところ、Biを蒸着した試料では結晶粒が粒径3130±20オングストロームまで粒成長しているのに対し、Biを蒸着しない試料では、結晶粒の粒径は1230±15オングストロームであった。
【0178】
Biの他、Ga,In,Cd,Sn,Pb,Tlについても同様の結果が得られた。
【0179】
(実施例33)4000オングストローム熱酸化膜からなる絶縁層を有する6インチシリコンウェハ基板を用い、まずマルチターゲットスパッタ装置によりAlTa非晶質薄膜層を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTaモザイクターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
膜厚:400オングストローム
【0180】
組成分析の結果、形成された膜はAl55Ta45であった。またX線回折から膜は非晶質であった。
【0181】
次いで、この上に真空を破ることなくBiを1原子層蒸着した。蒸着条件は実施例31と同様である。さらに真空を破ることなく、Biを蒸着した基板上にAl膜を500オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1050℃、基板温度は室温である。また、比較のためAlTa非晶質薄膜層上に直ちにAl膜を蒸着した試料を作成した。
【0182】
得られたAl膜をSEMを用いて観察したところ、Biを蒸着した試料では結晶粒が粒径2970±20オングストロームまで粒成長しているのに対し、Biを蒸着しない試料では、結晶粒の粒径は960±10オングストロームであった。
【0183】
(実施例34)高抵抗Si(100)およびSi(111)基板に対し、溶存酸素濃度10ppbの純水を用い、1%HF処理及び、水洗を行った後、Si(100)上にCu膜をSi(111)上にAl膜を、ともに到達真空度1×10−8Torr以下のスパッタ装置にて成膜を行った。ただし成膜時のAr圧力は1×10−3Torrである。その後、真空中で450℃、1時間熱処理を施し、幅1μm、長さ100μmの四端子配線に加工した。SEMのチャネリングパターン解析により得られた金属配線における粒界種を同定したところ、90%以上が相対角度10°以下の小角粒界や、Σ値が10以下の粒界とその相対角度が3°以内の亜粒界であった。これらの粒界のうち、表9に示す特定の粒界に限り配線温度200℃、電流密度2×10 6 A/cm 2 でEM試験を行った。結果を表9に示す。また、Cu膜及びAl膜を配線幅0.5μm、総配線長1mmのパターンに加工し、熱CVDで4000オングストローム厚のPSG膜、プラズマCVDで4500オングストローム厚のSiNを成膜した後、150℃で1000時間保持することで、SM(ストレスマイグレーション)試験を行ったところ、不良率は0%と良好であった。
【表9】
【0184】
(実施例35)高抵抗(111) シリコンウェハ基板上に、高真空スパッタにより(111) 配向のAl膜を4000オングストローム形成した。この時の前処理として、表10に示すように1%HF処理後溶存酸素5ppbの超純水で大気と遮断してあるいは大気開放で水洗、1%HF処理後溶存酸素50ppb の超純水で大気と遮断してあるいは大気開放で水洗、または1%HF処理後溶存酸素1ppmの超純水で大気と遮断してあるいは大気開放で水洗した6種類の試料を作成した。その後、幅 0.5μm 、測定部の長さが100μm の四端子パターンに加工して金属配線を形成し、 200℃環境下で 2×106 A/cm2 の通電試験でエレクトロマイグレーション耐性を調べた。また、実施例34と同様にSM試験を行った。さらにコンタクト部での特性を評価するため、Pをイオンインプランテーションした 0.5μm 径のコンタクトを用い、前処理としてコリン処理、希HF処理、上記水洗を順次行ったそれぞれについてAlを成膜してケルビンパターンに加工し、さらにN2 :H2 = 8:2 のフォーミングガス中で 450℃、30分の熱処理を施した後のコンタクト抵抗を測定した。
配線加工性はSEMで配線加工後の形状を評価した。また、配線試料を薄片化し、電子顕微鏡で制限視野回折を行い、隣接する結晶粒の相対角度を調べた。これらの結果を表10に示す。
【0185】
また、1%HF処理後溶存酸素5ppbの超純水で大気と遮断して水洗した試料をX線回折法で結晶方位を同定し、配線長手方向を{111} 面に平行に加工し、上記SM試験に供したものをSEMにて観察したところ、ボイドは、配線にほぼ平行な台形状に生成しており、断線は観察されなかった。
【表10】
【0186】
(実施例36)MgO(100)基板上に超高真空スパッタによりCu膜を4000オングストローム成膜した。電子顕微鏡観察を行ったところ、双晶を含んだ{100} エピタキシャル膜が作成された。次いで、このCu膜を0.5μm幅、1mm長の四端子パターンに加工して金属配線を形成し、EM試験を行った。試験条件は配線温度300℃、電流密度2 x 106 A/cm2 である。この結果、配線内には双晶は観察されたが、1000時間の通電試験後も破断しなかった。
