JP4230240B2 - 固体高分子型燃料電池用シール材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池用シール材および該シール材を用いた固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池の高分子電解質膜には、側鎖の末端にスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸系高分子が用いられており、この電解質膜は水分を含んだ状態でプロトン伝導性を有する。そのため電池を作動させるときには、高分子電解質膜を常に含水した状態に保つ必要がある。そして、含水状態において前記高分子電解質膜は、スルホン酸基の解離により強酸性となるため、高分子電解質膜と直接接触する部材には耐酸性が要求される。
また、反応電極においても、触媒を担持させたカーボン粒子のバインダーとして、パーフルオロスルホン酸系高分子が用いられるため、従来電解質膜または反応電極と直接接触するシール材には耐酸性に優れるフッ素系樹脂が用いられていた。
しかしながら、フッ素系樹脂からなるガスケット等のシール材は、樹脂の硬度が高いため、密封性を得るためには電極とガスケット等のシール材の厚みを精度良く調整しておく必要があり、締め付けの際には非常に大きな荷重で均等に締め付けなければならないという問題があった。また、フッ素系樹脂はガスケット等のシール材として用いるにはコストが高すぎるという問題もあった。
【0003】
一方、シール材としてゴム弾性を有する材料を用いれば、ある程度の厚み調整でガスケット等のシール材としての機能を果たし、コストダウンも可能となるため、ゴム弾性を有する材料として、例えばエチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)が使用されるが、EPDM等のゴム材料ではフッ素系樹脂ほどの耐酸性を持たないため長時間の使用に適していないという問題がある。また、EPDMはガスバリア性が十分でないため燃料ガスなどの発散が問題となる。
このため、特許文献1および特許文献2には、末端に架橋可能な官能基を有するポリイソブチレンを主骨格とする高分子材料が提案されており、該高分子材料はゴム弾性、ガスバリア性、耐酸性に優れるため、燃料電池用のシール材としては好適ともいえる。
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術においては、高分子材料にゴム弾性を発現させる架橋反応工程が必須であり、製造工程が煩雑になるという問題と共に、架橋反応後には熱可塑性が失われるためリサイクルできないという問題もあった。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−345620号公報
【特許文献2】
特開2001−325972号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、成形性、リサイクル性、耐酸性、ガスバリア性等に優れると共に、良好なゴム弾性を有する固体高分子型燃料電池用シール材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、固体高分子電解質膜と該電解質膜を挟む一対の反応電極からなる膜−電極接合体を、燃料ガス流路を設けた一対のバイポーラ板で挟持する際に、バイポーラ板の接合面や、反応電極の周辺に配置されて、燃料ガスと反応電極における生成水とが電池外へ飛散することを防止するためのシール材として、特定のイソブチレン系ブロック共重合体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)芳香族ビニル化合物単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックと、イソブチレン単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックとからなるブロック共重合体を、50質量%以上含有する熱可塑性重合体(組成物)を熱成形してなることを特徴とする固体高分子型燃料電池用シール材である。
また、本発明は、
(2)芳香族ビニル化合物単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックと、イソブチレン単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックとからなるブロック共重合体を、50質量%以上含有する熱可塑性重合体(組成物)を熱成形することを特徴とする上記(1)に記載の固体高分子型燃料電池用シール材の製造方法である。
そして、本発明は、
(3)上記(1)のシール材を配置したことを特徴とする固体高分子型燃料電池である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる熱可塑性重合体組成物の主成分であるブロック共重合体は、少なくとも1つの芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック[以下、これを「芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)」ということがある]と、少なくとも1つのイソブチレン単位から主としてなる重合体ブロック[以下、これを「イソブチレン系重合体ブロック(b)」ということがある]とからなるブロック共重合体である。芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)は、芳香族ビニル化合物からなる構造単位から主としてなり、他の共重合性単量体からなる構造単位を少量含有していてもよい重合体ブロックである。また、イソブチレン系重合体ブロック(b)は、イソブチレンからなる構造単位から主としてなり、他の共重合性単量体からなる構造単位を少量含有していてもよい重合体ブロックである。
【0009】
