JP4223242B2 - 導電性ビアペースト及びセラミック配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性ビアペースト及びセラミック配線基板に関する。更に詳しくは、セラミックグリーンシートとその印刷面の反対面に配される下敷シートとを離間させる際に下敷シートに転写しない導電性ビアペースト及びこの導電性ビアペーストを用いて得られたセラミック基板に関する。
本発明の導電性ビアペースト及びセラミック配線基板は、半導体関連産業において広く利用される。特に本発明の導電性ビアペーストはセラミック多層配線基板を構成するセラミックグリーンシートに形成されたビアホールの充填に好適である。また、本発明のセラミック配線基板は、ビアホールを有するセラミック配線基板(ビアホールを有する電子部品やパッケージ)として広く利用される。例えば、積層型LCフィルター、カプラ(ローパスフィルタ内蔵カプラ等の方向性結合器)、電力分配器、バラン(平衡−不平衡変換素子)、アンテナスイッチモジュール用基板、ミキサーモジュール用基板、PLLモジュール用基板、VCO(電圧制御型発振器)用基板、TCXO(温度補償型水晶発振器)用基板等の電子部品、フリップチップ接続方式の集積回路チップを電気的に接続するための電極パット群を備えたC4(Controlled Collapse ChipConnection)パッケージ、CSP(Chip Size Package)等に利用される。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミック多層基板の異なる層間に形成された導体層同士を電気的に接続するため、異なる層間に跨るビアホールを形成し、このビアホール内に焼成されて導電性を発揮する導電性ビアペーストを充填し、その後、焼成して導体層同士を接続する方法が知られている。
しかし、近年、セラミック配線基板は小型化及び多層化が進み、製造時に要求される精度は益々高いものとなっている。特に、ビアホールはより小径化され、更にそのピッチも狭幅化される傾向にあるが、このようなセラミック配線基板内においても確実に層間の接続及び外部回路との接続を行える必要がある。
【0003】
また、未焼成セラミック配線基板を製造する過程で、セラミックグリーンシートを下敷シート上に載置し、セラミックグリーンシートに形成されたビアホール内に導電性ビアペーストを充填した後、セラミックグリーンシートと下敷シートとを離間させる工程を行う場合がある。この際に、ビアホール内に残存すべき導電性ビアペーストが下敷シートに転写して持っていかれてしまい、ビアホールに充填された導電性ビアペーストの露出面に凹部が形成されることがある。この凹部が形成されたセラミックグリーンシートを用いてセラミック配線基板を製造すると、層間の接続不良や、外部回路との半田接続において接続不良を生じることがある。これは小径であるビアホールや、更にはそのピッチが狭幅なビアホールにおいて特に問題となる。
導電性ビアペーストに関しては、特開平6−85466号公報や、特開平10−340623号公報等に開示がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平6−85466号公報によると、上記のような凹みは、使用する導電性ビアペーストが特定の粘度を有すれば解決できるとしている。即ち、応力が負荷された状態を想定した所定のずり速度における粘度が1350ポイズ以下であればよいとされている。しかし、使用されるビアホールの開口径やピッチは様々であり、また、ビアホールの開口径やピッチにより充填に適した粘度は異なるのが通常である。従って、導電性ビアペーストの転写を防止する観点のみから導電性ビアペーストの粘度を選択すると、様々な開口径やピッチを有するビアホールに対して各々に適した粘度は選択できない場合がある。
また、特開平10−340623号公報に開示されているペーストは圧入法に用いる導電性ビアペーストである。しかし、一般に圧入法は印刷法に比べて工程数が多い上に、層厚が200μm以下の薄いセラミックグリーンシートに対しては変形を生じる場合がある。
【0005】
本発明は上記問題を解決するものであり、セラミックグリーンシートと下敷シートとを離間させる際に下敷シートに転写せず、また、様々な開口径及びピッチのビアホール(特に小径のビアホールであり、更には狭幅なピッチのビアホール)にもスクリーン印刷等の公知の印刷充填法により充填することができる導電性ビアペーストを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の導電性ビアペーストは、動粘弾性測定器を用いて正弦振動させたときの導電性ビアペーストの動粘弾性を測定した場合に、該正弦振動の周波数が10〜100rad/秒の間において、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G"以上であることを特徴とする。また、セルロース系樹脂と2価アルコールのモノアルキルエーテル化合物とを含有することを特徴とする。