【0187】
(実施例37)高抵抗(111)シリコンウェハ基板上に、高真空スパッタにより(111)配向のAl膜を4000オングストローム形成した。この時の前処理として、1%HF処理後溶存酸素5ppbの超純水で大気と遮断して水洗を行った。その後、幅0.5μm、測定部の長さが1000μmの四端子パターンを作成して金属配線を形成した。続いて150℃環境下で表11に記した5種類の電流密度で通電を行った後、N2 :H2 =8:2のフォーミングガス中で400℃、30分の熱処理を行った。その後、SEMにて配線内のピット(Siスパイク)の発生の有無を調べた。また、L/Sが1μm/1μmの配線パターンを作成し同様な処理を行った後、X線にてAl(111)配向半値幅を調べた結果も表11に示す。
【表11】
【0188】
(実施例38)図27を用いて本実施例を説明する。
【0189】
Si(100)基板1上に絶縁層5としてSiO2 熱酸化膜を1000オングストローム形成後、非晶質薄膜としてAl30Ta70なる組成のAlTa膜52を300オングストローム二元同時スパッタにより成膜した。成膜後リソグラフィーにてL/Sが1500オングストローム/1500オングストロームで深さ300オングストロームの溝54を形成した。さらに、1×10-8torr以下の真空に排気し、基板バイアス電圧−50Vを印加したバイアスクリーニングにて5分プラズマに晒すことによりAlTa膜52上の酸化膜を除去した後、引き続いてAl膜を4000オングストローム成膜した。一方比較材として、SiO2 上に直接Al膜を4000オングストローム成膜したものを準備した。次に、これらのAl膜を幅0.5μm、測定部の長さが1000μmの四端子パターンに加工して金属配線2を形成し、200℃環境下で1×107 A/cm2 の電流を表12に示す時間通電後、N2 :H2 =8:2のフォーミングガス中で400℃、30分の熱処理を行った。その後、SEMにて配線内のヒロックの発生の有無を調べた。結果を表12に示す。
【0190】
また、これらの各試料についてL/Sが1μm/1μmの配線パターンを作成し同様な処理を行った後、X線にてAl(111)配向半値幅を調べた結果も表12に併せて示す。
【表12】
【0191】
(実施例39)高抵抗(111)シリコンウェハ基板上に、高真空スパッターおよび熱CVDにより(111)配向のAl膜を4000オングストローム形成した。この時の前処理として、1%HF処理後溶存酸素5ppbの超純水で大気と遮断して水洗し、さらに水分濃度10ppb以下のN2 雰囲気で乾燥した。なお、高真空スパッタは到達真空度1×10-9torr、成膜時は露点が−90度以下のAr圧が1×10-3torrであり、一方、熱CVDはガスソースにTIBAを用いた。次いで、成膜後のAl膜を透過型電子顕微鏡で観察するとスパッタAl膜は転位列で形成された亜粒界を含み、X線回折の結果(111)配向半値幅が0.3度の単結晶膜であったのに対し、CVD膜は亜粒界も含まない単結晶膜であり、X線回折による(111)配向半値幅も0.17度であった。
【0192】
さらに、以上の膜を配線部の幅が0.5μm、長さ100μmの四端子パターンに加工し、金属配線及びパッド部を形成した。この時パッド部は図4の形状をした細線の集合体で形成され細線の幅0.5μm、細線間も0.5μm、分岐点間隔も0.5μmである。以上のパターンについて200℃環境下電流密度2×107 A/cm2 の通電試験でエレクトロマイグレーション耐性をSEMでIn situ 観察した。その結果、どちらの膜も配線内を移動してきたボイドはパッド部内に進むと分岐点を次々に移り、パッド部最外周部の細線に移動したため、パッド部中心部の細線は健全であり、電気抵抗の上昇、破断は観察されなかった。
【0193】
また、配線加工後、熱CVDにより配線上にSiO2 を4000オングストローム、プラズマCVDによりSiNを7500オングストローム成膜後、同様な通電試験を行ったところ、ストレスマイグレーシヨンにより配線内に発生したボイドは同様にパッド部の最外周部の細線に蓄積し、パッド部中心部で電気抵抗の上昇、破断は観察されなかった。
【0194】
(実施例40)MgO(100)基板上に超高真空スパッタによりCu膜を4000オングストローム成膜した。電子顕微鏡観察を行ったところ、双晶を含んだ{100}エピタキシャル膜が作成された。
【0195】
このCu膜を配線部の幅1.0μm、長さ100μmの四端子パターンに加工し、金属配線及びパッド部を形成した。この時パッド部は図4の形状をした細線の集合体で形成され細線の幅1.0μm、細線間も1.0μm、分岐点間隔も1.0μmである。以上のパターンについて250℃環境下電流密度2×107 A/cm2 の通電試験でエレクトロマイグレーション耐性をSEMでIn situ 観察した。その結果、配線内を移動してきたボイドはパッド部内に進むと分岐点を次々に移り、パッド部最外周部の細線に移動したため、パッド部中心部の細線は健全であり、電気抵抗の上昇、破断は観察されなかった。
【0196】
