先ず、図1から図15を参照し、この実施例に係る水中スクータが騎乗型であるときの構成について説明する。
図1は、この実施例に係る水中スクータ(騎乗型)の平面図である。また、図2は、図1に示す水中スクータの左側面図であり、図3は、図1に示す水中スクータの正面図である。
図1から図3において、符号10は水中スクータを示す。先ず、水中スクータ10の構成について概説すると、水中スクータ10は、円筒状に形成されてその長手方向が水中スクータ10の進行方向に対して平行となるように配置された騎乗型用メインフレーム12(第1のメインフレーム)と、騎乗型用メインフレーム12において進行方向前方に取り付けられた卵型の水密(気密)容器14と、水密容器14の内部に収容された内燃機関(駆動源。図1から図3で図示せず。以下「エンジン」という)と、騎乗型用メインフレーム12において進行方向後方に配置され、エンジンで駆動されて回転して水中スクータ10を推進させるプロペラ16と、騎乗型用メインフレーム12の内部に挿通されてエンジンの出力をプロペラ16に伝達する騎乗型用ドライブシャフト(第1のドライブシャフト。図1から図3で図示せず)と、水密容器14に取り付けられた深度調整機構18と、騎乗型用メインフレーム12において進行方向後方に取り付けられた操舵機構20と、騎乗型用メインフレーム12において水密容器14とプロペラ16の間に配置された第1のエアタンク22と第2のエアタンク24を備える。
次いで、上記した各構成について詳説する。
図4は、図1のIV−IV線拡大断面図である。図示の如く、騎乗型用メインフレーム12の内部は区画壁によって分割され、5つの通路が形成される。各通路は、騎乗型用メインフレーム12の先端から後端まで連続する1つの空間として形成される。5つの通路のうち、中心に位置する円筒状の第1の通路12aには、前記した騎乗型用ドライブシャフト(符号26で示す)が挿通される。これに対し、第1の通路12aの外周を分割して形成された第2から第5の通路12b,12c,12d,12eは、後述の如く、空気や排出ガスの流路となる。
騎乗型用メインフレーム12の両側面には、断面視において略Cの字状(あるいはその左右対称の断面形状)を呈する溝部28L,28Rが形成される。図2に示すように、溝部28L(およびその裏面に位置する溝部28R)は、騎乗型用メインフレーム12の長手方向(進行方向)に所定の長さを有するように形成される。
図4の説明を続けると、左右の溝部28L,28Rには、それぞれ断面視において略Hの字状を呈するスライダ30L,30Rがスライド自在に嵌められる。即ち、スライダ30L,30Rは、溝部28L,28Rの上端と下端に形成された突起をレールとして、スライド自在に構成される。
スライダ30L,30Rには、それぞれベルト32L,32Rが設けられる。前記した第1のエアタンク22と第2のエアタンク24は、ベルト32L,32Rを介してそれぞれスライダ30L,30Rに装着される。これにより、第1のエアタンク22と第2のエアタンク24は、騎乗型用メインフレーム12の長手方向(即ち、水中スクータ10の進行方向)にスライド自在に装着される。
図1から図3の説明に戻ると、第1のエアタンク22は、バルブ36を介してレギュレータ38に接続される。レギュレータ38は、ホース40を介して騎乗型用メインフレーム12の内部(具体的には第2の通路12b)に接続される。一方、第2のエアタンク24は、バルブ42を介してレギュレータ44に接続される。レギュレータ44は、ホース46を介して騎乗型用メインフレーム12の内部(具体的には、第3の通路12c)に接続される。尚、第1および第2のエアタンク22,24の容積は、例えば12リットル程度であり、その内部には空気が高圧(例えば200気圧程度)に圧縮されて封入される。
第1のエアタンク22に封入された空気は、レギュレータ38で所定の圧力(例えば10気圧程度)まで減圧された後、ホース40を介して騎乗型用メインフレーム12の第2の通路12bに供給される。一方、第2のエアタンク24に封入された空気は、レギュレータ44で前記した所定の圧力(10気圧程度)まで減圧された後、ホース46を介して騎乗型用メインフレーム12の第3の通路12cに供給される。
