JP4229743B2 - アルミニウム合金溶接用溶加材及びそれを使用したアルミニウム合金材の溶接方法 - Google Patents
アルミニウム合金溶接用溶加材及びそれを使用したアルミニウム合金材の溶接方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金(本明細書において、アルミニウム合金という場合は、アルミニウム及びアルミニウム合金の双方を含む)材料、特にMgを含有したアルミニウム合金材料の溶接に使用されるアルミニウム合金溶接用溶加材及びそれを使用した溶接方法に関し、特に、溶接時に生成する溶接部表面及びその近傍周辺部への粉末状付着物が少なく溶接外観が良好で継手強度が高いアルミニウム材料の溶接用溶加材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、自動車、鉄道車両及び船舶の輸送機等においては、燃費の向上及び高速化の要求から、より軽量な構造が採用されるようになった。そして、これらの構造材料として、軽量であることから、鉄鋼に替えて、アルミニウム合金材が使用されるようになった。これらは、概ねアルミニウム合金の板材がアウター及びインナー等の外板として、アルミニウム合金の押出形材は骨格構造、所謂フレーム構造及び衝突時の安全性を向上させるための衝撃吸収材として、またアルミニウム合金の鋳物材は押出形材による骨格構造を継手で連結するための節部としての適用が期待されている。
【0003】
板材では、主に5000系及び6000系のアルミニウム合金が使用されているが、リサイクル性及びコストメリットを考慮した場合、6000系アルミニウム合金材の方がやや優位にある。一方、押出形材は6000系アルミニウム合金材、鋳物材は4000系アルミニウム合金材が広く一般的に使用されている。この5000系及び6000系アルミニウム合金材のようなMgを含有したAl−Mg系合金材は機械的性質が優れ、耐食性及び溶接性も良好で船舶及び鉄道車両をはじめ一般の溶接構造物に広く適用されている。
【0004】
これらのアルミニウム合金材は、従来、主として、アーク溶接等による溶融溶接方法が適用されているが、通常、余盛による継手強度確保を主目的として、溶加材が用いられている。アルミニウム合金用の溶加材としては、純Al、Al−Cu系合金、Al−Si系合金、Al−Mg系合金等、種々の溶接材料がJISに規定されているが,Al−Mg系アルミニウム合金用の溶加材としてはAl−Mg系合金の溶接材料が推奨されている。その理由は、純Al(1000系)の溶加材では溶接金属部の強度が弱く、Al−Cu系合金の溶加材では溶接割れ感受性が高く、溶接部の耐食性が悪く、Al−Si系合金の溶加材では溶接部の強度及び靭性が低く、一般的に強度やじん性を要求される溶接部にはあまり実用的ではないからであるとされている。このため、Mgを含有し溶接部の強度を高めることができるAl−Mg系合金の溶接材料が推奨されている。
【0005】
しかしながら、Al−Mg系合金材を、Al−Mg系合金からなる溶加材を使用してミグ溶接すると、溶接部表面及びその近傍周辺部に黒い粉末状の着色生成物(以下、スマットという)が付着する場合がある。このスマットはAl及びMg等を含む酸化物であると考えられている。スマットは溶接の継手性能に対しては殆ど悪影響を及ぼすことはないが、黒色を呈しているため,溶接後の外観に美観性が求められる部材にあってはその美観性が損なわれるという問題点があり、また、その溶接部表面に塗装が施される場合には、塗料の付着を妨げる要因になるといった問題点がある。従って、溶接後にスマットを十分に除去する必要がある。
【0006】
従来、スマットを除去する方法として、溶接部の表面をウエス又はワイヤブラシ等で払拭するといった機械的な除去方法が知られている。また、アルミニウム合金材の溶接部を、適切な濃度の硫酸溶媒又はこれに更に界面活性剤等の薬剤を適宜添加した硫酸溶媒で洗浄処理して、スマットを化学的に除去する方法も開示されている(例えば、特許文献1参照。)。更に、消耗電極として純Al又はMg含有量が少ないAl合金からなる電極を使用し、この消耗電極とは別にMg等の合金成分の含有量が多い合金材料を溶融池に添加するミグ溶接方法が開示されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−44068号公報
【特許文献2】
特開平5−285663号公報
【特許文献3】
特開平6−238450号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の技術には、以下に示すような問題点がある。溶接ビードには通常数mm程度の微細な凹凸が形成されているので、特に溶接ビードの表面及びビード際の止端部に生成付着したスマットを、上述のような機械的な除去方法で完全に除去することは困難である。また、機械的除去又は薬品等による化学的除去等の著しく手間を要する工程を溶接後に設けることは、コスト的にも不利益である。
【0009】
