以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
先ず、本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンについて説明する。
本発明で用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルは、810〜839nmに吸収極大を有するものであり、従来の製造方法により作製されたヒドロキシガリウムフタロシアニンと異なるものである。また、810〜835nmのものは分散性に優れ、より好ましい。
本発明におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径は、好ましくは0.10μm以下、より好ましくは0.08μm(80nm)以下であり、ナノサイズのレベルまで粒径制御されたものであり、かつ、BET法による比表面積値が好ましくは45m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは55m2/g以上である。本発明にかかるヒドロキシガリウムフタロシアニンにおいては、粒子の結晶配列が好適に制御されたことと、分散性向上に適した微細化によって分光吸収スペクトルが短波長側にシフトしたものと推定される。一次粒子径が0.10μmより大きい場合、もしくは比表面積値が45m2/g未満である場合は、粒子が粗大化しているか、もしくは粒子の凝集体の形成が生じており、電子写真特性や画質特性上の欠陥を与えやすくなる。
また、本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンは、好ましくは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有するものである。なお、Journal of Imaging Science and Technology,Vol.40,No.3,May/June,249(1996)、特開平5−263007号公報、特開平7−53892号公報などに記載されている従来の製造方法により作製される高感度なV型ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有しているが、その分光吸収スペクトルは840〜870nmに吸収極大を有するものであり、本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルが810〜839nmに吸収極大を有するものとは異なることが明らかである。
通常、フタロシアニン顔料は、結晶中の分子配列によってフタロシアニン分子間の相互作用が変化し、結果として分子配列の状態がスペクトルに反映される。前記従来の製造方法により作製されたV型ヒドロキシガリウムフタロシアニンが840〜870nmに吸収極大を有する場合には、吸収が長波長に伸びる、すなわち分子間の相互作用が強いことを意味し、これによって結晶中を電荷が流れ易い状態となり、暗電流の増大やバックグラウンドのかぶりや黒点などを発生しやすくなっていたものと推察される。結晶合成時の条件をコントロールすることで、分子配列を制御し、810〜839nmに吸収極大を有し、一次粒子径は0.10μm以下、であり、かつ、BET法による比表面積値が45m2/g以上とすることで、優れた電子写真特性や画質特性を得ることが可能となった。
本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造方法において、原料として使用されるI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、従来より公知の方法によって得ることができる。以下にその一例を示す。
先ず、o−フタロジニトリルまたは1,3−ジイミノイソインドリンと三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウムおよびエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)、等により粗ガリウムフタロシアニンを製造する。上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどの不活性且つ高沸点の溶剤を用いることが好ましい。
次に、上記の工程で得られた粗ガリウムフタロシアニンについてアシッドペースティング処理を行うことによって、粗ガリウムフタロシアニンを微粒子化するとともにI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料に変換する。ここで、アシッドペースティング処理とは、具体的には、粗ガリウムフタロシアニンを硫酸などの酸に溶解させたものあるいは硫酸塩などの酸塩としたものを、アルカリ水溶液、水または氷水中に注ぎ、再結晶させることをいう。前記アシッドペースティング処理に用いる酸としては硫酸が好ましく、中でも濃度70〜100%(特に好ましくは95〜100%)の硫酸がより好ましい。
本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンは、上記のアシッドペースティング処理によって得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を溶剤とともに湿式粉砕処理して結晶変換することによって得られるが、本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造方法では、該湿式粉砕処理が、外径0.1〜3.0mmの球形状メディアを使用した粉砕装置が好ましく、外径0.2〜2.5mmの球形状メディアを用いることが特に好ましい。メディアの外形が3.0mmより大きい場合、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成し易い。また、0.1mmより小さい場合、メディアとヒドロキシガリウムフタロシアニンを分離し難くなる。さらに、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等、他の形状の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となりヒドロキシガリウムフタロシアニンの特性を劣化させ易くなる。
メディアの材質は、いかなるものでも使用できるが、顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生しにくいものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノーなどを好ましく使用できる。
容器材質もいかなるものでも使用できるが、顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生しにくいものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイドなどを好ましく使用できる。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイドなどをライニングしても良い。
