JP4220049B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
空気入りラジアルタイヤは、通常、タイヤ径方向に走るカーカスとタイヤ周方向に走るベルトとを備えて構成され、更に、タイヤのx,y,z各方向における主たる剛性補強材として、ビードワイヤの外周側に硬質ゴム製のビードフィラーを備えている。
【0003】
近年、タイヤの高性能化に伴ない、図7に示すように、ビードフィラー100の外側面に、スチール等よりなるビード補強層102を配設することがなされている。
【0004】
ところで、省資源が各方面から言われるようになり、タイヤも、薄肉・軽量化による材料使用量の低減および転がり抵抗の低減(燃費向上)の要求が高まっている。
【0005】
しかしながら、上記従来の構造のままでタイヤの軽量化を図ると、タイヤ全体の剛性が不足することになり、上記要求に応えるためにタイヤの運動性能、特に操縦安定性を損ねるという問題がある。
【0006】
すなわち、上記従来の構造においては、ビード補強層102がビード部12のボリュームを高めており、また、このビード補強層102がスチールよりなる場合その大きな比重によりタイヤ重量を大きくする。さらに、ゴム製のビードフィラー100とスチール等よりなるビード補強層102とを組合せているので、両者の剛性バランスをとるためにビードフィラー100のボリュームが大きくなってしまう。これらが原因となり、タイヤ諸特性を維持しながら軽量化を図ることが困難となっている。
【0007】
一方、上記ビード補強層を除去するために、ビードフィラーに金属又は非金属のコードを周方向に積層させて埋設させる構成が、特開昭62−234704号公報に開示されている。かかる構成によれば、ビード部のボリュームを増加させることなく剛性を高めることができるので、上記従来の構造でタイヤを軽量化した場合に生じる操縦安定性の悪化を低減することができる。
【0008】
しかしながら、単にビードフィラーにコードを積層埋設させたのみでは、タイヤの撓みを作りにくく、乗心地が悪化してしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、乗心地を犠牲にすることなく操縦安定性を維持させながら、軽量化を図ることのできる空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、ビードワイヤの外周側に配されたビードフィラーに、タイヤ周方向に走る有機繊維コードが埋設され、前記有機繊維コードの配設密度をタイヤ径方向外方ほど小さくすることにより、前記ビードフィラーの単位断面積当りの引張モジュラスをタイヤ径方向外方ほど小さくしたことを特徴とする。
【0011】
このようにビードフィラーにタイヤ周方向に走る有機繊維コードを埋設させることにより、ゴムのみからなる場合に比べ、剛性が大幅に向上する。そのため、小さなボリュームで大きな剛性を得ることができる。即ち、軽量化した場合でもビード部の剛性を維持することができる。しかも、その単位断面積当りの引張モジュラスが径方向外方ほど小さいので、ビードフィラーの剛性が径方向外方ほど低減して、タイヤを撓みやすくすることができる。以上より、乗心地を犠牲にすることなく操縦安定性を維持させながら、軽量化を図ることができる。
【0014】
有機繊維コードの配設密度を変化させる場合、前記ビードフィラーが、有機繊維コードの埋設されたゴム製の紐状物をタイヤ周方向に積層巻回してなり、タイヤ径方向外方の領域で前記紐状物の間にゴム層を介在させることが好ましい。また、前記ビードフィラーが、有機繊維コードの埋設本数の異なる複数のゴム製の紐状物をタイヤ周方向に順次積層巻回してなり、タイヤ径方向外方の紐状物ほど有機繊維コードの埋設本数が少ないものを用いてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の1実施形態に係る空気入りラジアルタイヤについて図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るラジアルタイヤ10の右側半分の断面図である。図において、12はビード部、14はサイド部、16はショルダー部、18はトレッド部、20はカーカス、22はベルトを示し、タイヤ10は、左右1対のビード部12、サイド部14及びショルダー部16と、両ショルダー部16間にまたがるトレッド部18とよりなる。なお、図中、Rはタイヤ10のビード部12が配されるリムを示している。
【0017】
ビード部12は、環状のワイヤよりなるビードワイヤ24とその径方向外方に配された断面略三角形状のビードフィラー26とを備える。
【0018】
