JP2004018600A - フタロシアニン顔料の製造方法並びにフタロシアニン顔料、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子写真感光体に使用された場合に、良好な光感度特性及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に伴うこれらの特性の低下を充分に防止可能な高い耐久性を得ることができる電子写真感光体を構成可能なフタロシアニン顔料の製造方法及びこれにより得られるフタロシアニン顔料、並びに、該顔料を有する電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置の提供。
【解決手段】中心金属を有するフタロシアニン化合物の粒子を酸に溶解して得られるフタロシアニン化合物溶液を溶剤中に添加することにより、前記化合物と同一の中心金属を有しておりかつ前記化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料を析出させる処理工程を経てフタロシアニン顔料を調製する。フタロシアニン化合物溶液とこの溶液を添加する溶剤とからなる混合溶液の液温を−10℃未満に保持し、フタロシアニン顔料を析出させる。
【選択図】図1
【解決手段】中心金属を有するフタロシアニン化合物の粒子を酸に溶解して得られるフタロシアニン化合物溶液を溶剤中に添加することにより、前記化合物と同一の中心金属を有しておりかつ前記化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料を析出させる処理工程を経てフタロシアニン顔料を調製する。フタロシアニン化合物溶液とこの溶液を添加する溶剤とからなる混合溶液の液温を−10℃未満に保持し、フタロシアニン顔料を析出させる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フタロシアニン顔料の製造方法並びにフタロシアニン顔料、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フタロシアニン顔料は、塗料、印刷インキ、触媒又は電子材料として有用な材料であり、特に近年は電子写真感光体用材料、光記録用材料及び光電変換材料として広範に検討がなされている。
【0003】
フタロシアニン顔料は、通常、製造方法、処理方法の違いにより多数の結晶型を示すことが知られており、更にこの結晶型の違いによってフタロシアニン顔料の光電変換特性が変化することが知られている。例えば、中心金属を銅とする銅フタロシアニン顔料の結晶型としては、安定系のβ型以外に、α、π、x、ρ、γ、δ等の結晶型が存在し、これらの結晶型は機械的歪力、硫酸処理、有機溶剤処理、熱処理等によって相互に転移が可能であることが知られている(例えば米国特許第2,770,629号公報、同第3,160,635号公報、同第3,708,292号公報、同第3,357,989号公報)。また、特開昭50−38543号公報等には、銅フタロシアニン顔料の結晶型の違いと電子写真感度との関係について記載されている。
【0004】
上記の銅フタロシアニン顔料以外にも、メタルフリーフタロシアニン(中心金属を有さない、いわゆる「無水フタロシアニン」又は単に「フタロシアニン」と呼ばれるもの)顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロアルミニウムフタロシアニン顔料、クロロインジウムフタロシアニン顔料等のうち特定の結晶型を有するものを電子写真感光体に用いることが提案されている。例えば、特開平5−263007号公報、特開平6―1923号公報、特開平7―261435号公報には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料のうち特定の結晶型を有するものを用いた電子写真感光体が開示されている。
【0005】
上記フタロシアニン顔料のうち、中心金属を有するフタロシアニン顔料(以下、「中心金属を有するフタロシアニン」を必要に応じて「メタルフタロシアニン」と記述する)を製造する際には、通常、原料となる結晶性の比較的高いメタルフタロシアニン化合物の粒子を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製し、次いでこの溶液をフタロシアニン化合物が不溶な溶剤中に添加することにより、上記フタロシアニン化合物と同一の中心金属を有しておりかつ当該フタロシアニン化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料の粒子を析出させるアシッドペースティング処理(いわゆる「顔料化処理」)が従来から行われている。
【0006】
なお、本明細書において、「フタロシアニン化合物」及び「フタロシアニン顔料」とは、前者はアシッドペースティング処理を行う前の原料を示し、後者がアシッドペースティング処理により原料から得られる生成物を示す。例えば、中心金属としてガリウム原子を有し、かつ、このガリウム原子に塩素が結合した分子構造を有するフタロシアニン化合物を原料としてアシッドペースティング処理した場合には、加水分解により、ガリウム原子に塩素のかわりに水酸基が結合した分子構造を有するフタロシアニン顔料の粒子(原料と比較して結晶性の低いアモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態の粒子)を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のアシッドペースティング処理により得られるメタルフタロシアニン顔料は電子写真感光体の顔料として用いた場合には、感光体の帯電性、暗減衰率等の光感度特性及び電気的特性に大きなばらつきを生じる問題があり、このような電子写真感光体は良好な画像品質を得るためには未だ十分なものではなかった。
【0008】
更に、上記従来のアシッドペースティング処理により得られるメタルフタロシアニン顔料を含む電子写真感光体は、繰返し使用に耐え得る充分な電気特性を得ることが未だ不十分であり、電子写真感光体を繰り返し使用するときに、残留電位の上昇によって画像上に黒点等のいわゆるカブリが発生する問題があった。
【0009】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電子写真感光体に使用された場合に、良好な光感度特性及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に伴うこれらの特性の低下を充分に防止可能な高い耐久性を得ることができる電子写真感光体を構成可能なフタロシアニン顔料の製造方法及びこれにより得られるフタロシアニン顔料、並びに、このフタロシアニン顔料を有しており、高品質の画像を長期にわたり安定して得ることのできる電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来のアシッドペースティング処理においては、得られるフタロシアニン顔料の粒子の形状が不均一となり易く、更に粒子径の大きさが不均一となりそのばらつきが大きく粗大粒子を含み易いため、光電特性のばらつきや粗大粒子の混入による黒点の発生を招き易いことを見出した。
【0011】
そして、本発明者らはかかる知見に基づいて更に鋭意研究を重ねた結果、アシッドペースティング処理において、フタロシアニン顔料粒子の析出時の液温度が、粒子形状、粒子径の大きさ及びその分布に対して大きく影響し、低い温度を維持しながらフタロシアニン顔料粒子を析出させることで、粒子の形状、粒子径の大きさ及び粒子径の分布を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、中心金属を有するフタロシアニン化合物を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製し、次いで、該フタロシアニン化合物溶液を溶剤中に添加することにより、フタロシアニン化合物と同一の中心金属を有し、かつフタロシアニン化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料を析出させるアシッドペースティング処理工程を有しており、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する前記溶剤とからなる混合溶液の温度を−10℃未満の所定の温度に保持しながら、フタロシアニン顔料を析出させること、を特徴とするフタロシアニン顔料の製造方法を提供する。
【0013】
本発明のフタロシアニン顔料の製造方法によれば、得られるフタロシアニン顔料の粒子の形状を容易にそろえることができ、然も、その粒子径を充分に小さくすることが容易にでき、かつ、その粒子径をほぼ均一にそろえることが容易にできる。本発明によれば、より具体的には、上記の温度条件を満たすようにフタロシアニン顔料のアシッドペースティング処理を行うことにより、得られるフタロシアニン顔料の粒子について、平均粒子径が2μm以上となる粒子を生成させることなく平均粒子径が0.18μm以下の充分に小さな粒子を選択的に生成させることができ、然も得られるフタロシアニン顔料の粒子の粒子径をほぼ均一にそろえることが容易にできる。
【0014】
そのため、このフタロシアニン顔料を電子写真感光体の顔料として用いた場合、充分な光感度及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に耐え得る充分な耐久性を得ることができる。その結果、電子写真感光体は高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0015】
また、アシッドペースティング処理における溶媒を添加した液の温度を−10未満の所定の温度に調節することは、例えば、フタロシアニン化合物溶液を加える溶剤の冷却にブラインチラーを使用するなどして比較的容易にできるので、このフタロシアニン顔料の製造方法によれば、所望の粒子径の大きさ及び粒子径の分布を有するフタロシアニン顔料を容易に製造することができる。
【0016】
ここで、本発明において、「アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度を−10℃未満の所定の温度に保持する」とは、上記フタロシアニン化合物溶液を添加する混合溶液の温度を、添加の初期から添加終了までに間−10℃未満に保持することを示す。
【0017】
なお、本発明において、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度を−10℃以上とすると、得られるフタロシアニン顔料の粒子について、平均粒子径が2μm以上となる粒子が生成し、平均粒子径が0.18μm以下の充分に小さな粒子を選択的に生成させることができなくなる。然も得られるフタロシアニン顔料の粒子の粒子径をほぼ均一にそろえることができなくなる。なお、このようなフタロシアニン顔料の粒子を電子写真感光体の顔料に用いると、感光層形成用の塗工液を調製するときに塗工液中における顔料の分散不良が生じ、感光層を形成し感光体を形成した後の光感度特性、電気特性、及び耐久性が不十分となり、その結果、暗減衰率の増加、画質欠陥が生じるなど長期にわたって安定した画像品質を得ることが困難となる。
【0018】
また、本発明において、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度の下限値は、該液の融点以上であれば特に限定されないが、取り扱い性の観点から、−25℃以上であることが好ましい。上記の観点から、本発明において、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度は−20〜−11℃であることがより好ましい。これにより、得られるフタロシアニン顔料の粒子について、平均粒子径が2μm以上となる粒子の生成を防止しつつ、平均粒子径が0.05〜0.15μm以下となる粒子を選択的に生成させることがより確実にできる。然も、得られるフタロシアニン顔料の粒子の粒子径をほぼ均一にそろえることがより確実にできる。
【0019】
また、本発明は、先に述べた本発明の製造方法により調製されること、を特徴とするフタロシアニン顔料を提供する。
【0020】
先に述べたように、本発明のフタロシアニン顔料は、平均粒子径が0.18μm以下の充分に小さな粒子として調製され、然もその粒子径がほぼ均一にそろえられている。そのため、本発明のフタロシアニン顔料を電子写真感光体の顔料として用いた場合、充分な光感度及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に耐え得る充分な耐久性を得ることができる。その結果、電子写真感光体は高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0021】
更に、本発明は、導電性支持体層と、顔料を少なくとも含む感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体であって、顔料が先に述べた本発明のフタロシアニン顔料であること、を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0022】
本発明のフタロシアニン顔料の粒子は粒子径が小さく然も粒子径の大きさがほぼ均一にそろっており極めて良好な分散性を有しているため、これを感光層に含有する本発明の電子写真感光体は、高い解像品質と、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を十分に防止することのできる高い耐久性とを有することとなり、高品質の画像を画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0023】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0024】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体を搭載しているため、高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0025】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする電子写真装置を提供する。
【0026】
本発明の電子写真装置は、本発明の電子写真感光体を搭載しているため、高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0028】
先ず、本発明のフタロシアニン顔料の製造方法及び本発明のフタロシアニン顔料の好適な一実施形態について説明する。
【0029】
本発明のフタロシアニン顔料の製造方法は、先に述べたように、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度を−10℃未満とすること以外の製造条件及び製造手順は特に限定されず、例えば、アシッドペースティング処理工程で、上記混合溶液の温度を−10℃未満とすること以外の製造条件及び製造手順は、例えば、従来のフタロシアニン顔料と同様の製造条件及び製造手順を用いてもよい。
【0030】
そのため、本発明のフタロシアニン顔料の製造方法の要部となるアシッドペースティング処理工程について詳細に説明する。先ず、アシッドペースティング処理工程においては、原料となるフタロシアニン化合物を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製する。
【0031】
ここで、アシッドペースティング処理に使用される原料としてのフタロシアニン化合物としては、感光層形成用塗布液により形成される感光層内において電荷発生材料となるものであれば使用することができるが、高い光感度と、繰り返し使用に対する耐久性とを有する感光層を備えた電子写真感光体をより確実に得る観点から、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物を使用することが好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
ただし、式(I)中、zはAl、Ga、In、Si、Ge、Ti、Snなどの金属元素を示す。また、YはH、OH、O、Cl、Br、I又はFを示し、特にYがO(酸素原子)の場合には、ZとYの結合は2重結合になる。更に、XはH、Cl、Br、又はIを示す。そして、mは1から4の整数、nは1又は2を示す。
【0034】
また、式(I)で表されるフタロシアニン化合物は一般に数種の結晶型を有しているが、いずれの結晶型でも用いることができる。
【0035】
更に、先に述べた同様の観点から、式(I)で表されるフタロシアニン化合物のなかでもアシッドペースティング処理の後に、中心金属に水酸基が結合した分子構造を有するフタロシアニン顔料の原料となるフタロシアニン化合物がより好ましい。このようなフタロシアニン化合物としては、具体的には、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロシリコンフタロシアニン、ジクロロゲルマニウムフタロシアニン、ジクロロズフタロシアニン等が挙げられる。
【0036】
そのほかにも、フタロシアニン化合物として、1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン等のジ(オキソガリウムフタロニアニニル)アルカン(アルコキシ橋かけガリウムフタロシアニン2量体)を用いることもできる。
【0037】
得られるフタロシアニン顔料を電子写真感光体の感光層に含有させたときの電子写真感特性が良好であるため、これらのメタルフタロシアニンの中でも、中心金属にガリウムを有するものが更に好ましい。
【0038】
また、アシッドペースティング処理において使用する酸としては、従来のアシッドペースティング処理と同様の酸を使用してもよく、このような酸としては、具体的には、硫酸、オルトリン酸、ピロリン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられるが、中でも硫酸を用いると、得られるフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径がより小さく且つ均一となり、より高い光電特性が得られるので好ましい。
【0039】
更に、これらの酸はできるだけ高純度のものが好ましく、具体的には、純度が98質量%以上のものを使用することが好ましい。
【0040】
フタロシアニン化合物を酸に溶解したときの液において、フタロシアニン化合物の濃度は、液全量を基準として10質量%以下が好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。フタロシアニン化合物の濃度が10質量%を超えると、粗大粒子が生成する傾向が大きくなるなど、得られるフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径を十分に小さく且つ均一にすることが非常に困難となる傾向にある。粗大粒子が生成すると、暗減衰率の増加、成膜工程に用いる分散液の分散不良、黒点等の画質欠陥の発生等の現象が起こりやすくなる。
【0041】
特に、フタロシアニン化合物としてクロロガリウムフタロシアニンを使用し、これをアシッドペースティング処理し、フタロシアニン顔料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニンの粒子を得る場合には、酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製した後、更に、このフタロシアニン化合物溶液を溶剤に添加することで結晶構造の変換を行う際に、その変換が十分に進行せず、フタロシアニン顔料の光電特性が不十分となったり、光電特性の大きなばらつきが生じやすくなる傾向が大きくなる。また、フタロシアニン化合物の濃度が0.5質量%未満の場合、製造効率が低下する傾向にあるので実用上好ましくない。
【0042】
次に、アシッドペースティング処理工程においては、上記のフタロシアニン化合物を酸に溶解したフタロシアニン化合物溶液を溶剤に加える。このとき、フタロシアニン化合物を酸に溶解したフタロシアニン化合物溶液と溶剤との混合は発熱を伴うので、溶剤を十分に攪拌しながら、先に述べたように溶剤或いは該溶剤に上記液を添加している途中の混合溶液の温度を−10℃未満、より好ましくは、−25℃〜−11℃の範囲うちの所定の温度に保持ながらフタロシアニン化合物を酸に溶解したフタロシアニン化合物溶液を徐々に溶剤に加える。このとき上記フタロシアニン化合物溶液の液温については、特に制限はないが、上記フタロシアニン化合物溶液とこれを添加する溶剤とからなる混合溶液の温度を−10℃未満に保持するため、好ましくは−25℃〜80℃、より好ましくは、−15℃〜60℃の範囲である。
【0043】
これにより、原料のフタロシアニン化合物の結晶構造を変化させることができ、原料と比較して結晶性の低いアモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態のフタロシアニン顔料の粒子を析出物として得ることができる。
【0044】
アシッドペースティング処理工程において使用される溶剤としては、フタロシアニン顔料の粒子を析出させることが可能な溶剤であれば特に制限されないが、具体的には、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合物を用いることができ、当該水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類、ジエチルエーテル、メチルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。特に、本発明においては、上記溶剤の中でも水を用いることが好ましい。
【0045】
