JP4230252B2 - 海草類植栽用基盤を用いたアマモ類の養殖法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,海草類の効率的な養・増殖技術に係り,詳しくは,アマモ類などの海草類の養殖に適した海草類植栽用基盤を用いたアマモ類の養殖法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より,アマモ場をはじめとするモ場の造成は漁業など産業上の重要な事業となっているが,十分な事業効果が明確になっていない。その原因の一つとして,モ場造成に用いるアマモ類などの海草類の増・移植システムが確立されていないことが挙げられる。
【0003】
海草類の増殖には,栄養株を海底で植栽する方法と,種子を播いて発芽させる方法とが行われている。しかし,前者では十分な根張りが行わる前に,波や流れによって消失することが多く見られ,後者では,発芽したものが魚類などの食害にあうなどして,十分に生長するまでに時間がかかり繁茂しにくいという問題がある。また,従来よりマット状の基盤に海草類の根付けや種子播きを行なっているが,マット下は還元状態となって硫化水素が発生し,生物の生息環境を悪化させるという問題が付随する。加えて,海草類の増殖には他の漁場との競合で漁具等による人為的な損害も受け易い。アマモ類などによるモ場の造成に関して,特許文献1〜7などにおいて,様々な提案がなされている。その多くのものは,人工的な基盤にアマモ類を植栽し,人為的な管理下でアマモ類を生育させようとするものである。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−141523号公報
【特許文献2】
特公平7−2063号公報
【特許文献3】
特開平8−242717号公報
【特許文献4】
特開平9−248091号公報
【特許文献5】
特開平10−229778号公報
【特許文献6】
特開平11−318200号公報
【特許文献7】
特開2002−171852号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記の公報類に提案されたモ場の造成技術は,その基盤の構造や取り扱いにそれぞれの特長があるが,アマモ類などの海草類が水生の植物であることから,生育において水とくに海水と縁を切ることができず,このために,生育期間の短縮を図ることができなかったり,どの生育時期でも移植が自在に行えるといったものでもなかった。
【0006】
本発明は,このような問題の解決を目的としたものであり,アマモ類などの海草類の生育に適した硬くて含水性があり,持ち運びも自由な恒久的な海草類植栽用の基盤を開発し,これによってその目的を達しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば,植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリートの線状体を曲げ絡み合わせながら部分的に結着させることによって多数の空洞をもつ成形体としたうえ,この成形体を多数の空洞をもったまま硬化させてなる多空洞ブロックと,この多空洞ブロックの空洞部に装填された砂泥分とからなる海草類植栽用基盤に,発芽したアマモ類の種子を播種し,播種した海草類植栽用基盤を水槽内に移動して種苗養殖を行い,水槽内で生長したアマモ類を上記基盤ごと海底に移動させるアマモ類の養殖法を提供する。
さらに本発明では、植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリートの線状体を曲げ絡み合わせながら部分的に結着させることによって多数の空洞をもつ成形体としたうえ,この成形体を多数の空洞をもったまま硬化させてなる多空洞ブロックを,その空洞に砂泥分を充填せずに,天然のアマモ群落近傍の空き地に設置し,多数の空洞に砂泥分が自然に巻き込まれた海草類植栽用基盤として天然のアマモ類を繁茂させ,繁茂したアマモ類を上記基盤ごと収蔵して他の場所に移動させ,前記移動によって生じた空き地に再び別の多空洞ブロックを,その空洞に砂泥分を充填せずに設置して自然にアマモ類を生育させ,これを繰り返すことにより,天然のアマモ群落近傍でアマモ類を養殖するアマモ類の養殖法を提供する。