カーカス20は、繊維又はスチールコードをタイヤ幅方向センター(赤道)に対してほぼ90°の角度で配列した1枚又は複数枚のカーカスプライよりなり、トレッド部18の径方向内側に配されて、そこからショルダー部16及びサイド部14を経て、左右のビード部12において、ビードワイヤ24及びビードフィラー26の周りに内側から外側に向って巻上げられて係止されている。20aがこの巻上げられたカーカス20のターンアップ部である。
【0019】
前記ビードフィラー26は、硬質ゴムに有機繊維コード29を埋設せしめた複合体よりなる。この有機繊維コード29は、タイヤ周方向に走り、径方向に積層した状態で埋設されている。かかる有機繊維コード29としては、ナイロン,ポリエステル,アラミド等の有機繊維の単独若しくは撚合せた複合コードを用いることができる。
【0020】
ビードフィラー26は、図2に示すような1又は複数本の有機繊維コード29が埋設されたゴム30製の紐状物28を1又は複数種用いて、これらを図3に示すようにタイヤ周方向に積層巻回して構成されている。このように周方向に螺旋状に巻回する構成は、有機繊維コード29の切断端を少なくして耐久性を向上させる点、及びコード配設角度をほぼ0°としてタイヤ縦剛性kzの過度なる上昇を抑制するという点で有効である。なお、このビードフィラー26の高さ、即ち、ビードワイヤ24の外周面から径方向外端までの距離は、25mm以上であることが、剛性を確保する上で好ましい。
【0021】
そして、本実施形態において、ビードフィラー26は、その単位断面積当りの引張モジュラスが径方向外方ほど小さく構成されている。以下に、その具体例を説明する。
【0022】
図4は、径方向外方ほど引張モジュラスの小さい有機繊維コード29を埋設せしめた構成例(但し、参考例である。)を示している。
【0023】
この例では、ビードフィラー26は、2本の有機繊維コード29をゴム30に埋設してなる紐状物28を3種用いて、これらを、図3,4に示すように、タイヤ周方向に順次積層巻回することにより形成されている。その際、径方向外方に巻回される紐状物28ほど引張モジュラスの小さい有機繊維コード29で構成したものを用いている。
【0024】
詳細には、図4に示すように、ビードフィラー26をその径方向において3つの領域に分け、ビードワイヤ24の直上に配される下部領域Aを高モジュラス領域、その径方向外方に位置する中央領域Bを中モジュラス領域、さらにその外方に位置する上部領域Cを低モジュラス領域とする。そして、下部領域Aを構成する紐状物28aには、有機繊維コード29として、アラミドコード等の引張モジュラスの高いコードを用い、中央領域Bを構成する紐状物28bには、アラミドとナイロン若しくはポリエステルとの複合コードといった引張モジュラスのより小さいコードを用い、さらに上部領域Cを構成する紐状物28cには、ナイロンコード等のさらに引張モジュラスの小さいコードを用いる。なお、図中、34はタイヤ成形時における空気の抱込みを防止するための環状のゴム部材を示している。
【0025】
図5及び図6は、いずれも有機繊維コード29の配設密度をビードフィラー26の径方向外方ほど小さくした構成例を示している。
【0026】
図5に示す例では、ビードフィラー26が、3本の有機繊維コード29をゴム30に埋設してなる1種の紐状物28を、タイヤ周方向に積層巻回してなり、その巻回時に、ビードフィラー26の径方向外方領域において紐状物28の積重ねられる層間にゴム層32を介在させている。
【0027】
詳細には、ビードフィラー26をその径方向において3つの領域に分け、ビードワイヤ24の直上に配される下部領域Aを高密度領域、その径方向外方に位置する中央領域Bを中密度領域、さらにその外方に位置する上部領域Cを低密度領域とする。そして、下部領域Aでは、紐状物28が直接積み重ねられるように巻回し、中央領域Bでは、ゴム層32を1層介在させて巻回し、上部領域Cでは、ゴム層32を更にもう1層、合計2層介在させて巻回することにより、径方向外方ほど繊維密度の低いビードフィラー26を形成している。
【0028】
図6に示す例では、有機繊維コード29の埋設本数の異なる3種の紐状物28を用いて、これらを埋設本数の多いものから順次タイヤ周方向に積層巻回することによりビードフィラー26が形成されている。詳細には、上記下部領域Aでは3本、中央領域Bでは2本、上部領域Cでは1本の有機繊維コード29がそれぞれ埋設された同一幅の紐状物28をそれぞれ巻回することにより、径方向外方ほど繊維密度の低いビードフィラー26を形成している。
【0029】