また、消耗電極とは別に合金材料を溶融池に添加するミグ溶接方法は、少なくとも2本以上の溶接ワイヤを必要とするため、溶接装置が複雑となるばかりではなく、溶融池に添加するワイヤを溶かすために、通常のミグ溶接よりも溶接電流が高くなり、溶け落ち等の溶接欠陥が発生しやすくなる。このため、例えば板厚が10mm以下の比較的薄いアルミニウム合金板材の溶接には実用的ではない。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、使用する溶接ワイヤが1本である通常のミグ溶接においてスマットがほとんど付着せず、継手強度が高く溶着部の靭性が高い溶接部が得られるアルミニウム合金溶接用溶加材及びそれを使用したアルミニウム合金材の溶接方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願第1発明に係るアルミニウム合金溶加材は、Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0014】
本願第2発明に係るアルミニウム合金溶加材は、Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%、Mg:2.0質量%以下を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)、Zr:0.05乃至2質量%、Ce、Y、La、及びSc(Ce、Y、La、及びScは合計で0.1乃至1.0質量%)からなる群から選択された1種以上の元素を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0015】
本願第3発明に係るアルミニウム合金溶加材は、Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0016】
本願第4発明に係るアルミニウム合金溶加材は、Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、更にCe、Y、La、及びScからなる群から選択された1種以上の元素を総量で0.1乃至1.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0017】
本願第5発明に係るアルミニウム合金材の溶接方法は、Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とする。
【0020】
本願第6発明に係るアルミニウム合金材の溶接方法は、Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%、Mg:2.0質量%以下を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)、Zr:0.05乃至2質量%、Ce、Y、La、及びSc(Ce、Y、La、及びScは合計で0.1乃至1.0質量%)からなる群から選択された1種以上の元素を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とする。
【0021】
本願第7発明に係るアルミニウム合金材の溶接方法は、Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とする。
【0022】
本願第8発明に係るアルミニウム合金材の溶接方法は、Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、更にCe、Y、La、及びScからなる群から選択された1種以上の元素を総量で0.1乃至1.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、上述の課題を解決するために、ミグ溶接用の溶加材成分とスマットの生成及び継手強度との関係を詳細に調査した結果、従来、Mgを含有したAl−Mg系アルミニウム合金用には推奨されていないAl−Si系合金の溶加材であって、既存のAl−Si系溶加材用合金よりもSi量を低減した溶加材を使用してAl−Mg系合金を溶接すれば、溶接時にスマットがほとんど付着せず、母材(Al−Mg系合金)から希釈されてMgが溶着金属部に混入することにより、溶着金属部の強度が高くなり、また、溶加材(Al−Si系合金)のSi量が既存のAl−Si系溶加材よりも少ないことから溶着金属部の靭性も高くなることを見いだした。
【0024】
以下、本発明に係るアルミニウム合金溶加材において、その成分理由及び組成限定理由について説明する
【0025】
Si:1乃至4質量%
Siは、合金中でMgと結合し、Mg2Si化合物を形成し、強度を向上させる最も重要な元素である。かつ、単Siでも析出によって硬さを向上させ、継手性能向上に寄与する。含有量が、1質量%未満では十分な強度が得られず、4質量%を超えると過剰析出により延性及び靭性が低下する。
【0026】
Mg:2.0質量%以下
