JP4230174B2 - ベンゾフラン類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はベンゾフラン類の製造方法に関する。本発明により得られるベンゾフラン類は、例えば抗鬱薬として有用な2−ピペラジノベンゾフラン−5−カルボアミド類の合成中間体として有用である(ドイツ特許第19514567号明細書参照)。
【0002】
【従来の技術】
従来、ベンゾフラン類の製造方法として、▲1▼サリチルアルデヒド誘導体を、塩基の存在下に、ブロモ酢酸エステルと反応させ、生成したベンゾフラン−2−カルボン酸エステルを加水分解および脱炭酸する方法[ブリテン デ ラ ソシエテ ケミック デ フランス(Bull.Chim.Soc.Fr.)、2355頁(1973年)参照]、▲2▼p−メトキシフェニルオキシアセトアルデヒドジエチルアセタールを、等量のポリリン酸の存在下に環化させる方法(英国特許第2193211号明細書参照)などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼の方法は、原料として用いるサリチルアルデヒド誘導体が高価であるという問題点を有する。上記▲2▼の方法は、粘性が高く、取り扱いが困難なポリリン酸を原料に対して等量使用しているため、処理工程が煩雑なリン化合物を含有する廃液が大量に発生するという問題点を有する。したがって、これらの方法は、いずれもベンゾフラン類の工業的に有利な製造方法とは言い難い。
【0004】
しかして、本発明の目的は、ベンゾフラン類を、温和な条件下で、収率よく、工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、一般式(II)
【0006】
【化3】
【0007】
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシカルボニル基、一般式R5R6N−(式中、R5およびR6はそれぞれ水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で示される基または一般式R7CONH−(式中、R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で示される基を表し、R8およびR9はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基を表すか、または一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。]
で示されるアリールオキシアセトアルデヒドアセタール[以下、これをアリールオキシアセトアルデヒドアセタール(II)と称することがある]を該アリールオキシアセトアルデヒドアセタール(II)に対して等モル未満のリン酸系化合物の存在下に環化させることを特徴とする一般式(I)
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記定義のとおりである。)
で示されるベンゾフラン類[以下、ベンゾフラン類(I)と称する]の製造方法を提供することにより達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記一般式において、R1、R2、R3およびR4が表すハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0011】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9がそれぞれ表すアルキル基としては、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。 これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0012】
R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7がそれぞれ表すアルケニル基としては、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オクテニル基などが挙げられる。これらのアルケニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0013】
R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7がそれぞれ表すアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、アラルキル基としては、アルキル部分として炭素数1〜6のアルキル基を有し、かつアリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばベンジル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。これらのアリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの好ましくは炭素数1〜8のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0014】
R1、R2、R3およびR4がそれぞれ表すアルコキシル基としては、炭素数1〜8の鎖状のアルコキシル基または炭素数3〜6のシクロアルキルオキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0015】
R1、R2、R3およびR4がそれぞれ表すアリールオキシ基としては、アリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられ、アラルキルオキシ基としては、アルキル部分として炭素数1〜6のアルキル基を有し、かつアリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばベンジルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基などが挙げられる。これらのアリールオキシ基およびアラルキルオキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの好ましくは炭素数1〜8のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0016】
R1、R2、R3およびR4がそれぞれ表すアルキルカルボニル基としては、アルキル部分として炭素数1〜8のアルキル基を有するものが好ましく、例えばアセチル基、プロピオニル基などが挙げられる。これらのアルキルカルボニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0017】
R1、R2、R3およびR4がそれぞれ表すアリールカルボニル基としては、アリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばベンゾイル基などが挙げられ、アラルキルカルボニル基としては、アルキル部分として炭素数1〜6のアルキル基を有し、かつアリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばベンジルカルボニル基などが挙げられる。これらのアリールカルボニル基およびアラルキルカルボニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの好ましくは炭素数1〜8のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0018】