【0008】
ここで,前記の多空洞ブロックは,植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリートの線状体を曲げ絡み合わせながら部分的に結着させることによって多数の空洞をもつ成形体とし,この成形体を多数の空洞をもったまま硬化させるという処法で得ることができる。該線状体は同一または異なった太さとすることができる。モルタルまたはコンクリートは,MgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを結合材としたものであるのが好ましい。配合する植物繊維の量は10Kg/m3以上とするのがよく,植物繊維としては麻,綿,藁,籾等の植物短繊維を使用することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
人工的にアマモ類の促成・増殖を図ってその養殖効果を高めるには,アマモ類, 例えばアマモ( Zostera marina L.),オオアマモ ( Zostera asiatica Miki),コアマモ ( Zostera nana Roth )等の生長挙動に合わせた適切な環境下での移植管理が必要となる。すなわち,海中で発芽→生長→種子生産→発芽と繰り返されるアマモ類のライフサイクルにおいて,最も効率よく過ごせるようにするには,アマモ類の生育段階と季節とに応じて適切な人工施設に移植したり天然の海底に戻したりする移設処理が欠かせない。アマモ類種子についての採種や播種の作業においても,これを海中で行うよりは,陸上施設で行う方が作業性がよい。
【0010】
アマモ類の移動には,アマモ類を植栽した基盤ごと行うのが合理的である。アマモ類の種子を基盤に播種した状態,基盤から発芽した状態,基盤上で成茂した状態など,様々な生育段階であっても,基盤ごとに移動するのが都合がよい。前掲の各種の特許公報にはアマモ類を植栽するための基盤が種々提案されているが,最も肝要なことは,どの生育段階でもアマモ類と共に移動可能であること,そして,それが海水から離れた状態に置かれたときでも,その生育に障害を与えないことである。海水から離れた別環境に置かれるのは短時間であるにしても,大量の養殖では,半日程度となることは覚悟しなければならない。不慮の場合には一層長時間の渇水状態(別環境)に遭遇する可能性もある。しかも,移動作業並びに撤去・設置作業を考えると,その基盤は強固で半永久的な寿命を有しなければならない。このような要件を全て備えたアマモ類などの海草類基盤はこれまでに出現していない。このことがアマモ類の合理的な養殖を困難にしている一因となっている。
【0011】
本発明は,これまでのものにはない優れた保水性を有するモルタルまたはコンクリートの多空洞ブロックをアマモ類などの海草類基盤に用いる点に特徴がある。具体的には,適量の植物繊維を配合することによって優れた保水機能を有するセメント系硬化体とし,且つこの保水性セメント系硬化体を多空洞ブロックに成形し,その空洞内に砂泥分を装填する。基盤中の砂泥分のみならずモルタルまたはコンクリート部分が適度な保水性を有することから,別の環境に移動されたときにも,基盤内の環境は前の状態を維持し続け,アマモ類などに環境変化の影響を与えることが少なくなると共に,この基盤はアマモ類などの海草類の生育に必要な土壌的要素を具備する。以下に,まず,本発明に従う保水性をもつ多空洞ブロックについて説明する。
【0012】
図1は,本発明に従う多空洞ブロックの形状例を示したもので,植物繊維を配合したセメント系硬化体(モルタルまたはコンクリート)からなる線状体1が曲げ絡み合って立体形状の多空洞ブロック2が形成されている。線状体1 は同一または異なる太さとすることができる。この多空洞ブロック2は,硬化した線状体1が部分的に結着し,線状体同士の間に隙間(多数の空洞)を有した構造を呈しており,あたかも即席乾燥麺(インスタントラーメン)の如き捲縮固化物を拡大したような立体形状を有している。
