JP4230054B2 - ポリエステル樹脂水性分散体の転写リボン用コーティング被膜への使用方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂水性分散体の転写リボン用コーティング被膜への使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱溶融型あるいは熱昇華型転写リボンのアンカーコート層、インキ層又は保護コート層等に有用な水性のコーティング組成物に関するものであり、さらに詳しくは、熱転写性は勿論、転写される画像の耐水性及び耐薬品性を向上させることのできる、転写リボン用コーティング組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転写リボンのうちの「熱溶融型転写リボン」と称されるものは、極薄のPETフィルムのようなベースフィルムの片面に耐熱層(バックコート層)が設けられ、その反対側の面に(必要があれば、アンカーコート層を介して)ワックス等のバインダー成分を含むインキ層が設けられた、積層構造を持つリボン状のものである。使用に際しては、専用のプリンターに装着され、印字時には、リボンと記録材(被転写材)とが重ね合わされて、サーマルヘッドとブラテンとの間を連続的に通過し、印字したい部分のみにサーマルヘッドから瞬時に熱量が与えられ、インキ層のバインダー成分が軟化あるいは溶融することで記録材に転写され、画像が形成される。このような熱溶融型の転写方式(単に、感熱転写方式とも呼ばれる)は、特殊な記録材を必要とせず、しかも連続で高速印刷が可能であり、形成される画像の信頼性が高いことから、乗車券や各種バーコードの印字用として、熱溶融型転写リボンが近年大量に使用されている。
一方、転写リボンのうちの「熱昇華型転写リボン」と称されるものは、「熱溶融型転写リボン」と同様、極薄のPETフィルムの片面に耐熱層(バックコート層)が設けられ、その反対側の面に(必要があれば、アンカーコート層を介して)熱昇華可能な染料が分散された染料層が設けられた積層構造を持つリボン状のものである。使用に際しては、熱転写用のプリンターに装着され、印字時には、上記染料を受容し易い特殊な受像層が形成された記録材(被写材)と上記転写リボンとが重ね合わされて、サーマルヘッドとブラテンとの間を連続的に通過し、印字したい部分のみにサーマルヘッドから瞬時に熱が加えられ、染料層の染料が昇華して記録材表面の受像層に転写され、画像が形成される。熱昇華型転写リボンを用いる熱昇華型の転写方式(単に、昇華転写方式とも呼ばれる)は、上記したような特殊な記録材を必要とするものの、カラー化も可能であり、得られる画像の解像度が写真並みに高められる可能性があることから、次世代の記録方式として、特に開発が盛んに行われている。
【0003】
ところで、上記した熱溶融型転写リボンにおいては、製造工程を管理するバーコード印字用として使用する場合には、製造工程においてバーコードごと各種有機溶剤で洗浄されたり、また、石油、ガソリン等の有機化合物を充填したドラム缶等の流通用の商品ラベル及びバーコード印字用として使用する場合には、充填時等に内容物が接触することもあることから、転写されて形成される画像には、高度な耐薬品性、耐擦過性等が要求される。これに対して、例えば、特開昭63−230392号公報、特開平1−141788号公報等には、インキ層のバインダー成分として、従来のワックスではなく特定の樹脂を使用することが開示されている。また、特公平5−15196号公報等には、特定のポリエステル樹脂をインキ層のバインダー成分として使用することが開示されている。
【0004】
また、一方の熱昇華型転写リボンを用いる転写方式においても、転写されて形成された画像の退色を防ぐと共に外的要因から保護する目的で、画像を形成した後にその上から保護コート層を転写することが提案されている。具体的には、熱昇華型転写リボンに染料層のみを連続的に設けるのではなく、一定長さの染料層と保護コート層を交互に設けておき、熱転写プリンターを用いて、まず、記録材にリボンの染料層部分を重ね、染料を昇華させて記録材に画像を形成しておき、次いでリボンの保護コート層部分を重ね、感熱転写方式で、すなわち、保護コート層を熱軟化あるいは溶融させて、保護コート層を形成させるのである。
【0005】
しかしながら、熱溶融型転写リボンにおいて、形成される画像の特に耐薬品性を向上させようとすると、インキ層のバインダー成分としてのポリエステル樹脂を高分子量化し、しかもそのガラス転移温度をかなり高く設定しなければならず、その結果、転写に大きな熱量を要することになり、高速印刷ができないという問題が生じる。また、ポリエステル樹脂を汎用の有機溶剤に溶かし、これに着色剤成分を加えて分散させる際には、着色剤を均一分散させるうえで、また、分散液の粘度を適正に保つうえで界面活性剤等の分散剤を配合する必要があったが、このような分散剤が画像の耐薬品性等を低下させるという問題があった。このような問題に対して、上記特公平5−15196号公報では、インキ層のバインダー成分として、ガラス転移温度が40℃以上で、かつ数平均分子量が10,000以下のポリエステル樹脂を使用することが提案されている。しかし、この場合には、高速印字性はある程度改善されるものの、上記公報の記載によれば該ポリエステル樹脂が有機溶剤に溶解されて使用されることから、転写されて得られる画像の耐薬品性、特に耐有機溶剤性に劣るという問題があった。
さらには、用途の多様化に対して、様々な記録材に転写したいという要求が高まっているが、従来の方法ではこの要求に十分に応えられる熱溶融型転写リボンを提供することができなかった。
また、一方の熱昇華型転写方式においても、保護コート層に要求される耐薬品性は、熱溶融型転写リボンで形成される画像のそれよりもさらに高いレベルにあり、良好な熱転写特性を有しながら耐薬品性をも満足するバインダー成分は未だ知られていなかった。
【0006】
ところで、本発明者らは先に、ポリエステル樹脂が特定量の酸価を有しておれば、これを液状化せずにペレット状〜粒状で水性化処理に供しても、ポリエステル樹脂に対して可塑化能力を有する特定の両親媒性の有機化合物(有機溶剤)及び塩基性化合物を用いて、樹脂のガラス転移温度もしくは60℃のうちの高い方の温度以上に加熱し、しかも所定の条件で撹拌すれば、驚くほどの速さで水性化が進行することを見いだし、得られたポリエステル樹脂水分散体中の樹脂粒子の粒径分布を最適化し、さらにポリエステル樹脂の分子量分布を制御するか、あるいは、水性化の際に特定の保護コロイド作用を有する化合物をごく少量併用すれば、水分散体の貯蔵安定性が著しく向上し、しかも形成される被膜はポリエステル樹脂が本来有する優れた性能を発現することをも見いだし特許出願した(特開平9−296100号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の本発明者らの発明した方法によれば、有機溶剤に溶解し難いポリエステル樹脂であっても、均一で安定なポリエステル樹脂水分散体を得ることができるので、これより得られる被膜を上記のような転写用リボンにおけるインキ層や保護コート層のバインダー成分として使用すれば、熱転写されて形成される画像(以下、転写画像と略記することがある)の耐薬品性を向上できる可能性がある。しかしながら、上記のポリエステル樹脂水分散体を主体としたコーティング組成物を使用する場合には、コーティング後の乾燥を比較的高温で長時間行ったり、これを用いた転写リボンから熱転写させる時の熱量を大きくしなければ、転写画像の耐水性や耐薬品性において必ずしも満足なものが得られず、したがって転写リボンの製造上の問題や、高速印字した際に問題が生じるおそれがある。