図5は、図1のV−V線拡大断面図である。また、図6は、図2のVI−VI線拡大断面図である。
図5および図6に示すように、水密容器14は、進行方向前方からバンパー14a、燃料タンク14bおよびエンジン収容部14cの3つの部材から構成される。
エンジン収容部14cには、エンジンEが収容される。エンジンEは、例えば排気量30cc程度の単気筒火花点火式ガソリンエンジンである。また、エンジン収容部14cの上部には、上方へと突出するシュノーケル48が設けられ、かかるシュノーケル48を介してエンジン収容部14cの内部と外部(大気)とが連通される。
エンジン収容部14cの前方には、ボルト50によって燃料タンク14bが取り付けられ、燃料タンク14bには、エンジンEに供給されるべきガソリン燃料が貯留される。また、燃料タンク14bの前面には給油口52が穿設され、給油口52は、キャップ54によって封止される。
燃料タンク14bの前方には、前記キャップ54を被覆するようにバンパー14aが取り付けられる。バンパー14aは、水中スクータ10が外部と衝突したときに変形して衝撃を緩和できるように、他の部材よりも硬度の小さい材料で形成される。また、バンパー14aは、燃料タンク14bへのガソリン燃料の供給を容易に行うことができるように、工具を使用することなく着脱自在とされる。
また、エンジン収容部14cの後方には、ボルト56によって接続部材60が取り付けられる。接続部材60は、騎乗型用メインフレーム12の直径と略同径の内径を有する円筒部60aを備える。
図7は、図5のVII−VII線拡大断面図である。図7に示すように、騎乗型用メインフレーム12の先端付近には、ナット62が収容される。図5から図7に示すように、接続部材60の円筒部60aに騎乗型用メインフレーム12の先端を挿入し、ちょうボルト64をナット62に螺合させることにより、騎乗型用メインフレーム12の前方に接続部材60を介して水密容器14が取り付けられる。尚、ナット62は、図7に示す如く周囲を区画壁で囲われ、その回転が抑止される。即ち、水密容器14の取り付けに使用されるちょうボルト64は、操縦者によって手動で(工具などを使用することなく)操作自在とされる。
図5および図6の説明に戻ると、騎乗型用メインフレーム12の第2の通路12bは、接続部材60に形成された連通路60b(図6に示す)を介し、水密容器14内に配置されたレギュレータ68に接続される。また、第3の通路12cは、接続部材60の内部に形成された連通路(図示せず)と水密容器14内に設けられた流路70を介し、水密容器14の外部へと連続するホース72に接続される。ホース72の先端には、レギュレータ74が接続され、レギュレータ74には、さらにマウスピース76(いずれも図1および図2に示す)が接続される。
また、騎乗型用メインフレーム12の第4の通路12dは、接続部材60に形成された連通路60cを介してエンジンEの排気管78に接続される。尚、図示は省略するが、第5の通路12eは、接続部材60に形成された連通路を介して水密容器14の内部と連通される。
エンジンEは、図示しない吸気管を備える。吸気管の入口付近にはエアフィルタが設けられると共に、その下流にはスロットルボディ(いずれも図示せず)が配置される。スロットルボディにはスロットルバルブが収容されると共に、その上流側にはキャブレタ・アシー(いずれも図示せず)が設けられる。キャブレタ・アシーには燃料管80(図5に示す)が接続される。燃料管80は燃料タンク14bの内部に連通されると共に、その先端には燃料ポンプ82が接続される。
また、エンジンEのクランクシャフトES(図5に示す)の一端には、遠心クラッチ84が接続され、遠心クラッチ84の出力側には減速機構86が接続される。
図8は、図5の部分拡大図である。図8に示す如く、減速機構86の出力軸(ギヤ)86Sの中心には、多角形(断面視において多角形)の穴部86Saが形成される。騎乗型用ドライブシャフト26の前端には、かかる穴部86Saに挿入されて嵌合されるべき断面視多角形の前端挿入部26aが形成される。即ち、減速機構の出力軸に形成された穴部86Saに騎乗型用ドライブシャフトの前端挿入部26aを挿入してそれらを嵌合させることにより、減速機構86の出力軸が騎乗型用ドライブシャフト26の前端に接続される。尚、水中スクータ10にはエンジンEの回転数を調節する図示しないスロットル装置が設けられ、遠心クラッチ84は、エンジンEの回転数が上昇させられたときにその動力を伝達する。