上記芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、ビニルナフタレン、アセトナフチレンビニルアントラセン、インデンなどのビニル芳香族化合物を挙げることができ、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)は前記した芳香族ビニル化合物の1種のみからなる構造単位を有していてもよいし、2種以上からなる構造単位を有していてもよい。そのうちでも、耐熱性などの観点から、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)はスチレンまたはα−メチルスチレンからなる構造単位から主としてなっていることが好ましく、α−メチルスチレンからなる構造単位から主としてなっていることが特に好ましい。
【0010】
また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)が芳香族ビニル化合物からなる構造単位と共に他の共重合性単量体からなる構造単位を有している場合は、該他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)の総量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。その際の他の共重合性単量体としては、例えば1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0011】
次に、ブロック共重合体におけるイソブチレン系重合体ブロック(b)は、イソブチレン単位から主としてなり、場合により他の共重合性単量体からなる構造単位を少量含有する重合体ブロックである。
イソブチレン系重合体ブロック(b)がイソブチレン単位と共に他の共重合性単量体からなる構造単位を有している場合は、該他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、イソブチレン系重合体ブロック(b)の質量に基づいて30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。その際の他の共重合性単量体としては、例えば1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0012】
本発明に用いるブロック共重合体では、ガスバリヤ性、力学的特性などの点から、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)とイソブチレン系重合体ブロック(b)との割合が、5:95〜80:20の質量比であることが好ましく、10:90〜70:30の質量比であることがより好ましい。
【0013】
ブロック共重合体における芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)とイソブチレン系重合体ブロック(b)の結合形態などは特に限定されず、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)とイソブチレン系重合体ブロック(b)とがブロック状に結合しているブロック共重合体であればいずれでもよく、例えば、下記の一般式(I)〜(III);
【0014】
【化1】
a−b (I)
a−(b−a)m (II)
b−(a−b)n (III)
[式中、aは芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)、bはイソブチレン系重合体ブロック(b)、mおよびnは1以上の整数(例えば1〜5)を示す。]
で表されるブロック共重合体またはこれらの混合物などを挙げることができる。
そのうちでも、本発明では、ブロック共重合体が、上記の一般式(II)で表されるブロック共重合体において、mが1であるブロック共重合体、すなわち、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)−イソブチレン系重合体ブロック(b)−芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)というブロック構造を有するトリブロック共重合体であることが取り扱い性、力学物性、入手の容易性などの点から好ましい。
【0015】
また、ブロック共重合体では、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)の数平均分子量が2,500〜50,000の範囲であることが好ましく、5,000〜40,000の範囲であることがより好ましい。イソブチレン系重合体ブロック(b)の数平均分子量は、5,000〜100,000の範囲であることが好ましく、10,000〜80,000の範囲であることがより好ましい。ブロック共重合体の全体の数平均分子量は、10,000〜200,000の範囲であることが好ましく、20,000〜160,000の範囲であることがより好ましい。
【0016】
ブロック共重合体は、接着性向上などの観点から、場合により、分子鎖の途中および/または分子鎖末端に、塩素原子や臭素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。
【0017】
ブロック共重合体の製造法や入手法などは特に制限されず、上記した芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)およびイソブチレン系重合体ブロック(b)を有するブロック共重合体であればいずれも使用でき、例えば重合体組成物用に前記ブロック共重合体を製造してもよいし、または市販されているブロック共重合体をそのまま用いてもよい。
【0018】
上記ブロック共重合体を製造する方法については何ら限定されるものではないが、従来公知の方法を採用して製造することができる。例えば、カチオン重合法により本発明に用いるブロック共重合体を製造する場合には、ルイス酸およびこれと組み合わせてカチオン重合活性種を形成する有機化合物から構成される開始剤系の存在下に、必要に応じてピリジン誘導体、アミド類などの添加剤を共存させ、ヘキサン、塩化メチレンなどの不活性溶媒中で、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体と、主としてイソブチレンからなる単量体を、任意の順序で段階的に重合させて各重合体ブロックを逐次形成してゆくことにより製造することができる。
