JP4223489B2 - プラントの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プラントの制御装置に関し、特にプラントをモデル化した制御対象モデルを用いてプラントを制御するコントローラを備えたものに関する。
プラントをモデル化した制御対象モデルを用いて、スライディングモード制御により、プラントを制御するスライディングモードコントローラは、従来より知られている(例えば特許文献1)。このスライディングモードコントローラの制御周期は、制御対象モデルを定義するためのプラントの入出力のサンプリング周期と同一に設定されている。
スライディングモード制御では、制御目標値と制御対象であるプラントの出力との制御偏差の減衰特性を指定することが可能であり、このような制御は応答指定型制御と呼ばれている。応答指定型制御としては、スライディングモード制御のほかにバックステッピング制御が知られている。
特開2000−110636号公報
制御対象であるプラントが摩擦の様な非線形な外乱を有する場合に、制御性を向上させるためには、コントローラの制御周期を短くする必要がある。すなわち、短い制御周期で制御対象の可動部を動かすことにより、静止摩擦による動作の非連続性を解消できる。また、制御周期が長くなるほど、目標値の変化の入力への反映時間、すなわち、むだ時間は長くなるので、目標値に対するプラント出力の追従性を向上させるためにも、制御周期を短くすることが有効である。
しかしながら、制御性能を向上させるためにコントローラの制御周期を短く設定し、プラントの制御対象モデルを定義するためのサンプリング周期をその制御周期と同一に設定すると、以下のような問題が発生する。すなわち、制御周期に比べてプラント出力の変化速度が遅い場合には、プラント出力の変化速度に比べて相対的に短い周期でサンプリングしたデータに基づいて制御対象モデルの特性を示すモデルパラメータの同定が行われる。そのため、サンプルデータ間の変化量が小さくなり、サンプルデータに基づいて同定されるモデルパラメータはプラントの動特性を正確にあらわすことができない。
また、短い周期でサンプリングしたデータを用いる場合、制御偏差の変化量(前回のサンプリングデータから算出される制御偏差と、今回のサンプリングデータから算出される制御偏差との差)が小さくなる。上述したスライディングモード制御のような応答指定型制御では、制御偏差の減衰特性を指定する関数に基づいてフィードバック入力が決定されるが、この関数の値がゼロ近傍の値となってしまうため、フィードバックの感度が著しく低下し、指定した応答を実現できない場合があった。
本発明は、上述した点に鑑みなされたものであり、制御対象モデルの特性を、実際の制御対象であるプラントの特性により高い精度で近似させ、しかも制御周期は短い周期を採用して制御性を向上させることができるプラントの制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、プラントをモデル化した制御対象モデルに基づいて前記プラントを制御するコントローラを備えたプラントの制御装置において、前記制御対象モデルは、前記コントローラの制御周期(ΔT1)よりも長い、前記プラントの動作周波数に応じた第1周期(ΔT2)でサンプリングした前記プラントの入力及び出力を含む数式によって定義されており、前記コントローラは、前記プラントの出力(DTH)が目標値(DTHR)に一致するように前記プラントの入力を算出するフィードバック制御を実行し、該フィードバック制御は、前記プラントの出力と前記目標値との偏差(e)の、時間経過に伴う減衰特性を指定可能な応答指定型制御であることを特徴とする。
この構成によれば、コントローラの制御周期よりも長い、プラントの動作周波数に応じた第1周期でサンプリングしたプラントの入出力を含む数式により定義された制御対象モデルに基づいて、プラントが制御される。したがって、制御のむだ時間を小さくし、また摩擦特性などの動特性を補償するためにプラントの動作周波数領域に対応した周期より短い制御周期で制御を実行する場合において、制御対象モデルの動特性をプラントの実際の動特性に精度よく近似させることが可能となる。その結果プラントの制御性をより向上させることができる。またプラントのフィードバック制御は、プラントの出力と目標値との偏差(制御偏差)の、時間経過に伴う減衰特性が指定可能な応答指定型制御であるので、プラントの作動状態に応じて最適な制御応答特性を実現することが可能となる。さらに、制御対象モデルの動特性がプラントの動作周波数領域での動特性と精度よく近似しているので、指定した制御応答特性(制御偏差の減衰特性)を精度よく実現することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項2に記載のプラントの制御装置において、前記コントローラは、スライディングモード制御を実行するスライディングモードコントローラであることを特徴とする。
この構成によれば、スライディングモード制御によりプラントが制御されるので、外乱やモデル化誤差(制御対象モデルの特性と、実際のプラントの特性との差)、あるいはむだ時間が存在する場合においても、良好な制御性を得ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプラントの制御装置において、前記コントローラは、前記偏差に基づく線形関数である切換関数の値(σ)を算出し、該切換関数値(σ)の算出に用いる前記偏差のサンプリング時間間隔(k0)は、前記制御周期(ΔT1)より長いことを特徴とする。
この構成によれば、コントローラの制御周期より長いサンプリングリング時間間隔の制御偏差を用いて切換関数値が算出されるので、切換関数値の算出にかかわる制御偏差のサンプリング時間間隔が十分に確保される。したがって、プラントの出力の変化速度がコントローラの制御周期に比べて遅い場合でも、切換関数値の変化量がノイズに比べて十分に大きくなり、外乱やモデル化誤差に対する良好な抑制能力を得ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のプラントの制御装置において、前記制御対象モデルのモデルパラメータを同定する同定手段を備え、前記コントローラは前記同定手段により同定されたモデルパラメータを用いて前記プラントの入力を算出し、前記同定手段は、前記コントローラの制御周期(ΔT1)より長い第2周期(ΔT2)で前記モデルパラメータの同定演算を実行することを特徴とする。
この構成によれば、制御対象モデルのモデルパラメータの同定演算が、コントローラの制御周期より長い第2周期で実行されるので、プラントの実際の応答速度に応じた周期でモデルパラメータの同定を行い、モデルパラメータの同定精度を向上させることができる。また同定演算を実行する演算装置の演算負荷を低減することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のプラントの制御装置において、前記同定手段は、同定演算により得られるモデルパラメータの移動平均化処理を行い、前記コントローラは、該移動平均化処理後のモデルパラメータを用いることを特徴とする。
この構成によれば、同定演算により得られるモデルパラメータの移動平均化処理が行われ、該移動平均化処理後のモデルパラメータがコントローラで使用される。モデルパラメータの演算周期がコントローラの制御周期より長いと、モデルパラメータの演算周期の影響がプラントの制御入力に表れ、制御系の共振が発生する可能性があるが、コントローラが移動平均化処理後のモデルパラメータを使用することにより、このような悪影響を防止することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載のプラントの制御装置において、前記同定手段で同定するモデルパラメータは、前記プラントの出力に関わるモデルパラメータ(a1,a2)と、前記プラントの入力に関わるモデルパラメータ(b1)と、前記プラントの入出力に関わらないモデルパラメータ(c1)とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、同定されるモデルパラメータは、プラントの入出力に関わらないモデルパラメータを含むので、このモデルパラメータにより外乱を同定することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載のプラントの制御装置において、前記プラントは、内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁と、該スロットル弁を駆動する駆動手段とを有するスロットル弁駆動装置(10)を含み、前記プラントの出力は前記スロットル弁の開度(TH)であり、前記目標値は前記スロットル弁の目標開度(THR)であることを特徴とする。
この構成によれば、コントローラの制御周期よりも長い、スロットル弁駆動装置の動作周波数に応じた第1周期でサンプリングしたプラントの入出力を用いてモデル化した制御対象モデルに基づいて、スロットル弁開度を目標開度に一致させる制御が行われる。スロットル弁駆動装置の出力であるスロットル弁開度の動作周波数領域は比較的低いので、制御対象モデルを定義するサンプリング周期を制御周期より長くすることにより、制御対象モデルの動特性をスロットル弁駆動装置の動特性と精度よく近似させ、スロットル弁開度の目標開度への制御性を向上させることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のプラントの制御装置において、前記プラントは、可動部材(64)と、該可動部材(64)を駆動する油圧駆動手段(61〜63,65〜70)とを有する油圧位置決め装置を含み、前記プラントの出力は前記可動部材の位置(PACT)であり、前記目標値は前記可動部材の目標位置(PCMD)であることを特徴とする。
この構成によれば、可動部材の位置は、目標位置に追従するように良好なロバスト性をもって制御される。
請求項9に記載の発明は、プラントの出力が目標値に一致するように前記プラントの入力を算出するフィードバック制御を実行するコントローラを備えたプラントの制御装置において、前記フィードバック制御は、前記プラントの出力と前記目標値との偏差の、時間経過に伴う減衰特性を指定可能な応答指定型制御であり、前記コントローラは、前記偏差に基づく線形関数である切換関数の値に基づいて前記プラントの入力を算出し、前記切換関数値の算出に用いる前記偏差のサンプリング時間間隔は、前記プラントの動作周波数に応じて前記コントローラの制御周期より長く設定されることを特徴とする。
この構成によれば、コントローラの制御周期より長い、プラントの動作周期に応じたサンプリングリング時間間隔の制御偏差を用いて切換関数値が算出されるので、切換関数値の算出にかかわる制御偏差のサンプリング時間間隔が十分に確保される。したがって、プラントの出力の変化速度がコントローラの制御周期に比べて遅い場合でも、切換関数値の変化量がノイズに比べて十分に大きくなり、外乱に対する良好な抑制能力を得ることができる。
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態にかかるスロットル弁制御装置の構成を示す図である。内燃機関(以下「エンジン」という)1の吸気通路2には、スロットル弁3が設けられている。スロットル弁3には、該スロットル弁3を閉弁方向に付勢する第1付勢手段としてのリターンスプリング4と、該スロットル弁3を開弁方向に付勢する第2付勢手段としての弾性部材5とが取り付けられている。またスロットル弁3は、駆動手段としてのモータ6によりギヤ(図示せず)を介して駆動できるように構成されている。モータ6による駆動力がスロットル弁3に加えられない状態では、スロットル弁3の開度THは、リターンスプリング4の付勢力と、弾性部材5の付勢力とが釣り合うデフォルト開度THDEF(例えば5度)に保持される。
モータ6は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)7に接続されており、その作動がECU7により制御される。スロットル弁3には、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ8が設けられており、その検出信号は、ECU7に供給される。
またECU7には、エンジン1が搭載された車両の運転者の要求出力を検出するアクセルペダルの踏み込み量ACCを検出するアクセルセンサ9が接続されており、その検出信号がECU7に供給される。
ECU7は、スロットル弁開度センサ8及びアクセルセンサ9の検出信号が供給される入力回路、入力信号をディジタル信号に変換するAD変換回路、各種演算処理を実行する中央演算ユニット(CPU)、CPUが実行するプログラムやプログラムで参照されるマップやテーブルなどを格納するメモリ回路、及びモータ6に駆動電流を供給する出力回路を備えている。ECU7は、アクセルペダルの踏み込み量ACCに応じてスロットル弁3の目標開度THRを決定し、検出したスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するようにモータ6の制御量DUTを決定し、制御量DUTに応じた電気信号をモータ6に供給する。
本実施形態では、スロットル弁3、リターンスプリング4、弾性部材5及びモータ6からなるスロットル弁駆動装置10を制御対象とし、該制御対象に対する入力をモータ6に印加する電気信号のデューティ比DUTとし、制御対象の出力をスロットル弁開度センサ8により検出されるスロットル弁開度THとする。
スロットル弁駆動装置10の応答周波数特性に応じて、下記式(1)で定義されるモデルを制御対象モデルとして設定する。このモデルの応答周波数特性は、スロットル弁駆動装置10の特性に近似させることが可能であることが確認されている。
DTH(k+1)=a1×DTH(k)+a2×DTH(k-1)
+b1×DUT(k-d)+c1 (1)
ここで、kは第1の周期ΔT1で離散化されたサンプリング時刻または制御時刻を表すパラメータであり、DTH(k)は下記式(2)により定義されるスロットル弁開度偏差量である。
DTH(k)=TH(k)−THDEF (2)
ここで、THは検出したスロットル弁開度、THDEFは前記デフォルト開度である。
また式(1)のa1,a2,b1,c1は、制御対象モデルの特性を決めるモデルパラメータであり、dはむだ時間である。演算量低減のためには、むだ時間dを「0」とした下記式(1a)で制御対象モデルを定義することが有効である。むだ時間dを「0」とすることに起因するモデル化誤差(制御対象モデルの特性と、実際の制御対象(プラント)の特性との差)は、ロバスト性のあるスライディングモード制御を採用することにより補償する。
