本発明のインクジェットヘッドは、複数のノズルが形成されたノズルプレートを含む孔を有する3枚以上のプレートが接着剤を介して積層されることによって、共通インク室と前記共通インク室の出口から圧力室を経て前記ノズルに達する複数の個別インク流路とが形成された流路ユニットを含むインクジェットヘッドであって、前記3枚以上の各プレートにおいて、前記流路ユニットの一方の最外層プレートである前記ノズルプレート以外の各プレートにおける前記ノズルプレートに近い方の面には、前記個別インク流路の一部となる前記孔の開口を取り囲む複数の環状溝が形成されており、前記流路ユニットの他方の最外層プレートであって前記圧力室を構成する空間の少なくとも一部を含むキャビティプレートと前記ノズルプレートとに挟まれた各プレートにおける前記ノズルプレートから遠い方の面には、前記個別インク流路の一部となる前記孔の開口を取り囲む環状溝が形成されておらず、前記ノズルプレートにおける前記キャビティプレートに近い方の面には、前記個別インク流路の一部となる前記孔の開口を取り囲む環状溝が形成されていないものである。
本発明のインクジェットヘッドによると、ノズルプレートとキャビティプレートとに挟まれた各プレートにおいては、ノズルプレートに近い面に環状溝が形成され、ノズルプレートから遠い方の面には環状溝が形成されていない。従って、両方の面に環状溝が形成されている場合よりも強度の高いプレートによって流路ユニットが構成されることとなり、強度の高い流路ユニットを有するインクジェットヘッドを実現することができる。また、キャビティプレート以外の各プレートにおいては、ノズルプレートに近い面だけに環状溝を形成すればよいため、これらのプレートの環状溝の形成方法を統一することができ、このインクジェットヘッドの製造工程を迅速かつ簡易なものにすることができる。さらに、ノズルプレートにおけるキャビティプレートに近い方の面には環状溝を形成しないため、環状溝を形成する場合と比べて強度の高いノズルプレートを実現することができる。これによって、強度の高い流路ユニットを有するインクジェットヘッドを実現することができる。さらに、多数のノズルを精密にノズルプレートに形成する場合でも、環状溝の形成がノズルの形成に悪影響を与えることもなく、精度の高いノズル形成を行うことができる。これによって、インクジェットヘッドの性能を上げることができる。なお、個別インク流路の一部となる孔の開口を取り囲む環状溝は、この環状溝が形成された面に接着剤を塗布する際やこの面を他の面と貼り付ける際、接着剤や空気の逃げ場所となるものである。このような環状溝により、接着剤の塗布などの際に個別インク流路に接着剤が浸入するのを規制することができ、流路抵抗の変動を抑えることができる。
さらに、本発明においては、前記ノズルプレートと前記キャビティプレートとに挟まれた前記各プレートに形成された前記環状溝は、前記孔の開口を個々に取り囲んでいることが好ましい。
これによると、環状溝が孔の開口を個々に取り囲むことにより、個々の孔への接着剤の浸入をより効果的に規制することができ、さらにインクジェットヘッドの性能を上げることができる。
さらに、本発明においては、前記キャビティプレートは、複数の前記圧力室がマトリクス状に配置された1又は2以上の圧力室群を有しており、前記キャビティプレートに形成された前記環状溝は、前記圧力室群を取り囲んでいることが好ましい。
これによると、キャビティプレートに形成された環状溝が圧力室群を取り囲んでいるため、これらの圧力室群への接着剤の侵入を規制し、圧力室における流路抵抗の変動を抑制し、より高い性能のインクジェットヘッドを実現することができる。
さらに、本発明においては、前記流路ユニットには、前記3枚以上のプレートを貫通するように前記積層方向に一直線状に延在した1又は2以上の直進孔が形成されていることが好ましい。
これによると、プレートに形成された直進孔を使用して位置合わせをすることができる。従って、各プレートを積層する際、直進孔を使用して位置合わせを行いつつ各プレートを積層することができるため、精度の高い流路ユニットを有するインクジェットヘッドを実現することができる。また、2以上の直進孔がある場合には、位置合わせの作業ごとに別の直進孔を使用することができ、精度の高いインクジェットヘッドを実現することができる。
さらに、本発明においては、複数の前記圧力室に跨って対向するように前記キャビティプレート上に積層され、前記圧力室内のインクに吐出エネルギーを付与することができるアクチュエータユニットをさらに備え、前記流路ユニットは、前記ノズルプレートと前記キャビティプレートとに挟まれた前記各プレートのうち少なくともいずれか1枚を前記積層方向に貫通する第1の貫通孔と、前記キャビティプレート上の前記アクチュエータユニットと対向していない部分に開口部を有する前記キャビティプレートを前記積層方向に貫通する第2の貫通孔とを有し、前記3枚以上の各プレートに形成された前記環状溝のうち少なくともいずれか1つと、前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔とが相互に連通することにより、前記少なくともいずれか1つの環状溝から前記キャビティプレート上の前記第2の貫通孔の前記開口部へと連通する1又は2以上の連通路が形成されていることが好ましい。
これによると、第2の貫通孔のキャビティプレート上の開口から大気圧とは異なる大きさの空気圧を連通路内に加えることなどにより、積層した各プレート間に隙間がないかどうか、また、流路ユニットに形成された個別インク流路がノズル以外で大気と連通していないかどうかを調べることができる。さらに、上記のような隙間や個別インク流路の大気との連通が存在する場合には、どの程度の隙間があるかを調べることができる。これにより、隙間の有無や程度を検出することができ、高い品質を有するインクジェットヘッドを製造することができる。
さらに、本発明においては、前記1又は2以上の連通路のうち少なくともいずれか1つは、前記3枚以上のプレートのうち前記ノズルプレート以外の各プレートを貫通するように前記流路ユニットの前記積層方向に一直線状に延在した直進路を含んでおり、前記3枚以上のプレートのうち前記ノズルプレートに隣接するプレートに形成された前記環状溝と連通していることが好ましい。
これによると、ノズルプレートとノズルプレートに隣接するプレートとの間の隙間の有無や程度を検出することができる。これにより、ノズルプレートに精密にノズルが形成されており、高い接着精度を要求される場合でも、高い品質を有するインクジェットヘッドを製造することができる。また、連通路が積層方向に一直線上に延在し、簡単な構造の連通路であるため、連通路の加工を簡単なものにすることができる。
本発明によるインクジェットヘッドの製造方法は、複数のノズルが形成されたノズルプレートを含む孔を有する3枚以上のプレートが接着剤を介して積層されることによって、共通インク室と前記共通インク室の出口から圧力室を経て前記ノズルに達する複数の個別インク流路とが形成された流路ユニットを含むインクジェットヘッドの製造方法において、前記流路ユニットに含まれる各プレートに、前記個別インク流路の一部となる前記孔を形成する孔形成工程と、前記流路ユニットの一方の最外層プレートである前記ノズルプレートと前記流路ユニットの他方の最外層プレートであって前記圧力室を構成する空間の少なくとも一部を含むキャビティプレートとに挟まれた各プレートにおける一方の面だけに、前記個別インク流路の一部となる前記孔の開口を取り囲む複数の環状溝を形成する環状溝形成工程と、前記3枚以上のプレートのうちの前記ノズルプレート及び前記キャビティプレートを除く各プレートにおける前記環状溝が形成された面と、前記キャビティプレートにおける一方の面とに接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記3枚以上のプレートのうちの前記ノズルプレートを除く各プレートにおける接着剤の塗布された面が前記ノズルプレートに近い方の面となり且つ前記共通インク室及び前記個別インク流路が形成されるように、前記3枚以上のプレートを積層する積層工程とを備えている。