その場合に、上記したルイス酸としては、例えば、四塩化チタン、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズなどを挙げることができ、またカチオン重合活性種を形成する有機化合物としては、例えばアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子などの官能基を有する有機化合物を挙げることができる。該有機化合物の具体例としては、1,4−ビス(2−メトキシ−2−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−アセトキシ−2−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−クロロ−2−メチルエチル)ベンゼンなどを挙げることができる。上記のピリジン誘導体としては、例えば、2−メチルピリジン、2−エチルピリジン、2−プロピルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,3−ジエチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,3,6−トリメチルピリジン、2,3,4,6−テトラメチルピリジン、2,3,5,6−テトラメチルピリジン、2,3,4,5,6−ペンタメチルピリジン、2,6−ジメチルー3−エチルピリジン、2,6−ジメチルー4−エチルピリジンなどを挙げることができる。また、上記のアミド類としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0019】
より具体的には、例えば、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)−イソブチレン系重合体ブロック(b)−芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)のブロック構造を有するトリブロック共重合体の場合は、例えば、上記のカチオン重合活性種を形成する有機化合物のうち官能基を1個有する有機化合物とルイス酸とを開始剤系として用いて、まず、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を重合系内に添加して重合させ、重合反応が実質的に終了した後に、主としてイソブチレンからなる単量体を重合系内に添加して重合させて重合反応が実質的に終了した後、再度、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を重合系内に添加して重合させる方法によって製造することができる。
また前記した方法とは別に、上記のカチオン重合活性種を形成する有機化合物のうち1分子内に官能基を2個有する化合物とルイス酸を開始剤として用いて、主としてイソブチレンからなる単量体を重合させ、その重合が実質的に終了した後に、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を供給して先に形成したイソブチレン重合体の両端に芳香族ビニル化合物を結合重合させて、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)−イソブチレン系重合体ブロック(b)−芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)のブロック構造を有するトリブロック共重合体を製造することもできる。
【0020】
本発明の固体高分子型燃料電池用シール材は、本発明のブロック共重合体のみを原料として得られる熱可塑性重合体組成物よりなるものでもよいし、ブロック共重合体に他の合成樹脂を配合して得られる熱可塑性重合体組成物よりなるものでもよい。
【0021】
かかる他の合成樹脂としては、熱可塑性樹脂を好ましく使用することができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、アクリル系多層構造重合体粒子等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド類;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂等が挙げられる。これらの中で特に、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル樹脂が好ましく、オレフィン系樹脂またはスチレン系樹脂がより好ましい。
【0022】
他の合成樹脂は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で配合することができるが、ブロック共重合体と他の合成樹脂とから得られる熱可塑性樹脂組成物において、本発明で使用するブロック共重合体の優れたガスバリア性、弾性回復性、適度の柔軟性及び良好な他の機械的物性を活かしながら、他の合成樹脂に由来する好ましい性能を発現させる目的からは、本発明に用いるブロック共重合体と他の合成樹脂の質量比を、ブロック共重合体/他の合成樹脂において50/50〜98/2の範囲内とすることが好ましく、60/40〜95/5の範囲とすることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いる熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて無機充填剤を含有していてもよい。無機充填剤を含有させるとその増量効果により製品コストの低下をはかることができ、また場合によっては重合体組成物の品質の向上に機能する場合もある。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラックなど)、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、天然ケイ酸、ホワイトカーボン、酸化チタンなどを挙げることができ、これらの無機充填剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明に用いる熱可塑性重合体組成物は、成形性、柔軟性の改善を図るために、さらに軟化剤を加えてもよい。例えば、鉱物油系の軟化剤としては、ゴムの加工の際の加工性の改善、増量効果あるいは充填剤の分散性改善などを主目的として使用されている通常のエキステンダー油と同じものが用いられる。これらは、高沸点の石油成分であって、パラフィン系、ナフテン系および芳香族系に分類されている。本発明で用いる軟化剤はこれらの石油留分に限らず、液状ポリイソブテンのような合成液状ポリマーも使用できる。