(実施例41)(100)Si基板に絶縁層として熱酸化膜を1000オングストローム形成後、化合物層としてTiN膜を形成し、N2 雰囲気で600℃の熱処理を施した。続いて、Ar:N2 =1:1、ガス圧力が1×10-3Torrのプラズマ中で基板に表13に示す各種バイアス電圧を印加し、TiN膜のスパッタエッチングを行った。その後Al膜をスパッタで4000オングストローム成膜した。このAl膜を0.5μm幅、1mm長の四端子パターンに加工して金属配線を形成し、EM試験を行った。試験条件は配線温度200℃、電流密度2×106 A/cm2である。結果を表13に示す。また、比較のために、TiN膜のスパッタエッチングを行わなかったもの、スパッタエッチング後N2 プラズマに晒したものの結果も表13に併記する。
【表13】
【0197】
(実施例42)Si(100)6インチ基板上に絶縁層としてSiO2 熱酸化膜を1000オングストローム形成後、それぞれ表14に示す組成の非晶質薄膜をモザイクターゲットを用いたスパッタ、あるいは多元ターゲットを用いた同時スパッタにより成膜し、続いてCu膜を4000オングストローム成膜した。このとき、下地となる各種非晶質薄膜は一度大気に晒されているため、表面の酸化膜除去を目的として、Cu膜を成膜する前にスパッタエッチングにより非晶質薄膜の表面クリーニングを施した。表面クリーニングの条件は、Arガス圧:1.0×10-3Torr、100MHzのRF出力:100W、基板バイアス電圧:−50V、クリーニング時間:4分である。
【0198】
なお下地の結晶性はRHEEDでその都度確認し、下地が非晶質薄膜であることを確認した。
【0199】
Cu膜の成膜は表面クリーニング後1×10-8Torr以上に真空が悪化しない条件下で行われ、Arガス圧:1.0×10-3Torr、100MHzのRF出力:400W、カソードバイアス電圧:−300V、成膜速度:40オングストローム/秒、の条件で行われた。
【0200】
成膜後X線でCu膜の結晶性を評価した。また、エレクトロマイグレーション耐性を評価するため、配線幅:1μm、配線長:300μmの4端子パターンに加工し、金属配線を形成した後、配線温度300℃、電流密度2×106 A/cm2 の条件で通電試験を行った。以上の結果を表14に併記する。
【0201】
また、比較例としてSiO2 熱酸化膜上に直接Cu膜を成膜したものも同様に評価し、表14に示す。
【0202】
なお、下地は非晶質であれば、表14に示した組成よりずれても同様の結果が得られる。また、耐食性、加工性、バリア性などを向上させる目的で少量の添加物を添加しても構わない。
【0203】
また非晶質薄膜を成膜後1×10-8Torr以下の真空で保持し、その後連続してCu膜を成膜する場合は、表面クリーニングを特に必要としない。
【表14】
【0204】
(実施例43)図28を用いて本実施例を説明する。
【0205】
熱酸化膜からなる絶縁層5が1000オングストローム形成されてなるSi基板1上に、Arガスを用いた多元同時スパッタ法により、それぞれ非晶質薄膜としてTiNb、TiTa、ZrNb、ZrTa、TiW、ZrMo、TiY、ZrYの合金薄膜56を100オングストローム形成した。この時合金薄膜56の組成がそれぞれTi50Nb50、Ti50Ta50、Zr50Nb50、Zr50Ta50、Ti50W50、Zr50Mo50、Ti50Y50、Zr50Y50となるように、各々のターゲットに投入する電力を調整した。引き続き真空を保持したまま、ガスを窒素ガスに置換し、基板1を電極としたRF放電により、合金薄膜56の表面を窒素プラズマに晒した。その後RHEEDにより合金薄膜56の結晶性を評価したところ、窒素プラズマに晒された後も合金薄膜56の表面は非晶質であることが確認され、またオージェ電子分光分析によれば、この合金薄膜56の表面には窒素元素が含まれており、合金薄膜56において非晶質窒化物からなる表面層が形成されていることが推測された。また比較のために、窒素プラズマ処理を施さない試料も作成した。
【0206】
次にこの様にして形成された合金薄膜56を一度大気に晒した後、スパッタ法により純Alまたは純Cu薄膜からなる金属配線2を4000オングストローム、合金薄膜56上に形成した。この時、金属配線2を形成する前に、Arプラズマにより下地の合金薄膜56表面のエッチングを施したもの、及び施さなかったものを作成した。次いで、得られた純Al薄膜または純Cu薄膜の結晶配向性を、CuKα線を用いたX線回折法によりAl及びCuの(111)ロッキング曲線の半値幅を測定することで評価した。結果を表15に示す。その結果、窒素プラズマ処理を施した合金薄膜56上では、この合金薄膜56を大気中に晒しても、予め表面のArプラズマによるエッチングを行うことなく、高い(111)結晶配向性を有する純Alまたは純Cu薄膜の金属配線2が形成されることが分かった。
【表15】
【0207】