以上のような状況に鑑みて、本発明の課題は、熱溶融型転写リボンのアンカーコート層もしくはインキ層を形成するのに用いられ、又は熱昇華型転写リボンの保護コート層を形成するのに用いられ、低熱量であっても熱転写でき、幅広い種類の記録材に対して転写でき、熱転写によって鮮明な画像が得られ、しかも、転写画像の性能、特に耐薬品性、耐擦過性において優れた転写リボンが得られる転写リボン用コーティング組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、高分子量のポリエステル樹脂の水分散体より得られる被膜は、幅広い種類の記録材に対する密着性が優れていると同時に、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させたものより得られる被膜と比較して、低熱量での転写性において著しく優位にあることを見いだし、また、被膜を形成させる際には、低温・短時間の乾燥処理であっても、水、塩基性化合物及び有機溶剤を共沸させ、乾燥後の被膜中に残存する水及び有機溶剤の量を著しく低下させることによって被膜の耐水性や耐薬品性を十分に発現させ得ることを見いだし、さらに、ポリエステル樹脂の特性を低下させるような分散剤を使用することなく着色剤をも均一に分散させることに成功し、本発明を完成するに到った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、下記(A)〜(D)の成分が含有されてなり、かつ(A)の成分100重量部に対して(B)の成分の量が0〜45重量部であり、かつコーティング組成物に対して(D)の成分の含有率が0.5〜50重量%であり、ポリエステル樹脂粒子又は、ポリエステル樹脂粒子及び着色剤が水性媒体中に分散してなることを特徴とする転写リボン用コーティング組成物である。
(A)多塩基酸成分と多価アルコール成分とより構成され、酸価が8〜40mgKOH/gであり、ガラス転移温度が10℃以上であり、数平均分子量が2,000〜15,000であるポリエステル樹脂。
(B)着色剤。
(C)アンモニア又は沸点が160℃以下の有機アミン化合物からなる、塩基性化合物。
(D)ケトン、アルコール、グリコール誘導体から選択される150℃以下の沸点を有する有機溶剤。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のコーティング組成物に含有される各成分について説明する。
(A)成分
本発明におけるポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分より構成され、本来それ自身で水に分散又は溶解しないものである。また、水分散体を形成する際の親水基としてのカルボキシル基を有するものである。
【0011】
本発明におけるポリエステル樹脂としては、多塩基酸と多価アルコールとを用いて、あるいはそれらのエステル形成性誘導体を用いて合成することができる。
そのような多塩基酸としては、芳香族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸を挙げることができる。具体的な化合物では、芳香族多塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類が挙げられ、脂肪族多塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アイコサン二酸、水添ダイマー酸等の飽和ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の不飽和の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられ、脂環族多塩基酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸及びその無水物、テトラヒドロフタル酸及びその無水物等の脂環族ジカルボン酸類が挙げられる。また、樹脂の耐水性を損なわない範囲で、必要に応じて少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。
【0012】
上記した多塩基酸の中でも、芳香族多塩基酸を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の割合としては、60モル%以上であることが好ましい。この値が60モル%未満の場合には、コーティング組成物から形成されて得られる被膜(以下、被膜形成物と略記することがある)又は転写画像の耐水性、耐薬品性が劣るばかりでなく、コーティング組成物をアンカーコート層として用いた場合、ベースフィルムであるポリエステルフィルムとの密着性が低下する傾向があるので好ましくない。また、芳香族多塩基酸成分の割合が低いと、脂肪族及び脂環族のエステル結合が芳香族エステル結合に比して加水分解しやすいことから、そのようなポリエステル樹脂を含有したコーティング組成物の貯蔵安定性が低下することがあるため、ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分に占める芳香族多塩基酸成分の割合としては、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上が特に好ましい。さらに、他の性能とバランスをとりながら被膜形成物及び転写画像の耐水性、耐薬品性、耐擦過性等を向上させることができる点において、テレフタル酸を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分に占めるテレフタル酸成分の割合としては、50モル%以上が好ましく、転写画像の耐擦過性を向上させるという点からは、65モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。
【0013】
また、多価アルコールとしては、炭素数2〜10の脂肪族グリコール、炭素数6〜12の脂環族グリコール、エーテル結合含有グリコール等を挙げることができる。具体的な化合物では、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール等が挙げられ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エーテル結合含有グリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにはビスフェノール類の2つのフェノール性水酸基にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドをそれぞれ1〜数モル付加して得られるグリコール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられるが、エーテル構造は被膜形成物又は転写画像の耐水性、耐候性を低下させる場合があることから、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としてのエーテル結合含有グリコールの使用量は、全多価アルコール成分の10重量%以下、さらには5重量%以下にとどめることが好ましい。
なお、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて使用することができる。
【0014】
上記した多価アルコールの中でも、エチレングリコールを用いることが好ましく、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分に占めるエチレングリコール成分の割合としては、40モル%以上、特に50モル%以上であることが、被膜形成物及び転写画像の諸性能にバランスが取れ、耐水性及び耐薬品性を向上させるという点で好ましい。エチレングリコールは工業的に多量に生産されていて安価であるという長所も有しているので好ましい。
【0015】
また、多塩基酸又は多価アルコールとしては、3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールを使用してもよい。そのような3官能以上の多塩基酸としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられ、3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。このとき、3官能以上の多塩基酸又は多価アルコールの使用量としては、ポリエステル樹脂を構成する多塩基酸成分又は多価アルコール成分に対し10モル%以下、さらには5モル%以下となる範囲にとどめることが好ましく、10モル%を超えると、ポリエステル樹脂の低温での軟化性が劣り、その結果として低熱量での転写性が十分に発現し難くなる傾向にあるので好ましくない。
【0016】
なお、ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、多塩基酸以外に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等の高沸点のモノカルボン酸を使用してもよい。