本発明のインクジェットヘッドの製造方法によると、ノズルプレートとキャビティプレートとに挟まれた各プレートにおける一方の面だけに環状溝を形成するので、強度の高いプレートによって流路ユニットを構成することができ、強度の高い流路ユニットを有するインクジェットヘッドを製造することができる。また、上記の各プレートには一方の面だけに環状溝を形成するので、環状溝の形成方法を統一することができ、インクジェットヘッドの製造工程を迅速かつ簡易なものにすることができる。さらに、上記の各プレート及びキャビティプレートの一方の面に接着剤を塗布するので、接着剤の塗布の方法を統一することができるため、インクジェットヘッドの製造工程を迅速且つ簡易にすることができる。
本発明の好適な実施の形態について説明する。
<インクジェットヘッド全体>
図1は、本実施形態に係るインクジェットヘッドの外観を示している。図2は、図1に示すII−II線に沿った断面図である。
インクジェットヘッド1は、図1に示されるように、主走査方向に長尺な形状を有している。インクジェットヘッド1は、ヘッド本体1a、リザーバユニット70及びヘッド本体1aの駆動を制御する制御部80を有している。以下、これらについて、図1及び図2に従って分説する。
制御部80は、メイン基板82、メイン基板82の側面に配置されたサブ基板81及びサブ基板81においてメイン基板82に対向する側面に固定されたドライバIC83を有している。ドライバIC83は、ヘッド本体1aに含まれるアクチュエータユニット21を駆動するための信号を生成する。
メイン基板82及びサブ基板81は、共に主走査方向に長尺な矩形形状を有し、互いに平行になるようにインクジェットヘッド1上に立設されている。メイン基板82は、リザーバユニット70上面に固定されている。サブ基板81は、メイン基板82からの距離が等間隔になるよう離隔してメイン基板82の両側に配置されている。また、サブ基板81は、リザーバユニット70から上方に離隔するように配置されている。メイン基板82及び各サブ基板81は、互いに電気的に接続されている。各ドライバIC83におけるサブ基板81に対向する面には、ヒートシンク84が固定されている。
インクジェットヘッド1は、さらに、給電部材であるFPC(Flexible Printed Circuit)50を有している。FPC50の一端は、ヘッド下方のアクチュエータユニット21と電気的に接続されている。FPC50の他端は、ヘッド下方からヘッド上方へと引き出され、サブ基板81と電気的に接続されている。また、FPC50は、アクチュエータユニット21からサブ基板81に至る途中で、ドライバIC83と電気的に接続されている。これにより、FPC50は、サブ基板81から出力された信号をドライバIC83に伝達し、ドライバIC83から出力された駆動信号をアクチュエータユニット21に供給することができる。
インクジェットヘッド1には、さらに、制御部80を覆う上カバー51及びヘッド下部を覆う下カバー52が設けられている。これらのカバーにより、印刷時において飛び散ったインクが、制御部80等まで飛翔することを防止することができる。なお、図1では、制御部80の構成を見やすくするため、上カバー51の図示を省略している。
上カバー51は、図2に示されるように、アーチ形状の天井を有し、制御部80を覆っている。下カバー52は、上下に開口した四角筒状で、メイン基板82の下部を覆っている。下カバー52の側壁上端部には、内側に向かって突出した上壁52bが形成されており、この上壁52bと下カバー52の側壁との接続部の上面に上カバー51の下端が配置されている。下カバー52及び上カバー51は、共にヘッド本体1aと同じ幅を有している。
下カバー52の両側壁の下端には、下方に向かって突出する突出部52aが形成されている。突出部52aは、両側壁の長手方向に沿って2つ配置されている。図1には一方の側壁に突出部52aが形成されている様子が示されているが、他方の側壁にも、2つの突出部52aが同様に形成されている。突出部52aは、後述するリザーバユニット70の凹部53内に収容されている。また、突出部52aは、リザーバユニット70の下部から凹部53へと引き出されたFPC50を覆っている。突出部52aの先端は、ヘッド本体1aに含まれる流路ユニット4との間に製造誤差を吸収するための隙間を形成しつつ、流路ユニット4と対向している。突出部52aと流路ユニット4との間の隙間は、シリコン樹脂等が充填されることにより封鎖されている。下カバー52の側壁下端は、側壁下端の突出部52aが形成されていない部分において、リザーバユニット70上面に配置されている。
FPC50におけるアクチュエータユニット21に接続された一端近傍は、流路ユニット4の上面に沿って水平に延在している。そして、FPC50は、リザーバユニット70に設けられた凹部53内を通って、屈曲しつつ上方に引き出されている。
リザーバユニット70は、図2に示されるように、主走査方向(図1参照)に延在するようにヘッド本体1aの上部に配置されている。リザーバユニット70は、上記のとおり、下カバー52の突出部52aが収まる形状に形成された凹部53を有している。リザーバユニット70は、主走査方向に長尺な矩形の平面形状を有する6枚のプレート71、72、73、74、75及び76が積層した積層構造を有している。リザーバユニット70が有するプレート71〜76には、それぞれ、貫通孔71a、インク溜まり72a、溝72b、貫通孔73a、インク溜まり74a、孔75a及び貫通孔76aが形成されている。
貫通孔71aは、図1に示されるように、プレート71の主走査方向について一方の端部であって、副走査方向について一方の端部付近に形成されている。孔71の上部には、インク供給口79が設置されている。インク供給口79は、図示しないインクタンクと接続されている。貫通孔76aは、流路ユニット4に設けられた後述のマニホールド流路(共通インク室)5と、開口3aにおいて連通するようにプレート76に10個形成されている。貫通孔75aは、プレート75における貫通孔76aと対向する位置に10個形成されている。貫通孔73aは、プレート73のほぼ中央部であって、インク溜まり72a及び74aの両者に対向する領域内に形成されている。
インク溜まり72a及び74aは、それぞれ主走査方向に延在するようにプレート72及び74に形成されている。
溝72bは、プレート72において貫通孔71aと対向する位置に形成されている。溝72bの一端は、インク溜まり72aと繋がっている。
貫通孔71aから、溝72b、第1のインク溜まり72a、貫通孔73a、第2のインク溜まり74a及び貫通孔75aを通じ、貫通孔76aまで連通するように、プレート71〜76が積層されている。
このように、リザーバユニット70内には、貫通孔71aから貫通孔76aへと連通するインク流路が形成されている。そして、貫通孔71aと接続されたインクタンク内のインクが、このインク流路を通して、流路ユニット4のマニホールド流路5へと供給される。
<ヘッド本体>
以下、ヘッド本体1aについて各図を参照しつつ説明する。図3は、ヘッド本体1aの平面図である。なお、図3〜図5において、図に向かって手前が上方向、すなわち、リザーバユニット70のある方向となる。
ヘッド本体1aは、図2及び図3に示されるように、主走査方向に長尺な矩形の平面形状を有する流路ユニット4と、流路ユニット4上に接着されたアクチュエータユニット21とを有している。アクチュエータユニット21は、台形形状を有しており、その台形の1対の平行対向辺が主走査方向に平行になるように流路ユニット上面に配置されている。また、アクチュエータユニット21は、主走査方向に平行な2本の直線のそれぞれに沿って2つずつ、合計4つが、全体として千鳥状に流路ユニット4上に配列されている。流路ユニット4上で隣接し合うアクチュエータユニット21の斜辺同士は、副走査方向について部分的にオーバーラップしている。