R1、R2、R3およびR4がそれぞれ表すアルコキシカルボニル基としては、アルキル部分として炭素数1〜8のアルキル基を有するものが好ましく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基などが挙げられる。これらのアルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0019】
R1、R2、R3およびR4がそれぞれ表すアリールオキシカルボニル基としては、アリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられ、アラルキルオキシカルボニル基としては、アルキル部分として炭素数1〜6のアルキル基を有し、かつアリール部分として炭素数6〜10のアリール基を有するものが好ましく、例えばベンジルオキシカルボニル基、ナフチルメチルオキシカルボニル基などが挙げられる。これらのアリールオキシカルボニル基およびアラルキルオキシカルボニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの好ましくは炭素数1〜8のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの好ましくは炭素数1〜4のアルコキシル基;ニトロ基などが挙げられる。
【0020】
R8およびR9が一緒になって表すアルキレン基としては、炭素数2〜6の鎖状のアルキレン基が好ましく、例えばエチレン基、トリメチレン基、2−メチルプロピレン基、2−エチルプロピレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばフェニル基などの好ましくは炭素数6〜10のアリール基などが挙げられる。
【0021】
リン酸系化合物としては、例えばオルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸などが挙げられ、これらの中でもオルトリン酸が好ましい。本発明の方法においては、リン酸系化合物の使用量は、アリールオキシアセトアルデヒドアセタール(II)に対して等モル未満の量である。特に、その使用量が多くなれば、リン化合物を含有する廃液が有意の量で生成する観点から、0.01〜0.3倍モルの範囲が好ましい。
【0022】
反応は溶媒の存在下に行うのが好ましい。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。溶媒は1種類を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよく、これらの中でも芳香族炭化水素が好ましい。溶媒の使用量は特に制限されないが、アリールオキシアセトアルデヒドアセタール(II)に対して、1〜100質量倍の範囲が好ましく、2〜20質量倍の範囲がより好ましい。
【0023】
反応温度は、使用する溶媒の種類によっても異なるが、0℃から反応系の還流温度の範囲が好ましい。反応は加圧状態または減圧状態で行うこともできる。また、反応時間は、反応温度によっても異なるが、30分〜24時間の範囲内が好ましい。
【0024】
反応は、例えば、アリールオキシアセトアルデヒドアセタール(II)、リン酸系化合物および必要に応じて溶媒を混合し、所定温度で攪拌することにより行うことができる。反応の進行に伴いアルコールが生成するが、好ましくは該アルコールを反応系外に除去しながら反応を行うと、収率よくベンゾフラン類(I)を得ることができる。アルコールを反応系外に除去する方法は特に制限されないが、例えば、反応において、生成するアルコールよりも高沸点の溶媒を使用し、該アルコールの沸点以上の温度に加熱して、該アルコールを留去しながら反応を行う方法などが挙げられる。
【0025】
こうして得られたベンゾフラン類(I)の反応混合物からの単離・精製は、有機化合物の単離・精製において通常用いられている方法と同様にして行うことができる。例えば、反応混合物を室温まで冷却し、水、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水などで洗浄した後、濃縮し、得られた残留物を蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0026】
本発明の方法で原料として用いるアリールオキシアセトアルデヒドアセタール(II)は、例えば、フェノール類を塩基の存在下にハロゲノアセトアルデヒドジアルキルアセタール類と反応させることにより、容易にかつ安価に合成することができる。[ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(J.Med.Chem.)、28巻、347頁(1985年)参照]。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0028】
実施例1
蒸留装置、滴下ロート、温度計およびマグネチックスターラを備えた内容積200mlの3口フラスコに、85質量%オルトリン酸0.58g(5.0mmol)およびトルエン80gを入れ、110℃に加熱して還流させた。この混合液に、4−メチルフェノキシアセトアルデヒドジメチルアセタール9.80g(50.0mmol)をトルエン8gに溶解させた溶液を5時間かけて滴下し、生成するメタノールを反応系外に留去した。滴下終了後、生成するメタノールを反応系外に留去しながら、さらに1時間加熱還流したところ、4−メチルフェノキシアセトアルデヒドジメチルアセタールの転化率は99.9%以上であった。得られた反応混合物を20℃まで冷却し、水50mlを添加した後、トルエンで抽出した(50ml×2)。得られた抽出液を2質量%炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、濃縮して6.60gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、5−メチルベンゾフランが5.48g(4−メチルフェノキシアセトアルデヒドジメチルアセタール基準で収率83.0%)生成していた。
【0029】
実施例2
蒸留装置、滴下ロート、温度計およびマグネチックスターラを備えた内容積200mlの3口フラスコに、85質量%オルトリン酸0.47g(4.0mmol)およびトルエン70gを入れ、110℃に加熱して還流させた。この混合液に、m−メトキシフェニルオキシアセトアルデヒドジメチルアセタール8.48g(40.0mmol)をトルエン6.3gに溶解させた溶液を5時間かけて滴下し、生成するメタノールを反応系外に留去した。滴下終了後、生成するメタノールを反応系外に留去しながら、さらに1時間加熱還流したところ、m−メトキシフェニルオキシアセトアルデヒドジメチルアセタールの転化率は99.9%以上であった。得られた反応混合物を20℃まで冷却し、水40mlを添加した後、トルエンで抽出した(40ml×2)。得られた抽出液を2質量%炭酸水素ナトリウム水溶液40mlで洗浄し、濃縮して5.82gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、6−メトキシベンゾフラン2.82gおよび4−メトキシベンゾフラン0.50gが生成していた(両者の合計収率はm−メトキシフェニルオキシアセトアルデヒドジメチルアセタール基準で56.1%)。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、ベンゾフラン類(I)を、温和な条件下で、収率よく、工業的に有利に製造することができる。
Claims (2)
- 一般式(II)
- リン酸系化合物が、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
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