また、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等の高沸点のモノアルコールを使用してもよい。
このとき、上記したモノカルボン酸又はモノアルコールの使用量としては、ポリエステル樹脂を構成する全酸成分又は全アルコール成分に占めるモノカルボン酸成分又はモノアルコール成分の割合がそれぞれ5モル%以下となるような範囲にとどめることが好ましい
【0017】
さらに、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0018】
本発明におけるポリエステル樹脂の酸価の範囲としては、8〜40mgKOH/gであることが必要があり、10〜36mgKOH/gが好ましく、10〜28mgKOH/gがより好ましい。この酸価が40mgKOH/gを超えると、コーティング組成物から被膜を形成させて乾燥する際に、被膜から水、塩基性化合物及び有機溶剤が揮発し難く、結果として被膜形成物や転写画像の耐水性及び耐薬品性が低下する。一方、酸価が8mgKOH/g未満の場合には、水性媒体中に分散させるのに寄与するカルボキシル基量が十分でなく、ポリエステル樹脂微粒子を水性媒体中に安定して分散させることができず、また、着色剤の分散状態が悪くなる場合がある。
【0019】
また、着色剤を良好にさせる点及び幅広い種類の記録材に対する転写画像の密着性を向上させる点で、特にポリエステル樹脂の分子量が5,000以下の場合には、水酸基価が上記の分散性や密着性に顕著な影響を与えるので、この場合のポリエステル樹脂の水酸基価としては、3mgKOH/g以上であることが好ましく、4mgKOH/g以上がより好ましく、5mgKOH/g以上がさらに好ましい。
【0020】
また、本発明におけるポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、DSC(示差走査熱量)分析で測定されるガラス転移温度が10℃以上である必要がある。ガラス転移温度が10℃未満の場合には、転写画像や保護コート層が十分な熱量で転写された場合であっても、その耐薬品性は勿論、耐水性や耐擦過性が不足する。特に、転写リボンの最外層に本発明のコーティング組成物が使用される場合において、保存中の耐ブロッキング性を向上させる点からも、ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
【0021】
さらに、本発明におけるポリエステル樹脂の数平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC,流出液:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)で求められる数平均分子量が2,000〜15,000であることが必要であり、3,000〜14,000が好ましく、3,500〜13,000が特に好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が15,000を超えると、低熱量での転写性が低下し、また、コーティング組成物の粘度が異常に高くなったり、着色剤の分散が上手く進まなかったりといった不都合を生じる場合もある。一方、2,000未満の場合には、被膜形成物や転写画像の耐薬品性等が不足する。
なお、ポリエステル樹脂がテトラヒドロフランに溶解せず、上記の数平均分子量を測定できない場合には、ポリエステル樹脂をフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの等重量混合溶媒に1重量%の濃度で溶解し、ウベローデ粘度管を用いて20℃で測定した相対粘度で代用できる。この場合においては、数平均分子量が2,000〜15,000であることに対して、相対粘度が1.15〜1.40であることで代用する。上記の相対粘度の測定に際しては、ポリエステル樹脂0.50gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン等重量比の混合溶媒100gに溶解させ、これをウベローデ粘度管を用いて20℃で測定した流下時間を、上記混合溶媒の流下時間で除した値を求め、これを相対粘度とする。
【0022】
また、本発明におけるポリエステル樹脂の分子量の多分散度(重量平均分子量を数平均分子量で除した値)としては、2.5〜4.0であることが好ましく、2.6〜3.8がより好ましく、2.8〜3.6が特に好ましい。この値は、熱転写の際に熱が加えられた部分とそうでない部分との境界での被膜形成物の切り離されやすさ、すなわちキレに影響を与え、特に本発明のコーティング組成物をインキ層の形成に用いた場合には、転写画像の解像度(鮮明さ)に影響を与える。上記の多分散度が4.0を超えると、低熱量時の転写でキレが劣る傾向にあるので好ましくない。一方、2.5未満の場合には、キレは良いが、耐水性や耐薬品性に劣る場合があるので好ましくない。このポリエステル樹脂の多分散度を制御すれば、樹脂の構成等を変えることなしに、転写性や転写画像の性能を向上させることができる。
【0023】
本発明におけるポリエステル樹脂を合成する方法としては、公知の方法を応用すればよい。例えば、(ア)全モノマー成分又はその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応を行い、引き続いてエステル交換反応触媒の存在下、1Torr以下の減圧下に220〜280℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法、(イ)前記重縮合反応を、目標とする分子量に達する以前の段階で終了し、反応生成物を次工程でエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ビスオキサゾリン系化合物等から選ばれる鎖長延長剤と混合し、短時間反応させることにより高分子量化を図る方法、(ウ)前記重縮合反応を目標とする分子量以上の段階まで進めておき、モノマー成分をさらに添加し、不活性雰囲気、常圧〜加圧系で解重合を行うことで目標とする分子量のポリエステル樹脂を得る方法等を用いることができる。
【0024】
なお、ポリエステル樹脂において、水性媒体中に分散(以下、水性化)させるために必要なカルボキシル基は、樹脂骨格中に存在するよりも樹脂分子鎖の末端に偏在していることが、形成される被膜の耐水性、耐薬品性等の面から好ましい。副反応やゲル化等を伴わずに、そのようなポリエステル樹脂を得る方法としては、(ア’)上記した方法(ア)において、重縮合反応開始時以降に3官能以上の多塩基酸またはそのエステル形成性誘導体を添加するか、あるいは、重縮合反応の終了直前に多塩基酸の酸無水物を添加する方法、(イ’)上記した方法(イ)において、大部分の分子鎖末端がカルボキシル基である低分子量ポリエステル樹脂を鎖長延長剤により高分子量化させる方法、(ウ’)上記した方法(ウ)において、解重合剤として多塩基酸またはそのエステル形成性誘導体を使用する方法等を用いることができる。さらに、上記した分子量分布の多分散度を、通常の重縮合反応で得られる値(約2)よりも高い値に制御するためには、競争反応として起こるエステル交換反応が十分進行しない状態で上記(ア’)〜(ウ’)を終了させることが望ましい。
【0025】
本発明のコーティング組成物中における(A)成分であるポリエステル樹脂の含有率としては、転写リボンの構成、その用途と要求性能、形成される被膜の膜厚等によって適宜選択されるが、一般的には0.5〜50重量%とすることが好ましく、1〜40重量%がより好ましい。本発明のコーティング組成物は、例えばポリエステル樹脂の含有率が20重量%以上というような高固形分濃度であっても、貯蔵安定性に優れるという長所を有するが、ポリエステル樹脂の含有率が50重量%を超えると、コーティング組成物の粘度が著しく高くなり、実際にコーティングすることが困難となってしまう場合があるので好ましくない。
【0026】
(B)成分
