JP4228721B2 - 水切り乾燥装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水切り溶剤を利用して被処理部品に付着した水を除去して乾燥する水切り乾燥装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス部品や機械部品などの製造工程では、後工程の品質や製品性能を確保するために、部品に付着した汚れを除去する洗浄が行われる。洗浄の方法としては、付着した汚れの種類と要求される清浄度によって決定されるが、部品洗浄の場合、湿式洗浄が主流となっている。湿式洗浄では、汚れを除去する洗浄工程と洗浄液を除去するすすぎ工程とすすぎ液を除去する乾燥工程からなるのが一般的である。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−320615号公報
【0004】
【特許文献2】
特開2000−70605号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
湿式洗浄において、すすぎ液を乾燥する方法としては、熱風乾燥や吹付乾燥など様々な乾燥方法が採用されている。なかでも、水をすすぎ液として使用する場合、乾燥工程にかかる時間やエネルギーの消費が大きく、部品形状が複雑になるほどその負荷は増大する。また、精密部品などでは、水に含まれる不純物による乾燥ジミの発生も問題となる。
【0006】
近年、物品の表面に付着した水を容易に乾燥除去し、かつ乾燥ジミの発生を抑制することができる水切り溶剤組成物やその乾燥方法が提案されている。特にオゾン層を破壊しないフッ素系溶剤とアルコールまたは界面活性剤との混合溶液は、低毒性、不燃性、低腐食性で、なおかつ優れた水切り性を示し、工業的には有効な水切り溶剤であり、これらの水切り溶剤を用いた水切り乾燥方法も提案されている。
【0007】
特開平5−320615号公報のものでは、部品に付着した水を除去するために水切り溶剤に部品を浸漬し、超音波振動や攪拌などの物理作用を付加させる方法が提案されている。
しかしながら、超音波振動では、部品の形状や種類によって、水切り性を低下させたり、部品への破壊などのダメージを与えたりする虞がある。超音波の弊害を解決する方法として、水切り溶剤を攪拌する方法も提供されているが、微小な孔や隙間部を有するような複雑な形状の部品では、十分な水切り性が得られない問題がある。
【0008】
一方、量産処理では、水切り溶剤の持ち出しロスを低減するために、水切り槽内に飽和蒸気層を形成させ、蒸気乾燥を実施するのが一般的である。
図2は、水切り槽とは独立した蒸気発生槽を設けた構成を示している。この図2において、タンク本体1内には水切り槽2が設けられていると共に、その水切り槽2に隣接して供給槽3、蒸気発生槽(水切り溶剤の沸騰槽)4及び水分離槽5が設けられており、それらの水切り槽2、供給槽3及び蒸気発生槽4に水切り溶剤が貯留されている。この水切り溶剤は、オゾン層を破壊しないフッ素系溶剤とアルコールまたは界面活性剤との混合溶剤である。
【0009】
水分離槽5には、水切り槽2から流れ落ちた水を含む水切り溶剤が貯留される。この水分離槽5において水と分離された水切り溶剤が循環ポンプ6により供給槽3及び蒸気発生槽4に供給されることにより供給槽3から水切り槽2に水切り溶剤が供給され、それに伴って水切り槽2に貯留されている水切り溶剤の液面に浮上した水が水切り溶剤と共に水分離槽5に流れ落ちる。蒸気発生槽4にはヒーター7が設けられており、蒸気発生槽4に貯留されている水切り溶剤を加熱している。これにより、水切り溶剤が蒸発してタンク本体1の上部に形成された飽和蒸気槽8に水切り溶剤の飽和蒸気層が形成される。尚、水切り槽2の底面には被処理部品Aからの水の剥離を促進するための超音波発生器9が設けられていると共に、飽和蒸気槽8には水切り溶剤回収用の冷却器10が設けられている。
【0010】