【0025】
また、本発明に用いる熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、シリコーンオイルなどの離型剤などのような他の添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0026】
本発明に用いる熱可塑性重合体組成物を得るための配合法としては特に制限は無く、従来公知の方法を採用して配合することができる。例えば、溶融混練法により熱可塑性重合体組成物を得る場合には、通常用いられる単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができる。溶融混練の条件は、使用するブロック共重合体の種類、装置の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常、180〜280℃の温度で1〜15分間程度行うとよい。
【0027】
上記で得られた熱可塑性重合体組成物を固体高分子型燃料電池用のシール材として用いる際の方法は、熱成形によりガスケット状のシール材を成形し、次いでこれを燃料電池の接合面に挟持して用いる。熱成形方法としては、射出成形法、カレンダー成形法、押出成形法、圧縮成形法、真空成形法、発泡成形法等の公知の方法を用いることができ、例えば、射出成形により直接ガスケット状のシール材を作製してもよいし、カレンダー成形または押出成形により一旦フィルムやシートに熱成形した後、これを打抜加工してガスケット状のシール材を作製してもよい。熱成形温度は一般に180〜280℃が適当である。また、上記成形法により、本発明のシール材の形状は特に限定されず製造することができ、用途、使用条件等によって適宜設計することができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。
なお、以下の例において、成形性、重合体組成物から得られる成形品の表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、圧縮永久歪み、ガス透過性、耐薬品性の評価は次のようにして行った。
【0029】
(1)重合体組成物の成形性:
得られたブロック共重合体などの重合体組成物を用いて、温度220℃、プレス圧力10MPaの条件下にプレス成形を行って、縦×横×厚さ=20cm×20cm×1mmのシート状成形品を作製し、その際の重合体組成物の流動性および表面状態を目視により観察して、下記に示す評価基準にしたがって評価した。
[成形性の評価基準]
○:溶融した重合体組成物の流動性が良好で、プレス金型と同じ形状及び寸法の成形品が得られ、しかも成形品の表面が平滑である。
△:溶融した重合体組成物の流動性が良好で、プレス金型とほぼ同じ形状及び寸法の成形品が得られるが、成形品の表面が平滑でない。
×:溶融した重合体組成物の粘度が高くて流動性が悪く、プレス金型と同じ形状および寸法の成形品が得られない。
【0030】
(2)表面硬度:
上記(1)で得られた1mm厚みのシート状成形品を用いて、その表面硬度をJIS−K6301に準じて測定した。
【0031】
(3)引張破断強度、引張破断伸び
上記(1)で得られた1mm厚みのシート状成形品を用いて、3号形ダンベル試験片を打ち抜き型により打ち抜いて作製し、そのダンベル試験片を用いて、JIS−K6301に準じて、引張破断強度、引張破断伸びを測定した。
【0032】
(4)圧縮永久歪み:
上記(1)で得られた1mm厚みのシート状成形品を用いて、JIS−K6301に準じて、温度70℃、圧縮変形量25%の条件下に22時間放置した時の圧縮変形歪みを測定した。
【0033】
(5)ガス透過性:
重合体組成物の20μm厚みのフィルムを作製し、そのフィルムを用いて、ガス透過性試験装置(柳本株式会社製「GTR−10」)を使用して、水素ガスの透過係数をASTM―D3985に準じて測定して、水素ガス透過性の評価を行った。
【0034】
(6)耐薬品性試験
上記(1)で得られたシート状成形品から5cm×5cm×1mmシートを作製し、そのシートを10%硫酸水溶液に室温下で30日間浸漬し、外観の変化を目視で観察して、下記に示す評価基準にしたがって評価した。
[耐薬品性の評価基準]
○:外観変化がほとんど認められない。
△:わずかに外観変化が認められる。
×:外観変化が明瞭に観察される。
【0035】
燃料電池の構成
図1に燃料電池の基本単位である単セルの断面図を模式的に示す。単セルは、プロトン伝導性を示すパーフルオロスルホン酸系高分子電解質膜(4)(製品名ナフィオン、デュポン社製)と反応電極(アノード(2)およびカソード(3))と、ガスケット状シール材(5)と、バイポーラ板(1)とからなっている。反応電極であるアノードとカソードは高分子電解質膜を挟持し、電極/膜接合体(以後MEAと言う)を構成する。バイポーラ板はガスケット状シール材を介して、MEAを両側から挟み込む構造となっている。
該燃料電池単セルの両側に図示していないガスマニホールド用の孔を設けたヒーター板、集電板、絶縁板、エンドプレートを取り付け、最外側の両エンドプレート間を、ボルトとバネとナットで締め付け、固体高分子型燃料電池の単電池を構成した。
【0036】
各部材の詳細説明