また、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Au及びWのうちの少なくとも1種を含む導電性粉末を含有できる。
更に、下敷シート上に載置されたセラミックグリーンシートが備えるビアホールに導電性ビアペーストを充填した後、該セラミックグリーンシートと該下敷シートとを100mm/秒以上の速さで離間させた場合に、該下敷シートに転写しないものとすることができる。
また、セラミックグリーンシートに形成された開口径50〜250μmのビアホールに充填することができる。
更に、上記ビアホールは、ピッチ150〜300μmで配置されたものとすることができる。
本発明のセラミック配線基板は本発明の導電性ビアペーストがビアホール内に充填されたセラミックグリーンシートを焼成してなることを特徴とする。
また、上記焼成は1050℃以下で行うことができる。
【0007】
【発明の効果】
本発明の導電性ビアペーストは、セラミックグリーンシートと下敷シートとを離間させる際に下敷シートに転写しない。また、様々な開口径及びピッチのビアホールに対応でき、特に小径のビアホールであり、更には狭幅なピッチのビアホールにもスクリーン印刷により充填することができる。
また、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケル、金及びタングステンのうちの少なくとも1種の導電性粉末を含有する場合は、優れた導電性を発揮できる。
更に、ビアホールに充填されたビアペーストが下敷シートに転写しない場合は、層間の接続や、外部回路との接続等、ビアホールを用いる各種の接続を確実に行うことができる。
また、特定の開口径を有するビアホール、更には特定のピッチを有するビアホールに充填できる場合は、このようなビアホールを備える基板等の製造を効率よく行うことができる。
本発明のセラミック配線基板によると、接続不良が無く、外部回路との接続も確実に行うことができる。
また、1050℃以下で焼成できる場合は、低温焼成磁器からなるセラミック配線基板にも対応することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記「動粘弾性測定器」は、周波数10〜100rad/秒(10rad/秒以上且つ100rad/秒以下)の間において、貯蔵弾性率(以下、単に「G’」ともいう)が損失弾性率(以下、単に「G”」ともいう)以上であることを確認できるものであれば特に限定されない。
また、測定対象である本発明品はペースト状であるため、ペースト状物の上記特性を確認できる測定器である必要があり、通常、一対のプローブにより形成された平行平面に測定対象物を挟み、プローブを回転させてプローブ間に正弦振動を生じさせることができる測定器を用いる。このような動粘弾性測定器としては、Rheometric Scientific社製の型式「ARES」等を挙げることができる。
【0009】
この動粘弾性測定器によりG’がG”以上であることを確認する際に設定できる測定条件としては、周波数、温度、負荷荷重、ひずみ量等を挙げることができる。
このうち、上記「周波数」は、動粘弾性測定器によってプローブを通じて測定対象物に負荷される正弦振動の周波数であり、プローブを回転させる時の周波数である。この周波数は10〜100rad/秒である。周波数10rad/秒未満の範囲はずり速度が非常に小さい範囲であり、通常、ビアホールに導電性ビアペーストを充填した後、セラミックグリーンシートと下敷シートとを離間させる際にこのような低速で離間させることはない。一方、100rad/秒を超える範囲はずり速度が大きい範囲であり、通常、ビアホールに導電性ビアペーストを充填する際にこのような高速で行うことはない。また、測定するペーストの特性に対して周波数が過度に大きいと、導電性ビアペーストがプローブの回転に追随することができなくなる。従って、周波数10rad/秒未満の範囲及び周波数100rad/秒を超える範囲の各々の範囲におけるG’とG”との相関は限定されない。
【0010】
