JP4223145B2 - 筒軸 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、凸軸とスプライン嵌合されて使用される筒軸に関する。この筒軸は、例えば伸縮軸を構成する一方軸体の軸端部分、自在継手のヨークの軸端部分、あるいは、トラクタの駆動軸とトラクタでけん引される各種作業機の入力軸との一方の軸端部分に設けられる。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、例えば2つの軸体を自在継手を介して連結するような場合、自在継手のヨークと各軸体とをスプライン嵌合とすることがあり、その場合、例えばヨークの軸端部分を内周面にメススプライン部を有する筒軸とし、また軸体の軸端部分を外周面にオススプラインが形成された凸軸とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した筒軸に凸軸を挿入するにあたって、両軸のスプライン部どうしの位相がずれていると、挿入しにくくなる。
【0004】
そこで、位相ずれの補正対策については、現在のところ、試行回数を増やしたり、作業者が手作業で一方の軸を所要角度回して位相を合わせてから挿入させるようにしており、面倒であった。
【0005】
これに対し、本願出願人は、特願平10−197003号を提案している。この出願では、筒軸のメススプライン部の各スプライン歯の先端部分を先細り形状にしている。この構成では、筒軸に対して凸軸を連結する過程で、両軸のスプライン部の位相がずれているとき、筒軸のスプライン歯の先端側の案内面が凸軸の軸方向推進力を周方向へ回す力に変換して、位相ずれを自動補正する。
【0006】
ところで、上記提案出願では、各スプライン歯の先端部分を平面視ほぼV字形に形成した形態を提示しているが、その形態において、位相ずれの補正角度を可及的に大きくするには、V字形歯先を先鋭に尖らせればよいが、そのようにすると、凸軸の連結時に凸軸がV字形歯先に干渉したときに、当該刃先が潰されて変形しやすくなることが判った。ここに改良の余地がある。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、筒軸において、凸軸との連結過程で両軸のスプライン部相互の位相ずれを自動補正できるようにしながら、スプライン歯の先端部分の変形を抑制できるようにすることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にかかる筒軸は、凸軸がスプライン嵌合される筒軸であって、その内周面に設けられるメススプライン部の各スプライン歯の先端部分の周方向両側に、当該先端部分を平面視ほぼV字形の先細形状とする斜面がそれぞれ設けられており、この各スプライン歯のV字形歯先が、周方向に沿って平坦かあるいは丸く形成され、前記斜面は、スプライン溝の両隣に位置する2つの斜面が一対となってすり鉢状に湾曲した形状にされ、前記メススプライン部のスプライン溝の先端側の領域には、2つ一対の前記斜面に対して連接する扇形の陥没部が形成されているとともに、前記扇形の陥没部は、筒軸の軸線に対して直交する平面で切断したときの断面形状が凹円弧形をなし、かつ前記スプライン溝の先端部分から前記筒軸の先端まで連続して形成されている。
【0009】
請求項2の発明にかかる筒軸は、上記請求項1におけるV字形歯先の平坦部あるいは丸み部の周方向幅を、0.5〜3mmの範囲内に設定している。
【0010】
以上、本発明の筒軸では、凸軸との連結過程において両軸のスプライン部どうしの位相がずれていても、筒軸のスプライン歯の斜面が凸軸の軸方向推進力を周方向に回す力に変換させるように作用するので、前記位相ずれが自動補正されて両軸の連結が可能になる。
【0011】
しかも、筒軸のスプライン歯のV字形歯先が平坦あるいは丸く形成されているから、前述の連結過程において、凸軸のスプライン歯と干渉しても変形しにくくなり、位相ずれ補正作用が長期間にわたって安定的に発揮されるようになる。
【0012】
特に、請求項2の発明では、V字形歯先の平坦部あるいは丸み部の周方向幅を特定しているから、凸軸との連結過程で凸軸の位相ずれの補正角度を可及的に大きく確保できるようになって、しかも凸軸が万一干渉してもダメージを受けにくくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0014】
図1ないし図3に本発明の一実施形態を示している。図1は、筒軸の縦断側面図、図2は、筒軸と凸軸とを示す斜視図、図3は、筒軸と凸軸との連結過程での位相ずれ補正形態を示す説明図である。
【0015】
図中、10は筒軸、20は凸軸である。筒軸10に対して凸軸20が軸方向に摺動可能にかつ周方向に同期回転する状態にスプライン嵌合により連結される。
【0016】
筒軸10は、円筒形に形成されており、その内周面には、メススプライン部11が形成されている。この筒軸10の内周面において一方開口端には、拡径テーパ面12が形成されている。
【0017】
凸軸20は、円柱形に形成されており、その外周面には、オススプライン部21が形成されている。この凸軸20のオススプライン部21の各スプライン歯の先端には、例えばテーパ面22が形成されている。