また、本発明においては、溶剤として、上記の溶剤に塩基を添加したものを用いると、得られるフタロシアニン顔料の光電特性がより向上する傾向にあるので好ましい。かかる塩基としては、水溶性を示しかつ脱プロトン化が可能なものであれば特に制限されないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ、水酸化マグネシウム、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム塩等が挙げられる。塩基の使用量は、添加するフタロシアニン化合物溶液中の酸の物質量に対して0.5〜5.0倍当量であることが好ましく、0.8〜3.0倍当量であることがより好ましい。
【0046】
また、上記溶剤の使用量は、添加するフタロシアニン化合物溶液1質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。溶剤の使用量が上記下限値未満の場合、粗大粒子が生成するなど、得えられるフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径を十分に小さくかつ均一にすることが非常に困難となる傾向が大きくなる。また、この場合、フタロシアニン化合物を酸に添加した際に加水分解により生成している陰イオンが析出中のフタロシアニン顔料の粒子中に取り込まれやすくなるため、光電特性が不十分となる傾向が大きくなる。
【0047】
また、本発明のフタロシアニン顔料の製造方法においては、アシッドペースティング処理工程により得られるフタロシアニン顔料の粒子を、アシッドペースティング処理工程で用いた溶剤と異なる溶剤に溶解中でミリング又は攪拌することにより、フタロシアニン顔料の粒子の結晶化度及び/又は結晶構造を変化させる溶剤処理工程を更に有することが好ましい。これにより、アシッドペースティング処理工程により得られるフタロシアニン顔料の粒子を、アモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態の粒子から電子写真感光体用の特性に優れた所望の結晶型を有する粒子に変換することができる。
【0048】
なお、この場合、「所望の結晶型」とは、電子写真感光体として所望の感度が得られるのであれば、いずれの結晶型でもよい。
【0049】
特に、中心金属がガリウムであるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は電子写真用に優れた特性を有しており、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸n―ブチル、酢酸iso―アミル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンあるいは、これらに芳香族溶剤を混合したものを用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0050】
また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、アルコール類(メタノール、エタノール等)、多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.7°、16.5°、25.1°及び26.6°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0051】
更に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン等)、有機アミン類(ピリジン、ピペリジン等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.9°、16.5°、24.4°及び27.6°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0052】
また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0053】
更に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.8°、12.8°、15.8°及び26.0°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0054】
なお、溶剤処理工程の溶剤として例示した溶剤は、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料以外のフタロシアニン顔料の粒子に適用してもよい。また、溶剤処理工程の溶剤として塩基を含まないものを用いた場合には、得られるフタロシアニン顔料(例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料)の結晶粒子を水、希塩基性水溶液、有機溶剤等で十分に洗浄して、未反応のメタルフタロシアニン、酸、メタルフタロシアニンの加水分解により生じる陰イオン等の残留物を除去することが好ましい。この洗浄に用いる水としては、純水、蒸留水、イオン交換水等の精製水が好ましく、その電導度は20.0μS/cm以下(より好ましくは10.0μS/cm)であることが好ましい。また、希塩基性水溶液に用いられる塩基としては、上記アシッドペースティング処理における溶剤の説明において例示された塩基が挙げられる。
【0055】
更に、上記洗浄に使用する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n―プロパノール、n―ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘ
キサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n―ブチル等が挙げられる。これらの洗浄に使用する水、希塩基性水溶液又は有機溶剤の使用量は、質量換算で溶剤処理前のフタロシアニン顔料の粒子の10〜1000倍(より好ましくは100〜1000倍)であることが好ましい。また、その後、必要に応じてシランカップリング剤等を用いて表面処理を行ってもよい。
【0056】
以上説明した製造方法により、平均粒子径が0.18μm以下と充分に小さく、然もその粒子径がほぼ均一にそろえられたフタロシアニン顔料の粒子が容易に調製されることとなる。
【0057】
次に、本発明の電子写真感光体について説明する。
【0058】
図1は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、導電性支持体層3と、下引き層4と、感光層6とから構成されている。この電子写真感光体100は、先に述べた本発明のフタロシアニン顔料の製造方法により製造されたフタロシアニン顔料を含有する感光層を備えるものである。
【0059】
導電性支持体層3は、導電性を有していれば特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン・ニッケル−クロム・ステンレス鋼・銅−インジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状のもの使用できる。
【0060】
更には、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物のもの使用できる。また、この他にも、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫ー酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物なども使用することができる。
【0061】
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体層3として用いる場合、その表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない基材表面を粗面化することによりレーザービームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0062】
下引き層4は、以下の利点(i)〜(vi)が得られる観点から導電性支持体層3上に設けることが好ましい。すなわち、下引き層4を配置することにより(i)導電性支持体から感光層への不必要なキャリアの注入が防止されて画質が向上する;(ii)電子写真感光体の光減衰曲線の環境依存性(温度、湿度など)が低減して安定した画質が得られる;(iii)適度な電荷輸送能により、長期にわたって繰り返し使用する場合にも電荷が蓄積されず、感度変動の発生が抑制される;(iv)帯電電圧に対する適度な耐圧性により、絶縁破壊に起因する画像欠陥の発生が防止される;(v)接着層として、感光層を支持体に一体的に保持することができる;(vi)支持体の光反射が防止される、という効果が得られる傾向にある。
【0063】
この下引き層4の材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物などの有機金属化合物が挙げられる。特に、これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため好ましく使用される。
【0064】
また、下引き層4の材料としては、上記の材料の他に、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4,−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、従来より下引き層4に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等のバインダー樹脂を用いることもできる。なお、上記の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
下引き層4の層厚は好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.2〜10μmである。更に、表面粗さ調整のために下引き層4の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0066】
次に下引き層4の形成方法について説明する。この下引き層4は、上述の材料を含む塗布液を導電性支持体層3上に塗布することにより形成することができる。
【0067】
下引き層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
【0068】
例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0069】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0070】
さらに、この下引き層4を設けるときの下引き層4の形成用の塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、この塗工液を導電性支持体層3上に塗布し、溶剤を蒸発させた後、乾燥させることによって下引き層4を形成することができる。この場合、溶剤を蒸発させた後、乾燥させる工程における温度は好ましくは80〜170℃である。
【0071】
なお、下引き層4には、上記の材料中にいわゆる電子輸送性顔料を混合或いは分散させてもよい。このような電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料などの有機顔料;シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子などの電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料;フタロシアニン顔料などの有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機顔料、などが挙げられる。これらの電荷輸送性顔料の中でも、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料及び多環キノン顔料は高い電子移動性を有しているので好ましく使用される。
【0072】
これらの電子輸送性顔料の含有量は、下引き層4中の固形分全量を基準として95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。下引き層4中の電子輸送性顔料の含有量が上記上限値を超えると、下引き層4の強度が低下して塗膜欠陥が生じやすくなる傾向にある。
【0073】
これらの電荷輸送性顔料を下引き層4中に分散させる場合、電荷輸送性顔料の分散方法としては、先に述べた下引き層4の材料を含む塗工液に電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料を分散させた液に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合する方法;樹脂に電子輸送性顔料を分散させた液に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合する方法;樹脂溶液に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合した後電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合した後樹脂溶液に分散させる方法、などが挙げられる。ただし、何れの場合にも、電荷輸送性顔料の混合/分散液においてゲル化や凝集などの発生を抑制することが重要である。また、電子輸送性顔料を混合、分散する際には、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波発生器などを用いることができる。
【0074】
この電子輸送性顔料の混合/分散の工程は有機溶剤中で行われる。この、有機溶剤としては、先に述べた有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合、分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば先に述べた下引き層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒となる有機溶剤が挙げられる。
【0075】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層1と電荷輸送層2とから構成されている。この電荷発生層1は、先に述べた本発明のフタロシアニン顔料(電荷発生物質)を含有するものである。
【0076】
電荷発生層1にはバインダー樹脂が含まれており、フタロシアニン顔料は、このバインダー樹脂中に分散されている。かかるバインダー樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、変性塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル‐無水マレイン酸共重合体、スチレン‐ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン‐アクリロニトリル共重合体、スチレン‐アルキッド樹脂、フェノール‐ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0077】
また、ポリ‐N‐ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレンなどの有機光導電性ポリマーをバインダー樹脂として用いることもできる。なお、電荷発生層1の成膜後に他の層(電荷輸送層等)を更に積層する場合、電荷発生層1の上に積層される層の塗工液の溶剤に溶解する樹脂は好ましくない。
【0078】
また、電荷発生層1は、本発明のフタロシアニン顔料以外に電荷発生材料として、ビスアゾ系顔料、トリアリールメタン系顔料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料などの有機系顔料又は染料を含有してもよい。
【0079】
電荷発生層1における電荷発生材料(フタロシアニン顔料を含む)とバインダー樹脂との配合比は、それぞれの種類に応じて適宜選択されるものであるが、質量比で40:1〜1:4であることが好ましく、20:1〜1:2であることがより好ましい。電荷発生材料の配合量がバインダー樹脂の配合量の40倍(質量換算値)を超えると、電荷発生層1の成膜に用いる分散液の安定性が不十分となる傾向にある。他方、電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/4倍(質量換算値)未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
【0080】
電荷発生層1は、電荷発生材料とバインダー樹脂とを所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を下引き層4上に塗布し、乾燥させることによって好適に得ることができる。
【0081】
ここで、電荷発生層1の形成に用いる有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n―プロパノール、n―ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n―ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
電荷発生層1の形成用の塗布液を調製するには、先の述べたフタロシアニン顔料(或いはこれに上記電荷発生材料を加えたもの)、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等を用いた分散方法が挙げられる。
【0083】
このようにして得られる電荷発生層1の層厚は、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.03〜2μmである。電荷発生層1の層厚が上記下限値未満であると成膜性が低下すると共に十分な機械的強度が得られにくくなる傾向にある。他方、電荷発生層1の膜厚が上記上限値を超えると電気特性上十分な光減衰が得られにくくなる傾向にある。
【0084】
電荷発生層1の形成用の塗布液を下引き層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
次に電荷輸送層2について説明する。電荷輸送層2は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を含有するものである。ここで、電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノンなどのキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7‐トリニトロフルオレノンなどのフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物などの電子輸送性化合物;トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物などが挙げられる。なお、これらの電荷輸送材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの電荷輸送材料の中でも、トリフェニルアミン系化合物及びベンジジン系化合物は、高い電荷(正孔)輸送能と優れた安定性とを有しているので特に好ましい。
【0086】
また、本発明においては、上記の他の電荷輸送材料として、ポリ‐N‐ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する高分子電荷輸送材料を用いることができる。特に、特開平8‐176293号公報や特開平8‐208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。なお、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材料を用いる場合にはバインダー樹脂を用いずとも電荷輸送層2の成膜が可能であるが、高分子電荷輸送材料と後述するバインダー樹脂との混合物を用いて形成してもよい。
【0087】
本発明にかかる電荷輸送層2に用いられるバインダー樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
本発明にかかる電荷輸送層2は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を、電荷発生層1上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。
【0089】
ここで、塗工液中の電荷輸送材料とバインダー樹脂との配合比(質量比)は5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることがより好ましい。電荷輸送材料の配合量が結着樹脂の配合量の5倍(質量換算値)を超えると、電荷輸送層2の機械的強度が低下する傾向にある。他方、電荷輸送材料の配合量がバインダー樹脂の配合量の1/5倍(質量換算値)未満であると、光感度が低下する傾向にある。
【0090】
また、塗工液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、2‐ブタノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレンなどのハロンゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどの環状もしくは直鎖状のエーテル類など有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0091】
更に、塗工液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。このようにして得られる電荷輸送層2の層厚は、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
【0092】
次に、本発明の電子写真感光体の第二実施形態について説明する。
【0093】