また、上記測定条件のうち温度は、通常、本発明の導電性ビアペーストが使用される環境温度であり、20〜30℃の範囲等とすることができる。更に、ひずみ量は、例えば、動粘弾性測定器において10〜100rad/秒の間の所定の周波数を設定し、ひずみ量を掃引した場合にG’及びG”のうちの少なくとも一方又はG’とG”との相関が変化し始める値とすることができる。
【0011】
上記「貯蔵弾性率」は、エネルギーを弾性的に貯蔵する特性の大きさを表し、上記「損失弾性率」は、熱により粘性的にエネルギーを消費する特性の大きさを表す。このG’がG”以上であること(即ち、G’/G”が1以上)は、熱により粘性的にエネルギーを消費する特性よりも、エネルギーを弾性的に貯蔵する特性の方が大きいことを表す。この特性を有することにより、引張応力を受けた場合に、導電性ビアペーストはその一部が分離されることなく一体に保持される。従って、本発明の導電性ビアペーストがビアホールに充填されたセラミックグリーンシートと、このセラミックグリーンシートの印刷面の反対面に配された下敷シートとを離間させる際に、導電性ビアペーストが下敷シートに転写することがない。
【0012】
このG’がG”以上である特性は、導電性ビアペーストの粘度を規定するものではない。このため、広い範囲で粘度を調整でき、あらゆるビアホールの充填に適したものとすることができる。また、G’がG”以上となるように調整された導電性ビアペーストは、その後、各種状況により必要に応じて粘度を調整することが可能であり、作業性にも優れる。
【0013】
本発明の導電性ビアペーストはビヒクルを含有する。これによりG’がG"以上である特性を発揮させることができる。更に、導電性粉末が含有され、これにより導電性が発揮される。
このうち、ビヒクルは、導電性ビアペーストにG’がG"以上である特性を付与し、バインダ及び溶剤(可塑剤を含む)を含有する。このバインダとしては、セルロース系樹脂を含有する。
これらのなかでも良好な印刷性を得ることができるためエチルセルロースが好ましい。これらのバインダは1種のみをもちいてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
溶剤として、2価アルコールのモノアルキルエーテル化合物(セロソルブ類、カルビトール類等)を含有する。
【0015】
上記セロソルブ類としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ及びブチルセロソルブ等を挙げることができる。また、上記カルビトール類としては、メチルカルビトール、エチルカルビトール及びブチルカルビトール等を挙げることができる。これらの溶剤の中でも、沸点が250℃以下である、例えば、ブチルカルビトールが好ましい。これにより、導電性ビアペーストの性状をより長期間保持することが可能である。これらの溶剤は1種のみをもちいてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
導電性粉末は、焼成された後、室温において比抵抗3μΩ・cm以下の導電性を発揮できる粉末をいい、焼成される前の導電性は特に限定されない。この導電性粉末は、導電性成分のみからなるものであっても、導電性成分と非導電性成分とを含有するものであってもよい。導電性成分としては、Ag、Cu、Au、Pd、Pt、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、In、Sn、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pb等を挙げることができる。一方、非導電性成分としては、導体の密着性を付与するためのTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物等を挙げることができる。これら導電性成分及び非導電性成分は、各々1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0017】
導電性粉末は、上記の導電性成分のうちでもAg、Cu、Pd、Pt、Ni、Au及びW等を含有することが好ましく、更にはAg、Cu、Pd、Pt、Ni、Au及びWのうちの少なくとも1種を主成分(50質量%以上)とすることが好ましい。即ち、例えば、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Au又はWからなる導電性粉末や、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Au及びWのうちの2種を含有する導電性粉末(例えば、AgとPdとの合金からなる導電性粉末や、AgとPtとの合金からなる導電性粉末等)等を挙げることができる。また、Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Au及びWのうちの3種以上を含有する導電性粉末であってもよい。導電性粉末は1種の粉末のみからなってもよく、2種以上の粉末からなってもよい。