(実施例44)熱酸化膜からなる絶縁層が1000オングストローム形成されてなるSi基板上に、金属ターゲットと炭素ターゲットを用いた多元同時Arスパッタ法により表16に示す炭化物合金薄膜をそれぞれ100オングストローム形成した。この時炭化物合金薄膜がそれぞれ表16に示した組成となるように各々のターゲットに投入する電力を調整した。成膜後の薄膜表面の結晶性をRHEEDにより評価したところ、非晶質特有のハローパターンが得られた。次に、この様にして形成された非晶質薄膜としての炭化物合金薄膜を一度大気に晒した後、スパッタ法により純Alまたは純Cu薄膜からなる金属配線を4000オングストローム、炭化物合金薄膜上に形成した。この時、金属配線を形成する前に、Arプラズマにより下地の炭化物合金薄膜表面のエッチングを施したもの、及び施さなかったものを作成した。次いで、得られた純Al薄膜または純Cu薄膜の結晶配向性を、CuKα線を用いたX線回折法によりAl及びCuの(111)ロッキング曲線の半値幅を測定することで評価した。結果を表16に示す。その結果、これら炭化物合金薄膜上には、大気に晒しても、予め表面のArプラズマによるエッチングを行うことなく、高い(111)結晶配向性を有する純Alまたは純Cu薄膜の金属配線が形成されることが分かった。
【表16】
【0208】
(実施例45)1000オングストロームの熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハを基板として用い、Biを基板上に蒸着した。蒸着条件は実施例31と同様である。次いで、真空を破ることなくBiを蒸着した基板上にAl膜を200オングストローム〜1000オングストローム蒸着した。このときのKセル温度は1200℃、基板温度は室温である。また比較のため、基板上に直ちにAl膜を蒸着した試料を作成した。Al膜成膜後、基板温度を400℃まで昇温し、3時間の熱処理を行った。
【0209】
堆積後のAl膜の表面形状をSEM及びTEMを用いて観察したところ、Biが有る場合のAl膜の粒径は、7810±30オングストロームであり、Biが無い場合のAl膜の粒径は、1680±20オングストロームであった。すなわちBiが有る場合のAl膜の方が、Biが無い場合のAl膜より粒径が大きくなっていることが確かめられた。
【0210】
Biの他、Ga、In、Cd、Sn、Pb、Tlについても同様の結果が得られた。
【0211】
(実施例46)1000オングストロームの熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハを基板として用い、この基板を回転させながらAl200オングストローム〜1000オングストロームとBi1MLを基板上にAl堆積の初期に同時に蒸着した。Biの蒸着条件は実施例31と同様であり、Al蒸着のKセル温度は1200℃、基板温度は室温である。また比較のため、Biを供給せずAlのみを同条件で基板上に蒸着した試料を作成した。
【0212】
堆積後のAl膜の表面形状をSEM及びTEMを用いて観察したところ、Biが有る場合のAl膜の粒径は、4370±20オングストロームであり、Biが無い場合のAl膜の粒径は、1170±15オングストロームであった。すなわちBiが有る場合のAl膜の方が、Biが無い場合のAl膜より粒径が大きくなっていることが確かめられた。また、これらの試料におけるSEM写真を図29(a)、(b)に示す。図29(a)は熱酸化膜上にAlを500オングストローム成膜した試料の表面SEM写真であり、図29(b)は熱酸化膜上にAlを500オングストロームとBiを1MLを同時に成膜した試料の表面SEM写真である。また、同様の効果はAlの堆積中の中期あるいは堆積終了前にBiを蒸着しても得られた。
【0213】
Biの他、Ga、In、Cd、Sn、Pb、Tlについても同様の結果が得られた。
【0214】
(実施例47)1000オングストロームの熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハを基板として用い、この基板上に熱CVD装置を用いて、基板に対し(111)配向をもつAl結晶粒を成長させた。条件は以下の通りである。
原料ガス:トリイソブチルアルミニウム
原料ガス供給方法:Arによるバブリング方式
基板温度:400℃
Arガス流量:20sccm
【0215】
この条件において得られたAl結晶粒の密度は5×107 〜1×108 個/cm2 であった。
【0216】
この上にBiを実施例31と同様の条件で蒸着した。次いで真空を破ることなくBiを蒸着した基板上にAlを200オングストローム〜1000オングストローム蒸着した。Kセル温度は1200℃、基板温度は室温である。また比較のため、Biを蒸着することなく直ちにAl膜を蒸着した試料を作成した。
【0217】
堆積後のAl膜の表面形状をSEM及びTEMを用いて観察したところ、Biが有る場合のAl膜の粒径は、3610±15オングストロームであり、Biが無い場合のAl膜の粒径は、1140±20オングストロームであった。すなわちBiが有る場合のAl膜の方が、Biが無い場合のAl膜より粒径が大きくなっていることが確かめられた。またこうして作成したAl膜の結晶性をX線回折により評価したところ、(111)ロッキング曲線の半値幅は1.0°であった。一方、Al結晶粒を成長させていない基板上に、BiおよびAlを同条件で蒸着した場合の半値幅は2.0°であり、Al結晶粒の存在によりAl膜の結晶性が向上することが明らかとなった。