図2は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図2に示す電子写真感光体110は、感光層6を単層構造とした以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0094】
図2に示す感光層6は、図1に示した電荷発生層1と電荷輸送層2に含有される本発明のフタロシアニン顔料を含む電荷発生物質と電荷輸送物質とバインダー樹脂とをはじめとする物質を合わせて含有する層である。
電荷輸送材料及びバインダー樹脂としては、図1に示した電荷輸送層2の説明において例示された電荷輸送材料、バインダー樹脂が挙げられる。また、この感光層6の場合にも、先に例示したような本発明のフタロシアニン顔料以外の電荷発生材料を含んでいてもよい。
【0095】
感光層6中におけるフタロシアニン顔料と電荷輸送材料との配合比は、質量比で1:10〜10:1質量比で5:1〜1:20であることが好ましく、また、フタロシアニン顔料とバインダー樹脂との配合比は、質量比で5:1〜1:20であることが好ましい。
【0096】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した電荷輸送物質、上述した有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、上述と同様の方法により導電性支持体層3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。このようにして得られる感光層6の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0097】
次に、本発明の電子写真感光体の第三実施形態について説明する。
【0098】
図3は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。図3に示す電子写真感光体120は、感光層6上に保護層5を備えること以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0099】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6の機械的強度をさらに改善する為に用いられる層である。すなわち、この保護層5を配置することにより、電子写真感光体120は、熱、電気、化学物質などに対する安定性と機械的強度との双方がより高められるとともに、水、放電生成物、トナーなどによる汚染防止効果がより向上する。また、当該保護層5は電子写真感光体に安定性や機械的強度を付与したり汚染物質の表面への付着を防止したりする機能に加えて、電荷輸送層2としての機能をも有する。
【0100】
保護層5の材料としては、上記下引き層4の説明において例示された有機金属化合物、シランカップリング剤、バインダー樹脂等、あるいは更に上記電荷輸送層2の説明において例示された電荷輸送材料が挙げられる。
【0101】
保護層5は、上記の材料を所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を、電荷輸送層2上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。ここで、塗工液に用いる溶剤及び塗布方法としては、それぞれ先に述べた電荷輸送層2の説明において例示された溶剤及び塗布方法が挙げられる。このようにして得られる保護層5の層厚は、電子写真感光体120の感光特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、例えば、電荷輸送層2上に保護層5を設ける場合、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
【0102】
次に、本発明の電子写真感光体の第四実施形態について説明する。
図4は、本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。図4に示す電子写真感光体130は、感光層6を単層構造とし、感光層6上に保護層5を備える以外は図2に示した電子写真感光体110と同様の構成を有する。
【0103】
次に、本発明の電子写真感光体の第五実施形態について説明する。
図5は、本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。図5に示す電子写真感光体140は、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0104】
次に、本発明の電子写真感光体の第六実施形態について説明する。
図6は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図である。図6に示す電子写真感光体150は、感光層6を単層構造とし、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。また、図6に示す感光層6は上述の図2に示した図1に示した電子写真感光体110の感光層6と同様の構成を有する。
【0105】
次に、本発明の電子写真感光体の第七実施形態について説明する。
図7は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。図7に示す電子写真感光体160は、感光層6上に保護層5を設け、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。そして、保護層5は上述の図3に示した感光体120の保護層5と同様の構成を有する。
【0106】
次に、本発明の電子写真感光体の第八実施形態について説明する。
図8は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。図8に示す電子写真感光体170は、感光層6上に保護層5を設け、感光層6を単層構造とし、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0107】
そして、保護層5は上述の図3に示した感光体120の保護層5と同様の構成を有する。更に、感光層6も上述の図2に示した感光体110の感光層6と同様の構成を有する。
【0108】
以上、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。
【0109】
例えば、本発明の電子写真感光体の感光層には、図1、図3及び図5に示した感光体100、120及び130のように2層からなる構成の場合、図2、図2(b)及び図6に示した感光体110、130及び150のように単層構造の場合の何れにおいても、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤・光安定剤・熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
【0110】
例えば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0111】
以上説明した本発明の本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置や、このような電子写真装置に備えれられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の電子写真装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0112】
次に、本発明の本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0113】
図9は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図9に示す電子写真装置200は、電子写真感光体7と、電子写真感光体7をコロナ放電方式により帯電させるコロトロンやスコロトロンなどの帯電手段8と、帯電手段8に接続された電源9と、帯電手段8により帯電される電子写真感光体7を露光して静電潜像を形成する露光手段10と、露光手段10により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段11と、現像手段11により形成されたトナー像を被転写媒体に転写する転写手段12と、クリーニング装置13と、除電器14と、定着装置15とを備える。
【0114】
また、図10は、図9に示す本発明の電子写真装置の別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【0115】
図10に示す電子写真装置210は、電子写真感光体7を接触方式により帯電させる帯電手段8を備えていること以外は、図9に示した電子写真装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電手段を採用する電子写真装置においては、優れた耐摩耗性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器14が設けられていないものもある。
【0116】
帯電手段(帯電用部材)8は、感光体7の表面に接触するように配置され、感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。帯電手段8にはアルミニウム、鉄、銅などの金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化けい素、金属酸化物などの金属酸化物粒子を分散したものなどを用いることができる。
【0117】
この金属酸化物の例としてはZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。また、帯電手段8にはエラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものを使用しても良い。
【0118】
更に、帯電手段8にはその表面に被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、あるいは併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることも出来る。
【0119】
これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラー型、ブレード型、ベルト型、ブラシ型、などが挙げられる。
【0120】
さらに、帯電手段8の電気抵抗値は、好ましくは102〜1014Ωcm、さらに好ましくは102〜1012Ωcmの範囲が良い。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形で印加することもできる。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vであることが好ましく、100〜1500Vであることがより好ましい。他方、直流電圧に交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800Vであることが好ましく、800〜1600Vであることがより好ましく、1200〜1600Vであることがさらに好ましい。また、重畳する交流電圧の周波数は好ましくは50〜20000Hz、より好ましくは100〜5000Hzである。
【0121】
図11は図9に示す本発明の電子写真装置の更に別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図11に示す電子写真装置220は中間転写方式の電子写真装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0122】
ここで、電子写真装置220に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100、電子写真感光体110、電子写真感光体120、電子写真感光体130、電子写真感光体140、電子写真感光体150、電子写真感光体160、電子写真感光体170のいずれかが搭載されていてもよい。
【0123】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード15a〜15dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0124】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体1a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体1a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0125】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409はクリーニングブレード14により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0126】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0127】
更に、図12は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び除電器14を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。
【0128】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
【0129】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0130】
以下に示す手順により実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例6のフタロシアニン顔料の粒子を作製した。
【0131】
なお、説明の便宜上、上述の説明と同様にアシッドペースティング処理工程における原料を「フタロシアニン化合物」とし、生成物を「フタロシアニン顔料」と表現する。更に、溶媒処理工程前のアモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態の粒子を「フタロシアニン顔料の粒子」と表現し、溶媒処理工程後の結晶性の高い粒子を「フタロシアニン顔料の結晶粒子」と表現する。
【0132】
(実施例1)
−クロロガリウムフタロシアニン化合物の合成−
1,3‐ジイミノイソインドリン30質量部及び三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、150℃で4時間反応させた。次に、生成物を濾別し、これをイオン交換水で洗浄し、次いで得られた湿ケーキを乾燥することにより、クロロガリウムフタロシアニン化合物の粒子28質量部を得た。
【0133】
−ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成−
得られたクロロガリウムフタロシアニン化合物の粒子20質量部を、氷浴中で98%濃硫酸800質量部に溶解し、2時間攪拌してクロロガリウムフタロシアニン化合物の粒子が酸に溶解した液(以下、「液1」という)を調製した(クロロガリウムフタロシアニン濃度:2.4質量%)。この液1を、25%アンモニア水1500質量部と蒸留水500質量部との混合溶液(以下、「アシッドペースティング用溶剤」という)中に16時間かけて滴下し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を析出させた。なお、この工程においては、アシッドペースティング用溶剤を常時機械的に攪拌しながら液1の滴下を行い、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の温度を−17℃に保持した。
【0134】
次いで、析出したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を濾別後、蒸留水で濾液の導電性が20μS/cm2未満となるまで洗浄を行い、得られた湿ケーキを真空下、50℃で48時間乾燥させた後、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図13に示す。
【0135】
また、透過型電子顕微鏡(H−9000、日立製作所社製)により、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を倍率15000倍、3視野で観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認された。得られた電子顕微鏡写真を図16に示す。また、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径は0.05μmであった。
【0136】
(実施例2)
実施例1において、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を−14℃に保持した以外は、実施例1と同様の調製条件及び手順によりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子と同様であった。
【0137】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認され、その平均粒子径は0.06μmであった。
【0138】
(実施例3)
実施例1において、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を−11℃に保持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトルは実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子と同様であった。
【0139】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認され、その平均粒子径は0.08μmであった。
【0140】
(実施例4)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子8質量部をジメチルホルムアミド92質量部を液温18℃〜20℃で48hr時間攪拌処理し、沈殿物を分離した。次いで沈殿物をアセトン900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で65℃、24時間乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料結晶粒子7.6質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図14に示す。
【0141】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.15μmであった。
【0142】
(実施例5)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
ジメチルホルムアミド92質量部にかえて、ジメチルホルムアミド80質量部、α−クロロナフタレン10質量部混合液を用いた以外は、実施例4と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子7.1質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例4と同様であった。
【0143】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.16μmであった。
【0144】
(実施例6)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例2で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料粒子8質量部をジメチルホルムアミド92質量部に加え、この顔料分散液を液温18℃〜20℃で48hr時間攪拌処理した後、顔料を分離し、次いでアセトン900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で65℃、24時間乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料結晶粒子を7.5質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例4と同様であった。
【0145】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.16μmであった。
【0146】
(実施例7)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子8質量部をジメチルホルムアミド92質量部に加え、液温18℃〜20℃で48hr時間攪拌処理した後、顔料を分離し、次いでアセトン900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で65℃、24時間乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料結晶粒子を7.4質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例4と同様であった。
【0147】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.17μmであった。
【0148】
(実施例8)
−1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタンの合成−
塩化ガリウム10質量部をトルエン75mlに溶解した後、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液33mlを冷却しながら滴下した。30分程撹拌した後、フタロニトリル33.5質量部、エチレングリコール150mlを加え、窒素雰囲気下、180°Cで24時間撹拌した。生成物を濾過し、次いで、N,N−ジメチルホルムアミド、蒸留水で順次洗浄し、乾燥した後、27.8質量部の1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン化合物の粒子を得た。