【0018】
この導電性粉末を構成する粒子の形状は特に限定されず、球状、フレーク状、ウィスカ状、無定形状等とすることすることができるが、他形状に比べて高充填が可能であるため球状が好ましい。また、粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒径(球状以外の場合は最大径の平均値)が2〜8μm(より好ましくは2〜5μm、更に好ましくは3〜5μm)であることが好ましい。この平均粒径が2μm未満であると焼成時に導電性粉末が焼結し始める温度が低くなり、脱脂を十分に行うことが困難となる傾向にある。一方、8μmを超えるとビアホールの充填を十分に行うことが困難となる傾向にある。更に、導電性粉末は粒度分布において2つ以上のピークを有していてもよい。これにより更に高充填が可能となる。この場合、2つのピーク間は1μm以上の粒径差を有することが好ましい。
【0019】
また、導電性粉末の含有量は特に限定されないが、導電性ビアペースト全体の80質量%以上(より好ましくは85質量%以上)であることが好ましい。導電性粉末の含有量が50質量%未満であると十分な導電性を発揮させることが困難となる傾向にあり、95質量%を超えると他の構成剤により性状を好ましいものとすることが困難となる傾向にある。
【0020】
本発明の導電性ビアペーストは、バインダ、溶剤及び導電性粉末以外の他の材料を本発明の目的の範囲内で含有することができる。他の材料としては以下(1)及び(2)のものが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
(1)密着強度向上剤;ビアホールが形成されたセラミックグリーンシートを構成する未焼成セラミック成分との密着強度を向上させることができるものである。この密着強度向上剤としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物や複酸化物等が挙げられる。
(2)焼成収縮率調整剤;グリーンシートの焼成収縮率と本発明の導電性ビアペーストの焼成収縮率とを近づけることができるものである。この焼成収縮率調整剤としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
その他、分散剤、滑剤、消泡剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化剤等を含有することができる。
【0021】
本発明の導電性ビアペーストは、下敷シート上に載置されたセラミックグリーンシートが備えるビアホールにスクリーン印刷により充填した後、該セラミックグリーンシートと該下敷シートとを100mm/秒以上の速さで離間させた場合に、該下敷シートに転写しないものとすることができる。即ち、充填後にビアホールの開口部に凹部を生じない。
【0022】
上記「下敷シート」は、スクリーン印刷の際にセラミックグリーンシートの印刷面とは反対の面(以下、単に「反印刷面」という。)に配設されるシートである。これにより、セラミックグリーンシートを支持する印刷機のステージとセラミックグリーンシートとが直接接触することを防止することができる。また、ビアホールに充填される各種ペーストが、セラミックグリーンシートの反印刷面に滲み出すことを防止することもできる。
この下敷シートは、通常、反印刷面の全面に密着されるが、少なくとも反印刷面に開口するビアホールの開口面がふさがれるように密着されていればよい。また、この下敷シートを構成する材質は特に限定されず、通常、使用される離形効果を有する紙等を用いることができる。
【0023】
上記「セラミックグリーンシート」は、焼成されて、導体層等を除いたセラミック配線基板(セラミック多層配線基板及びセラミック単層配線基板等)の一部となる未焼成体である。このセラミックグリーンシートを構成する材質は特に限定されないが、通常、セラミック粉末、バインダ及び溶剤等から構成される。
【0024】
また、上記「ビアホール」は、セラミックグリーンシートに形成された貫通孔である。ビアホールには導電性ビアペーストが充填され、その後、焼成されることで導電性ビアペーストが導電性ビア部材となり、この導電性ビア部材を介してセラミック配線基板の表面や内部に形成された導体層同士を接続することができる。ビアホールは、1枚のセラミックグリーンシートのみからなる未焼成単層体を貫通して設けられていてもよく、積層された複数枚のセラミックグリーンシートからなる未焼成積層体を貫通して設けられていてもよい。