メディアの使用量は、使用する装置によっても異なるが、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1重量部に対して通常1〜1000重量部、好ましくは10〜100重量部が選択される。また、メディアの外径が小さくなると同じ重量でも装置内に占めるメディア密度が高まり、混合溶液の粘度が上昇して粉砕効率が変化するため、メディア外径を小さくするに従い、適宜メディア使用量と溶剤使用量をコントロールすることによって最適な混合比で湿式処理を行うことが望ましい。
また、該湿式粉砕処理の温度は、0〜100℃、好ましくは、5〜80℃、より好ましくは10〜50℃の範囲で行う。温度が低い場合には、結晶転移の速度が遅くなり、また、温度が高すぎる場合にはヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶解性が高くなり結晶成長しやすく微粒化が困難となってしまう。
本発明にかかる湿式粉砕処理に使用される溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンなどのケトン類の他に、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶剤の使用量はヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1重量部に対して通常1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部が選択される。
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。
結晶変換の進行スピードは、湿式粉砕処理工程のスケール、攪拌スピード、メディア材質などによって大きく影響されるが、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルが、810〜839nmの範囲内に吸収極大を有するように、結晶変換状態を湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターしながら、本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンに変換されるまで継続する。一般的には、湿式粉砕処理の処理時間は5〜500時間の範囲、好ましくは7〜300時間の範囲で行われる。処理時間が5時間より少ないと、結晶変換が完結せず、電子写真特性の低下、特に感度不足の問題が生じやすい。また、処理時間が500時間より増えると、粉砕ストレスの影響により感度低下を生じたり、生産性低下、メディアの摩滅粉の混入などの問題が生じる。湿式粉砕処理時間をこのように決定することにより、ヒドロキシガリウムフタロシアニン粒子が均一に微粒子化した状態で湿式粉砕処理を完了することが可能となり、複数ロットの繰り返し湿式粉砕処理を実施した場合における、ロット間の品質ばらつきを抑えることが可能となる。
上記製造方法によって得られるヒドロキシガリウムフタロシアニンは、顔料、染料、電子写真感光体、光ディスク、太陽電池、センサー、脱臭剤、抗菌剤、非線形光学材料などの種々の用途に利用することができる。中でも、本発明で電荷発生材料として用いられるヒドロキシガリウムフタロシアニンを電子写真感光体の電荷発生材料として用いた場合には、感光体の最適な感度や優れた光電特性を得ることができる点、および感光膜に含まれる結着樹脂中への分散性に優れているので画質特性に優れる点で特に有効である。
次に、図面を参照しながら本発明にかかる電子写真感光体の好適な実施形態について説明する。
図1(a)は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。図1(a)に示すように、電子写真感光体100は、導電性支持体層3と、感光層6とから構成されている。
導電性支持体層3は、特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状のもの使用できる。更には、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物も使用できる。また、この他にも、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫−酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物なども使用することができる。
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体層3として用いる場合、その表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない基材表面を粗面化することにより、レーザービームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
図1(a)に示すように、感光層6は電荷発生層1と電荷輸送層2とから構成されている。
電荷発生層1は電荷発生材料としての上記特定のヒドロキシガリウムフタロシアニンと結着樹脂とを含有するものである。ここで、本発明において使用される結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエステルカーボネート、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル単独重合体又は共重合体、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの部分架橋硬化物等が挙げられ、これらの結着樹脂のうちの1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、電荷発生層1におけるヒドロキシガリウムフタロシアニンと結着樹脂との配合比(重量比)は、好ましくは40:1〜1:4であり、より好ましくは20:1〜1:2である。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの配合量が結着樹脂の配合量の40倍を超えると、電子写真感光体の製造工程において使用される分散液中の顔料の分散性が不十分となる傾向にあり、他方、結着樹脂の配合量の1/4未満であると電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。また、電荷発生層1は、上記特定のヒドロキシガリウムフタロシアニン以外のアゾ顔料、ペリレン顔料、縮環芳香族系顔料などの電荷発生材料を含有してもよい。ここで、本発明に使用される他の電荷発生材料としては、金属含有または無金属のフタロシアニンを用いることが好ましく、中でも、ヒドロキシガリウムフタロシアニン以外のヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニンまたはオキシチタニルフタロシアニンを用いることが特に好ましい。また、これらの他の電荷発生材料の配合量は、電荷発生層中に含まれる物質全量基準で50重量%以下であることが好ましい。
なお、電荷発生層1上に電荷輸送層2などの他の層をさらに成膜する場合には、その塗工液に使用される溶剤によって電荷発生層1が溶解あるいは膨潤することのないように、電荷発生層1の結着樹脂と、電荷発生層1の上に塗布される塗布液の溶剤と、の組み合わせが適宜選択される。また、電荷発生層1の結着樹脂と後述する電荷輸送層2の結着樹脂とは、互いの屈折率同士が近いものを組み合わせて使用することが好ましく、具体的には、互いの屈折率の差が1以下であることが好ましい。このように屈折率の近い結着樹脂を組み合わせて用いると、電荷発生層1と電荷輸送層2との界面での光の反射が抑制され、干渉縞防止効果が向上する傾向にある。