図5および図6の説明に戻ると、クランクシャフトESの他端には、リコイルスタータ88が取り付けられる。リコイルスタータ88のスタータロープ90は、シュノーケル48の内部に挿通されると共に、その先端にはスタータグリップ92が設けられる。スタータグリップ92は、シュノーケル48の上端に着脱自在に構成される。具体的には、スタータグリップ92は、シュノーケル48の上端にその開口部を水密に封止するように装着されると共に、前記上端から取り外し自在に構成される。即ち、エンジンEを始動させる際はシュノーケル48の上端からスタータグリップ92を取り外し、スタータロープ90を引き出す。エンジンEを始動した後は、シュノーケル48から水が浸入するのを防止すべく、シュノーケル48の上端にスタータグリップ92を取り付けてその開口部を封止する。
図9は、シュノーケル48の上端付近の拡大図であり、図10は図9のX−X線断面図である。図9および図10に示す如く、シュノーケル48の上端には、取り外したスタータグリップ92(図10に破線で示す)を係止すべき切り欠き部48aが設けられる。
ここで、第1のエアタンク22から所定の圧力に減圧されて騎乗型用メインフレーム12の第2の通路12bに供給された空気は、連通路60bを介してレギュレータ68に供給されると共に、レギュレータ68で水密容器14の内圧まで減圧された後、水密容器14の内部(具体的にはエンジン収容部14c)に供給される。
水密容器14に供給された空気は、エアフィルタを介して吸気管に吸入される。キャブレタ・アシーは、吸入された空気にガソリン燃料を噴射して混合気を生成する。生成された混合気は、エンジンEの燃焼室(図示せず)に吸入されて燃焼させられる。混合気の燃焼によって生じた排出ガスは、排気管78および連通路60cを介して騎乗型用メインフレーム12の第4の通路12dに流入する。
一方、第2のエアタンク24から所定の圧力に減圧されて騎乗型用メインフレーム12の第3の通路12cに供給された空気は、前記した連通路と流路70、さらにはホース72を介してレギュレータ74に供給される。レギュレータ74は、図示しないダイヤフラムなどを備え、マウスピース76を咥えた操縦者(ダイバー)によって吸気動作が行われたとき、周囲の水圧まで減圧した空気を操縦者に供給する。
このように、水中スクータ10にあっては、騎乗型用メインフレーム12に第1のエアタンク22を取り付け、第1のエアタンク22に封入された空気をエンジンEの燃焼用の空気として供給するようにした。また、騎乗型用メインフレーム12に第2のエアタンク24を取り付け、第2のエアタンク24に封入された空気を操縦者の呼吸用の空気として供給するようにした。
図11は、図1のXI−XI線拡大断面図である。また、図12は、図11の部分拡大図である。
図11および図12に示す如く、プロペラ16のプロペラシャフト16Sには、断面視多角形の穴部16Saが形成される。また、騎乗型用ドライブシャフト26の後端には、かかる穴部16Saに挿入されて嵌合されるべき断面視多角形の後端挿入部26bが形成される。即ち、プロペラシャフトに形成された穴部16Saに騎乗型用ドライブシャフトの後端挿入部26bを挿入してそれらを嵌合させることにより、騎乗型用ドライブシャフト26の後端がプロペラ16に接続される。
このように、水中スクータ10は、騎乗型用メインフレーム12の前方に配置されたエンジンEの出力を前記した遠心クラッチ84、減速機構86および騎乗型用メインフレーム12の内部に挿通された騎乗型用ドライブシャフト26を介して騎乗型用メインフレーム12の後方に配置されたプロペラ16に伝達し、よってプロペラ16を駆動して水上または水中を航行する。