【0149】
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成−
得られた1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン化合物の粒子20質量部を、氷浴中で98%濃硫酸800質量部に溶解して2時間攪拌した後、グラスフィルターでろ過して1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン化合物の粒子が酸に溶解した液2を得た(1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン濃度:2.4質量%)。この液2を25%アンモニア水1500質量部と蒸留水500質量部とからなるアシッドペースティング用溶剤中に16時間かけて滴下し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を析出させた。この工程においては、アシッドペースティング用溶剤を常時機械的に攪拌しながら滴下を行ない、液2とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の温度を−12℃に保持した。
【0150】
次いで、析出した粒子を濾別後、蒸留水で濾液の導電性が20μS/cm2未満となるまで洗浄を行い、得られた湿ケーキを真空下、50℃で48時間乾燥させてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図15に示す。
【0151】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認され、その平均粒子径は0.06μmであった。
【0152】
(実施例9)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例8で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部をジメチルホルムアミド167質量部、5mmφガラスビーズ250質量部と共に24時間ミリング処理した後、沈殿物を分離し、次いで蒸留水900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で80℃、24時間乾燥し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子8.6質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図17に示す。
【0153】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.13μmであった。
【0154】
(比較例1)
実施例1において、前記液1と前記アシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を2℃に保持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図18に示す。
【0155】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られた電子顕微鏡写真を図21示す。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子には、粒径2μm以上の粗大粒子が含まれることが確認され、その平均粒子径は0.8μmであった。
【0156】
(比較例2)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の代わりに比較例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部を用いたこと以外は実施例4と同様の処理を行い、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子8.8質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図19に示す。
【0157】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子には、粒径2μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒子径は0.4μmであった。
【0158】
(比較例3)
実施例1において、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を7℃に保持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図20に示す。
【0159】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子には、粒径3μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒子径は0.9μmであった。
【0160】
(比較例4)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の代わりに比較例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部を用いたこと以外は実施例4と同様の処理を行い、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子9.0質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図22に示す。
【0161】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粒形状を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子には、粒径0.8μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒径は0.45μmであった。
【0162】
(比較例5)
実施例8において、液2とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を13℃に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を合成した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルにおける回折ピークは比較例3と同様であった。
【0163】
実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子には、粒子径が2μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒子径は0.5μmであった。
【0164】
(比較例6)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の代わりに比較例5で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部を用いたこと以外は実施例4と同様の処理を行い、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子9.0質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルにおける回折ピークは比較例4の場合と同様であった。
【0165】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶には、粒径3μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒径は0.59μmであった。
【0166】
以上の各実施例及び各比較例のうち実施例1〜実施例3、実施例8、比較例1、比較例3、比較例6の結果を表1に示す。
【0167】
(実施例11〜実施例15、比較例7〜比較例9)
実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例9、比較例2、比較例4、比較例6のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用い、以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例11〜実施例15、比較例7〜比較例9の電子写真感光体を作製した。
【0168】
ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製)8質量部をn−ブチルアルコール152質量部に加えて攪拌し、5質量%のポリビニルブチラール溶液を作製した。次に、トリブトキシジルコニウム・アセチルアセトネートの50%トルエン溶液(商品名:ZC540、松本交商社製)100質量部、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A1100、日本ユニカー社製)10質量部及びn−ブチルアルコール130質量部を混合した溶液を、上記のポリビニルブチラール溶液中に加えてスターラーで攪拌し、下引き層4形成用の塗布液を作製した。この塗布液を40mmφ×319mmのアルミパイプ上に浸漬塗布し、150℃で10分間加熱乾燥して膜厚1.0μmの下引き層4を形成した。
【0169】
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM‐S、積水化学工業社製)1質量部を予め酢酸n‐ブチル49質量部に溶解した溶液に、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例9、比較例2、比較例4、比較例6のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料をそれぞれ1質量部を加えてダイノミルで1.5時間の分散処理を行った。
【0170】
この分散液を酢酸n−ブチルで希釈し、固形分濃度3.0質量%の電荷発生層1形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引き層4にリング塗布機によって塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層1を形成した。また、分散処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の結晶型をX線回折によって調べたところ、分散前の結晶型と同一であり、変化のないことを確認した。
【0171】
更に、N,N′−ビス―(p―トリル)−N,N′‐ビス‐(p‐エチルフェニル)−3,3′−ジメチルベンジジン4質量部及びポリカーボネートZ樹脂6質量部をモノクロロベンゼン40質量部に溶解し、得られた溶液を浸漬塗布装置によって上記の電荷発生層1上に塗布し、115℃で60分加熱乾燥して膜厚18μmの電荷輸送層2を形成させて、各電子写真感光体を得た。
【0172】
すなわち、実施例11(実施例4の顔料を含む感光層を備える)、実施例12(実施例5の顔料を含む感光層を備える)、実施例13(実施例6の顔料を含む感光層を備える)、実施例14(実施例7の顔料を含む感光層を備える)、実施例15(実施例9の顔料を含む感光層を備える)、比較例7(比較例2の顔料を含む感光層を備える)、比較例8(比較例4の顔料を含む感光層を備える)、比較例9(比較例6の顔料を含む感光層を備える)の各電子写真感光体を得た。
【0173】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例11〜実施例15、比較例7〜比較例9の電子写真感光体を図9と同様の構造を有する電子写真装置{レーザープリンタ−スキャナー(商品名:XP−15の改造機、富士ゼロックス社製)}を作製した。なお、帯電手段にはスコロトロン帯電器を用いた。そして、それぞれの電子写真感光体の電子写真特性を以下のように評価した。
【0174】
常温常湿(20℃、40%RH)環境下、グリッド印加電圧−600Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V]を測定した。次に、780nmの半導体レーザーを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V]を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V]を測定した。
【0175】
また、電位A[V]の計測後、1秒経過した後の電位を測定し、その電位差を「暗減衰」[V]として計測した。
【0176】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるかぶりが少ない電子写真感光体と評価される。また、「暗減衰」の値が小さいほど、露光までの間の局所的な帯電性の低下を招きにくく画質欠陥が生じにくいことになる。得られた結果を表2に示す。
【0177】
(2)1万回繰り返し使用後の特性評価
上記の操作を1万回繰り返し、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表2に示す。
【0178】
(3)使用環境の変化に対する安定性評価
上記の操作を低温低湿(10℃、15%RH)、高温高湿(30℃、85%RH)の2つの異なる環境下で行い、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定をそれぞれ行った。そして、これらの異なる環境で測定された電位A〜電位Cの値と、先に述べた20℃、50%RH条件下で測定された初期電位A〜初期電位Cとの間の変動量(ΔA、ΔB、ΔC)を測定し、使用環境の変化に対する各電子写真感光体の安定性評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0179】
なお、表2中の環境安定性の数値は10℃、15%RH条件下又は30℃、85%RH条件下で測定された電位A〜電位Cの値のうち初期電位A〜初期電位Cからの変化量が大きい方の値を記載した。
【0180】
(4)1万枚プリント後の画質評価
30℃、85%RH条件下、1万枚プリント(1万枚印字)試験を行い、得られた画質における黒点の発生の有無を観察した。そして、1万枚プリント後の画質を、「異常なし」;良好な画質が得られた、「黒点発生」;紙面に大きな黒点がみられる、「黒点多数発性」;紙面全体に微細な黒点や大きな黒点がみられいわゆる全面カブリが発生した状態となる、とした評価基準のもとで評価した。これらの結果を表2に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のによれば、電子写真感光体に使用された場合に、良好な光感度特性及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に伴うこれらの特性の低下を充分に防止可能な高い耐久性を得ることができる電子写真感光体を構成可能なフタロシアニン顔料及びこれにより得られるフタロシアニン顔料を提供するができる。更に、本発明によれば、上記のフタロシアニン顔料を有し、高品質の画像を長期にわたり安定して得ることのできる電子写真感光体並びにこの電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図10】図9に示す本発明の電子写真装置の別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図11】図9に示す本発明の電子写真装置の更に別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図13】実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図14】実施例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図15】実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図16】実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図18】比較例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図19】比較例2で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図20】比較例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図21】比較例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの電子顕微鏡写真である。
【図22】比較例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
1…電荷発生層、3…導電性支持体層、4…下引き層、5…保護層、6…感光層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段、13…クリーニング装置、14…除電器、16…取り付けレール、18…露光のための開口部、42…中間層、100,110,120,130,140,150,160,170…電子写真感光体、200…電子写真装置、210…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール、500・・・被転写媒体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フタロシアニン顔料の製造方法並びにフタロシアニン顔料、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フタロシアニン顔料は、塗料、印刷インキ、触媒又は電子材料として有用な材料であり、特に近年は電子写真感光体用材料、光記録用材料及び光電変換材料として広範に検討がなされている。
【0003】
フタロシアニン顔料は、通常、製造方法、処理方法の違いにより多数の結晶型を示すことが知られており、更にこの結晶型の違いによってフタロシアニン顔料の光電変換特性が変化することが知られている。例えば、中心金属を銅とする銅フタロシアニン顔料の結晶型としては、安定系のβ型以外に、α、π、x、ρ、γ、δ等の結晶型が存在し、これらの結晶型は機械的歪力、硫酸処理、有機溶剤処理、熱処理等によって相互に転移が可能であることが知られている(例えば米国特許第2,770,629号公報、同第3,160,635号公報、同第3,708,292号公報、同第3,357,989号公報)。また、特開昭50−38543号公報等には、銅フタロシアニン顔料の結晶型の違いと電子写真感度との関係について記載されている。
【0004】
上記の銅フタロシアニン顔料以外にも、メタルフリーフタロシアニン(中心金属を有さない、いわゆる「無水フタロシアニン」又は単に「フタロシアニン」と呼ばれるもの)顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、クロロアルミニウムフタロシアニン顔料、クロロインジウムフタロシアニン顔料等のうち特定の結晶型を有するものを電子写真感光体に用いることが提案されている。例えば、特開平5−263007号公報、特開平6―1923号公報、特開平7―261435号公報には、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料のうち特定の結晶型を有するものを用いた電子写真感光体が開示されている。
【0005】
上記フタロシアニン顔料のうち、中心金属を有するフタロシアニン顔料(以下、「中心金属を有するフタロシアニン」を必要に応じて「メタルフタロシアニン」と記述する)を製造する際には、通常、原料となる結晶性の比較的高いメタルフタロシアニン化合物の粒子を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製し、次いでこの溶液をフタロシアニン化合物が不溶な溶剤中に添加することにより、上記フタロシアニン化合物と同一の中心金属を有しておりかつ当該フタロシアニン化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料の粒子を析出させるアシッドペースティング処理(いわゆる「顔料化処理」)が従来から行われている。
【0006】
なお、本明細書において、「フタロシアニン化合物」及び「フタロシアニン顔料」とは、前者はアシッドペースティング処理を行う前の原料を示し、後者がアシッドペースティング処理により原料から得られる生成物を示す。例えば、中心金属としてガリウム原子を有し、かつ、このガリウム原子に塩素が結合した分子構造を有するフタロシアニン化合物を原料としてアシッドペースティング処理した場合には、加水分解により、ガリウム原子に塩素のかわりに水酸基が結合した分子構造を有するフタロシアニン顔料の粒子(原料と比較して結晶性の低いアモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態の粒子)を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のアシッドペースティング処理により得られるメタルフタロシアニン顔料は電子写真感光体の顔料として用いた場合には、感光体の帯電性、暗減衰率等の光感度特性及び電気的特性に大きなばらつきを生じる問題があり、このような電子写真感光体は良好な画像品質を得るためには未だ十分なものではなかった。
【0008】
更に、上記従来のアシッドペースティング処理により得られるメタルフタロシアニン顔料を含む電子写真感光体は、繰返し使用に耐え得る充分な電気特性を得ることが未だ不十分であり、電子写真感光体を繰り返し使用するときに、残留電位の上昇によって画像上に黒点等のいわゆるカブリが発生する問題があった。