電荷発生層1は、ヒドロキシガリウムフタロシアニンおよび結着樹脂を所定の溶剤に加え、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ダイノーミル、ジェットミル、コボールミル、ロールミル、超音波分散機、ゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、マイルダーなどを用いて混合、分散させることにより得られる塗工液を、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などにより塗布し、乾燥することによって得ることができる。ここで、電荷発生層1の塗工液に用いる溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いもよい。このようにして得られる電荷発生層1の膜厚は、良好な電気特性と画質を与えるために、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。電荷発生層1の厚みが0.05μm未満であると、十分な感度を与えることができない。一方、電荷発生層1の厚みが5μmを超えると、帯電性の不良などの弊害を生じさせ易い。
電荷輸送層は帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。帯電電荷を保持させる目的達成のために電気抵抗が高いことが要求され、また保持していた帯電電荷で高い表面電位を得る目的を達成するためには、誘電率が小さくかつ電荷移動性が良いことが要求される。
これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送物質および必要に応じて用いられるバインダー樹脂より構成される。これらの電荷輸送物質及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。必要により電荷輸送物質及びバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
電荷輸送層2に含有される電荷輸送物質は、特に限定されるものではなく、公知の物質を使用することができる。例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(P−メチル)フェニルアミン、N,N’−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N’−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N’−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体等の正孔輸送物質、クロラニル、ブロモアニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物などの電子輸送物質等が挙げられる。更には、電荷輸送物質は、以上例示した化合物の基本構造を主鎖又は側鎖に有する重合体等も挙げられる。そして、これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、電荷輸送層2に含有されるバインダー樹脂は特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができるが、電機絶縁性のフィルムを形成することが可能な樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンーブタジエン共重合体、塩化ビニリデンーアクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂。シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレンーアルキッド樹脂、ポリ−N−カルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルフォルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド、カルボキシーメチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーワックス、ポリウレタン等が挙げられる。そして、これらのバインダー樹脂は、単独又は2種類以上混合して用いることができる。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂が電荷輸送材との相溶性、溶剤への溶解性、強度の点で優れているので好ましく用いられる。
また、バインダー樹脂と電荷輸送物質との配合比(質量比)は電気特性低下、膜強度低下に考慮しつつ任意に設定することができる。この電荷輸送層2の厚みは5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることがより好ましい。
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
更に、電荷輸送層2の形成用の塗布液に用いる溶剤としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送層2の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
図1(b)は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図1(b)に示す電子写真感光体110は、導電性支持体層3と、感光層6との間に下引層4を備えること以外は図1(a)に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。この下引層4は、感光層6の帯電時において、導電性支持体層3から感光層6への電荷の注入を阻止する機能を有する。また、この下引層4は、感光層6を導電性支持体層3に対して一体的に接着保持せしめる接着層としても機能する。更に、この下引層4は、導電性支持体層3の光反射を防止する機能を有する。
この下引層4は、樹脂、有機或いは無機の粉末、電子輸送性物質等から任意に選択されて構成される。樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子樹脂化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。そして、これらの化合物は単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いることができる。更にこれらの中でも、ジルコニウムキレート化合物、シランカップリング剤は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど性能上優れている。
上記のシランカップリング剤の例としてはビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルメトキシシラン、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも特に好ましく用いられるシリコーン化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