以上のような構成によれば、被処理部品Aを水切り槽2に貯留されている水切り溶剤に浸漬することにより水を除去する水切り工程を実行してから、飽和蒸気槽8に移動することにより被処理部品Aを水切り溶剤の飽和蒸気層に晒して蒸気乾燥することにより乾燥工程を実行することができる。
しかしながら、このような構成では、水切り槽2とは独立した蒸気発生槽4が必要となり、水切り溶剤を加熱する大きなエネルギー消費が課題である。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理部品に付着した水を効率よく除去することができると共に、被処理部品を乾燥するためのエネルギーを低減することができる水切り乾燥装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、第1噴射手段から加圧過加熱された水切り溶剤が噴射されると、水切り槽の水切り溶剤に浸漬された被処理部品に対して水切り溶剤が噴射される。この水切り溶剤は、大気圧時と加圧時とで顕著に沸点が変化し、大気圧中では沸点以上の温度の過熱液体であることから、被処理部品に噴射された水切り溶剤に爆発的な衝突力と乱流が発生し、付着水の剥離と水切り溶剤の浸透性が増大する。これにより、被処理部品が複雑な形状であっても、被処理部品を高速で水切りすることにより水切り工程を実行することができる。
【0013】
また、被処理部品から剥離された水は、水切り溶剤の液面に浮上するものの、第2噴射手段から加圧過加熱された水切り溶剤が水切り溶剤の液面に噴射されるので、液面に浮上した水は水切り溶剤と共に水切り槽から流れ落ちる。このとき、第2噴射手段から噴射された加圧過加熱された水切り溶剤が圧力の急激な低下により沸騰して急速に蒸発するので、飽和蒸気槽に水切り溶剤の飽和蒸気層を低エネルギーで形成することができる。
そして、移動手段により被処理部品を飽和蒸気槽に移動して水切り溶剤の飽和蒸気層に晒して蒸気乾燥することにより乾燥工程を実行することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、水切り槽から流れ落ちた水を含んだ水切り溶剤は水分離槽において水と分離される。ここで、加圧手段は、水分離槽において水と分離された水切り溶剤を加圧して吐出し、加熱手段は、加圧手段で加圧された水切り溶剤を加熱する。これにより、第1ノズルから加圧過加熱された水切り溶剤を被処理部品に噴射することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、第1ノズルから水切り溶剤が噴射される状態では、第2ノズルからも水切り溶剤を噴射することができるので、簡単な構成で第2噴射手段を構成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図1に基づいて説明する。
図1は、水切り乾燥装置の構成を概略的に示す断面図である。この図1において、洗浄装置の筐体を構成するタンク本体11内には水切り槽12が設けられており、その水切り槽12に水切り溶剤が満杯に貯留されている。この水切り溶剤は、オゾン層を破壊しないフッ素系溶剤とアルコールまたは界面活性剤との混合溶剤であり、フッ素系溶剤によりアルコールの引火性が防止されている。
【0017】
水切り槽12に隣接して水分離槽13が形成されており、水切り槽12から流れ落ちた水を含んだ水切り溶剤が貯留されるようになっている。水切り槽12から流れ落ちた水を含んだ水切り溶剤は、水分離槽13において比重の差から水と水切り溶剤に分離(水が上層、水切り溶剤が下層)し、上層に位置する水は外部へ排出され、下層に位置する水切り溶剤は加圧手段としての循環ポンプ14によりパイプ15を通じてタンク本体1内に戻される。
【0018】