【0018】
そして、前述した筒軸10のメススプライン部11の各スプライン歯の先端部分の周方向両側には、それぞれ斜めに湾曲した斜面13が形成されていて、当該スプライン歯の先端部分の形状が平面視ほぼV字形に形成されている。なお、前述の斜面13において、それぞれスプライン溝側に位置する2つの斜面13が一対となって、すり鉢状に湾曲した形状になっている。
【0019】
また、筒軸10の拡径テーパ面12においてメススプライン部11の各スプライン溝の先端側の領域には、前述したスプライン溝側に位置する2つ一対の斜面13に対して連接する扇形の陥没部14が形成されている。
【0020】
さらに、前述した各スプライン歯のV字形歯先は、先鋭に尖っておらずに、周方向に沿って平坦に形成されている。この平坦部分を平坦部15とする。この平坦部15の周方向幅Bは、0.5〜3mmの範囲内、好ましくは1mmに設定される。なお、この平坦部15は、丸いR面としてもよい。
【0021】
なお、上述したスプライン溝の先端部分に形成される2つ一対の斜面13,13と陥没部14とが、凸軸20を連結するときの位相ずれを補正する案内面となる。
【0022】
次に、上述した筒軸10のメススプライン部11の加工方法を説明する。
【0023】
すなわち、後で説明する回転旋削工具40を、図4に示すように、筒軸10の軸心に沿う姿勢にするとともに、その先端部分を1つのスプライン溝の先端部分にあてがった状態で、当該回転旋削工具40を回転させながら奥へ移動させる。これにより、前記スプライン溝の両隣の2つのスプライン歯の先端片側角部が、同時に斜めに湾曲した形状で面取りされることになり、結果的にスプライン溝の先端部分に2つ一対の斜面13と陥没部14とからなる案内面が形成されることになる。以降、上述したような処理をすべてのスプライン歯に対して施す。これにより、スプライン溝の先端部分に前述した案内面が形成されるとともに、各スプライン歯の先端部分の形状が平面視ほぼV字形に形成されるとともに、V字形歯先に所要幅の平坦部15が残存されることになる。
【0024】
このような加工に用いる回転旋削工具としては、一般的に知られる各種のエンドミルやドリルなどを改造したものとすることができる。
【0025】
具体的に、図5ないし図7に示すような回転旋削工具40を用いる。この回転旋削工具40は、2刃形エンドミルをベースとし、その刃部の先端側に縮径部41を設けた形状になっている。
【0026】
ここで用意する回転旋削工具40については、その刃部の回転円弧軌跡の直径寸法Rと、縮径部41の軸方向長さ寸法Wと、縮径部41の傾斜角度θとを下記するように規定する必要がある。
【0027】
まず、前述の回転円弧軌跡の直径寸法Rについては、図8に示すように、筒軸10の各スプライン溝の先端部分に形成する案内面(2つ一対の斜面13ならびに陥没部14)における3点P1,P2,P3を通る仮想円弧Xの直径寸法rと同じに設定する。また、縮径部41の軸方向長さ寸法Wについては、図9に示すように、斜面13の軸方向寸法Lと同じあるいはそれよりも大きく設定する。さらに、縮径部41の傾斜角度θについては、スプライン歯のV字形歯先の角度αと同じに設定する。
【0028】
以上説明したような筒軸10であれば、凸軸20との連結過程において、両軸10,20の軸心がずれていたり、あるいは両軸10,20のスプライン部11,21どうしの位相がずれていたりしても、下記するように芯ずれや位相ずれが、人手を煩わせることなく自動的に円滑に補正されるようになる。
【0029】
まず、両軸10,20の軸心がずれている場合、両軸10,20を突き合わせる動作に伴い、筒軸10の拡径テーパ面12と、凸軸2のスプライン歯のテーパ面22とが当接したときに、筒軸10の拡径テーパ面12が、凸軸20の軸方向推進力を径方向へ変位させる力に変換させるように作用するので、筒軸10の軸心と凸軸20の軸心とが合致するようになる。
【0030】
また、両軸10,20の各スプライン部11,21の位相がずれている場合、両軸10,20を突き合わせる動作に伴い、筒軸10のメススプライン部11の斜面13に、凸軸20のオススプライン部21の歯先が当接したときに、前記斜面13が、凸軸20の軸方向推進力を周方向一方へ回す力に変換させるように作用するので、凸軸20が所要角度回転させられることになって、オススプライン部21の位相がメススプライン部11の位相に合致することになる。この位相補正動作における凸軸20の回転は、オススプライン部21のスプライン歯がメススプライン部11の斜めに湾曲した斜面13に沿ってすべりながら案内されるようになるので、円滑になる。
【0031】
このように、筒軸10と凸軸20との連結過程において、特に両軸10,20のスプライン部11,21の位相がずれていても、この位相ずれを自動補正できるから、従来のように作業者の手を煩わせることなく、連結を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0032】
しかも、筒軸10のスプライン歯のV字形歯先に平坦部15を設けているから、前述の連結過程において、凸軸20のスプライン歯と万一干渉しても変形しにくくなり、位相ずれ補正作用が長期間にわたって安定的に発揮することが可能になる。