【0009】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電子写真感光体に使用された場合に、良好な光感度特性及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に伴うこれらの特性の低下を充分に防止可能な高い耐久性を得ることができる電子写真感光体を構成可能なフタロシアニン顔料の製造方法及びこれにより得られるフタロシアニン顔料、並びに、このフタロシアニン顔料を有しており、高品質の画像を長期にわたり安定して得ることのできる電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来のアシッドペースティング処理においては、得られるフタロシアニン顔料の粒子の形状が不均一となり易く、更に粒子径の大きさが不均一となりそのばらつきが大きく粗大粒子を含み易いため、光電特性のばらつきや粗大粒子の混入による黒点の発生を招き易いことを見出した。
【0011】
そして、本発明者らはかかる知見に基づいて更に鋭意研究を重ねた結果、アシッドペースティング処理において、フタロシアニン顔料粒子の析出時の液温度が、粒子形状、粒子径の大きさ及びその分布に対して大きく影響し、低い温度を維持しながらフタロシアニン顔料粒子を析出させることで、粒子の形状、粒子径の大きさ及び粒子径の分布を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、中心金属を有するフタロシアニン化合物を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製し、次いで、該フタロシアニン化合物溶液を溶剤中に添加することにより、フタロシアニン化合物と同一の中心金属を有し、かつフタロシアニン化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料を析出させるアシッドペースティング処理工程を有しており、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する前記溶剤とからなる混合溶液の温度を−10℃未満の所定の温度に保持しながら、フタロシアニン顔料を析出させること、を特徴とするフタロシアニン顔料の製造方法を提供する。
【0013】
本発明のフタロシアニン顔料の製造方法によれば、得られるフタロシアニン顔料の粒子の形状を容易にそろえることができ、然も、その粒子径を充分に小さくすることが容易にでき、かつ、その粒子径をほぼ均一にそろえることが容易にできる。本発明によれば、より具体的には、上記の温度条件を満たすようにフタロシアニン顔料のアシッドペースティング処理を行うことにより、得られるフタロシアニン顔料の粒子について、平均粒子径が2μm以上となる粒子を生成させることなく平均粒子径が0.18μm以下の充分に小さな粒子を選択的に生成させることができ、然も得られるフタロシアニン顔料の粒子の粒子径をほぼ均一にそろえることが容易にできる。
【0014】
そのため、このフタロシアニン顔料を電子写真感光体の顔料として用いた場合、充分な光感度及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に耐え得る充分な耐久性を得ることができる。その結果、電子写真感光体は高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0015】
また、アシッドペースティング処理における溶媒を添加した液の温度を−10未満の所定の温度に調節することは、例えば、フタロシアニン化合物溶液を加える溶剤の冷却にブラインチラーを使用するなどして比較的容易にできるので、このフタロシアニン顔料の製造方法によれば、所望の粒子径の大きさ及び粒子径の分布を有するフタロシアニン顔料を容易に製造することができる。
【0016】
ここで、本発明において、「アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度を−10℃未満の所定の温度に保持する」とは、上記フタロシアニン化合物溶液を添加する混合溶液の温度を、添加の初期から添加終了までに間−10℃未満に保持することを示す。
【0017】
なお、本発明において、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度を−10℃以上とすると、得られるフタロシアニン顔料の粒子について、平均粒子径が2μm以上となる粒子が生成し、平均粒子径が0.18μm以下の充分に小さな粒子を選択的に生成させることができなくなる。然も得られるフタロシアニン顔料の粒子の粒子径をほぼ均一にそろえることができなくなる。なお、このようなフタロシアニン顔料の粒子を電子写真感光体の顔料に用いると、感光層形成用の塗工液を調製するときに塗工液中における顔料の分散不良が生じ、感光層を形成し感光体を形成した後の光感度特性、電気特性、及び耐久性が不十分となり、その結果、暗減衰率の増加、画質欠陥が生じるなど長期にわたって安定した画像品質を得ることが困難となる。
【0018】
また、本発明において、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度の下限値は、該液の融点以上であれば特に限定されないが、取り扱い性の観点から、−25℃以上であることが好ましい。上記の観点から、本発明において、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度は−20〜−11℃であることがより好ましい。これにより、得られるフタロシアニン顔料の粒子について、平均粒子径が2μm以上となる粒子の生成を防止しつつ、平均粒子径が0.05〜0.15μm以下となる粒子を選択的に生成させることがより確実にできる。然も、得られるフタロシアニン顔料の粒子の粒子径をほぼ均一にそろえることがより確実にできる。
【0019】
また、本発明は、先に述べた本発明の製造方法により調製されること、を特徴とするフタロシアニン顔料を提供する。
【0020】
先に述べたように、本発明のフタロシアニン顔料は、平均粒子径が0.18μm以下の充分に小さな粒子として調製され、然もその粒子径がほぼ均一にそろえられている。そのため、本発明のフタロシアニン顔料を電子写真感光体の顔料として用いた場合、充分な光感度及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に耐え得る充分な耐久性を得ることができる。その結果、電子写真感光体は高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0021】
更に、本発明は、導電性支持体層と、顔料を少なくとも含む感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体であって、顔料が先に述べた本発明のフタロシアニン顔料であること、を特徴とする電子写真感光体を提供する。
【0022】
本発明のフタロシアニン顔料の粒子は粒子径が小さく然も粒子径の大きさがほぼ均一にそろっており極めて良好な分散性を有しているため、これを感光層に含有する本発明の電子写真感光体は、高い解像品質と、繰り返し使用に伴う電気特性の低下を十分に防止することのできる高い耐久性とを有することとなり、高品質の画像を画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0023】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジを提供する。
【0024】
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体を搭載しているため、高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0025】
更に、本発明は、上述の本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段により帯電される電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする電子写真装置を提供する。
【0026】
本発明の電子写真装置は、本発明の電子写真感光体を搭載しているため、高品質の画像を、画質欠陥を生じることなく長期にわたり安定して得ることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を付することとする。
【0028】
先ず、本発明のフタロシアニン顔料の製造方法及び本発明のフタロシアニン顔料の好適な一実施形態について説明する。
【0029】
本発明のフタロシアニン顔料の製造方法は、先に述べたように、アシッドペースティング処理工程におけるフタロシアニン化合物溶液とフタロシアニン化合物溶液を添加する溶剤との混合溶液の温度を−10℃未満とすること以外の製造条件及び製造手順は特に限定されず、例えば、アシッドペースティング処理工程で、上記混合溶液の温度を−10℃未満とすること以外の製造条件及び製造手順は、例えば、従来のフタロシアニン顔料と同様の製造条件及び製造手順を用いてもよい。
【0030】
そのため、本発明のフタロシアニン顔料の製造方法の要部となるアシッドペースティング処理工程について詳細に説明する。先ず、アシッドペースティング処理工程においては、原料となるフタロシアニン化合物を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製する。
【0031】
ここで、アシッドペースティング処理に使用される原料としてのフタロシアニン化合物としては、感光層形成用塗布液により形成される感光層内において電荷発生材料となるものであれば使用することができるが、高い光感度と、繰り返し使用に対する耐久性とを有する感光層を備えた電子写真感光体をより確実に得る観点から、下記一般式(I)で表されるフタロシアニン化合物を使用することが好ましい。
【0032】
【化1】
【0033】
ただし、式(I)中、zはAl、Ga、In、Si、Ge、Ti、Snなどの金属元素を示す。また、YはH、OH、O、Cl、Br、I又はFを示し、特にYがO(酸素原子)の場合には、ZとYの結合は2重結合になる。更に、XはH、Cl、Br、又はIを示す。そして、mは1から4の整数、nは1又は2を示す。
【0034】
また、式(I)で表されるフタロシアニン化合物は一般に数種の結晶型を有しているが、いずれの結晶型でも用いることができる。
【0035】
更に、先に述べた同様の観点から、式(I)で表されるフタロシアニン化合物のなかでもアシッドペースティング処理の後に、中心金属に水酸基が結合した分子構造を有するフタロシアニン顔料の原料となるフタロシアニン化合物がより好ましい。このようなフタロシアニン化合物としては、具体的には、クロロアルミニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロシリコンフタロシアニン、ジクロロゲルマニウムフタロシアニン、ジクロロズフタロシアニン等が挙げられる。
【0036】
そのほかにも、フタロシアニン化合物として、1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン等のジ(オキソガリウムフタロニアニニル)アルカン(アルコキシ橋かけガリウムフタロシアニン2量体)を用いることもできる。
【0037】
得られるフタロシアニン顔料を電子写真感光体の感光層に含有させたときの電子写真感特性が良好であるため、これらのメタルフタロシアニンの中でも、中心金属にガリウムを有するものが更に好ましい。
【0038】
また、アシッドペースティング処理において使用する酸としては、従来のアシッドペースティング処理と同様の酸を使用してもよく、このような酸としては、具体的には、硫酸、オルトリン酸、ピロリン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられるが、中でも硫酸を用いると、得られるフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径がより小さく且つ均一となり、より高い光電特性が得られるので好ましい。
【0039】
更に、これらの酸はできるだけ高純度のものが好ましく、具体的には、純度が98質量%以上のものを使用することが好ましい。
【0040】
フタロシアニン化合物を酸に溶解したときの液において、フタロシアニン化合物の濃度は、液全量を基準として10質量%以下が好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。フタロシアニン化合物の濃度が10質量%を超えると、粗大粒子が生成する傾向が大きくなるなど、得られるフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径を十分に小さく且つ均一にすることが非常に困難となる傾向にある。粗大粒子が生成すると、暗減衰率の増加、成膜工程に用いる分散液の分散不良、黒点等の画質欠陥の発生等の現象が起こりやすくなる。
【0041】
特に、フタロシアニン化合物としてクロロガリウムフタロシアニンを使用し、これをアシッドペースティング処理し、フタロシアニン顔料としてのヒドロキシガリウムフタロシアニンの粒子を得る場合には、酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製した後、更に、このフタロシアニン化合物溶液を溶剤に添加することで結晶構造の変換を行う際に、その変換が十分に進行せず、フタロシアニン顔料の光電特性が不十分となったり、光電特性の大きなばらつきが生じやすくなる傾向が大きくなる。また、フタロシアニン化合物の濃度が0.5質量%未満の場合、製造効率が低下する傾向にあるので実用上好ましくない。
【0042】
次に、アシッドペースティング処理工程においては、上記のフタロシアニン化合物を酸に溶解したフタロシアニン化合物溶液を溶剤に加える。このとき、フタロシアニン化合物を酸に溶解したフタロシアニン化合物溶液と溶剤との混合は発熱を伴うので、溶剤を十分に攪拌しながら、先に述べたように溶剤或いは該溶剤に上記液を添加している途中の混合溶液の温度を−10℃未満、より好ましくは、−25℃〜−11℃の範囲うちの所定の温度に保持ながらフタロシアニン化合物を酸に溶解したフタロシアニン化合物溶液を徐々に溶剤に加える。このとき上記フタロシアニン化合物溶液の液温については、特に制限はないが、上記フタロシアニン化合物溶液とこれを添加する溶剤とからなる混合溶液の温度を−10℃未満に保持するため、好ましくは−25℃〜80℃、より好ましくは、−15℃〜60℃の範囲である。
【0043】
これにより、原料のフタロシアニン化合物の結晶構造を変化させることができ、原料と比較して結晶性の低いアモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態のフタロシアニン顔料の粒子を析出物として得ることができる。
【0044】
アシッドペースティング処理工程において使用される溶剤としては、フタロシアニン顔料の粒子を析出させることが可能な溶剤であれば特に制限されないが、具体的には、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合物を用いることができ、当該水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類、ジエチルエーテル、メチルセロソルブ、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。特に、本発明においては、上記溶剤の中でも水を用いることが好ましい。
【0045】
また、本発明においては、溶剤として、上記の溶剤に塩基を添加したものを用いると、得られるフタロシアニン顔料の光電特性がより向上する傾向にあるので好ましい。かかる塩基としては、水溶性を示しかつ脱プロトン化が可能なものであれば特に制限されないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ、水酸化マグネシウム、アンモニア、水酸化第四級アンモニウム塩等が挙げられる。塩基の使用量は、添加するフタロシアニン化合物溶液中の酸の物質量に対して0.5〜5.0倍当量であることが好ましく、0.8〜3.0倍当量であることがより好ましい。
【0046】
また、上記溶剤の使用量は、添加するフタロシアニン化合物溶液1質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。溶剤の使用量が上記下限値未満の場合、粗大粒子が生成するなど、得えられるフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径を十分に小さくかつ均一にすることが非常に困難となる傾向が大きくなる。また、この場合、フタロシアニン化合物を酸に添加した際に加水分解により生成している陰イオンが析出中のフタロシアニン顔料の粒子中に取り込まれやすくなるため、光電特性が不十分となる傾向が大きくなる。
【0047】
また、本発明のフタロシアニン顔料の製造方法においては、アシッドペースティング処理工程により得られるフタロシアニン顔料の粒子を、アシッドペースティング処理工程で用いた溶剤と異なる溶剤に溶解中でミリング又は攪拌することにより、フタロシアニン顔料の粒子の結晶化度及び/又は結晶構造を変化させる溶剤処理工程を更に有することが好ましい。これにより、アシッドペースティング処理工程により得られるフタロシアニン顔料の粒子を、アモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態の粒子から電子写真感光体用の特性に優れた所望の結晶型を有する粒子に変換することができる。
【0048】
なお、この場合、「所望の結晶型」とは、電子写真感光体として所望の感度が得られるのであれば、いずれの結晶型でもよい。
【0049】
特に、中心金属がガリウムであるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は電子写真用に優れた特性を有しており、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸n―ブチル、酢酸iso―アミル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトンあるいは、これらに芳香族溶剤を混合したものを用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0050】
また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、アルコール類(メタノール、エタノール等)、多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、芳香族類(トルエン、クロロベンゼン等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.7°、16.5°、25.1°及び26.6°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0051】
更に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N―メチルピロリドン等)、有機アミン類(ピリジン、ピペリジン等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.9°、16.5°、24.4°及び27.6°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0052】
また、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、芳香族アルコール類(ベンジルアルコール等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.0°、7.5°、10.5°、11.7°、12.7°、17.3°、18.1°、24.5°、26.2°及び27.1°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0053】
更に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、例えば、溶剤処理工程の溶剤として、多価アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)を用いた場合には、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.8°、12.8°、15.8°及び26.0°に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子を得ることができる。
【0054】
なお、溶剤処理工程の溶剤として例示した溶剤は、上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料以外のフタロシアニン顔料の粒子に適用してもよい。また、溶剤処理工程の溶剤として塩基を含まないものを用いた場合には、得られるフタロシアニン顔料(例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料)の結晶粒子を水、希塩基性水溶液、有機溶剤等で十分に洗浄して、未反応のメタルフタロシアニン、酸、メタルフタロシアニンの加水分解により生じる陰イオン等の残留物を除去することが好ましい。この洗浄に用いる水としては、純水、蒸留水、イオン交換水等の精製水が好ましく、その電導度は20.0μS/cm以下(より好ましくは10.0μS/cm)であることが好ましい。また、希塩基性水溶液に用いられる塩基としては、上記アシッドペースティング処理における溶剤の説明において例示された塩基が挙げられる。
【0055】
更に、上記洗浄に使用する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n―プロパノール、n―ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘ
キサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n―ブチル等が挙げられる。これらの洗浄に使用する水、希塩基性水溶液又は有機溶剤の使用量は、質量換算で溶剤処理前のフタロシアニン顔料の粒子の10〜1000倍(より好ましくは100〜1000倍)であることが好ましい。また、その後、必要に応じてシランカップリング剤等を用いて表面処理を行ってもよい。
【0056】
以上説明した製造方法により、平均粒子径が0.18μm以下と充分に小さく、然もその粒子径がほぼ均一にそろえられたフタロシアニン顔料の粒子が容易に調製されることとなる。
【0057】
次に、本発明の電子写真感光体について説明する。
【0058】
図1は、本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、電子写真感光体100は、導電性支持体層3と、下引き層4と、感光層6とから構成されている。この電子写真感光体100は、先に述べた本発明のフタロシアニン顔料の製造方法により製造されたフタロシアニン顔料を含有する感光層を備えるものである。
【0059】
導電性支持体層3は、導電性を有していれば特に限定されるものはなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケル等の金属ドラムを使用することができる。また、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン・ニッケル−クロム・ステンレス鋼・銅−インジウム等の金属を蒸着することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状のもの使用できる。
【0060】
更には、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に、酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着するか、又は金属箔をラミネートすることによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物のもの使用できる。また、この他にも、カーボンブラック・酸化インジウム・酸化錫ー酸化アンチモン粉・金属粉・沃化銅等をバインダー樹脂に分散し、ポリマー製シート、紙、プラスチック、又はガラス上に塗布することによって導電処理したドラム状・シート状・プレート状の物なども使用することができる。
【0061】
ここで、金属パイプ基材を導電性支持体層3として用いる場合、その表面は素管のままであっても、事前に鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニング、着色処理などの処理を行なうことが好ましい。表面処理を行ない基材表面を粗面化することによりレーザービームのような可干渉光源を用いた場合に発生しうる感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
【0062】
下引き層4は、以下の利点(i)〜(vi)が得られる観点から導電性支持体層3上に設けることが好ましい。すなわち、下引き層4を配置することにより(i)導電性支持体から感光層への不必要なキャリアの注入が防止されて画質が向上する;(ii)電子写真感光体の光減衰曲線の環境依存性(温度、湿度など)が低減して安定した画質が得られる;(iii)適度な電荷輸送能により、長期にわたって繰り返し使用する場合にも電荷が蓄積されず、感度変動の発生が抑制される;(iv)帯電電圧に対する適度な耐圧性により、絶縁破壊に起因する画像欠陥の発生が防止される;(v)接着層として、感光層を支持体に一体的に保持することができる;(vi)支持体の光反射が防止される、という効果が得られる傾向にある。
【0063】
この下引き層4の材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物などの有機金属化合物が挙げられる。特に、これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため好ましく使用される。
【0064】
また、下引き層4の材料としては、上記の材料の他に、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4,−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤や、従来より下引き層4に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等のバインダー樹脂を用いることもできる。なお、上記の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
下引き層4の層厚は好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.2〜10μmである。更に、表面粗さ調整のために下引き層4の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等を用いることもできる。
【0066】
次に下引き層4の形成方法について説明する。この下引き層4は、上述の材料を含む塗布液を導電性支持体層3上に塗布することにより形成することができる。
【0067】
下引き層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から任意で選択することができる。
【0068】
例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を用いることができる。
【0069】
また、これらの分散に用いる溶剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かす事ができる溶剤であれば、いかなるものでも使用することが可能である。
【0070】
さらに、この下引き層4を設けるときの下引き層4の形成用の塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。そして、この塗工液を導電性支持体層3上に塗布し、溶剤を蒸発させた後、乾燥させることによって下引き層4を形成することができる。この場合、溶剤を蒸発させた後、乾燥させる工程における温度は好ましくは80〜170℃である。
【0071】
なお、下引き層4には、上記の材料中にいわゆる電子輸送性顔料を混合或いは分散させてもよい。このような電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料などの有機顔料;シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子などの電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料;フタロシアニン顔料などの有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機顔料、などが挙げられる。これらの電荷輸送性顔料の中でも、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料及び多環キノン顔料は高い電子移動性を有しているので好ましく使用される。
【0072】
これらの電子輸送性顔料の含有量は、下引き層4中の固形分全量を基準として95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。下引き層4中の電子輸送性顔料の含有量が上記上限値を超えると、下引き層4の強度が低下して塗膜欠陥が生じやすくなる傾向にある。
【0073】
これらの電荷輸送性顔料を下引き層4中に分散させる場合、電荷輸送性顔料の分散方法としては、先に述べた下引き層4の材料を含む塗工液に電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料を分散させた液に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合する方法;樹脂に電子輸送性顔料を分散させた液に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合する方法;樹脂溶液に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合した後電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料に先に述べた下引き層4の材料を添加し混合した後樹脂溶液に分散させる方法、などが挙げられる。ただし、何れの場合にも、電荷輸送性顔料の混合/分散液においてゲル化や凝集などの発生を抑制することが重要である。また、電子輸送性顔料を混合、分散する際には、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波発生器などを用いることができる。
【0074】
この電子輸送性顔料の混合/分散の工程は有機溶剤中で行われる。この、有機溶剤としては、先に述べた有機金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合、分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば先に述べた下引き層4の形成用の塗布液を調整するための溶媒となる有機溶剤が挙げられる。
【0075】
次に、感光層6について説明する。図1に示すように、感光層6は電荷発生層1と電荷輸送層2とから構成されている。この電荷発生層1は、先に述べた本発明のフタロシアニン顔料(電荷発生物質)を含有するものである。
【0076】
電荷発生層1にはバインダー樹脂が含まれており、フタロシアニン顔料は、このバインダー樹脂中に分散されている。かかるバインダー樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、変性塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル‐無水マレイン酸共重合体、スチレン‐ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン‐アクリロニトリル共重合体、スチレン‐アルキッド樹脂、フェノール‐ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0077】
また、ポリ‐N‐ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレンなどの有機光導電性ポリマーをバインダー樹脂として用いることもできる。なお、電荷発生層1の成膜後に他の層(電荷輸送層等)を更に積層する場合、電荷発生層1の上に積層される層の塗工液の溶剤に溶解する樹脂は好ましくない。
【0078】
また、電荷発生層1は、本発明のフタロシアニン顔料以外に電荷発生材料として、ビスアゾ系顔料、トリアリールメタン系顔料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料などの有機系顔料又は染料を含有してもよい。
【0079】
電荷発生層1における電荷発生材料(フタロシアニン顔料を含む)とバインダー樹脂との配合比は、それぞれの種類に応じて適宜選択されるものであるが、質量比で40:1〜1:4であることが好ましく、20:1〜1:2であることがより好ましい。電荷発生材料の配合量がバインダー樹脂の配合量の40倍(質量換算値)を超えると、電荷発生層1の成膜に用いる分散液の安定性が不十分となる傾向にある。他方、電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/4倍(質量換算値)未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
【0080】
電荷発生層1は、電荷発生材料とバインダー樹脂とを所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を下引き層4上に塗布し、乾燥させることによって好適に得ることができる。
【0081】
ここで、電荷発生層1の形成に用いる有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n―プロパノール、n―ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n―ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
電荷発生層1の形成用の塗布液を調製するには、先の述べたフタロシアニン顔料(或いはこれに上記電荷発生材料を加えたもの)、バインダー樹脂、有機溶剤、その他の添加剤(例えば、顔料の分散助剤等)等とともに混合する。顔料を液中に高分散させる方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等を用いた分散方法が挙げられる。
【0083】
このようにして得られる電荷発生層1の層厚は、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.03〜2μmである。電荷発生層1の層厚が上記下限値未満であると成膜性が低下すると共に十分な機械的強度が得られにくくなる傾向にある。他方、電荷発生層1の膜厚が上記上限値を超えると電気特性上十分な光減衰が得られにくくなる傾向にある。
【0084】
電荷発生層1の形成用の塗布液を下引き層4上に塗布する場合の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0085】
次に電荷輸送層2について説明する。電荷輸送層2は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を含有するものである。ここで、電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノンなどのキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7‐トリニトロフルオレノンなどのフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物などの電子輸送性化合物;トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物などが挙げられる。なお、これらの電荷輸送材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの電荷輸送材料の中でも、トリフェニルアミン系化合物及びベンジジン系化合物は、高い電荷(正孔)輸送能と優れた安定性とを有しているので特に好ましい。
【0086】
また、本発明においては、上記の他の電荷輸送材料として、ポリ‐N‐ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する高分子電荷輸送材料を用いることができる。特に、特開平8‐176293号公報や特開平8‐208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。なお、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材料を用いる場合にはバインダー樹脂を用いずとも電荷輸送層2の成膜が可能であるが、高分子電荷輸送材料と後述するバインダー樹脂との混合物を用いて形成してもよい。
【0087】
本発明にかかる電荷輸送層2に用いられるバインダー樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
本発明にかかる電荷輸送層2は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を、電荷発生層1上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。
【0089】
ここで、塗工液中の電荷輸送材料とバインダー樹脂との配合比(質量比)は5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることがより好ましい。電荷輸送材料の配合量が結着樹脂の配合量の5倍(質量換算値)を超えると、電荷輸送層2の機械的強度が低下する傾向にある。他方、電荷輸送材料の配合量がバインダー樹脂の配合量の1/5倍(質量換算値)未満であると、光感度が低下する傾向にある。
【0090】
また、塗工液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、2‐ブタノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレンなどのハロンゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテルなどの環状もしくは直鎖状のエーテル類など有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0091】
更に、塗工液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法などが挙げられる。このようにして得られる電荷輸送層2の層厚は、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
【0092】
次に、本発明の電子写真感光体の第二実施形態について説明する。
【0093】
図2は、本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。図2に示す電子写真感光体110は、感光層6を単層構造とした以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0094】
図2に示す感光層6は、図1に示した電荷発生層1と電荷輸送層2に含有される本発明のフタロシアニン顔料を含む電荷発生物質と電荷輸送物質とバインダー樹脂とをはじめとする物質を合わせて含有する層である。
電荷輸送材料及びバインダー樹脂としては、図1に示した電荷輸送層2の説明において例示された電荷輸送材料、バインダー樹脂が挙げられる。また、この感光層6の場合にも、先に例示したような本発明のフタロシアニン顔料以外の電荷発生材料を含んでいてもよい。
【0095】
感光層6中におけるフタロシアニン顔料と電荷輸送材料との配合比は、質量比で1:10〜10:1質量比で5:1〜1:20であることが好ましく、また、フタロシアニン顔料とバインダー樹脂との配合比は、質量比で5:1〜1:20であることが好ましい。
【0096】
この感光層6も、上述した電荷輸送物質、上述した電荷輸送物質、上述した有機溶剤、バインダー樹脂等を混合して塗布液を調製し、上述と同様の方法により導電性支持体層3上に塗布して更に乾燥させることにより形成することができる。このようにして得られる感光層6の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0097】
次に、本発明の電子写真感光体の第三実施形態について説明する。
【0098】
図3は、本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。図3に示す電子写真感光体120は、感光層6上に保護層5を備えること以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0099】
保護層5は、電子写真感光体120の帯電時の電荷輸送層2の化学的変化を防止したり、感光層6の機械的強度をさらに改善する為に用いられる層である。すなわち、この保護層5を配置することにより、電子写真感光体120は、熱、電気、化学物質などに対する安定性と機械的強度との双方がより高められるとともに、水、放電生成物、トナーなどによる汚染防止効果がより向上する。また、当該保護層5は電子写真感光体に安定性や機械的強度を付与したり汚染物質の表面への付着を防止したりする機能に加えて、電荷輸送層2としての機能をも有する。
【0100】
保護層5の材料としては、上記下引き層4の説明において例示された有機金属化合物、シランカップリング剤、バインダー樹脂等、あるいは更に上記電荷輸送層2の説明において例示された電荷輸送材料が挙げられる。
【0101】
保護層5は、上記の材料を所定の溶剤に分散させて得られる塗工液を、電荷輸送層2上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。ここで、塗工液に用いる溶剤及び塗布方法としては、それぞれ先に述べた電荷輸送層2の説明において例示された溶剤及び塗布方法が挙げられる。このようにして得られる保護層5の層厚は、電子写真感光体120の感光特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、例えば、電荷輸送層2上に保護層5を設ける場合、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
【0102】
次に、本発明の電子写真感光体の第四実施形態について説明する。
図4は、本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。図4に示す電子写真感光体130は、感光層6を単層構造とし、感光層6上に保護層5を備える以外は図2に示した電子写真感光体110と同様の構成を有する。
【0103】
次に、本発明の電子写真感光体の第五実施形態について説明する。
図5は、本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。図5に示す電子写真感光体140は、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0104】
次に、本発明の電子写真感光体の第六実施形態について説明する。