DTH(k+1)=a1×DTH(k)+a2×DTH(k-1)
+b1×DUT(k)+c1 (1a)
式(1a)においては、制御対象の出力である偏差量DTHに関わるモデルパラメータa1,a2、制御対象の入力であるデューティ比DUTに関わるモデルパラメータb1の他に、入出力に関わらないモデルパラメータc1が採用されている。このモデルパラメータc1は、デフォルト開度THDEFのずれやスロットル弁駆動装置に加わる外乱を示すパラメータである。すなわち、後述するモデルパラメータ同定器により、モデルパラメータa1,a2,b1と同時にモデルパラメータc1を同定することにより、デフォルト開度ずれや外乱を同定できるようにしている。
図2は、ECU7により実現されるスロットル弁制御装置の機能ブロック図であり、この制御装置は、適応スライディングモードコントローラ21と、モデルパラメータ同定器22と、モデルパラメータスケジューラ25と、アクセルペダル踏み込み量ACCに応じてスロットル弁3の目標開度THRを設定する目標開度設定部24と、減算器26,27とからなる。
適応スライディングモードコントローラ21は、検出したスロットル弁開度THが目標開度THRと一致するように、適応スライディングモード制御によりデューティ比DUTを算出し、該算出したデューティ比DUTを出力する。
適応スライディングモードコントローラ21を用いることにより、スロットル弁開度THの目標開度THRに対する応答特性を、所定のパラメータ(後述する切換関数設定パラメータVPOLE)を用いて適宜変更する(指定する)ことが可能となる。その結果、スロットル弁開度に応じて最適な応答特性を指定することができ、例えばスロットル弁3を開弁位置から全閉位置に移動させる際の衝撃(スロットル全閉ストッパへの衝突)の回避、及びアクセル操作に対するエンジンレスポンスの可変化が可能となる。また、スライディングモード制御により、モデルパラメータの誤差に対する安定性を確保することが可能となる。
モデルパラメータ同定器22は、修正モデルパラメータベクトルθL(θLT=[a1,a2,b1,c1])を算出し、適応スライディングモードコントローラ21に供給する。より具体的には、モデルパラメータ同定器22は、スロットル弁開度TH及びデューティ比DUTに基づいて、モデルパラメータベクトルθを算出する。さらに、そのモデルパラメータベクトルθに対して第1リミット処理、オーバサンプリング及び移動平均化処理、並びに第2リミット処理を行うことにより修正モデルパラメータベクトルθLを算出し、該修正モデルパラメータベクトルθLを適応スライディングモードコントローラ21に供給する。このようにしてスロットル弁開度THを目標開度THRに追従させるために最適なモデルパラメータa1,a2,b1が得られ、さらに外乱及びデフォルト開度THDEFのずれを示すモデルパラメータc1が得られる。第1リミット処理、オーバサンプリング及び移動平均化処理、並びに第2リミット処理については、後述する。
リアルタイムでモデルパラメータを同定するモデルパラメータ同定器22を用いることにより、エンジン運転条件の変化への適応、ハードウエアの特性ばらつきの補償、電源電圧変動の補償、及びハードウエア特性の経年変化への適応が可能となる。
モデルパラメータスケジューラ25は、下記式(3)により目標開度THR(k)とデフォルト開度THDEFとの偏差量として定義される目標値DTHRに応じて、基準モデルパラメータベクトルθbase(θbaseT=[a1base,a2base,b1base,c1base])を算出し、モデルパラメータ同定器22に供給する。
DTHR(k)=THR(k)−THDEF (3)
減算器26及び27は、デフォルト開度THDEFと、スロットル弁開度TH及び目標開度THRとの偏差量を、スロットル弁開度偏差量DTH及び目標値DTHRとして算出する(式(2)及び式(3)参照)。
[適応スライディングモードコントローラの概要]
次に適応スライディングモードコントローラ21の動作原理を説明する。
スロットル弁開度偏差量DTHと、目標値DTHRとの偏差e(k)を下記式(4)で定義すると、適応スライディングモードコントローラの切換関数値σ(k)は、下記式(5)にように設定される。
e(k)=DTH(k)−DTHR(k) (4)
σ(k)=e(k)+VPOLE×e(k-1) (5)
=(DTH(k)−DTHR(k))
+VPOLE×(DTH(k-1)−DTHR(k-1))
ここで、VPOLEは、−1より大きく1より小さい値に設定される切換関数設定パラメータである。
縦軸を偏差e(k)とし、横軸を前回偏差e(k-1)として定義される位相平面上では、σ(k)=0を満たす偏差e(k)と、前回偏差e(k-1)との組み合わせは、直線となるので、この直線は一般に切換直線と呼ばれる。スライディングモード制御は、この切換直線上の偏差e(k)の振る舞いに着目した制御であり、切換関数値σ(k)が0となるように、すなわち偏差e(k)と前回偏差e(k-1)の組み合わせが位相平面上の切換直線上に載るように制御を行い、外乱やモデル化誤差に対してロバストな制御を実現するものである。その結果、スロットル弁開度偏差量DTHは、目標値DTHRに追従するように、良好なロバスト性を持って制御される。
また式(5)の切換関数設定パラメータVPOLEの値を変更することにより、図3に示すように、偏差e(k)の減衰特性、すなわちスロットル弁開度偏差量DTHの目標値DTHRへの追従特性を変更することができる。具体的には、VPOLE=−1とすると、全く追従しない特性となり、切換関数設定パラメータVPOLEの絶対値を小さくするほど、追従速度を速めることができる。このようにスライディングモードコントローラは、偏差e(k)の減衰特性を所望の特性に指定可能であるので、応答指定型コントローラと呼ばれる。
スライディングモード制御によれば、切換関数設定パラメータVPOLEを変更することにより、容易に収束速度を変更できるので、本実施形態では、スロットル弁開度偏差量DTHに応じて、切換関数設定パラメータVPOLEを設定し、スロットル弁3の作動状態に適した応答特性を得られるようにしている。
上述したようにスライディングモード制御では、偏差e(k)と前回偏差e(k-1)の組み合わせ(以下「偏差状態量」という)を切換直線上に拘束することにより、偏差e(k)を指定した収束速度で、かつ外乱やモデル化誤差に対してロバストに、0に収束させる。したがって、スライディングモード制御では、如何にして偏差状態量を切換直線に載せ、そこに拘束するかが重要となる。
そのような観点から、制御対象への入力(コントローラの出力)DUT(k)(Usl(k)とも表記する)は、基本的には下記式(6)に示すように、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)の和として算出される。
DUT(k)=Usl(k)
=Ueq(k)+Urch(k)+Uadp(k) (6)
等価制御入力Ueq(k)は、偏差状態量を切換直線上に拘束するための入力であり、到達則入力Urch(k)は、偏差状態量を切換直線上へ載せるための入力であり、適応則入力Uadp(k)は、モデル化誤差や外乱の影響を抑制し、偏差状態量を切換直線へ載せるための入力である。以下各入力Ueq(k),Urch(k)及びUadp(k)の算出方法を説明する。
等価制御入力Ueq(k)は、偏差状態量を切換直線上に拘束するための入力であるから、満たすべき条件は下記式(7)で与えられる。
σ(k)=σ(k+1) (7)
式(1)並びに式(4)及び(5)を用いて式(7)を満たすデューティ比DUT(k)を求めると、下記式(8)が得られ、これが等価制御入力Ueq(k)となる。さらに、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を、それぞれ下記式(9)及び(10)により定義する。
Figure 0004223489
ここで、F及びGは、それぞれ到達則制御ゲイン及び適応則制御ゲインであり、以下に述べるように設定される。またΔT1は、制御周期である。制御周期は、制御対象モデルの定義に使用されるサンプリング周期と同一の第1の周期ΔT1としている。
次に到達則入力Urch及び適応則入力Uadpにより、偏差状態量が安定に切換直線上に載せられるように、到達則制御ゲインF及び適応則制御ゲインGの決定を行う。
具体的には外乱V(k)を想定し、外乱V(k)に対して切換関数値σ(k)が安定であるための条件を求めることにより、ゲインF及びGの設定条件を求める。その結果、ゲインF及びGの組み合わせが、下記式(11)〜(13)を満たすこと、換言すれば図4にハッチングを付して示す領域内にあることが安定条件として得られた。
F>0 (11)
G>0 (12)
F<2−(ΔT/2)G (13)
以上のように、式(8)〜(10)により、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を算出し、それらの入力の総和として、デューティ比DUT(k)を算出することができる。
[モデルパラメータ同定器の概要]
次にモデルパラメータ同定器22の動作原理を説明する。
モデルパラメータ同定器22は、前述したように制御対象の入力(DUT(k))及び出力(TH(k))に基づいて、制御対象モデルのモデルパラメータベクトルを算出する。具体的には、モデルパラメータ同定器22は、下記式(14)による逐次型同定アルゴリズム(一般化逐次型最小2乗法アルゴリズム)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出する。
θ(k)=θ(k-1)+KP(k)ide(k) (14)
θ(k)T=[a1”,a2”,b1”,c1”] (15)
ここで、a1”,a2”,b1”及びc1”は、後述する第1リミット処理を実施する前のモデルパラメータである。またide(k)は、下記式(16)、(17)及び(18)により定義される同定誤差である。DTHHAT(k)は、最新のモデルパラメータベクトルθ(k-1)を用いて算出される、スロットル弁開度偏差量DTH(k)の推定値(以下「推定スロットル弁開度偏差量」という)である。KP(k)は、下記式(19)により定義されるゲイン係数ベクトルである。また、式(19)のP(k)は、下記式(20)により算出される4次の正方行列である。
Figure 0004223489
Figure 0004223489
式(20)の係数λ1,λ2の設定により、式(14)〜(20)による同定アルゴリズムは、以下のような4つの同定アルゴリズムのいずれかになる。
λ1=1,λ2=0 固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ 漸減ゲインアルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
λ1=λ,λ2=1 重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
演算量の低減のために固定ゲインアルゴリズムを採用すると、式(19)は、下記式(19a)にように簡略化される。式(19a)においてPは、定数を対角要素とする正方行列である。
Figure 0004223489
式(14)〜(18),及び(19a)により演算されるモデルパラメータは、所望値から徐々にずれていく場合がある。すなわち、図5に示すようにモデルパラメータがある程度収束した後に、スロットル弁の摩擦特性などの非線形特性によって生じる残留同定誤差が存在したり、平均値がゼロでない外乱が定常的に加わるような場合には、残留同定誤差が蓄積し、モデルパラメータのドリフトが引き起こされる。このようなモデルパラメータのドリフトを防止すべく、モデルパラメータベクトルθ(k)は、上記式(14)に代えて、下記式(14a)により算出される。
θ(k)=θ(0)+DELTAk-1×KP(1)ide(1)
+DELTAk-2×KP(2)ide(2)+……
+DELTA×KP(k-1)ide(k-1)+KP(k)ide(k)
(14a)
ここで、DELTAは下記式(21)で示すように、忘却係数δi(i=1〜3)及び「1」を要素とする忘却係数ベクトルである。
DELTA=[δ1,δ2,δ3,1] (21)
忘却係数δiは、0から1の間の値に設定され(0<δi<1)、過去の同定誤差の影響を徐々に減少させる機能を有する。式(21)では、モデルパラメータc1の演算にかかる係数が「1」に設定されており、過去値の影響が保持されるようになっている。このように、忘却係数ベクトルDELTAの要素の一部、すなわちモデルパラメータc1の演算にかかる係数を「1」とすることにより、目標値DTHRと、スロットル弁開度偏差量DTHとの定常偏差が発生することを防止することができる。また忘却係数ベクトルDELTAの他の要素δ1,δ2及びδ3を「0」より大きく「1」より小さい値に設定することにより、モデルパラメータのドリフトが防止される。
式(14a)を漸化式形式に書き直すと、下記式(14b)(14c)が得られる。前記式(14)に代えて下記式(14b)及び(14c)を用いてモデルパラメータベクトルθ(k)を算出する手法を、以下δ修正法といい、式(14c)で定義されるdθ(k)を「更新ベクトル」という。
θ(k)=θ(0)+dθ(k) (14b)
dθ(k)=DELTA・dθ(k-1)+KP(k)ide(k) (14c)
δ修正法を用いたアルゴリズムによれば、ドリフト防止効果とともに、モデルパラメータの安定化効果も得られる。すなわち、初期値ベクトルθ(0)が常に保存され、更新ベクトルdθ(k)も忘却係数ベクトルDELTAの働きにより、その要素のとりうる値が制限されるので、各モデルパラメータを初期値近傍に安定させることができる。
さらに実際の制御対象の入出力データに基づいた同定により更新ベクトルdθ(k)を調整しつつモデルパラメータを算出するので、実際の制御対象に適合したモデルパラメータを算出できる。
さらに上記式(14b)の初期値ベクトルθ(0)に代えて、基準モデルパラメータベクトルθbaseを用いる下記式(14d)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出することが望ましい。
θ(k)=θbase+dθ(k) (14d)
基準モデルパラメータベクトルθbaseは、モデルパラメータスケジューラ25により目標値DTHRに応じて設定されるので、スロットル弁開度THの変化に対応する動特性の変化に適応させることができる。
本実施形態では、さらに同定誤差ide(k)のローパスフィルタ処理を行う。具体的には、ローパス特性を有する制御対象のモデルパラメータを同定する場合、同定アルゴリズムの、同定誤差ide(k)に対する同定重みは、図6(a)に実線L1で示すような周波数特性を有するが、これをローパスフィルタ処理により、破線L2で示すように高周波成分を減衰させた特性とする。これは、以下の理由による。