また、騎乗型用メインフレーム12の第4の通路12dの後端には、第1のワンウェイチェックバルブ94が配置される。第1のワンウェイチェックバルブ94は、排出ガスが第4の通路12dに流入してその内圧が所定の圧力を上回ったときに開弁し、第4の通路12dを外部(水中)に連通させる。即ち、エンジンEから排出された排出ガスは、排気管78、連通路60c、騎乗型用メインフレーム12の第4の通路12dおよび第1のワンウェイチェックバルブ94を介して水中スクータ10の後方(外部)へと排出される。
さらに、騎乗型用メインフレーム12の第5の通路12eの後端には、第2のワンウェイチェックバルブ96が配置される。第2のワンウェイチェックバルブ96は、第5の通路12eの内圧(別言すれば、第5の通路12eに連通された水密容器14の内圧)が所定の圧力を上回ったときに開弁し、第5の通路12eを外部(水中)に連通させる。即ち、エンジンEの発熱などによって水密容器14の内圧が上昇すると、水密容器14内の空気が、接続部材60に形成された連通路、騎乗型用メインフレーム12の第5の通路12eおよび第2のワンウェイチェックバルブ96を介して水中スクータ10の後方(外部)へと排出され、よって水密容器14の内圧が調整(減圧)される。
上記の如く、騎乗型用メインフレーム12に形成された第1の通路12aは、騎乗型用ドライブシャフト26の挿通路となる。また、第2の通路12bは、エンジンEに供給されるべき燃焼用空気の流路となり、第3の通路12cは、操縦者に供給されるべき呼吸用空気の流路となる。さらに、第4の通路12dは、エンジンEから排出された排出ガスの流路となり、第5の通路12eは、水密容器14内の空気を外部に排出してその内圧を調整するための連通路となる。
尚、図示は省略するが、第2の通路12bと第3の通路12cは、騎乗型用メインフレーム12の後端において封止される。第2の通路12bと第3の通路12cを騎乗型用メインフレーム12の後端で封止するのは、騎乗型用メインフレーム12の前端から後端に空気を充満させ、騎乗型用メインフレーム12全体に均等な浮力を与えるためである。第4の通路12dと第5の通路12eにおいて各ワンウェイチェックバルブをそれらの後端に配置したのも、同様な理由からである。
図1から図3の説明に戻ると、水密容器14には、水中スクータ10を潜行あるいは浮上させて航行深度を調整する深度調整機構18が取り付けられる。深度調整機構18は、バー100と、円筒状の左右のグリップ102L,102Rと、上面視略台形のプレートからなる左右のエレベータ104L,104Rと、グリップ102L,102Rをエレベータ104L,104Rに接続する接続部材106L,106Rとからなる。
深度調整機構18について具体的に説明すると、バー100は、ボルト108(図3および図5に示す)によって水密容器14に取り付けられ、その長手方向が水中スクータ10の左右方向に対して平行となるように配置される。バー100において進行方向に向かって左側の端部には、左グリップ102Lが取り付けられる。同様に、バー100において進行方向に向かって右側の端部には、右グリップ102Rが取り付けられる。尚、左右のグリップ102L,102Rは、それぞれバー100を中心として回転(具体的には自転)自在に取り付けられる。
左右のグリップ102L,102Rには、それぞれ接続部材106L,106Rを介してエレベータ104L,104Rが接続される。これにより、エレベータ104L,104Rは、水中スクータ10の左右軸回りに揺動自在とされる。即ち、グリップ102L,102Rを回転させることにより、エレベータ104L,104Rの左右軸回りの傾きの大きさと方向を変更することができ、よってエレベータ104L,104Rに作用する揚力(水中スクータ10を潜行あるいは浮上させる力)を調整することができる。
また、バー100の適宜位置には、エマージェンシスイッチ110が設けられる。エマージェンシスイッチ110には、そのオン、オフのトリガーとなるエマージェンシコード112(図1および図3に示す)の一端が取り付けられる。エマージェンシコード112の他端は、後述する如く、操縦者の腕に取り付けられる。
一方、騎乗型用メインフレーム12の後端には、水中スクータ10の進行方向を調整する操舵機構20が取り付けられる。操舵機構20は、フットスタンド114と、フットスタンド114に接続されたラダー116と、それらを騎乗型用メインフレーム12の後端に接続する接続部材118とからなる。