【0218】
Biの他、Ga、In、Cd、Sn、Pb、Tlについても同様の結果が得られた。
【0219】
(実施例48)図30を用いて本実施例を説明する。
【0220】
4000オングストロームの熱酸化膜からなる絶縁層5の付いた6インチシリコンウェハ基板1の絶縁層5表面に図30(a)に示したような溝を形成した。次いでこの基板上にAlを200オングストローム蒸着した。Al蒸着のKセル温度は1200℃、基板温度は室温である。得られたAl膜の表面、断面形状をSEMを用いて観察したところ、図30(b)に示したように、溝部分にも溝以外の熱酸化膜表面にもAl20は一様に堆積されていた。
【0221】
また、同様の溝付き基板上に、上記と同じ条件でAl膜を200オングストローム蒸着した。基板温度は室温である。さらに真空を破ることなく400℃、3時間の熱処理を行った。熱処理後のAl膜の表面、断面形状をSEMを用いて観察したところ、図30(c)に示したように、基板の溝部分はAlからなる金属配線2によってほぼ完全に埋め込まれており、一方溝以外の熱酸化膜表面にはAl20はほとんど堆積していないことが確かめられた。
【0222】
次に、同様の溝付き基板上に、Al200オングストロームとBi1MLを、Al堆積の初期に同時に蒸着した。Biの蒸着条件は実施例31と同様であり、Alの蒸着条件は上に示した通りである。基板温度は同じく室温である。こうして作成したAl膜の表面、及び断面形状をSEMを用いて観察したところ、図30(d)に示したように、溝部分はAlからなる金属配線2によってほぼ完全に埋め込まれており、一方溝以外の熱酸化膜表面にはAl20がほとんど堆積していないことが確かめられた。つまり、室温で成膜した直後であるにもかかわらず、Biの存在によって、成膜後に熱処理した場合と同様の効果が得られた。
【0223】
Biの他、Ga、In、Cd、Sn、Pb、Tlについても同様の結果が得られた。
【0224】
(実施例49)4000オングストロームの熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハを基板として用い、図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりAlTa非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTa2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:50オングストローム
【0225】
組成分析の結果、形成された膜はAl25Ta75であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。
【0226】
このAlTa非晶質薄膜上にAl薄膜をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0227】
こうして作成したAl膜についてX線回折により配向性を評価したところ、Al(111)ピークのロッキング曲線の半値幅は1.0°の(111)配向膜であった。次いで、この薄膜に300℃、15分の熱処理を加えると半値幅は0.8°に向上した。さらに500℃、15分の熱処理を施したところ、非晶質薄膜とAl薄膜が反応してAl3 Ta相を形成し、非晶質薄膜が消失した。しかし反応性の薄膜においては比抵抗は上昇せず、配向はさらに向上し0.6°となり、熱酸化膜上に高配向薄膜が形成されていることがわかった。
【0228】
次にこの高配向薄膜を加工して金属配線とし、EM試験を行った。具体的には、上記高配向薄膜に対し、通常のリソグラフィ工程及びRIE工程を適用して、図15に示すような陽極、陰極、及びこれらを接続し、0.8μmの配線幅を有する配線部を具備した試験基板を作成した。次いで、この試験基板の配線部に対し、試験温度を200℃とし、電流密度が2×106 A/cm2 に相当する電流を流したが、1000時間経過後も破断は生じなかった。これはAl薄膜の(111)配向性が熱処理により向上したため、エレクトロマイグレーション耐性が飛躍的に向上したことを示している。
【0229】
(実施例50)4000オングストローム熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハを基板として用い、図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりAlNb非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlNb2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:500オングストローム
【0230】