ローパス特性を有する実際の制御対象及びこれをモデル化した制御対象モデルの周波数特性は、それぞれ図6(b)に実線L3及びL4で示すようになる。すなわち、ローパス特性(高周波成分が減衰する特性)を有する制御対象について、モデルパラメータ同定器22によりモデルパラメータを同定すると、同定されたモデルパラメータは高周波域阻止特性に大きく影響されたものとなるため、低周波域での制御対象モデルのゲインが実際の特性より低くなる。その結果、スライディングモードコントローラ21による制御入力の補正が過補正となる。
そこで、ローパスフィルタ処理により同定アルゴリズムの重みの周波数特性を、図6(a)に破線L2で示すような特性とすることにより、制御対象モデルの周波数特性を、同図(b)に破線L5で示すような特性とし、実際の周波数特性と一致させ、あるいは制御対象モデルのゲインが実際のゲインよりやや高くなるように修正することとした。これにより、コントローラ21による過補正を防止し、制御系のロバスト性を高めて制御系をより安定化させることができる。
なお、ローパスフィルタ処理は、同定誤差の過去値ide(k-i)(例えばi=1〜10に対応する10個の過去値)をリングバッファに記憶し、それらの過去値に重み係数を乗算して加算することにより実行する。
さらに、同定誤差ide(k)は、前記式(16)、(17)及び(18)を用いて算出しているため、スロットル弁開度偏差量DTH(k)と、推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(k)とに同様のローパスフィルタ処理を行うこと、あるいは、スロットル弁開度偏差量DTH(k-1)及びDTH(k-2)と、デューティ比DUT(k-1)とに同様のローパスフィルタ処理を行うことによっても同様の効果が得られる。
ローパスフィルタ処理を施した同定誤差をidef(k)と表すこととすると、前記式(14c)に代えて、下記式(14e)を用いて更新ベクトルdθ(k)が算出される。
dθ(k)=DELTA×dθ(k-1)+KP(k)idef(k) (14e)
[サンプリング周期の検討]
ところで、上述した制御対象モデルのサンプリング周期及び制御周期に相当する第1の周期ΔT1を数ミリ秒程度(例えば2ミリ秒程度)に設定した場合には、外乱の抑制能力が不十分となること、及びハードウエア特性のばらつきや経時変化への適応能力が不十分となることが、本願発明者により確認された。以下この点を詳細に説明する。
1)外乱抑制能力の不足
前記式(8)により算出される等価制御入力Ueqは、スロットル弁開度偏差量DTHを目標値DTHRへ追従させるためのフィードフォワード入力である。したがって、外乱(例えばスロットル弁3の弁体を支持する部材が受ける摩擦力の変化や弁体が受ける圧力(弁体の両側の圧力差に起因して弁体に加わる圧力)の変化など)の影響の抑制に寄与するのは、前記式(9)及び(10)により到達則入力Urch及び適応則入力Uadpである。到達則入力Urch及び適応則入力Uadpは、切換関数値σに基づいて算出される。
第1の周期ΔT1を数ミリ秒程度の小さな値に設定すると、スロットル弁開度偏差量DTHや目標値DTHRの変化速度が小さい場合には、制御偏差の今回値e(k)と前回値e(k-1)は、ほぼ等しくなってしまう。そのため、式(5)の切換関数設定パラメータVPOLEを「−1」に近い値に設定すると、切換関数値σ(k)は、ほぼ「0」となってしまう。その結果、式(9)及び(10)により算出される到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)は、ぼぼ「0」となってしまい、適応スライディングモードコントローラの外乱抑制能力が著しく低下する。すなわち、制御対象の出力の変化速度(変化周期)と比較して、短いサンプル周期を用いて制御対象モデルを定義すると、その制御対象モデルに基づいて設計された適応スライディングモードコントローラは、その外乱抑制能力が著しく低いものとなる。
2)ハードウエア特性のばらつきや経時変化への適応能力の不足
ハードウエア特性のばらつきや経時変化への適応は、モデルパラメータ同定器22によってモデルパラメータを逐次的に同定することによって行われる。
第1の周期ΔT1を数ミリ秒程度に設定すると、サンプリング周波数は数100Hz(例えば500Hz程度)となり、ナイキスト周波数fnyqはその1/2の周波数となる。ところが、スロットル弁駆動装置10の出力であるスロットル弁開度偏差量DTHや目標値DTHRの周波数成分の大部分は、図7に示すようにナイキスト周波数fnyqに比べてかなり低い周波数帯域(5Hz未満の周波数帯域)に存在する。図7においてΦthはパワースペクトルを示す。このため、図8に示すように変化速度の遅いパラメータを相対的に短い周期でサンプリングすると、その変化量を観測できなくなる。すなわち、スロットル弁開度偏差量の今回値DTH(k)と前回DTH(k-1)とは、ほぼ等しくなる。
このような検出データを用いてモデルパラメータの同定を行うと、同定されるモデルパラメータa1”及びa2”の和はほぼ「1」となり、モデルパラメータb1”及びc1”は、いずれもほぼ「0」となってしまう。すなわち、同定されるモデルパラメータは、制御対象の動特性を正確に表現したものではなくなる。
以上のように、制御対象の出力の変化速度(変化周期)と比較して、短いサンプリング周期でサンプリングしたデータに基づいてモデルパラメータの同定を行うと、その精度が著しく低下し、制御対象特性のばらつきや変化に対する適応能力が不十分となる。
サンプリング周期が長すぎると、ナイキスト周波数fnyqが低下し、制御性能が低下することは明らかであるが、サンプリング周期が短いために問題が発生することはないと、従来は考えられていた。ところが、制御対象の状態の変化に着目した制御を行う場合には、サンプリング周期が短すぎるために制御性能が低下することがある点が明らかとなった。
そこで本実施形態では、制御対象モデルのサンプリング周期を制御対象の動作周波数帯域に応じて、より長い周期とすることにより、上述した課題を解決している。ただし、摩擦などにように非線形な外乱に対しては、経験的に制御周期を短くした方が制御性能が向上するので、適応スライディングモードコントローラの制御周期は数ミリ秒程度に設定される第1の周期ΔT1を採用し、制御対象モデルの定義に使用するサンプリング周期を第1の周期ΔT1より長い第2の周期ΔT2に設定するようにした。例えば制御対象の動作周波数帯域の上限のカットオフ周波数が1Hzである場合、制御対象の動きを観測するための最低サンプル周波数は、サンプリング定理により、2Hzである。また、制御対象の動きを表すモデルのモデルパラメータを正確に同定するための最高サンプル周波数は20Hz程度であることが実験により確認されている。したがって、制御対象モデルの定義に使用するサンプリング周期は、制御対象の動作周波数帯域の上限のカットオフ周波数の3倍から30倍以下程度の周波数に対応する周期とすることが望ましい。
第1の周期ΔT1及び第2の周期ΔT2に対応するナイキスト周波数をそれぞれfnyq1及びfnyq2とすると、両者の関係は図9に示すようになる。図9に示すfsmp2は、第2の周期ΔT2に対応するサンプリング周波数である。
サンプリング周期を上限カットオフ周波数の30倍の周波数に対応する周期より短く設定すると、上述したような問題点が発生し、上限カットオフ周波数の3倍の周波数に対応する周期より長く設定するとナイキスト周波数が制御対象の動作周波数帯域に対して低すぎることとなり、制御性を低下させる。
さらに本実施形態では、モデルパラメータ同定器による同定演算周期は、第2の周期ΔT2と同一とした。
第2の周期ΔT2で離散化したサンプリング時刻または制御時刻を「n」で示すことにすると、制御対象モデルを定義する前記式(1a)は、下記式(1b)のように書き直される。同様に前記式(3)(4)及び(5)も下記式(3a)(4a)及び(5a)のように書き直される。以下、式(1b)で定義される制御対象モデルを「ΔT2モデル」といい、前記式(1a)で定義される制御対象モデルを「ΔT1モデル」という。
DTH(n+1)=a1×DTH(n)+a2×DTH(n-1)
+b1×DUT(n)+c1 (1b)
DTHR(n)=THR(n)−THDEF (3a)
e(n)=DTH(n)−DTHR(n) (4a)
σ(n)=e(n)+VPOLE×e(n-1) (5a)
=(DTH(n)−DTHR(n))
+VPOLE×(DTH(n-1)−DTHR(n-1))
ここで、サンプリング周期を長くすることが切換関数値σに与える影響について説明する。ΔT1モデルにおける偏差e(k)の減衰特性と、ΔT2モデルにおける偏差e(n)の減衰特性とが、時間tを横軸にとった場合に図10に示すように同一となるようにするには、例えば第2の周期ΔT2が第1の周期T1の5倍に設定された場合には、切換関数設定パラメータVPOLEの値を下記のように設定すればよい。
ΔT1モデルのVPOLE=−0.9
ΔT2モデルのVPOLE=−0.59
このように切換関数設定パラメータVPOLEを設定した場合において、図11に示すような低周波の正弦波状外乱によって、スロットル弁開度偏差量DTHを振動させると、各モデルの切換関数値σは、図12に示すようになる。偏差eの減衰特性が同一となるように設定された切換関数の、同じ外乱に対する値が異なるものとなっており、ΔT2モデルの切換関数値σ(n)の方が、ΔT1モデルの切換関数値σ(k)より大きくなる。すなわち、サンプリング周波数を低下させることにより、外乱に対する切換関数値σの感度が増加することが確認される。したがって、このように外乱に対する感度が高められた切換関数値σ(n)を使用することにより、外乱抑制能力を向上させることができる。
[ΔT2モデルに基づく適応スライディングモードコントローラの再設計]
次にΔT2モデルの基づいて適応スライディングモードコントローラの再設計を行う。適応スライディングモードコントローラの出力は、下記式(6a)で表される。
DUT(n)=Usl(n)
=Ueq(n)+Urch(n)+Uadp(n) (6a)
等価制御入力Ueq(n)は、前記式(8)の「k」を「n」に置き換えることにより得られる。ただし、実際には目標値の未来値であるDTHR(n+1)を得ることは困難であるので、本実施形態では、目標値DTHRに関わる項を除いた下記式(8a)により、等価制御入力Ueq(n)を算出する。未来値DTHR(n+1)の項のみを除き、今回の目標値DTHR(n)及び前回の目標値DTHR(n-1)を残すと、コントローラが不安定化することが実験的に確認されているので、式(8a)では今回目標値DTHR(n)及び前回目標値DTHR(n-1)の項も除かれている。
また、到達則入力Urch(n)及び適応則入力Uadp(n)は、それぞれ下記式(9a)及び(10a)により算出する。
Figure 0004223489
さらに、到達則入力Urch(n)及び適応則入力Uadp(n)のゲインF及びGは、切換関数値σ(n)に応じて、図13(a)に示すように設定することが望ましい。このようにゲインF及びGを設定することにより、切換関数値σ(n)の絶対値が増加するほどゲインが低下するので、目標値DTHRが急激に変化した場合でも、スロットル弁開度偏差量DTHが目標値DTHRに対してオーバシュートすることを防止することができる。
図13(a)のような設定に代えて、同図(b)または(c)に示すように、偏差e(n)またはスロットル弁開度偏差量DTH(n)に応じて、ゲインF及びGを設定するようにしてもよい。同図(b)に示すように偏差e(n)に応じてゲインF,Gを設定することにより、偏差e(n)の絶対値が増加するほどゲインが低下するので、目標値DTHRが急激に変化した場合でも、スロットル弁開度偏差量DTHが目標値DTHRに対してオーバシュートすることを防止することができる。
また同図(c)に示すように、スロットル弁開度偏差量DTH(n)に応じてゲインF及びGを設定することにより、スロットル弁開度偏差量DTH(n)が「0」近傍にあるとき、すなわちスロットル弁開度THがデフォルト開度THDEF近傍にあるときの制御性を向上させることができる。
ただし、ゲインF,Gを可変化すると、以下のような課題が発生する。すなわち、、図14(b)に示すように、ゲインFまたはGを決定するパラメータが時刻t1においてステップ状に変化することによりゲインFまたはGがステップ状に変化したときには、同図(a)に破線で示すように到達則入力Urchまたは適応則入力Uadpが急変し、スロットル弁開度THの急変を招くおそれがある。したがって、前記式(9a)及び(10a)に代えて、下記式(9b)及び(10b)により、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpを算出するようにしてもよい。これにより、ゲインF,Gが急変したときでも、到達則入力Urchまたは適応則入力Uadpは、同図(a)に実線で示すように、緩やかに変化させることができる。
Urch(n)=Urch(n-1)−(F/b1)(σ(n)−σ(n-1)) (9b)
Uadp(n)=Uadp(n-1)−(GΔT2/b1)×σ(n) (10b)
[演算周期の検討]
制御対象モデルのサンプリング周期として第2の周期ΔT2を採用すると、図15に示すように、通常は制御周期も第1の周期ΔT1より長い第2の周期ΔTに設定される。ところが、制御周期を長くすると以下のような課題が生じる。
1)スロットル弁の駆動機構の摩擦などの非線形な外乱によって生じる、目標値に対する出力の誤差は、可能な限りその誤差を早く検知し、補正する方がより良い制御性が得られる。サンプリング周期を長くすると、その誤差の検知が遅れるため、制御性が低下する。
2)コントローラへの目標値の入力周期が長くなるため、目標値の変化に対する出力の追従におけるむだ時間が長くなる。また高周波数(高速)の目標値変化を出力へ反映できなくなる。
そこで本実施形態では、適応スライディングモードコントローラ21,モデルパラメータ同定器22及びモデルパラメータスケジューラ25を第2の周期ΔT2をサンプリング周期とするモデルに基づいて構成し、適応スライディングモードコントローラ21は第1の周期ΔT1毎に、制御入力を演算し、モデルパラメータ同定器22は、第2の周期ΔT2毎にモデルパラメータベクトルθを同定し、モデルパラメータスケジューラ25は、第2の周期ΔT2毎に基準モデルパラメータベクトルθbaseを算出するようにした。