チタニウムキレート化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
下引層4中には、電気特性の向上や光散乱性の向上などの目的により、各種の有機化合物の微粉末もしくは無機化合物の微粉末を添加することができる。特に、酸化チタン、酸化亜鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、リトポン等の白色顔料やアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料としての無機顔料やポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子などが有効である。添加微粉末の粒径は0.01〜2μmのものが用いられる。微粉末は必要に応じて添加されるが、その添加量は下引層4の固形分の総質量に対して、質量比で10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
また、下引層4中には、先に説明した電子輸送性物質、電子輸送性顔料等を含有させることも低残留電位化や環境安定性の観点から有効である。更に、下引層4の厚みは0.01〜30μm、好ましくは0.05〜25μmが好ましい。また、下引層4を形成するための塗布液を調製する際に、微粉末状の物質を添加する場合には樹脂成分を溶解した溶液中に添加して分散処理が行われる。この分散処理方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの方法を用いることができる。更に、この下引層4は導電性支持体層3上に下引層4を形成するための塗布液を塗布し、乾燥させることにより形成することができる。このときの塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
図1(c)は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。図1(c)に示す電子写真感光体120は、感光層6上に電荷注入層5を備えること以外は図1(a)に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。また、図2(a)に示す電子写真感光体130は、感光層6上に電荷注入層5を備えること以外は図1(b)に示した電子写真感光体110と同様の構成を有する。
電荷注入層5を設ける場合のため、以下にその例を挙げる。但し、電荷注入層5の構成は例示されるものに限定されない。
電荷注入層5が導電性粒子を含有する場合を例にすると、ここで用いられる導電性粒子としては、金属、金属酸化物およびカーボンブラックなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀、ステンレスなど、およびこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したものなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、およびアンチモンをドープした酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これら単独で用いることも、2種類以上を混合して用いることもできる。2種類以上を混合した場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。本発明においては、上述した導電性粒子の中でも透明性の点で金属酸化物を用いることが特に好ましい。
本発明において用いられる導電性粒子には、分散液中での粒子の凝集防止などの目的で表面処理を施してもよい。また、必要に応じて表面処理後の粒子に更に粉砕処理を施してもよい。また、本発明において用いられる導電性粒子の平均粒径は、電荷注入層5の透明性の点で0.3μm以下が好ましく、特には0.1μm以下が好ましい。
電荷注入層5は必要に応じてバインダー樹脂を含有するが、かかるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート(ポリカーボネートZおよび変性ポリカーボネートなど)、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂および塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。特に、アクリロイル基を1分子中に2個以上持った光硬化型アクリル系モノマー中に導電性粒子を分散した溶液を感光層上に塗布、乾燥後、光硬化することによって形成した電荷注入層5は、膜の強度および導電性粒子の分散性共に非常に優れたものである。
電荷注入層5の膜厚は、0.1〜10μmであることが好ましく、特には0.5〜7μmであることが好ましい。
また、より安定に注入帯電を行うためには、電荷注入層5は1×109〜1×1014Ω・cmの範囲の体積抵抗を有することが好ましい。膜強度的には、導電性粒子の数が増えるほど弱くなるため、導電性粒子の量は、電荷注入層5の抵抗および残留電位が許容できる範囲において、少なくすることが好ましい。
なお、電荷注入層5を有さない電子写真感光体の場合でも、感光層の表面が上記抵抗範囲にある場合には、電荷注入層5を設けた時と同じく安定に注入帯電が可能である。
また、電荷注入層5に4フッ化エチレン樹脂などの滑剤を内包させることにより、電子写真感光体表面の表面エネルギーを抑えて、帯電粒子の付着を全般的に抑える効果がある。その表面エネルギーは水の接触角で表すと好ましくは85度以上、更に好ましくは90度以上であることが好ましい。これもまた、電荷注入層5を用いない場合の感光層表面が上記の表面エネルギーを満たしていれば、同等の効果が得られる。
また、本発明の電荷注入層5には、必要に応じて分散性、結着性および耐候性などの特性を向上させる目的で、カップリング剤および酸化防止剤などの種々の添加剤を含有させることができる。
上記のようにして、電荷発生材料として特定の波長領域に分光吸収スペクトルの吸収極大を有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを含有せしめることにより、画質欠陥のない高精細な画像の出力が可能で環境の変化や繰り返し使用による電位変動が少なく、かつ繰り返し使用時における画質劣化の少ない注入帯電用の電子写真感光体を得ることができる。
なお、上記の実施形態の電子写真感光体100、110、120及び130においては、感光層6が2層構造を有している場合について説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、本発明においては、図2(b)に示すように、単層構造の感光層6を備える電子写真感光体140を用いることもできる。なお、この場合にも、導電性支持体層と感光層との間に下引層を備えるものであってもよく、また、感光層6上に電荷注入層5を備えるものであってもよい。さらに、下引層4と電荷注入層5を共に有するものであってもよい。
本発明にかかる電子写真感光体は注入帯電方式の電子写真装置で用いられるので、電子写真感光体の最表面層には電荷を直接注入するための電荷注入層としての特性も必要である。そのため、必要ならば導電性粒子を樹脂に分散させた層や抵抗制御された層などを電荷注入層として上記の感光層の上に設けてもよい。