なお、このように有機繊維コード29の配設密度を径方向外方ほど小さくする場合、図6に示す埋設本数の異なる複数種の紐状物28を用いて構成するよりも、図5に示す1種の紐状物28を用いてゴム層32を介在させる方が、有機繊維コード29の切断端を少なくすることができる点より好ましい。
【0030】
また、以上の構成例の如く、ビードフィラー26が紐状物28の巻回体である場合、かかるタイヤを製造するに際しては、予め紐状物28を所定形状に巻回しておいて、タイヤ成形時にこの巻回体をビードワイヤ24の外周に配してビードフィラー26を形成しても、あるいは、タイヤ成形時にビードワイヤ24の外周に紐状物28を直接巻きつけてビードフィラー26を形成してもよい。
【0031】
なお、以上の構成例においては、いずれも紐状物28として扁平な帯状のものを用いて、タイヤ幅方向に重ねずに径方向にのみ積み上げる構成としたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、図2(b)に示す1本の有機繊維コード29が埋設された断面円形の紐状物28を用いて、タイヤ幅方向及び径方向に適宜に配しながら周方向に巻回する構成としてもよい。
【0032】
以上説明した本実施形態のラジアルタイヤ10であると、ビードフィラー26にタイヤ周方向に走る有機繊維コード29を埋設させているので、ゴムのみからなる場合に比べて、剛性が大幅に向上する。そのため、小さなボリュームで大きな剛性を得ることができるので、ビード部12の剛性を維持しながら、その低ボリューム化と軽量化とを達成することができる。しかも、その単位断面積当りの引張モジュラスが径方向外方ほど小さいので、ビードフィラー26の剛性が径方向外方ほど低減し、そのため、タイヤを撓みやすくして乗心地を改善することができる。以上より、乗心地を犠牲にすることなく操縦安定性を維持しながら、タイヤの軽量化を図ることができる。
【0033】
なお、このように単位断面積当りの引張モジュラスをタイヤ径方向外方ほど小さくする構成としては、上記のようにビードフィラー26を径方向に複数の領域に分けて段階的に変化させても、あるいは、例えば、厚みが漸次変化するゴム層を紐状物28とともに巻回することにより、ビードフィラー26の径方向で漸次変化させてもよい。
【0034】
【実施例】
上述した効果を確かめるために、タイヤサイズを205/55R16として、以下のような実施例を行なった。
【0035】
実施例1〜3
表1に示すタイヤ構成により実施例1〜3の各タイヤを作成した。各タイヤにおけるビードフィラー26の構造は以下のとおりである。なお、カーカスプライとしては、1500デニールのポリエステルの2本撚りコードの打込み本数26本/インチのものを用いた。
【0036】
実施例1(参考例):図4に示す構造。下部領域Aの高さを0〜12mm、中央領域Bの高さを12〜21mm、上部領域Cの高さを21〜30mmに設定した。紐状物28は、幅4.5mm、厚み1.5mmのものを用いた。そして、各領域において巻回する紐状物28の有機繊維コード29として、下部領域Aでは、1500デニールのアラミドの2本撚りコード(引張モジュラス=40kN/mm2)、中央領域Bでは、840デニールのナイロン66と1500デニールのアラミドとを撚合せたコード(引張モジュラス=8kN/mm2)、上部領域Cでは、1260デニールのナイロン66の2本撚りコード(引張モジュラス=4kN/mm2)を用いた。
【0037】
実施例2:図5に示す構造。各領域の高さ及び紐状物28の幅及び厚みは実施例1と同様。有機繊維コード29は、1260デニールのナイロン66の2本撚りコード(引張モジュラス=4kN/mm2)を用いた。下部領域Aでは、紐状物28のみで巻回し、中央領域Bでは、厚み1.5mmの同一幅を有するゴム層32を1層介在させて巻回し、上部領域Cでは、該ゴム層32を2層介在させて巻回した。
【0038】
実施例3:図6に示す構造。各領域の高さ及び紐状物28の幅及び厚みは実施例1と同様。有機繊維コード29は、1260デニールのナイロン66の2本撚りコード(引張モジュラス=4kN/mm2)を用いた。
【0039】
実施例1〜3のタイヤにつき、タイヤ重量を測定し、2000ccのFR車に装着して、操縦安定性、乗心地性及びロードノイズ性能を測定した。結果を表1に示す。なお、操縦安定性、乗心地性及びロードノイズ性能は、実車走行時における官能評価であり、表1には、後記の比較例1のタイヤの値を100としたときの指数表示で表わしている。数値は大きい方が性能が良いことを示す。
【0040】
【表1】
比較例1〜3
表1に示すタイヤ構成により比較例1〜3の各タイヤを作成し、実施例1〜3と同様にしてタイヤの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