図16は、ΔT2=5ΔT1である場合において、上記各パラメータの演算タイミングを説明するためのタイムチャートである。この図では、モデルパラメータベクトルθ(n-1)は、時刻(n-1)(=時刻(k-5))と時刻(n-2)(=時刻(k-10))とにおけるスロットル弁開度偏差量DTH、時刻(n-1)における制御入力DUT、及び目標値DTHRに基づいて、同時刻(n-1)における基準モデルパラメータベクトルθbase(n-1)を用いて算出される。一方、制御入力DUT(k-5)は、目標値DTHR(k-5)、DTHR(k-10)、スロットル弁開度偏差量DTH(k-5)、DTH(k-10)、及びモデルパラメータベクトルθ(n-1)を用いて算出され、制御入力DUT(k-4)は、目標値DTHR(k-4)、DTHR(k-9)、スロットル弁開度偏差量DTH(k-4)、DTH(k-9)、及びモデルパラメータベクトルθ(n-1)を用いて算出され、制御入力DUT(k-3)は、目標値DTHR(k-3)、DTHR(k-8)、スロットル弁開度偏差量DTH(k-3)、DTH(k-8)、及びモデルパラメータベクトルθ(n-1)を用いて算出される。
以上のような演算タイミングを採用すると、コントローラ21による制御入力DUTの更新周期より、制御入力DUTの演算に用いるモデルパラメータの更新周期の方が長くなるため、モデルパラメータの更新周期が制御入力DUTに影響し、制御系の共振が発生する可能性がある。
そこで、本実施形態ではそのような共振を防止すべく、第2の周期ΔT2で同定されるモデルパラメータを、制御周期である第1の周期ΔT1でサンプリング(オーバサンプリング)してリングバッファに格納し、そのリングバッファに格納したデータを移動平均化処理して得られる値をモデルパラメータとして使用している。
図17はそのような演算処理を説明するためのタイムチャートであり、図16と同様にΔT2=5ΔT1である場合について示している。図示例では、オーバサンプリングした最新の9個のデータの平均化処理を行う様子が示されている。すなわち、3個のθ(n-2)と、5個のθ(n-1)と、1個のθ(n)とを平均化することにより得られるモデルパラメータが、時刻kにおけるスライディングモードコントローラの演算に使用される。他のタイミング、例えば時刻(k−3)では、1個のθ(n-3)と、5個のθ(n-2)と、3個のθ(n-1)とを平均化することにより得られるモデルパラメータが、スライディングモードコントローラの演算に使用される。
なお、図17のモデルパラメータベクトルθ’は、後述する第1リミット処理及びオーバサンプリング・移動平均化処理が施されたモデルパラメータベクトルを示している。
[適応スライディングモードコントローラの詳細]
次に適応スライディングモードコントローラ21の詳細について説明する。なお、制御対象モデルは、第2の周期ΔT2でモデル化したものを用いるが、上述したように適応スライディングモードコントローラ21の演算周期は、第2の周期ΔT2ではなく第1の周期ΔT1とすることとしたので、離散化時刻としては、「n」でななく「k」を用いる。
本実施形態では、目標値DTHRの微小変化に対する応答性の向上、及びスロットル弁開度偏差量DTHの目標値DTHRに対するオーバシュートの低減を図るために、前記式(6a)に代えて、下記式(6b)により制御入力DUT(k)を算出するようにしている。式(6b)では、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)、及び適応則入力Uadp(k)に加えて、非線形入力Unl(k)、強制加振入力Uwave(k)、及びダンピング入力Udamp(k)を用いて制御入力DUT(k)が算出される。
DUT(k)=Usl(k)
=Ueq(k)+Urch(k)+Uadp(k)
+Unl(k)+Uwave(k)+Udamp(k) (6b)
式(6b)において、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)は、下記式(8b)、(9)及び(10c)により算出され、切換関数値σ(k)は、下記式(5b)により算出される。
Figure 0004223489
ここで式(5b)及び(8b)のk0は、切換関数値σの算出にかかる偏差e(k)のサンプリング時間間隔に相当するパラメータである。本実施形態では、パラメータk0を第2の周期ΔT2に相当する(ΔT2/ΔT1)(例えば「5」)に設定している。このように切換関数値σの算出にかかる偏差e(k)のサンプリング時間間隔を第2の周期ΔT2に設定することにより、制御対象モデルの特性とプラントの特性とがよく一致している周波数領域に適した切換関数値に算出が行われ、外乱やモデル化誤差の抑制能力をさらに向上させることできる。
モデル化のサンプリング周期を第2の周期ΔT2とし、制御周期を第1の周期ΔT1としているために、式(5b)、(8b)、及び(10c)は、前記式(5)、(8a)及び(10b)とは異なっている。
非線形入力Unlは、スロットル弁3の弁体を駆動する減速ギヤのバックラッシなどの非線形モデル化誤差を抑制し、偏差状態量を切換直線上に載せるための入力である。強制加振入力Uwaveは、スロットル弁3の駆動機構の摩擦などに起因する非線形特性を抑制するための入力である。ダンピング入力Udampは、スロットル弁開度偏差量DTHの目標値DTHRに対するオーバシュートを防止するための入力である。
先ず非線形入力Unlについて説明する。
減速ギヤを介して弁体を駆動する方式のスロットル弁駆動装置では、微小変化する目標値DTHRに対して、図18に示すような減速ギヤのバックラッシに起因する定常偏差が生じ、それを解消するためにある程度時間を要する。特に目標値DTHRやスロットル弁開度偏差量DTHの変化方向が反転した後にその傾向が強くなる。
非線形入力Unlを含まない式(6a)を用いたコントローラでは、適応則入力Uadpと、等価制御入力Ueqの演算式(8)に含まれるモデルパラメータc1とによって、上記定常偏差が「0」に収束する。しかし、その収束速度が遅いため、十分な制御性が得られなかった。図18では、適応則入力Uadpが変化して定常偏差が「0」に収束する様子が示されている。なお、式(6a)を用いた制御では、適応則入力Uadp及びモデルパラメータc1のうち少なくとも一方を用いることにより、定常偏差を「0」とすることができる。
本実施形態では、このような課題を解決するために下記式(22)により算出される非線形入力Unl(k)を用いることとした。
Unl(k)=−Knl×sgn(σ(k))/b1 (22)
ここで、sgn(σ(k))は、σ(k)が正の値のとき「1」となり、σ(k)が負の値のとき「−1」となる符号関数であり、Knlは非線形入力ゲインである。
非線形入力Unl(k)を用いると、微小変化する目標値DTHRに対する応答は、図19(a)に示すようになり、このとき非線形入力Unl(k)は、同図(b)に示すように変化する。すなわち、図18に示すように、定常偏差の収束が遅れることが防止される。
ただし図19からわかるように、非線形入力Unlを追加することにより、式(6a)による制御では問題とならなかったスライディングモードコントローラ特有のチャタリング現象が発生する。本実施形態では、上記適応則入力Uadp及びモデルパラメータc1を使用すること、及び強制加振入力Uwaveを使用することにより、非線形入力Unlによって補償すべきモデル化誤差を最小化し、非線形入力Unlの振幅、すなわちチャタリングの振幅を最小化している。
さらに本実施形態では、非線形入力ゲインKnlをスロットル弁開度偏差量DTHに応じて図20に示すように設定している。このように、スロットル弁開度偏差量DTHが「0」近傍にあるとき、換言すればスロットル弁開度THがデフォルト開度THDEF近傍にあるとき、非線形入力ゲインKnlを大きくすることにより、定常偏差の発生を抑制している。
次に強制加振入力Uwaveについて説明する。
スロットル弁駆動装置10のような制御対象では、スロットル弁3の弁体を駆動するための摺動部材の摩擦特性が、目標値の微小変化に対する制御性を低下させる傾向がある。
このような摩擦特性の補償としては、所定周期のディザ入力を制御入力に加える方法があり、本実施形態では、下記式(23)により算出するようにした。
Uwave(k)=Kwave×Fwave(k)×|ide(n)|/b1
(23)
ここで、Kwaveはディザ入力基本ゲインであり、Fwave(k)はディザ信号値であり、ide(n)は、モデルパラメータの同定誤差である。
ディザ信号値Fwaveを得るためのディザ信号としては、図21に示す基本波形の連続波を採用し、その繰り返し周波数は、制御系の共振を回避するため、図22に示すように、制御対象の共振周波数を外した周波数に設定した。図22では、周波数frが制御系の共振周波数を示し、fwaveがディザ信号の周波数を示す。
さらに、共振周波数frより低い周波数帯域では、非線形入力Unlが強制加振入力Uwaveと同様の効果をもたらすので、ディザ信号周波数fwaveは、共振周波数frより高い周波数、より具体的にはローパス特性(高周波成分が減衰する特性)を有する制御対象の阻止周波数帯域内(通過周波数帯域外)に設定されている。
また強制加振入力Uwaveも非線形入力Unlと同様にチャタリング現象の原因となる。したがって、強制加振入力Uwaveは、制御対象の摩擦特性に応じてその振幅を設定すべきである。ところが、スロットル弁駆動装置の摩擦特性は、ハードウエアの特性ばらつき、経年劣化、弁体に加わる圧力などにより変化するため、非線形入力Unlのように、スロットル弁開度(スロットル弁開度偏差量)に応じて設定するのは適切でない。
そこで本実施形態では、摩擦特性などの非線形特性は、制御対象モデルが線形モデルであるため、モデルパラメータに反映されず、同定誤差ideとして表れることに着目し、式(23)に示したように、強制加振入力Uwaveの振幅を、同定誤差ideの絶対値に応じて設定するようにした。これにより、摩擦特性の変化に応じた振幅設定が可能となる。
図23は、強制加振入力Uwaveの効果を説明するためのタイムチャートである。摩擦過大領域への突入時(t1)及び離脱時(t2)において、同定誤差ideが大きくなり、したがって強制加振入力Uwaveが大きくなって、スロットル弁開度偏差量DTHの制御誤差が増加することが防止される。
次にダンピング入力Udampについて説明する。
スロットル弁駆動装置の制御では、スロットル弁の弁体を全閉位置へ移動させる際のストッパへの衝突を回避することやエンジン駆動力が運転者の要求以上に発生することを防止することが重要である。一方、スライディングモード制御は、一般に高速の応答特性を有するが、目標値に対するオーバシュートを生じやすい特性を有している。
そこで、本実施形態では、オーバシュートを抑制するための制御入力として、ダンピング入力Udampを用いることとした。
オーバシュートを抑制するためのダンピング入力Udampとしては、下記の3つの式で定義されるものが考えられる。
Udamp1(k)=−Kdamp1(e(k)−e(k-1))/b1 (24)
Udamp2(k)=−Kdamp2(σ(k)−σ(k-1))/b1 (25)
Udamp3(k)=−Kdamp3(DTH(k)−DTH(k-1))/b1
(26)
ここで、Kdamp1,Kdamp2,及びKdamp3は、ダンピング制御ゲインである。
式(24)及び(25)で使用している偏差e(k)と切換関数値σ(k)の変化速度は、スロットル弁開度偏差量DTHの変化速度が大きい場合と、目標値DTHRの変化速度が大きい場合のいずれにおいても、大きくなるため、ダンピング入力Udampの絶対値は増加する。ダンピング入力Udampは、スロットル弁開度偏差量DTHを目標値DTHRに収束させる他の制御入力を抑制する機能を有する。したがって、式(24)または(25)により定義されるダンピング制御入力Udamp1またはUdamp2を採用すると、目標値DTHRが大きく変化したときに、その目標値DTHRに追従するための制御入力を抑制してしまうため、応答速度が低下してしまう。
これに対し、式(26)で定義されるダンピング入力Udamp3は、スロットル弁開度の変化速度が大きくなったときのみ、その絶対値が増加して他の制御入力の抑制を行う一方、目標値DTHRが大きく変化した場合には、他の制御入力の抑制は行わない。したがって、式(24)または(25)により定義されるダンピング入力Udamp1またはUdamp2では実現できない、オーバシュート抑制と高い応答速度の両立を実現することできる。
そこで本実施形態では、下記式(27)によりダンピング入力Udampを算出することとした。
Udamp=−Kdamp(DTH(k)−DTH(k-1))/b1 (27)
図24は、ダンピング入力Udampによるオーバシュート抑制効果を説明するためのタイムチャートである。破線で示すように目標値DTHRをステップ状に変化させたときのスロットル弁開度偏差量DTHの応答特性が示されており、同図(a)に示すオーバシュートは、ダンピング入力Udampにより、同図(b)に示すように抑制される。
また式(27)にはモデルパラメータb1を含めるようにしたので、スロットル弁駆動装置10の動特性が変化した場合でも、適切にオーバシュートを抑制することができる。
さらに式(27)のダンピング制御ゲインKdampに関しては、スロットル弁開度偏差量DTH及び目標値DTHRの状態に応じて可変化することにより、制御性をより向上させることが可能である。そこで、本実施形態では、スロットル弁開度偏差量DTHに応じて図25(a)に示すように、基本値Kdampbsを設定し、さらに目標値DTHRの変化量の移動平均値DDTHRAVに応じて同図(b)に示すように、補正係数Kkdampを算出し、下記式(28)により、ダンピング制御ゲインKdampを算出するようにしている。基本値Kdampbsは、デフォルト開度近傍(DTH≒0)で小さな値に設定されるので、ダンピング効果が低減され、高い応答速度が得られる。また、補正係数Kkdampは、移動平均値DDTHRAVが正の所定値以上のとき、「1」より大きな値に設定される。これは、スロットル弁開度THが増加するときオーバシュートが起きやすいことを考慮したものである。
Kdamp=Kdampbs×Kkdamp (28)
移動平均値DDTHRAVは下記式(29)により算出される。
Figure 0004223489
ここでiAVは、例えば「50」に設定される所定数である。
[モデルパラメータ同定器の詳細]
前述したようにモデルパラメータ同定器22における同定演算は、第2の周期ΔT2毎に行うこととしたので、モデルパラメータ同定器の概要の説明で示した演算式の「k」を「n」に変更した式を以下に示す。下記式(30)のLF( )は、前述した同定誤差のローパスフィルタ処理を関数の形式で示したものである。