【0013】
このようなセメント硬化体の多空洞ブロック2を作成するには,例えば図2に示したように,植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリート3(以下これを略して“植物繊維入り生モルタル”と呼ぶ)の混練物をグラウトポンプ4でノズル5に圧送することにより,ノズル5から植物繊維入り生モルタル3の線状体1'として押し出し,これを曲げ絡み合わせる。植物繊維を適量配合し且つ水セメント比および単位水量を調節すると,ノズル5から押し出された植物繊維入り生モルタル3の線状体1'は直角はもとより150o近く曲げても破断することなく,くねくねと自在に曲がる。植物繊維を配合しない場合には,そのような性質を具備させることは困難で,形状保持力をもつような硬練として線状体に押し出した場合には,曲げるとすぐに折れてしまう。
【0014】
図2ではグラウトポンプ4を使用した例を示したが,図3のような簡易押し出し器6を用いて本発明に従う多空洞ブロック2を作成することもできる。図3の押し出し器6は,本発明に従う植物繊維入り生モルタル3を入れるホッパー部7と,このホッパー部7の先端に設けたノズル8と,ホッパー部7の生モルタル3を背面から押し出すための押し出し具9とからなる持ち運び可能な簡単なものであり,作業者の人力で植物繊維入り生モルタル3の線状体1'を作成できるようにしたものである。ノズル8から押し出した生モルタル3の線状体1'を例えば箱型の型枠10内に捲縮させながら装填し,型枠10内で硬化させることによって,図1に示したような多空洞ブロック2を作り出すことができる。
【0015】
図4は,各種形状の型枠,例えば側面が6面体からなる六角形状の箱型の型枠11,側面が4面体からなる四角形状の箱型の型枠12に,植物繊維入り生モルタル3の線状体1'を打設する例を示したものである。図示のほか,側面が3面体,5面体,その他の多面体からなる多角形状,或いは側面が円筒や楕円筒からなる円筒形状の箱型の型枠を用いて,様々な形状の多空洞ブロック2を作り出すことができる。一般的には,厚みが5〜20cm程度の板状体(特に方形の板状体)の多空洞ブロック2とするのが取り扱い易い。
【0016】
ノズル5,8から押し出す生モルタル3の線状体1'の径については,直径が5〜30mm,好ましくは5〜20mm,さらに好ましくは10〜15mmのものが取り扱いやすい。植物繊維入り生モルタル3の配合については後述するが,使用する植物繊維としては,長さが2〜12mm,径が0.1〜1.0mm程度の植物短繊維が好適であり,配合量としては,植物繊維の種類によってその適正な範囲は異なるが,10〜80Kg/m3好ましくは20〜60Kg/m3の範囲とするのがよく,植物繊維の配合量が多いほど硬化した線状体1の湿潤性能(保水性能)および生モルタル3の線状体1'の変形性能が高まる。しかし,あまり多いと,骨材表面が植物繊維で覆われるところが増え,骨材・セメント間の接合強度を低下させることにもなるので,80Kg/m3以下,好ましくは60Kg/m3以下とするのがよい。練り混ぜに際しては,セメントペーストに植物繊維を先練りし,この植物繊維入りセメントペーストを骨材と練り混ぜる方法が好ましい。一般に植物繊維は,コンクリートに混入されると腐食しにくくなる性質があり,例えば麻はエジプトのピラミッドからも腐食していないものが発見されているといった実績がある。
【0017】
植物繊維の使用にあたっては,その乾燥体をよくほぐした状態で使用するのがよい。植物繊維の性質上,その繊維一本一本の径や長さ,さらには表面状態や形状(針状か板状かなど)はランダムであるが,要するところ,その植物繊維の性質に応じてコンクリート中によく分散できるような寸法形状とすればよい。麻を用いる場合には,ほぼ長さが2〜12mmで,径が0.2〜0.7mm程度のものを練り混ぜ中の材料に少しづつ投入して分散させればよい。そのさい,水を混入する前の空練りを60秒以上行うことが好ましい。
【0018】
