JP4228807B2 - 多重化通信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信路を多重化した多重化通信装置に係り、特に、簡素な構成で瞬断の回避に有効な多重化通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通信路に冗長性を持たせることにより信頼性を高めた多重化通信装置では送信側装置と受信側装置とを接続する複数の通信路でそれぞれ同一のフレームを通信し、受信側装置では重複して受信したフレームのいずれかを何等かの判定基準により受信フレームとして採用している。もし、フレームを採用している方の通信路に障害が発生して通信できなくなると他方の通信路に切り替えることで通信を継続させることができる。
【0003】
図4(a)〜図4(c)に示した二重化通信装置では、送信側装置10と受信側装置20とが2本の通信路101,102で接続されている。ただし、それぞれの通信路101,102は平行ではなく、同じ長さでもない。一般に二重化する通信路は同じ長さにならない。平行配線された通信路は同じ原因で同時に切れる確率が高いので、別ルートを通して配線するのが多重化の目的に適うのである。また、通信路101,102の途中に通信網が介在している場合もそれぞれの通信路101,102は異なった通信網を経由するので、同じ長さにはならない。
【0004】
この二重化通信装置10,20には、瞬断の問題が存在する。瞬断とはフレームが欠落したり、重複したりすることをいう。瞬断は、次のようにして発生する。
【0005】
図4(a)は、通信路101,102に障害がなく、瞬断も発生せずに順調に通信が行われている状態である。いま、送信側装置10から順次送信される複数のフレームF(以下、符号を略す)には説明のため図中では番号を記入してある(このような番号を付けたフレームは従来ない)。送信側装置10からそれぞれの通信路101,102に同じフレーム#1,#2,#3が送信され、これらのフレーム#1,#2,#3が受信側装置20に同時に到着している。受信側装置20では、固定的に一方の通信路101を優先的な通信路とし他方の通信路102はバックアップとしている。それぞれを0系通信路、1系通信路と呼ぶことにする。この場合、受信側装置20は0系通信路101のフレームを受信フレームとして採用し、これらのフレーム#1,#2,#3を内部処理或いは他装置へ中継する(受信側装置20の右側へ実線で示す)。フレーム#2を受信しているときに、0系通信路101に障害Xが発生すると、通信路は直ちに切り替えられる。このとき、受信側装置20が1系通信路102から最初に受信するフレームはフレーム#3である。従って、障害のため壊れたフレームを#2Xとすると、採用されたフレームは#1,#2X,#3となる(受信側装置20の右側へ破線で示す)。
【0006】
実際には通信路の長さ(途中にある中継装置による遅延も含めて考える)が同じではないので、図4(b)或いは図4(c)のように、送信側装置10を同時に出発したフレーム#1,#2,#3は受信側装置20に遅延をもって到着する。ここでは、分り易いように丁度1フレーム分の遅延があるものとしている。
【0007】
図4(b)のように、0系通信路101のフレームが先着している場合も、受信側装置20は0系通信路101を優先するので0系通信路101から受信したフレーム#1,#2,#3を内部処理或いは他装置へ中継する。ここで、0系通信路101でフレーム#2を受信しているとき、0系通信路101に障害Xが発生したものとする。障害発生に基づき通信路が直ちに切り替えられると、受信側装置20が1系通信路102から最初に受信するフレームは#2である。従って、採用されたフレームはフレーム#1,#2X,#2,#3となり、フレーム#2が重複する。遅延が大きければ重複するフレームの個数が多くなる。
【0008】
図4(c)のように、0系通信路101のフレームが後着している場合も、受信側装置20は0系通信路101を優先するので0系通信路101から受信したフレーム#1,#2,#3を内部処理或いは他装置へ中継する。ここで、0系通信路101でフレーム#1を受信しているとき、0系通信路101に障害Xが発生したものとする。障害発生に基づき通信路が直ちに切り替えられると、受信側装置20が1系通信路102から最初に受信するフレームはフレーム#3である。従って、採用されたフレームはフレーム#1X,#3となり、フレーム#2が欠落する。遅延が大きければ欠落するフレームの個数が多くなる。
【0009】
瞬断の問題を解決するために、壊れたフレームに遅延を与える遅延付与部を設けた例が特許文献1の図5に記載されている。この遅延付与部の挿入により、壊れたフレームが遅延付与部に蓄積されている間に通信路を切り替えるようになるので、壊れたフレームが他装置に中継されることを防ぐことができる。
【0010】
また、特許文献1の図7にはバッファを設けた例が記載されている。この場合、2つの通信路から受信したフレームをそれぞれ異なるバッファに蓄積し、バッファ量を制御することにより、通信路の長さの差によるフレーム到着の遅延を解消することができる。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−251184号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