<流路ユニット>
流路ユニット4の内部には、インク流路の一部となるマニホールド流路5が形成されている。流路ユニット4の上面には、マニホールド流路5の開口3aが形成されている。開口3aは、主走査方向に平行な2本の直線のそれぞれに沿って5個ずつ、合計10個形成されている。開口3aは、4つのアクチュエータユニット21が配置された領域を避ける位置に形成されている。さらに、上記のとおり、これらの開口3aは、リザーバユニット70の貫通孔76aと連通する位置に配置されている。
マニホールド流路5からは、4本の副マニホールド流路5aが分岐している。これらの副マニホールド流路5aは、各アクチュエータユニット21の下側(流路ユニット4内部)に互いに隣接して延在している。
流路ユニット4の内部には、各プレートの積層方向に一直線状に延在した直進孔135a、135b、136a及び136bが形成されている。流路ユニット4の上面には、これらの直進孔135a〜136bの開口が形成されている。また、流路ユニット4には、後述の環状溝30a等に連通する連通路の開口138が2個形成されている。
図4は、図3の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。なお、図面を見やすくするため、図4にはアクチュエータユニット21が示されていない。また、マニホールド流路5の開口3aも図4に図示していない。
流路ユニット4は、図4に示されるように、複数の圧力室10がマトリクス状に形成されている圧力室群6を有している。圧力室10は、後述のように、流路ユニット4の一方の最外層を構成するキャビティプレート22(図6参照)の上面に開口するように形成されている。この圧力室群6に形成された圧力室10は、アクチュエータユニット21に対向する領域のほぼ全面に亘って配列されている。すなわち、圧力室群6は、アクチュエータユニット21とほぼ同一の大きさ及び形状を有している。また、アクチュエータユニット21と同様、4つの圧力室群6は、主走査方向に平行な2本の直線に沿って、キャビティプレート22に千鳥状に配列されている。なお、流路ユニット4の一方の最外層を構成するプレートは、キャビティプレート22とは異なり、圧力室10を構成する空間の一部のみ含むものとしてもよい。つまり、本実施形態では、圧力室10は、キャビティプレート21を貫通する孔として形成されているが、キャビティプレート21の厚さや要求されるインク吐出量によっては、圧力室の底面に薄肉部を残した凹部状に形成してもよい。
<キャビティプレート上面の溝>
図4に示されるように、キャビティプレート22には、溝22b及び22cが形成されている。溝22bは、全ての圧力室群6を取り囲むように形成されている。また、溝22bの一部は、隣り合う圧力室群6に挟まれた領域に形成されている。溝22cは、隣り合う圧力室群6に挟まれた領域であって、溝22bが形成されていない領域に形成されている。各圧力室群6の周囲は、これら溝22b及び溝22cの双方により、個々に取り囲まれている。キャビティプレート22が金属製の場合には、溝22b及び22cは、後述の環状溝22a等と同様にハーフエッチングによって形成されている。
溝22bは、キャビティプレート22の上面にアクチュエータユニット21を接着する工程において、後述の環状溝22a等と同様、圧力室10内に侵入する接着剤を規制する役割を果たす。このように、圧力室10内に浸入する接着剤を規制することにより、ノズル8から吐出するインクの吐出特性にばらつきが生じることを防ぐ効果がある。
<個別インク流路>
図5は、図4の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。図5においては、流路ユニット4の内部にあって破線で示されるべきノズル8、圧力室10及びアパーチャ(しぼり)12等のインク流路が実線で示されている。
流路ユニット4の下面には、多数のノズル8が形成されている。これらのノズル8は、流路ユニット4の下面における副マニホールド流路5aと対向する領域を避ける位置に配置されている。また、これらのノズル8は、流路ユニット4におけるキャビティプレート22とは逆側の最外層を構成するノズルプレート31(図6参照)に形成されている。さらに、これらのノズル8は、圧力室群6と対向する領域内に配置されている。圧力室群6と対向するそれぞれの領域内のノズル8は、図5に示されるように、流路ユニット4の長手方向(主走査方向)に平行な複数の直線に沿って等間隔に配列されている。以下、これらの直線上のノズル8の配列間隔を配列間隔Aとする。
さらに、流路ユニット4に形成された各ノズル8は、主走査方向に平行な仮想直線に各ノズル8の形成位置を射影したときの各射影点が、上記の仮想直線上に等間隔に並ぶように配列されている。また、これら各射影点の配列間隔は、配列間隔Aより小さい。ここで、ノズル8の形成位置を長手方向に平行な仮想直線に射影した射影点とは、ノズル8の形成位置を通る長手方向に垂直な直線と仮想直線との交点をいう。
流路ユニット4の内部には、多数のアパーチャ12が形成されている。これらのアパーチャ12は、ノズルプレート31とキャビティプレート22との間の層に位置するアパーチャプレート24(図6参照)に形成されている。また、これらのアパーチャ12は、圧力室群6と対向する領域内に配置されている。本実施形態のアパーチャ12は、水平面に平行な1方向に沿って延在している。
図4及び5に示されるように、圧力室10は、副マニホールド流路5aの延在方向(主走査方向)とこの延在方向から所定角度傾いた方向との2つの方向に沿って、マトリクス状に配列されている。各圧力室10は、角部にアールが施された菱形の平面形状を有しており、その長い方の対角線は副走査方向に平行である。各圧力室10の一端はノズル8に連通しており、他端はアパーチャ12を介して共通インク室としての副マニホールド流路5aに連通している。
なお、アクチュエータユニット21上の各圧力室10と対向する位置には、圧力室10とほぼ相似な形状でこれよりも一回り小さい平面形状を有する個別電極35が配置されている。図5の実線35は、2つの圧力室10に対応して配置されている2つの個別電極の位置及び概形を示している。
流路ユニット4には、副マニホールド流路5aと連通し、各アパーチャ12及び各圧力室10を通じて各ノズル8と連通する個別インク流路が形成されている。この個別インク流路32について、図6を参照しつつ説明する。図6は、図5のVI−VI線に沿った縦断面図である。
ヘッド本体1aは、流路ユニット4と、その上面に接着されたアクチュエータユニット21とを有している。流路ユニット4は、図6に示されるように、複数枚のプレートを積層した積層体によって構成されている。本実施形態においては、これらのプレートは、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、マニホールドプレート26、27、28、29、カバープレート30及びノズルプレート31の、合計10枚からなる。
上記の10枚のプレートには、相互に連通することによって個別インク流路32を構成するような連通孔が形成されている。すなわち、それぞれの連通孔は、個別インク流路32の一部となるものである。これらの連通孔には、副マニホールド流路5aを構成する連通孔(連通孔Aとする)が含まれている。また、これらの連通孔には、圧力室10の一端からノズル8へと連通する流路を構成する連通孔(連通孔Bとする)が含まれている。さらに、これらの連通孔には、圧力室10の他端から副マニホールド流路5aへと連通する流路を構成する連通孔(連通孔Cとする)が含まれている。