コンクリート用分散剤を使用して植物繊維の分散を促進させることも好ましい。使用できる分散剤には各種のものがあるが,例えば高性能減水剤(商品名レオビルド8000ESなど)が挙げられる。また,必要に応じて水溶性高分子等の増粘剤を使用することができる。
【0019】
使用するセメントとしては普通セメントが使用できるが,低pH(低アルカリ)セメントを使用すると,低pHの植物繊維入り生モルタル3が得られ,低pHの多空洞ブロック2を作ることができる。低pHセメントとしては,MgOおよびP2O5を主成分とする低pHセメントを使用できる。このような低pHセメントとしては,例えば特開2001−200252号公報に記載された軽焼マグネシアを主成分とする土壌硬化剤組成物が挙げられる。またこれに相当する低pHセメントは商品名マグホワイトとして市場で入手できる。さらに,セメントの一部を,必要に応じて高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカヒュームなどで置換することもできる。
【0020】
骨材成分としては通常の細骨材および粗骨材を使用できるが,粗骨材を使用する場合には最大寸法がノズル5,8の口径より小さいものを使用する必要がある。骨材を使用する場合には最大寸法5mm以下とするのがよい。細骨材としては通常の川砂のほか,土質成分のもの例えば火山灰土,黒土等を使用可能である。また,石灰石粉等の微粉末を配合することもできる。さらに軽量細骨材を使用することもできる。そのさい,アマモ類などの海草類に必要な栄養素例えば肥料や鉄などの金属成分を添加することができる。また鉄分等を添加すると,硫化水素を吸着することができるので,硫化水素発生によって底質が還元状態となるのを抑制することができる。
【0021】
植物繊維を10Kg/m3以上,好ましくは20Kg/m3以上配合し,水セメント比を従来のポーラスコンクリートの場合と同等もしくはこれよりも高くして(例えばポーラスコンクリートでは水セメント比が25〜35%程度である)練り混ぜると,スランプ値は高くても1.0cmまでの混練物が得られ,その硬化体は,透水係数が 1.0〜3.0 cm/secで,単位吸水率が10〜40%の植物繊維入りセメント系硬化体(モルタルまたはコンクリート)となる。しかも,この硬化体は,圧縮強度250〜330kgf/cm2 ,曲げ強度40〜50kgf/cm2 を有することができる。すなわち,普通コンクリートまたはモルタルと同等の強度特性を得ることか可能である。
【0022】
図5は,本発明に従う海草類植栽用基盤15にアマモ類16を植栽した状態を示している。海草類植栽用基盤15は,前述した多空洞ブロック2の空洞内に砂泥分を装填したものである。アマモ類16は,多空洞ブロック2内の空洞内に装填された砂泥分にその根部が植栽される。前述のように,多空洞ブロック2は多くの隙間(空洞)を有することができ,この空洞の容積を空隙率として表すと,例えば空隙率20〜80%の多空洞ブロック2,好ましくは空隙率30〜50%の多空洞ブロック2とすることができる。このような空隙率を有することにより,多空洞ブロック2自身は軽量となるので運搬および施工に有利となり,しかもその空洞部に砂泥分を装填することによって海草類植栽用基盤15を構成すると,その砂泥装填箇所をアマモ類16の根部が生長する空間,若しくはアマモ類16の種子を播種する土壌に利用できる。そして,この砂泥が入った空間は,アマモ類以外に,小動物,例えば二枚貝や,ゴカイ類などの多毛類の生息空間にもなり得るのであり,この場合にはアマモ類の植物体から排出される酸素がそのこれらの小動物の生息に寄与することができ,植物と動物との共生基盤となり得る。
【0023】
空洞部分に装填される砂泥分は天然産のみならず保水性を向上した人工培養土等を使用することができる。本発明はこのよう砂泥分にに加えて,前記のように,多空洞ブロック2の植物繊維入りセメント系硬化体そのものが優れた保水機能を有するので,この基盤15にアマモ類16を植栽したまま,仮に海水から半日間程度縁が切れても,アマモ類16に障害を与えることは殆ど回避できる。
【0024】
本発明に従う多空洞ブロック2を作るための,代表的な植物繊維入り生モルタル3の材料配合例を挙げると,例えば,