バッファや遅延付与部は、両通信路間の遅延が大きければ大きいほど容量が大きいことが要求される。両通信路間にどのくらいの遅延が生じるかは不可知のことであるから、ある程度の容量までを限界とせざるを得ない。容量を大きくすれば、それだけ通信装置のコストが増大するからである。
【0013】
具体例として10μsの遅延時間があるとする。この遅延時間10μsは通信路が光ファイバである場合、光ファイバの長さに換算すると約2kmの差があることになる。通信速度100Mbpsで通信するとき遅延時間10μsは1kbitの情報に相当する。従って、容量1kbitのバッファを持たなければ遅延時間10μs以下でのフレーム蓄積を保証できない。通信速度1Gbpsならば容量10kbit、通信速度10Gbpsならば容量100kbitのバッファが必要になる。遅延付与部には2kmの光ファイバを収納しなければ遅延時間10μs以下での遅延付与を保証できない。
【0014】
また、信号を物理層か物理層に近いような下位層で処理して信号媒体変換や無条件に近い中継を行う通信装置では、バッファに蓄積したフレームと壊れたフレームとの同一を判定するような上位層の処理を行うのは現実的でないし、バッファを設けること自体が下位層装置として適切でない。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、簡素な構成で瞬断の回避に有効な多重化通信装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、複数の通信路を介して送信側装置と受信側装置が接続されそれぞれの通信路で同一のフレームを通信する多重化通信装置において、送信側装置では順次送信する複数のフレームにシリアル番号を前記フレーム間のアイドル期間に挿入して付与し、受信側装置では同じシリアル番号が先に到着する第1の通信路のフレームを優先的に採用し、前記第1の通信路に障害が発生したことを検出したとき、同じシリアル番号が後に到着する第2の通信路のフレームを採用するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
図1に示されるように、本発明に係る多重化通信装置の送信側装置10には、送信しようとするフレームの送信信号を整形する第1送信処理部11と、第1送信処理部11が順次送信しようとする複数のフレームにシリアル番号(シーケンス番号ともいう)を付与するシリアル番号付与部12と、シリアル番号及びフレームの送信信号を整形する第2送信処理部13と、第2送信処理部13が送信しようとするシリアル番号及びフレームを2つの同じシリアル番号及びフレームにして分岐する信号分岐処理部14と、これら分岐した2つの同じシリアル番号及びフレームの送信信号を整形して0系通信路101又は1系通信路102に実際に送出する第3送信処理部15及び第4送信処理部16とが設けられている。
【0020】
また、図2に示されるように、本発明に係る多重化通信装置の受信側装置20には、0系通信路101から受信したフレームの信号品質を検査して障害の発生を検出する0系信号品質検査部21と、0系通信路101から受信したフレームに付加されているシリアル番号を検出する0系番号検出部22と、0系通信路101のアイドル期間の長さを検出する0系アイドル検出部23と、1系通信路102から受信したフレームの信号品質を検査して障害の発生を検出する1系信号品質検査部24と、1系通信路102から受信したフレームに付加されているシリアル番号を検出する1系番号検出部25と、1系通信路102のアイドル期間の長さを検出する1系アイドル検出部26と、各部の検出情報を総合してフレームを採用する通信路を判断するセレクタ制御部27と、採用したフレームを内部処理或いは他装置へ中継するための信号切替部28とが設けられている。
【0021】
シリアル番号はフレームと次に送信するフレームとの間のアイドル期間(アイドル信号を送信している期間)に挿入する。アイドル期間中にフレームの誤検出にならない程度の信号を入れることは他の通信装置に悪影響を与えないので差し支えない。
【0022】
信号切替部28は0系通信路101のフレームと1系通信路102のフレームとを切り替えるほかに、フレーム間に追加挿入するためのアイドル信号を発生するアイドル信号発生源(アイドル)とも切り替えられるようになっている。
【0023】
受信側装置20からの中継先にシリアル番号が届くのを防ぎたい場合には、フレームに付加されているシリアル番号を除去してアイドル信号に復元する回路を受信側装置20に設けてもよい。
【0024】
図1の送信側装置10と図2の受信側装置20は、例えば、図4のように0系通信路101及び1系通信路102により多重に接続される。ただし、本発明では、0系通信路101と1系通信路102に固定的に与えられる優先度はなく、同じシリアル番号が先に到着する通信路を優先するようになっている。また、送信側装置10と受信側装置20は、各々が送信専用、受信専用というわけではなく、相互に送受信できる送受信両用の通信装置の送信側部分と受信側部分を示したにすぎない。