図6は、本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図である。図6に示す電子写真感光体150は、感光層6を単層構造とし、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。また、図6に示す感光層6は上述の図2に示した図1に示した電子写真感光体110の感光層6と同様の構成を有する。
【0105】
次に、本発明の電子写真感光体の第七実施形態について説明する。
図7は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。図7に示す電子写真感光体160は、感光層6上に保護層5を設け、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。そして、保護層5は上述の図3に示した感光体120の保護層5と同様の構成を有する。
【0106】
次に、本発明の電子写真感光体の第八実施形態について説明する。
図8は、本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。図8に示す電子写真感光体170は、感光層6上に保護層5を設け、感光層6を単層構造とし、感光層6と導電性支持体層3との間に下引き層を配置しないこと以外は図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する。
【0107】
そして、保護層5は上述の図3に示した感光体120の保護層5と同様の構成を有する。更に、感光層6も上述の図2に示した感光体110の感光層6と同様の構成を有する。
【0108】
以上、本発明の電子写真感光体の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明の電子写真感光体は上記実施形態に限定されるものではない。
【0109】
例えば、本発明の電子写真感光体の感光層には、図1、図3及び図5に示した感光体100、120及び130のように2層からなる構成の場合、図2、図2(b)及び図6に示した感光体110、130及び150のように単層構造の場合の何れにおいても、電子写真装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光・熱による感光体の劣化を防止する目的で、酸化防止剤・光安定剤・熱安定剤などの添加剤を添加してもよい。
【0110】
例えば、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
【0111】
以上説明した本発明の本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デイジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置や、このような電子写真装置に備えれられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また、本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラーや帯電ブラシを用いた接触帯電方式の電子写真装置に搭載されても電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
【0112】
次に、本発明の本発明の電子写真感光体を搭載した電子写真装置及びプロセスカートリッジについて説明する。
【0113】
図9は、本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図9に示す電子写真装置200は、電子写真感光体7と、電子写真感光体7をコロナ放電方式により帯電させるコロトロンやスコロトロンなどの帯電手段8と、帯電手段8に接続された電源9と、帯電手段8により帯電される電子写真感光体7を露光して静電潜像を形成する露光手段10と、露光手段10により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段11と、現像手段11により形成されたトナー像を被転写媒体に転写する転写手段12と、クリーニング装置13と、除電器14と、定着装置15とを備える。
【0114】
また、図10は、図9に示す本発明の電子写真装置の別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【0115】
図10に示す電子写真装置210は、電子写真感光体7を接触方式により帯電させる帯電手段8を備えていること以外は、図9に示した電子写真装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電手段を採用する電子写真装置においては、優れた耐摩耗性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器14が設けられていないものもある。
【0116】
帯電手段(帯電用部材)8は、感光体7の表面に接触するように配置され、感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである。帯電手段8にはアルミニウム、鉄、銅などの金属、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子材料、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッソゴム、スチレンーブタジエンゴム、ブタジエンゴム等のエラストマー材料にカーボンブラック、沃化銅、沃化銀、硫化亜鉛、炭化けい素、金属酸化物などの金属酸化物粒子を分散したものなどを用いることができる。
【0117】
この金属酸化物の例としてはZnO、SnO2、TiO2、In2O3、MoO3等、あるいはこれらの複合酸化物が挙げられる。また、帯電手段8にはエラストマー材料中に過塩素酸塩を含有させて導電性を付与したものを使用しても良い。
【0118】
更に、帯電手段8にはその表面に被覆層を設けてもよい。被覆層を形成する材料としては、N−アルコキシメチル化ナイロン、セルロース樹脂、ビニルピリジン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、メラミン等が単独、あるいは併用して用いられる。また、エマルジョン樹脂系材料、たとえば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョン、ポリウレタン、特にソープフリーのエマルジョン重合により合成されたエマルジョン樹脂を用いることも出来る。
【0119】
これらの樹脂にはさらに抵抗率を調整するために、導電剤粒子を分散してもよいし、劣化を防止するために酸化防止剤を含有させることもできる。また、被覆層を形成する時の成膜性を向上させるために、エマルジョン樹脂にレベリング剤または界面活性剤を含有させることもできる。また、この接触帯電用部材の形状としては、ローラー型、ブレード型、ベルト型、ブラシ型、などが挙げられる。
【0120】
さらに、帯電手段8の電気抵抗値は、好ましくは102〜1014Ωcm、さらに好ましくは102〜1012Ωcmの範囲が良い。また、この接触帯電用部材への印加電圧は、直流、交流いずれも用いることができる。又、直流+交流の形で印加することもできる。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正または負の50〜2000Vであることが好ましく、100〜1500Vであることがより好ましい。他方、直流電圧に交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800Vであることが好ましく、800〜1600Vであることがより好ましく、1200〜1600Vであることがさらに好ましい。また、重畳する交流電圧の周波数は好ましくは50〜20000Hz、より好ましくは100〜5000Hzである。
【0121】
図11は図9に示す本発明の電子写真装置の更に別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。図11に示す電子写真装置220は中間転写方式の電子写真装置であり、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。
【0122】
ここで、電子写真装置220に搭載されている電子写真感光体401a〜401dは、それぞれ本発明の電子写真感光体である。例えば、先に述べた電子写真感光体100、電子写真感光体110、電子写真感光体120、電子写真感光体130、電子写真感光体140、電子写真感光体150、電子写真感光体160、電子写真感光体170のいずれかが搭載されていてもよい。
【0123】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード15a〜15dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0124】
更に、ハウジング400内の所定の位置にはレーザ光源(露光手段)403が配置されており、レーザ光源403から出射されたレーザー光を帯電後の電子写真感光体1a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体1a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0125】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409はクリーニングブレード14により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。
【0126】
また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0127】
更に、図12は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、電子写真感光体7とともに、帯電手段8、現像手段11、クリーニング装置(クリーニング手段)13、露光のための開口部18、及び除電器14を取り付けレール16を用いて組み合せ、そして一体化したものである。
【0128】
そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段12と、定着装置15と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
【0129】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0130】
以下に示す手順により実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例6のフタロシアニン顔料の粒子を作製した。
【0131】
なお、説明の便宜上、上述の説明と同様にアシッドペースティング処理工程における原料を「フタロシアニン化合物」とし、生成物を「フタロシアニン顔料」と表現する。更に、溶媒処理工程前のアモルファス状態及び/又は準安定な結晶状態の粒子を「フタロシアニン顔料の粒子」と表現し、溶媒処理工程後の結晶性の高い粒子を「フタロシアニン顔料の結晶粒子」と表現する。
【0132】
(実施例1)
−クロロガリウムフタロシアニン化合物の合成−
1,3‐ジイミノイソインドリン30質量部及び三塩化ガリウム9.1質量部をジメチルスルホキシド230質量部に加え、150℃で4時間反応させた。次に、生成物を濾別し、これをイオン交換水で洗浄し、次いで得られた湿ケーキを乾燥することにより、クロロガリウムフタロシアニン化合物の粒子28質量部を得た。
【0133】
−ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成−
得られたクロロガリウムフタロシアニン化合物の粒子20質量部を、氷浴中で98%濃硫酸800質量部に溶解し、2時間攪拌してクロロガリウムフタロシアニン化合物の粒子が酸に溶解した液(以下、「液1」という)を調製した(クロロガリウムフタロシアニン濃度:2.4質量%)。この液1を、25%アンモニア水1500質量部と蒸留水500質量部との混合溶液(以下、「アシッドペースティング用溶剤」という)中に16時間かけて滴下し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を析出させた。なお、この工程においては、アシッドペースティング用溶剤を常時機械的に攪拌しながら液1の滴下を行い、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の温度を−17℃に保持した。
【0134】
次いで、析出したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を濾別後、蒸留水で濾液の導電性が20μS/cm2未満となるまで洗浄を行い、得られた湿ケーキを真空下、50℃で48時間乾燥させた後、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図13に示す。
【0135】
また、透過型電子顕微鏡(H−9000、日立製作所社製)により、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を倍率15000倍、3視野で観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認された。得られた電子顕微鏡写真を図16に示す。また、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定したヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の平均粒子径は0.05μmであった。
【0136】
(実施例2)
実施例1において、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を−14℃に保持した以外は、実施例1と同様の調製条件及び手順によりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子と同様であった。
【0137】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認され、その平均粒子径は0.06μmであった。
【0138】
(実施例3)
実施例1において、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を−11℃に保持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折スペクトルは実施例1のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子と同様であった。
【0139】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認され、その平均粒子径は0.08μmであった。
【0140】
(実施例4)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子8質量部をジメチルホルムアミド92質量部を液温18℃〜20℃で48hr時間攪拌処理し、沈殿物を分離した。次いで沈殿物をアセトン900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で65℃、24時間乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料結晶粒子7.6質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図14に示す。
【0141】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.15μmであった。
【0142】
(実施例5)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
ジメチルホルムアミド92質量部にかえて、ジメチルホルムアミド80質量部、α−クロロナフタレン10質量部混合液を用いた以外は、実施例4と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子7.1質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例4と同様であった。
【0143】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.16μmであった。
【0144】
(実施例6)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例2で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料粒子8質量部をジメチルホルムアミド92質量部に加え、この顔料分散液を液温18℃〜20℃で48hr時間攪拌処理した後、顔料を分離し、次いでアセトン900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で65℃、24時間乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料結晶粒子を7.5質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例4と同様であった。
【0145】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.16μmであった。
【0146】
(実施例7)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子8質量部をジメチルホルムアミド92質量部に加え、液温18℃〜20℃で48hr時間攪拌処理した後、顔料を分離し、次いでアセトン900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で65℃、24時間乾燥してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料結晶粒子を7.4質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルは実施例4と同様であった。
【0147】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.17μmであった。
【0148】
(実施例8)
−1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタンの合成−
塩化ガリウム10質量部をトルエン75mlに溶解した後、28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液33mlを冷却しながら滴下した。30分程撹拌した後、フタロニトリル33.5質量部、エチレングリコール150mlを加え、窒素雰囲気下、180°Cで24時間撹拌した。生成物を濾過し、次いで、N,N−ジメチルホルムアミド、蒸留水で順次洗浄し、乾燥した後、27.8質量部の1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン化合物の粒子を得た。
【0149】
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成−
得られた1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン化合物の粒子20質量部を、氷浴中で98%濃硫酸800質量部に溶解して2時間攪拌した後、グラスフィルターでろ過して1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン化合物の粒子が酸に溶解した液2を得た(1,2−ジ(オキソガリウムフタロシアニニル)エタン濃度:2.4質量%)。この液2を25%アンモニア水1500質量部と蒸留水500質量部とからなるアシッドペースティング用溶剤中に16時間かけて滴下し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を析出させた。この工程においては、アシッドペースティング用溶剤を常時機械的に攪拌しながら滴下を行ない、液2とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の温度を−12℃に保持した。
【0150】
次いで、析出した粒子を濾別後、蒸留水で濾液の導電性が20μS/cm2未満となるまで洗浄を行い、得られた湿ケーキを真空下、50℃で48時間乾燥させてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図15に示す。
【0151】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なもので、2μmを超える粗大粒子のないことが確認され、その平均粒子径は0.06μmであった。
【0152】
(実施例9)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例8で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部をジメチルホルムアミド167質量部、5mmφガラスビーズ250質量部と共に24時間ミリング処理した後、沈殿物を分離し、次いで蒸留水900部で洗浄し、得られた湿ケーキを真空で80℃、24時間乾燥し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子8.6質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図17に示す。
【0153】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察した。その結果、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶は粗大粒子の生成が十分に抑制された微細かつ均一なものであることが確認され、その平均粒子径は0.13μmであった。