ここで、循環ポンプ14の吐出側となるパイプ15には加熱手段としての熱交換器16が設けられており、その熱交換器16により循環ポンプ14から吐出される水切り溶剤が加熱される。パイプ15の端部は分岐してタンク本体11内に導入されており、その先端に第1噴射手段の主体をなす第1ノズル17及び第2噴射手段の主体をなす第2ノズル18がそれぞれ装着されている。循環ポンプ14の駆動状態では、それらのノズル17,18から水切り溶剤がタンク本体11内に同時に噴射される。この場合、第1ノズル17は水切り槽12内の水切り溶剤に浸漬された被処理部品Aに対して水切り溶剤を噴射するように設けられ、第2ノズル18は水切り槽12の水切り溶剤の液面に水切り溶剤を噴射するように設けられている。
【0019】
タンク本体11の上部には飽和蒸気槽19が設けられており、後述するように水切り溶剤の飽和蒸気層が形成される。飽和蒸気槽19の内周には冷却管20が配置されており、被処理部品Aから蒸発した水切り溶剤の蒸気を冷却するようになっている。この冷却管20により冷却されることにより液化した水切り溶剤は、外部容器21を介して水切り槽12に戻される。
【0020】
タンク本体11内には図示しない移動手段としての搬送コンベアが設置されており、被処理部品Aを水切り槽12に移動して水切り溶剤に浸漬された水切り工程と、飽和蒸気槽19に移動して水切り溶剤の飽和蒸気層に晒された乾燥工程とを順に実行するようになっている。
【0021】
次に上記構成の作用について説明する。
循環ポンプ14及び熱交換器16を駆動すると、水分離槽13において水と分離された水切り溶剤が循環ポンプ14により加圧状態で吐出される。このとき、水切り溶剤は熱交換器16により加熱されるので、加圧過加熱状態の水切り溶剤が第1ノズル17及び第2ノズル18から噴射される。この場合、水切り溶剤は、大気圧時と加圧時とで顕著に沸点が変化するという特性を有しており、加圧された状態では沸点が大気圧時よりも高くなることから、パイプ15内では過加熱状態でも液化状態を維持する。
【0022】
図示しない搬送コンベアにより被処理部品Aを水切り槽12に移動することにより水切り溶剤に浸漬すると、第1ノズル17から噴射された水切り溶剤は、水切り溶剤に浸漬された被処理部品Aに噴射される。このように第1ノズル17から噴射された水切り溶剤は、大気圧時と加圧時とで顕著に沸点が変化し、大気圧中では沸点以上の温度の過熱液体であることから、被処理部品に噴射された水切り溶剤に爆発的な衝突力と乱流が発生し、付着水の剥離と水切り溶剤の浸透性が増大する。これにより、被処理部品Aが複雑な形状であっても、被処理部品Aを高速で水切りする水切り工程を実行することができる。
以上のような水切り工程が行われる結果、水切り溶剤の物理作用により被処理部品に付着した水が剥離される。このとき、被処理部品Aから剥離した水は、水切り溶剤との比重差により水切り溶剤の液面に浮上するようになる。
【0023】
一方、第2ノズル18からは、加圧過加熱された水切り溶剤が水切り槽12の水切り溶剤の液面に噴射されるので、水切り溶剤の液面に浮上した水は水切り溶剤と共に水分離槽13に流れ落ちるようになる。また、第2ノズル18から噴射される水切り溶剤は、パイプ15内で大気圧時の沸点以上となっているから、噴射後は、圧力の急激の低下により沸騰して急速に蒸発する。これにより、飽和蒸気槽19内に水切り溶剤の飽和蒸気層が低エネルギーで形成される。
【0024】
第1ノズル17から被処理部品Aに対する水切り溶剤の噴射状態を所定時間実行したときは、図示しない搬送コンベアにより被処理部品Aを飽和蒸気槽19に移動する。このとき、第2ノズル18から水切り溶剤が噴射されることにより水切り溶剤の液面に浮上した水は水分離槽13に流れ落とされていることから、搬送コンベアにより被処理部品Aを水切り槽12の水切り溶剤から引上げるにしても、被処理部品Aに水が再び付着してしまうことはない。
【0025】
飽和蒸気層19に移動された被処理部品Aは、飽和蒸気槽19内に形成された水切り溶剤の飽和蒸気層に晒されるので、被処理部品Aは蒸気乾燥され、被処理部品Aに付着している水切り溶剤を短時間で蒸発することができる。これにより、被処理部品Aを短時間で乾燥することができ、乾燥工程を効率よく実行することができる。