本発明のコーティング組成物には、必要に応じて着色剤が含有される。着色剤としては、転写リボン用途に通常使用される染料や顔料であれば特に限定されないが、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、オイルブラック、ハンザイエロー、オイルイエロー2G、ピラゾロンオレンジ、オイルレッド、ベンガラ、アンスラキノンバイオレット、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、パール粉末、磁性粉末等を例示できる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、分散性や樹脂との結着力を向上させる目的で、着色剤表面がカップリング剤や高分子等で処理されたものであってもよい。
なお、着色剤の粒子の大きさとしては、その平均一次粒子径が5μm以下であることが好ましく、2μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
【0027】
着色剤の使用量としては、転写リボンの構成、その用途と要求性能、被膜形成物の膜厚等によって適宜選択されるが、上記の(A)成分であるポリエステル樹脂100重量部に対して、45重量部以下とする必要があり、35重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましい。45重量部を超えると、着色剤の分散状態が悪くなり、また、均一な厚さの被膜を形成できず、転写画像の耐擦過性が低下する。
【0028】
(C)成分
本発明のコーティング組成物において、塩基性化合物は、ポリエステル樹脂を水性化させる際に、ポリエステル樹脂を中和させるための成分として必要である。本発明においては上記の中和反応、すなわち塩基性化合物とポリエステル樹脂中の親水基であるカルボキシル基との中和反応が水性化の起動力であり、しかも中和反応で生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子間の凝集を防ぐことができる。
また、塩基性化合物が被膜形成物中や転写画像中に残存すると、それらの耐水性や耐薬品性を低下させるため、本発明における塩基性化合物としては、乾燥によって揮散させ易い化合物としてのアンモニア又は有機アミン化合物からなることが必要である。上記の有機アミン化合物の沸点としては、160℃以下であることが必要である。沸点が160℃を超えると、乾燥による揮散が困難になり、被膜形成物中や転写画像中に多く残存して、それらの耐水性や耐薬品性を性能を低下させる。また、水と共沸可能な有機アミン化合物であることが好ましい。
【0029】
本発明に好ましく用いられる塩基性化合物を具体的に例示すれば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン、プロピレンジアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピペリジン等が挙げられ、これらの塩基性化合物を、単一で、又は複数の種類のものを混合して用いることができる。
【0030】
本発明のコーティング組成物における(B)成分である塩基性化合物の含有率としては、(A)成分であるポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基の量に応じて、少なくともこれを部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.2〜1.5倍当量であることが好ましく、0.4〜1.3倍当量がより好ましい。0.2倍当量未満では塩基性化合物添加の効果が認められない場合があり、一方1.5倍当量を超えると、コーティング組成物が著しく増粘する場合があるので好ましくない。
なお、ここで言う塩基性化合物の含有率としては、上記の中和反応によってカルボン酸塩を生成するのに消費された分も含めて計算された値とする。すなわち、コーティング組成物を得る際に添加された塩基性化合物の添加量から計算された値とする。
【0031】
(D)成分
本発明のコーティング組成物において、ポリエステル樹脂の水性化を促進させる成分として、有機溶剤が含有されていることが必要である。さらに、それ自身が被膜形成物から揮発し易く、しかも水と共沸して水の揮発を促進させる作用を有する成分としての有機溶剤としては、ケトン、アルコール、グリコール誘導体から選択される150℃以下の沸点を有する有機溶剤であることが必要であり、アルコールが特に好ましい。有機溶剤がケトン、アルコール、グリコール誘導体から選択される150℃以下の沸点を有する有機溶剤でなければ、コーティング組成物のコーティング特性が低下して、コーティング時にハジキや泡が発生する場合があり、また、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。また、有機溶剤の沸点としては、130℃以下が好ましく、110℃以下が特に好ましい。
上記の(D)成分である有機溶剤の含有率としては、コーティング組成物に対して0.5〜50重量%であることが必要であり、好ましくは5〜45重量%であり、特に好ましくは10〜40重量%である。有機溶剤の含有率が0.5重量%未満では、コーティング組成物のコーティング特性が低下する。一方、含有率が50重量%を超えると、コーティング組成物の安定性が損なわれる。
【0032】
本発明に用いることのできる有機溶剤を具体的に例示すれば、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール等が挙げられ、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられ、グリコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
なお、有機溶剤としては、単一でも、また複数の種類のものを混合して用いてもよい。
【0033】
次に、上記の各成分を水性媒体中に含有させて本発明のコーティング組成物を得る方法について説明する。
本発明においては、かかるコーティング組成物を得る方法については、特に限定されず、当業者に広く知られた方法を採用することができる。例えば、上記の(A)成分の全量と、(C),(D)の成分の全量もしくは一部の量と、水とを用いて、まずポリエステル樹脂水分散体を製造しておき、これをさらに水や有機溶媒剤で希釈したり、あるいは(B)成分の着色剤や他の成分をさらに加えてもよい。このとき、(D)成分の有機溶剤としては、過剰量を用いておいて、後でストリッピングによってその量を低減させてもよい。
【0034】
また、ポリエステル樹脂を水性化させて水分散体を製造する方法も特に限定されず、公知の方法を応用することができる。例えば、ポリエステル樹脂を上述の有機溶剤に溶解させた溶液あるいは溶融体を、上記の塩基性化合物や必要に応じて保護コロイド作用を有する化合物が添加され、しかも高速で撹拌されている水性媒体中に少量ずつ添加してゆく方法(強制乳化法)や、撹拌下の溶液あるいは溶融体中に水性媒体を少量ずつ添加して転相させて安定な水分散体を得る方法(転相乳化法)等を応用して行うことができる。
この場合、本発明においては、以下の理由から、特開平9−296100号公報に記載の方法が特に推奨される。すなわち、1)芳香族多塩基酸成分、特にテレフタル酸の含有率が高く、比較的高分子量のポリエステル樹脂であっても、特殊なモノマー成分や、被膜形成物中にイオン性基が残存するような構造をポリエステル樹脂中に一切、導入せず、しかも、界面活性剤のような低分子量の親水性化合物を外部添加しないでも水性化でき、2)(D)成分を、コーティング組成物に対して0.5〜50重量%含有するという条件を満足するように添加しても安定な水分散体を製造することができ、さらに、3)高固形分濃度であっても貯蔵安定性及び後で他成分を添加する際の混合安定性に極めて優れた水分散体を、4)特殊な設備を使用せず、しかも比較的単純な工程で安定した品質で生産できる方法であるため、本発明のコーティング組成物の製造における方法として好ましい。また、この方法においては、粗大なポリエステル樹脂粉末ないし粒状物を出発原料として用いて行っても、ポリエステル樹脂が微粒子化された水分散体を得ることができる。
なお、この方法において出発原料として用いるポリエステル樹脂粉末ないし粒状物の大きさを、立方体形状に換算した一辺の長さで表わすと、その長さとしては、8mm以下であることが好ましく、1〜5mmがより好ましく、1.5〜3mmが特に好ましい。
【0035】