操舵機構20について具体的に説明すると、接続部材118は、騎乗型用メインフレーム12の直径と略同径の内径を有する円筒部118aを備える。図11および図12に良く示すように、かかる円筒部118aに騎乗型用メインフレーム12の後端を挿入し、ちょうボルト120を騎乗型用メインフレーム12の内部に収容されたナット122に螺合させることにより、騎乗型用メインフレーム12に接続部材118、別言すれば、操舵機構20が取り付けられる。尚、ナット122も前述のナット62と同様に周囲を区画壁で囲われ、その回転が抑止される。即ち、操舵機構20の取り付けに使用されるちょうボルト120は、操縦者によって手動で(工具などを使用することなく)操作自在とされる。
接続部材118は、前記円筒部118aに連続する上下左右の計4枚の翼部118bを備える。翼部118bは、プロペラ16との接触を上下方向あるいは左右方向に回避するように形成されると共に、それらの後端は、プロペラ16よりも後方に位置させられる。上記したフットスタンド114とそれに接続されたラダー116は、翼部118bの中、上下に配置された2枚の翼部の後端に上下軸回りに揺動自在に支持される。即ち、フットスタンド114を操作する(上下軸回りに回転させる)ことにより、ラダー116を上下軸回りに揺動させることができ、よって水中スクータ10の進行方向を調整することができる。
図13は、水中スクータ10と、それに騎乗した操縦者を示す左側面図である。
図13に示すように、操縦者OPは、第1のエアタンク22と第2のエアタンク24の上に騎乗する。具体的には、操縦者OPは、騎乗型用メインフレーム12を跨ぐようにして第1のエアタンク22と第2のエアタンク24に着座する。そして、前傾姿勢をとって前方に位置する左右のグリップ102L,102Rを把持すると共に、後方に位置するフットスタンド114の載置部114aに足を載置する、具体的には、足の甲を係止させる。尚、載置部114aは、図1に示すように、平面視において環状を呈する。
このとき、操縦者OPの腰部は、前記したスライダ30L,30Rに取り付けられたウェストホルダ126に支持される。また、操縦者OPの膝裏は、騎乗型用メインフレーム12に取り付けられたフットホルダ128に支持される。尚、フットホルダ128は、前述した接続部材60などと同様に、騎乗型用メインフレーム12の内部に収容されてその回転が抑止されたナット(図示せず)とちょうボルト130を螺合させることによって取り付けられる。
また、操縦者OPの腕には、前述したエマージェンシコード112(図13で図示省略)の他端が装着される。これにより、操縦者OPが水中スクータ10から離脱したときにエマージェンシコード112の一端がエマージェンシスイッチ110から引き抜かれ、緊急停止信号が送出されてエンジンEが停止させられる。
次いで、操縦者OPによる水中スクータ10の操縦、具体的には、航行深度と進行方向の調整について説明する。
先ず、水中スクータ10を潜行させるときは、図14に示す如く、左右のエレベータ104L,104Rの前端を後端よりも下方に位置させるように左右のグリップ102L,102Rを回転させる。この状態で水中スクータ10を前進させることにより、左右のエレベータ104L,104Rには下向きの力が作用し、よって水中スクータ10が潜行させられる。また、このとき、操縦者OPは騎乗部たる第1および第2のエアタンク22,24を後方へとスライドさせる。即ち、第1および第2のエアタンク22,24の浮力が作用する位置を後方へと移動させる。これにより、水中スクータ10の後方の浮力が大きくなり、水中スクータ10の前方が沈み込む(後方が浮き上がる)ことから、潜行に適した(潜行し易い)姿勢となる。
これに対し、水中スクータ10を浮上させるときは、図15に示す如く、左右のエレベータ104L,104Rの前端を後端よりも上方に位置させるように左右のグリップ102L,102Rを回転させる。この状態で水中スクータ10を前進させることにより、左右のエレベータ104L,104Rには上向きの力が作用し、よって水中スクータ10が浮上させられる。また、このとき、操縦者OPは騎乗部たる第1および第2のエアタンク22,24を前方へとスライドさせる。即ち、第1および第2のエアタンク22,24の浮力が作用する位置を前方へと移動させる。これにより、水中スクータ10の前方の浮力が大きくなり、水中スクータ10の前方が浮き上がる(後方が沈み込む)ことから、浮上に適した(浮上し易い)姿勢となる。