このビアホールの開口径及びピッチは特に限定されない。更に、その横断面(貫通方向に垂直な断面)形状も特に限定されないが、例えば、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)とすることができる。また、セラミックグリーンシート内におけるビアホールの形状も特に限定されないが、例えば、円柱形、楕円柱形、多角柱形(三角柱形、四角柱形等)とすることができる。更に、柱形ではなく、セラミックグリーンシート内で変化する形状であってもよい。また、本発明におけるビアホールの開口径は印刷面におけるビアホールの開口径であるが、ビアホールの開口面の形状が円形でない場合には、最短開口距離を表すものとする。
【0025】
上記「離間」は、その速さが100mm/秒以上で行われればよい。離間する速さが100mm/秒以下の範囲は応力が非常に小さい範囲であり、通常、製造時にこの範囲で離間させることはない。また、離間の形態は特に限定されず、セラミックグリーンシート及び下敷シートのいずれかを固定し、他方を引っ張ることにより離間させることができる。また、このときの離間角度も特に限定されない。
【0026】
上記「転写しない」とは、導電性ビアペーストの一部又は全部が、離間後に下敷シートに残存しないことを意味する。その結果、セラミックグリーンシートの充填されたビアホールの開口部に凹部を生じることによる不具合を生じない。この転写しないとは、セラミックグリーンシートと下敷シートとを離間させた後に、セラミックグリーンシートと接していた下敷シートの表面を倍率4倍の拡大鏡を用いて観察した場合に、ペーストの付着が認められないことを意味する。
【0027】
本発明の導電性ビアペーストは、ピッチに関係なく、開口径が50〜250μmのビアホールにスクリーン印刷により充填できる。この際のスクリーン印刷は1mm/秒以上の印刷速度で行うことが可能である。
更に、開口径に関係なく、ピッチが150〜300μmで配列されたビアホールにスクリーン印刷により充填できる。この際のスクリーン印刷は1mm/秒以上の印刷速度で行うことが可能である。
特に、開口径が50〜250μmであって、且つピッチが150〜300μmで配列されたビアホールにスクリーン印刷により充填できる。また、この際のスクリーン印刷は1mm/秒以上の印刷速度で行うことが可能である。尚、この印刷速度とは、スクリーンマスク上を、ビアペーストを付着させたスキージを移動させて穴埋め印刷を行う際のスキージの移動速度である。
【0028】
更に、例えば、粘度が1×106Pa・秒以上である導電性ビアペーストを、開口径が250μm以下であるビアホールにスクリーン印刷により充填することは困難である。一方、G’がG”未満であり、且つ粘度が1×106Pa・秒未満である導電性ビアペーストは、このビアホールへ充填が可能である。しかし、セラミックグリーンシートと下敷シートとを離間させる際に、導電性ビアペーストが下敷シートへ転写することを十分に防止できない。これに対して、本発明の導電性ビアペーストは、粘度は1×106Pa・秒未満でありながら下敷シートへ転写しないものとすることができる。
【0029】
本発明の導電性ビアペーストの製造方法は特に限定されないが、通常、ビヒクル及び導電性粉末等の材料をロールミルなどで混錬して得られる。混練の際には、有機系構成成分であるビヒクル等を調合し、この有機系構成成分とは別に、無機系構成成分である導電性粉末等を混合し、得られた有機系混合物と無機系混合物とを混練することができる。
【0030】
本発明のセラミック配線基板は、ビアホールが本発明の導電性ビアペーストが焼成されてなる導電性ビア部材により充填されている。このため、ビアホールの開口部に凹部を有さず、セラミック配線基板が備える導体層同士が確実に接続されている。また、このセラミック配線基板が備える導体層と外部回路との半田接続を行う場合に確実に接続できる。更に、後述するセラミック多層配線基板においては層間にビアホールの凹部に起因する空隙等の密着性が不足しがちな部分を有さないため信頼性の高いセラミック配線基板となる。
【0031】
本発明のセラミック配線基板の構造等は特に限定されず、単層配線基板であっても、多層配線基板であってもよい。
セラミック単層配線基板としては、例えば、1枚のセラミック層からなる(1)セラミック部と、このセラミック部の表裏面に形成され、且つセラミック部と一体に焼成された(2)導体層(導体性パターン層)と、本発明の導電性ビアペーストからなり、且つセラミック部と一体に焼成され、上記導体層同士を電気的に接続する(3)導電性ビア部材とを備えるものを挙げることができる。