組成分析の結果、形成された膜はAl75Nb25であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。このAlNb非晶質薄膜上に実施例49と同じ条件でAl薄膜をスパッタした。こうして作成したAl膜についてX線回折により配向性を評価したところ、ロッキング曲線の半値幅1.5°の(111)配向膜であった。さらにこの薄膜12を400℃、15分の熱処理を施したところ、非晶質薄膜が結晶化して消失するとともにAl薄膜の半値幅は0.9°に向上した。また実施例49と全く同様に金属配線を形成した後、EM試験を行ったところ、1000時間後も破断は生じなかった。
【0231】
(実施例51)4000オングストローム熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハを基板として用い、図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置によりCuTi非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのCuTi2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:500オングストローム
【0232】
組成分析の結果、形成された膜はCu50Ti50であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。このCuTi非晶質薄膜を一旦大気にさらした後、Arプラズマによるクリーニングを施し、AlCu合金薄膜をスパッタした。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlCu合金ターゲット(Cu0.1atm %)
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:1Pa
印加電力:5W/cm2
膜厚:4000オングストローム
【0233】
こうして作成したAlCu膜についてX線回折により配向性を評価したところ、ロッキング曲線の半値幅0.9°の(111)配向膜であった。この薄膜に400℃、15分の熱処理を加えると非晶質薄膜が結晶化して消失するとともに、AlCu膜の(111)配向はさらに向上し、半値幅は0.6°になった。
【0234】
(実施例52)6インチシリコンウェハ基板上に拡散防止層としてTiN/Ti層を形成し、この上にスパッタによりAlTa非晶質薄膜を形成した。スパッタ条件を以下に示す。
スパッタ方式:RFマグネトロン方式
ターゲット:100mmφのAlTa2元ターゲット
基板温度:室温(25℃)
スパッタガス:Ar
ガス圧力:0.20Pa
印加電力:10W/cm2
膜厚:100オングストローム
【0235】
組成分析の結果、形成された膜はAl40Ta60であった。またX線回折測定よりこの膜は非晶質であった。このAlTa非晶質薄膜上に実施例49と同じ条件でAl薄膜をスパッタした。こうして作成したAl膜についてX線回折により配向性を評価したところ、ロッキング曲線の半値幅1.3°の(111)配向膜であった。さらに500℃、15分の熱処理を施したところ、非晶質薄膜とAl薄膜が反応してAl3 Ta相を形成し、非晶質薄膜が消失した。しかし、反応後の薄膜においては比抵抗は上昇せず、配向は向上し0.8°となり、TiN/Ti層によりシリコンとの反応が抑制されていることがわかった。また実施例49と全く同様に金属配線を形成した後、EM試験を行ったところ、1000時間後も破断は生じなかった。
【0236】
(実施例53)4000オングストローム熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハ基板上に、図5に示すようなマルチターゲットスパッタ装置を用いて、Al及びV、Nb、Ta、Mo、Wのターゲットに投入する電力を調整し、それぞれ表17〜表21に示す組成のVx Al100-x 、Nbx Al100-x 、Tax Al100-x 、MoxAl100-x 、Wx Al100-x 膜を100オングストローム、スパッタした。このとき各々の試料においてX線回折により非晶質薄膜が形成されていることを確認した。なお表17〜表21に示すように、V、Nb、Ta、Mo、Wの膜中における原子濃度が極端に高いあるいは低い領域で、非晶質特有のハローピークが観測されなくなった。次いで、これらの試料を再びスパッタ装置内に導き、Arプラズマによるクリーニングを施した後、純Al膜を4000オングストローム堆積した。このとき、堆積したAl薄膜の(111)配向半値幅をX線により評価し、非晶質薄膜の(111)配向制御性を確認した。結果を表17〜表21に示す。
【0237】
引き続き、これらの薄膜を通常のPEP及びRIE工程により、図15に示すような0.8μmの配線幅を有するエレクトロマイグレーション(EM)加速試験パターンに加工し、金属配線を形成した。この後、配線温度200℃、電流密度2×106 A/cm2 の条件でEM試験を行った。その結果表17〜表21に示すように、非晶質薄膜上に形成されたAl金属配線は、高いEM耐性を有することが明らかとなった。また比較材として、非晶質薄膜を堆積せず熱酸化膜上に直接Alを堆積し、以下同様にしてEM試験を行ったところ、10時間以内に配線破断に至った。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0238】