θ(n)=θbase+dθ(n) (14f)
dθ(n)=DELTA・dθ(n-1)+KP(n)idef(n) (14g)
KP(n)=Pζ(n)/(1+ζT(n)Pζ(n)) (19b)
idef(n)=LF(ide(n)) (30)
ide(n)=DTH(n)−DTHHAT(n) (16a)
DTHHAT(n)=θ(n-1)Tζ(n) (17a)
θ(n)T=[a1”(n),a2”(n),b1”(n),c1”(n)]
(15a)
ζ(n)T=[DTH(n-1),DTH(n-2),DUT(n-1),1]
(18a)
DELTA=[δ1,δ2,δ3,1] (21)
式(14f)により算出されるモデルパラメータベクトルθ(n)の要素a1”,a2”,b1”,及びc1”は、制御系のロバスト性を高めるために、以下に説明するリミット処理が施される。
図26は、モデルパラメータa1”及びa2”のリミット処理を説明するための図であり、モデルパラメータa1”を横軸とし、モデルパラメータa2”を縦軸として定義される平面が示されている。モデルパラメータa1”及びa2”は、同図にハッチングを付して示す安定領域の外側にあるときには、安定領域の外縁部に対応する値に変更するリミット処理が行われる。
またモデルパラメータb1”は、上限値XIDB1Hと下限値XIDB1Lの範囲外であるときは、上限値XIDB1Hまたは下限値XIDB1Lに変更するリミット処理が行われ、モデルパラメータc1”は、上限値XIDC1Hと下限値XIDC1Lの範囲外であるときは、上限値XIDC1Hまたは下限値XIDC1Lに変更するリミット処理が行われる。
以上のリミット処理(第1リミット処理)を数式では下記式(31)のように表現する。θ*(n)は、リミット処理後のモデルパラメータベクトルであり、その要素は下記式(32)のように表す。
θ*(n)=LMT(θ(n)) (31)
θ*(n)T=[a1*(n),a2*(n),b1*(n),c1*(n)] (32)
従来は、式(14g)により更新ベクトルdθ(n)を算出する際に用いる、前回の更新ベクトルdθ(n-1)と、式(17a)により推定スロットル弁開度偏差量DTHHATを算出する際に用いる前回のモデルパラメータベクトルθ(n-1)とは、上記リミット処理を行う前のモデルパラメータを用いていたが、本実施形態では、前回の更新ベクトルdθ(n)としては、下記式(33)で算出されるものを用い、推定スロットル弁開度偏差量DTHHATの算出に使用する前回のモデルパラメータベクトルとしては、下記式(17b)に示すように、リミット処理後のモデルパラメータベクトルθ*(n-1)を用いることとした。
dθ(n-1)=θ*(n-1)−θbase(n-1) (33)
DTHHAT(n)=θ*(n-1)Tζ(n) (17b)
次にその理由を説明する。
モデルパラメータa1”及びa2”で決まる座標(以下「モデルパラメータ座標」という)が図26(b)の点PA1にある場合には、リミット処理により、モデルパラメータ座標が安定領域の外縁に位置する点PALに移動する。このときスロットル弁開度偏差量DTHが変化し、モデルパラメータa1”及びa2”が収束すべきモデルパラメータ座標が、点PA2へ変化した場合には、点PA1から点PA2への移動は、点PALからPA2への移動に比べて遅くなる。つまり、適応スライディングモードコントローラ21による制御を、制御対象の動特性変化へ適応させる際にむだ時間が生じ、制御性が低下するおそれがある。
そこで本実施形態では、リミット処理後のモデルパラメータベクトルθ*(n-1)を式(33)及び(17b)に適用して、今回のモデルパラメータベクトルθ(n)を算出するようにした。
第1リミット処理後のモデルパラメータベクトルθ*(n)を時刻kでオーバサンプリングすることにより得られるモデルパラメータベクトルθ*(k)は、下記式(32a)で表される。
θ*(k)T=[a1*(k),a2*(k),b1*(k),c1*(k)]
(32a)
このオーバサンプリングしたモデルパラメータベクトルθ*(k)の移動平均化演算を行うことにより得られるモデルパラメータベクトルθ’(k)を下記式(32b)で表すこととすると、θ’(k)の要素a1’(k),a2’(k),b1’(k),及びc1’(k)は、下記式(34)〜(37)により算出される。
θ’(k)T=[a1’(k),a2’(k),b1’(k),c1’(k)]
(32b)
Figure 0004223489
ここで(m+1)は、移動平均化演算を行うデータの数であり、「m」は例えば「4」に設定される。
次に下記式(38)に示すように、モデルパラメータベクトルθ’(k)に対して、前述したリミット処理と同様のリミット処理(第2リミット処理)を行うことにより、修正モデルパラメータベクトルθL(k)(式(39))を算出する。移動平均化演算により、モデルパラメータa1’及び/またはa2’が、図26に示した安定領域から外れる場合があるからである。モデルパラメータb1’及びc1’については、移動平均化演算によりリミット範囲から外れることはないので、実質的にはリミット処理は行われない。
θL(k)=LMT(θ’(k)) (38)
θL(k)T=[a1,a2,b1,c1] (39)
[モデルパラメータスケジューラの詳細]
モデルパラメータスケジューラ25により設定される基準モデルパラメータa1base,a2base,b1base,及びc1baseのうち、基準モデルパラメータa1base及びa2baseは、目標値DTHRに応じて図27に示すように設定される。目標値DTHRに応じて設定することにより、スロットル弁開度偏差量DTHに応じて設定する場合に比べて、制御性、特に即応性を向上させることができる。
また、基準モデルパラメータc1baseは、スロットル弁駆動装置の作動状態(目標値DTHRまたはスロットル弁開度偏差量DTH)に依存しないため、常に「0」に設定される。また、制御入力DUTに関わる基準モデルパラメータb1baseについては、スロットル弁駆動装置の作動状態に拘わらず、常にモデルパラメータb1の下限リミット値XIDB1Lに設定される。
基準モデルパラメータb1baseを常に下限リミット値XIDB1Lに設定する理由を以下に説明する。
図28(b)に示すように、時刻tSより前において適応スライディングモードコントローラ21で使用されているモデルパラメータb1が、更新ベクトルdθのb1成分であるdb1(同図(c))により補正されて、基準モデルパラメータb1baseより小さい値である場合において、時刻tSに目標値DTHRが同図(a)に示すように、値DTHR1からDTHR2へステップ状に変化したとき、目標値DTHRが値DTHR2に等しい状態で、モデルパラメータb1がとるべき値が同図(b)に示すb1sであるとする。
このとき、モデルパラメータ同定器22による基準モデルパラメータb1baseの補正には、数ステップを要するため、時刻tSより前において基準モデルパラメータb1baseをマイナス方向に補正していた更新成分db1が、時刻tS以後の適正値となるためには、数ステップを要する。したがって、その数ステップの期間においては、モデルパラメータb1は、更新成分db1により所望値b1sよりも大幅に小さい値となる。その結果、適応スライディングモードコントローラ21は、過大な補正を行う制御入力DUTを算出し、同図(a)に示すように、スロットル弁開度偏差量DTHのオーバシュートが発生することがある。
そこで本実施形態では、基準モデルパラメータb1baseは常に下限リミット値XDB1Lに設定することにより、図28に示すような不具合が生じないようにしている。基準モデルパラメータb1baseを下限リミット値XDB1Lに設定すると、更新成分db1は図29(c)に示すように、常に正の値となるため、例えばモデルパラメータb1の同定遅れが生じたとしても、所望値b1sに比べて大幅に小さな値となることが防止され(同図(b))、同定遅れに起因して適応スライディングモードコントローラ21が過補正を行うことを防止することができる。その結果、同図(a)に示すように、スロットル弁開度偏差量DTHのオーバシュートを抑制することができる。
[ECU7のCPUにおける演算処理]
次に上述した適応スライディングモードコントローラ21、モデルパラメータ同定器22、及びモデルパラメータスケジューラ23の機能を実現するための、ECU7のCPUにおける演算処理を説明する。
図30は、スロットル弁開度制御の全体フローチャートであり、この処理は所定時間(例えば2msec)毎にECU7のCPUで実行される。
ステップS11では、図31に示す状態変数設定処理を実行する。すなわち、式(2)及び(3)の演算を実行し、スロットル弁開度偏差量DTH(k)及び目標値DTHR(k)を算出する(図31,ステップS31及びS32)。なお、今回値であることを示す(k)または(n)は、省略して示す場合がある。
ステップS12では、カウンタIDCOUNTの値が「0」であるか否かを判別する。カウンタIDCOUNTは、最初は「0」に設定されているので、ステップS12からステップS14に進み、図32に示すモデルパラメータの同定演算処理、すなわちモデルパラメータベクトルθ(n)の算出処理を実行する。次いで、図34に示す第1リミット処理を実行し、モデルパラメータベクトルθ*(n)を算出する(ステップS15)。具体的には、モデルパラメータベクトルθ(n)のリミット処理が実行され、モデルパラメータベクトルθ*(n)が算出される。算出されたモデルパラメータベクトルの要素a1*(n),a2*(n),b1*(n),及びc1*(n)は、オーバサンプリング処理のためにそれぞれ所定数Nずつリングバッファに格納される。すなわち、θ*(k),θ*(k+1),…,θ*(k+N-1)が、リングバッファに格納される。所定数Nは、第1の周期ΔT1と第2の周期ΔT2との比(ΔT2/ΔT1)であり、例えば「5」に設定される。
ステップS16では、カウンタIDCOUNTに所定数Nが設定される。したがって、本処理の次の実行時には、ステップS12の答が否定(NO)となり、カウンタIDCOUNTの値が「1」だけデクリメントされ(ステップS13)、ステップS17に進む。すなわち、ステップS14〜S16の処理は、N回に1回の割合で実行される。
ステップS17では、リミット処理後のモデルパラメータベクトルθ*(n)の移動平均化演算によりモデルパラメータベクトルθ’(k)を算出する。具体的には、前記リングバッファに格納されたモデルパラメータを式(34)〜(37)に適用して、モデルパラメータa1’(k),a2’(k),b1’(k),及びc1’(k)が算出される。
ステップS18では、図39に示す第2リミット処理を実行する。すなわち、ステップS17で算出されたモデルパラメータa1’(k)及びa2’(k)のリミット処理が実行され、修正モデルパラメータベクトルθL(k)が算出される。尚、モデルパラメータb1’(k)及びc1’(k)は、それぞれそのまま修正モデルパラメータベクトルθL(k)の要素b1(k)及びc1(k)となる。
ステップS19では、図40に示す制御入力Usl(k)の演算処理を実行する。すなわち、等価制御入力Ueq(k)、到達則入力Urch(k)、適応則入力Uadp(k)、非線形入力Unl(k)、強制加振入力Uwave、及びダンピング入力Udamp(k)を算出し、それらの入力の総和として、制御入力Usl(k)(=デューティ比DUT(k))を算出する。
ステップS20では、図50に示すスライディングモードコントローラの安定判別処理を実行する。すなわち、リアプノフ関数の微分値に基づく安定判別を行い、安定判別フラグFSMCSTABの設定を行う。この安定判別フラグFSMCSTABは、制御入力Usl(k)の演算実行時に参照される。
図32は、図30のステップS14においてモデルパラメータの同定演算を行う処理のフローチャートである。
ステップS41では、式(19b)によりゲイン係数ベクトルKP(n)を算出し、次いで式(17b)により推定スロットル弁開度偏差量DTHHAT(n)を算出する(ステップS42)。
ステップS43では、図33に示すide(n)の演算処理を実行し、同定誤差ide(n)を算出する。ステップS44では、式(14g)及び(33)により更新ベクトルdθ(n)を算出し、次いで目標値DTHRに応じて図27に示したθbaseテーブルを検索し、基準モデルパラメータベクトルθbaseを算出する(ステップS45)。θbaseテーブルには、実際には基準モデルパラメータa1base及びa2baseが設定されており、基準モデルパラメータb1baseは、モデルパラメータb1の最小値XIDB1Lに設定される。また、基準モデルパラメータc1baseは、「0」に設定される。
ステップS46では、式(14f)によりモデルパラメータベクトルθ(n)を算出し、本処理を終了する。
図33は、図32のステップS43で実行される同定誤差ide(n)の演算処理のフローチャートである。
ステップS51では、式(16a)により同定誤差ide(n)を算出する。次いで、ステップS53でインクリメントされるカウンタCNTIDSTの値が、制御対象のむだ時間dに応じて設定される所定値XCNTIDST(本実施形態では、むだ時間dを「0」と近似しているので、「2」に設定される)より大きいか否かを判別する(ステップS52)。カウンタCNTIDSTの初期値は「0」であるので、最初はステップS53に進み、カウンタCNTIDSTを「1」だけインクリメントし、同定誤差ide(k)を「0」に設定して(ステップS54)、ステップS55に進む。モデルパラメータベクトルθ(n)の同定を開始した直後は、式(16a)による演算で正しい同定誤差が得られないので、ステップS52〜S54により、式(16a)による演算結果を用いずに同定誤差ide(n)を「0」に設定するようにしている。
ステップS52の答が肯定(YES)となると、直ちにステップS55に進む。
ステップS55では、同定誤差ide(n)のローパスフィルタ処理を行う。すなわち、図6を参照して説明したように制御対象モデルの周波数特性を修正するための処理が実行される。
図34は、図30のステップS15で実行される第1リミット処理のフローチャートである。
ステップS71では、この処理で使用されるフラグFA1STAB,FA2STAB,FB1LMT及びFC1LMTをそれぞれ「0」に設定することにより、初期化を行う。そして、ステップS72では、図35に示すa1”及びa2”のリミット処理を実行し、ステップS73では、図37に示すb1”のリミット処理を実行し、ステップS74では、図38に示すc1”のリミット処理を実行する。
図35は、図34のステップS72で実行されるa1”及びa2”のリミット処理のフローチャートである。図36は、図35の処理を説明するための図であり、図35とともに参照する。