本発明の実施例および比較例において、高分子電解質膜にはパーフルオロスルホン酸系ポリマー(商品名:NAFION(デュポン社製))を25μmの厚みに薄膜化したものを使用している。反応電極であるアノードとカソードは、カーボンブラックの微粒子に白金系触媒を30質量%担持させ、該白金触媒を担持したカーボンブラック微粒子を前記高分子電解質膜と同種のパーフルオロスルホン酸系高分子電解質の溶液中に分散して、炭素繊維からなる厚さ250μmのカーボンペーパーにスクリーン印刷で塗布したものである。バイポーラ板は、非多孔質カーボン板のMEA側の表面に、燃料ガスおよび酸化ガス(空気)をアノードおよびカソードに供給するの流路を切削加工したものを用いている。単電池の締め付け圧力は2MPaとした。
【0037】
実施例1
本実施例では、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレントリブロック共重合体[数平均分子量:100,000、分子量分布(Mw/Mn):1.1、スチレン単位含有量:30質量%]を使用した。該ブロック共重合体の評価結果を表1に示す。該ブロック共重合体を用いて熱プレス後、打ち抜き加工により、厚さ300μmのガスケット状シール材を作製した。ガスケット状シール材の形状を図2に示す。
上記ガスケット状シール材を用いて作製した固体高分子型燃料電池を、75℃に保持し、一方の電極側に73℃の露点となるよに加湿・加温した水素ガスを、もう一方の電極側に68℃の露点となるように加湿・加温した空気を供給した。その結果、電流を外部に出力しない無負荷時には、0.90Vの電池解放電圧を得た。
また、この電池の1000時間の連続運転試験においてガスケット状シール部からのガスリークの有無を観察したが、水素ガスの漏れは検出されなかった。
【0038】
実施例2
本実施例では、ポリα−メチルスチレン−ポリイソブチレン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体[数平均分子量:98,000、分子量分布(Mw/Mn):1.1、α-メチルスチレン単位含有量:30質量%]を使用した。該ブロック共重合体の評価結果を表1に示す。該ブロック共重合体を用いて熱プレス後、打ち抜き加工により、厚さ300μmのガスケット状シール材を作製した。
上記ガスケット状シール材を用いて作製した固体高分子型燃料電池を、75℃に保持し、一方の電極側に73℃の露点となるよに加湿・加温した水素ガスを、もう一方の電極側に68℃の露点となるように加湿・加温した空気を供給した。その結果、電流を外部に出力しない無負荷時には、0.89Vの電池解放電圧を得た。
また、この電池の1,000時間の連続運転試験においてガスケット状シール部からのガスリークの有無を観察したが、水素ガスの漏れは検出されなかった。
【0039】
比較例1
シリコーンゴムを用いて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、シリコーンゴムを用いて作製したガスケット状シール材で構成した固体高分子型燃料電池を作製し、発電試験を行った。その結果、シリコン樹脂を用いたものは、初期は良好な特性が得られたが、1,000時間の連続運転試験後において、ガスケット状シール部分から水素ガスのリークが検出された。電池を分解観察したところシリコン製のガスケット部分が変質していたことが判明した。
【0040】
比較例2
EPDMゴムを用いて実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、EPDMゴムを用いて作製したガスケット状シール材で構成した固体高分子型燃料電池を作製し、発電試験を行った。その結果、初期は良好な特性が得られたが、1,000時間の連続運転試験後において、ガスケット状シール部分から水素ガスのリークが検出された。
【0041】
比較例3
ポリテトラフルオロエチレン(硬度:D50、引張破断強度:14MPa、引張破断伸び:200%、成形性:×)を用いて実施例1と同様に試験を行ったが、単電池の締め付け圧力を均一にするのが困難であり、組立直後からガスケット部分からの水素ガスのリークが検出された。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる固体高分子型燃料電池用シール材は、前記特定の構成からなっているため、成形性、リサイクル性、耐酸性、ガスバリア性、ゴム弾性などに優れており、自動車分野、携帯電子機器分野、家庭用発電機器分野、電気機器製品分野等に用いるよりなる固体高分子型燃料電池用のシール材として好適に用いることができる。また、本発明に用いる熱可塑性重合体組成物は、前記のとおり、簡便な方法により工業的に製造することができるため、該熱可塑性樹脂組成物から得られるシール材は固体高分子型燃料電池に好適に採用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池の単セルの断面概略図である。
【図2】ガスケット状シール材の形状概略図である。
【符号の説明】
1 バイポーラ板
2 アノード電極
3 カソード電極
4 高分子電解質膜
5 ガスケット状シール材
Claims (3)
- 芳香族ビニル化合物単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックと、イソブチレン単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックとからなるブロック共重合体を、50質量%以上含有する熱可塑性重合体(組成物)を熱成形してなることを特徴とする固体高分子型燃料電池用シール材。
- 芳香族ビニル化合物単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックと、イソブチレン単位を70質量%以上有する少なくとも1つの重合体ブロックとからなるブロック共重合体を、50質量%以上含有する熱可塑性重合体(組成物)を熱成形することを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用シール材の製造方法。
- 請求項1に記載のシール材を配置したことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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