上記の好ましい方法をより詳細に説明すると、ポリエステル樹脂粉末ないし粒状物を室温付近で水性媒体中に混合・粗分散させる分散工程と、これを撹拌しながら決められた温度まで加熱する加熱工程と、ポリエステル樹脂のガラス転移温度又は60℃のうちの高い方の温度〜90℃で所定の条件で撹拌してポリエステル樹脂を微粒子化する水性化工程と、これを40℃以下まで冷却する冷却工程という4工程から構成されており、これらの工程が連続で実施される。
これらの工程を行うための装置としては、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された水性媒体と樹脂粉末ないしは粒状物の混合物を適度に撹拌でき、槽内を60〜90℃に加熱できればよく、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られている装置を使用することができる。そのような具体的な装置としては、プロペラミキサー、タービンミキサーのような一軸の撹拌機、タービン・ステータ型高速回転式撹拌機(特殊機化工業製、「T.K.Homo−Mixer」「T.K.Homo−Jettor」、IKA−MASCHINENBAU社製、「Ultra−Turrax」等)、高速剪断型ミキサと槽壁面を掻き取るスクレーパ付き低速摺動型の混練パドルやアンカーミキサを併用した複合型撹拌機(特殊機化工業製、「T.K.Agi−Homo−Mixer」、「T.K.Combimix」等)を例示することができる。装置の方式としては、バッチ式であってもよく、原料投入と処理物の取り出しを連続で行うような連続生産式のものであってもよい。また装置の槽としては、密閉できる形式のものが好ましい。
【0036】
上記のポリエステル樹脂水分散体は、それ自身で本発明のコーティング組成物となり得るが、必要に応じてそれに(B)成分の着色剤が加えられて、着色剤を含有するコーティング組成物が得られる。着色剤を加えてこれを分散させるためには、顔料等の分散機として当業者に広く知られている装置を使用することができる。かかる装置を例示すると、分散媒体間の相対速度によって生じる剪断作用を利用するものとしては、サンドミル、アトライタ、ボールミル等があり、回転体間の間隙を通過する際の剪断作用又は衝撃作用を利用するものとしては、上記したような固/液撹拌装置や乳化機、ケディーミル、3本ロールミル等がある。これらの装置を利用する際は、ポリエステル樹脂水分散体と着色剤、あるいは必要に応じて(C),(D)の成分や水とをプレミックスしておき、これを着色剤が水性媒体中に分散されるように処理する。
【0037】
なお、本発明のコーティング組成物を製造するときに、上記のポリエステル樹脂水分散体の25℃における波長750nmの光に対する光透過率としては、5〜85%であることが好ましく、10〜80%がより好ましい。上記の光透過率の条件が満たされれば、ポリエステル樹脂水分散体に着色剤を加えて機械的な作用によってこれを分散させる場合でも、ポリエステル樹脂粒子の凝集、破壊等が発生せず、しかも界面活性剤等の分散剤を使用しなくても着色剤を分散させることができるので、被膜形成物や転写画像の性能、特に耐水性及び耐薬品性が分散剤によって損なわれることがない。光透過率が85%を超えると、着色剤を添加したり機械的にこれを分散させる際にポリエステル樹脂粒子の凝集が発生する場合があり、一方、5%未満では、機械的に分散させる際にポリエステル樹脂粒子が破壊される場合があるので好ましくない。
【0038】
次に、本発明の転写リボン用コーティング組成物についてさらに詳細に説明する。
本発明のコーティング組成物は、ポリエステル樹脂粒子又は、ポリエステル樹脂粒子と着色剤とが、水性媒体中に分散してなるものであり、外観上、コーティング組成物中に沈澱や層分離、あるいは皮張りといった、構成成分の濃度が局部的に他の部分と相違する部分が見いだされない状態にあることが好ましい。また、コーティング組成物にはポリエステル樹脂や着色剤等の固形分の粗大な粒子が含まれないことが好ましく、具体的には、コーティング組成物を635メッシュのステンレス製フィルター(線径0.020mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)した際に、フィルター上に残存する固形分の重量としては、コーティング組成物に含有される固形分の重量に対して、3%未満であることが好ましい。
なお、本発明のコーティング組成物を製造する場合には、必要に応じて、上記の加圧濾過等によって固形分の粗大な粒子を取り除く工程を追加してもよい。
【0039】
また、本発明のコーティング組成物の粘度としては、コーティング方法、目的とする被膜の厚み等にもよるが、フォードカップNo.4を用いて測定される20℃における粘度が12秒〜90秒であることが好ましく、14〜60秒が特に好ましい。この粘度が12秒未満ではコーティング時あるいは乾燥時にハジキが発生する場合があるので好ましくない。一方90秒以上では、粘度が高すぎて、コーティングに使用するのが困難な傾向にあるので好ましくない。
なお、コーティング組成物の粘度は、使用するポリエステル樹脂及び着色剤の諸特性、含有率、有機溶剤の種類や含有率等によって制御することができる。
【0040】
さらに、本発明のコーティング組成物には、必要に応じて硬化剤、他の水性樹脂又は形成される被膜に機能を付与するための各種の機能性付与剤や添加剤等を添加することができる。そのような硬化剤としては、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、多官能エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物及びその各種ブロックイソシアネート化合物、多官能アジリジン化合物等をあげることができ、必要に応じて反応触媒や促進剤をこれらと併用することができる。また、他の水性樹脂としては、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂変性オレフィン樹脂、セルロース誘導体等があげられ、これらの水溶液又は水分散体を使用することができる。また、機能性付与剤としては、被膜形成物又は転写画像に帯電防止性、離型性、滑性、耐ブロッキング性、耐摩耗性、高硬度、高接着性又はマット調を付与できるもので、水性媒体に溶解するか、分散させられるものであれば任意のものを使用でき、添加剤としては、ハジキ防止剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、レオロジーコントロール剤等があげられる。
このとき、本発明のコーティング組成物から形成される被膜の性能を保つうえで、上記の硬化剤、他の水性樹脂、機能性付与剤及び添加剤の使用量の合計としては、ポリエステル樹脂100重量部に対して50重量部未満が好ましく、40重量部未満がより好ましい。
なお、本発明のコーティング組成物としては、上記したような硬化剤、他の水性樹脂又は各種の機能性付与剤や添加剤等が含有されたものも含まれる。
【0041】
次に、本発明のコーティング組成物を転写リボンに用いることについて説明する。
本発明のコーティング組成物は、転写性が要求される熱溶融型転写リボンのアンカーコート層もしくはインキ層として、又は熱昇華転写型転写リボンの保護コート層として使用できる。上記のいずれの型の転写リボンにおいても、ベースフィルムの片側の面に耐熱層(バックコート層)が必要に応じて形成され、その反対面には、必要があればアンカーコート層を介して、インキ層又は染料層及び保護コート層がそれぞれ積層された構造を有し、リボン状あるいはシート状とされている。上記のベースフィルムとしては、0.5〜20μmのPET、PEN等のポリエステルフィルムやセロファンが好ましく使用される。耐熱層(バックコート層)としては、保存中の耐ブロッキング性を付与し、サーマルヘッドに対するスティッキングを防ぐ目的で、好ましくは0.01〜5μm程度の厚さで形成される。耐熱層の材料としては、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等がシリコーンもしくは含フッ素樹脂で変成されたもの、又はこれらがブレンドされたもの等が好ましく用いられる。
【0042】