なお、比較例1のタイヤは、軽量化されていない従来の一般的なタイヤであり、ビードフィラー構造としては、図8に示す構造を用いた。即ち、ビードフィラー100として、底辺7mm、高さ35mmの三角形の断面構造を有する硬質ゴム部材を用い、その外側面に2+2×0.25mmのスチールコードよりなるビード補強層102を、角度20°、打込み本数19本/インチで、45mmの高さまで配した。
【0042】
比較例2のタイヤは、比較例1と同一のビードフィラー構造とし、カーカスのプライ枚数を、比較例1の2枚から1枚に減じて軽量化を図ったタイヤである。
比較例3のタイヤは、図9に示すビードフィラー構造を有する。すなわち、実施例2で用いた紐状物28をビードワイヤ24の外周に巻回して30mmの高さまで積み上げたものであり、ビードフィラーの単位断面積当り引張モジュラスが径方向で一定のものである。
【0043】
表1に示すように、実施例1〜3のタイヤは、比較例1のタイヤに比べて大幅な軽量化が図られている。
【0044】
そして、比較例2のタイヤが比較例1に対し操縦安定性が大きく低下していたのに対して、実施例1〜3ではその低下幅が小さい。
【0045】
また、実施例1〜3のタイヤでは、比較例3のタイヤに比べて乗心地性が改善されていた。すなわち、比較例3のタイヤは、乗心地性が比較例2に比べて大きく低下しており、軽量化していない比較例1のタイヤよりも悪化していた。これに対して、実施例1〜3のタイヤは、比較例2と同等又はやや低下する程度であり、比較例1よりも優れていた。
【0046】
以上のように、実施例1〜3のタイヤでは、比較例2のタイヤに対して、乗心地を犠牲にすることなく操縦安定性を向上させることができる。
【0047】
また、実施例1〜3のタイヤは、比較例2,3のタイヤに対してロードノイズ性能が改善されていた。
【0048】
【発明の効果】
本発明の空気入りラジアルタイヤであると、ビードフィラーにタイヤ周方向に走る有機繊維コードを埋設させ、このビードフィラーの単位断面積当りの引張モジュラスを径方向外方ほど小さくすることにより、乗心地を犠牲にすることなく操縦安定性を維持させながら、タイヤの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る空気入りラジアルタイヤの右側半分の断面図である。
【図2】紐状物の断面斜視図であり、(a)は3本の有機繊維コードが埋設された例、(b)は1本の有機繊維コードが埋設された例をそれぞれ示している。
【図3】本実施形態におけるビードフィラーの側面図である。
【図4】実施例1のビードフィラーの断面構造を示す模式図である。
【図5】実施例2のビードフィラーの断面構造を示す模式図である。
【図6】実施例3のビードフィラーの断面構造を示す模式図である。
【図7】従来の空気入りラジアルタイヤのビード部の断面図である。
【図8】比較例1,2のビードフィラーの断面構造を示す模式図である。
【図9】比較例3のビードフィラーの断面構造を示す模式図である。
【符号の説明】
10……空気入りラジアルタイヤ
12……ビード部
24……ビードワイヤ
26……ビードフィラー
28……紐状物
28a…下部領域を構成する紐状物
28b…中央領域を構成する紐状物
28c…上部領域を構成する紐状物
29……有機繊維コード
32……ゴム層
A……下部領域
B……中央領域
C……上部領域
Claims (3)
- ビードワイヤの外周側に配されたビードフィラーに、タイヤ周方向に走る有機繊維コードが埋設され、前記有機繊維コードの配設密度をタイヤ径方向外方ほど小さくすることにより、前記ビードフィラーの単位断面積当りの引張モジュラスをタイヤ径方向外方ほど小さくしたことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ビードフィラーが、有機繊維コードの埋設されたゴム製の紐状物をタイヤ周方向に積層巻回してなり、タイヤ径方向外方の領域で前記紐状物の間にゴム層を介在させることにより、前記有機繊維コードの配設密度をタイヤ径方向外方ほど小さくしたことを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ビードフィラーが、有機繊維コードの埋設本数の異なる複数のゴム製の紐状物をタイヤ周方向に順次積層巻回してなり、タイヤ径方向外方の紐状物ほど有機繊維コードの埋設本数が少ないものを用いることにより、前記有機繊維コードの配設密度をタイヤ径方向外方ほど小さくしたことを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
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