次に、本発明における帯電方法について説明する。本発明における帯電方法は、上述の通り、放電現象を伴わない接触帯電方法である。つまり、接触帯電装置への印加電圧に対応した電位で感光体を帯電出来る電荷注入帯電方法である。この方法は、放電を伴わないために、オゾンや窒素酸化物発生が少なく、また感光体を帯電させるための印加電圧も、従来の接触帯電方法を用いたプロセスよりも更に低いため、省エネルギーである。
使用される感光体としては、前述した最表層に電荷注入層としての機能を有するものが好ましい。電荷注入層は、いわゆるコンデンサーの電極的役割を果たす。この電極に対して、導電性の接触帯電部材を当接させ、電圧を印加すると、電荷を注入することが可能となる。このような電荷注入層がない場合、感光体表面には、電極となりうるものがなく、十分な電荷注入が出来ない。
電荷注入層を感光層表面に設けることにより、電荷注入層下の感光層面に均一なチャージシートを形成することが可能となる。電荷注入層には接触帯電装置により印加された電荷を速やかに感光層表層に移動させ、均一なチャージシートを形成する特性が要求される。均一なチャージシートを形成させるためには電荷注入層及び接触帯電装置双方に均一な接触性、ニップ、接触抵抗、部材の体積固有抵抗等の特性が必要であり、それらの特性を好適な範囲に設定する必要がある。
接触帯電方法としては図3(a)〜(e)に示すような方式例がある。図3(a)では磁気ブラシ帯電装置302a、図3(b)では(導電性)ブラシ帯電装置302b、図3(c)では導電性のソフトローラーを使用したローラー帯電装置302c、図3(d)では固定式(ブレード式)の帯電装置302d、図3(e)では2本のローラーを使用し導電性ベルトを使用したベルト式帯電装置302eがそれぞれ使用される。また、電子写真感光体301の構成は、最表面層への注入帯電が可能であれば特に制限されず、例えば図1(a)〜(c)に示した電子写真感光体100、110、120、あるいは図2(a)、(b)に示した電子写真感光体130、140のいずれかと同様とすることができる。
電子写真感光体301を均一に放電を伴わずに帯電するためには、適正な印加電圧で感光体との必要なニップを確保し、感光体と帯電器の空隙を出来るだけ減らし、接触を出来る限り密にする必要がある。
図3(a)の磁気ブラシ帯電装置302aでは、S、N極の磁石を交互に配置したマグネットローラーにアルミニウムやベークライトなどの非磁性材のスリーブを被覆し構成された磁性ローラーに、20〜150μm程度の球形もしくはほぼ球形のフェライト、酸化マンガン、γ酸化第II鉄などの磁性微粒子、もしくはそれらにポリエステル樹脂やフッ素樹脂などの流動性改善、保護層等を目的として被覆された微粒子を1から5mm程度の厚さに吸引し、層形成されたものが使用される。前記微粒子の抵抗値は通常105Ω・cm〜1010Ω・cmの範囲のもので、抵抗の低い方が電荷注入性は良好である。磁気ブラシを使用することによって、クリーニングレスのプロセスを形成することも可能である。
図3(b)の導電性ブラシ帯電装置302bは、レーヨン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル等の繊維をカーボンや硫化銅等で導電処理したり、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタンなどの導電性フィラーを練り込んだ繊維と紡糸したり、さらには金属糸を編み込んだりした部材を用いブラシ状化される。また、繊維を不活性ガス雰囲気中で焼成した炭素繊維や活性炭素繊維等も使用できる。接触帯電装置302bの部材の抵抗は102Ω・cm〜1010Ω・cmの範囲のものが好ましい。
炭素繊維や活性炭素繊維は焼成温度で体積固有抵抗を自由に変化させることが可能である。炭素成分が90%以上にも成ると、抵抗が102Ω・cm程度と極めて低くなる。したがって、感光体にピンホールがある場合には放電破壊の危険性があるが、低い電圧で使用する場合には問題ない。通常は100KΩ〜5MΩ程度の保護抵抗を電圧供給源との間に直列に挿入して使用する。
図3(c)の(ソフト)ローラー帯電装置302cは電子写真感光体301とのニップを稼ぐのと、感光体との密着性を良好にする為に好適である。ソフトローラーの材質は軟質性のゴムやソフトフォーム(ウレタン系のスポンジやフォームなど)等が使用され、表層もしくは層全体に導電処理が施される。導電処理材としてはSnO2やTiO2、ZnO2、カーボンブラックなどの導電性フィラー、炭素繊維、活性炭素繊維などの導電性繊維などがある。
図3(d)の固定式(ブレード式)の帯電装置302dは電子写真感光体302を摺擦するような形式で帯電する方法で、前述した部材は殆ど使用可能である。構成としては、例えば、スポンジやフォームのような弾性部材に帯電部材として織り目の細かい炭素繊維や活性炭素繊維(ユニチカ、東邦レーヨン、同ベスロン等で制作、東邦レーヨンの例ではFW210や同310など)を被覆するような形として、感光体に当接させ帯電を行う。
図3(e)のベルト式帯電装置302eは電子写真感光体301とのニップを稼ぐのに良好な手段である。使用できる材料は、導電性ブラシ帯電方法、ローラー帯電方法で説明したような部材が使用できる。感光体との接触に必要なニップは幅広いほど好ましいが、通常は3mm〜10mm程度以上あれば良く、電子写真感光体301に均等に接触するようにするのが望ましい。
以上述べた各種部材を帯電部材として使用した場合の体積固有抵抗は102Ω・cm〜1010Ω・cmが望ましく、好ましくは108Ω・cm以下がよい。抵抗が高い程、電荷注入性が低下する。低すぎる場合には、電荷注入性は問題ないが、感光体にピンホールが有った場合に、電源ブレークや画像上に横黒筋が発生する危険性がある。通常、電子写真感光体130の帯電電位は−500〜−800V程度であるため、放電破壊に対する危険性は小さく、オゾンが発生したとしても極めて少ないため、実用上の影響は小さい。
次に、図4を参照して、本発明の電子写真装置の好適な実施形態について詳述する。なお、図4は本発明のプロセスカートリッジを含む電子写真装置である。
図4に示した電子写真装置が備えるプロセスカートリッジ400は、帯電部、現像部、クリーニング部等のユニットが、一体構成となっているもので、取り付け、取り外しなどが、簡便となる。図4は、その電子写真プロセスカートリッジの一例である。この模式断面図の説明に沿って、本発明の電子写真プロセスを説明する。
図中、411は本発明の電子写真感光体である。まず帯電装置[図に示したものは図3(III)の帯電装置208と同様である]412により、電子写真感光体411の帯電が行われる。次いで、帯電した電子写真感光体411の表面がイメージ露光413を受け、露光された部分で電荷が発生し、電子写真感光体411の表面に静電潜像が形成される。電子写真感光体411の表面に静電潜像を形成した後、現像ローラー414を介して現像剤と接触し、トナー像を形成する。形成されたトナー像は、転写ローラー416により紙などの被転写媒体415へ転写され、定着ユニット419を通過してハードコピーとなる。電子写真感光体411上の残留トナーはクリーニングユニット417により除去され、残留電荷は除電ランプ418で除かれて、次の電子写真サイクルに移る。