転写リボンを製造する方法としては、例えば上記したベースフィルムの耐熱層(バックコート層)の反対側の面に、本発明のコーティング組成物を、はけ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法もしくは各種印刷法等により均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥工程に供し、均一な被膜を形成させる。乾燥工程としては、通常、熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等により、好ましくは60〜160℃で数秒〜数十秒実施する。被膜(被膜形成物)の厚みとしては、コーティング方法や用途、要求性能によっても異なるが、0.01〜15μmが好ましい。また、被膜形成物の熱重量減少率としては、被膜形成物の耐水性及び耐薬品性に優れる点から、110℃の雰囲気下で30分間の熱処理を加えた際に、その重量減少率が5%以下であることが好ましく、3%以下がより好ましい。
【0043】
【作用】
本発明においては、ポリエステル樹脂を溶液すなわち有機溶剤に溶解されたものから被膜に賦形するのではなく、ポリエステル樹脂水分散体すなわちポリエステル樹脂の粒子が水性媒体中に分散したものから賦形することにより、形成される被膜の転写性、特にキレを著しく向上させることができ、この性質を利用することによって低熱量での転写性と画像性能とを向上させることに成功した。この転写性が著しく向上する理由については、次のように考えられる。すなわち、ポリエステル樹脂水分散体より賦形されて形成される被膜には、乾燥条件にもよるが、樹脂粒子間の界面が多かれ少なかれ残存する。この界面は乾燥過程で樹脂分子鎖の拡散が十分に進行しなかったために生成するもので、被膜としての凝集力の弱い部分である。したがって、転写リボンと記録材が重ねられてサーマルヘッドから熱が加えられ、加熱部分の樹脂が軟化して記録材側に接着して、その後に転写リボンと記録材が引き離される際に、樹脂−記録材間の接着力がさほど強くない場合でも、この樹脂粒子界面の凝集力が弱いために、この部分で被膜が切れ易く、結果として、低熱量でもキレの良い転写が可能になると考えられる。これに対して、樹脂を有機溶剤に均一に溶解させて賦形した場合には、形成される被膜にはこのような弱い部分は出来ないために、特に低熱量で転写させようとした場合、被膜が切れ難く、結果として転写できないか、キレが悪く不鮮明な転写になるいう問題が発生すると理解される。
【0044】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、各種の特性については、下記の方法によって分析又は評価した。ここで、転写画像の耐薬品性を評価するにあたっては、代表として特に厳しい耐アルコール性及び耐ガソリン性を評価した。
【0045】
(1)ポリエステル樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で8時間メタノール分解を行った後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析を行った。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂1gを50mlのジオキサン/水=9/1(容積比)混合溶媒に完全に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数を酸価として求めた。
(3)ポリエステル樹脂の水酸基価
ポリエステル樹脂3gを精秤し、無水酢酸0.6ml及びピリジン50mlとを加え、室温下で48時間攪拌して反応させ、続いて、蒸留水5mlを添加して、さらに6時間、室温下で撹拌を継続することにより、上記反応に使われなかった分の無水酢酸も全て酢酸に変えた。この液にジオキサン50mlを加えて、クレゾールレッド・チモールブルーを指示薬としてKOHで滴定を行い、中和に消費されたKOHの量(W1)と、最初に仕込んだ量の無水酢酸がポリエステル樹脂と反応せずに全て酢酸になった場合に中和に必要とされるKOHの量(計算値:W0)とから、その差(W0−W1)をKOHのmg数で求め、これをポリエステル樹脂のg数で割った値を水酸基価とした。
【0046】
(4)ポリエステル樹脂の数平均分子量及び分子量分布の多分散度
既に述べたように、GPC分析(島津製作所製の紫外−可視分光光度計を使用、検出波長254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(5)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキン エルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。
【0047】
(6)ポリエステル樹脂水分散体又はコーティング組成物の固形分濃度
ポリエステル樹脂水分散体又はコーティング組成物を適量秤量し、これを温度180℃で残存物(固形分)の重量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(7)ポリエステル樹脂水分散体の光透過率
ポリエステル樹脂水分散体をセル長0.2cmの石英製セルに入れ、波長750nmの光に対する温度25℃での光透過率を測定した。このとき、ブランクとしては蒸留水を用いた。
(8)ポリエステル樹脂水分散体又はコーティング組成物の粘度
フオードカップNo.4を用いて、JIS K5400によって測定を行った。
(9)ポリエステル樹脂水分散体又はコーティング組成物の貯蔵安定性
コーティング組成物100mlをガラス製の容器に入れて密封し、室温が20〜25℃に保たれた実験室内で10日間もしくは30日間放置した。この時の外観の変化を目視で観察し、また、粘度を上記(8)の方法で測定することにより、貯蔵安定性を評価した。
【0048】
(10)転写性
所定の条件で転写して得られた転写画像について目視観察を行い、下記の基準によって評価した。
○:ベタ状及びメッシュ状とも問題なく転写されている。
△:ベタ状の部分は問題なく転写されているが、メッシュ状の部分につい ては転写されていないか、又はキレが悪くメッシュが再現されていない
×:ベタ状及びメッシュ状の部分とも、転写が不完全で問題がある。
(11)転写画像の耐擦過性
上記の転写性が○と評価されたメッシュ状に転写された部分の転写画像について、JIS S6050の消しゴムを用い、消しゴムの10mm×20mmの面を転写画像面に当てて垂直に立て、1kgの荷重を加えながら1秒間に1往復の割合で擦り、画像に明らかに損傷が認められたときの往復回数を記録して耐擦過性の指標とした。
(12)転写画像の耐アルコール性、耐ガソリン性
上記の転写性が○と評価されたメッシュ状に転写された部分の転写画像について、R10mmの球面状の先端を有するステンレス製の棒を用意し、この球面状の先端にガーゼを10枚重ねて巻き付けこれにエタノール又はガソリンを含浸させ、この部分を転写画像に押し付けた状態で棒を転写画像面に垂直に立て、300gの荷重を加えながら1秒間に1往復の割合で擦り、画像に明らかに損傷が認められたときの往復回数を記録して耐アルコール性又は耐ガソリン性の指標とした。
(13)転写画像の耐水性
上記の転写性が○と評価されたベタ状に転写された部分の画像について、これを室温下で蒸留水中に部分的に浸漬し、30分後に静かに引き上げ、風乾させた後に、画像の外観変化を以下の基準によって評価した。
○:外観変化が全く認められない。
△:蒸留水中に浸漬していた際の液の界面が乾燥後にも画像に認められるか、画像が膨潤している。
×:画像の脱落している部分が認められる。
【0049】
(14)被膜形成物の熱重量減少率
所定の条件でポリエステルフィルム上に形成させた被膜形成物について、ポリエステルフィルムを含めた総重量を測定した後、予め110℃に設定された熱風循環式乾燥機中に投入し、30分間保持することによって加熱処理を施し、取り出して総重量を測定した。この加熱処理の前後の総重量を比較して、ポリエステルフィルムを除く被膜形成物の熱重量減少率を求めた。
なお、ポリエステルフィルムの重量は被膜形成物を形成させる前に測定しておき、また、ポリエステルフィルムには上記の加熱処理による重量変化がないことを予め確認しておいた。
【0050】
また、実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂は、下記のようにして得られた。
[ポリエステル樹脂A−1〜A−9の製造]