一方、水中スクータ10の進行方向を調整するときは、フットスタンド114に載置した足でフットスタンド114を左右に操作し、よってラダー116を上下軸回りに揺動させる。これにより、水中スクータ10が左右に操舵される。
尚、水中スクータ10が水上あるいは水面付近を航行するとき(即ち、航行深度が浅く、シュノーケル48の上端が水面より上方に位置するとき)は、シュノーケル48の上端からスタータグリップ92を取り外して前記切り欠き部48aに係止させる(即ち、開口部を封止しないようにする)ことで、外気をエンジンEの燃焼用空気として取り入れるようにしても良い。このとき、第1のエアタンク22に接続されたバルブ36を閉弁し、第1のエアタンク22からの空気の供給を停止することで、タンク内に封入された空気の消費量を低減することができる。
次いで、図16から図18を参照し、水中スクータ10を牽引型に変更したときの構成について説明する。
この実施例にあっては、上述した騎乗型用メインフレーム12に加え、それよりも進行方向における長さが短く形成された牽引型用メインフレーム(第2のメインフレーム)を備えると共に、騎乗型用メインフレーム12と牽引型用メインフレームを交換自在とした。また、騎乗型用ドライブシャフト26に加え、それよりも進行方向における長さが短く形成された牽引型用ドライブシャフト(第2のドライブシャフト)を備えると共に、騎乗型用ドライブシャフト26と牽引型用ドライブシャフトを交換自在とした。尚、水中スクータ10が牽引型であるときは、水上あるいは水面付近を航行することが前提とされる。
図16は、水中スクータ10を牽引型に変更したときの左側面図である。
図16に示すように、水中スクータ10が牽引型であるときは、騎乗型用メインフレーム12に代え、それよりも進行方向における長さが短い牽引型用メインフレーム12Bが使用される。牽引型用メインフレーム12Bの前方には、前記したちょうボルト64によって接続部材60と水密容器14が取り付けられると共に、後方には前記したちょうボルト120によって操舵機構20が取り付けられる。
操舵機構20は、騎乗型用メインフレーム12に取り付けられるときと上下反対に取り付けられる。具体的には、水中スクータ10が騎乗型のとき、操舵機構20はフットスタンド114が騎乗型用メインフレーム12の下方に配置されるように取り付けられたのに対し、牽引型のときは、フットスタンド114が牽引型用メインフレーム12Bの上方に配置されるように取り付けられる。
尚、水密容器14と操舵機構20は、前述したように回転が抑止されたナット62,122にちょうボルト64,120を螺合させることによって各メインフレーム12、12Bに取り付けられることから、メインフレームを交換する際、工具などを必要としない。
図17は、図16に示す水中スクータの部分拡大断面図である。
図16に示す如く、牽引型用メインフレーム12Bの進行方向における長さは、その前端が挿入される接続部材60と後端が挿入される円筒部118aの長さの和に略等しく形成される。即ち、水密容器14と操舵機構20が近接配置され、よって牽引型であるときの水中スクータ10は、騎乗型であるときよりも小型化される(全長が短縮される)。
牽引型用メインフレーム12Bには、エンジンEの出力をプロペラ16に伝達する牽引型用ドライブシャフト26Bが挿通される。牽引型用ドライブシャフト26Bの前端には、騎乗型用ドライブシャフト26と同様に断面視多角形を呈する前端挿入部26Baが形成され、減速機構の出力軸に形成された穴部86Saに嵌合される。また、牽引型用ドライブシャフト26Bの後端には、断面視多角形を呈する後端挿入部26Bbが形成され、プロペラシャフト16Sの穴部16Saに嵌合される。
このように、メインフレームとドライブシャフトを除き、エンジンEやそれを収容する水密容器14、プロペラ16、操舵機構20といった主要な部品は、騎乗型と牽引型の2つの形式間で共通化される。