本画像形成方法及び感光体を用いる電子写真プロセスは、上記一例に限定されるものではなく、少なくとも、帯電及び露光により、静電潜像を形成するプロセスであれば、どのようなものであってもかまわない。特にこの画像形成方法では、トナーの転写効率を上げ、転写後残留するトナーを、クリーニングユニットを用いずに、帯電装置や現像装置で回収するクリーナーレスである方が、感光体に対し、機械的負荷が小さいため、望ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の感光層形成用塗布液及びその製造方法、電子写真感光体及びこれを用いたプロセスカートリッジ並びに電子写真装置の内容をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[ヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造]
以下に示す製造方法により実施例1〜6及び比較例1〜3のヒドロキシガリウムフタロシアニンを製造し、これを用いて感光層形成用塗布液を調製し、図2(a)に示した電子写真感光体130と同様の四層構造を有する実施例7〜実施例12、比較例4〜比較例7の電子写真感光体を作製した。
(I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの製造)
1,3−ジイミノイソインドリン30重量部および三塩化ガリウム9.1重量部をジメチルスルホキシド230重量部に加え、160℃で6時間攪拌しながら反応させて赤紫色結晶を得た。得られた結晶をジメチルスルホキシドで洗浄した後、イオン交換水で洗浄し、乾燥してI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶28重量部を得た。次に、得られたI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶10重量部を60℃に加熱した硫酸(濃度97%)300部に十分に溶解したものを、25%アンモニア水600重量部とイオン交換水200重量部との混合溶液中に滴下した。析出した結晶を濾過により採取し、さらにイオン交換水で洗浄し、乾燥してI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン8重量部を得た。
このようにして得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンについて、X線回折スペクトルの測定を行った。その結果を図5に示す。なお、本実施例におけるX線回折スペクトルの測定は、粉末法によりCuKα特性X線を用いて、以下の条件で行った。
使用測定器:理学電機社製X線回折装置Miniflex
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
ステップ角度(2θ):0.02deg.
(実施例1)
上記の工程で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン6重量部を、N,N−ジメチルホルムアミド90重量部、外径0.9mmのガラス製球形状メディア350重量部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で48時間湿式粉砕処理した。このときのヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAXは827nmであった。
次いで、得られた結晶をアセトンを用いて洗浄し、乾燥してCuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン5.5重量部を得た。得られたヒロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図6、分光吸収スペクトルを図11、透過型電子顕微鏡写真を図16にそれぞれ示す。
また、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、およびBET法による比表面積値、さらには透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
分光吸収スペクトル測定は、日立製作所製のU−2000型分光光度計を用い、測定液は、室温の下で酢酸nブチル8mLに少量のヒドロキシガリウムフタロシアニンを超音波洗浄器を用いて分散させて調製した。比表面積値は、BET式の比表面積測定器(フローソープII2300:島津製作所社製)を用いて測定した。また、透過型電子顕微鏡(H−9000、日立製作所社製)を用いて、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粒形状態を観察した。
(実施例2)
実施例1において、湿式粉砕処理時間を48時間から96時間に代えた。このときのヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAXは825nmであった。これ以外は、実施例1と同様にしてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5.5重量部を得た。得られたヒロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図7、分光吸収スペクトルを図12、透過型電子顕微鏡写真を図17にそれぞれ示す。また、得られたヒロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、BET法による比表面積値、および透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、湿式粉砕処理時間を48時間から192時間に代えた。このときのヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAXは819nmであった。これ以外は、実施例1と同様にしてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5.5重量部を得た。得られたヒロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図8、分光吸収スペクトルを図13、透過型電子顕微鏡写真を図18にそれぞれ示す。また、得られたヒロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、BET法による比表面積値、および透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、外径0.9mmのガラス製球形状メディア350重量部に代えて外径2.0mmのガラス製球形状メディア350重量部を用いた。このときのヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAXは827nmであった。これ以外は、実施例1と同様にしてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5.5重量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトル及び、分光吸収スペクトルは作製例1と同様のスペクトルをそれぞれ示した。また、得られたヒロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、BET法による比表面積値、および透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、外径0.9mmのガラス製球形状メディア350重量部に代えて外径0.3mmのガラス製球形状メディア400重量部を用い、N,N−ジメチルホルムアミドの使用量を90重量部から120重量部に替えた。このときのヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAXは826nmであった。これ以外は、実施例1と同様にしてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5.5重量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトル及び、分光吸収スペクトルは作製例1と同様のスペクトルをそれぞれ示した。また、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、BET法による比表面積値、および透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