【0025】
送信側装置10及び受信側装置20となる多重化通信装置の具体例としては、スイッチングハブやメディアコンバータがある。例えば、通信路101,102における長距離伝送に適した物理層媒体を短距離用の物理層媒体に変換するメディアコンバータに本発明を適用するとよい。
【0026】
次に、セレクタ制御部27が行う制御のアルゴリズムを説明する。ただし、ここでは説明を簡単にするために、送信側装置10から同時に送信されたフレームが受信側装置20に到着するまでの時間は0系通信路101に比べて1系通信路102のほうが長いものと仮定している。即ち、同じシリアル番号を付与したフレームは0系通信路101から先に到着する。0系通信路101のほうが遅延する場合には、以下の説明は0系と1系を入れ替えて読めばよい。
【0027】
1.最初にフレームを受信したときはシリアル番号が若いほうの通信路を選択する。ここでは同じシリアル番号を付与したフレームが0系通信路101から先に到着するので、0系通信路101が選択され、0系通信路101から受信したフレームが採用されることになる。
【0028】
2.0系通信路101が選択されている通信中に1系通信路102の障害発生を検出したとき、選択は変更しない。つまり、0系通信路101の選択が継続される。
【0029】
3.0系通信路101が選択されている通信中に0系通信路101の障害発生を検出したとき、1系通信路102から受信されるシリアル番号が障害発生検出時点に0系通信路101から検出していたシリアル番号の次の値になるまで、信号切替部28でアイドル信号を挿入する。1系通信路102から受信されるシリアル番号が障害発生検出時点に0系通信路101で受信してシリアル番号の次の値になったら1系通信路102を選択する。これにより、1系通信路102の遅延時間分のアイドル信号が挿入された後、1系通信路102から受信したフレームが採用されることになる。
【0030】
4.1系通信路102が選択されている通信中に0系通信路101の障害発生を検出したとき、選択は変更しない。つまり、1系通信路102の選択が継続される。
【0031】
5.1系通信路102が選択されている通信中に1系通信路102の障害発生を検出したとき、即座に切替えを行い、0系通信路101を選択する。これにより、0系通信路101から受信したフレームが採用される。この切替え直後に0系通信路101から受信されるフレームのシリアル番号は1系通信路102から受信するフレームのシリアル番号よりも大きいので、1系通信路102の遅延時間分のフレームは欠落する。
【0032】
6.0系通信路101が選択されている通信中に1系通信路102の障害回復を検出したとき、選択は変更しない。つまり、0系通信路101の選択が継続される。
【0033】
7.1系通信路102が選択されている通信中に0系通信路101の障害回復を検出したとき、即座には切替えをしない(詳しくは8.)。
【0034】
8.1系通信路102から0系通信路101へ、即ち、受信するシリアル番号が若いほうの通信路へ切り替える制御は次の条件で行う。0系通信路101からも1系通信路102からもアイドル信号を受信している状態で、それぞれの通信路から最後に受信したフレームのシリアル番号が一致したとき、その次のシリアル番号を持つフレームを先に受信した方の通信路を選択する。
【0035】
次に、本発明の多重化通信装置の動作を説明する。
【0036】
図3(a)は、いずれの通信路にも障害がない状態である。ここでも、送信側装置10から同時に送信されたフレームが受信側装置20に到着するまでの時間は0系通信路101に比べて1系通信路102のほうが長いものと仮定している。
【0037】
送信側装置10から複数のフレームF(以下、符号は略す)が順次送信されるとき、これらのフレームにはシリアル番号付与部12においてシリアル番号S(以下、符号は略す)が付与される。送信側装置10からそれぞれの通信路101,102に同じフレーム#1,#2,#3が送信される。図4(b)との違いは、図中でフレーム内に記入した番号と同様のシリアル番号が実際に信号として付与されていることである。受信側装置20では、これらのフレーム#1,#2,#3は0系通信路101においてに先着する。よって、受信側装置20は0系通信路101のフレームを受信フレームとして採用し、これらのフレーム#1,#2,#3を内部処理或いは他装置へ中継する。
【0038】
ここで、図3(b)のように、0系通信路101でフレーム#2を受信しているとき、0系通信路101に障害Xが発生したものとする。受信側装置20は1系通信路102から受信されるシリアル番号が障害発生検出時点に0系通信路から検出していたシリアル番号(#2)の次の値#3になったら1系通信路102を選択する。従って、採用されたフレームは#1,#2X,#3となる。フレーム#2Xは、障害のため壊れたフレームである。
【0039】