図36においては、リミット処理が必要なモデルパラメータa1”とa2”の組み合わせが「×」で示され、また安定なモデルパラメータa1”及びa2”の組み合わせの範囲がハッチングを付した領域(以下「安定領域」という)で示されている。図35の処理は、安定領域外にあるモデルパラメータa1”及びa2”の組み合わせを、安定領域内(「○」で示す位置)に移動させる処理である。
ステップS81では、モデルパラメータa2”が、所定a2下限値XIDA2L以上か否かを判別する。所定a2下限値XIDA2Lは、「−1」より大きい負の値に設定される。所定a2下限値XIDA2Lは、「−1」に設定しても、安定なモデルパラメータa1*,a2*が得られるが、下記式(40)で定義される行列Aのn乗が不安定となる(これは、a1”及びa2”が発散はしないが振動することを意味する)場合があるので、「−1」より大きな値に設定される。
Figure 0004223489
ステップS81でa2”<XIDA2Lであるときは、モデルパラメータa2*を、この下限値XIDA2Lに設定するとともに、a2安定化フラグFA2STABを「1」に設定する(ステップS82)。a2安定化フラグFA2STABは「1」に設定されると、モデルパラメータa2*を下限値XIDA2Lに設定したことを示す。図36においては、ステップS81及びS82のリミット処理P1によるモデルパラメータの修正が、「P1」を付した矢線(矢印を付した線)で示されている。
ステップS81の答が肯定(YES)、すなわちa2”≧XIDA2Lであるときは、モデルパラメータa2*はモデルパラメータa2”に設定される(ステップS83)。
ステップS84及びステップS85では、モデルパラメータa1”が、所定a1下限値XIDA1Lと所定a1上限値XIDA1Hできまる範囲内にあるか否かを判別する。所定a1下限値XIDA1Lは、−2以上且つ0より小さい値に設定され、所定a1上限値XIDA1Hは、例えば2に設定される。
ステップS84及びS85の答がいずれも肯定(YES)であるとき、すなわちXIDA1L≦a1”≦XIDA1Hであるときは、モデルパラメータa1*はモデルパラメータa1”に設定される(ステップS88)。
一方a1”<XIDA1Lであるときは、モデルパラメータa1*を下限値XIDA1Lに設定するとともに、a1安定化フラグFA1STABを「1」に設定する(ステップS84,S86)。またa1”>XIDA1Hであるときは、モデルパラメータa1*を上限値XIDA1Hに設定するとともに、a1安定化フラグFA1STABを「1」に設定する(ステップS85,S87)。a1安定化フラグFA1STABは、「1」に設定されると、モデルパラメータa1*を下限値XIDA1Lまたは上限値XIDA1Hに設定したことを示す。図36においては、ステップS84〜S87のリミット処理P2によるモデルパラメータの修正が、「P2」を付した矢線で示されている。
ステップS90では、モデルパラメータa1*の絶対値とモデルパラメータa2*の和が、所定安定判定値XA2STAB以下であるか否かを判別する。所定安定判定値XA2STABは、「1」に近く「1」より小さい値(例えば0.99)に設定される。
図36に示す直線L1及びL2は、下記式(41)を満たす直線である。
a2*+|a1*|=XA2STAB (41)
したがって、ステップS90は、モデルパラメータa1*及びa2*の組み合わせが、図36に示す直線L1及びL2の線上またはその下側にあるか否かを判別している。ステップS90の答が肯定(YES)であるときは、モデルパラメータa1*及びa2*の組み合わせは、図36の安定領域内にあるので、直ちに本処理を終了する。
一方ステップS90の答が否定(NO)であるときは、モデルパラメータa1*が、所定安定判定値XA2STABから所定a2下限値XIDA2Lを減算した値(XIDA2L<0であるので、XA2STAB−XIDA2L>XA2STABが成立する)以下か否かを判別する(ステップS91)。そしてモデルパラメータa1*が(XA2STAB−XIDA2L)以下であるときは、モデルパラメータa2*を(XA2STAB−|a1*|)に設定するとともに、a2安定化フラグFA2STABを「1」に設定する(ステップS92)。
ステップS91でモデルパラメータa1*が(XA2STAB−XIDA2L)より大きいときは、モデルパラメータa1*を(XA2STAB−XIDA2L)に設定し、モデルパラメータa2*を所定a2下限値XIDA2Lに設定するとともに、a1安定化フラグFA1STAB及びa2安定化フラグFA2STABをともに「1」に設定する(ステップS93)。
図36においては、ステップS91及びS92のリミット処理P3によるモデルパラメータの修正が、「P3」を付した矢線で示されており、またステップS91及びS93のリミット処理P4によるモデルパラメータの修正が、「P4」を付した矢線で示されている。
以上のように図35の処理により、モデルパラメータa1”及びa2”が図18に示す安定領域内に入るようにリミット処理が実行され、モデルパラメータa1*及びa2*が算出される。
図37は、図34のステップS73で実行されるb1”のリミット処理のフローチャートである。
ステップS101及びS102では、モデルパラメータb1”が、所定b1下限値XIDB1Lと所定b1上限値XIDB1Hできまる範囲内にあるか否かを判別する。所定b1下限値XIDB1Lは、正の所定値(例えば0.1)に設定され、所定b1上限値XIDB1Hは、例えば「1」に設定される。
ステップS101及びS102の答がいずれも肯定(YES)であるとき、すなわちXIDB1L≦b1”≦XIDB1Hであるときは、モデルパラメータb1*はモデルパラメータb1”に設定される(ステップS105)。
一方b1”<XIDB1Lであるときは、モデルパラメータb1*を下限値XIDB1Lに設定するとともに、b1リミットフラグFB1LMTを「1」に設定する(ステップS101,S104)。またb1”>XIDB1Hであるときは、モデルパラメータb1*を上限値XIDB1Hに設定するとともに、b1リミットフラグFB1LMTを「1」に設定する(ステップS102,S103)。b1リミットフラグFB1LMTは、「1」に設定されると、モデルパラメータb1*を下限値XIDB1Lまたは上限値XIDB1Hに設定したことを示す。
図38は、図34のステップS74で実行されるモデルパラメータc1”のリミット処理のフローチャートである。
ステップS111及びS112では、モデルパラメータc1”が、所定c1下限値XIDC1Lと所定c1上限値XIDC1Hできまる範囲内にあるか否かを判別する。所定c1下限値XIDC1Lは、例えば−60に設定され、所定c1上限値XIDC1Hは、例えば60に設定される。
ステップS111及びS112の答がいずれも肯定(YES)であるとき、すなわちXIDC1L≦c1”≦XIDC1Hであるときは、モデルパラメータc1*はモデルパラメータc1”に設定される(ステップS115)。
一方c1”<XIDC1Lであるときは、モデルパラメータc1*を下限値XIDC1Lに設定するとともに、c1リミットフラグFC1LMTを「1」に設定する(ステップS111,S114)。またc1”>XIDC1Hであるときは、モデルパラメータc1*を上限値XIDC1Hに設定するとともに、c1リミットフラグFC1LMTを「1」に設定する(ステップS112,S113)。c1リミットフラグFC1LMTは、「1」に設定されると、修正モデルパラメータc1を下限値XIDC1Lまたは上限値XIDC1Hに設定したことを示す。
図39は、図30のステップS18で実行される第2リミット処理のフローチャートである。この処理は、図35の処理の「a1”」及び「a2”」をそれぞれ「a1’」及び「a2’」に置換し、「a1*」及び「a2*」をそれぞれ「a1」及び「a2」に置換したものであり、処理の内容は実質的に同一である。すなわち、移動平均化処理されたモデルパラメータa1’及びa2’について、図35と同様のリミット処理がステップS121〜S133で実行され、修正モデルパラメータa1及びa2が算出される。
図40は、図30のステップS19で実行されるUsl算出処理のフローチャートである。
ステップS201では、図41に示す切換関数値σの演算処理を実行し、ステップS202では、前記式(8b)により、等価制御入力Ueqを算出する。ステップS203では、図44に示す到達則入力Urchの演算処理を実行し、ステップS204では、図45に示す適応則入力Uadpの演算処理を実行する。ステップS205では、図46に示す非線形入力Unlの演算処理を実行し、ステップS206では、図47に示す強制加振入力Uwaveの演算処理を実行し、ステップS207では、図49に示すダンピング入力Udampの演算処理を実行する。
ステップS208では、後述する図50の処理で設定される安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別する。安定判別フラグFSMCSTABは、「1」に設定されると、適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっていることを示す。
ステップS208でFSMCSTAB=0であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、ステップS202〜S207で算出された制御入力Ueq,Urch,Uadp,Unl,Uwave,及びUdampを加算することにより、制御入力Uslを算出する(ステップS209)。
一方FSMCSTAB=1であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっているときは、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpの和を、制御入力Uslとして算出する。すなわち、等価制御入力Ueq、非線形入力Unl,強制加振入力Uwave,及びダンピング入力Udampを、制御入力Uslの算出に使用しないようにする。これにより、制御系が不安定化することを防止することができる。
続くステップS211及びS212では、算出した制御入力Uslが所定上下限値XUSLH及びXUSLLの範囲内にあるか否かを判別し、制御入力Uslが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、制御入力Uslが所定下限値XUSLL以下であるときは、制御入力Uslを所定下限値XUSLLに設定し(ステップS211,S214)、制御入力Uslが所定上限値XUSLH以上であるときは、制御入力Uslを所定上限値XUSLHに設定する(ステップS212,S213)。
図41は、図40のステップS201で実行される切換関数値σの演算処理のフローチャートである。
ステップS221では、図42に示すVPOLE演算処理実行し、切換関数設定パラメータVPOLEを算出する。次いで前記式(5b)により、切換関数値σ(k)を算出する(ステップS222)。
続くステップS223及びS224では、算出した切換関数値σ(k)が所定上下限値XSGMH及びXSGMLの範囲内にあるか否かを判別し、切換関数値σ(k)が所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、切換関数値σ(k)が所定下限値XSGML以下であるときは、切換関数値σ(k)を所定下限値XSGMLに設定し(ステップS223,S225)、切換関数値σ(k)が所定上限値XSGMH以上であるときは、切換関数値σ(k)を所定上限値XSGMHに設定する(ステップS224,S226)。
図42は、図41のステップS221で実行されるVPOLE演算処理のフローチャートである。
ステップS231では、安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別し、FSMCSTAB=1であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となっているときは、切換関数設定パラメータVPOLEを安定化所定値XPOLESTBに設定する(ステップS232)。安定化所定値XPOLESTBは、「−1」より大きく「−1」に非常に近い値(例えば−0.999)に設定される。
FSMCSTAB=0であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、スロットル弁開度偏差量DTHに応じて図43に示すVPOLEテーブルを検索し、切換関数設定パラメータVPOLEを算出する(ステップS234)。VPOLEテーブルは、スロットル弁開度偏差量DTHが0近傍の値をとるとき(スロットル弁開度THがデフォルト開度THDEF近傍の値をとるとき)、VPOLE値が増加し、0近傍以外の値ではスロットル弁開度偏差量DTHの変化に対してはほぼ一定の値となるように設定されている。したがって、スロットル弁開度THがデフォルト開度THDEF近傍にあるときは、切換関数設定パラメータVPOLEが比較的大きな値に設定され、デフォルト開度THDEF近傍における制御性を向上させることができる。
続くステップS235及びS236では、算出した切換関数設定パラメータVPOLEが所定上下限値XPOLEH及びXPOLELの範囲内にあるか否かを判別し、切換関数設定パラメータVPOLEが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、切換関数設定パラメータVPOLEが所定下限値XPOLEL以下であるときは、切換関数設定パラメータVPOLEを所定下限値XPOLELに設定し(ステップS236,S238)、切換関数設定パラメータVPOLEが所定上限値XPOLEH以上であるときは、切換関数設定パラメータVPOLEを所定上限値XPOLEHに設定する(ステップS235,S237)。
図44は、図40のステップS203で実行される到達則入力Urchの演算処理のフローチャートである。
ステップS261では、安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別する。安定判別フラグFSMCSTABが「0」であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、切換関数値σに応じて図13(a)に示すように制御ゲインFを設定する(ステップS262)。
次いで、下記式(42)(前記式(9)と同一の式)により、到達則入力Urchを算出する(ステップS263)。
Urch=−F×σ/b1 (42)
一方安定判別フラグFSMCSTABが「1」であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、制御ゲインFを、所定安定化ゲインXKRCHSTBに設定し(ステップS264)、モデルパラメータb1を使わない下記式(43)により到達則入力Urchを算出する(ステップS265)。