【0154】
(比較例1)
実施例1において、前記液1と前記アシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を2℃に保持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図18に示す。
【0155】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られた電子顕微鏡写真を図21示す。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子には、粒径2μm以上の粗大粒子が含まれることが確認され、その平均粒子径は0.8μmであった。
【0156】
(比較例2)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の代わりに比較例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部を用いたこと以外は実施例4と同様の処理を行い、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子8.8質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図19に示す。
【0157】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子には、粒径2μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒子径は0.4μmであった。
【0158】
(比較例3)
実施例1において、液1とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を7℃に保持したこと以外は、実施例1と同様の操作を行いヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子19質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルを図20に示す。
【0159】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子には、粒径3μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒子径は0.9μmであった。
【0160】
(比較例4)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の代わりに比較例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部を用いたこと以外は実施例4と同様の処理を行い、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子9.0質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルを図22に示す。
【0161】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粒形状を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子には、粒径0.8μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒径は0.45μmであった。
【0162】
(比較例5)
実施例8において、液2とアシッドペースティング用溶剤との混合溶液の液温を13℃に変更したこと以外は、実施例8と同様にしてヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子を合成した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の粉末X線回折スペクトルにおける回折ピークは比較例3と同様であった。
【0163】
実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の状態を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子には、粒子径が2μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒子径は0.5μmであった。
【0164】
(比較例6)
−ヒドロキシガリウムフタロシアニンの溶剤処理−
実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子の代わりに比較例5で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粒子10質量部を用いたこと以外は実施例4と同様の処理を行い、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子9.0質量部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の粉末X線回折スペクトルにおける回折ピークは比較例4の場合と同様であった。
【0165】
また、実施例1と同様にして、透過型電子顕微鏡により得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の結晶粒子の状態を観察したところ、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶には、粒径3μm以上の粗大粒子が含まれていることが確認され、その平均粒径は0.59μmであった。
【0166】
以上の各実施例及び各比較例のうち実施例1〜実施例3、実施例8、比較例1、比較例3、比較例6の結果を表1に示す。
【0167】
(実施例11〜実施例15、比較例7〜比較例9)
実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例9、比較例2、比較例4、比較例6のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用い、以下に示す手順により図1に示した電子写真感光体100と同様の構成を有する実施例11〜実施例15、比較例7〜比較例9の電子写真感光体を作製した。
【0168】
ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製)8質量部をn−ブチルアルコール152質量部に加えて攪拌し、5質量%のポリビニルブチラール溶液を作製した。次に、トリブトキシジルコニウム・アセチルアセトネートの50%トルエン溶液(商品名:ZC540、松本交商社製)100質量部、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A1100、日本ユニカー社製)10質量部及びn−ブチルアルコール130質量部を混合した溶液を、上記のポリビニルブチラール溶液中に加えてスターラーで攪拌し、下引き層4形成用の塗布液を作製した。この塗布液を40mmφ×319mmのアルミパイプ上に浸漬塗布し、150℃で10分間加熱乾燥して膜厚1.0μmの下引き層4を形成した。
【0169】
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM‐S、積水化学工業社製)1質量部を予め酢酸n‐ブチル49質量部に溶解した溶液に、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例9、比較例2、比較例4、比較例6のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料をそれぞれ1質量部を加えてダイノミルで1.5時間の分散処理を行った。
【0170】
この分散液を酢酸n−ブチルで希釈し、固形分濃度3.0質量%の電荷発生層1形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引き層4にリング塗布機によって塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層1を形成した。また、分散処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の結晶型をX線回折によって調べたところ、分散前の結晶型と同一であり、変化のないことを確認した。
【0171】
更に、N,N′−ビス―(p―トリル)−N,N′‐ビス‐(p‐エチルフェニル)−3,3′−ジメチルベンジジン4質量部及びポリカーボネートZ樹脂6質量部をモノクロロベンゼン40質量部に溶解し、得られた溶液を浸漬塗布装置によって上記の電荷発生層1上に塗布し、115℃で60分加熱乾燥して膜厚18μmの電荷輸送層2を形成させて、各電子写真感光体を得た。
【0172】
すなわち、実施例11(実施例4の顔料を含む感光層を備える)、実施例12(実施例5の顔料を含む感光層を備える)、実施例13(実施例6の顔料を含む感光層を備える)、実施例14(実施例7の顔料を含む感光層を備える)、実施例15(実施例9の顔料を含む感光層を備える)、比較例7(比較例2の顔料を含む感光層を備える)、比較例8(比較例4の顔料を含む感光層を備える)、比較例9(比較例6の顔料を含む感光層を備える)の各電子写真感光体を得た。
【0173】
[電子写真感光体の電子写真特性評価試験]
(1)使用初期の特性評価(初期電位測定)
実施例11〜実施例15、比較例7〜比較例9の電子写真感光体を図9と同様の構造を有する電子写真装置{レーザープリンタ−スキャナー(商品名:XP−15の改造機、富士ゼロックス社製)}を作製した。なお、帯電手段にはスコロトロン帯電器を用いた。そして、それぞれの電子写真感光体の電子写真特性を以下のように評価した。
【0174】
常温常湿(20℃、40%RH)環境下、グリッド印加電圧−600Vのスコロトロン帯電器で各電子写真感光体を帯電させたときの各電子写真感光体の表面の電位A[V]を測定した。次に、780nmの半導体レーザーを用いて、帯電させてから1秒後の各電子写真感光体に10mJ/m2の光を照射して放電を行わせ、このときの各電子写真感光体の表面の電位B[V]を測定した。続いて、放電させてから3秒後各電子写真感光体に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電を行い、このときの各電子写真感光体の表面の電位C[V]を測定した。
【0175】
また、電位A[V]の計測後、1秒経過した後の電位を測定し、その電位差を「暗減衰」[V]として計測した。
【0176】
ここで、電位Aの値が高いほど、電子写真感光体の受容電位が高いので、コントラストを高く取ることができることになる。また、電位Bの値が低いほど高感度な電子写真感光体であることになる。更に、電位Cの値が低いほど残留電位が少なく、画像メモリーやいわゆるかぶりが少ない電子写真感光体と評価される。また、「暗減衰」の値が小さいほど、露光までの間の局所的な帯電性の低下を招きにくく画質欠陥が生じにくいことになる。得られた結果を表2に示す。
【0177】
(2)1万回繰り返し使用後の特性評価
上記の操作を1万回繰り返し、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定を行った。これらの結果を表2に示す。
【0178】
(3)使用環境の変化に対する安定性評価
上記の操作を低温低湿(10℃、15%RH)、高温高湿(30℃、85%RH)の2つの異なる環境下で行い、帯電、露光後の電位A〜電位Cの測定をそれぞれ行った。そして、これらの異なる環境で測定された電位A〜電位Cの値と、先に述べた20℃、50%RH条件下で測定された初期電位A〜初期電位Cとの間の変動量(ΔA、ΔB、ΔC)を測定し、使用環境の変化に対する各電子写真感光体の安定性評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0179】
なお、表2中の環境安定性の数値は10℃、15%RH条件下又は30℃、85%RH条件下で測定された電位A〜電位Cの値のうち初期電位A〜初期電位Cからの変化量が大きい方の値を記載した。
【0180】
(4)1万枚プリント後の画質評価
30℃、85%RH条件下、1万枚プリント(1万枚印字)試験を行い、得られた画質における黒点の発生の有無を観察した。そして、1万枚プリント後の画質を、「異常なし」;良好な画質が得られた、「黒点発生」;紙面に大きな黒点がみられる、「黒点多数発性」;紙面全体に微細な黒点や大きな黒点がみられいわゆる全面カブリが発生した状態となる、とした評価基準のもとで評価した。これらの結果を表2に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のによれば、電子写真感光体に使用された場合に、良好な光感度特性及び電気的特性を得ることができ、然も繰り返し使用に伴うこれらの特性の低下を充分に防止可能な高い耐久性を得ることができる電子写真感光体を構成可能なフタロシアニン顔料及びこれにより得られるフタロシアニン顔料を提供するができる。更に、本発明によれば、上記のフタロシアニン顔料を有し、高品質の画像を長期にわたり安定して得ることのできる電子写真感光体並びにこの電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の第一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の第二実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の第三実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の第四実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の電子写真感光体の第五実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の電子写真感光体の第六実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の電子写真感光体の第七実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の電子写真感光体の第八実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の電子写真装置の好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図10】図9に示す本発明の電子写真装置の別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図11】図9に示す本発明の電子写真装置の更に別の実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
【図13】実施例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図14】実施例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図15】実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図16】実施例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図18】比較例1で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図19】比較例2で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図20】比較例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図21】比較例3で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの電子顕微鏡写真である。
【図22】比較例4で得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
1…電荷発生層、3…導電性支持体層、4…下引き層、5…保護層、6…感光層、7…電子写真感光体、8…帯電手段、9…電源、10…露光手段、11…現像手段、12…転写手段、13…クリーニング装置、14…除電器、16…取り付けレール、18…露光のための開口部、42…中間層、100,110,120,130,140,150,160,170…電子写真感光体、200…電子写真装置、210…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ、400・・・ハウジング、401a〜401d・・・電子写真感光体、402a〜402d・・・帯電ロール、403・・・レーザ光源(露光装置)、404a〜404d・・・現像装置、405a〜405d・・・トナーカートリッジ、406・・・駆動ロール、407・・・テンションロール、408・・・バックアップロール、409・・・中間転写ベルト、410a〜410d・・・1次転写ロール、411・・・トレイ(被転写体トレイ)、412・・・移送ロール、413・・・2次転写ロール、414・・・定着ロール、500・・・被転写媒体。
Claims (11)
- 中心金属を有するフタロシアニン化合物を酸に溶解しフタロシアニン化合物溶液を調製し、次いで、該フタロシアニン化合物溶液を溶剤中に添加することにより、前記フタロシアニン化合物と同一の中心金属を有し、かつ前記フタロシアニン化合物と同一又は異なる分子構造を有するフタロシアニン顔料を析出させるアシッドペースティング処理工程を有しており、
前記アシッドペースティング処理工程における前記フタロシアニン化合物溶液と前記フタロシアニン化合物溶液を添加する前記溶剤とからなる混合溶液の温度を−10℃未満の所定の温度に保持しながら、前記フタロシアニン顔料を析出させること、
を特徴とするフタロシアニン顔料の製造方法。 - 前記アシッドペースティング処理工程により得られる前記フタロシアニン顔料の粒子を、前記溶剤と異なる溶剤中でミリング、又は、攪拌する溶剤処理工程を更に有すること、
を特徴とする請求項1に記載のフタロシアニン顔料の製造方法。 - 請求項1又は2の何れかに記載の製造方法により調製されること、
を特徴とするフタロシアニン顔料。 - 中心金属がガリウムであること、
を特徴とする請求項3に記載のフタロシアニン顔料。 - 中心金属に水酸基が結合した分子構造を有すること、
を特徴とする請求項3又は4に記載のフタロシアニン顔料。 - 平均粒子径が0.18μm以下であること、
を特徴とする請求項3〜5の何れかに記載のフタロシアニン顔料。 - 導電性支持体層と、顔料を少なくとも含む感光層と、を少なくとも有する電子写真感光体であって、
前記顔料が請求項3〜6の何れかに記載のフタロシアニン顔料であること、
を特徴とする電子写真感光体。 - 前記導電性支持体層と前記感光層との間に配置される下引き層を更に有していること、
を特徴とする請求項7に記載の電子写真感光体。 - 請求項7又は8に記載の電子写真感光体と、
帯電手段、現像手段、クリーニング手段及び除電手段のうちの少なくとも一つの手段とを一体に有し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。 - 請求項7又は8に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電される前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を被転写媒体に転写する転写手段と、
を備えることを特徴とする電子写真装置。 - 前記転写手段の転写方式が、前記トナー像を中間転写体に1次転写し、該中間転写体上の1次転写像を前記被転写媒体に2次転写する中間転写方式であることを特徴とする特徴とする請求項10に記載の電子写真装置。
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JP2002173060A JP2004018600A (ja) | 2002-06-13 | 2002-06-13 | フタロシアニン顔料の製造方法並びにフタロシアニン顔料、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 |
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Cited By (3)
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JP2007213048A (ja) * | 2006-01-13 | 2007-08-23 | Mitsubishi Chemicals Corp | 感光層形成用塗布液、電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置 |
JP2007294465A (ja) * | 2007-05-17 | 2007-11-08 | Epson Imaging Devices Corp | 照明装置、電気光学装置及び電子機器 |
US8273509B2 (en) | 2006-01-06 | 2012-09-25 | Mitsubishi Chemical Corporation | Electrophotographic photoreceptor, and image forming device and electrophotographic photoreceptor cartridge using the same member cartridge |
-
2002
- 2002-06-13 JP JP2002173060A patent/JP2004018600A/ja active Pending
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