低pHセメント(商品名マグホワイト):500Kg/m3±50Kg/m3
黒土 :500Kg/m3±50Kg/m3
砂 :400Kg/m3±40Kg/m3
水 :420Kg/m3±40Kg/m3
植物短繊維(綿の場合) :20Kg/m3±5Kg/m3
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100A):5Kg/m3±1Kg/m3
ソイルセメント用混和剤(商品名レオソイル100B):3Kg/m3±1Kg/m3を例示できる。
これによって,気乾比重=1.5±0.2,湿潤比重=2.1±0.2の硬化体とすることができる。この硬化体は,圧縮強度300kgf/cm2 ±50kg/m3,曲げ強度45kgf/cm2 ±10kg/m3で,単位吸水率が30%±10%程度の保水性を示す硬化体となる。しかも,普通セメントを用いた硬化体よりもpH値の低いものが得られる(pH=7〜9程度となる)。このようなことから,この多空洞ブロック2は,強度,保水性,空隙率,pH,重量などの点で海草類植栽用基盤15として好適てある。
【0025】
アマモ類の増殖を行う場合,波や流れによって消失することが多く,また,折角発芽しても魚類などの食害にあって実効が上がらなかったり,漁具よる被害を受ける例が多く見られたが,このような問題は,本発明に従う海草類植栽用基盤15を用いた種苗生産と養殖生産とを人工的な管理下で適切に行うことによってアマモ類の生長を促進させることで解決し得る。以下にそのシステムを説明する。
【0026】
アマモ (Zostera marina L.)のライフサイクルは,図6に示したように,天然の状態では10〜11月に発芽し,5〜6月まで生長を続けたあと,種子を生産し,次の発芽時期の10〜11月までは基本的に種子のまま休眠状態となる。
【0027】
本発明の一つの態様によれば,天然のアマモが種子生産した時期に,その天然アマモから種子を採集する。これを陸上の種苗養殖施設等で発芽させる。アマモの種子は水温が20〜28℃の高水温期間(6〜10月)は休眠種子となり,発芽しないが,この時期を人工的な水温制御によって休眠期間を短縮させ,通常よりも2〜3ヵ月間早く発芽させることができる。その発芽が始まると,その発芽した種子を本発明の海草類植栽用基盤15に播種し,根付けさせ,種苗養殖施設等で養殖する。種苗養殖においても,水温制御,照度制御および施肥により生長を促進させることができる。基盤15の上で生長したアマモは,これを基盤15に植栽したまま出荷し現地移植する。
【0028】
種苗養殖では,発芽した種子を播いた基盤15を水槽内に設置して養殖することができるが,この水槽は各県など自治体の栽培漁業施設や民間の種苗養殖場などの季節休業施設を利用することができる。実際に,マダイ,ヒラメ,クルマエビ,カザミ等の水槽実働期間は9〜3月は少なく,この期間は空いているのが実状である。この空いた期間におけるそれらの施設を,基盤15に根付いたアマモの生育に使用する。アマモは植物のため飼料は不要であり,太陽光と施肥とが生長の条件となる。換水も魚介類の種苗生産に用いる場合の1/2程度でよく,その使用水の再利用もできる。このように,基本的には季節休業施設を利用でき,その空き期間は全国共通であることが利点となっている。さらにアマモの養殖に使用する用水は雑魚等を生育していたり,親魚を飼育していた窒素分等を豊富に含む栄養価の高い使用水を施肥の代用とすることができる。
【0029】
図7はこのような段階を図解的に示したものであり,まず,本発明に従う海草類植栽用基盤15に対して発芽した種子17を播種する。種子の採集は天然のアマモからも行うことができるが,養殖アマモから行うのが実際的である。播種した基盤18は,各種施設の水槽19内に設置される。ここでは,水温管理と照度管理とが行われ生長を促進する。このようにして,9月頃から次年の3月頃までを,遊休施設を利用したアマモ生育期間とすることができ,この短期間での生長でも天然の2倍程度の大きさに育てあげることが可能である。基盤18上で生長したアマモは,各基盤18に植栽したまま出荷する。
【0030】