【0032】
また、セラミック多層配線基板としては、一体に焼成された複数枚のセラミック層からなる(1)セラミック部と、このセラミック部の表裏面及び/又は層間に形成され、且つセラミック部と一体に焼成された(2)導体層(導体性パターン層)と、本発明の導電性ビアペーストからなり、且つセラミック部と一体に焼成され、上記導体層同士を異なる層間等(層間導体層同士、層間導体層と表面導体層、層間導体層と裏面導体層、表面導体層と裏面導体層等)で電気的に接続する(3)導電性ビア部材とを備えるものを挙げることができる。
【0033】
これらのセラミック配線基板が備えるセラミック部を構成する材質も特に限定されないが、例えば、コージェライト系、ムライト系、スピネル系、アーノサイト系、セルジアン系、フォルステライト系、オケルマナイト系等の結晶化ガラスセラミックス等からなる低温焼成磁器を挙げることができる。
【0034】
また、本発明のセラミック配線基板の製造方法は特に限定されず、焼成されてセラミック配線基板となる未焼成体(セラミック単層配線基板となる未焼成単層体や、焼成されてセラミック多層配線基板となる未焼成積層体等)を焼成して得ることができる。
このうち、例えば、未焼成積層体は以下のようにして得ることができる。即ち、複数のセラミックグリーンシートを得た後、各セラミックグリーンシートにビアホール及び未焼成導体層等を形成し、更に、ビアホール内に本発明の導電性ビアペーストを充填し、これらのセラミックグリーンシートを積層して積層体を得る。その後、得られた積層体の表面に焼成後に層間導体層を外部へ導出するための未焼成外部導体層(ワイヤボンディング用パッド等)を形成する。更に、必要であれば積層体の表面に焼成されて保護層となる未焼成保護層を形成した後、所望の大きさ及び形状に切断して得ることができる。
【0035】
このような方法で得られる未焼成体(未焼成単層体、未焼成積層体等)は、その後に200〜450℃で2〜10時間加熱することで脱脂することができる。更に、その後、焼成してセラミック配線基板を得ることができる。この焼成時の条件は特に限定されず、使用される未焼成セラミック部(未焼成体のうちセラミックグリーンシートからなる部分)を構成する材質等により選択することが好ましい。例えば、未焼成セラミック部を構成する材質が、低温焼成磁器用組成物である場合には1050℃以下(更には800〜1050℃、特に900〜1050℃)で焼成することができる。また、このときの焼成雰囲気も特に限定されず、大気雰囲気であっても、還元雰囲気であってもよい。この焼成雰囲気は、未焼成導体層を構成する材質や、未焼成セラミック部を構成する材質等により適宜選択することが好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
(1)導電性ビアペーストの製造
導電性粉末として平均粒径が4.7μmの銅粉末を用いた。また、バインダ(エチルセルロース、アクリル樹脂)及び溶剤(ブチルカルビトール、フタル酸ジブチル)は、あらかじめ表1に示す割合(バインダと溶剤との合計が100質量%)で混練してビヒクルとして用いた。更に、密着強度向上剤、焼成収縮率調整剤及び分散剤を用いた。これらの各材料を、銅粉末を100質量部とした場合にビヒクルが表1に示すように13〜17部となり、セラミック添加物が1.5質量部となり、分散剤が0.1質量部となるように秤量し、これらを3本ロールミルで混合分散し、導電性ビアペーストを得た。
尚、上記導電性ビアペーストを得るための混練においては、実験例1ではビヒクルの量が少な過ぎるために、また、実験例7ではバインダの量が多過ぎるために、各々混練を行うことができず、導電性ビアペーストが得られなかった。
【0037】
【表1】
表1中の*は本発明の範囲外であることを表す。
【0038】
表1における各表示は以下のとおりである。
エトセル:エチルセルロース
アクリルA、アクリルB、アクリルC:アクリル系樹脂
BC:ブチルカルビトール
DBP:フタル酸ジブチル
【0039】
(2)導電性ビアペーストのG’/G”の評価
上記(1)で得られた10種類の導電性ビアペーストのG’/G”を評価した。動粘弾性測定器としては、Rheometric Scientific社製の型式「ARES」を用いた。但し、この動粘弾性測定器ではG’とG”との相関はG”/G’として出力される。また、測定に際して、この測定器の備える平行平面を呈する直径15mmのプローブを用い、導電性ビアペーストには回転方向の正弦振動を加えた。更に、プローブの間隔は1mm(即ち、測定時の試料の厚みである)に設定し、負荷するひずみ量は0.06%に固定し、温度は25℃に保った。このようにして周波数10−2rad/秒から100rad/秒まで掃引し、この間のG’/G”を測定した。