Urch=−F×σ (43)
続くステップS266及びS267では、算出した到達則入力Urchが所定上下限値XURCHH及びXURCHLの範囲内にあるか否かを判別し、到達則入力Urchが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、到達則入力Urchが所定下限値XURCHL以下であるときは、到達則入力Urchを所定下限値XURCHLに設定し(ステップS266,S268)、到達則入力Urchが所定上限値XURCHH以上であるときは、到達則入力Urchを所定上限値XURCHHに設定する(ステップS267,S269)。
このように適応スライディングモードコントローラ21が不安定となったときは、制御ゲインFを所定安定化ゲインXKRCHSTBに設定するとともに、モデルパラメータb1を使用しないで到達則入力Urchを算出することにより、適応スライディングモードコントローラ21を安定な状態に戻すことができる。モデルパラメータ同定器22による同定が不安定となった場合に、適応スライディングモードコントローラ21が不安定となるので、不安定となったモデルパラメータb1を使わないことによって、適応スライディングモードコントローラ21を安定化することができる。
図45は、図40のステップS204で実行される適応則入力Uadpの演算処理のフローチャートである。
ステップS271では、切換関数値σが所定下限値−XSGMSL以下であるか否かを判別し、σ≦−XSGMSLであるときは、切換関数パラメータSGMSをその所定下限値XSGMSLに設定する(ステップS272)。σ>−XSGMSLであるときは、切換関数値σが所定上限値XSGMSL以上であるか否かを判別する(ステップS273)。そして、σ≧XSGMSLであるときは、切換関数パラメータSGMSをその上限値XSGMSLに設定する(ステップS274)。また切換関数値σが所定下限値−XSGMSLと所定上限値XSGMSLとの間にあるときは、切換関数パラメータSGMSを切換関数値σに設定する(ステップS275)。
ステップS271〜S275により、適応則入力Uadpに使用する切換関数値σのリミット処理が行われる。切換関数パラメータSGMSは、リミット処理後の切換関数値σに相当するパラメータである。このリミット処理により、目標値DTHRが急変した場合において、スロットル弁開度偏差量DTHの目標値DTHRに対するオーバシュートが発生することを防止することができる。
続くステップS276では、安定判別フラグFSMCSTABが「1」であるか否かを判別し、FSMCSTAB=0であって適応スライディングモードコントローラ21が安定であるときは、切換関数値σに応じて制御ゲインGを、図13(a)に示すように設定する(ステップS279)。
次いで下記式(44)に切換関数パラメータSGMS、制御ゲインGを適用して、適応則入力Uadp(k)を算出する(ステップS280)。式(44)は、前記式(10c)の切換関数値σ(k)を切換関数パラメータSGMSに置き換えたものである。
Uadp(k)=Uadp(k-1)−G×SGMS×ΔT1/b1 (44)
一方ステップS276でFSMCSTAB=1であって適応スライディングモードコントローラ21が不安定であるときは、制御ゲインGを所定安定化ゲインXKADPSTBに設定し(ステップS277)、下記式(45)により、適応則入力Uadp(k)を算出する(ステップS278)。式(45)は式(44)のモデルパラメータb1を削除することにより得られる式である。
Uadp(k)=Uadp(k-1)−G×SGMS×ΔT1 (45)
続くステップS281及びS282では、算出した適応則入力Uadpが所定上下限値XUADPH及びXUADPLの範囲内にあるか否かを判別し、適応則入力Uadpが所定上下限値の範囲内にあるときは、直ちに本処理を終了する。一方、適応則入力Uadpが所定下限値XUADPL以下であるときは、適応則入力Uadpを所定下限値XUADPLに設定し(ステップS282,S284)、適応則入力Uadpが所定上限値XUADPH以上であるときは、適応則入力Uadpを所定上限値XUADPHに設定する(ステップS281,S283)。
図46は、図40のステップS205で実行される非線形入力Unlの演算処理のフローチャートである。
ステップS301では、スロットル弁開度偏差量DTHに応じて非線形入力ゲインKnlを算出する(図20参照)。ステップS302では、切換関数値σが所定下限値−XNLTH以下であるか否かを判別し、σ>−XNLTHであるときは、切換関数値σが所定上限値XNLTH以上であるか否かを判別する(ステップS304)。切換関数値σが所定上限値XNLTHと所定下限値−XNLTHの間にあるときは、非線形入力パラメータSNLを切換関数値σに設定する(ステップS306)。
切換関数値σが所定下限値−XNLTH以下であるときは、非線形入力パラメータSNLを「−1」に設定し(ステップS303)、切換関数値σが所定上限値XNLTH以上であるときは、非線形入力パラメータSNLを「1」に設定する(ステップS305)
続くステップS307では、下記式(46)により、非線形入力Unl(k)を算出する。
Unl(k)=−Knl×SNL/b1 (46)
図46の処理では、前記式(22)の符号関数sgn(σ(k))に代えて、非線形入力パラメータSNLを用い、切換関数値σの絶対値が小さい所定範囲内では、切換関数値σをそのまま適用される。これにより、非線形入力Unlに起因する微少振動(チャタリング)を抑制することができる。
図47は、図40のステップS206で実行される強制加振入力Uwaveの演算処理のフローチャートである。
ステップS311では、時間パラメータtwave(k)を下記式(47)により算出する。
twave(k)=twave(k-1)+XTWAVEINC (47)
ここで、XTWAVEINCは、例えば本処理の実行周期に設定される経過時間である。
ステップS312では、時間パラメータtwave(k)が所定周期TPERIOD(例えば1秒)以上か否かを判別し、twave(k)<TPERIODであるときは直ちにステップS314に進む。twave(k)≧TPERIODであるときは、時間パラメータtwave(k)を「0」にリセットして(ステップS313)、ステップS314に進む。
ステップS314では、時間パラメータtwave(k)に応じて図48に示すFwaveテーブルを検索し、ディザ信号値Fwaveを算出する。なお、図48に示す波形は、図21に示す波形と若干異なっている。図21に示す波形となるように、Fwaveテーブルを設定してもよい。
ステップS315では、下記式(48)にディザ入力基本ゲインKwave及び同定誤差ide(k)を適用し、ディザ入力ゲインKWIDを算出する。
KWID=Kwave×|ide(k)| (48)
続くステップS316では、ディザ入力ゲインKWIDが所定上限値XKWIDLより小さいか否かを判別し、KWID<XKWIDLであるときは、直ちにステップS320に進む。一方、ディザ入力ゲインKWIDが所定上限値XKWIDL以上であるときは、ディザ入力ゲインKWIDを所定上限値XKWIDLに設定する(ステップS318)。
ステップS320では、下記式(49)により、強制加振入力Uwave(k)を算出する。式(49)は、前記式(23)と実質的に同一の式である。
Uwave(k)=KWID×Fwave/b1 (49)
図49は、図40のステップS207で実行されるダンピング入力Udampの演算処理のフローチャートである。
ステップS331では、前記式(29)により、目標値DTHRの変化量の移動平均値DDTHRAVを算出する。ステップS332では、スロットル弁開度偏差量DTHに応じてダンピング制御ゲインの基本値Kdampbsを算出する(図25(a)参照)。ステップS333では、移動平均値DDTHRAVに応じてダンピング制御ゲインの補正係数Kkdampを算出する(図25(b)参照)。
ステップS334では、基本値Kdampbsに補正係数Kkdampを乗算することによりダンピング制御ゲインKdampを算出する。次いで下記式(27)(再掲)により、ダンピング入力Udamp(k)を算出する。
Udamp(k)=−Kdamp×(DTH(k)−DTH(k-1))/b1
(27)
図50は、図30のステップS20で実行されるスライディングモードコントローラの安定判別処理のフローチャートである。この処理では、リアプノフ関数の微分項に基づく安定判別を行い、安定判別結果に応じて安定判別フラグFSMCSTABの設定を行う。
ステップS351では下記式(50)により、切換関数変化量Dσを算出し、次いで下記式(51)により、安定性判別パラメータSGMSTABを算出する(ステップS352)。
Dσ=σ(k)−σ(k-k0) (50)
SGMSTAB=Dσ×σ(k) (51)
ステップS353では、安定性判別パラメータSGMSTABが安定性判定閾値XSGMSTAB以下か否かを判別し、SGMSTAB>XSGMSTABであるときは、コントローラ21が不安定である可能性があると判定して不安定検知カウンタCNTSMCSTを「1」だけインクリメントする(ステップS355)。また、SGMSTAB≦XSGMSTABであるときは、コントローラ21が安定であると判定して不安定検知カウンタCNTSMCSTのカウント値をインクリメントすることなく保持する(ステップS354)。
ステップS356では、不安定検知カウンタCNTSMCSTの値が所定カウント値XSSTAB以下か否かを判別する。CNTSMCST≦XSSTABであるときは、コントローラ21は安定していると判定し、第1判定フラグFSMCSTAB1を「0」に設定する(ステップS357)。一方CNTSMCST>XSSTABであるときは、コントローラ21は不安定となっていると判定し、第1判定フラグFSMCSTAB1を「1」に設定する(ステップS358)。なお、不安定検知カウンタCNTSMCSTは、イグニッションスイッチオン時にそのカウント値が「0」に初期化される。
続くステップS359では、安定判別期間カウンタCNTJUDSTを「1」だけデクリメントし、次いでその安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値が「0」であるか否かを判別する(ステップS360)。安定判別期間カウンタCNTJUDSTは、イグニッションスイッチオン時に所定判別カウント値XCJUDSTに初期化される。したがって、最初はステップS360の答は否定(NO)となり、直ちにステップS365に進む。
その後安定判別期間カウンタCNTJUDSTが「0」となると、ステップS360からステップS361に進み、第1判定フラグFSMCSTAB1が「1」であるか否かを判別する。そして、第1判定フラグFSMCSTAB1が「0」であるときは、第2判定フラグFSMCSTAB2を「0」に設定し(ステップS363)、第1判定フラグFSMCSTAB1が「1」であるときは、第2判定フラグFSMCSTAB2を「1」に設定する(ステップS362)。
続くステップS364では、安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値を所定判別カウント値XCJUDSTに設定するとともに、不安定検知カウンタCNTSMCSTの値を「0」に設定し、ステップS365に進む。
ステップS365では、安定判別フラグFSMCSTABを、第1判定フラグFSMCSTAB1と第2判定フラグFSMCSTAB2の論理和に設定する。第2判定フラグFSMCSTAB2は、ステップS356の答が肯定(YES)となり、第1判定フラグFSMCSTAB1が「0」に設定されても、安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値が「0」となるまでは、「1」に維持される。したがって、安定判別フラグFSMCSTABも、安定判別期間カウンタCNTJUDSTの値が「0」となるまでは、「1」に維持される。
本実施形態では、スロットル弁駆動装置10及びECU7の一部(モータ6に駆動電流を供給する出力回路)がプラントに相当し、ECU7がコントローラ及び同定手段を構成する。より具体的には、図30のステップS19(図40の処理)がコントローラに相当し、図30のステップS12〜S18が同定手段に相当する。
(第2の実施形態)
図51は、本発明の第2の実施形態にかかるプラントの制御装置、すなわち油圧位置決め装置と、その制御装置の構成を示す図である。このような油圧位置決め装置は、例えば内燃機関の吸排気弁のバルブタイミングを連続的に変化させる連続可変バルブタイミング機構に使用される。連続可変バルブタイミング機構は、吸排気弁を駆動するカムの回転位相を変更することにより、吸排気弁の開閉タイミングをずらし、充填効率の向上とポンピングロスの低減を図るものである。
油圧位置決め装置は、ピストン64と、ピストン64が嵌装された油圧シリンダ61と、電動スプール弁67と、油圧ポンプ65と、油圧ポンプ65から電動スプール弁67に油圧を供給する油圧供給路66と、第1の油圧P1を油圧シリンダ61の第1油圧室62に供給する第1の油路68と、第2の油圧P2を油圧シリンダ61の第2油圧室63に供給する第2の油路69と、電動スプール弁67から排出される作動油をオイルパン(図示せず)に戻す油圧放出路70とを備えている。
またピストン64の位置PACTを検出するポテンショメータ71が設けられており、検出位置PACTを示す信号が電子制御ユニット(ECU)72に供給される。
ECU72には、目標位置PCMDが入力され、ECU72は、検出位置PACTを目標位置PCMDに一致させるように、制御量DUTを算出し、制御量DUTに応じた電気信号を電動スプール弁67へ供給する。
電動スプール弁67は、制御量DUTに応じて弁体(図示せず)の位置を移動させ、弁体の位置に応じた第1及び第2の油圧P1,P2を出力する。第1及び第2の油圧P1,P2の差圧DP(=P1−P2)が正の値であるときは、ピストン64は図の右方向へ移動し、逆に差圧DPが負の値であるときは、ピストン64は図の左方向へ移動する。検出位置PACTが目標位置PCMDに一致した状態では、差圧DPは「0」に保持される。
図52は、図51に示す油圧位置決め装置を適応スライディングモードコントローラを用いて制御する場合の制御系の構成を示すブロック図である。
制御装置80は、同定器81と、適応スライディングモードコントローラ82と、スケジューラ83と、減算器85及び86とからなり、ECU72のCPUで実行される演算処理により実現される。