Mgは合金中でSiと結合し、Mg2Si化合物を形成する。Mg含有量が2.0質量%を超えると、スマットの発生が顕著となり溶接部外観が黒色化する。従って、Mg含有量は2.0質量%以下であることが好ましい。また、Mg含有量が0.5質量%未満では硬さが不足し強度低下となるため、Mg含有量は0.5質量%以上であることが好ましい。但し、溶加材のMgの含有量が0.5質量%未満であっても、溶接対象となる母材にMgが十分に含有されていれば、Mgが母材から溶着金属部に溶け込むため、溶接部の強度低下が抑えられる。このような場合は、溶加材のMgの含有量は0.5質量%未満でも構わない。
【0027】
Cr:0.05乃至0.5質量%
Mn:0.05乃至0.5質量%
Ti+B:0.02乃至0.4質量%、但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%
Zr:0.05乃至2質量%
Mn、Cr及びZrは単独で、Ti及びBは複合添加により、材料に添加した場合、結晶粒を微細化させる効果を有する。また、これらの元素は、引張強度及び伸びを向上させる効果を有する。
【0028】
また、Mn:0.05質量%未満、Cr:0.05質量%未満、(Ti+B):0.02質量%未満、Ti:0.01質量%未満、B:0.01質量%未満、及びZr:0.05質量%未満では、いずれも結晶粒微細化の効果は少なく、添加効果が得られない。
【0029】
一方、Mn:0.5質量%を超えた場合、Cr:0.5質量%を超えた場合、(Ti+B):0.4質量%を超えた場合、及びZr:2質量%を超えた場合は、脆化の危険性がある。
【0030】
このため、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4質量%(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された少なくとも1種以上を含有することが好ましい。これにより、溶接部の延性が向上する。
【0031】
しかし、更に厳しい変形を受ける部位を溶接する場合には、下記元素を添加することが望ましい。
【0032】
Ce、Y、La、Scを総量で0.1乃至1.0質量%
Ce、Y、La及びScはいずれも結晶粒を微細化させる効果を有する。更に、Ce,Y,La,Scは水素と化合して水素化合物を作りやすく、ポロシティ及びブローホールの発生を防止するのに効果的である。これらの元素が総量で0.1質量%未満では、その効果が少なく、1.0質量%を超えると、脆化を引き起こすことがある。このため、これらの元素を添加する場合は、総量で0.1乃至1.0質量%とする。これらの元素を添加した溶加材を用いることで、溶接金属内の結晶粒微細化を更に一層促進することができる。このため、本発明の溶加材を著しい変形を受ける部位の溶接に使用することができる。
【0033】
なお、この他の成分としては、JIS 4043に示されているFe:0.8質量%以下、Mn:0.05質量%以下、Cu:0.3質量%以下、Zn:0.10質量%以下等が本発明の不可避的不純物に相当する。また、0.05質量%未満のMn、0.05質量%未満のCr、0.01質量%未満のTi、0.01質量%未満のB、0.05質量%未満のZr、合計で0.1質量%未満のCe、Y、La、Scも本発明の不可避的不純物に相当する。
【0034】
アルミニウム合金材の溶接に適用する溶接方法は、溶融溶接であれば、MIG、TIG、レーザ又は電子ビーム等いずれの溶接方法を使用しても良い。また、その溶接条件、例えば、出力又は電流、溶接速度等の溶接条件は使用する加工機の種類、被加工部材の厚さ及び形状などに従って選定すればよい。より効果的な結晶粒微細化のためには、本発明による溶加材を使用して104W/cm2以上の高パワー密度が得られるレーザ溶接又は電子ビーム溶接方法を使用することが望ましい。更に、溶接態様は、突き合わせ溶接及び重ね溶接等、接合する部位に応じて適切な溶接態様を選定すればよく、本発明はいずれの継手にも適用できる。
【0035】
本発明の溶加材を使用して溶接するアルミニウム合金材としては、一般にJIS 4043及びJIS 4047の溶加材の適用が推奨されている組合せであれば良く、その他のアルミニウム合金材も溶接することができる。また、アルミニウム合金材の形態としては、板材、押出形材及び鋳鍛材のいずれの組合せでも良い。
【0036】
【実施例】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施例についてその特性を比較例と比較して説明する。
【0037】
試験例1
溶接条件としては、溶接方法:MIG溶接、供試材:JIS A5454板材、板厚:3mm、シールドガスの種類:アルゴン、その流量:毎分25リットル、溶接方法:I型開先による突合せ溶接ならびに重ねすみ肉溶接、溶接長:300mmとした。
【0038】
MIG溶接条件は、溶接電流:130乃至160A、溶接電圧:20乃至23V、溶接速度:80cpmとした。
【0039】
第1のケースとして、供試材を2枚一組で突合せ態様で組み合わせた後、下記表1に示す組成を有する溶加材を使用して、前述の溶接条件で両者を突合せ溶接により接合した。なお、表1に示す「−」は、含有量が検出限界以下であったことを示す。また、「残」は組成の残部であることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