【0040】
この結果、10〜100rad/秒の周波数においてG’/G”が1未満となったものには、表1の「10〜100rad/秒におけるG’/G”」の欄に「<1」と示し、10〜100rad/秒までの周波数においてG’/G”が常に1以上であったものには、表1の「10rad/秒以上におけるG’/G”」の欄に「≧1」と示した。また、周波数100rad/秒におけるG’/G”の値を表1に併記した。
【0041】
尚、この測定器により出力された実測値G”/G’は、実験例2が1.04、実験例3が1.12、実験例4が0.30、実験例5が0.33、実験例6が0.45、実験例8が0.30、実験例9が1.36、実験例10が1.22、実験例11が1.09、実験例12が1.16であった。
【0042】
また、上記測定において負荷したひずみ量は0.06%であるが、この値は以下の予備測定により決定した。即ち、動粘弾性測定器の周波数を2πrad/秒に固定して、温度を25℃に保ち、ひずみ量を掃引してG’/G”を測定した。この結果、G’及びG”は、共にひずみ量が小さいうちは一定の値を保ったが、ひずみ量が大きくなると両者とも低下した。この低下し始めるひずみ量は実験例2〜6及び8〜12のいずれの導電性ビアペーストにおいても概ね0.06%程度であった。このため、このひずみ量とした。
【0043】
(3)セラミックグリーンシートの製造
アルミナフィラーとガラス粉末とを質量比50:50で混合してセラミックグリーンシート用混合粉末を用意した。次いで、このセラミックグリーンシート用混合粉末100質量部に対して、バインダとしてアクリル樹脂(イソブチル系アクリル樹脂)を20質量部、溶剤としてフタル酸ジブチルを10質量部、溶媒としてトルエンとメチルエチルケトンとの混合液を適量加えて、アルミナポットミルで混合してセラミックグリーンシート用スラリーを得た。このセラミックグリーンシート用スラリーをドクターブレード法により厚さ250μmのシートに成形し、乾燥させて複数枚のセラミックグリーンシートを得た。
【0044】
得られたセラミックグリーンシートに、レーザー加工(シートA)又はパンチ加工(シートB及びシートC)で下記の開口径、ピッチ及び孔数のビアホールを形成した。
セラミックグリーンシートA
;開口径50μm、ピッチ150μm、縦方向の孔数50個、横方向の孔数50個
セラミックグリーンシートB
;開口径120μm、ピッチ250μm、縦方向の孔数50個、横方向の孔数50個
セラミックグリーンシートC
;開口径250μm、ピッチ250μm、縦方向の孔数50個、横方向の孔数50個
【0045】
(4)導電性ビアペーストの充填
上記(1)の実験例1及び実験例7を除く導電性ビアペーストを、スクリーン印刷機を用い、上記(3)で得られたセラミックグリーンシートA〜Cのビアホールに充填した。この際、印刷機のステージ上に下敷シートを敷き、この下敷シート上にセラミックグリーンシートを載置し、更にその上にマスクスクリーンを被せた。次いで、上記(1)で得られた実験例1及び実験例7を除くいずれかの導電性ビアペーストを付けたスキージをマスクスクリーン上に滑らせて、印刷速度1mm/秒で印刷を行った。この時の充填性を評価し、表2に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
尚、表2において「充填性」の評価は以下のとおりである。
「○」:印刷を行った側とは反対の面である下敷シート側から倍率4倍の拡大鏡を用いて確認した場合に、充填された導電性ビアペーストがビア開口部の全面にわたってセラミックグリーンシートに対して平坦に充填されている。
「×」:印刷を行った側とは反対の面である下敷シート側から倍率4倍の拡大鏡を用いて確認した場合に、充填された導電性ビアペーストがビア開口部まで達せず、凹部を生じている。
【0048】
(5)下敷シートの離間
上記(3)で導電性ビアペーストを充填し終えた後、1分以内にセラミックグリーンシートから下敷シートを離間速度100mm/秒で離間した。この際に下敷シートに導電性ビアペーストが転写されているかを表す離間性を拡大鏡にて確認した。表1において「離間性」の評価は以下のとおりである。
「○」;セラミックグリーンシートに接していた下敷シートの一面を倍率4倍の拡大鏡を用いて確認し、導電性ビアペーストの付着が認められないもの。