各プレートに形成されている連通孔について説明する。キャビティプレート22には、圧力室10が形成されている。そして、各プレート23〜31には、連通孔A〜Cのうち、少なくともいずれか1つが形成されている。すなわち、ベースプレート23には、連通孔B及びCが形成されている。アパーチャプレート24には、連通孔B及び連通孔C(アパーチャ12)が形成されている。サプライプレート25には、連通孔B及びCが形成されている。マニホールドプレート26〜29のそれぞれには、連通孔A及びBが形成されている。カバープレート30には、連通孔Bが形成されている。ノズルプレート31には、連通孔B(ノズル8)が形成されている。
それぞれの連通孔は、以下のように相互に連通している。マニホールドプレート26〜29の連通孔Aは、相互に連通し、副マニホールド流路5aを構成している。各プレートの連通孔Bは、相互に連通している。また、ベースプレート23の連通孔Bは、圧力室10の一端と連通している。さらに、カバープレート30の連通孔Bは、ノズル8と連通している。ベースプレート23の連通孔Cは、圧力室10の他端及びアパーチャ12の一端と連通している。サプライプレート25の連通孔Cは、アパーチャ12の他端及び副マニホールド流路5aと連通している。
上記のとおりに相互に連通した連通孔によって、個別インク流路32が構成されている。副マニホールド流路5aから流出したインクは、個別インク流路32を通って、以下の経路でノズル8へと流出する。まず、副マニホールド流路5aから上方向に向かって、アパーチャ12の一端部に至る。次に、アパーチャ12の延在方向に沿って水平に進み、アパーチャ12の他端部に至る。そこから上方に向かって、圧力室10の一端部に至る。さらに、圧力室10の延在方向に沿って水平に進み、圧力室10の他端部に至る。そこから3枚のプレートを経由して斜め下方に向かい、さらに直下のノズル8へと進む。
このように、個別インク流路32は、圧力室10を頂部とする弓なり形状を有している。これにより、図5に示されるような個別インク流路32を構成する各連通孔の高密度配置を可能とし、インクの円滑な流れを実現している。
<直進孔>
流路ユニット4には、図3に示されるように、4個の直進孔135a、135b、136a及び136bが形成されている。このうち、直進孔135a及び直進孔136aは、流路ユニット4の長手方向(主走査方向)における一方の端部付近に形成されている。また、直進孔135b及び直進孔136bは、他方の端部付近に形成されている。これら4つの直進孔135a〜136bは、流路ユニット4の短手方向について中央付近を通り且つ長手方向に平行な一直線上に配置されている。そして、直進孔136a及び136bは、それぞれ、長手方向について直進孔135a及び135bより両端側に配置されている。
図7に示されるように、直進孔135a〜136bは、流路ユニット4に含まれる最上層のキャビティプレート22から最下層のノズルプレート31までを貫通するように形成されている。そして、直進孔135a〜136bは、これらのプレートの積層方向に沿って一直線状に延在している。
直進孔135a、135bは、どちらもほぼ円形の横断面形状を有している。そして、図7に示されるように、流路ユニット4におけるどの横断面についても、同一の大きさの断面形状を有している。一方、直進孔136a、136bの形状は、相互に異なっている。これらの直進孔135a〜136bは、後述のとおり、各プレート同士及び流路ユニット4とリザーバユニット70との位置合わせに使用される。
なお、直進孔135a〜136bの中には、同じ形状のものがあってもよい。例えば、直進孔135a及び135b同士、又は、直進孔135a及び直進孔136a同士等で、同じ形状を有していてもよい。あるいは、全ての直進孔が同じ形状を有していてもよい。さらに、これらの直進孔135a〜136bの形状は、円形と大きく異なるものでもよい。
<アクチュエータユニット>
アクチュエータユニット21について、図8を参照しつつ説明する。図8(a)は、図6のアクチュエータユニット21付近を拡大した図である。
アクチュエータユニット21は、図8(a)に示されるように、圧電層41、シート42、43及び44を含んでいる。そして、これらの圧電層41及びシート42〜44は、共通電極34を介して積層されている。圧電層41、シート42〜44及び共通電極34は、複数の圧力室10に跨るように配置されている。また、圧電層41の上面における圧力室10と対向する位置には、個別電極35が配置されている。
圧電層41は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料などの強誘電性を有する圧電材料からなる。また、共通電極34は、図示しない領域において接地されている。従って、共通電極34は、すべての圧力室10に対向する領域において等しくグランド電位に保たれている。
図8(b)は、個別電極35の上面図である。個別電極35は、菱型形状の本体部を有している。この本体部は、圧力室10とほぼ同じ形状を有しているが、圧力室10より一回り小さい。そして、個別電極35は、この本体部が圧力室10と対向する領域の中央部に位置するように、圧電層41上に配置されている。
個別電極35は、本体部から延出されたランド部36を有している。ランド部36は、個別電極35の本体部における一方の鋭角部から延出されている。また、ランド部36は円形形状を有している。さらに、図8(a)に示されるように、ランド部36は、本体部よりも厚い。つまり、ランド部36の上面は、本体部の上面よりも、圧電層41の表面から離れた位置にある。
個別電極35のランド部36の上面は、FPC50(図1及び図2参照)に設けられた接続部と電気的に接合されている。これにより、FPC50は、サブ基板81から出力された信号をドライバIC83に伝達し、ドライバIC83から出力された駆動信号を各個別電極35に供給することができる。
なお、シート42〜44の材料には、金属を用いてもよいし、圧電層41と同様のPZTを用いてもよい。あるいは、PZT以外の圧電材料等を使用してもよい。例えば、PZTと類似の材料として、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛等を使用することができる。これらの材料は互いに親和性が高く、これらの材料を使用した場合、アクチュエータユニット21の耐久性を高くすることができる。
<インク吐出>
アクチュエータユニット21の駆動によるインク吐出について説明する。
アクチュエータユニット21における圧力室10から最も離れた層には、個別電極35が配置されている。そして、個別電極35は、共通電極34と共に、1つの圧電層41を挟み込んでいる。圧電層41は、厚み方向に分極されており、アクチュエータユニット21に含まれる唯一の活性層である。すなわち、アクチュエータユニット21は、いわゆるユニモルフタイプの構成となっている。
個別電極35をグランド電位と異なる電位とすると、圧電層41における個別電極35と共通電極34とによって挟まれた部分に電界が生じる。この電界は、個別電極35及び共通電極34に垂直、つまり、圧電層41の厚み方向に平行である。圧電層41はこの電界の印加方向に分極されているので、圧電層41の電極による電界印加部分は、電歪効果により、上記の分極方向と垂直な方向について収縮する。
このとき、シート42〜44は、印加された電界の影響を受けず、自発的に縮むことはない。従って、圧電層41の収縮により、圧電層41と、シート42〜44との間に歪みが生じる。この歪みによって、シート42〜44は、圧電層41とは逆側、つまり、アクチュエータユニット21の下面側に凸となるように変形する(ユニモルフ変形)。
一方、アクチュエータユニット21の下面における個別電極35と対向する領域には、図6に示されるように、圧力室10が配置されている。従って、アクチュエータユニット21の個別電極35と対向する領域が、上記のように下面側に凸となるように変形すると、凸部が圧力室10内部に突出する。従って、圧力室10の容積が減少する。圧力室10の容積が減少すると、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、圧力室10からインクを押し出す。これによって、ノズル8からインクが吐出されることとなる。すなわち、アクチュエータユニット21は、ノズル8から吐出する吐出エネルギーを圧力室10内のインクに付与することができるものである。