(実施例54)Si(100)6インチ基板上に熱酸化膜を1000オングストローム形成後、表22〜表35に示す各組成の合金薄膜をモザイクターゲットあるいは多元同時スパッタにより1000オングストローム成膜した。次いで、真空を破らずに連続してCu膜を4000オングストローム成膜し、さらに真空中で450℃、30分の熱処理を施した。ここで、Cu膜の成膜は、到達真空度1×10-7Torr以上に真空が悪化しない条件下で行い、Arガス圧:1.0×10-3Torr、100MHzのRF出力:400W、カソードバイアス電圧:−300V、成膜速度:40オングストローム/秒とした。また表34に示した試料では、Cu膜の成膜時に基板に−30Vのバイアスを印加した。この後、X線回折によりCu(111)のロッキング曲線の半値幅を測定し、Cu膜の結晶配向性を評価した。結果を表22〜表35に示す。
【0239】
また、合金薄膜の結晶性は別途合金薄膜の成膜段階で取り出した試料をX線回折にて評価し、非晶質特有のハローピークの有無を確認した。
【0240】
なお、合金薄膜の組成に関して、スパッタに用いたターゲットが純度の悪いものでは3Nであるため、特に不純物としては精製時に分離の難しい同族元素(例えばNbに対してTa等)が主に含まれるが、その結晶性が、その上のCu膜の結晶配向性には影響は見られなかった。
【0241】
さらに金属配線としての信頼性を調べるため、各種合金薄膜上に同様のCu膜からなる金属配線を形成してEM試験を行った。図31にこの時用いた試験片の平面図を示し、試験片を作成する工程を以下に説明する。まず、Si基板上にSiO2 を3μm成膜後PEP、RIE工程により加工して、図31に示す四端子電気抵抗測定パターンの溝を形成した。ただし、抵抗測定部の配線幅1.0μm、深さ4500オングストローム、配線長1mmである。以上のSiO2 加工後、それぞれコリメーションスパッタにより表22〜表35に示す各種合金薄膜を500オングストローム成膜し、引き続き上述したような条件でCuを6000オングストローム成膜し、450℃、30分の熱処理を施した。この後、CMP(Chemical-Mechanical Polishing )により余分なCuを除去し、試験片とした。
【0242】
EM試験は、配線温度300℃、電流密度2×106 A/cm2 として真空中で行い、その結果を表に記した。なお、合金配線の熱処理後の配線抵抗は比抵抗値に換算して約1.7μΩcmであり、Cuのバルク値とほぼ同等で、熱処理による合金薄膜とCu膜との反応は見られなかった。また、熱処理方法は本実施例では真空熱処理であるが、水素雰囲気あるいは水素と窒素の混合ガス(フォーミングガス)中で行ってもかまわない。また、合金薄膜成膜後Cu膜を連続して成膜したが、合金薄膜成膜後一度大気に試料を晒した場合は、Cu成膜前に真空中で下地表面をプラズマクリーニングし、自然酸化膜を除去した後Cu膜を成膜すればよい。
【0243】
さらに、本実施例で、下地の合金薄膜がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crを含む組成である場合は、Cu配線形成後の段階でNH3 あるいはN2 の雰囲気中で600〜750℃に加熱することによりCu表面及び下地膜とCu膜との界面に窒化膜を形成すると、その後のTEOS成膜後においても電気抵抗の上昇は見られず、耐酸化性が極めて向上した。ただし、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crを含まない組成についても、合金薄膜中にTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Crを1〜10at%添加すれば同様の結果が得られる。
【0244】
また、表34に示されるように、Cu成膜時に基板に−20〜−50Vのバイアスを印加することによりCu膜の配向性が向上し、EM耐性の良好な組成範囲も広げられる。
【0245】
なお、表33、34には比較材として下地の合金薄膜がない場合のCu膜について同様に評価した結果を示した。
【0246】
(実施例55)4000オングストロームの熱酸化膜の付いた6インチシリコンウェハに、図30(a)に示したものと同様の形状で、深さが2000オングストローム、幅が1μmの溝を形成した。次いで、この基板上にAlを2000オングストローム蒸着した。Al蒸着のKセル温度は1200℃、基板温度は室温である。このAl膜の表面、断面形状をSEMを用いて観察したところ、図30(b)に示したものと同様に、溝部分にも溝以外の熱酸化膜表面にもAlは一様に堆積されていた。
【0247】