そして、以上のようにして水切り工程と乾燥工程とを実行したときは、搬送コンベアにより被処理部品Aをタンク本体11から外部に搬送する。
【0026】
尚、被処理部品Aを蒸気乾燥することにより蒸発した水切り溶剤は冷却管20により液化して水切り槽12に戻されるので、被処理部品Aから蒸発した水切り溶剤を回収することができ、水切り溶剤が無駄にタンク本体11の外部に持ち出されてしまうことを防止できる。
【0027】
このような実施の形態によれば、水切り槽12に水切り溶剤を貯留し、その水切り溶剤に浸漬された被処理部品Aに対して、第1ノズル17から加圧過加熱された水切り溶剤を噴射するようにしたので、被処理部品に噴射された水切り溶剤に爆発的な衝突力と乱流が発生し、被処理部品Aに付着した水を容易に剥がすことができる。従って、被処理部品を水切り溶剤に単に浸漬させるだけの従来構成のものと違って、複雑な形状の被処理部品Aであっても、被処理部品Aに付着した水を確実に剥離することができる。
【0028】
また、第2ノズル18から加圧過加熱された水切り溶剤を水切り槽12に貯留されている水切り溶剤の液面に噴射するようにしたので、水切り溶剤の液面に浮上した水を水切り槽12から流し落しながら、水切り溶剤の飽和蒸気層を飽和蒸気槽19に省エネルギーで形成することができる。従って、独立した蒸気発生槽を必要としないばかりか、飽和蒸気層形成に必要なエネルギーを低減できる。
【0029】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、第1ノズルを複数設け、加圧過加熱された水切り溶剤を異なる方向から被処理部品Aに噴射するようにしてもよい。
また、本発明では、水切り溶剤として、オゾン層を破壊しないフッ素系溶剤を例示したが、従来から使用されているフロン113やフロン225などのオゾン層を破壊する有害なフッ素系溶剤でも同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示す全体の概略図
【図2】 従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
11はタンク本体、12は水切り槽、13は水分離槽、14は循環ポンプ(加圧手段)、16は熱交換器(加熱手段)、17は第1ノズル(第1噴射手段)、18は第2ノズル(第2噴射手段)、19は飽和蒸気槽である。

Claims (3)

  1. 貯留した水切り溶剤に被処理部品が浸漬される水切り槽と、
    この水切り槽の水切り溶剤に浸漬された被処理部品に加圧過加熱された水切り溶剤を噴射する第1噴射手段と、
    前記水切り槽の水切り溶剤の液面に加圧過加熱された水切り溶剤を噴射することにより液面に浮上した水を水切り溶剤と共に前記水切り槽から流れ落とす第2噴射手段と、
    この第2噴射手段から噴射された加圧過加熱された水切り溶剤が蒸発して水切り溶剤の飽和蒸気層を形成する飽和蒸気槽と、
    被処理部品を前記水切り槽に移動することにより水切り溶剤に浸漬した水切り工程を実行してから、前記飽和蒸気槽に移動することにより水切り溶剤の飽和蒸気層に晒して乾燥工程を実行する移動手段とを備えたことを特徴とする水切り乾燥装置。
  2. 前記水切り槽から流れ落ちた水を含んだ水切り溶剤を水の分離状態で貯留する水分離槽を備え、
    前記第1噴射手段は、
    前記水分離槽において水と分離された水切り溶剤を加圧して吐出する加圧手段と、
    この加圧手段から吐出される水切り溶剤を加熱する加熱手段と、
    この加熱手段により加熱された水切り溶剤を前記水切り槽の水切り溶剤に浸漬された前記被処理部品に対して噴射する第1ノズルとから構成されていることを特徴とする請求項1記載の水切り乾燥装置。
  3. 前記第2噴射手段は、
    前記第1ノズルから噴射される加圧過加熱された水切り溶剤を分岐させて噴射する第2ノズルから構成されていることを特徴とする請求項2記載の水切り乾燥装置。
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