ところで、上記のとおり、各ノズル8は、流路ユニット4の長手方向に平行な直線に沿って、一定の配列間隔Aで配列されている。一方で、本実施形態のインクジェットヘッド1は、配列間隔Aよりも小さいドット間隔で印字できる。これは、以下のように実現されている。
インクジェットヘッド1を使用して、主走査方向(図3等参照)に沿って一本のラインを印刷用紙を搬送しつつ印字する場合を考える。まず、印刷用紙の搬送によって、印刷すべきラインの位置が搬送方向について上流側から下流側へと移動する。そして、搬送方向について最も上流側に位置するノズル8のちょうど下方に印刷すべきラインの位置が到達するタイミングを計って、そのノズル8からインクを吐出する。ここで、各ノズル8は、上記のとおり、流路ユニット4の長手方向に平行な直線に沿って配列間隔Aで形成されているため、この時点では、印刷用紙上には配列間隔Aでドットが形成される。
次に、印刷用紙の搬送方向について2番目に上流側の位置にあるノズル8のちょうど下方に印刷すべきラインの位置が到達するタイミングを計って、そのノズル8からインクを吐出する。このように、印刷用紙の搬送に従って、次々と各ノズル8からインクを吐出する。
上記のように全てのノズル8からインクを吐出すると、印刷用紙上の印刷すべきラインの位置には、各ノズル8によって形成されたドットが並ぶ。一方、上記のように、各ノズル8の位置を流路ユニット4の長手方向、すなわち、主走査方向に平行な仮想直線に射影した際、その射影点は、配列間隔Aより小さい間隔で等間隔に並ぶようになっている。従って、印刷用紙上には、各ノズル8によって形成された各ドットが、主走査方向における印字の解像度に対応した間隔で等間隔に並ぶこととなる。
なお、各ノズル8は、図5に示されるように、ノズルプレート31における圧力室群6に対向する領域に形成されている。従って、隣り合う圧力室群6同士に挟まれた領域には、ノズル8が形成されていない。
しかし、圧力室10と同様、ノズル8の形成領域も、台形形状を有する圧力室群6の斜辺付近において、副走査方向についてオーバーラップしている。そして、このオーバーラップした領域においても、この領域にある各ノズル8の形成位置を流路ユニット4の主走査方向に平行な仮想直線に射影した際、その射影点が等間隔に並んで途切れないようになっている。
これによって、インクジェットヘッド1が、その主走査方向についての幅全体に亘って、印字の解像度に対応した間隔で途切れずに印字できるようになっている。
<環状溝>
流路ユニット4に含まれる各プレート23〜30には、図6に示されるように、環状溝23a、23b、24a、24b、25a、26a、27a、28a、29a及び30aが形成されている。図6に示されるように、これらの環状溝23a〜30aは、各プレート23〜30におけるノズルプレート31に近い方の面に形成されている。そして、各プレート23〜30におけるノズルプレート31から遠い方の面には、これらの環状溝は形成されていない。さらに、ノズルプレート31には、環状溝は形成されていない。
図9は、キャビティプレート22、カバープレート30及びノズルプレート31における下面の一部を示している。キャビティプレート22には、圧力室群6を取り囲むように、環状溝22aが形成されている。カバープレート30の下面には、後述のように、個別インク流路32を構成する連通路の開口を取り囲むように、環状溝30a等が形成されている。また、図示しないプレート23〜29の下面にも、個別インク流路32を構成する連通路の開口を個々に取り囲むように、環状溝23a〜29aがそれぞれ形成されている。ノズルプレート31には、その上面及び下面のいずれにおいても、環状溝が形成されていない。なお、各プレート22〜30の下面は、ノズルプレート31に近い方の面に相当する。
図10は、キャビティプレート22の下面図である。キャビティプレート22に形成された環状溝22aは、全ての圧力室群6を取り囲むように、格子状に形成されている。なお、環状溝22aは、全ての圧力室群6を取り囲むものでなくてもよい。例えば、各圧力室群6を個々に取り囲むようなものでもよい。
環状溝22aは、流路ユニット4の製造工程において、ベースプレート23と接着する際に、接着剤が圧力室10内に浸入することを規制する。これにより、後述の環状溝23a〜30aと同様、ノズル8から吐出するインクの吐出特性にばらつきが生じることを防止することができる。
なお、図10に示されるように、環状溝22aは、キャビティプレート22の下面における圧力室10が形成された領域の近傍にのみ形成されているが、プレート下面の全領域に亘って形成されていてもよい。また、直進孔135及び136や、マニホールド流路5の開口3aを取り囲むような溝が、キャビティプレート22に形成されていてもよい。
<環状溝の詳細>
以下、キャビティプレート22とノズルプレート31とに挟まれた各プレート23〜30に形成されている環状溝23a〜30aの詳細について説明する。図11は、図9(b)の一部を拡大したものである。以下の説明にあたっては、図11に示されるカバープレート30に形成された環状溝30aを代表例として説明する。他のプレート23〜29に形成された環状溝23a〜29aの態様も、環状溝30aと同様である。
カバープレート30には、図11に示されるように、個別インク流路32の一部となる多数の連通孔60が形成されている。これらの連通孔60は、それぞれノズルプレート31のノズル8と対向する位置に形成されている。従って、連通孔60は、ノズル8と同様の配列で形成されている。
また、カバープレート30には、ダンパー室65が形成されている。このダンパー室65は、カバープレート30におけるノズルプレート31に近い方の面に形成された凹部61からなる。凹部61は、開口3a(図3参照)からマニホールド流路5と対向する位置に、ハーフエッチングによって形成されている。ダンパー室65は、アクチュエータユニット21により圧力室10内のインクが加圧されたときに、圧力室10からマニホールド流路5に伝播した圧力変動を吸収するためのものである。
カバープレート30の下面には、連通孔60の開口が形成されている。連通孔60は、カバープレート30の長手方向に沿って複数列に配列されている。これらの連通孔60は、連通孔群60a、60b、60c、60d及び60eに分けて形成されている。これらの連通孔群60a〜60eは、互いに一定の間隔を空けて配置されている。各連通孔群60a〜60eは、連通孔60が配列された複数の列からなる。これらの列の数は、連通孔群60a〜60eの順に、それぞれ、2列、4列、4列、4列、2列である。
カバープレート30の下面には、上記のように配列した連通孔60の開口を取り囲む多数の環状溝30aが形成されている。環状溝30aは、後述のとおり、ハーフエッチングによって形成されている。なお、環状溝30aは、カバープレート30の上面には形成されていない。これにより、プレート両面に環状溝を形成した場合より、プレートの強度を高くすることができる。
環状溝30aは、以下のような役割を果たしている。連通孔60等が形成された各プレートは、接着剤を介して積層されている。従って、流路ユニット4の製造工程において、後述のように、接着剤を介して積層された各プレートは、熱硬化性の接着剤を硬化させるため加圧しつつ加熱される。このとき、接着剤を介して積層された各プレートを加圧することにより、連通孔60などの個別インク流路32を構成する連通路に接着剤が浸入する場合がある。環状溝30aは、このように連通孔60に侵入しようとする余剰な接着剤を逃がす役割を果たしている。