テレフタル酸18.46kg、エチレングリコール4.83kg、ネオペンチルグリコール7.52kgをそれぞれ用意し、これらを混合して、オートクレーブ中において260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒としての三酸化アンチモンを1重量%含有するエチレングリコール溶液650gを添加し、系の温度を30分間で280℃に昇温してから、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.5時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げて240℃になったところで無水トリメリット酸427gとトリメリット酸467gとを添加し、235℃で30分間撹拌した(解重合反応)。その後、窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。そしてこれを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂A−1として得た。
同様の方法で、酸成分とアルコール成分の構成が下記表1に示される条件となるようにして、ポリエステル樹脂A−2〜A−9を得た。ただし、ポリエステル樹脂A−9を製造するにあたっては、上記の無水トリメリット酸とトリメリットの添加を255℃において行い、250℃で1時間、系を撹拌して解重合反応を行った。
【0051】
[ポリエステル樹脂A−10〜A−12の製造]
テレフタル酸18.27kg、アジピン酸2.19kg、エチレングリコール5.04kg、ネオペンチルグリコール7.81kgをそれぞれ用意し、これらを混合して、オートクレーブ中において260℃で2.5時間加熱してエステル化反応を行った。次いで触媒としての三酸化アンチモンを1重量%含有するエチレングリコール溶液730gを添加し、系の温度を30分で280℃に昇温してから、系の圧力を徐々に減じて1時間後に0.1Torrとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、1.7時間後に系を窒素ガスで常圧に戻し、系の温度を下げて250℃になったところでイソフタル酸623gを添加し、245℃で45分間攪拌して第一段目の解重合反応を行った。そして、さらに系を210℃まで降温し、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン1,186gを添加して、この温度で30分間撹拌して第2段目の解重合反応を行った。その後、上記のポリエステル樹脂A−1を得た場合と同様に、シート状に払い出した樹脂を粉砕、分画・採取して、粒状のポリエステル樹脂A−10を得た。
同様の方法で、酸成分とアルコール成分の構成が下記表1に示される条件となるようにして、ポリエステル樹脂A−11及びA−12を得た。
【0052】
上記のようにして得られたそれぞれのポリエステル樹脂の特性を評価した結果について、下記表1に示す。
なお、これらのポリエステル樹脂のうち、本発明におけるポリエステル樹脂としての要件を満たすものは、A−1〜A−5,A−9,A−10であった。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1〜7及び比較例1〜5
[ポリエステル樹脂水分散体の製造]
上記の各ポリエステル樹脂を用いて、以下に示す方法によってポリエステル樹脂水分散体を製造した。
ジャケット付きの5Lガラス容器を備え、しかも装着時にはこれが密閉状態となる複合型撹拌機(特殊機化工業製「T.K.Combimix 3M−5」)を用いて、ガラス容器内にポリエステル樹脂750g、イソプロパノール(以下、IPOHと略記する)600g、蒸留水1,629g、そしてポリエステル樹脂中の全カルボキシル基に対して1.2倍当量となる量のトリエチルアミン(以下、TEAと略記する)を一括して仕込み、高速剪断型の撹拌翼(ホモディスパー)の回転数を6,000rpm、アンカーミキサーの回転数を15rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱が認められず、完全浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にジャケットに熱水を通して加熱した。そして系内温度が60℃又はポリエステル樹脂のガラス転移温度のうちの高い方の温度に達したところでホモディスパーの回転数を6,500rpmに上げ、系内温度を70〜73℃に保ってさらに45分間撹拌した後、ジャケット内に冷水を通し、ホモディスパーの回転数を3,000rpmに下げて攪拌しつつ室温まで冷却して、ポリエステル樹脂水分散体を得た。
なお、ポリエステル樹脂A−11を用いた比較例4については、上記の方法では分散状態が悪かったため、さらにメチルエチルケトン(以下、MEKと略記する)を200g加えて同様の操作を行うことにより水分散体を得た。
このようにして得られた実施例1〜7及び比較例1〜5におけるポリエステル樹脂水分散体には、そのいずれにおいても、層分離や沈殿は見いだされなかった。
【0055】
さらに、上記のポリエステル樹脂水分散体を、635メッシュのステンレス製フィルター(線径0.020mm、平織)を用いて加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、得られた濾液をポリエステル樹脂水分散体の特性評価に供すると共に、下記の保護コート層としての被膜を形成させるためのコーティング組成物として用い、また、後で述べる着色剤を含有させたコーティング組成物(以下、着色コーティング組成物と略記する)の製造に用いた。
なお、上記のいずれの実施例及び比較例においても、濾過後のフィルター上に固形分の残存は認められなかった。
【0056】
[熱昇華型転写リボン用の保護コート層の形成と転写]
ベースフィルムとして厚み5μmの2軸延伸PETフィルムを用意し、その片面に、耐熱コート剤(信越化学工業製、KR218)を用いて厚さ0.1μmの耐熱層を形成させた。次いで、もう一方の面に上記のポリエステル樹脂水分散体(コーティング組成物)を乾燥膜厚が1.0μmとなるようにグラビアコーターでコーティングし、これを水平に保った状態で、120℃に調整されたオーブン中で1分間乾燥することにより均一な被膜を形成させ、これを保護コート層として有する転写リボンを得た。
次に、厚み150μmのポリオレフィン樹脂フィルム(王子油化製、ユポFPG−150)を用意し、この表面に受像層を形成するために、MEK−トルエン混合溶剤に共重合ポリエステル樹脂(ユニチカ製、エリーテルUE−3250)20重量%とエポキシ変性シリコーンオイル(信越化学工業製、X−22−343)1重量%を溶かした溶液をコーティングした後乾燥させて、受像層(厚み4μm)を有する記録材を用意した。これとは別に昇華染料(日本化薬製、カヤセットブルー714)をコーティングしたフィルムを用意し、これを用いて上記記録材の受像層側の面にベタの画像を転写させて形成した。
そして上記で得た保護コート層を有する転写リボンを、上記の記録材にベタの画像と保護コート層が接するように重ね合わせて、サーマルヘッドを用いて印可電力1W/dot、パルス幅2.5msec(ON/OFF)、dot密度3dot/mmでベタ状及び網目間隔1mmのメッシュ状に保護コート層の転写を行った。
このようにして得られた、昇華染料からなるベタ画像の上に保護コート層をベタ状及びメッシュ状に転写させた転写画像について特性評価を行った。
なお、上記の各実施例及び比較例において使用したポリエステル樹脂の種類、得られたポリエステル樹脂水分散体の特性、及び上記の保護コート層を有する転写画像の特性を下記表2に示す。この場合、転写性の評価は上記保護コート層の転写性について評価したものであり、転写画像の評価においてベタ状に転写された部分とは保護コート層がベタ状に転写された部分のことであり、メッシュ状に転写された部分とは保護コート層がメッシュ状に転写された部分のことである。
【0057】
【表2】
【0058】
[着色コーティング組成物の製造]
上記したポリエステル樹脂水分散体300gと、着色剤としての三菱化学製カーボンブラック#50(以下、B−1と略記する)10gを一括して1Lのステンレス製容器に仕込み、ガラス棒で軽く撹拌した後、これを水道水で冷却しながら、卓上型のホモミキサー(特殊機化工業製「T.K.ロボミックス」)を用いて、9,000rpmで20分間撹拌することにより、分散処理を行った。そしてこの分散液を、635メッシュのステンレス製フィルター(線径0.020mm、平織)を用いて加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、この濾液を着色コーティング組成物として得た。