次いで、得られた継手の溶接金属部に対して、外観観察、伸び、曲げ性能を評価した。これらの評価結果を下記表2に示す。なお、引張強さは、JIS Z22015号試験片で、引張方向と直角になる方向の中心線に溶接線の配置し、その引張強さを測定した。また、伸びは、JIS Z2201 5号試験片で、引張方向と直角になる方向の中心線に溶接線の配置し、標点距離を50mmとしてその伸びを測定した。更に、曲げ性能は、幅40mmの試験片にて、曲げに対して垂直方向の中心線に溶接線を配置して、曲げ部の頂点に溶接線が曲げ方向と垂直に位置するようにして、曲げR12mmにて180度曲げ試験を実施し、溶接金属部表面の亀裂発生限界を測定した。
【0042】
【表2】
【0043】
第2のケースとして、供試材を2枚一組で重ね代20mmで重ね合わせた後、前記表1に示す組成を有する溶加材を使用して、前述の溶接条件で両者を重ねすみ肉溶接により接合した。
【0044】
次いで、得られた継手の溶接金属部に対して、外観観察、引張強さを評価した。これらの評価結果を下記表3に示す。なお、評価方法は前述のケース1と同様である。
【0045】
【表3】
【0046】
なお、評価について、同材料をJIS4043、4047、5356、5554を用いてMIG溶接した継手で、各特性値が優れていた方の値を基準として設定し、その値より劣っているものは×、同等のものは△、優れているものは○、著しく優れているものは◎で示した。なお、伸び及び曲げについては、JIS5356及びJIS5554に規定する材料よりも劣るものの、JIS4043に規定する材料よりも優れており、使用に支障のないものを「△−」とした。引張強さについては、突合せ溶接の場合、引張強さが225MPaを超えたものを「◎」とし、225MPa以下で215MPaを超えたものを「○」とし、215MPa以下だったものを「△」とした。また、重ねすみ肉溶接の場合、引張強さが170MPaを超えたものを「◎」とし、170MPa以下で120MPaを超えたものを「○」とし、120MPa以下で100MPaを超えたものを「△」とし、100MPa以下だったものを「×」とした。
【0047】
表1乃至表3に示すNo.1乃至16は本願請求項4、5、10、11に係る発明の実施例であり、No.17乃至20は本願請求項4、6、10、12に係る発明の実施例であり、No.21は本願請求項1、7に係る発明の実施例であり、No.22は本願請求項2、8に係る発明の実施例であり、No.25は本願請求項2、4、8、10に係る発明の実施例であり、No.27、29、31、33、35、37、39、41、43、45は本願請求項2、8に係る発明の実施例である。表1乃至表3に示すように、実施例No.1乃至22、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45においては、溶加材の組成が本発明の範囲内にあり、第1ケースの突合せ溶接及び第2ケースの重ねすみ肉溶接共に、全ての評価が優れたものとなった。これに対し、No.23、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46は、本発明の範囲から外れる比較例であり、外観、伸び、曲げ及び引張強さのうち、少なくとも1つの項目で評価が「×」となり、特性が劣るものであった。
【0048】
試験例2
先ず、下記表4に示す化学成分を有するアルミニウム合金を鋳造し、直径が1.2mmである溶接ワイヤを試作した。次に、この溶接ワイヤを使用して溶着金属の機械的性質が継手強度に与える影響が比較的大きい重ねすみ肉継手をミグ溶接により作製した。その後、この重ねすみ肉継手に対して引張試験を行い、継手強度を評価した。また、スマットの発生の有無を調査した。結果を表4に示す。本試験例2においては、被溶接材(母材)として板厚が4.0mmのJIS 5454により規定される合金のO材を使用した。溶接条件を以下に示す。
【0049】
溶接方法:MIG自動溶接
溶接電流:150〜210kA
溶接電圧:24〜30V
溶接速度:75cm/分
シールドガス:100%アルゴン
シールドガス流量:27リットル/分
【0050】
【表4】
【0051】
また、図1は横軸にSi含有量をとり縦軸に継手強度をとって、本試験例の試験結果を示すグラフ図であり、図2は横軸にMg含有量をとり縦軸に継手強度をとって、本試験例の試験結果を示すグラフ図であり、図3は横軸にMn含有量をとり縦軸に継手強度をとって、本試験例の試験結果を示すグラフ図である。
【0052】
表4に示すNo.47は、本願請求項3、9に係る発明の実施例であり、No.48は、本願請求項4、10に係る発明の実施例であり、No.49乃至52は、本願請求項4、5、10、11に係る発明の実施例である。実施例No.47乃至52は、溶加材の成分が本発明の範囲を満たしているため、スマットの発生が無く、継手強度が124N/mm2以上と高かった。
【0053】