(比較例1)
上記の工程で得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン5重量部を、N,N−ジメチルホルムアミド80重量部とともに25℃で48時間、撹拌装置を有するガラス製撹拌槽を用いて撹拌した。次いで、得られた結晶をアセトンを用いて洗浄し、乾燥して、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン5.5重量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図9、分光吸収スペクトルを図14、透過型電子顕微鏡写真を図19にそれぞれ示す。また、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、およびBET法による比表面積値、さらには透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、外径0.9mmのガラス製球形状メディア350重量部の代わりに、外径5.0mmのガラス製球形状メディア350重量部を使用した。このときのヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAXは845nmであった。これ以外は実施例1と同様にして、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5.5重量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンはCuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンであった。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図10、分光吸収スペクトルを図15、透過型電子顕微鏡写真を図20にそれぞれ示す。また、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λMAX、およびBET法による比表面積値、さらには透過型電子顕微鏡写真より求めたヒドロキシガリウムフタロシアニンの一次粒子径の値を表1に示す。
(実施例6)
1,3-ジイミノイソインドリン30部および三塩化ガリウム9.1部をキノリン230部中に添加し、200℃において3時間反応させた後、生成物を濾別した。次いで、アセトン、メタノールで洗浄し、湿ケーキを乾燥してクロロガリウムフタロシアニン結晶28部を得た。上記のクロロガリウムフタロシアニン結晶3部を濃硫酸60部に0℃にて溶解後、この溶液を5℃の蒸留水450部中に滴下して結晶を析出させた。蒸留水、希アンモニア水等で洗浄後、乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶2.5部を得た。
得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶0.5部をジメチルホルムアミド15部および直径1mmのガラスビーズ30部と共にミリングし、結晶変換の進行度合いを湿式粉砕処理液の吸収波長測定によってモニターし、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの分光吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ MAX の経時変化を250時間まで追跡した。結果を図22に示す。図22より、150時間で吸収極大波長λ MAX が最小値を示したため、150時間で湿式粉砕処理を終了し、メタノールで洗浄、乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶0.4部を得た。
(比較例3)
実施例6と同一条件で結晶変換処理を24時間行った後、メタノールで洗浄、乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶0.4部を得た。
(実施例7)
外径30mmφ、肉厚1mmのアルミニウムパイプを研磨剤(昭和タイタニウム社製、商品名;アルミナビーズCB−A30S、平均粒径D50=30μm)を用いて液体ホーニング処理することにより粗面化し、中心線平均粗さRaが0.18μmとなるように粗面化した。次いで、ポリビニルブチラール樹脂(BM−1、積水化学社製)6重量部、硬化剤 ブロック化イソシアネート スミジュール3175(住友バイエルンウレタン社製) 12重量部、酸化亜鉛(Nano Tech ZnO、シーアイ化成社、一次粒径30nm) 41重量部、シリコーンボール(トスパール120、東芝シリコーン社製)1重量部、レベリング剤 シリコーンオイルSH29PA(東レダウコーニングシリコーン) 100ppm、メチルエチルケトン 52重量部からなる材料をバッチ式ミルにて10時間の分散を行い、下引層用の分散液を作製した。
この塗布液を前記粗面化したアルミニウムパイプ上に浸漬塗布し、150℃で30分間加熱乾燥し、膜厚20.0μmの下引層を作製した。
次に、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)1重量部を酢酸n−ブチル100重量部に溶解させた溶液と実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン1重量部とを混合し、外径1mmのガラスビーズ150重量部とともに、5時間サンドミルで分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を上記の下引層上に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を作製した。
さらに、電荷輸送物質としてN、N’−ジフェニル−N、N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4重量部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6重量部、テトラヒドロフラン80重量部、及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.2重量部を混合し、電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた溶液を浸漬塗布装置によって、上記の電荷発生層上に塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を作製した。