また、複数の連通孔60に接着剤が浸入する場合には、連通孔60ごとに浸入する接着剤の量にばらつきが生じることがある。このように流入量の異なる接着剤が連通孔60内で硬化すると、連通孔60内の流路抵抗にばらつきが生じてしまう。このような流路抵抗の違いにより、ノズル8から吐出するインクの吐出特性にもばらつきが生じ、インクジェットヘッド1の印字品質が低下することとなる。
一方で、環状溝30aは、各連通孔60を規則正しく個々に取り囲んでいるため、連通孔60内部に流入する接着剤の量にもばらつきが生じにくくなる。これによって、インクの吐出特性にばらつきが生じにくくなり、高い印字品質を有するインクジェットヘッド1を実現することが可能となる。
図12は、カバープレート30下面に形成された2個の隣り合う環状溝30aの平面図である。図13は、図12に示されるXIII―XIII線に沿った縦断面図である。
図12に示されるように、環状溝30aは、連通孔60の開口を個々に取り囲んでいる。なお、カバープレート30を含む各プレートには、複数の連通孔60を取り囲むように環状溝を形成してもよい。
連通孔60と環状溝30aとは、連通孔60の開口を取り囲む接着領域64によって隔てられている。接着領域64は、均一な幅を有する環状且つ帯状の領域である。流路ユニット4の製造工程において、カバープレート30の下面に接着剤が塗布されると、図13に示されるように、接着領域64に接着剤が付着する。そして、積層した各プレートが加圧された際には、接着領域64に付着した接着剤のうち余分な接着剤が、環状溝30aによって逃がされる。しかし、余分な接着剤のうちの一部は、連通孔60に侵入する場合がある。一方、接着領域64は、複数の連通孔60について、同一の形状で形成されている。これによって、複数の連通孔60に浸入する接着剤を均一に規制することができる。
なお、図13に示されるように、環状溝30aの幅B1は、接着領域64の幅B2より大きい。これにより、接着領域64に付着した接着剤を逃がすのに充分な容積が、環状溝30a内に確保されている。
<その他の溝>
図11に示されるように、カバープレート30には、連結溝30b、包囲溝30c、格子溝30d、ダンパー包囲溝30e及び格子溝30fが、ハーフエッチングにより形成されている。これらの溝も、環状溝30aと同様、連通孔60などに余剰な接着剤が侵入することを規制するために形成されている。
連結溝30bは、異なる環状溝30a同士を連通させるように形成されている。包囲溝30cは、連通孔群60a〜60eの各連通孔群に対応する複数の環状溝30a全体を取り囲むように形成されている。格子溝30dは、隣り合う連通孔群60の間に格子状に形成され、異なる包囲溝30c同士を連通させるように形成されている。ダンパー包囲溝30eは、ダンパー室65を包囲するように形成されている。格子溝30fは、カバープレート30下面における上記の溝30a〜30eが形成されていない領域のほぼ全面に亘って、格子状に形成されている。これらの溝30a〜30fは、互いに連通するように形成されている。
なお、各プレート23〜29にも、環状溝以外の溝30b〜30fのような溝が形成されている。
<環状溝連通路>
図14は、図3のXIV−XIV線に沿った縦断面図を示している。
図14(a)に示されるように、流路ユニット4には、環状溝30aなどからキャビティプレート22の開口138に連通する環状溝連通路140が形成されている。この環状溝連通路140は、積層方向に沿って一直線状に延在した直進路139aを有している。直進路139aは、各プレート22〜30を積層方向に貫通する貫通孔が相互に連通することにより構成されている。直進路139aは、キャビティプレート22の上面におけるアクチュエータユニット21と対向していない領域に、開口138を有している。直進路139aは、カバープレート30に形成された溝30b〜30fを通じて、環状溝30aと連通している。
本実施形態では、カバープレート30以外の各プレート22〜29におけるノズルプレート31に近い方の面には、環状溝が形成されている。直進路139aは、これらの各プレートに形成された環状溝22a、23a、23b、24a、24b、25a、26a、27a、28a、29a等とも、直進路139aと環状溝を連結する溝(図示せず)を介して連通している。例えば、キャビティプレート22においては、環状溝22aと直進路139aとは互いに離れた位置に形成されている。このため、環状溝22aのうち、直進路139aと最も近接した部分から直線的に分岐した溝がキャビティプレート22に形成され、この溝を介して、環状溝22aと直進路139aとが連通している。
また、キャビティプレート22を除く各プレート23〜30においては、個別インク流路32の一部となる連通孔に対して、いろいろな形態の環状溝が形成されている。これらの環状溝の中には、連通孔の形状や配設状態によっては、環状溝連通路に連通させることができないものもあるが、それ以外の環状溝は、上記のとおり、環状溝連通路に連通している。つまり、各プレート22〜30の全てのプレートにおいて、いずれかの環状溝は環状溝連通路に連通し、開口138を通じて大気と連通している。
環状溝連通路140は、流路ユニット4の製造工程において、各プレートの接着状況を検査するために使用される。すなわち、環状溝連通路140及びこれに連通する各環状溝22a〜30aには、開口138以外に外部と通じた出口がない。このため、開口138を通じて環状溝連通路140に大気圧と異なる圧力を加えることにより、環状溝連通路140内の気圧を変化させることができる。一方で、例えばカバープレート30とノズルプレート31との接着面に溝30a〜30fと、流路ユニット4の外部あるいは個別インク流路32やマニホールド流路5などのインク流路とを繋ぐ隙間がある場合には、環状溝連通路140内の空気がこの隙間から洩れる。従って、開口138から大気圧と異なる圧力を加えつつ連通路内の気圧を計測することにより、カバープレート30とノズルプレート31との間に隙間があるかどうかを検査することができる。
なお、環状溝連通路140は、以下のように構成されていてもよい。すなわち、図14(b)に示されるように、環状溝連通路140が、開口138を有する直進路139b及び139cを有している。直進路139b及び139cは、それぞれ、各プレートを積層方向に貫通する貫通孔が相互に連通することによって構成され、積層方向に一直線状に延在している。直進路139bは、マニホールドプレート26に形成された環状溝26a以外の溝26bを通じて、1つの環状溝26aと連通している。直進路139cは、直進路139bに連通した環状溝26a及び環状溝30aと連通している。これにより、環状溝30aから、直進路139c、環状溝26aを通じて開口138まで連通する環状溝連通路140が形成されている。なお、環状溝連通路140は、ノズルプレート31以外の各プレートごとに異なる位置(互いに対向しない位置)で貫通する貫通孔から構成されていてもよい。
<インクジェットヘッドの製造方法>
以下、本実施形態によるインクジェットヘッド1の製造方法について、流路ユニット4の製造工程を中心に説明する。
<製造工程全体>
製造工程全体の流れを、図15を参照しつつ説明する。
まず、流路ユニット4を構成する各プレート22〜31に、連通孔60などの連通孔、環状溝30aなどの環状溝、直進孔135a〜136b及び環状溝連通路140を構成する貫通孔を形成する(S1〜S3、孔形成工程及び環状溝形成工程)。連通孔、直進孔、貫通孔及び環状溝のそれぞれを形成する工程は、どのような順番で行ってもよい。
次に、連通孔、直進孔、貫通孔及び環状溝を形成した各プレートに、接着剤を塗布する(S4、接着剤塗布工程)。
次に、接着剤を塗布したプレートを含む各プレートを、直進孔135a及び135bを使用して位置合わせしつつ積層する(S5、積層工程)。