これに対して、表4に示すNo.53乃至60は比較例である。比較例No.53は、Siの含有量が0.1質量%と少なかったため、ミグ重ねすみ肉継手の引張強さが実施例と比べて低かった。比較例No.54乃至59は、Siの含有量が5.3乃至12質量%と多かったため、ミグ重ねすみ肉継手の引張強さが実施例と比べて低かった。比較例No.60は、Si含有量が6.1質量%と多く、Mg含有量も2.7質量%と多かったため、継手強度が低く、また、スマットが発生し溶接ビード外観が悪かった。
【0054】
前述の如く、実施例No.47乃至52は、溶加材の成分が本発明の範囲を満たしているため、本発明の範囲を満たしていない比較例No.53乃至60と比べて、継手強度が高かった。即ち、図1に示すように、溶加材のSi含有量が1質量%未満又は4質量%を超える場合は、継手強度が低下した。また、図2に示すように、0乃至2.7質量%の範囲でMg添加量は継手強度に影響を与えないが、Mg添加量が2.5質量%よりも多くなると、スマットが生成し始めた。更に、図3に示すように、0乃至0.3質量%の範囲でMn添加量は継手強度に影響を及ぼさないことを確認した。
【0055】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明に係るアルミニウム合金溶接用溶加材によれば、延性及び靱性が優れたアルミニウム合金の溶接部を得ることができ、スマットが少なく、高品位な溶接部を形成することができると共に、構造全体の機械的性能を向上させることができ、このため、本発明によりアルミニウム合金材の適用範囲を拡大でき、アルミニウム合金材による軽量化のメリットを広範囲の技術分野に適用していくことができる。このため、本発明は、軽量化が要求される分野に多大の貢献をなす。
【図面の簡単な説明】
【図1】横軸にSi含有量をとり縦軸に継手強度をとって、試験例2の試験結果を示すグラフ図である。
【図2】横軸にMg含有量をとり縦軸に継手強度をとって、試験例2の試験結果を示すグラフ図である。
【図3】横軸にMn含有量をとり縦軸に継手強度をとって、試験例2の試験結果を示すグラフ図である。
Claims (8)
- Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶接用溶加材。
- Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%、Mg:2.0質量%以下を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)、Zr:0.05乃至2質量%、Ce、Y、La、及びSc(Ce、Y、La、及びScは合計で0.1乃至1.0質量%)からなる群から選択された1種以上の元素を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶接用溶加材。
- Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶接用溶加材。
- Al−Mg系合金材の溶接に使用される溶加材において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、更にCe、Y、La、及びScからなる群から選択された1種以上の元素を総量で0.1乃至1.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金溶接用溶加材。
- Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とするアルミニウム合金材の溶接方法。
- Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%、Mg:2.0質量%以下を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)、Zr:0.05乃至2質量%、Ce、Y、La、及びSc(Ce、Y、La、及びScは合計で0.1乃至1.0質量%)からなる群から選択された1種以上の元素を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とするアルミニウム合金材の溶接方法。
- Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とするアルミニウム合金材の溶接方法。
- Al−Mg系合金材の溶接方法において、Si:1乃至4質量%かつMg:0.5乃至2.0質量%を含有し、更に、Mn:0.05乃至0.5質量%、Cr:0.05乃至0.5質量%、Ti+B:0.02乃至0.4(但し、Ti:0.01乃至0.2質量%、B:0.01乃至0.2質量%)及びZr:0.05乃至2質量%からなる群から選択された1種類以上を含有し、更にCe、Y、La、及びScからなる群から選択された1種以上の元素を総量で0.1乃至1.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる溶加材を使用して溶接することを特徴とするアルミニウム合金材の溶接方法。
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