出荷された基盤18付きアマモは現地で移植されるが,海底に移植する場合には,その基盤18ごと海底に敷設すればよい。その作業はダイバーによるものとなるが,アマモ群落のあるところを拡大するという方針で行えば,アマモの保護を兼ねることになる。浅瀬に移植するときには基盤18の上面が天然アマモの地盤とほぼ同じ高さとなるように各基盤18を据え付けることにより,干潮や潮流による消失等の被害を防ぐことができる。
【0031】
本発明の別の態様によれば,現地で養殖を行うこともできる。ひとつは,本発明に従う多空洞ブロック2の空洞に砂泥分を充填し種子を播種したものをそのまま海底に設置する方法であり,もうひとつは,本発明に従う多空洞ブロック2の空洞にとくに砂泥分などを充填せずに,天然のアマモ群落近傍の空き地に施設する方法である。後者では多空洞ブロック2の多数の空洞に砂泥分が自然に巻き込まれると同時にアマモ種子や巻き根も巻き込まれるようになり,本発明に従う海草類植栽用基盤15には天然のアマモが繁茂するようになる。これを基盤ごと収蔵し,さらに他の場所に移植する。そして,収蔵した空き地には再び多空洞ブロック2を設置すると, やはり自然にアマモが生育し,これを繰り返すことにより,現地でアマモを養殖するシステムを確立することができる。また,この現地養殖システムと,施設を利用した前掲のシステムを組合せてより一層経済的で合理的なアマモ養殖を行うことも可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,適度な空洞(隙間)を有しながら保水性を有し,強度,経済性,低アルカリ性の面でアマモ類などの海草類養殖に適した基盤が提供されたことにより,アマモ類などの海草類の増・養殖を実現でき,モ場造成に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う多空洞ブロックの一例を示す略平面図である。
【図2】本発明に従う多空洞ブロックの製造例を示す略側面図である。
【図3】植物繊維入り生モルタルの線状体を型枠内に装填する例を示す略図である。
【図4】植物繊維入り生モルタルの線状体を型枠内に装填する他の例を示す略図である。
【図5】本発明に従う海草類植栽用基盤にアマモ類を植栽した状態を示す略断面図である。
【図6】アマモ養殖の工程図である。
【図7】アマモの養殖工程を図解的に示した図である。
【符号の説明】
1,1’線状体
2 多空洞ブロック
3 植物繊維入り生モルタル
4 グラウトポンプ
5,8 ノズル
6 簡易押し出し器
7 ホッパー
9 押し出し具
10,11,12 型枠
15 海草類植栽用基盤
16 アマモ類
17 発芽した種子
18 播種した基盤
19 水槽
Claims (2)
- 植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリートの線状体を曲げ絡み合わせながら部分的に結着させることによって多数の空洞をもつ成形体としたうえ,この成形体を多数の空洞をもったまま硬化させてなる多空洞ブロックと,この多空洞ブロックの空洞部に装填された砂泥分とからなる海草類植栽用基盤に,発芽したアマモ類の種子を播種し,播種した海草類植栽用基盤を水槽内に移動して種苗養殖を行い,水槽内で生長したアマモ類を上記基盤ごと海底に移動させるアマモ類の養殖法。
- 植物繊維配合の未だ固まらないモルタルまたはコンクリートの線状体を曲げ絡み合わせながら部分的に結着させることによって多数の空洞をもつ成形体としたうえ,この成形体を多数の空洞をもったまま硬化させてなる多空洞ブロックを,その空洞に砂泥分を充填せずに,天然のアマモ群落近傍の空き地に設置し,多数の空洞に砂泥分が自然に巻き込まれた海草類植栽用基盤として天然のアマモ類を繁茂させ,繁茂したアマモ類を上記基盤ごと収蔵して他の場所に移動させ,前記移動によって生じた空き地に再び別の多空洞ブロックを,その空洞に砂泥分を充填せずに設置して自然にアマモ類を生育させ,これを繰り返すことにより,天然のアマモ群落近傍でアマモ類を養殖するアマモ類の養殖法。
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