従来技術の図4(b)ではフレーム#2が重複してしまったが、本発明ではシリアル番号による同期がとれているためフレーム#2が重複することがない。しかも、フレームの同一の判定にシリアル番号を用いているのでフレームをバッファに蓄積する必要がなく、判定処理も物理層で十分に実施できる。また、遅延時間の長さには全く依存しないで判定処理ができる。
【0040】
送信側装置10から同時に送信されたフレームが受信側装置20に到着するまでの時間が0系通信路101に比べて1系通信路102のほうが短い場合は、最初から1系通信路102が選択され、図3(b)の説明の0系と1系を入れ替えて読むだけになるので、従来技術の図4(c)のケースは存在しない。よって、フレーム#3が欠落することはない。
【0041】
このように、本発明では、切替え時のフレームの重複や欠落、即ち、瞬断が回避されている。従来のようにバッファや遅延付与部は設ける必要がなく、簡単な構成で実現することができる。
【0042】
セレクタ制御部27のアルゴリズム5.で説明したように、1系通信路102から0系通信路101への即座の切替えのときフレームの欠落を伴うことは有り得るが、フレーム間に1系通信路102の遅延時間分のアイドル期間が入っていればフレームの欠落を生じることはない。従って、上記アルゴリズム7.及び8.で説明したように、両通信路に障害がない間に、アイドル信号が十分に長く続いているときを見計らって0系通信路101に選択を戻しておくことにより、障害発生による1系通信路102から0系通信路101への即座の切替えが起きる機会を減らすことができ、瞬断を可及的に回避することができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0044】
(1)瞬断の回避に有効である。
【0045】
(2)簡素な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す送信側装置のブロック回路図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す受信側装置のブロック回路図である。
【図3】本発明において送信側装置から多重送信されたフレームが受信側装置で選択的に採用される様子を示した図である。
【図4】従来技術において送信側装置から多重送信されたフレームが受信側装置で選択的に採用される様子を示した図である。
【符号の説明】
10 送信側装置
12 シリアル番号付与部
20 受信側装置
21 0系信号品質検査部
22 0系番号検出部
23 0系アイドル検出部
24 1系信号品質検査部
25 1系番号検出部
26 1系アイドル検出部
27 セレクタ制御部
28 信号切替部
101 0系通信路
102 1系通信路

Claims (8)

  1. 複数の通信路を介して送信側装置と受信側装置が接続されそれぞれの通信路で同一のフレームを通信する多重化通信装置において、送信側装置では順次送信する複数のフレームにシリアル番号を前記フレーム間のアイドル期間に挿入して付与し、受信側装置では同じシリアル番号が先に到着する第1の通信路のフレームを優先的に採用し、前記第1の通信路に障害が発生したことを検出したとき、同じシリアル番号が後に到着する第2の通信路のフレームを採用することを特徴とする多重化通信装置。
  2. 前記送信側装置は、前記フレーム及びシリアル番号を複数の同一のフレーム及びシリアル番号に分岐することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
  3. 前記受信側装置は、前記フレーム間にアイドル信号を挿入することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
  4. 前記受信側装置は、前記フレームに付加されているシリアル番号を除去してアイドル信号に復元することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
  5. 前記受信側装置は、前記第1の通信路の障害発生を検出したときに、前記第2の通信路の遅延時間分のアイドル信号を挿入することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
  6. 前記受信側装置は、前記第1の通信路の障害発生を検出したときに、前記第2の通信路から受信されるシリアル番号が前記第1の通信路から検出していたシリアル番号の次の値になるまで、アイドル信号を挿入することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
  7. 前記受信側装置は、前記第2の通信路が選択されているときに、前記第1の通信路の障害回復を検出したときには、両方の通信路からアイドル信号を受信している状態で、同じシリアル番号が先に到着する通信路のフレームを優先的に選択することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
  8. 前記受信側装置は、前記第2の通信路が選択されているときに、前記第2の通信路の障害発生を検出したときには、前記第1の通信路を選択することを特徴とする請求項1記載の多重化通信装置。
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