次に、下記式(I)で表されるアクリルモノマー25部、下記式(II)で示される化合物で処理した(処理量7%)アンチモンドープ酸化スズ粒子(数平均粒径0.03μm)50部およびエタノール150部を、サンドミルにて66時間かけて分散し、更に、ポリテトラフルオロエチレン粒子(数平均粒径0.18μm)20部を加えて分散を行った。その後、光重合開始剤として2−メチルチオキサントン3部および下記式(III)で表される光重合開始剤9部を溶解し、電荷注入層用溶液とした。
この溶液を用いて、先の電荷輸送層上に浸漬コーティング法により塗布し、高圧水銀灯にて160mW/cm2の光強度で60秒間光硬化を行い、その後に120℃の温度で2時間熱風乾燥して電荷注入層を得た。得られた電荷注入層の膜厚は4μmであった。また、電荷注入層用溶液の分散性は良好で、電荷注入層の表面は、ムラのない均一な面であった。こうして電子写真感光体ドラムを作製した。
(実施例8〜12)
実施例7において、電荷発生材料として実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに実施例2〜6のヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた以外は、それぞれ実施例7と同様にして電子写真感光体を作製した。
(比較例4〜6)
実施例7において、電荷発生材料として実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりに比較例1〜3のヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた以外は実施例7と同様の方法でそれぞれ電子写真感光体を作製した。
(比較例7)
実施例7において、電荷発生材料として実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニンの代わりにCuKαの特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.6°、10.2°、25.3°および28.6°に強いピークを有するオキシチタニウムフタロシアニン顔料を用いた以外は、実施例7と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価
このようにして得られた実施例7〜12、および比較例5〜8の電子写真感光体ドラムの電子写真特性を評価するために、以下の手順で電子写真特性の測定を行った。
評価には、富士ゼロックス(株)製レーザープリンター(DocuPrint 260)を、以下の様に磁気ブラシを用いた注入帯電方式に改造して用いた。注入帯電を行うための帯電部材として、数平均粒径25μmのZn−Cuフェライト粒子と平均粒径10μmのZn−Cuフェライト粒子を中抵抗樹脂層でコートした磁性粒子を用いた。なお、中抵抗層は、導電性酸化チタン粒子および四フッ化エチレン樹脂粒子をポリカーボネート樹脂に分散した溶液を用いて形成した。接触帯電部材は、上記被覆性磁性粒子およびこれを支持するための非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロールから構成され、上記被覆性粒子保持スリーブと電子写真感光体との間隙は約500μmとした。
また、マグネットロールは固定、スリーブ表面が電子写真感光体の周速に対して2倍の速さで逆方向に摺擦するように回転させ、電子写真感光体と磁気ブラシが均一に接触するようにした。帯電部材の抵抗は、5×105Ωであった。また、帯電部材への印加電圧はDCのみで−600Vであった。
測定は20.0℃/50%RHの環境下で、以下のように行った。帯電部材への印加電圧はDCのみで−600Vにて帯電し(A)、780nmの半導体レーザーを用いて、1秒後に10.0ergs/cm2 の光を照射して放電を行い(B)、更に、3秒後に50ergs/cm2 の赤色LED光を照射して除電を行う(C)というプロセスによって、各部の電位を測定した。この場合、(A)の電位VHは、高い程感光体の受容電位が高いために、コントラストを高くすることが可能であり、(B)の電位VLは低い程高感度であり、(C)VRPの電位は低い程残留電位が少なく、画像メモリーやカブリが少ない感光体であると評価することができる。これらの結果を表2に示す。
(2)繰り返し特性の評価
上記帯電、露光および除電の操作を1万回繰り返し、帯電・露光後の各部の電位の測定も行った。
測定した。これらの結果を表2に示す。
(3)画質評価試験
画質評価試験には、前出の富士ゼロックス(株)製レーザープリンター(DocuPrint 260)改造機を用いた。
測定、サンプリングおよび画質評価は、以下のように行った。32.5℃/90%RHの環境下で、1ドット1スペースのハーフトーン画像および全面白の画像を出力してその画像を顕微鏡で観察し、黒線部のつぶれやトナーの飛び散りの度合いを評価した。続いて電子写真感光体の暗電位Vdを測定した。また、約2mm幅の線を縦横7mmおきに印字した画像を2万枚出力した後、全面白の画像を出力し、この画像を目視およびルーペで観察することにより評価した。その結果を表3に示す。
(4)電荷発生材料の分散性評価
実施例7〜12、および比較例5〜8で用いた各電荷発生材料の分散性の評価を行うために、ガラスプレート上に電荷発生層を形成し、顕微鏡を用いてその分散状態を観察した。その結果を表2に示す。なお、表3中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察されたり塗膜表面がざらついていたことを意味する。
(実施例12)
実施例7で作製した電子写真感光体を、前出の富士ゼロックス(株)製レーザープリンター(DocuPrint 260)改造機に搭載し、23℃/50%RH、32.5℃/90%RHおよび15℃/10%RHの環境下で48時間以上放置後に明電位を測定、環境が変化した時の明電位変動幅を絶対値で求めた。結果を表4に示す。
(比較例8)
実施例12において、電子写真感光体を比較例7で作製したものに代えたこと以外は、実施例12と全く同様にして環境変化による明電位変動の幅を絶対値で求めた。結果を表4に示す。
表1〜4に示すように、分光吸収スペクトルが、810〜839nmに吸収極大を有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体は、優れた電子写真特性を有し、分散性が良好であり、かかる電子写真感光体を備える電子写真装置において、細線の太りや細り、バックグラウンドのかぶりや黒点などの現象を生じることなく良好な画質が得られることが確認された。これに対して、従来の製造方法によって得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体は、暗減衰や帯電性などの電気特性に問題があり、電荷発生層における電荷発生材料の分散性が不十分となりやすく、その結果、電子写真装置においてかぶりや黒点が生じやすかった。
1…電荷発生層、2…電荷輸送層、3…導電性支持体層、4…下引層、5…電荷注入層、6…感光層、100、110、120、130、140…電子写真感光体、301…電子写真感光体、302a〜302e…注入帯電装置、400…プロセスカートリッジ、411…電子写真感光体、412…注入帯電装置、413…イメージ露光、414…現像ローラー、415…被転写媒体、416…転写ローラー、417…クリーニングユニット、418…除電ランプ。