減算器85は、検出位置PACTから基準値PBASEを減算することにより、検出位置偏差量DPACTを算出し、減算器86は、目標位置PCMDから基準値PBASEを減算することにより、目標値DPCMDを算出する。なお、基準値PBASEは、油圧位置決め装置の作動特性に基づいて予め最適な値に設定される。
本実施形態における検出位置PACT及び検出位置偏差量DPACTが、第1の実施形態におけるスロットル弁開度TH及びスロットル弁開度偏差量DTHに対応し、目標位置PCMD及び目標値DPCMDが、それぞれ第1の実施形態における目標開度THR及び目標値DTHRに対応する。
スケジューラ83は、第1の実施形態におけるモデルパラメータスケジューラ25と同様に、目標値DPCMDに応じて基準モデルパラメータベクトルθbaseを算出し、その基準モデルパラメータベクトルθbaseを同定器81に供給する。
同定器81は、制御入力としての制御量DUT及び制御出力としての検出位置偏差量DPACTに応じて、第1の実施形態のモデルパラメータ同定器22と同様に、修正モデルパラメータベクトルθL(k)を算出する。すなわち、同定誤差ide(n)が下記式(52)及び(53)により算出される。ここで、入出力パラメータベクトルζ(n)は、下記式(54)で定義される。
ide(n)=DPACT(n)(k)−DPACTHAT(n) (52)
DPACTHAT(n)=θ*(n-1)Tζ(n) (53)
ζT(n)=
[DPACT(n-1),DPACT(n-2),DUT(n-1),1] (54)
そして同定誤差ide(n)を前記式(30)に適用するとともに、前記式(14f)、(14g)、(19b)及び(33)を用いることにより、モデルパラメータベクトルθ(n)が算出される。さらに算出されたモデルパラメータベクトルθ(n)に対して、第1の実施形態と同様の第1リミット処理を行うことにより、モデルパラメータベクトルθ*(n)が算出される。さらにモデルパラメータベクトルθ*(n)のオーバサンプリング及び移動平均化処理を行うことにより、モデルパラメータベクトルθ’(k)を算出し、モデルパラメータベクトルθ’(k)に対して第1の実施形態と同様に第2リミット処理を行うことにより、修正モデルパラメータベクトルθL(k)が算出される。
適応スライディングモードコントローラ82は、第1の実施形態の適応スライディングモードコントローラ21と同様に、検出位置偏差量DPACTを下記式(55)に適用して、等価制御入力Ueq(k)を算出する。さらに適応スライディングモードコントローラ82は、下記式(56)により切換関数値σ(k)を算出し、前記式(9)及び(10c)に切換関数値σ(k)を適用して、到達則入力Urch(k)及び適応則入力Uadp(k)を算出する。ただし、切換関数設定パラメータVPOLE、制御ゲインF及びGの設定は、本実施形態の制御対象(油圧位置決め装置)に適したものとする。
Ueq(k)=(1/b1){(1−a1−VPOLE)DPACT(k)
+(VPOLE−a2)DPACT(k-kO)−c1} (55)
σ(k)=(DPACT(k)−DPCMD(k))
+VPOLE(DPACT(k-k0)−DPCMD(k-k0))
(56)
さらに適応スライディングモードコントローラ82は、式(56)により算出される切換関数値σ(k)を前記式(22)に適用して、非線形入力Unl(k)を算出する。ただし、非線形入力ゲインKnlの設定は、本実施形態の制御対象に適したものとする。
さらに適応スライディングモードコントローラ82は、式(52)により算出される同定誤差ide(n)を前記式(23)に適用することにより、強制加振入力Uwaveを算出する。ただし、ディザ入力基本ゲインKwave及びディザ信号値Fwaveの設定は、本実施形態の制御対象に適したものとする。
さらに適応スライディングモードコントローラ82は、下記式(57)によりダンピング入力Udamp(k)を算出する。ただし、ダンピング制御ゲインKdampの設定は、本実施形態の制御対象に適したものとする。
Udamp(k)=−Kdamp×(DACT(k)−DACT(k-1))/b1
(57)
そして、適応スライディングモードコントローラ82は、等価制御入力Ueq、到達則入力Urch(k)、適応則入力Uadp(k)、非線形入力Unl(k)、強制加振入力Uwave(k)、及びダンピング入力Udamp(k)を加算することにより、制御入力Usl(=DUT)を算出する。
したがって、制御装置80によれば、第1の実施形態における制御出力TH及び目標開度THRを、それぞれ制御出力PACT及び目標位置PCMDに置き換えた制御が実行されるので、第1の実施形態と同様に、制御出力PACTは目標位置PCMDに追従するように良好なロバスト性をもって制御される。
本実施形態では、図52の油圧位置決め装置がプラントに相当し、ECU72が、コントローラ及び同定手段を構成する。
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば第2の実施形態では、油圧式の位置決め装置を示したが、油圧に代えて空気圧を用いる空気圧位置決め装置について、第2の実施形態に示した制御装置80による制御を適用するようにしてもよい。
また制御対象出力を目標値に一致させるフィードバック制御を実行し、その制御偏差の減衰特性を指定可能な応答指定型コントローラは、適応スライディングモードコントローラに限らず、スライディングモード制御と同様な制御結果を実現するバックステッピング制御を行うコントローラであってもよい。
また上述した実施形態では、モデルパラメータの同定演算の周期は、第2の周期ΔT2と同一としたが、必ずしも同一としなくてもよく、第1の周期ΔT1と第2の周期ΔT2の間の周期に設定したり、第2の周期ΔT2より長い周期に設定するようにしてもよい。
また上述した実施形態では、切換関数σの算出にかかる偏差e(k)のサンプリング時間間隔を示すパラメータk0を、第2の周期ΔT2に相当する離散時間であるΔT2/ΔT1に設定したが、「1」より大きい他の整数値に設定するようにしてもよい。
図1は本発明の第1の実施形態にかかるスロットル弁駆動装置及びその制御装置の構成を示す図である。 図1の電子制御ユニット(ECU)により実現される機能を示す機能ブロック図である。 スライディングモードコントローラの制御特性と、切換関数設定パラメータ(VPOLE)の値との関係を示す図である。 スライディングモードコントローラの制御ゲイン(F,G)の設定範囲を示す図である。 モデルパラメータのドリフトを説明するための図である。 同定誤差(ide)のローパスフィルタ処理を説明するための図である。 制御対象の出力の周波数成分を説明するための図である。 制御対象の出力の変化速度に対してサンプリング周期が短い場合を説明するための図である。 サンプリング周波数の設定を説明するための図である。 制御偏差(e(k))の減衰特性を示す図である。 スロットル弁開度偏差量(DTH)の変化波形を示す図である。 図11の変化波形に対応する切換関数値(σ)の変化波形を示す図である。 スライディングモードコントローラの制御ゲイン(F,G)の設定方法を説明するための図である。 制御ゲイン(F,G)が急変した場合の問題点を説明するためのタイムチャートである。 第2の周期(ΔT2)を制御周期とした場合を説明するためのタイムチャートである。 モデルパラメータを第2の周期(ΔT2)で算出し、制御周期を第1の周期(ΔT1)とした場合を説明するためのタイムチャートである。 モデルパラメータの移動平均化演算を説明するためのタイムチャートである。 適応則入力(Uadp)による定常偏差の収束を示すタイムチャートである。 非線形入力(Unl)を説明するためのタイムチャートである。 非線形入力ゲイン(Knl)を算出するためのテーブルを示す図である。 ディザ信号値(Fwave)の推移を示すタイムチャートである。 強制加振入力の周波数(fwave)と、制御対象の共振周波数(fr)との関係を示す図である。 強制加振入力(Uwave)による同定誤差(ide)の低減効果を説明するためのタイムチャートである。 スロットル弁開度偏差量(DTH)のオーバシュートとその改善を説明するためのタイムチャートである。 ダンピング制御ゲインの基本値(Kdampbs)及び補正係数(Kkdamp)を設定するためのテーブルを示す図である。 モデルパラメータ(a1”,a2”)のリミット処理を説明するための図である。 基準モデルパラメータ(a1base,a2base,b1base)の設定方法を説明するための図である。 従来の基準モデルパラメータ(b1base)の設定方法の問題点を説明するためのタイムチャートである。 本実施形態のおける基準モデルパラメータ(b1base)の設定方法を説明するためのタイムチャートである。 スロットル弁開度制御処理の全体構成を示すフローチャートである。 図30の処理で実行される状態変数設定処理のフローチャートである。 図30の処理で実行されるモデルパラメータの同定演算処理のフローチャートである。 図32の処理で実行される同定誤差(ide)の演算処理のフローチャートである。 図30の処理で実行される第1リミット処理のフローチャートである。 図34の処理で実行されるモデルパラメータ(a1”,a2”)のリミット処理のフローチャートである。 図35の処理を説明するための図である。 図34の処理で実行されるモデルパラメータ(b1”)のリミット処理のフローチャートである。 図34の処理で実行されるモデルパラメータ(c1”)のリミット処理のフローチャートである。 図30の処理で実行される第2リミット処理のフローチャートである。 図30の処理で実行される制御入力(Usl)の算出処理のフローチャートである。 図40の処理で実行される切換関数値(σ)の演算処理のフローチャートである。 図41の処理で実行される切換関数設定パラメータ(VPOLE)の演算処理のフローチャートである。 図42の処理で使用されるテーブルを示す図である。 図40の処理で実行される到達則入力(Urch)の演算処理のフローチャートである。 図40の処理で実行される適応則入力(Uadp)の演算処理のフローチャートである。 図40の処理で実行される非線形入力(Unl)の演算処理のフローチャートである。 図40の処理で実行される強制加振入力(Uwave)の演算処理のフローチャートである。 図47の処理で使用されるテーブルを示す図である。 図40の処理で実行されるダンピング入力(Udamp)の演算処理のフローチャートである。 図30の処理で実行されるスライディングモードコントローラの安定判別処理のフローチャートである。 本発明の第2の実施形態にかかる油圧位置決め装置の構成を示す図である。 図51に示す装置を含む制御系の構成を示すブロック図である。
符号の説明
1 内燃機関
3 スロットル弁
7 電子制御ユニット
10 スロットル弁駆動装置
21 適応スライディングモードコントローラ
22 モデルパラメータ同定器(同定手段)
24 目標開度設定部
25 モデルパラメータスケジューラ
72 電子制御ユニット
81 同定器(同定手段)
82 適応スライディングモードコントローラ
83 スケジューラ

Claims (9)

  1. プラントをモデル化した制御対象モデルに基づいて前記プラントを制御するコントローラを備えたプラントの制御装置において、
    前記制御対象モデルは、前記コントローラの制御周期よりも長い、前記プラントの動作周波数に応じた第1周期でサンプリングした前記プラントの入力及び出力を含む数式によって定義されており、
    前記コントローラは、前記プラントの出力が目標値に一致するように前記プラントの入力を算出するフィードバック制御を実行し、該フィードバック制御は、前記プラントの出力と前記目標値との偏差の、時間経過に伴う減衰特性を指定可能な応答指定型制御であることを特徴とするプラントの制御装置。
  2. 前記コントローラは、スライディングモードコントローラであることを特徴とする請求項1に記載のプラントの制御装置。
  3. 前記コントローラは、前記偏差に基づく線形関数である切換関数の値を算出し、該切換関数値の算出に用いる前記偏差のサンプリング時間間隔は、前記制御周期より長いことを特徴とする請求項1または2に記載のプラントの制御装置。
  4. 前記制御対象モデルのモデルパラメータを同定する同定手段を備え、前記コントローラは前記同定手段により同定されたモデルパラメータを用いて前記プラントの入力を算出し、前記同定手段は、前記コントローラの制御周期より長い第2周期で前記モデルパラメータの同定演算を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラントの制御装置。
  5. 前記同定手段は、同定演算により得られるモデルパラメータの移動平均化処理を行い、前記コントローラは、該移動平均化処理後のモデルパラメータを用いることを特徴とする請求項4に記載のプラントの制御装置。
  6. 前記同定手段で同定するモデルパラメータは、前記プラントの出力に関わるモデルパラメータと、前記プラントの入力に関わるモデルパラメータと、前記プラントの入出力に関わらないモデルパラメータとを含むことを特徴とする請求項4または5に記載のプラントの制御装置。
  7. 前記プラントは、内燃機関の吸気通路に設けられたスロットル弁と、該スロットル弁を駆動する駆動手段とを有するスロットル弁駆動装置を含み、前記プラントの出力は前記スロットル弁の開度であり、前記目標値は前記スロットル弁の目標開度であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のプラントの制御装置。
  8. 前記プラントは、可動部材と、該可動部材を駆動する油圧駆動手段とを有する油圧位置決め装置を含み、前記プラントの出力は前記可動部材の位置であり、前記目標値は前記可動部材の目標位置であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のプラントの制御装置。
  9. プラントの出力が目標値に一致するように前記プラントの入力を算出するフィードバック制御を実行するコントローラを備えたプラントの制御装置において、
    前記フィードバック制御は、前記プラントの出力と前記目標値との偏差の、時間経過に伴う減衰特性を指定可能な応答指定型制御であり、前記コントローラは、前記偏差に基づく線形関数である切換関数の値に基づいて前記プラントの入力を算出し、
    前記切換関数値の算出に用いる前記偏差のサンプリング時間間隔は、前記プラントの動作周波数に応じて前記コントローラの制御周期より長く設定されることを特徴とするプラントの制御装置。
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