ただし、比較例4では、分散処理時に系が著しく増粘し、操作を続けることが出来なくなった。
【0059】
[熱溶融型転写リボンの製造及び転写]
ベースフィルムとして厚み3.5μmの2軸延伸PETフィルムを用意し、その片面に、耐熱コート剤(信越化学工業製、KR218)を用いて厚さ0.1μmの耐熱層を形成させた。次いで、もう一方の面に上記の着色コーティング組成物を、乾燥膜厚が1.0μmとなるように、卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングし、これを水平に保った状態で、100℃に調整されたオーブン中で2分間乾燥することにより均一な被膜を形成させ、これをインキ層として有する熱溶融型転写リボンを得た。
そして、得られた転写リボンと上質紙とを、インキ層が紙面に接するように重ね合わせて、サーマルヘッドを用いて印可電力0.3W/dot、パルス幅2.5msec(ON/OFF)、dot密度6dot/mmでベタ状及び網目間隔約1mmのメッシュ状に転写を行って、転写画像を得た。
【0060】
なお、上記の着色コーティング組成物及びこれより得られた上記の転写画像の特性を下記表3に示す。
このとき、表中における着色コーティング剤の固形分濃度の収率が低いことは、カーボンブラックの分散不良もしくはポリエステル樹脂粒子の凝集により、これらの一部が濾過工程で取り除かれたことを示唆するものである
また、実施例4及び6の転写において、サーマルヘッドの印可電力を0.28W/dotとした低熱量の転写も併せて行ったところ、実施例4については転写画像の特性低下が見られなかったが、実施例6については耐アルコール性が95に低下した。
【0061】
【表3】
【0062】
実施例8〜10及び比較例6〜8
[ポリエステル樹脂水分散体の製造]
ポリエステル樹脂、塩基性化合物、有機溶剤及び水を、下記表4に示す仕込み組成で用いて、実施例1と同様の操作で、ポリエステル樹脂水分散体を製造した。
なお、上記のポリエステル樹脂水分散体の仕込み組成及び特性を下記表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
[着色コーティング組成物の製造]
上記で得られたポリエステル樹脂水分散体300gに対し、着色剤として上記のB−1もしくは大日精化製の黄色顔料♯2400(以下、B−2と略記する)を添加し、必要に応じて有機溶剤又は水を加え、下記表5に示す仕込み組成となるようにして、これに下記のX法又はY法による分散処理を施した後、実施例1と同様に加圧濾過を行い、この濾液を着色コーティング組成物として得た。
ただし、比較例8については、分散処理を終了した時点で、ポリエステル樹脂粒子の凝集が認められ、加圧濾過して得られた着色コーティング組成物からも極端に凹凸のある被膜しか得られなかった。
〈分散処理:X法〉原料を全て1Lのステンレス製容器に仕込み、ガラス棒で軽く撹拌した後、これを水道水で冷却しながら、卓上型のホモミキサー(特殊機化工業製「T.K.ロボミックス」)を用いて、9,000rpmで20分間撹拌することにより、分散処理を行った。
〈分散処理:Y法〉原料の全てを、ガラスビーズ(2mm径)400gと共にステンレス製容器に仕込み、これをペイントシェーカーによって室温で1時間振とうすることにより、分散処理を行った。このとき、ガラスビーズは破壊されることなく、後工程の濾過によって取り除かれた。
なお、上記の着色コーティング組成物の仕込み組成及び分散処理方法について下記表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
[熱溶融型転写リボンの製造及び転写]
上記で得られた着色コーティング組成物について、実施例1と同様の操作によって、熱溶融型転写リボンの製造及びこれを用いた転写を行い、転写画像を得た。
なお、上記の着色コーティング組成物の特性、及びこれより得られた上記の転写画像の特性を下記表6に示す。
【0067】
【表6】
【0068】
実施例11〜13及び比較例9〜10
[着色コーティング組成物の製造]
上記の実施例1,2,4又は7で得られたポリエステル樹脂水分散体を用い、下記表7に示す仕込み組成で、上記の実施例8〜10と同様の方法で着色コーティング組成物を得た。このとき、実施例13においては、他の成分としてウレタン樹脂エマルション(旭電化工業製アデカボンタイターHUX−350、固形分30%)も併用した。
ただし、比較例9では、(D)成分である有機溶剤の仕込み量が、全成分の合計仕込み量に対して50重量%を超えており、分散処理中に固化した。また、比較例10では、(B)成分である着色剤の仕込み量が、(A)成分であるポリエステル樹脂の仕込み量100重量部に対して、45重量部を超えており、分散状態が悪く低固形濃度分のコーティング剤しか得られず、これをコーティングしても極端に凹凸のある被膜しか得られなかった。
なお、上記の着色コーティング組成物の仕込み組成及び分散処理方法について
下記表7に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
[熱溶融型転写リボンの製造及び転写]
上記で得られた着色コーティング組成物について、実施例1と同様の操作によって、熱溶融型転写リボンの製造及びこれを用いた転写を行い、転写画像を得た。
なお、上記の着色コーティング組成物の特性、及びこれより得られた上記の転写画像の特性を下記表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
【発明の効果】
本発明の水性のコーティング組成物は、貯蔵安定性、他成分との混合安定性、希釈安定性等に優れ、しかもコーティング性が良いので、コーティングの際にハジキ等の問題が発生し難い。また、これより得られる被膜形成物は、熱溶融型転写リボン用のアンカーコート層もしくはインキ層等として、又は熱昇華型転写リボン用の保護コート層等として好適であり、低熱量での熱転写性に優れ、しかも、幅広い種類の記録材に対して鮮明に転写でき、特に転写画像の耐水性、耐薬品性、耐擦過性に優れている。したがって、本発明のコーティング組成物を用いれば、上記したような優れた特性を備えた転写リボンを製造できる。
さらに、本発明のコーティング組成物は、これより得られる被膜形成物の耐水性及び耐薬品性が特に優れていることから、この被膜形成物の上に水性もしくは有機溶剤系の各種コーティング剤を重ね塗りしても、それらの水性媒体や有機溶剤によっても層構造が壊れないという画期的な特長を有している。したがって、この点を利用すれば、複層の被膜が積層した転写リボンを安定して製造することができ、結果として、低熱量での転写性を犠牲にすることなく、さらに高機能を付与した転写リボンの製造も可能となる。

Claims (1)

  1. 熱溶融型転写リボンのアンカーコート層もしくはインキ層を形成するのに用いられる転写リボン用コーティング被膜、又は熱昇華型転写リボンの保護コート層を形成するのに用いられる転写リボン用コーティング被膜が、下記(A)〜(D)の成分が含有されてなり、かつ(A)の成分100重量部に対して(B)の成分の量が0〜45重量部であり、かつコーティング組成物に対して(D)の成分の含有率が0.5〜50重量%であり、ポリエステル樹脂粒子又は、ポリエステル樹脂粒子及び着色剤が水性媒体中に分散してなるポリエステル樹脂水性分散体を形成してなる被膜であることを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体の転写リボン用コーティング被膜への使用方法
    (A)多塩基酸成分と多価アルコール成分とより構成され、酸価が8〜40mgKOH/gであり、ガラス転移温度が10℃以上であり、数平均分子量が2,000〜15,000であるポリエステル樹脂。
    (B)着色剤。
    (C)アンモニア又はトリエチルアミンからなる、塩基性化合物。
    (D)ケトン、アルコール、グリコール誘導体から選択される150℃以下の沸点を有する有機溶剤。
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