次に、各プレートを積層した積層体を加熱して、積層体に介在する接着剤を硬化させ、各プレートを接着する(S6)。この接着剤の加熱硬化時には、全ての接着面において、接着剤の厚みが均一になるように、且つ確実な接着がなされるように、所定の圧力が加えられる。そして、各プレートに接着剤を塗布して積層し、加熱して接着する工程を、流路ユニット4が完成するまで繰り返す(S7、NO及びS4〜S7)。本実施形態においては、後述のように、ノズルプレート31以外の各プレートを積層して接着し、その後で、ノズルプレート31を積層して接着する。流路ユニット4が完成すると、次の手順に移る(S7、YES)。
次に、流路ユニット4にアクチュエータユニット21を接着して、ヘッド本体1aを完成させる(S8)。
次に、ヘッド本体1aを、直進孔136a及び136bを使用して位置合わせしつつ、リザーバユニット70に積層する(S9)。
次に、積層したヘッド本体1a及びリザーバユニット70と、制御部80などの他の部材とを組み立てる(S10)。これにより、インクジェットヘッド1が完成する。
上記の各工程について、以下、詳説する。
<連通孔及び環状溝などの形成>
連通孔60などの連通孔、環状溝30aなどの環状溝等を形成する工程(孔形成工程及び環状溝形成工程)について説明する。
キャビティプレート22等の各プレートが金属材料からなる場合には、連通孔60などの連通孔は、エッチングによって形成される。エッチングについて、図16を参照しつつ説明する。
連通孔を形成するためのエッチングは、以下のように行われる。まず、連通孔を形成しようとするプレート102の表面に、ポジ型又はネガ型のレジスト材100を配置する。そして、プレート102に形成する連通孔の平面形状と同一形状のマスク部分又は非マスク部分を有するマスクを、レジスト材100に配置する。このとき、プレート102に形成しようとする連通孔の位置及び形状は、これらのプレート102を積層した際に相互に連通することにより、図6に示されるような個別インク流路32が形成されるような位置及び形状に設定されている。なお、マスク部分及び非マスク部分のどちらを連通孔と同一形状にするのかは、レジスト材100の型がポジ及びネガのどちらの型かによる。その後、マスク上方からプレート102に光を照射する。これにより、マスクされた部分のレジスト材100は露光し、それ以外の部分は露光しない。
次に、光を照射したプレート102を現像液に漬ける。これにより、露光したレジスト材100の露光部分及び露光していない非露光部分のどちらかが現像液に溶け出す。従って、プレート102の表面における連通孔の開口となるべき部分にはレジスト材100がなく、プレート102の表面における連通孔の開口となるべき部分以外の部分はレジスト材100によって覆われる状態になる。
次に、レジスト材100に覆われたプレート102の表面に、エッチング剤をかける。これにより、図16(a)に示されるように、プレート102における表面がレジスト材100に覆われていない非レジスト部分101は、その表面から徐々にエッチング剤に溶解していく。そして、一定時間経過後には、プレート102の非レジスト部分101は、表面から裏面に至るまで、完全に溶解する。最後に、プレート102の表面からエッチング剤及びレジスト材100を除去する。これにより、プレートを貫通する連通孔が形成される。
なお、個別インク流路32を構成する連通孔には、アパーチャ12のように、プレートを貫通しない部分を有するものがある(図6参照)。このように、プレートを貫通しない連通孔等は、ハーフエッチングによって形成される。すなわち、レジスト材で覆われたプレートにエッチング剤をかける際、エッチング剤による溶解で連通孔がプレートを完全に貫通する前にエッチングを中止し、レジスト材を除去する。これにより、プレートを貫通しない連通孔を形成することができる。
直進孔135a〜136b及び環状溝連通路140を構成する貫通孔は、エッチングによって各プレート22〜31に形成される。
また、環状溝30aなどの環状溝は、ハーフエッチングによって各プレート23〜30に形成される。さらに、連結溝30b、包囲溝30c及び格子溝30d、ダンパー包囲溝30e及び格子溝30fなどの接着剤を逃がすためのその他の溝も、ハーフエッチングによって各プレートに形成される。なお、環状溝を含めたこれらの溝は、各プレート23〜30におけるノズルプレート31に近い方の面にのみ形成される。
さらに、溝22a〜22cも、ハーフエッチングによって、キャビティプレート22に形成される。
ノズルプレート31に形成されるノズル8は、プレス加工によって形成される。この場合には、ノズルプレート31は、以下のように作製される。まず、ノズルプレート31上の複数のノズル8と同一の配列で形成された複数のパンチを有するプレス加工装置などによって、金属プレートに複数のノズル孔を形成する。次に、プレスによって金属プレートの反対側に生じた突隆部を平らに研磨する。さらに、研磨した金属プレートから、ノズルプレート31の形状を切り出すことにより、ノズルプレート31が作製される。
<接着剤塗布>
接着剤塗布工程について説明する。
エッチング等によって個別インク流路32の連通孔などが形成された各プレートには、接着剤が塗布される。接着剤には、エポキシ樹脂等の熱硬化性接着剤が用いられる。
図17は、各プレートに接着剤を塗布するための接着剤塗布装置を示している。この接着剤塗布装置は、塗布台95、ブレード96を有している。塗布台95には、フィルム91が配置されている。フィルム91には、塗布台95上において、プレートに転写するための接着剤が塗布される。ブレード96は、塗布台95の上部に配置されている。このブレードは、接着剤をフィルム91上で引き伸ばすために用いられる。
さらに、接着剤塗布装置は、ワーク設置プレート93を有している。接着剤が塗布されるプレートは、このワーク設置プレート93の下面に設置される。
また、接着剤塗布装置は、転写ローラ90及び転写ローラ移動ユニット94を有している。転写ローラ90の上端部は、ワーク設置プレート93に設置されたプレートの下面との間に僅かな隙間を空けて配置されている。転写ローラ移動ユニット94は、転写ローラ90を、ワーク設置プレート93の長手方向(図17に向かって左右方向)について移動させることができる。
さらに、接着剤塗布装置は、ガイドローラ92、巻き取りドラム98及び供給ドラム99を有している。供給ドラム99には、フィルム91が巻き取られている。供給ドラム99は、回動可能に接着剤塗布装置に設置されている。フィルム91が引き出されると、供給ドラム99が回動する。
供給ドラム99から引き出されたフィルム91の一端は、2個のガイドローラ92を介して、巻き取りドラム98に固定されている。巻き取りドラム98は、図示しないドラム駆動部によって駆動されることにより、フィルム91を巻き取っていくことができる。供給ドラム99から引き出されたフィルム91は、2個のガイドローラ92の間で、塗布台95の上部と、転写ローラ90の上端部を通っている。
このような構成を有する接着剤塗布装置を使用することにより、各プレートに、以下のような手順で接着剤が塗布される。
まず、転写ローラ90を塗布台95から最も離れた位置に移動させる。そして、ワーク設置プレート93にプレートを設置する。ここで、ワーク設置プレート93には、プレートにおける環状溝が形成された面が下側、すなわち、転写ローラ90がある側を向くように、各プレートが設置される。図17においては、例として、サプライプレート25が設置された様子が図示されている。
次に、塗布台95上部を通るフィルム91に、接着剤104が置かれる。そして、巻き取りドラム98を駆動してフィルム91を巻き取る。このとき、フィルム91上に置かれた接着剤104は、ブレード96と塗布台95との隙間を通り、所定の厚さに引き伸ばされる。
次に、フィルム91上に引き伸ばされた接着剤がワーク設置プレート93の真下に位置するまで、巻き取りドラム98を駆動してフィルム91を巻き取る。
次に、転写ローラ90を、図17の矢印で示されるように、ワーク設置プレート93に設置されたサプライプレート25の一端から他端まで移動させる。これにより、転写ローラ90の上端部によって、フィルム91が順にサプライプレート25の下面に押し付けられる。これによって、フィルム91の上面に引き伸ばされた接着剤を、サプライプレート25における環状溝25aを形成した面に均一に塗布することができる。