また、同様の溝付き基板上に、上記と同じ条件でAl膜を2000オングストローム蒸着した。基板温度は室温である。さらに真空を破ることなく、400℃、3時間の熱処理を行った。熱処理後のAl膜の表面、断面形状をSEMを用いて観察したところ、図30(c)に示したものと同様に、基板の溝部分はAlからなる金属配線によってほぼ完全に埋め込まれており、一方溝以外の熱酸化膜表面にはAlはほとんど堆積していないことが確かめられた。
【0248】
次に、同様の溝付き基板上に、Al2000オングストロームとBilMLをAl堆積の初期に同時に蒸着した。Biの蒸着条件は実施例31と同様であり、Alの蒸着条件は上に示した通りである。基板温度は同じく室温である。続いて、この試料について真空を破ることなく200℃、3時間の熱処理を行った。熱処理後のAl膜の表面、断面形状をSEMを用いて観察したところ、図30(d)に示したものと同様に、溝部分はAlからなる金属配線によってほぼ完全に埋め込まれており、一方溝以外の熱酸化膜表面にはAlがほとんど堆積していないことが確かめられた。
【0249】
Biの他、Ga、In、Cd、Sn、Pb、Tlについても同様の結果が得られた。
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【0250】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により、高い信頼性の金属配線を備えた電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の作用を説明する断面図。
【図2】 本発明の層構造を示す断面図。
【図3】 本発明の金属配線構造を示す断面図。
【図4】 本発明のパッドを示す拡大図。
【図5】 本発明に用いるマルチターゲットスパッタ装置を示す図。
【図6】 本発明の実施例1に係わる断面図。
【図7】 本発明の実施例3に係わる断面図。
【図8】 本発明の実施例5に係わる断面図。
【図9】 本発明の実施例6に係わる断面図。
【図10】 本発明の実施例7に係わる断面図。
【図11】 本発明の実施例8に係わる断面図。
【図12】 本発明の実施例9に係わる配線の製造プロセスを示す斜視図。
【図13】 本発明の実施例9に係わる加速試験の結果を示す特性図。
【図14】 本発明の実施例10に係わる断面図。
【図15】 本発明の実施例11に係わる配線部を有する試験基板を示す平面図。
【図16】 本発明の実施例14に係わる断面図。
【図17】 本発明の実施例16に係わる断面図。
【図18】 本発明の実施例17に係わる断面図。
【図19】 本発明の実施例18に係わる断面図。
【図20】 本発明の実施例19に係わる断面図。
【図21】 本発明の実施例21に係わる断面図。
【図22】 本発明で定義されたL/Sを示す断面図。
【図23】 本発明の実施例23に係わる製造プロセスを示す断面図。
【図24】 本発明の実施例25に係わる断面図。
【図25】 本発明の実施例27に係わる断面図。
【図26】 本発明の実施例30に係わるAl膜の結晶構造を示すRHEED写真。
【図27】 本発明の実施例38に係わる断面図。
【図28】 本発明の実施例43に係わる断面図。
【図29】 本発明の実施例46に係わるAl膜の結晶構造を示すSEM写真。
【図30】 本発明の実施例48に係わる斜視図。
【図31】 本発明の実施例54に係わる四端子パターンを示す平面図。
【符号の説明】
1…基板、2…金属配線、3…非晶質薄膜、5…絶縁層、6…バリア層、7…ドープ層、30,38…溝、37…多結晶膜、50…制御層
Claims (5)
- 非晶質薄膜と、この非晶質薄膜表面上に形成された金属配線とを備え、
前記非晶質薄膜の回折測定で現れるハローパターンのピークに対応する原子間距離dsと、前記金属配線の第一隣接原子間距離で規定される所定の結晶面の面間隔dfとが|df−ds|/ds≦0.25の関係を満たし、
前記金属配線は、全粒界の90%以上が、隣り合う結晶粒の配向軸を中心とした傾斜、回転及びその組み合わせでの相対角度が10度以内の粒界、Σ値が10以下の粒界、及びこの粒界からのずれが3度以内の粒界のいずれかで規定される亜粒界である高配向結晶からなる
ことを特徴とする電子部品。 - 前記金属配線は、Al、Cu、Au、Ag、およびWからなる群より選択されたひとつの金属を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
- 前記金属配線は、Al−Cu合金、Al−Ti合金、Al−Cr合金、Al−Ta合金、Al−Mg合金、Al−In合金、Al−Li合金、Cu−Be合金、Cu−Ag合金、Au−Pt合金、Au−Ag合金、Au−Pd合金、およびAu−Cu合金からなる群から選択された合金を有することを特徴とする請求項1記載の電子部品。
- 前記合金は、1重量%以下のSiをさらに含むことを特徴とする請求項3記載の電子部品。
- 前記粒界は、Ga、In、Cd、Bi、Pb、およびTlからなる群より選択された元素を含むことを特徴とする請求項1記載の電子部品。
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