【0033】
特に、この実施形態のように、平坦部15の周方向幅Bを可及的に小さな範囲に特定すれば、凸軸20との連結過程で凸軸20の位相ずれの補正角度を可及的に大きく確保できるようになって、しかも凸軸20が万一干渉してもダメージを受けにくくなるなど、信頼性向上に貢献できるようになる。
【0034】
ところで、上述した実施形態の筒軸10は、例えば図10に示すようなトラクタ2の駆動軸2aに対して作業機3の凸軸形状の入力軸3aを連結するためのカップリングとして利用することができる。具体的には、トラクタ2の駆動軸2aの自由端に取り付けられてある十字軸継手2bの一方ヨーク2cの軸端に、筒軸10が一体に設けられる。
【0035】
この図10に示した例では、トラクタ2の駆動軸2aと作業機3の入力軸3aとを人手を介入せずに自動的に連結できるようにするために、トラクタ2側に配設されて作業機3を引き寄せるアームユニットAと、作業機3側に配設されてアームユニットAに係止される係止ユニットBと、トラクタ2のアームユニットAに配設されて十字軸継手2bの一方ヨーク2cをほぼ水平姿勢で回動可能な状態で傾動可能かつ径方向変位可能に支持する支持ユニットCとを装備している。
【0036】
支持ユニットCは、例えば図11に示すように、トラクタ2のアームユニットAに固定される環状枠体4と、この環状枠体4に取り付けられる自動調心玉軸受5と、この自動調心玉軸受5を環状枠体4のほぼ中心位置に宙づり保持する3つのコイルばね6とで構成されている。環状枠体4は、2枚一対の環状板4a,4bと、環状板4a,4bの間に挟まれて径方向内外に配設される内筒4cおよび外筒4dとからなる。内筒4cは、径方向に摺動可能になっている。外筒4dの円周3カ所には、コイルばね6の圧縮量を調節する3つの中空ボルト4eが螺着されている。
【0037】
このようなトラクタ2と作業機3との連結用のカップリングとして、本発明の筒軸10を利用すれば、本発明の筒軸10による位相ずれ補正機能がきわめて有効になり、トラクタ2の駆動軸2aと作業機3の入力軸3aとの連結動作の一層の円滑化に大きく貢献できるようになる。
【0038】
【発明の効果】
請求項1および2の発明にかかる筒軸では、凸軸との連結時に両軸のスプライン部の位相がずれていても、これら両軸を突き合わせるだけで、前記位相ずれを自動的に補正できるから、試行回数も少なく済み、また、人手を煩わせることなく連結させることができるようになる。しかも、筒軸のスプライン歯のV字形歯先を平坦あるいは丸く形成しているから、前述の連結過程において、凸軸のスプライン歯と万一干渉しても変形しにくくなり、位相ずれ補正作用を長期間にわたって安定的に発揮させることができるようになる。
【0039】
特に、請求項2の発明では、V字形歯先の平坦部あるいは丸み部の周方向幅を特定しているから、凸軸との連結過程で凸軸の位相ずれの補正角度を可及的に大きく確保できるようになって、しかも凸軸が万一干渉してもダメージを受けにくくなるなど、信頼性向上に貢献できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の筒軸の縦断側面図
【図2】図1の筒軸およびその連結相手の凸軸を示す斜視図
【図3】図1の筒軸と凸軸との連結過程での位相ずれ補正形態を示す説明図
【図4】図1の筒軸の加工形態を示す縦断側面図
【図5】図1の筒軸の加工に用いる回転旋削工具を示す斜視図
【図6】図5の回転旋削工具の側面図
【図7】図5の回転旋削工具の端面図
【図8】図1の筒軸の加工に用いる回転旋削工具の設計条件の一要素を示す説明図
【図9】図1の筒軸の加工に用いる回転旋削工具の設計条件の他要素を示す説明図
【図10】図1の筒軸をトラクタと作業機との連結用カップリングとした例を示す側面図
【図11】図10中の支持ユニットを示す縦断側面図
【符号の説明】
10 筒軸
11 筒軸のメススプライン部
13 メススプライン部の斜面
14 メススプライン部の陥没部
15 スプライン歯の平坦部
20 凸軸
21 凸軸のオススプライン部
Claims (2)
- 凸軸がスプライン嵌合される筒軸であって、
その内周面に設けられるメススプライン部の各スプライン歯の先端部分の周方向両側に、当該先端部分を平面視ほぼV字形の先細形状とする斜面がそれぞれ設けられており、
この各スプライン歯のV字形歯先が、周方向に沿って平坦かあるいは丸く形成され、
前記斜面は、スプライン溝の両隣に位置する2つの斜面が一対となってすり鉢状に湾曲した形状にされ、
前記メススプライン部のスプライン溝の先端側の領域には、2つ一対の前記斜面に対して連接する扇形の陥没部が形成されているとともに、
前記扇形の陥没部は、筒軸の軸線に対して直交する平面で切断したときの断面形状が凹円弧形をなし、かつ前記スプライン溝の先端部分から前記筒軸の先端まで連続して形成されている、ことを特徴とする筒軸。 - 請求項1に記載の筒軸において、
前記V字形歯先の平坦部あるいは丸み部の周方向幅は、0.5〜3mmの範囲内に設定される、ことを特徴とする筒軸。
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