このようにして、各プレート22〜30における環状溝22a〜30aを形成した面にのみ、接着剤を塗布する。
<積層工程>
接着剤を塗布した各プレートを積層する積層工程について説明する。図18〜図20は、積層工程における各段階を示している。積層は、次の手順で行われる。
各プレートを積層する積層台112には、位置合わせ用の位置合わせピン111a及び111bが固定されている。位置合わせピン111a及び111bは、各プレートの直進孔135a及び135bの離隔距離と同じ距離だけ離隔して配置されている。
まず、図18に示されるように、位置合わせピン111a及び111bを直進孔135a及び直進孔135bに通しつつ、カバープレート30を積層台112に置く。このとき、カバープレート30における環状溝30aを形成した面が積層台112側を向くように、カバープレート30を積層台112の上に置く。なお、このカバープレート30には、接着剤は塗布されていない。
次に、接着剤を塗布したマニホールドプレート29を、位置合わせピン111a及び111bを直進孔135a及び直進孔135bに通しつつ、カバープレート30に積層する。このとき、マニホールドプレート29における環状溝29aを形成した面がカバープレート30側を向くように、マニホールドプレート29をカバープレート30に積層する。
上記と同様に位置合わせしつつ、接着剤を塗布した各プレート22〜28をマニホールドプレート29上に順に積層していく。このとき、各プレートにおける環状溝22a〜28aを形成した面がマニホールドプレート29側を向くように、各プレートをマニホールドプレート29に積層する。図19は、このように各プレート22〜30を積層し終えた状態を示している。このとき、各プレートにおける環状溝22a〜30aを形成した面は、図6に示されるように、同一の方向(図6におけるノズルプレート31の方向)を向いている。
<積層したプレートの加熱>
接着剤を塗布して積層した各プレート22〜30の熱硬化性接着剤を硬化させるために、積層した各プレートを加圧しつつ加熱する工程について説明する。
図20は、積層した各プレートを加熱する様子を示している。各プレートの加熱には、上ヒータ121及び下ヒータ122を用いる。まず、各プレートを積層した積層体110を加熱台123上に置き、さらに、その加熱台123を下ヒータ122上に置く。そして、上ヒータ121を積層体121に押し付け、両ヒータにより積層体110を加熱する。これにより、積層体110を、積層方向に加圧しつつ加熱することができる。このように積層体110を加熱することにより、各プレート22〜30の接着を完了することができる。
<ノズルプレートの積層>
接着を完了した積層体110にさらにノズルプレート31を接着する工程について説明する。
接着を完了した積層体110には、さらに接着剤が塗布され、積層台112上に置かれたノズルプレート31に積層される。図21は、積層体110とノズルプレート31とを積層した状態を示している。そして、積層した積層体110とノズルプレート31とを加熱して、接着を完了させる。このとき、接着剤を塗布する手順及び積層する手順については、上述のとおりである。なお、接着剤を塗布する際には、積層体110に含まれるカバープレート30における環状溝30aを形成した面に接着剤が塗布される。
このようにして積層体110とノズルプレート31との接着が完了すると、流路ユニット4が完成する。
完成した流路ユニット4の内部では、直進孔135a及び135bを用いた位置合わせによって、各プレートに形成された連通孔が相互に連通する。これによって、図3及び図6に示されるような個別インク流路32、マニホールド流路5及び副マニホールド流路5aが、流路ユニット4内部に形成される。また、各プレートに形成された環状溝30a等の環状溝は、図6に示されるように、各プレートにおけるノズルプレート31に近い方の面にのみ配置されている。
<ヘッド本体の完成>
上記のように完成した流路ユニット4上にアクチュエータユニット21を貼り付けることにより、ヘッド本体1aが完成する。このとき、アクチュエータユニット21の個別電極35と流路ユニット4の圧力室10とが対向するように(図5参照)位置合わせしつつ、アクチュエータユニット21を流路ユニット4上に配置する。
<リザーバユニットへの積層>
完成したヘッド本体1aとリザーバユニット70とを積層する工程について説明する。
リザーバユニット70は、上記のとおり、矩形の平面形状を有する6枚のプレート71〜76が積層した積層構造を有している。リザーバユニット70は、貫通孔71aや、インク溜まり72aなどが形成されたプレート71〜76を積層することによって作製される。リザーバユニット70には、ヘッド本体1aに形成された直進孔136a及び136bと対応する図示しない位置合わせ孔が形成されている。この位置合わせ孔は、ヘッド本体1a側の直進孔136a及び136bとの間で位置を合わせたとき、リザーバユニット70の貫通孔76aとヘッド本体1aの開口3aとが連通するような位置に配置されている。
図22は、ヘッド本体1aとリザーバユニット70とを位置合わせしつつ積層している様子を示している。積層の手順は以下のとおりである。なお、リザーバユニット70とヘッド本体1aとの積層に先立って、FPC50とアクチュエータユニット21の個別電極35とが接続されるが、図面を簡略化するために、図22にはFPC50が図示されていない。
まず、ヘッド本体1aにおけるリザーバユニット70との積層面に接着剤を塗布する。そして、積層台137に固定された位置合わせピン131a及び131bに直進孔136a及び136bを通しつつ、ヘッド本体1aを積層台137上に配置する。次に、リザーバユニット70に形成された位置合わせ孔を位置合わせピン131a及び131bに通しつつ、ヘッド本体1a上にリザーバユニット70を積層する。
これにより、リザーバユニット70の貫通孔76aとヘッド本体1aの開口3aとが連通する(図2及び図3参照)。そして、リザーバユニット70内のインク流路を通じ、リザーバユニット70の貫通孔71aと接続されたインクタンクとヘッド本体1aのマニホールド流路5とを連通するインク流路が形成される。
なお、リザーバユニット70の位置合わせ孔は、リザーバユニット70を貫通していなくてもよい。この場合には、位置合わせ作業において、リザーバユニット70の厚さとヘッド本体1aの厚さとを合わせた長さよりも短い位置合わせピン131が使用される。
また、ヘッド本体1aの直進孔136も、ヘッド本体1aを貫通していなくてもよい。この場合には、リザーバユニット70の位置合わせ孔がリザーバユニット70を貫通している必要がある。また、位置合わせ作業において、リザーバユニット70の厚さとヘッド本体1aの厚さとを合わせた長さよりも短い位置合わせピン131が使用される。さらに、リザーバユニット70の位置合わせ孔に位置合わせピン131を通した後、その上にヘッド本体1aが積層される。
<インクジェットヘッドの完成>
上記のとおり積層されたヘッド本体1a及びリザーバユニット70や、制御部80、上カバー51及び下カバー52等の部材を組み立てることにより、インクジェットヘッド1が完成する。
<変形例>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
例えば、本発明による別の実施形態として、上記の実施形態と異なり、キャビティプレート22におけるノズルプレート31から遠い方の面(アクチュエータユニット21の貼り付け面)には溝を形成しないものでもよい。また、上記の実施形態と異なり、各プレートの接着に熱硬化性接着剤以外の接着剤を用いてもよい。さらに、上記の実施形態では、インクジェットヘッドのインク吐出方式として、いわゆるピエゾ方式を用いているが、サーマル方式など、その他の方式を用いてもよい。