図18は、牽引型であるときの水中スクータ10と、それに牽引される操縦者を示す左側面図である。
図18に示すように、操縦者OPは、フットスタンド114を両手で把持して牽引される。フットスタンド114は、前述の如くラダー116に接続されていることから、操縦者OPは両手でフットスタンド114を左右に操作することで、水中スクータ10を容易に操舵することができる。
また、前述したように、牽引型の水中スクータ10は水上あるいは水面付近を航行することを前提としている。従って、図示の如く、水中スクータ10が牽引型であるときは上記した各エアタンク22,24は使用されず、スタータグリップ92をシュノーケル48の切り欠き部48aに係止させることによってエンジンEの燃焼用空気として外気が取り入れられる。
また、同様な理由から、前述した深度調整機構18や操縦者OPに呼吸用の空気を供給するホース72、レギュレータ74およびマウスピース76も使用されないため、それらは全て水密容器14から取り外される。
尚、牽引型用メインフレーム12Bの内部は、騎乗型用メインフレーム12と同様に区画壁によって分割されて5つの通路が形成される。但し、牽引型のときはエアタンク22,24が使用されないため、牽引型用メインフレーム12Bにあっては上記した第2の通路と第3の通路は省略しても良い。
このように、この実施例に係る水中スクータ10にあっては、騎乗型用メインフレーム12に第1および第2のエアタンク22,24を配置し、そこに操縦者が騎乗するようにしたので、操縦者の負担を軽減させることができる。
また、騎乗型用メインフレーム12よりも短く形成された牽引型用メインフレーム12Bと、騎乗型用ドライブシャフト26よりも短く形成された牽引型用ドライブシャフト26Bとを備え、騎乗型用メインフレーム12と騎乗型用ドライブシャフト26を、それぞれ牽引型用メインフレーム12Bと牽引型用ドライブシャフト26Bに交換自在としたので、水中スクータ10を小型化する(全長を短くする)ことができ、よって操縦性を向上させることができる。
即ち、水中スクータ10を、操縦者が騎乗する騎乗型と操縦者が牽引される牽引型の中の任意の形式で使用できるようにしたことから、大型化に伴う操縦者の負担軽減と小型化に伴う操縦性の向上という相反する2つの利点を選択的に得ることができる。
また、エンジンEやそれを収容する水密容器14、プロペラ16、操舵機構20といった主要な部品を、騎乗型と牽引型の2つの形式間で共通化させるようにしたので、構成を簡素化することができる。
また、水中スクータ10が騎乗型であるときは操縦者OPの足で操作されると共に、牽引型であるときは操縦者OPの手で操作される操舵機構20を備えるようにしたので、水中スクータ10が騎乗型とされているか牽引型とされているかに関わらず水中スクータ10を容易に操舵することができ、よって操縦者の負担をより軽減させることができると共に、操縦性をより向上させることができる。
さらに、水密容器14と操舵機構20を、回転が抑止されたナット62,122に手動操作自在なちょうボルト64,120を螺合させることによって各メインフレーム12、12Bに取り付けるようにしたことから、メインフレームの交換に工具などを使用する必要がなく、よってメインフレームの交換作業(即ち、水中スクータ10の形式変更作業)を容易に行うことができる。
また、水中スクータ10が騎乗型であるとき、第1のエアタンク22に封入された空気をエンジンEの燃焼用空気として供給すると共に、第2のエアタンク24に封入された空気を操縦者の呼吸用空気として供給するようにしたので、水上および水中での航行が可能になると共に、操縦者の快適性を向上させることができる。
また、水中スクータ10が騎乗型であるとき、第1および第2のエアタンク22,24を水中スクータ10の進行方向にスライド自在とし、それらの浮力が作用する位置を可変としたことから、水中スクータ10を潜行または浮上に適した姿勢にすることができ、よって水中スクータ10の深度調整を容易に行うことができる。
また、遠心クラッチ84を介してエンジンEの出力をプロペラ16に伝達するようにしたので、エンジンEの運転を停止することなく水中スクータ10の航行を停止することができる。