「×」;セラミックグリーンシートに接していた下敷シートの一面を倍率4倍の拡大鏡を用いて確認し、導電性ビアペーストの付着が認められたもの。
【0049】
(6)実験例8の導電性ビアペーストの調整及び充填
上記(4)において、実験例8の導電性ビアペーストは、開口径250μm且つピッチ250μmであるセラミックグリーンシートCには充填できたが、その他のセラミックグリーンシートA及びBには1mm/秒の印刷速度では十分には充填を行うことができなかった。
このため、実験例8の導電性ビアペーストを、銅粉末100質量部に対してビヒクルが18質量部となるようにビヒクルを加えて粘度を5000Pa・秒に低下させた。得られた導電性ビアペーストのG’/G”は10〜100rad/秒において1以上であった。この導電性ビアペーストをセラミックグリーンシートA及びBのビアホールに上記(4)と同様にして充填した。その後、上記(5)と同様にして下敷シートを離間させた。その結果、セラミックグリーンシートAにおいても、セラミックグリーンシートBにおいても、上記(4)及び上記(5)と同様に評価した充填性は「○」であり、離間性は「○」であった。
【0050】
(6)実施例の効果
これらの結果より、G’/G”の値が1未満である実験例2、3及び9〜12のうち、実験例2、3、9、11及び12では、各々すべての形態のビアホールに充填することができた。しかし、セラミックグリーンシートから下敷シートを離間させる際に、導電性ビアペーストが下敷シートへ転写し、ビアホール内の充填が不十分となった。また、実験例10では、導電性ビアペーストの粘度が高すぎるために、すべての形態のビアホールへの充填ができなかった。
【0051】
これに対して、本発明品である実験例4〜6は、すべてG’/G”が1以上であり、すべての形態のビアホールに充填することができ、更には、下敷シートを離間させた時の導電性ビアペーストの転写も認められなかった。また、実験例8は、G’/G”が1以上であり、セラミックグリーンシートCのビアホールに充填することができ、下敷シートへの導電性ビアペーストの転写も認められなかった。しかし、粘度が大きく(1×106Pa・秒)、セラミックグリーンシートA及びBのビアホールに印刷速度1mm/秒では充填することができなかった。このため、G’/G”は1以上に保持したまま粘度を低下させることで、これらのセラミックグリーンシートのビアホールにも良好に充填を行うことができ、また、下敷シートと離間させる際には転写を生じなかった。
これらの結果より、導電性ビアペーストの動粘弾性特性においてG’/G”が1以上であれば、その粘度に関係なく下敷きへの転写を防止できることが分かる。また、より狭径のビアホールに充填するためには、G’/G”を1以上に保ちつつ、粘度を調整することにより(一般にはより低い粘度に調節する)、充填できることが分かる。
Claims (7)
- 動粘弾性測定器を用いて正弦振動させたときの導電性ビアペーストの動粘弾性を測定した場合に、該正弦振動の周波数が10〜100rad/秒の間において、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G"以上である導電性ビアペーストであって、
セルロース系樹脂と2価アルコールのモノアルキルエーテル化合物とを含有することを特徴とする導電性ビアペースト。 - Ag、Cu、Pd、Pt、Ni、Au及びWのうちの少なくとも1種を含む導電性粉末を含有する請求項1記載の導電性ビアペースト。
- 下敷シート上に載置されたセラミックグリーンシートが備えるビアホールに導電性ビアペーストを充填した後、該セラミックグリーンシートと該下敷シートとを100mm/秒以上の速さで離間させた場合に、該下敷シートに転写しない請求項1又は2記載の導電性ビアペースト。
- セラミックグリーンシートに形成された開口径50〜250μmのビアホールに充填される請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の導電性ビアペースト。
- 上記ビアホールは、ピッチ150〜300μmで配置されている請求項4記載の導電性ビアペースト。
- 請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の導電性ビアペーストがビアホール内に充填されたセラミックグリーンシートを焼成してなることを特徴とするセラミック配線基板。
- 上記焼成は1050℃以下で行われる請求項6記載のセラミック配線基板。
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